2023年7月 1日 (土)

T-F SET SW 動作せず

<カテゴリー:TS-930S>

CWブレークイン機能が直ったと思ったら、今度はスプリット運用で使うT-F SETスィッチが受信状態では機能するのですが、送信時に周波数が切り替わりません。 またSWの接触不良だろうとチェックすると、案の定、SWがONされても、ON端子が接触しないという現象です。 ただし、このSWの接点部分には、接点復活剤は届きませんので、現在遊んでいる回路に配線を移しました。

Tfsw

上の回路図の赤丸で囲ったSWです。 この改造を行った後、動作が正常になったのを確認し、その日はそのままでケースインは次の日に行う事にしました。 そして翌日、ケースインをする前に念の為と確認すると、また送信時周波数が変わりません。 ここから悪戦苦闘の連続で、1週間過ぎた次の土曜日、原因が判りました。

Cnwcut

デジタル基板の赤枠で囲んだコネクターのワイヤーがカシメ部分で折れていました。 修理の為、折れたワイヤーをコネクターのコンタクトに直接半田付けし、いざ動作テストしても、時々OKになる事は有りますが、T-F SET機能以外のFLブラックアウトとか、ピーという連続音が発生するとかの症状です。 困りはてて、コネクターを抜いたり挿したりしている内に全部のワイヤーが断線してしまいました。 対策は、部品取り用に置いてあった動作しないTS-930Sより該当するコネクターをワイヤーごと切り取り、このコネクターと断線しまくっているコネクターを根元から切断し、コネクターごと交換しました。 これで不安定現象は全て解消し、また、メイン機として使う事が出来るようになりました。

 

Indexへ戻る

2023年6月19日 (月)

40m バンド 国内用ベントDP追加

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU ループアンテナ 

前回の記事までにて、ほぼマルチバンド対応のアンテナ設置は完了していましたが、取り残されていた40mバンド国内向けアンテナの検討を行いました。 当初、すでに完成状態にあるツェップアンテナを候補に上げましたが、このアンテナは自宅の敷地内からはみ出す為、常時展開して置く事が出来ないアンテナでした。 そこで、裏庭と燐家の間に張って、実用していましたベントDPを再登場させる事にします。

このベントDPは家に近接している事もあり、MTU無しでは使用できないアンテナでしたが、廃棄処分予定のプリセットMTUから7MHzのT型MTUを1台だけ取り出し、これを小さなBOXに入れベランダで整合が出来るように改造して実現する事にします。 また前回のワイヤーは0.2SQでしたが、今回は1.25SQワイヤーに変更しました。

7mhzbentrstailjpg


Balan_schema

  

 

 

 

40mtu

構造も前回と同じです。 使用するバランは以前作って、耐圧でNGとなった4巻線式バランの構造で、1:1に固定した物を、耐電圧特性を改善して、新たにつくりました。 

左のような1台だけのMTUを防水BOXに入れ、左から同軸で送信電力を入れ、T型MTUを通った後、1:1のバランを経由して、平行フィーダーでアンテナへつなぎます。

バランのコアはFT-140#43です。 SWRの記録は残しておりませんが、1.2以下でした。

日曜日の午後4時ごろ完成して、先に出来上がっている40m用垂直DPと比較しようとしましたが、コンディションが悪く、数局しか聞こえません。 聞こえていた大分の局はベントDPの方が10dBくらいSがUPしました。 後日、4エリアの広島と岡山の局のラグチューが聞こえましたので、同様に比較すると、両方の局とも20dBから25dBくらいの差が付いてベントダイポールが有利でした。

MMANAによる指向性のシュミレーションデータです。 国内向けとして使えます。

40mbentdp

このベントDPの目的は7195のAM交信がメインなのですが、どなたもQRVしていないのか、QRVしているけどコンディションが悪く聞こえないのか、しばらく様子を見る事にします。 1週間くらい後、7195でAMによるCQを出していると、1エリアの局からコールがあり59+10dB以上で聞こえているとの事。この時のキャリア出力は60Wで、AMによる1エリアとの1st QSOでした。

この国内用ベントダイポールと、160m用スローパーに7MHzを乗せた時の近距離受信性能を比較すると、ベントダイポールの方が4dBくらい悪くなる事が判りましたので2025年5月に撤去されました。 

このアンテナは国内用でして、例え、このアンテナでDXが聞こえても、交信はしてもらえません。DXとの交信は垂直DPが断然有利です。南太平洋の島からCQが聞こえ、他に呼ぶ局がなければ、垂直DPなら一発で応答があります。 のはずなのですが、10月末に行われたWW PHONEの時、垂直DPでコールしても全く応答が有りませんでした。逆にこのベントDPでコールするとWもBYもYCもDUも一発で応答が有り、どうなっているんだろう??    調査した結果、垂直DPの上部エレメントがATUの内部で断線していました。  この状態でもATUはSWR1.2以下に整合させていましたので、受信感度が下がったとは認識していましたが、断線までは気付かなかったのが実態でした。 これを修理した結果、7MHzでは初となるカリブ海の西側に位置するベリーズとQSOできました。 垂直DPバンザイ!

 

160mバンドで200W運用できるようにATUを改造しました。

 

INDEXに戻る

2023年6月10日 (土)

ATUによるマルチバンド運用開始 

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU 自作 ループアンテナ 

当初の目標に対して、一部未完成の部分はありますが、仮運用を始めて1か月経過しました。 その間に見つかった問題点と対策を紹介します。

3.5MHzでフルパワー運用すると、ATUのTUNE LED(緑)とRESET LED(赤)が出力レベルに応じて点灯します。 ATUのマイコンには異常が有りませんので、コントロールケーブルのLEDラインがRF信号をピックアップし、そのRF信号をLEDが半波整流して点灯するもののようです。 コントローラーのLEDに直列に1mHのチョークコイルを入れ対策出来ました。

 

シャックの電源をONする度に、コントローラーは初期化され、プリセットコール要求はデフォルトのOFFになっていました。 まだ、ATUのプリセットが済んでいない状況では、これで良いのですが、ほぼまんべん無くプリセットが完了すると、最初にキャリアを出して、チューニングを行うというアクションが不要になり、シャックの電源をONした後、プリセットコール要求がOFFの状態で送信してしまい、SWRが90を超えるという事が頻発しました。 そこで、このプリセットコール要求は初期値としてONに設定しました。 

 

21MHzでラグチューを始めると、最初SWR1.1くらいで有ったのが10分以上過ぎるとSWR2.8くらいまでアップします。 こちらが受信状態になり、再度送信状態になると、ほぼSWR1.1近くに戻っていますが、また数分すると、SWRが2.0を超えます。 症状的にはフェライトが発熱するような現象ですので、ソーターバランを廃止してありますが、送信時間が長くなると、はっきりとこの症状が現れます。 また、24MHzではCWの短時間送信でも同様な現象が発生します。 どうやら、ATU内部のコイルのコアが発熱しているようです。 スカイドアアンテナの横幅を従来の半分にしたことにより、アンテナのインピーダンスが下がったのが原因と考えられます。 このままでは、いつかATUが壊れてしまいますので、電流を減らす対策が必要です。 結局、耐圧でNGとなったインピーダンス変換トランスを再登場させねばならなくなりました。 

Unun3by2


そこで、3:2の巻き数比(インピーダンス比 1:0.44)のトランスの耐電圧改善品を作り、ループアンテナだけに使用する事にします。 ループアンテナ専用なら、バラン形式の不平衡/平衡変換は必要ないので、このトランスは不平衡/不平衡トランスとして、トランス自身のSWR悪化を改善します。

3by2unun

Ununswr

左上がフェライトコアを2個使った不平衡/不平衡 巻き数比3:2のトランスで通称UNUNです。 コアはトーキンのESD-R-17S-1です。 3本のAWG22相当のリード線をねじり状態でコアのなかを2ターン通していいます。 全体の巻き数は1次側が6ターン、2次側が4ターンでインピーダンス比は50:22となります。 右上が1MHzから60MHzまでのSWR特性で、初期のころ作ったバランよりはSWRが改善しております。

Atuununadd

このUNUNをアンテナ端子Aとリレーの間に追加し、コアを両面テープで止めただけの状態に置き、空中配線で絶縁距離を確保しながら追加しました。 そして、アンテナは仮設状態ですが、14MHzから50MHzまでSWR1.5以下に整合出来、一番厳しかった24MHzでCW 100W連続送信しても、SWRの増加は有りません。 ただし、増加は無いのですが、減少があります。 この現象がたまたまなのか、周波数によっては増加になるのかは、実際の運用で確かめていますが、今のところ問題無いようです。

 

3.5MHzや7MHzの国内向け高打ち上げ角のアンテナを160m用のワイヤーを使って作ろうともくろみましたが、3.5MHzはワイヤーの長さがほぼ1/2波長になってしまい、整合出来ませんでした。 また、7MHzは整合出来るものの、打ち上げ角が期待通りに上がらず、国内向けとしてはNGでした。 この状態を改善する為に、160m用の性能が変わらない範囲で、3.5MHzの整合が可能な条件を探す必要が有りました。 MMANAのシュミレーションでは、現在の160m用アンテナの反対側へ10mのワイヤーを追加すれば、3.5MHzでリアクタンスが+2800Ωくらいあったのを+300Ωくらいまで落とす事ができます。 ATUを降ろしたついでに、この10mのワイヤーを追加し、アンテナを正規の高さまで上げた後、確認すると、SWR3.1くらいが最低で整合できませんでした。 そこで、10mのワイヤーを12mにすると、めでたく1.04まで下がり整合出来ました。 3.5MHzから3.8MHzまで最大SWR1.5、平均SWR1.14でした。

 

1.9MHzの周波数設定が間違っていました。 周波数リストを修正しました。

ANT-D端子を使う時は、ATUの電源をOFF出来るように、各アンテナ切り替えリレーのON/OFFを修正しました。 ATUに通電していない時にD端子が有効とし、かつ、ATUが生きている時でもアンテナをDに指定できるように修正しました。

 

アンテナの設定に目途が出てきたので、シャック内のリグも以前のように運用出来るように整備し、1.8MHzの200Wリニアも使えるようにしました。 そして、SSBでCQを出したところ、最初SWR1.1くらいで有ったのが数秒で4以上に悪化します。 しばらく休止して、再度送信すると同じように繰り返されます。 どうもATUの中のコイルが発熱しているみたいです。 このATUの最大通過電力は150Wでしたので、やむなしと諦め、200W運用する為の検討を後日する事にします。

 

この後、ATUのバグが沢山発見され、修正しました。最終状態はこちらをご覧ください。

下のファイルは最新状態に差し替えてあります。

 

メインユニット配線図  NB-ATU_main9.pdfをダウンロード

コントローラー配線図 NB-ATU_contoroller6.pdfをダウンロード

ATU本体  NB-ATU-main_10.cをダウンロード

ATUコントローラー NB-ATU-controller_9.cをダウンロード

本体ヘッダーファイル FREQ_Span8.hをダウンロード

コントローラーヘッダーファイル FREQ_Center8.hをダウンロード

これで、当初の目標はほぼ達成できましたが、最後まで残った7MHzの国内用アンテナはどうしても実現出来ませんでした。 これは、以前作成したツェップアンテナを展開するか、ベントダイポールをこのATUとは別に独立して後日検討する事にします。

今回のマルチアンテナシステムの全体構造図と各バンドに於ける指向性(水平、垂直)のシュミレーションデータを残しておきます。

Antdrwg2_2

6mptern

10mptern

12mptern

15mptern_2

17mptern

20mptern

30mdpptern

40mdpptern

40mlwtptern

80mdpptern

80mlwtptern

160mspptern

  
160m用 DX向けは、以前検討した事のある7MHzの垂直エレメントとスカイドアエレメントを使った垂直アンテナをアンテナD端子に接続し、地上に置いたマッチングBOXで整合させる予定ですが、これをMMANAでシュミレーションすると、ゲイン最大の打ち上げ角は25度くらいになり、その位置でのゲインは+1.5dBiくらいになります。

両者のSメーターの振れ差は0.3くらいしかなく、ほんとに改善出来るのか????です。

2023年の12月初め、ARRLの160mコンテストが有りましたので、聞いてみました。聞こえてくるのはJAばかりで、Wは1局も聞こえません。 垂直方向の指向性はシュミレーションとかなり異なるみたいです。 やはりATUを使わない垂直アンテナは必要と判りましたが、いつ建てるか未定です。

 

7MHzの国内用アンテナ設置へ続く。

 

2024年2月

 ATUを使わない160mバンド用垂直アンテナを作りました。

 

2024年3月

160mバンド用受信専用アンテナの実験をしています。

 

2025年5月

ATUをZ Matchタイプに代えたところ、スカイドアループが50MHzで整合出来る事が判り、50MHzを聞いてみると、ベトナムが59+で入感していました。 そこで100W SSBでコールすると一発で応答が有りレポートは59。 その後、FT8に変えてQSOを試みると、南太平洋の島々やオーストラリアと交信出来、あっという間にDXCCのエンティティが7になりました。 どうも、MMANAでシュミレーションした垂直面の指向性と実態は合っていないようです。 アンテナの設置場所が南側に低くなる傾斜地にあり、HFを含め太平洋、オーストラリア方面への打ち上げ角がシュミレーションより低くなるのではと考えています。 そして諦めていた6mの運用が出来るという事になりましたので喜んでいます。

試しに、160mスローパーに7MHzを乗せた時と、7MHz用ベントダイポールによる近距離の受信信号の強さを比べてみました。 ちょうど、岡山の局がON AIRしていましたので比較するとベントダイポールよりスローパーの方が4dBくらい高く受信できます。 160mスローバーに7MHzを乗せた場合、垂直面の指向性が最小になるシュミレーション結果でしたが、これも実態は異なる事が判り、邪魔だったベントダイポールはその日の内に撤去しました。

 

Indexに戻る

2023年4月26日 (水)

ATUのデバッグ(思い通りにいかない!)

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU 自作 ループアンテナ 

アンテナの設置も仮状態ですが完了し、ATUのチューニングや試験電波を出せる状態になり、たちまちは、7MHzでの実地検証を始めました。

Newantop1

SWRが1.5以下の周波数で、SSBによるCQを出しても、ATUは何も異常の症状は出さないものの、どなたも応答はしてきません。 時間帯は午後7時ごろでしたが、垂直DPならこんなもんだろうと、諦めて、CWバンドへ移動。 出力2Wくらいで、チューンを取り、フルパワーのCWでCQを出すと、外付けのアナログ式SWRメーターがSWR5以上を示します。 

ATUの組み立て中に確認した出力電力に対する耐性(イミュニティと言います)は60W連続出力でもOKだったのにと焦ります。 詳しく調べると、SWR1.68程度の場合、連続キャリア60W及びSSB100Wpepでも問題有りませんが、10W CWモードで、NGとなります。 そしてATUを再TUNEしてSWR1.37まで落とすと、CW 100WでもOKとなります。 という事は、少なくとも、SWR1.8くらいの時でも、100W CWで問題無いようにしないと、ストレスが溜まるだけになってしまいます。 

翌日チェックすると、受信感度が30dB以上落ちていました。オーバーホール完了時点では、全く問題なかったのに。 ただ、机の上に有る、TS-850SもFT-450も同じように受信感度が落ちていますので、アンテナかATUの問題かも知れません。

10MHz帯のバンド分割が間違っていました。これは、ソフトだけで解決できそうです。

ATUが何らかの理由で電源OFFになっても、電源OFF直前のATUの設定条件をラストデータとして記憶させて置き、再度電源ONになった時は、この設定状態を再現するように改善するつもりです。

世の中、ゴールデンウィークに突入したようですが、こちらは、カレンダー通りです。

雨が上がり、仮設状態のアンテナとATUを降ろす事ができましたので、今までに発見された問題点を確認しました。

まず、受信感度が極端に落ちた原因。 ATUを外して、ATUの代わりに50Ωのダミー抵抗を取り付けて、シャック側からアンテナアナライザーでSWRを確認したところ、SWR1.00で同軸ケーブルは問題なし。 どうも原因はATUの中にありそうです。 ATUのリレーを全てリセットしてATUの出力に50Ωのダミー抵抗を付け、送信機側でSWRを測ると、1.00 これも問題なし。

ATUの出力にバランを付け、このバランの出力に50Ωの抵抗を付けると、SWRは10を超えます。 どうやら、バランがおかしい。 バランから引き出されたUEWを動かすと、時々SWRが良くなる事があります。 どうもバランのUEWがショートしているみたいです。

Remakebalan

バランをケースから取り出してみると、巻線の半田付け部分がお互いにショートしているところがありました。 対策は、この半田付け部分の裸線の間に絶縁テープを入れ、互いに絶縁するようにした上で、半田付け部分が動かないように絶縁テープでしっかり固定しました。

左が、その対策後のバランです。

この状態で、ダミー抵抗を繋いでTUNEテストをすると、チューニングは正常に動作するようになりました。

次は、10Wくらいの出力でマイコンが誤動作する件ですが、このバラン対策を行った後でも、10Wでの誤動作レベルは変わりません。 

雨が降り続いて、ATUを降ろせない間にひとつの問題点を発見いていました。 アンテナの同軸のGNDとマイコンのGNDは、フェライトビーズで高周波的に絶縁してあったのですが、マイコンをATUボードから分離し、別の金属ケースに移した際、マイコンのGNDを金属ケースにビス止めしてありました。 このビス止めの為、せっかく分離した、同軸のGNDとマイコンのGNDをショートしていました。

そこで、このマイコンのGNDがケースへ直接落ちないように、基板の裏側に張り付けてあった銅箔をはぎ取ってやりました。

Gnddelete

Addncf1

左上の黄色で示す部分の銅箔をはぎ取り、マイコンのGNDがケースに直接落ちないようにすると、100W CW送信でも問題なしです。 念の為、28.9MHz付近でテストを行いますと、SWRが2を超える状況でもCW 100W送信では問題有りませんが、キャリア連続出力70Wにて、マイコンがハングアップします。 そこで、みぎの写真のごとく、見えているワイヤーに、手持ちのフェライトコアを可能な限り巻き付けてやりました。 その結果、この28.9MHzでの連続キャリア70WもOKとなりました。 この時の実験は50Ωダミー抵抗で行っており、実際のアンテナでは28.9MHzでの整合は出来ませんでした。

さらに、もし、マイコンがハングアップしても、一度マイコンの電源をOFF/ONする事により、前回の整合条件を復帰できるようにソフト変更しましたので、やばそうな状況では、マイコンの電源をOFFする事により、リレーの設定は保持され、ATUの整合が崩れる事はなくなります。 これは、自作の200W機を送信する時に、役立ちそうです。

ATUのリレーはもくろみ通り、電源OFFでも状態を維持するのですが、付属で追加したインダクタやキャパシタをON/OFFするリレーはOFFモードに戻ってしまいます。 また、アンテナA以外を使用している場合、この切り替えリレーも全部OFFになってしまい、ATUの電源を切ると、使う事が出来ませんでした。

 

Reload


2023年のゴールデンウィークです。 コロナの束縛からも解かれ、皆さん開放的ですが、新作のATUが、思うように動作せず、連休も半分過ぎてしまいました。

超ナロー幅のスカイドアアンテナはほぼ完成したのですが、最高部まで上げたのは一晩で、ATUの問題の為、手の届く高さに置いておかねばならない日が2日間。 この間に、バグや機能向上の為に、マスト上にある、ATUにノートパソコンを繋ぎ、ソフトの再インストールを実施したのは数え切れませんが、なんとか、実用に耐える状態になりましたので、明日にでも、最高高さまで上げる事にします。

左は、ATUを手の届く所まで降ろし、ノートPCで、プログラムの書き換えを行っているところです。 

 

一旦下げたATUの改善内容は以下です。

一度整合状態になったATUを再度TUNE動作させると、即SWR90状態になります。 その対策のひとつとして、最初にリレーをプラスかマイナス方向に増減する判定を追加しました。 これで、かなりの頻度で、即収束しますが、バンドによっては、SWRが1.6くらいの状態でいきないSWR90になってしまいます。 この原因がまだ判りません。

指定した周波数の整合が過去一度もない時は、一番近くの整合条件を拾ってきて、仮整合させる仕組みを構想しましたが、いざ実験すると、バグだらけで、全く機能しませんでした。 そこで、この機能のソフトはエクセルを使い、ワンステップごとに動作を確認したソフトに作り替えました。この作り替えたソフトでは、一応要求された動作は行いますが、次の再TUNEで、どこかへ飛んでいくという異常動作がまだかなり有ります。 アンテナを上げるのを諦めて、このSWR1.5くらいから再チューニング開始した途端、SWRが90以上になる現象を、リレーの切り替えタイミングを0.5秒まで落とし、SWRの変化を見ていると、リレーを2step変更しただけで、SWRが1.5よりいきなり90に跳ね上がります。 どうも、リアクタンスが反転するような限界ポイントでかろうじて整合している状態で、LやCが2step変化するだけで、リアクタンスが反転し、起こる現象のようです。 そこまで判ると、ATUが気長に3分間も最適値を探しているのを我慢しなければならないという事でした。

とりあえず、仮設置状態ですが、10MHzと18MHzでQSOは成功しました。 山梨県、沖縄、それに中国(B5)でしたが、一応期待通りのRSTでした。 中国局との交信の前後では、中国局を呼んでいるVKもかなり強力に入感していました。 HFのスカイドアアンテナは、昔から、相手の受信信号より、当局の信号を受信した相手局からの受信レポートが良いという現象は、今回も再現出来ました。

MMANAによるシュミレーションでは、SWR1.5の範囲の帯域幅は、21MHzで50KHz以下でしたが、実際に測定したSWR1.5の範囲は120KHzくらい有り、21MHzの場合、4ポイントの周波数でATUの同調を取って置けば、全バンドカバーできる事がわかりました。

7MHzのアンテナは、フルサイズの寸法に近いですので、1ポイントの周波数のみで、7MHzから7.2MHzまでSWR1.5以内でカバーしています。 ただし、各ポイントでSWR1.1以下に整合した時の話ですから、もし、SWR1.4くらいで収束した場合、SWR1.5以下の範囲は+/-10KHz以下と考えられますので、当初設定した全ポイントで整合を実施しておかねばんらない事には変わり有りません。

コントローラーの周波数アップダウンツマミによる誤動作がだんだんひどくなってきました。 デジタルオシロでI/Oの波形をチェックすると、割り込みがかかる端子のチャタリングが大きくなっていました。 ロータリーエンコーダーの固有の問題でエンコーダーを交換する必要がありますが、エンコーダーのB端子はまだましな波形をしていましたので、割り込みの発生する端子をAからBに変更しました。

5月6日 3.5MHzから50MHzまでのATUプリセットがほぼ完了しました。 ほぼの意味は、28,570以上と51.25MHz以上の周波数では、どうしてもATUが収束しません。 従って、28.51MHz以上の周波数を使用する場合、28.510で同調した状態でそのまま使う事にしました。 この場合、28.700くらいまでSWR1.5以内に収まります。SWR2まで許容すると28.800くらいまでは使えます。 50MHzの場合、51MHz以上で交信する事はないので、そのままです。

SWRの収束が悪いのは3.5MHzで最大でSWR1.8となります。7~24MHzはほぼすべてSWR1.15以下に収束しました。 28MHzと50MHzは、収束する範囲でSWR1.5以下になりますので、実用上は問題有りません。 1.8MHz はアンテナ端子Cにロングワイヤーを接続する予定ですが、まだワイヤーを張ってありませんので、ワイヤーが設置されたら確認する事にします。

2日間使った感想は、快適です。初日に、全周波数のプリセットを済ませましたので、2日目は、一度もプリ送信や、再チューニングをすることなく使用できました。 また、受信機のバンドを変えた後、ATUのバンドを指定すると、ノイズが急に大きくなり、整合状態になった事を実感できます。

Nbatuskydoor3

画面の右から5月の風を受けて少し傾いていますが、最終設置状態です。 最終設置状態での1st DX QSOはアンテナを上げたその日の午後、21MHzにて、ニューカレドニアとのQSOで59/59でした。

その後2日間の間に フィジー、インドネシア、ベラルーシ、ウルグアイ、ノルウェー、オランダと交信できました。ヨーロッパは全てロングパス、21MHz CWでの運用でした。 

しかし、その後、また受信感度が全バンド30dB以上落ちる現象が発生し、どのバンドもチューニング不可となってしまいました。 この現象は2回目です。 前回はバランの線間ショートでした。 ただし、UEWの絶縁が壊れてショートしたのでは無く、ハンダ付けの裸の部分がショートでしたので、修理対応としては、ハンダ付け部分に市販のビニールテープを挟み、絶縁確保しました。 今回、もし、同じ原因なら、ATUの出力にとんでもない高電圧が発生して絶縁破壊したのでは? そこで、ATUの出力端子で発生する電圧をTLWにてシュミレーションしてみました。

TLWの紹介資料 tlw.pdfをダウンロード

Balanvoltage

左の表が、電圧が高そうなバンドを抜粋したシュミレーションデータです。

いずれも100W出力時の値です。 1.8MHzと7MHzは200W出力になりますが、リアクタンスの値が高くないので、このデータより低くなります。

この表から、最大で5000V以上の電圧がバランに加わる事が判りました。 ATUを通した受信感度が急に落ちたのは、24MHzでCW 100W運用した後でした。 その前に21MHzで何回も運用していたのですが、シュミレーション上の出力電圧は24MHzより高い1030Vでした。まだ、3.5MHzや28MHzでCW運用した事が無いので、心配になります。 シュミレーションと実態が違う事を願うばかりです。 絶縁不良になった部分は4個の巻き線をお互いに接続する部分が絶縁テープ1枚で隔てられており、そのテープの厚みが0.1mmのものでした。材料がPVCとすると2KVくらいしか絶縁耐力が無く、バランの絶縁耐力を5KV以上に引き上げる必要があります。 

以前使っていたプリセットMTUの場合、T型アンテナチューナーでしたので、MTUの出力側の電圧は、この表よりもっと低かったのですが、それでもバンドによっては4000Vを超えていました。しかし、使用していたバランがソーターバランでしたので、ワイヤー間の絶縁はワイヤーの絶縁材の厚みだけ気にすれば良いものでした。 市販の屋外用ATUの出力端子が碍子になっているのは、数KVの電圧が発生する事を認識しているからでしょうが、取説の中で、ループアンテナ等に整合させる場合、1:4のインピーダンス比のバランを外付けする事を推奨していますが、耐圧の事は触れていなかったような。

Balanng

ATUに手が届く所まで、マストを縮め、ATUを取り外し、確認すると、NG部品は前回と同様、バランでした。 バランを取り出し、絶縁テープで覆った部分を観察すると、左の写真のごとく、絶縁テープを通り越して放電した場所が見つかりました。 結局、ATUとアンテナの間にバランを使う時は、その耐圧に十分注意する必要があるという事を理解しました。

対策はすでに、用意されており、以前プリセットMTUに使ったソーターバランを取り外し、このATUに実装するだけですが、今まで有った、インピーダンス変換機能が使えなくなりました。 そこで、このATUのコンデンサの分解能を2倍にして、整合確率を高める事にします。 このATUの最小容量は5PFですので、2,5PFのコンデンサを付けたり外したりしたら分解能が2倍になるのですが、あいにく耐圧5KV以上のコンデンサが有りません。 そこで、耐圧1KV 10PFのコンデンサを4個シリーズに接続し、耐圧4KV 2.5PFのコンデンサを作り、今まで使っていたバランのH/L切り替えリレーを使い、この2.5PFのコンデンサを付けたり外したりできるようにします。 使っているリレーは5000V耐圧品です。コンデンサは目標の5KVには届きませんが、なんとかもつだろうと期待します。

Sotorbalan

上の写真がソーターバランを取り付けたATUの内部です。このバランのワイヤーの絶縁厚みは1.5mmくらい有り、2本の隣り合ったワイヤー間の耐電圧は単純計算でも90KV以上有ります。 左側の青いものが2.5PFのコンデンサになります。 この状態で、50Ωのダミー抵抗を接続してチューニングテストを行うと、従来より早く収束する事を確認できました。

ATUの中の最小容量が10PFである事が判り、最終的に2.5PFのコンデンサは5.5PFに変更されました。

このATUをマストに取り付け、仮設状態でチューニングテストを行うと、28MHzと50MHzは、どうしてもSWR3以下に整合しません。 従来の強制バランは、耐圧ではNGでしたが、整合しやすさという点では良好だったようです。 MMANAとTLWを駆使して原因を調べたところ、28.5MHzでのATU整合条件はコイルが7.1uH、コンデンサが7.3PFと出ており、コイルもコンデンサもゼロからチューニング開始した場合、すぐにSWRディップを探すルーチンには入るのですが、SWR3.?くらいを見つけたけど、整合完了の最大SWR3.0以下に届かず、そのまま次のステップへ行ってしまい、SWR90を表示したまま数分間動作した後、エラーで停止してしまいます。 ここは、せめてコンデンサの値が20PF以上で整合するようなアンテナ特性にしてやらないと永久に整合出来ません。

ここで、ATUメーカーなら、ループ長や形状を変えて、整合出来るようにすると取説で説明するのですが、今回の私のアンテナは先にループ長と形状を決めてしまっているので、この対策はとれません。 TLWにてシュミ―レーションすると、バランの出力側に10PFのコンデンサを追加すると、ATU内部のコンデンサの容量が280PFくらいになります。そこで、10PFが無かったので、11PFを追加してみました。 50MHzはOKになりましたが、28MHzは29MHz以上はOKですが、それ以下はSWR3以下になりません。 そして、24MHzから下のバンドもNGでした。 TLWのシュミレートと実態はかなり違うみたいです。 

ループアンテナの形状を変えられないので、変えられるところを色々いじっていた時、ループへATUから給電する為に、無造作にワイヤーを接続してあったのを、平行フィーダーに変えてみました。 すると、バンド内でリアクタンスが反転したり、ローパスLタイプのチューナーでは整合しない範囲が変化する事が判りました。 MMANAとTLWでシュミレーションしていくと、このフィーダーの間隔を4mmくらいまで狭くすると、一番整合しにくい24MHzと28MHzのATUのLCの組み合わせが、SWRを1.8まで許容したら整合しそうな雰囲気になってきました。 そして、今までこのフィーダーの長さは成り行きで50cmくらいだったのですが、これを1mまで長くすると、シュミレーション上は14MHz以上の全バンド整合できそうです。

Feederuhf

左は、この結果を受けて、フィーダーをUHFのTVフィーダーに変更したものです。

このフィーダー状態で、24MHz以下は全てSWR1.5以下に整合しますが、28MHzと50MHzはなかなか整合しません。 コントローラー側に送られてくるSWRのデータの表示間隔を遅くしてみていると、SWR1.3くらいになるのに、それを無視して、次のステップへ飛んでいく状態が何回も再現します。 プログラムにバグがあるのかと色々調べましたが、おかしな部分は有りません。

そこで、SWRの測定間隔を0.5秒まで遅くし、時間はかかりますが、実際のSWRの変化をモニターする事にしました。 その結果、周波数やATUの設定条件を変えないのに、SWR値が不規則に変化する事が判りました。 どうも風によりワイヤーが揺れたり、マストがたわむと、当然SWRが変化し、そのレベルが小数点第1位まで及ぶ事が判りました。 今回のATUはまず、SWR1.15以下をねらいそのポイントを探しますが、そのポイントが見つからない場合、限度値をSWR1.5として再度さがしに行きます。 それも見つからないときはSWR1.8及び3まで限度値を落とし探しますが、これを全部自動で行っていました。 このとき、SWRの検出のバラツキは考慮されていませんので、ATUのコイルやコンデンサを変えた時、SWRが上がるかさがるかの判定を間違い、アルゴリズム通りの動作をせず、整合不能になるようです。

対策としては、この自動で、段階的に限度値を緩めていく仕様をやめ、手動で限度値を変えるようにし、プログラムが勝手に限度値を変更しないようにしました。 限度値はTUNE開始する都度、ワンランクづつ緩め、ランク3の次はまたランクゼロに戻るようにしました。 その結果、風によりSWRの変化が異常になった場合、相変わらず誤動作はしますが、限度値を変更しないので、数秒のうちにエラーになります。 エラーになったら何回もTUNE開始を行うとその内、どれかの限度値で整合成功しますので、その状態で再TUNE動作させると、ほとんどSWR1.5以下に落ち着きます。 また、隣の周波数でSWR1.3くらいになっている状態でTUNE操作すると、1.15以内に収束する確率も高くなりました。 UHFフィーダーに変更した状態で、21MHz以下はほとんど1回でSWR1.15以下、24MHz以上は3~4回のTUNE操作でSWR1.8以下にしかならない周波数もありますが、ほとんどのの周波数で1.5以下に整合するようになりました。 また、高速で荒くスキャンさせる時、従来SWR6以下を見つけたら、SWRディップ条件を探すルーチンへ遷移させていましたが、SWR20以下を見つけたら、SWRディップ条件を探しに遷移するように変更しました。

下の写真は、ATU内部の最終状態です。

Atu_in_2

 

スカイドアの全バンドで整合出来るようになりましたので、正規の高さまで上げ、21MHzで2Wくらいの出力で整合を取り、SWR1.1くらいを確認した後、QSOを始めるとだんだんSWRが上がっていきます。しゃべり終わるころになるとSWR8くらいまで悪化し、相手の方が送信終了後に、再度送信開始した時点では、SWR1.3くらいまで戻っていますが。10秒もたたない内にまたSWR8とか9になります。 QRTした後、バンドの端でCWによるテストを行うと、21MHzが一番影響が大きくい事が判りました。 ATUの中で、コンデンサやインダクターを追加したり外したりしていますので、これらが悪さしているのか確認しましたが、関係なしでした。 初期のころ、強制バランを使用して21MHzで運用しましたが、このような現象は有りませんでした。 また、難問が出てきてしまいました。

SWRが高くなった直後にベランダへ走り、ATUの中のソーターバランのコイルとフェライトコアを握るとほんのりと温かくなっていました。 試しに、このバランを廃止してみました。 21MHzで5分間くらいのQSOをしても、その間、SWRは増えたり減ったりしますが、SWRが1.5を超える事は有りませんでした。 SSBでQSO中のSWRは、FWDとREVの電圧の測定が同時ではないので、上がったり下がったりします。  下はソーターバランを廃止したATU内部です。

 

今回のATUに限った事では有りませんが、ATUに接続する給電用同軸ケーブルとATUをコントロールする8芯のケーブルには、3.5MHzでも十分効果のあるコモン電流阻止用のFT240#43コアにケーブルを10回巻き付けたチョークが挿入されています。 この効果で、ソーターバランを廃止しても問題が生じません。

Balanless

結局、ソーターバランもNGとなりました。 以前のプリセットMTUでは、スカイドアの横幅が今回の2倍になる2mでしたので、バランの中を流れる電流もギリギリでOKだったのが、横幅が半分になり、その分インピーダンスも下がり、電流が増えた事により、バランが飽和したものと推定します。 幸い、バランはNGとなりましたが、ATUその物は大丈夫な様です。 普通はこのような問題を防ぐ為に電流制限用の抵抗を追加しますが、なるべくなら抵抗は入れたく有りません。 バランを外すと3.5MHzが整合しなくなりました。 また、垂直DPを使ったときのノイズが増えました。 ループアンテナの場合、ノイズはほとんど変わりません。 3.5MHzが整合しないのは、困りますので、垂直DPだけに効果がありそうな対策案を考える事にします。 MMANAとTLWでシュミレーションすると、バランが無い時の整合条件は7MHzと3.5MHzはNGと出るのですが、7MHzはかろうじて整合しますので、シュミレーションと実態は異なるのは理解できますが、それを加味しても3.5MHzはとても整合出来る条件では有りません。

Balun3

そこで、ノイズ対策を兼ねて、垂直ダイポールにだけ接続する強制バランを追加して見る事にしました。 今回作る強制バランはここで紹介している構造にしますが、パワーは最大200Wですので、フェライトコアはFT-140#43 2枚重ねとし、使用するワイヤーはAWG24の平行線を使います。

左がその完成状態で、ワイヤーをコアに密着させる為に、外周はロックタイで締め上げ、引き出された各端末は、ばらけないようにロックタイで結束しました。

完成した状態で測定したSWRは以下のようになりました。

Newbalun1

このバランを使用する最高周波数は10MHzですからSWRは問題ないでしょう。

Antbbalun

上の写真が強制バランを実装した状態です。 同時に、リレーで付けたり外したりしていたコイルとコンデンサはHOT側のみとし、GND側は常時ショートする事にしました。 垂直DPは3.5MHzから10MHzまでSWR1.5以下に整合するようになりました。 しかし、3.5MHzで10W出すと、マイコンがハングアップします。 7MHzや10MHzでは100WのCW送信でも問題有りませんが、3.5MHzのみNGです。 2日間、色々検討しましたが、対策の決め手が見つからず、7MHz垂直ダイポールに3.5MHzを乗せるのは諦め、3.5MHzのDX用アンテナは、垂直DPの上側エレメントのみ共用した垂直アンテナを別途用意する事にしました。 この別途追加予定のアンテナはATUを使わず、MTUで整合させます。 この為、垂直DPの上部エレメントをATUから切り離す為にANT-D用のリレーを追加し、専用の端子だけ用意し、後日検討する事にしました。 下は、このANT-D用のリレーを追加したATU内部です、

Antd_add

 

Slowper160

1.8MHzのアンテナ用として、アンテナ端子Cを設けておりましたが、ここに接続する160m用のアンテナは、家の鉄骨をタワーに見立てた、スローパーとする事にしました。 スローパーは以前実験した事が有り、国内の近距離ならOKでしたが、2エリア以遠との交信は不可能でした。 前回は給電点の高さが8mでしたが、今回は11mにします。 ただし、打ち上げ角はほとんど下がらず、かつ若干の指向性を持つようですから、国内専用となりそうです。 一方、7MHzの垂直ダイポールは30m、40mと80mバンド用として使いますが、その打ち上げ角の問題から、国内用としては、かなり性能が落ちますので、この160m用スローパーを3.5MHzは国内用に使えるようにしますが、7MHzはまだ無理かも知れません。 その為、スローパーのワイヤー長はシュミレーションで決めた42mとし、80mと40mは、スローパー用と垂直ダイポール用に二組のプリセットメモリーを確保し、同じ周波数でも、2種類のアンテナを使い分ける事が出来るようにします。 次の休日にアンテナを張ろうと 160m用のワイヤーだけ、ATUにネジ止めし、ベランダに置いたままですが、次から次へと出てくる問題点の為、なかなか手が付けられません。

垂直ダイポールに3.5MHzを載せられない事が判った時点で、やっと160mのアンテナの実験に取り掛かれました。 42mのワイヤーを張ろうと意気込みましたが、池の周りの雑木に阻まれ、結局張れた全長は39mでした。 このワイヤーに1.825MHzを整合させようとすると、出力2Wでマイコンがハングアップします。 机上で、160m用スローパーの定数をコンデンサと抵抗でシュミレーションする場合、100W送信でも問題ないのに、ATUを11mの高さまで上げると、たった2Wでハングアップしてしまうものです。 

広島県も梅雨に入った模様で、連日雨が続いており、先週の日曜日に上げたATUを降ろせない日が続いていますが、ローバンドでマイコンがハングアップする原因がかすかに見えてきました。 机上でOKなのに屋外でNGになるのは、長い25mのコントロールケーブルが原因かも知れません。 TUNEスタートとRESETのSWはKT-100のオリジナル通り、割り込みで処理し、このI/Oに高周波が回り込まないようにフェライトビーズをシリーズに挿入しています。 しかし、チップタイプのビーズのインピーダンスは100MHzで470Ωの物を使っていますが、7MHzで120Ωあっても、3.5MHzや1.8MHzでは7MHzの半分、もしくは1/4しかありません。 ここに気づてKT-100の回路を見直すと、このビーズの位置には100uHのコイルが挿入されていました。 1.8MHzの場合、100uHのインピーダンスは1KΩを超えます。 ビーズのインピーダンス不足なら、TUNRやRESETキーに限らず、シリアル通信ラインやLEDラインも該当する事になります。 このインピーダンスの差が今回のローバンドに於けるマイコンのハングアップの原因かも知れません。 ここまで判ったのですが、雨でATUを降ろせないという歯がゆい状態です。 雨が止むのを待つしかないです。

台風2号が近づこうとしていますが、一瞬の晴れ間を狙い、ATUを降ろし、コントローラーとATUを結ぶ、ライン上にチョークコイルを追加しました。 追加するチョークコイルは100uHでしたが、あいにく手持ちが有りません。やむなく20個くらい手持ちしていました1mHのコイルで代用する事にしました。

Sirial1mh

左はシリアル通信ラインの波形です。上が送信側の波形で下が受信側の波形です。 1mHのコイルを入れたにも関わらず、送信側より受信側の波形が綺麗になっています。 これで、1.8MHの送信信号がマイコンのi/oに直接加わらないように期待したいと思います。

回路を改造し、いざATUをマストに括り付けようとしても連日の雨です。 天気予報では、中国、四国地方に線状降水帯が出来ると警告されていましたが、幸い、予報が外れて、夕方つかの間の晴れ間が出来ましたので、改造済みのATUをマストに括り付け祈る気持ちで1.8MHzの整合テストをすると、なんとか1.8以下で整合でき、かつ100W CW送信でもマイコンがハングアップしなくなりました。  その日の晩に1.8MHzをワッチしましたが、CWもSSBも聞こえませんでした。 翌日、SSBで三重県とQSO出来ました。

垂直DPが3.5MHzで整合しない事に対する対策として、現在、下側のエレメントを地上高3mの位置で止めているのを、地上高1mまで伸ばしてみました。 すると、3.5MHzから3.8MHzまで全周波数で整合出来るようになりました。 この地上高を3mに留めたのは7MHzでの打ち上げ角が上昇するのを避ける目的でした。 改めて、最低地上高3mと1mの時の打ち上げ角を確認すると1mの方が1度ほど高くなります。 打ち合上げ角と3.5MHzの整合を天秤にかけると、3.5MHzが整合する方が良いですから、打ち上げ角の上昇は諦めました。

Skydoorwith160mslowper

ローバンドのアンテナの設定に難儀しましたが、21MHzでイタリア、フレンチギアナ、7MHzでウルグアイとSSBで交信出来ています。 また、18MHzで国内向けにSSBでCQをだしているとカリフォルニアのサンディエゴから呼ばれるというラッキーも有りました。 正規の高さに上げた状態に於いて21MHz CWでネパール,タイ、ドイツ、アイルランド、クロアチア、モロッコの西側大西洋上のポルトガル領マディラ島とQSOできました。

当初の予定では、160m用スローパーを80mのLWとして利用する計画でしたが、予定の42mを展開できなかった為、80mはほぼ1/2波長の長さになってしまい、整合出来ませんでした。 このバンドに整合するには、ワイヤー長39mは伸ばせませんので、短くカットするしかないのですが、当面は現状のままで、80m用国内向けアンテナは、時間をかけて再検討する事にします。 

 

ATU本体の配線図 NB-ATU_main5.pdfをダウンロード

コントローラーの配線図 NB-ATU_contoroller5.pdfをダウンロード

ATUソフト NB-ATU-main_6.cをダウンロード

コントローラーソフト NB-ATU-controller_6.cをダウンロード

ATUヘッダーファイル FREQ_Span5.hをダウンロード

コントローラーヘッダーファイル FREQ_Center5.hをダウンロード

未解決の問題点については次の記事で紹介します。
 

Indexに戻る

2023年4月25日 (火)

CWのブレークイン機能動作せず

<カテゴリー:TS-930S>

久しぶりの修理です。

2018年に旧スカイドアアンテナを降ろし、同時に、このTS-930Sでの交信も途絶え、自作無線機の実験以外、電源ONした事が無かったのですが、2023年の4月に、新スカイドアンテナを上げて、HF交信を楽しもうと、電源を入れ送信テストをすると、SSBはOKですが、CWの電波が出ません。 電波が出ないだけで無く、CWのモニタートーンも聞こえず、かつ受信の音も聞こえません。 再開するHF交信のメインはCWですので、修理するか、廃棄して、隣に鎮座するTS-850Sにメインの座を渡すかの選択となりました。

とりあえず、カバーを外し、操作SWの裏側が見えるようにして、スィッチの端子間の導通を確認する事にしました。

CWのモニタートーンが出ないのは、VOXとMONITOR SWの接触不良でした。 いずれも何度もON/OFFを繰り返すと、時々OKになったり、NGになったりでしたので、KURE印の接点復活剤を吹き付けてやりましたら、OK状態になりました。

次に、CWやTUNEの時、受信音が聞こえないという問題です。 詳しく調べると、NAR(ナロー)とWIDEの切り替えSWの接触不良です。 このSWの接点に接点復活剤を吹き付けるのは、ほとんど不可能なので、パネル面のSWをNAR方向に倒し、基板の裏側の、NARモード時、ONするSWの端子間をワイヤーでショートしてやりました。 WIDEで交信する事は全くないので、これで不都合は生じません。 ほかにPROC ON/OFFのSWも接触不良で、PROCがONになりません。 このSWもPROC ON状態にワイヤーでSWの端子をショートし、常にPROC ON状態としました。

次は、サービスマニュアルを片手に、送受信系統の再調整を行います。

周波数関係は最大で80Hzくらいのずれが有りましたので、これを+/-20Hz以内に調整しました。 また、コイルのコアをレベル最大にする指定のあるコイルは全て、最大付近に調整されており、問題なしでした。 受信感度も送信レベルも9年前にオーバーホールした時から、ほとんど変わっていなく、特に受信感度は、追加したプリアンプの為、常時20dBくらいのATTをONしておきたいくらいでした。

約2時間で、SW不良対策とオーバーホールが完了し、CWの送受信も問題なくできる状態になりましたので、まだ当分はメインの座に留まる事ができそうです。

TS-930が正常になりましたので、新マルチバンドアンテナシステムの確認に戻ります。

Indexへ戻る

2023年4月23日 (日)

PIC18F25K42 IOC異常

PIC18F25K42のバグ情報です。

IOCによる割り込みにて、立下りでの割り込みを設定したとき、IOCIEの設定に関係なく、立下りで割り込みフラグがセットされるのは正常ですが、IOCIE=0でも割り込みが発生する。

立ち上がりでの割り込み設定の場合、異常なし。

対策は、立ち下がりによる割り込みを使わない事。 この割り込みの使用場所がロータリーエンコーダーによるアップ・ダウンの検出ですので、どっちでもソフト対応できました。

平行して、ソフト開発をしているPIC18F47K42は、異常なしです。

確認したXC8のバージョン:V2.40  PIC18F-K_DFP 1.8.249

 

Indexへ戻る

2023年4月16日 (日)

アンテナ建設

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU ループアンテナ 

ATUがほぼ完成したので、アンテナを実際に建てる事にします。 

まずは、ベランダから撤去したローテーターの設置です。 ローテーター台は、板厚4cmの2x4(ツーバイフォー)材に防腐処理をしてありましたので、15年経っても、大きな損傷が無く、そのまま使う事にしました。 ベランダの床は排水の為に、傾斜して作られており、前回は、ローテーターを垂直に取り付けるのに大変苦労しましたので、今回は、M8のボルトを板に差し込み、このボルトを回転させ、水準器を使いながら、垂直を出す事にしました。

Rtr01

木製の板に穴を開けただけでは、ねじ山がすぐにつぶれてしまいますので、板の下の面にM8の鬼目ナットを埋め込み、これにM8のボルトを通して、傾きの調整が出来るようにしました。 ボルトが床面と接する所に、厚さ2mmのアルミ板を敷き、床が傷つくのを防止しています。

Rtr02

上は、水準器を使い、板の水平度を見ているところで、水準器を90度振ってみて、いずれも水平が確認できるように左奥のボルトを固定しておき、残り3本のボルトの高さを調整し、約15分で調整完了しました。 右側にストッパーの木片をねじ止めしたのですが、ローテーターを回転させると、ローテーターの凸部が壁に当たります。この木製の台は右側に寄せないとダメみたいで、木片は左側に移しました。 

Rtr0_comp1

後は、実際にマストを取り付け、傾きが無いかを確認したら完了です。

  

 風の強い日でしたが、天気は晴れでしたので、ナロースカイドアアンテナと7MHz垂直ダイポールアンテナをアップしました。

Nbantrotor

Bnbatucomp

ローテーターをベランダ床に動かないように固定し、ベランダの手すりの位置に首振り防止の支持材を取り付けて、マストを自立させ、ベランダ床から約3mの高さまでステーベアリングを上げ、固定しました。 本来のステーベアリングの位置は4mまで上げる必要がありますが、マストの継ぎ目の回転ストッパーが手配漏れで、かつ風も強いので、この日は、この高さです。

Nbantcomp

左が、回転半径50cmのスカイドアと垂直dpの完成状態です。 DPの最上部の地上高は19.5mとなります。

アンテナの水平面指向性が8の字ですので、ローテーターの回転角度は180度あれば良く、その範囲でケーブルやステーが絡まないように配置すれば良いのですが、どうせ、これから何回も、ATU-BOXを下ろさねばならなくなるはずですので、それまでは、この仮状態で、ATUの機能確認とデバッグを行います。

従来の7MHz用垂直DPは地上高8m付近で給電していましたので、上部エレメントがλ/4より長い状態でしたが、今回のアンテナでは、上部エレメントの長さが、8.5mとなり、オフセット給電の位置が上下逆転しますが、ATUでごまかしますので、大きな特性の差は無いと予想しています。

相変わらず、昼間のコンディションは7MHzも14,18,21MHzも良くないですね。 21MHzではVKが59+で入感していましたが、国内を含めて、さっぱりでした。 唯一まともに信号が入感していたのは国内の10MHzだけで、まだ当分はノイズだらけの状態が続くのでしょうか?

後日判った事ですが、この日(2023年4月23日)は4月24日まで続く磁気嵐の最初の日だったそうです。

アンテナが5月連休の1週間前に、曲がりなりにも、ON AIR出来る体制が整いましたので、今度は、5年近く使っていなかった、HF用運用グッズの確認です。

Rotatorlamp

まずは、ローテーターコントローラーの照明ランプが切れていましたので、これの修理です。 ランプをLED照明に変更します。 3φの白色LED 2個を直列に接続し、11mA流しました。写真のごとく、光り輝いています。 

夕方、21MHzをワッチすると、インドネシアからのCQがSSBとCWで聞こえます。 SSBは57くらい、CWも579くらいです。 久しぶりに、CWでQSOにトライしようとしましたが、CW送信が出来ません。 CWのモニタートーンも聞こえません。 スピーカーに耳を近づけると、歪んだ音でかすかにキーイングのトーンが聞こえますが、ブレークインが機能しません。 送信モードでキーインするとちゃんと電波は出ますので、VOXとブレークイン機能が動作しないようです。

かくして、5年ぶりにCW送信しようとしたTS-930Sのオーバーホールが必要で有る事が判りました。 5月連休はCWでDXingが楽しめるかも知れないと、アンテナ設営を1週間前倒ししたのに、当てが開ずれました。

TS-930Sのオーバーホールは、こちらです。

 

7MHzや1.8MHzの水平系のアンテナは、本命のスカイドアと垂直DPが落ち着いたら、考える事にします。 

 

次は、実際のアンテナを使い、ATUの動作テストです。

 



 

INDEXに戻る

2023年4月 5日 (水)

屋外設置用ATUの組み立て

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU 自作 ループアンテナ 

ATU本体はなんとか完成しましたので、これを屋外に設置する為に、防水加工したBOXに収納し、アンテナマストに括り付けられるようにします。

防水BOXの加工を始める前に、強制バランの作成です。このバランはATUとアンテナの間に挿入する為、インピーダンスは50Ω標準にはならないのですが、まともに不平衡ー平衡変換ができているかを簡単に調べる為に、50Ω/50Ωのバランとして作り、後は、その時のアンテナのインピーダンスに任せるという事にします。 ステップダウンの目標インピーダンスを22Ωにしたのは、過去実際に作ったアンテナで実測値が10Ω以下になった事はなく、平均的に15~35Ωで、1.8MHz用でも、最低12Ω、平均25Ωだった事によります。 この値は、シュミレーションと、実態は異なるみたいです。

強制バランは、FT-140 #43のコアを使い。負荷抵抗が50Ωと22Ωを切り替えられるようにしたい為、以前インピーダンスステップダウンの検討をした4層並列接続のUN-UNをベースにUN-BLNを作成する事にしました。 今回はAWG26のビニール電線が手元になく、やむなく、LANケーブルの中に有るAWG24の電線を使ったのですが、線が固くコアに密着しません。 結果的に1:1のバランでも7MHzでSWR3を超えてしまい、うまくいきませんでした。 そこで、再現性がよさそうなバランの記事を見つけ、最初に1mmのUEWで製作しましたが、これも線がコアに密着せず、前述のAWG24ワイヤーと同じような結果となり失敗に終わりました。

そこで、最大パワーが少し落ちるかもしれませんが、0.6mmのUEWで作り直したところ、我慢できるレベルまで改善しましたので、最終的にこのバランで進行する事にします。

 

バランの接続は下のようになります。

Balan_schema

左下が巻線加工完了状態。ワイヤーの接続部分は半田が裸状態ですので、これとコアが接触した時の絶縁が心配でしたので、紙製のマスキングテープをコアに巻いた後、ワイヤーを巻いてあります。 紙を選んだのは、半田付け作業中に溶けてしまわないように配慮したものです。そして、右下のように丸いタッパーの中に収納し、後々、ワイヤーがばらけないようにしました。

Blan_0

Blan_1

この完成したバランをネットワークアナライザでSWRを測定してみました。 左下が、2:2の特性です。 青色のカーブが補正コンデンサなし、赤色が50MHzで補正コンデンサを挿入したものです。 ただし、補正コンデンサを入れても、50MHzで1.7程度までしか改善せず、逆に21MHzが2を超えてしまいます。 挿入する位置がATUとアンテナの間ですから、補正コンデンサなしにしておき、浮遊インダクタンス分はATUで補正した方がよさそうです。 右下のグラフは、3:2のステップダウンバランですが、補正コンデンサなしの状態です。 以前の検討で、ステップダウンのトランスだけでも難しいところで、バラン形式の場合、もっと難しいようです。 使うアンテナのインピーダンスが28MHzで20数オームですから、28MHzまでステップダウンバランを使いたいのですが、 SWR3.5くらいを示しています。 このステップダウンバランが実際に使えるものかは、アンテナ建設が完了してから判断します。

Blan11

Blan32

1:1であろうが、ステップダウンであろうが、うまくいかない時は、以前、プリセットMTUで使った、ソーターバランに変更しますが、このバーアンテナ3本を束にしたソーターバランは結構大きく、実装が難しい為、まずは強制バランでトライするものです。

 

これらの部品を収納する為に防水BOXを手配しました。 内外電気のプラボックスという商品で、品番がPNB283013XL 外形が301x280x130です。 それにステンレスの外部端子や、リレーを取り付け、最終的にはマストに括り付けますが、今回は、全機能部品を内蔵させ、机上でのシュミレーションを行うところまで実行します。

Nbatucomp1

Nbatucomp3

手配したBOXは防水等級が有りませんが、従来のコンテナBOXも防水等級の設定は無く、10年以上問題無く動作しましたので、多分問題ないと判断しました。

この組み立て状態で実働テストをすると、2Wくらいの通過電力でマイコンが誤動作します。箱入れする前は60WまではOKだったのにと焦ります。 原因はBOXの中に追加した5個のリレーのラインを通って、マイコンに高周波が流入しているもので、このリレー用のコネクタを外して、シールドBOXの外に置くと、問題有りません。 対策は、フェライトビーズとコンデンサによるフィルターと、コモンモード対策としてのシールドBOX内へのコモンモード対策コネクターを設ける事とリレーワイヤーへ、フェライトコアの追加です。 左下が、シールドしたマイコンBOXの周辺のフェライトコアで、右下がマイコンBOXの中のアクセスコネクター追加状態です。写真では良く見えませんが、フェライトビーズの後に接続されるコンデンサはBOXのシャーシに直接落とす事により、アクセスコネクタとして動作します。 この状態で連続出力60W、SSBで100Wpep出力でも誤動作は有りませんでした。

Nbatu04

Nbatu03

一応この状態で、1.8MHzから24MHzまで10,25,50,100,500Ωのダミー抵抗にSWR1.5以下で整合しています。 28MHzは10Ωだけはどうしても整合出来ず、25,50,100,500ΩがSWR1.5以下に整合しました。 50MHzは10Ωから500Ωまで一応は整合出来るのですが、ATUの通過損失が極端に大きくなります。 この原因は、ATUのLやCが大きい場合、負荷の状態に関係なく、整合する定数を選んでしまう事のようです。 この状態に陥らない為に、27MHz以上は周波数帯ごとに、最大LとCを制限し、LCの可変ステップを通常の8倍から、4倍、2倍と変更する事にしました。

実際のアンテナは抵抗以外にリアクタンスが含まれますので、整合しやすい時もあれば、しにくい場合もあります。 その場合、バランや追加のコイルやコンデンサを見直す事にします。

 

このAUTを作る上で、今回、送信せずとも、指定した周波数のプリセット条件を呼び出す機能を追加しましたが、その動作仕様の詳細は、以下のようにしました。 

・一度も整合動作をした事の無いバンドの場合、プリセットコール要求をOFFにして、キャリアを出力し、チューニング開始させます。

・すでに整合済みか、整合済みかが不明な周波数だが、少なくとも1回は整合した事のあるバンドの場合、プリセットコール要求をON(白色LED点灯)にして、キャリアを出さずに、コントローラーから周波数のみ指定します。 

・もし、整合済みの周波数なら、青LEDが点灯し、いきなり送信可能となります。 この送信がSSBの場合でも、SWRは表示されますが、FWDとREVの電圧検出に時間のずれがある為、正確な表示にはなりません。 

・青LEDが点灯しない場合、ATUは一度整合した周波数のデータを読み出し、リレーの設定だけは済ませておりますので、キャリアを出して、チューニング開始します。チューニング中は約0.3秒間隔で緑色のLEDが点滅し、現在のSWRを表示します。 

・SWRが6以下になったら、SWRを連続して表示し、SWR1.15以下で停止します。 もし、1.15が不可の場合、1.5以下で停止します。 さらに不可の場合、1.8以下で停止しますが、今までの実験では1.5以下に収まっています。 

・SWRのディップポイントを探し始めるのは、SWR6以下になった時からで、SWR6以下を見つけたらかなりの頻度で、1.5以下まで収束します。 SWR1.8 以下に整合出来なかった場合、SWR1.8以上を表示したまま、整合成功の青色LEDが点灯せずに停止しますが、この状態で、インピーダンス変換トランスの切り替えや、インダクターやキャパシターの設定を変更して、再度TUNEを開始すると、SWR1.8以下に整合出来る事があります。 今までのテストでも、この方法でSWR1.5以下に出来ました。 また、SWR1.5から1.8以上の状態でも、再度TUNE動作をすると、SWR1.15以下になる事もあります。

25mのコントロール用ケーブルを使った実験も行いました、特に異常は有りませんでした。

このコントローラーのTUNEスィッチのチャタリングと思われる現象で、TUNE開始のプッシュSWの感触に問題が付きまとっていました。 とにかく、プッシュ操作にATUの動作が思うように追従しないのです。 ずうっとチャタリング対策のみを追求してきましたが、思うように改善しません。 インターネットでチャタリング対策を見つけては改善し、もうこれ以上対策のしようが無いところまで実施しましたが、かなり改善はしたものの、10回の操作で3回は無視されるという状況でした。 デジタルオシロをマイコンの入力端子に接続して、波形をモニターしても、正常な時と異常時の波形の差異が判りませんでした。 2週間くらい悩んだ末、思い出したのが、タクトSWによる、i/oのラッチアップです。 そのように意識してデジタルオシロの画面を見ると、約0.5Vくらいですが、プッシュONの時、入力端子の電圧が一瞬マイナスに振れます。 よおく観察すると、このマイナス電圧が0.5Vから0.6Vくらいマイナス方向にバラツキ、マイナス0.6V付近になった時、誤動作を起こす事がわかりました。 ここまで判ると、対策は簡単です。プッシュSWは現在ゼロΩでGNDへ落ちるようになっていましたが、このゼロΩを220Ωにしたところ、誤動作は完全になくなりました。 

コントローラー側にも沢山のプッシュSWがありますが、こちらは、全てダイオードを介してGNDへ落すようになっているので、ダイオードの内部抵抗の為、問題にならなかったようです。

 

次は、実際にアンテナを建設し、評価を行いますが、アンテナが建つのは5月連休になりそうです。

MAINユニットの配線図 NB-ATU_nain2.pdfをダウンロード

コントローラーの配線図 NB-ATU_contoroller2.pdfをダウンロード

MAINユニットのマイコン NB-ATU-main_2.cをダウンロード

コントローラーのマイコン NB-ATU-controller_2.cをダウンロード

周波数リスト FREQ_Span.hをダウンロード

       FREQ_Center.hをダウンロード

Nbatuconttollorcmp

  

アンテナ建設へ続く

 

INDEXに戻る

2023年3月28日 (火)

改造ATUによる再検討

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU 自作 ループアンテナ 

通過電力が10Wを超えると、マイコンが暴走すると言う初歩的な問題点の発生により、回路構成を再検討せざるをえなくなった、新ATUの改造方針を決め、新たにICを手配して、改造にかかりました。

新ATU本体回路図 NB-ATU_nain1.pdfをダウンロード

新コントローラー配線図 NB-ATU_contoroller1.pdfをダウンロード

大きな変更点は、ATU本体のマイコンを完全な別基板とし、高周波の回り込みの発生確率を下げることです。 その為、まず、リレーの駆動の為のバッファーを設け、マイコンのI/Oが直接リレーを駆動しないようにした事。 SWRを検出する為のAD入力に利得帯域幅積が300KHzしかないOP-AMPを追加し、送信周波数の高周波が直接AD入力に混入しないようにした事。 さらに、5Vの電源をATU側とマイコン側で完全に分離した事です。

Nbatumain1

Nbatucont1


上の画像は、KT-100のマイコンコネクター部分に、リレー駆動バッファーICとSWR検出信号用のバッファーOP-AMPとこれらのi/oをマイコンと接続する為のコネクターのみを実装したところと、マイコン基板を金属のシールドBOXに収納した状態です。 ただし、まだ配線は行われておりません。

これだけでは、空中を飛んでくる高周波電界による妨害は同じですので、シールドを検討する事にします。

Nbatu01

マイコン部分は、まだOPEN状態ですが、ATU本体の基板をKT-100のオリジナルケースの底板部分に固定したのが、上の画像です。 ダミー抵抗50Ωの状態で、1.8MHzから28MHZまでTS-930Sが連続キャリア送信できる60Wにて、マイコンの暴走は起こらない事を確認できました。 これから、アンテナマストに括り付けられる防水BOXに収納する条件を検討し、最終的には200Wpepの通貨電力に耐えられるようにします。

Nbatu_cont_main

やっと、ATUとコントローラーが完成しました。 耐通過電力やその他の使い勝手については、実際にアンテナを接続してやる必要がありますので、それまでに、防水BOXに収納する手立てを検討する事にします。

ATU本体  NB-ATU-main_1.cをダウンロード

ATUコントローラー  NB-ATU-controller_1.cをダウンロード

 

 

屋外設置用ATUの組み立て へ続く 

 

INDEXに戻る

2023年3月14日 (火)

新アンテナの構想

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU ループアンテナ 電波防護指針> 

2008年に作り始めた、最初のマルチバンドアンテナシステムは、コンディションの低下や、再就職で、時間がとりにくくなった事も有り、2018年には、メインのエレメントであるスカイドア用ループを降ろし、そして、家のメンテの為、2023年1月には、全アンテナを撤去してしまいました。

家のメンテが終了し、3月末までには、それまで家を囲っていた足場も撤去されますので、新しい、アンテナシステムを構築する為の構想作りを始めました。

そのメインとなるのは、又、スカイドアアンテナです。 このループアンテナは、簡単な割に、過去良く飛んでくれまして、カリブやロングパスでアフリカの珍局をパイルに打ち勝ってゲットした事もあり、再度作るにしても、第一候補はスカイドアになります。 ただし、タワーや丈夫なマストが無く、ベランダに設置する条件としては、かなりの風圧を受け、台風シーズンになると、アンテナを降ろす必要がありました。 そこで、台風が直撃する場合はともかく、遠くをかすめる程度の場合、いちいちアンテナを降ろさなくてもすみそうなアンテナをMMANAを駆使して検討したところ、超ナロー幅、回転半径50cmのスカイドアに行きつきました。ゲインは従来のスカイドアとほぼ同等か少しアップ、打ち上げ角もほとんど同じである事が判りましたので、次のアンテナはこの新スカイドアと7MHz垂直ダイポールで構成する事にします。

Nbskydoor

左が、新スカイドアアンテナの基本図で、幅1m(回転半径50cm)、全ループ長は従来と同じ13.5mです。

Nbant_spec

そして、上の表は、14MHzから50MHzまでのアンテナインピーダンスと利得と打ち上げ角です。この表のデータはループの赤丸の給電点の高さを11mとした時のデータになります。 6mは国内専用になるかも知れませんが、良しとします。この表の中で出てくる利得の単位はdBi(絶対利得)であり、標準の水平ダイポールを地上高12mくらいに張った場合、ダイポールの絶対利得は約6dBiくらいになります。 従い、当スカイドアANTの利得は14MHzで-0.6dBくらい、24MHzで+4dB位いダイポールと差が有るという事になります。

15mpaturn

上のパターンは21MHzの水平、垂直パターンで過去のスカイドアと同じです。

ただし、一つだけ大きな欠点があります。

それは、帯域幅です。 とにかく狭い。

15mswrwidejpg

上のグラフは21MHzで整合した時のSWRカーブですが、SWR1.5の範囲は約49KHzしかありません。450KHzもあるこのバンドの1/10しかカバー出来ない事になってしまいます。

この解決策として、アンテナ給電部に直付けしたアンテナチューナーで強制整合させ、バンド内をくまなく利用出来るようにプリセットMTUも作り替える事にしました。 ただし、MTUでは無く、プリセットATUにし、一度記憶した周波数帯のプリセットされた条件を電波を出す事無く呼び出す事が出来るATUに仕上げます。

ベースとなるATUは、以前改造してその後未使用になっていたLDGのKT-100です。 このLDGのATUに限らず、リレー式のATUはMTUと異なり、LとCのきざみがstep状に変化しますので、最適整合状態でもSWRが1.5以下にならない事がかなり頻繁に起こります。 そこで、小リアクタンスを持つコイルとコンデンサをアンテナに直列に挿入し、これをリレーでショートしたり解放したりできるようにし、どの周波数でもSWR1,5以下を実現出来るようにします。 また、アンテナのインピーダンスもかなり低くなりましたので、50Ωと、22Ωを切り替えられるようなバランを兼ねたトランスを設ける事にします。

Vdp2023_2

一方、10MHz以下のバンド用として、左の図に示す垂直ダイポールを、スカイドアンテナのマストを兼用して設置し、10MHzから3.5MHzまでをカバーさせます。下側のエレメントが斜めになっているのは、マストのステーを兼用している為です。

Vdp2023data_2

垂直系のアンテナのゲインは、水平系と直接比較出来ませんが、標準的なフルサイズ垂直ダイポールのゲインが、約2.1dBiですから、エレメント長が短い分、ゲインは下がりますが、地上高が低くても、打ち上げ角を低くできるというメリットが有り、下側のエレメント長は、さらに2mくらいは長く出来るところを、この長さに留めています。(最終的に、3.5MHzで整合が取れないという事から、下側のエレメント長は10.5mに変更されました。)

このアンテナの7MHzに於ける放射パターンはMMANAのシュミレーションにて以下のようになります。

Vdp2023oatern

それらの構想を盛り込んだ配線図は以下です。

ATU本体配線図 NB-ATU_nain.pdfをダウンロード

コントローラー配線図 NB-ATU_contoroller.pdfをダウンロード

これらのコントロール用として、マイコンをつかいますが、ATU本体は、PIC18F47K42という8bitタイプで、12bitのADコンバーターと1024バイトのEEPROMを持つマイコンを使います。 また、コントローラー側は、PIC18F25K42というEEPROMが256バイト品を使います。

従来のプリセットMTUのコントローラーは、2バイトのデータを1200ボーのスピードで20mのケーブルを使い通信していましたが、この新ATUでは5バイトのデータを最低2400ボーで25mのケーブル長を使い通信出来るようにします。

まずは、この二つのマイコンのソフト開発から開始します。

ATUが一度整合状態になった周波数の条件は、ATUのマイコンのEEPROMに記憶されますが、周波数をアンテナのSWRが1.5以内になるバンド幅で区切り、1.8MHzから52MHzまでを152のバンドに分け(最終的には154まで増加)、そのバンド毎に整合条件を記憶させます。 これは、改造したKT-100の機能と同じですが、バンド数を拡大します。 一方、コントローラー側から、周波数データをマニュアルで送る機能を設け、周波数が指定されると、その周波数に相当する記憶されたバンドデータを呼び出し、ATUをプリセットさせます。 指定された周波数でのプリセットデータが無い場合、一番近いプリセット済みの周波数のデータを呼び出し(この機能は最終的に廃止し、有効なプリセットデータが無い旨をコントローラーへ返す仕様に変更)、送信してATUを整合させる事を促します。これらの機能により、一度整合させた事のある周波数帯の場合、送信しなくても、ATUをプリセット出来るようになり、ちょっと、他のバンドを聞いてみたい時など便利になります。 この周波数を指定する操作はコントローラーのつまみで行いますが、最新のリグの場合、受信周波数をUSB経由で出力する機能が有り、受信機を操作するだけでATUをプリセット出来るようにする事もできますが、ほとんどのリグが、一度コントローラーからリグに受信周波数を問い合わせしないと、受信周波数は返してくれません。 従い、コントローラーから周波数を問い合わせするアクションが必要になります。 私のリグはTS-930Sですから、この機能は使えませんので、送受信周波数の指定はコントローラーから手動によるアクションのみとしました。 

このプリセットATUの機能は以下のような案で進めます。

・アンテナは14MHz以上のスカイドアループと、10MHz以下3.5MHzまでの7Mhz用垂直ダイポールに加え、後1本、1.8MHzを含む任意のワイヤーアンテナを接続出来るようにリレーで切り替えます。

・プリセット周波数の指定はバンド切り替えツマミと周波数切り替えツマミを独立させ、各バンド毎にラスト周波数を記憶し、バンドを切り替えた時は最初にこのラスト周波数をATUに送ります。

・周波数によって、SWRが1.5以下に下がらない場合、リアクタンスを微調する機能を設けます。

・コントローラーが指定した周波数と実際の送信周波数をずらしたままでも送信出来るようにします。 これは雨や雪で当初の整合状態がずれた場合でも、再度整合を取り直す事無く、SWRの低い条件をプリセットデータから選択する機能です。 送信状態で、プリセット周波数を変化させると、その時のSWRをコントローラーでモニターする事が出来ます。

Nbatucontorpoller_4

Nbmainunit

上がコントローラーで左が、KT-100のマイコンソケットにコネクターを挿し、新たなマイコンを追加した状態です。

 

とりあえず、基本動作が出来るようになりましたので、そのソフトを公開します。 ただし、デバッグは完了していませんので、バグはいっぱい含まれています。

NB-ATU-main_0.cをダウンロード

FREQ_Span.hをダウンロード

NB-ATU-controller_0.cをダウンロード

FREQ_Center.hをダウンロード

 

25Ωと100Ωの抵抗を使い、実働テストを行うと、21MHzで通過電力が10Wを超える時、ATU側のマイコンが暴走します。21MHz以外は20WくらいまではOKですが、20Wを超えると同様に暴走します。 オリジナルのKT-100には、それなりの対策が施されているのですが、今回、オリジナルのマイコンソケットに中継用のコネクターを挿し、別の基板を継ぎ足す構造にしたことから、配線が長くなり、通過させる高周波がまともにマイコンへ流入しているのが原因です。

小手先のいくつかの対策を実施しましたが、全く効果がなく、基板構造を全面的に再検討する必要が生じました。 以前製作したバリコン式ATUは全バンド100Wpep通過でも問題ありませんでしたので、その時のノウハウを再検討します。 

 

改造ATUによる再検討 へ続く。

 

ワイヤーアンテナとATUを使った電波防護指針に基づく電界強度の計算例をこのカテゴリの最新記事に追記しました。 

INDEXに戻る

2023年2月11日 (土)

デジタル方式 AM送信機 (完成)

<カテゴリ AM送信機(デジタル方式) >

やっと完成しました。 前回までの記事はこちら

Rfdactxcomp

現在、HFのアンテナを全て撤去している状態で、再度アンテナを立ててON AIR出来るのは2023年の4月の予定です。

それまでは、ダミー抵抗でエージングする事にします。

下は、TSSへ提出予定のブロックダイヤグラムです。

Rfdac_amtx_blockjp

  

最終状態の配線図やソフトは以下です。

RFADC_AMTX_audio-10.pdfをダウンロード

RFADC_AMPx12-10.pdfをダウンロード

7MHz_Si5351_VFO-1.pdfをダウンロード

AMTX-Si5351-VFO_7MHz.cをダウンロード

AMTX-ADC-DAC_decorder_10.cをダウンロード

Font5.hをダウンロード

Font6.hをダウンロード

Font12.hをダウンロード

Font5G.hをダウンロード

 

  結局このAM送信機は、その後もTSSに申請することなく、お蔵入りになりました。

 

INDEXに戻る

2023年1月21日 (土)

デジタル方式 AM送信機 再構築

<カテゴリ AM送信機(デジタル方式) >

変調波形は、見るも無残な状態ですが、曲がりなりにもRFDAコンバーターが機能し、一応AM変調がかけられる状態になりましたので、これの完成度を上げていく事にします。

まず、変調をかけると発生する、パルス状のノイズですが、3-8エンコーダーをマイコンで行った事により、エンコーダーの処理タイミングが遅れてしまい、LSB側のbitとのタイミングがそろわず、プラス側やマイナス側にノイズを発生させているようです。 3-8エンコーダーの動作を故意に遅延させると、このパルスノイズの幅が広くなります。 かくして、マイコンによるエンコーダーは使用できない事が判りましたので、PICによる3-8エンコーダーをやめて、下の配線図のように、6,7,8bitの信号で直接1台、2台、4台のアンプをパラドライブする事にしました。

567bit_directdrive

Predisted15w

そして、その状態での変調波形が左になります。 かなり改善されましたが、まだパルスノイズが残っています。3-8エンコーダーなしで、MSB側の時間遅れはありませんが、よくよく観察すると、4台パラのアンプを同時にON/OFFする時の電源負荷に対するショックで負のパルスノイズを含むノイズが発生しているようです。 やはり、当初考えていた、3bitの数値により1台づつアンプを増減させるエンコーダーをリアルタイムで動作させる必要がありそうです。 このリアルタイムエンコーダーは74HC08と74HC32各1石があれば実現できますので、手持ちの無い74HC32を秋月に注文して、納品待ちとなりました。

一方、12台のアンプの品質が悪く、1台づつ完成品テストを行い、これをシャーシに組み込むと、動作しなくなるアンプが続出しました。 12台の内、1台がNGとなったので、それを取り外しますが、外す時、邪魔になる関係ないアンプのコネクターも抜く事があります。 修理して、取り付け完了すると、今度は別のアンプが壊れており、また、修理するという繰り返しが3日間くらい続きました。 原因は、チップ部品のクラックです。 1608のセラミックコンデンサはルーペで見ても異常は判らないのですが、症状から怪しそうなチップコンデンサにパラに別のコンデンサを付けてやると直りますので、クラックしているのが判ります。 3216タイプの大型チップ抵抗も真っ二つに割れています。 これらの原因は、コネクターを挿入する時に基板がたわみ、そのたわみに耐え切れず、チップ部品がクラックする事が判りました。 今回、製作した基板は公称1mm厚のガラエポ基板でしたが、ノギスで測ると0.9mmくらいしか有りません。この基板の薄さが最大の原因のようです。 そして、抵抗がクラックするのは、抵抗が基板に密着せず、橋のように浮いた状態で半田付けされている事、チップコンデンサは、のきなみノーブランド品が特に弱いようです。 この修理が頻繁に起こり出してから、交換するコンデンサを全部、村田S/S製にしたら、やっとこの問題が落ち着きました。 今後、チップ部品を多用する基板は1.6mm厚に限る事にします。

送信状態からSEND SWを Stand-by にしても、消費電流が2Aを切りません。 電源ONした直後の消費電流は0.3Aくらいですので、元に戻らない事になります。 そして、ひとつの基板から、煙が上がります。 焼けているのは、ドライバーのFETです。 中には、表面に穴が開いているのも有ります。 原因は、Stand-by になったら7MHzのキャリアをOFFにする回路が動作したりしなかったりして、ドライバーに異常信号を供給しているものでした。 対策として、この付近のハンダ付けを全部やり直したら直りました。この問題の為、BS170や2N7000のFET約30石が壊れました。

今回の新しいパワーアンプは、計算上は、8bit DACの出力が255のとき84Wくらい出る事になっていますが、45Wしか出ません。 その原因はこれから、解析しますが、犯人は、電源ラインのフィルターや7MHzのBPFなどが考えられます。 これらも改善課題となりました。 とりあえず、今は無変調時のキャリア出力を12Wまで落とし実験を続ける事にします。

プリディストーション機能がうまく働きません。  前述のパルスノイズが残る変調波形は、一応プリディストーションを掛けたものですが、プリディストーションを掛けないときより、波形が歪んでいます。 これも改善課題です。

  

最大出力が45Wしかない原因が判りました。 出力レベルで電力合成トランスの残留リアクタンスが変化するようです。 初期のころは、アンプが破壊するのを恐れて、DACのデータが127くらいの時、出力最大になるようにリアクタンスキャンセル回路のバリコンを調整していましたが、これを255レベルのとき最大出力になるように調整すると、60Wまで出ることが判りました。 この時の単体アンプの平均出力は12Wくらいで7台がロス無しで合成された場合、最大84Wくらいになりますが、終段のBPFで約7%、電源ラインのフィルターで約9%ロスが有りました。しかし、計算上は71Wくらいは出る事になりますが、実態は60Wですので、この差が電力合成トランス内でのロスだろうと考えられます。 出力配分の小さなアンプは出力配分の大きなアンプから見たら負荷と同じように働き、トランスを経由して、小さい出力のパワーアンプ側へ逆流していますので、これがロスとなるようです。

Predisted10w

自動キャリブレーションのソフトバグを修正し、最大出力が60W出る状態でプリディストーションの校正を行います。 まず、テストモードにして、DACの出力値が128になるようにしておき、その時のRF出力レベルによりADC値が128付近になるようにVR8を調整しておきます。 次に自動キャリブレーションモードにして、結果がOKになるのを待ちます。 左は、このプリディストーションをかけた状態での630Hzで変調した波形になります。無変調時のキャリア出力はVR1を調整して15Wにして有ります。

正弦波の歪がかなり改善しました。 ただし、パルス状のノイズはまだ残っています。 この状態で実際に音楽を変調し、TS-850でモニターすると、音楽自身にはほとんど歪感は有りませんが、パルス状のノイズがザラザラと言った感じで耳に付きます。

次は、このノイズの対策です。

 

New38encoder

New38encoder_2

手配していた74HC32が到着しましたので、上の回路図の通り、改造しました。 しかし、聴感上のノイズは若干減少したものの、オシロ上では、ほとんど変化なしで、左の画像のように相変わらず出ております。

改造前より、波形的には、こちらの方が多いですが、聴感上は改造前より小さく聞こえます。 原因を調べて対策するのに時間がかかりそうです。  

 

 

Img_7773

左は、630Hzによる変調波形をデジタルオシロで見たもので、アナログオシロより、リアルに波形を表示しています。 白いラインは無変調時のキャリアラインで、DAC出力が約127に相当します。 一番大きなノイズはレベルから判定して、DACが64くらいで、レベルが上昇している時に出ている事になります。 レベル下降中は、大きなパルスノイズが有りません。 しかし、このデータをシュミレーションしようとして、同じようなDAC出力レベルで手動によるレベル変化をさせても、下降中はそれなりにノイズを確認できますが、上昇中はほとんどノイズらしきものは確認できません。 3-8エンコーダーで32と96と128のとき、ゲートを2回路通過するので、このDACデータのとき、一番遅延が大きいと思われますが、その遅延の大きさと、ノイズの大きさは相関がないようにも見れます。 

Wave_mod630hz_2

振幅立ち上がりの最中に出ているパルス性ノイズはアンプの特性かもしれないと考え、該当する6番目のアンプと5番目のアンプを入れ替えたのが左の波形です。 この推理は的中し、2番目のノイズ②の部分で前回のような大きなパルスは出ていなく、現れたノイズはDACデータ63-64間の切り替えノイズにほぼ等しくなりました。 但し、改造前にはあまり目立たなかった31-32切り替えノイズが①のように増えました。  波形で②のノイズが63-64の、③が223-224の切り替えノイズではないかと思われます。  ただ、なぜ5番と6番のアンプを入れ替えたら、ノイズが出なくなったのかは、不明なので、心配は残ります。

とりあえずは、3-8エンコーダーをふたつのゲートで実現している部分をひとつのゲートで行い、MSB側の遅延をそろえる。 もし、この対策でもダメならLSB側の5bitとMSB側の3bitのエンコード出力を完全に揃えることで、解決しそうです。

まずは、MSB側、2段のゲートを全Bit1段にしてみます。

38encoder8

Wave_mod630hz_3

上の配線図が3-8エンコーダーの中の2ゲートを1ゲートにした回路です。 今まで有ったゲートはADC/DACマイコンdsPIC33FJ32GP202のB8とB9のポートにその機能をもたせ、LSB側からMSB側の遅れは、ワンゲート分のみとしたものです。 2ゲート回路より若干の改善は見られますが、完全では有りません。 特に、低変調レベルの時、歪が目立ちます。

かくなる上は、LSBとMSBのタイミングを完全に揃えるしかないようです。 この方策として、またマイコンを使います。 8bit入力を12bit出力にエンコード出来るマイコンを使い、LSBもMSBも同時に遅らす事により時間差を無くします。 実装の関係で、DIP 28pin のマイコンを何種類か調査し、かつ、通販で入手できる品番として、モノタロウにてPIC24F32KA302というマイコンが見つかりましたので、これを発注したら、納期を確定出来ないので、受注をキャンセルするメールが届きました。 ほとんどの通販会社が在庫なしで、注文を受け付けない状態になっているところ、モノタロウだけが注文OKになっていたのですが、単純にホームページの更新忘れらしい。

他の方法を考える必要が出てきました。

MSBの5-7bitが1ゲート分遅れるなら、LSBの0-4bitも1ゲート分遅らせれば、なんとかなるのでは? 早速実験してみました。

この回路変更は、DACの出力をモニターする為に設けた74LCX245Dの出力から、0-4bitを取り出し、これを8-12エンオーダーへ渡し、今までノーゲートだった7bitラインにダミーの1ゲートを追加したもので、回路図は以下のようになりました。

Dacoutchange230203

312encoder230203

630hzpdon230203

630hzpdoff230203

左上がプリディストーションをON状態、右上がOFF状態です。波形はOFFの方がきれいですが、聴感上はどちらもあまり変わりません。 今までの波形より、かなり良くなりましたが、まだ小信号の変調のときノイズは有ります。 さらにか改善を行うには、8-12エンコーダーしかなく、アイデアを探す事にします。

気にしていました、スプリアスです。

Rfdactx50mspan

Rfdactx500kspan

左上が50MHzスパンです。第7次高調波まで見たものですが、ぎりぎりセーフでした。 右上は500KHzスパンです。ひと目盛が50KHzスパンとなります。 キャリアのすぐ隣に、帯域内ノイズ(リミット-40dB)がありますが、RFDAコンバーターのクロック周波数100KHzは全く出ていません。クロック周波数は100KHzに残ったままで、出力段のフィルターはLPFではダメでBPFが必要という事に納得。

3種類のゲートを使い、全12bitのタイミングを合わせるのは、無理があるのだろうと言うことから、現在使っているdsPICに接続しているラダータイプのDACを廃止し、かつ、クリスタルのOSCをマイコン内蔵のFRCに変えて、12bit全部がタイミングずれの無い回路に変更し、実験してみました。

Adcaudio10

Rfdac10

Rfdacpdoff230205

Rfdacpdon230205 

ラダーDACと水晶発振を廃止したら、dsPIC33FJのみで、8-12エンコーダーが実現できました。 そして、左上が、プリディストーションOFF、右上がONの時の波形となります。 レベルが32上がる都度出ていましたパルス状のノイズは少なくなりましたが、高レベルの時、アンプの出力差をプリディストーションでも吸収する事が出来ず、プリディストーションON/OFFで波形は変わりません。 ハードで詰められるのはここまでで、 ソフトでどの位い改善するかは、検討を継続し、改善が有ったら紹介する事にします。

 

自動キャリブレーションのソフトをいじっていましたら、出力を変更してから、その出力データを取り込むタイミングを速くすると、かなり正確に校正が出来ることに気が付きました。 そこで、今まで出力設定してからADCでデータを取り込み開始まで10mS待機していたのですが、それを0.5mSまで早くするとかなり正確な校正が出来るようです。 ただし、プリディストーションONよりOFFの方がパルスノイズは少なく見えますが、この変調波形をTS-850でモニターすると、どちらもあまり変わりません。 

Predistoff230207

Prediston230207

左上がプリディストーションOFF、右上がプリディストーションONです。 エンベロープに現れた、正弦波は右側が綺麗に見えます。

 

日を変えて、前回と同じプリディストーション状態で、変調波形を確認してみました。

Predistoff230210_2

Prediston230210_3

左上がプリディストーションON、右上がOFFです。どちらもあまり変わりません。 この波形を撮った時の室温は14度。 聴感上はONもOFFもほとんど変わらず、歪感がありましたが、室温が19度まで上がると、歪感がかなり少なくなり、音声だけなら、気にならない程となります。 結局、個々のアンプの性能を揃える事が難しく、室温も季節任せのハムの場合、全くメリットの無い変調方式で有る事を悟った次第です。 この送信機システムは半導体の性能限界に挑戦するような放送機なら、そのアンプ室の空調機器を入れてもペイするシステムでしょうが、無銭家にとっては、金食い虫以外なにものでもないと言う結論でこのプロジェクトを終了します。

 


メリットを見出しませんでしたが、例え数局でも良いから交信記録を残す為に、TSSに4000円も払って、自作機の認定を受け、総通で運用許可を取る事にします。



 

ここまでの最新全データを公開して置きます。

RFADC_AMTX_audio-10.pdfをダウンロード

RFADC_AMPx12-10.pdfをダウンロード

7MHz_Si5351_VFO-1.pdfをダウンロード

AMTX-Si5351-VFO_7MHz.cをダウンロード

AMTX-ADC-DAC_decorder_10.cをダウンロード

Font5.hをダウンロード

Font6.hをダウンロード

Font12.hをダウンロード

Font5G.hをダウンロード

 

デジタル方式 AM送信機 (完成)へ続く

  

INDEXに戻る

2022年12月15日 (木)

おかしなオシロ画面

Ociro_1

左の画像は私のオシロの画面です。 モードは単純なsweepで7MHzの若干歪んだ波形を見ているところです。

オシロスコープは基本的に、左から右へスィープします。 従って、描画は、左側から始まり右へ移動し、絶対に戻る事はありません。 この画像は、一度、右側に進んだ後、円弧を描くために、左側に戻っています。 基本的にはあり得ない描画です。 唯一、これが可能になるのは、CRTの輝点を左側に振る為に、スィープ信号に外乱が生じた時のみです。

この画像は、7MHzの送信機を送信状態にして、出力15W程度を、ダミーロードに消費させ、その出力端子の両端の電圧をオシロでモニターした時の波形です。

Ociro_2

正常な出力波形は左のような波形をしており、この状態は正常状態ですが、なんらかのひょうしに上のような渦巻状の波形になってしまうもので、再現は簡単なのですが、その原因が判りません。

考えられる事は、使用しているオシロスコープがアナログ式のCRT方式で、水平、垂直の電界による偏向板で制御されているため、なんらかの外部要因で、水平偏向回路に高周波が誘導し、水平スィープの電圧を揺さぶっているのだろうとは思いますが、その原因が判らないのです。 5W以上の送信状態の時しか出ず、出力が1W以下になると出ません。

また、CRTの管内に磁界が作用したら、昔のTVのCRTと同じで、CRT上の輝点は移動します。 オシロスコープのすぐ横に、海外製のオイルヒーターが有り、正常状態の波形をしている最中にオイルヒーターの電源をONすると、異常波形になります。 オイルヒーターと電磁界をインターネット検索すると、このような情報が有りました。 しかもオイルヒーターの操作スィッチ面がオシロ側に向いておりました。 ただし、このオイルヒーターの電源をOFFにしても異常波形は出続けています。 オイルヒーターも一つの原因ではありそうですが、これだけではなさそうです。

ああでもない! こうでもない! と悪戦苦闘する事、2週間。 やっとほんとうの原因が判りました。 RF出力のコネクター内部でGND線の断線でした。 50Ωのダミー抵抗を繋ぐと、高周波が電源のGNDとオシロのGNDを経由して帰ってくる為、オシロのGNDを通るとき。水平偏向回路を高周波でゆさぶり。画面が左側へゆさぶられるものでした。 コネクター内の断線箇所を接続したら直りました。

INDEXに戻る

2022年12月11日 (日)

デジタル方式 AM送信機 再設計

<カテゴリ AM送信機(デジタル方式) >  [Si5351A VFO]

デジタル方式 AM送信機の組み立てを行っている最中に送信周波数がずれるという問題が見つかり、またしても、PLL VFOは頓挫していましたので、PLL VFOをきっぱり諦めてSi5351によるDDSへ作り替える事にします。 SI5351のICは手元に在庫が有ったのですが、10pinの変換基板と25MHzのクリスタルが有りませんでしたので、これをやっと手配して、半日で、基板改造と、ソフト変更を行い、無事完成しました。

Amtx_newlcd

左が、DDS VFO化した時のLCD表示で、このショットはキャリブレーションモードの時です。

DDS VFOの配線図7MHz_Si5351_VFO.pdfをダウンロード

DDS VFOのソフト AMTX-Si5351-VFO_7MHz.cをダウンロード

Newrfamp_top

Newrfamp_bck

また、再設計を余儀なくされたRFパワーアンプも上の写真のように、ある程度見込みがつき、最大出力16Wくらいで、熱設計も目途が出てきましたので、データを取った後、全12台を作り替える事にします。

設計変更のメインは、CMOS ICによるゲートドライブの復活です。 CMOSゲートによるドライブは、2N7000クラスのCiss=20PくらいのFETに限られ、出力10W クラスのFETのCiss=400Pくらいのゲートをドライブする事は無理でした。 そこで、このCMOSゲートの出力で、BS170 プッシュプル回路をドライブし、その出力として、1W程度の正弦波に近い出力を得た後、これで、10W クラスのプッシュプルによる終段をドライブするという構想にしました。

結果はVY FBで、12Vの電源電圧で16Wが得られ、試作機では73%の効率でした。 また、BS170プッシュプルによるドライバーもFETを指でつまんでも問題ない程しか発熱しません。 ただし、データシートに書かれたPd max をオーバーしないように、安全の為、ドレインラインに4.7Ωの抵抗を入れました。 この状態で、終段の電源電圧を13.8Vまで上げると、出力は約21Wとなり、電源電圧対出力の関係のリニアリティは確保されており、ドライバーとしての余裕も確認出来ました。 実際の運用では、電源電圧は12Vとし、終段のFETのPdがオーバーしないようにします。

E級アンプを構成する為の、共振回路のコンデンサの値が、計算値と大きく異なる状態が継続していましたが、積層セラミックコンデンサ(MLCC)にDCバイアスを与えた時の容量ダウンが、当初考えていた数値よりかなり大きい事がわかりました。 MLCCの特徴について、詳しい解説がここにあります。 チップタイプのコンデンサはほぼ全てMLCCタイプですので、この問題は避けて通れない事になります。 従い、共振周波数を決めるコンデンサの両端には、DC電圧がかからないように回路変更を実施しました。 また、アキシャルやチップ部品で構成したインダクターのDC抵抗はかなりバラツキ、動作状態により、経時変化も大きい事から、DC直結の出力トランスはコアの磁気飽和が頻繁に発生し、FETを熱破壊する事も判りましたので、自作のUEWによるコイル以外の場合、トランスはDCカットする事にしました。

このAM送信機を組み上げて、パワーアンプの動作テストを行う時、RF出力のGNDをシャーシに接触させて置かないと、おかしなオシロの画面になるのですが、この原因が判るまで、2週間かかり、その間、回路構成まで疑う事になってしまい、ほとほと疲れました。

この問題で、電源フィルターのGNDを一部修正し、CNP12のピン番号が逆でしたのでこれも修正しました。 RFADC_AMTX_audio-1.pdfをダウンロード

この対策を行った後、取得したパワーアンプのデータは以下のようになりました。 当初、追加してあったドライバー段の電源ラインの4.7Ω抵抗は廃止してあります。

Newpowerampdata

終段の効率が80%を切っていますが、出力が大きくなった分、1石当たりのPdは許容値を超えているかも知れません。 またBS170プッシュプル回路のPdもギリギリ許容値なので、以後、この状態で検討を進めていきます。

7mhz_bpf_c

パワーアンプが1台完成したので、この1台のみを半完成状態の送信機に接続し、出力をチェックしました。 送信開始直後は16Wくらい有る出力が、どんどん減少し、約10秒後には5Wくらいになってしまいます。 原因を調べる為に、各ブロックの入出力をひとつづつショートしていくと、BPFの入出力を直結した時この現象が起こらなくなりました。 原因は、直列共振の為に使用したMLCCタイプの100Pでした。 これを40年以上前のDISCタイプの100Pに変更したら、あっさりと直ってしまいました。 最近は100Pの容量でもMLCCになっているので要注意ですね。 本来はシルバードマイカコンデンサでないとダメなのですが、フィルターのケースの中に納まりません。 実験に使ったセラミックコンデンサは公称50V耐圧で実力1000Vくらいありますので、これに交換し、様子をみます。

2023年1月

改良型のパワーアンプが12台完成しました。

Newampx12_schema

Newampx12b

Newampx12data_2

12台のアンプは、7195KHzにてドライブし、出力最大となるように、出力のパイ型LPFのコイル(L204)を微調整したものです。 12台中1台がコイルの巻き数が10ターンで、残りは全て11ターンにし、コイルのピッチを広げたり、狭めたりしました。 使った電源は実際に使用する回路を使い、測定した電源電圧はラインフィルターを通った後のRFパワーアンプの入力端子間のものです。  すこし、レギュレーションが悪いですが、後々問題になりそうでしたら、検討する事にし、それまではこのまま進行します。

12台のアンプのデータを取り、出力が小さい順に番号を付けました。 この番号が8bitのエンコーダーでLSB側から①、②、③・・・・とMSBまで配列されます。  ただ、心配ごとが。 ちょっとパワーが出すぎです。 Pdも許容値以上かも知れません。

Rfout1

Rfout2

また、出力波形の左側は、トロイダルコアによるトランスの1次側、右が2次側の波形で、極性が反転していますが。レベル差はほとんどありません。 前回NGだったのは出力回路を直列共振回路にしたのが原因であろうと予想し、今回は以前、電力合成が成功したLPF型にしました。

この12台の製作の途中で、秋月のBS170の在庫がなくなり、やむなく2N7000に一部変更しましたが、2N7000でドライバーを構成したアンプはいずれも18W以上を出力していますが、終段の効率は70%を切ってしまいました。

Mta100_tcvspd

左のグラフは、FET MTA100N10 のケース温度(Tc)対ドレイン損失(Pd)の関係をグラフにしたものです。 これによると、終段FETのケース温度が60度の時でも、Pdは21.6Wありますが、この数値は、放熱板の代わりに用意した、銅箔が均等に60度になった時で、厚さ25ミクロンの銅箔面を均等に暖める訳はなく、エージングで確認するしかないでしょう。

 

 

ここまでの、エンコーダー  + RFアンプユニットの回路図 RFADC_AMPx12-3.pdfをダウンロード

 

ここまで出来た所で、出来の良さそうな4台のアンプを使って、電力合成の確認を行いました。 結果は全くダメでした。 出力が足し算されません。 組み合わせによっては減算される事も発生します。 

Lpfphase_2


やはり、AMPの出力の位相が完全に揃っていないようです。 左のグラフは終段のLPFの減衰特性ですが、緑色の線は、コイルのインピーダンスと負荷抵抗50Ωの比をdBで表したもののようです。 7MHz付近にピークが有り、ここで、LCによる共振が発生し、きれいな減衰特性を得ていると思われますが、当然、この共振ポイントを境にして、その両側の位相は逆転します。 12台のアンプのLPFの特性がそろっていない事は前述していますが、共振周波数は管理されておりませんので、位相が真逆のAMPが出来て当然のようです。 前回、LCの共振回路が影響して、出力の合成がうまくいかなかったので、初期のころ、LPF付きAMPで電力合成の実験を行い、そこそこのデータが得られていましたので、今回もそれに合わせたのですが、前回はたまたま位相がそろっていた為だったのでしょう。

New2amplpfless

左の波形は、終段のLPFを廃止した時の出力波形です。 クロスオーバーぎみの波形ですが、E級アンプの共振コンデンサにDCがかからないようにした結果、ほぼ計算通りの容量で、きれいなドレイン波形を形成出来ており、トロイダルコアによるトランスを経由しても、歪の変化は有りません。

とりあえず、4台のみLPFを廃止したアンプを作り、そのデータを取ってみました。

New2ampdata_2

出力はかなり落ちましたが、効率が全て70%台となり、1石当たりのPdも安心できるレベルまで少なくなりました。 

この4台のアンプを下からBit1,2,3,4の順に並べ、合成トランスを50:12.5のインピーダンス比にして、電力合成のデータを取ってみました。

New2ampcombdata

4台のアンプをバイナリーで駆動していますので、データとしては15種類になります。 一番下のデータは4台のアンプを全て合成した時のデータになりますが、計算上では48Wくらいにならないとダメですから、かなりロスが生じている状態です。 ただし、実測データは理想の直線と合致はしていませんが、そこそこの数値を示しています。 仮にこの状態で、プリディストーションを行い、全部補正出来たとすると、各アンプの合成出力はLSB 1bit以内に補正出来る事を示しています。

この4台のデータから、なんとか目途が立ってきました。 12台全部の改造を行い、確認をする事にします。

New3ampx12

New3ampdata完成した12台のパワーアンプとそのデータです。 番号は、前回のナンバーをそのまま使いましたので、出力順には並んでいません。 LPFを廃止したら、全部ではありませんが、出力レベルの傾向が逆転した感じです。

確認を始めたところが、途中で、自作の電源が壊れ、12Vの電圧が38Vまで上昇し、電源用IC,DDS IC、LCDを壊してしまいました。 この事故の為、また、検討がストップする事を避ける為、電源の壊れた原因を突き止める上でも、破壊したICやLCDの交換を行い、中には、発熱で、銅箔パターンが2cmくらいの長さで焼失したりしましたが、なんとか正月休みと次に3連休を使い回復できました。

電源が壊れた原因は12V8Aの負荷に1分間以上耐える事が出来ず、シリーズ制御用のTRがコレクタ・エミッタ間ショートで、約38Vの電圧が12Vラインに加わった為と判りました。 この時のTR 2SA1943のコレクタ損は248W、3石構成ですから、1石当たり均等に流れると83Wの消費になり、ぎりぎりセーフの範疇ですが、3石のバランスが崩れ、特定の1石に損失が集中した結果、壊れたみたいです。 とりあえずはリニアアンプ用に用意したAC/DCコンバーターを使って検討し、時間が出来たら電源の修復を行う事にします。

電力合成を行う上で、各パワーアンプの出力端子での位相を確認してみました。

56phase

106phase

左上がNo.5とNo.6 の比較、右上が、No.10とNo.6の位相比較です。 垂直の赤い線は両方の波形のピークを直線で結んだもので、この線が傾いていれば位相差があると判断できますが、問題はないと言える状態になっていました。

Aftercomb4ch

左は、4つのアンプを合成した後の出力波形ですが、大きな歪はなく、実際の送信機では、この後に6次のBPFを通してアンテナに接続されます。 

①②③④の合成確認が終われば、次に③④⑤⑥の4台の確認を行い、以後2台ずつずらしながら最後の⑨⑩⑪⑫の組み合わせまで確認した結果、4台合計の最小出力は30W、最大出力は40Wとなり、最大出力時の全消費電流は7Aとなりました。 一応全ユニット合成が出来る事は確認できました。

単体での効率は70%台のアンプでしたが、4台合成時の概略効率は45%くらいまで落ちてしまいました。

放送局の設備でも真空管式より20%以上の効率とのことなので、半導体のPWM機より効率は悪いのでしょう。

つぎは、組み込みを行い、全12台の合成テストをトライします。

12台のアンプを実装完了し、8bitのデータを1から手動でアップしていきます。 電力合成トランスのインダクタンス分をキャンセルさせる為の直列共振回路がうまく動作しないので、コイルの巻き数を減らし、50Pの固定コンデンサと50Pのバリコンで調整出来る範囲に納めました。 テストモードで、ADのカウント値を上げて行き、63までは順調に増加して、64の時、出力がゼロになりました。 6bit目のラインが動作していないようです。 調査した結果、MSB側の3bit-7のデコーダーが動作していません。 原因はPIC16F84Aが死んでいました。 このマイコンに過電圧が加わり死んだみたいです。 部品箱をひっくり返して、同様なマイコンを探すと、PIC16F1827というマイコンが見つかりました。 18pinでI/Oもコンパチです。 早々、マイコンを差し替え、ソフトを改造して、やっと64カウント以上の確認が出来るようになりました。 127で25W、全電流が7A,128で25Wをわずかに超えますが全電流は5.8A。 出力が増加したのに、電流は減りました。 ふしぎな動作ですね。 効率が悪いのもうなづけます。 手動確認は結構時間がかかりますので、ここまで。 これ以上のカウントは実際に変調をかけて行います。

Mod21

Mod45

Mod88

上の波形は1KHzにて変調をかけたもので、見るも無残な波形をしております。 まだ、プリディストーションはかけていません。45%の波形までは、なんとかなるか。と考えますが、88%の変調は、ちょっと難儀しそうですね。 また、変調度に関係なく、周期的に発生しているパルスノイズも気になるところです。

 

Rfdac_amtx_comp




 

修理完了したデコーダーの回路図 RFADC_AMPx12-4.pdfをダウンロード

 
デジタル方式 AM送信機 再構築 へ続く
 

INDEXに戻る

2022年10月23日 (日)

デジタル方式 AM送信機 動作確認

<カテゴリ AM送信機(デジタル方式) >

デジタル方式AM送信機の配線が終わりましたので、いよいよ動作確認です。

まずは、オーディオ部分から。 マイクを繋ぎ、普通にしゃべってみて、変調度計のバーグラフの動きをチェックしました。 これが、さっぱりで、まともに動作しません。 

Meterdrive_c

ピークホールド機能をマイコンのソフトでやったのですが、このソフトの出来が悪く、思ったような動作をしません。 結局、左の回路図に示す通り、OP-AMPを追加する大幅改造になってしまいました。 ピークホールド機能は、ハードで構成し、マイコンは単純に出てきたDC信号をAD変換するだけにしたら、うまくいきました。

 

37decoder

電力合成回路のマイコンによるデコーダーの動作確認をしている時、間違って、RA1端子に12Vの電圧をかけてしまい、このI/Oが壊れました。 やむなく、今まで、RA0,RA1,RA2の3bitでデコードしていたものを、RA2,RA3,RA4の3bitへ変更し、PORTAを読み取った後、右へ2bitシフトして、解決しました。 12Vを間違って印加したのは、7pinのコネクタが二つあり、これを間違ってしまったもので、今後同じような事故が起こらないように、CNP13を7pinから6pinに変更しました。

 

3r3vreg

次に、RFパワーアンプへの信号接続と、電源供給をチェックです。信号系統は、一応設計通りデコードされた7MHzのキャリアが供給されるようになっていましたが、12Vの電源を接続すると、焦げ臭いにおいがして、煙がでます。 発煙箇所は3.3Vの安定化電源。 スペックを調べてみたら、最大入力電圧は6Vとの事で、ここに12Vを加えた為でした。 やむなく、3.3Vの3端子レギュレーターの前に5V1Aの3端子レギュレーターを追加して、対応しました。 すでに2石のICを壊していますので、手持ちのIC在庫が気になります。

10月の最後の日曜日。 電力合成回路がうまくいきません。 ステップ出力はなんとか理屈通りでるのですが、パワーが全然足りない。 消費電流が2A近くあるのに、0.1Wも出ない。

この原因を調べていましたら、RFパワーアンプの出力の歪が各アンプでまちまちで、合成したときうまくかさならないんか? 位相がバラバラなのか? そうこうしている内に、FETが死にます。 結局、真の原因は判らずじまいでした。

特定のパワーアンプが何回も煙を出して、FETが死んでしまう原因が判りました。 プッシュプルアンプの2石のFETを同時にONする、いわゆる、貫通現象が発生しているのが原因でした。 終段のゲートをクランプ回路で構成した事により、2石のFETが同時にONする可能性が大きくなり、その状態でドライバー段の出力波形がバイアス電流の調整の仕方で変った時、貫通電流が発生し、この原因を取り除かないまま、壊れたFETのみを交換する為、何度も煙を出して壊れるというのが真相でした。対策を検討する必要になるかも。

7195KHzで送信状態にして、受信機でこのキャリアを受信しようとしますが、ハムバンドの中を探しても、キャリアが見つかりません。 送信波形をオシロでモニターして7MHz付近にある事は間違いありませんので、周波数カウンターを接続してみると、なんと6935KHz付近なっているではありませんか。 どこかでPLLの計算を間違ったみたいです。 さらに、オシロで波形を見ながら、パワーアンプの出力ラインに指が触れると、周波数が低い方へ動きます。 また、パワーアンプ基板のGNDをシャーシに接触させても、周波数が動きます。

かくして、簡単なアンプで済まそうと作成した12台のアンプは、その出力が正弦波より大きく歪、計算通りの電力合成が出来ないという事が判り、12台のパワーアンプは再検討せざるを得なくなりました。 また、PLL VFOも不安定で、これも改善が必要です。

しばらくこのプロジェクトは休止します。

 

 デジタル方式 AM送信機 再設計 へ続く。

INDEXに戻る