KEM-TRX7-LITE Feed

2014年5月 5日 (月)

サイドトーン回路追加(ウィーンブリッジ発振回路)

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

このトランシーバーのPICマイコンの中に、CWモニター用のサイドトーン発振器が内臓されており、CWのキーイングに同期してモニター音が出力されるのですが、約10秒に1回このサイドトーンが途切れます。 たまたま、キー操作のマーク信号の時、これが発生すると、キー操作をしばしば誤ります。 原因は、10秒に1回、現在の設定状態をフラッシュメモリーに退避させていますが、これに同期して出るバグです。 この現象は、モニター用のサイドトーンのみで、送信されるキャリアーは正常に出ていますので、時々キー操作を間違いながらも使ってきました。

最近、このトランシーバーの使用頻度が高まるにつれ、サイドトーンの途切れが気になり出しました。対策は、送信モードの時のみ、メモリーへの退避動作を禁止したらいいのですが、PICマイコンの中をいじれないので、PICから出力されるサイドトーン信号は使わずに、独立したハードによるCR発振器を設け、これを、内臓したエレーキー回路でON/OFFしてやる事にしました。

Croscpcb

約850Hzの正弦波発振回路は、OP-AMPによるウィーンブリッジ式のCR発振器です。    CR発振器できれいな正弦波を出力させるには、発振回路の出力安定が重要です。 この為、OP-AMPの負帰還量を自動的に制御する必要がありますが、今回、この制御の為にバイアス回路内蔵のデュアルゲートMOS FETを使いました。 UHF帯の増幅用FETを製造しているメーカーなら大抵製品ラインの中にあります。 簡単な回路配置で、DCから430MHzまで10dB以上の増幅が出来るので、私は好んで使っています。 しかし、かなり特殊なFETなので、バラ売りはあまり有りません。   今回は、ばら売りされているNXP製のBF1211WRというFETを使いました。 (ルネサスの場合BB504が相当しますが、生産中止予告品。バイアス回路無しなら3SK318)  このFETはG2の電圧を可変すると、40dB以上のATTをかけられる為、本来のUHF用LNAとしての使い方以外に、AGCやATTとしても利用しています。 今回はG2の電圧でドレインソース間のインピーダンスが変化するのを利用して、OP-AMPの帰還量制御に使いました。   最初バラックで組んで、基礎検討を行い、実用になるように各定数を詰めていきます。検討は片面の2.54ピッチの蛇の目基板に1608タイプのチップ部品を並べて行います。 離れた位置にある部品の接続は裸銅線を使い基板の裏側でつなぎます。 部品装着面でのワイヤーが少なくなり、部品交換がかなり楽になります。 しかし、チップ部品ですから、拡大鏡を併用しながらかなり根気のいる作業です。

Croscwave

Crosckey_3

左上が、850Hz連続発振時の出力波形、右がキーイングによる波形です。

正弦波は負帰還と制御回路のCR定数をもう少し詰めると、さらにきれいになるようですが、CWモニター用としてはこれで十分ですから、ここらへんで妥協しました。 また、キーイングはソフトスタートになるよう、いつもは発振停止していて、キーダウンが有ったら、初めて発振開始し、キーアップで発信停止するようにしましたので、連続波をスイッチ回路で断続する時に比べ、はるかにキークリックが少なくなっています。

Croscbin

こうやってできた小さな基板を、QRPトランシーバーのシャーシに両面テープで張り付け、配線してやると、出来上がりです。

実際に送信すると、OP-AMPに送信出力が回り込み、モニター音がとぎれとぎれになります。OP-AMPの+と-の入力の足に1005タイプの1000Pのコンデンサを直付けしてやると、異常が無くなりました。 安心の為、この基板をアースされた銅板でカバーしています。

これで、移動運用も楽しくなりそうです。

今回、作成したCR発振器の配線図は以下からダウンロードできます。R9は最初22KΩにしましたが、小さすぎた為シリーズに18KΩを足して実験し、うまくいきましたので、そのままになっています。39Kでも良いかも知れませんが、確認しておりません。 また、コンデンサは実装した時点で容量がいくらか判らなくなりましたので、間違っているかも知れません。

ウィーンブリッジ発振回路の回路図をダウンロード

INDEXに戻る

続きを読む »

2013年5月15日 (水)

エレキー回路の追加

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

このQRPキットのPICマイコンの中には、CW用のエレキーソフトが内臓され、縦振電鍵用とエレキーパドル用とに切り替えられるようになっています。ただし、エレキー用を選択したときのキーイングスピードの調整は、とてもQSO中に変更できるようなアクションになっていません。 そのため、今までは外付けのエレーキーユニットを使用していました。

移動運用するには、このQRPトランシーバーとハイモンドのシングルレバーパドル、エレキーユニット、乾電池、アンテナワイヤー、アンテナポール用の6.3m釣竿など、かなりの荷物でした。これらの荷物を少しでも減らそうと、まず、ハイモンドのパドルを自作の軽いパドルに変更しました。この自作パドルの詳細は、エレキー用パドルの製作を参照してください。 

Onkey

次に、外付けのエレキーユニットをビルトインにすることにしました。

メイン機がTS-930Sであることから、最近のモデルには当然内臓されているエレキー回路がありません。よって、外付けの回路を使っています。 この回路はサーキットハウスがキットで発売していたもので、CK-100AというN9BQタイプのC-MOS ICによる回路です。現在はマイコンタイプが一般的ですが、006Pタイプのアルカリ電池につなぎっぱなしで2年半も使用できるという、超ロングライフな消費電流の為、QRPトランシーバーに内臓するエレキー回路もこの回路をそのままコピーして使おうと考えました。

ジャンク箱をひっくり返すと、この回路に使うC-MOS ICが出てきました。HitachiブランドでHD14001のような品番です。30年くらい前のICです。これを、ユニバーサル基板に並べて、CRはチップタイプで作りました。基板の表側にはICだけしかみえませんが、1608タイプのCRは、裏側の2.5mmピッチのランドに結構うまく乗ります。 オリジナルの回路はモニター用のサイドトーン発振器もついていますが、KEMのトランシーバー側にその機能がありますので、エレーキー基板には実装しません。

Elekypwb

配線が完了して、いざ、実働テスト。 残念ながら動きません。まず、クロックジュネレーターが動作しません。 速度調整用可変抵抗を可変すると、時々発振はするけど、まともな波形ではありません。 発振回路に使う0.1uFのコンデンサは1608のセラミックでしたので、これをCK-100Aと同じようにマイラータイプに変更したら、一応発振は継続するようになりましたが、周波数の可変がうまくいきません。 電源ラインには、ごく当たり前に、47uFの電解コンデンサと0.1uFのセラミックコンデンサを挿入してありました。しかし、オリジナルの回路では、電源ラインに電解コンデンサは使用していませんので、これを廃止しましたら、連続して、きれいに発振するようになりました。 それでもまだキーイングする出力は出ません。

配線図の写し間違いが無いか再三にわたりチェックしましたが、間違いはありません。しかし、おかしな部分に気付きました。ICの各端子をオシロで当たっていくと、H/Lの動作をしていますが、9Vと7Vくらいの間を変動している端子があります。C-MOS ICの出力どうしが、つながっているようです。 少なくともキットで組み立てた回路は正しく動作していますので、CK-100Aに付属の回路図が間違っているのでしょう。 出力どうしがつながっている箇所はすぐに判りましたが、正しい接続方法は判りません。 現物の基板を何度も裏表をひっくり返しながら、やっと正しい配線方法を見つけました。 正しい配線に修正すると、正常に動作するようになりました。

基板単体でOKとなりましたので、これをQRPトランシーバーに組み込みました。しかし、今度は、クロック発振が起動しません。基板単体のとき電解コンデンサを廃止したら正常になりましたが、トランシーバーの電源ラインには電解コンデンサがいっぱい入っています。どうも、この4001によるクロック発振器は電源のインピーダンスが低いと起動しないようです。ためしに、エレーキー回路の電源ラインに直列に抵抗を入れてみました。15Ωの抵抗で発振が起動しました。さらに抵抗を大きくしていくと1KΩでも発振起動します。いくらの抵抗が最適か探りましたが良く判らず、とりあえず、電圧降下が0.1V以内に収まる47Ωとしました。

トランシーバーに組み込んで、電源SWをONにすると、ONした直後に送信状態になります。電源投入のタイミングにより、短点、または長点が発生しているものでした。電源ONするたびに、勝手に送信状態になる訳ですから、これは対策が必要です。 今までの外付け回路は電池に接続したままでしたので、この現象は2年半に1回起こるだけですから、問題になりませんでした。

対策としては、電源ON直後はキーイング出力にミューティングをかけることにしました。トランジスタ1石追加です。これで、エレキーのスピードを最低にしても電源ONで勝手に送信になる事はありません。

トランシーバーのキーイング回路をON/OFFする出力回路は、トランジスタ2石のダーリントン接続になっていますが、このベース抵抗とコレクタ抵抗の値が、通常より逆になっています。 この逆の状態でも、私が使用しているリグすべてキーイング操作は可能ですが、回路的におかしいので、定数を入れ替えました。通常はベース抵抗よりコレクタ抵抗が小さく、わずかなベース電流で大きなコレクタ電流を制御します。現在のままなら、ダーリントン接続は不要です。

5年使用したGHDキーのパドルの接点がチャタリングを起こすようになり、このチャタリングによるノイズがキークリックとして耳障りになってきましたので、ダッシュとドットの端子に3.3KΩ(R9,10)を追加しました。たったこれだけでノイズは皆無になりました。

修正済み配線図をダウンロード

配線図の中にR8 360Kというのがありますが、これはチップタイプの330Kが手持ちになかった為の代用です。AXIタイプの330Kで動作確認し、OKでしたが、実装時、サイズが大きくなりますので、あえてチップ抵抗にしました。

Img_0842t  QRPトランシーバーは12V仕様ですから、このエレキーも12Vラインへ直接つないでいます。 電池の電圧が下がるとスピードはダウンしますが、12Vから、いきなり6Vに変更して、スピードが落ちたと気付く程度の差しかありません。通常の電池交換時(約8Vくらい)までなら、スピードの変化は気が付かないかも知れません。

エレキー回路内蔵のトランシーバーが出来上がりました。最初、5Wの出力時、アンテナ回路からこのC-MOS回路へのRF回り込みを気にしましたが、写真のように実装しても誤動作はありません。

トランシーバーの改造が完了しましたので、手作りパドルを入れるケースを100円ショップで調達し、いつでも移動にでかけられるよう準備万端整いました。

Img_0573

サイドトーン回路追加に続く。

マイコン開発の勉強をする為に、このエレキーと全く同一機能のエレキーをPICマイコンで作りました。

詳細はエレキー回路の自作(PIC12F675)を参照して下さい。

INDEXに戻る

続きを読む »

2013年1月 5日 (土)

QRP CWトランシーバー 6

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

北京放送の混信の原因が判りました。

アンテナからの信号を2個の同調コイルでフィルターをかけて十分な選択度を確保したはずでしたが、フィルターをかけた後の信号線路をアンテナ切り替えリレーの端子へ接近させた為に、強入力信号に当たる、北京放送の信号がフィルターをバイパスしてICの入力端子へ漏れるという、基板設計のミスが原因でした。 このリレー端子に接近している回路はIC入力部のホット側ではなくGND側なのですが、510Ωの抵抗でGNDより浮いていますので、そこへ静電結合したようです。

Kemrxb4


幸い、ICの配置変更の必要はなく、同調コイルL5の出力を裏付け配線で直にICの入力端子へ接続してやると聞こえなくなりました。

Kemrxaf
以下、その具体的対策内容を紹介します。

左の画像に示すように、アンテナ入力ラインに近接して配置されているR14(510Ω)を抜き取り、これをIC3の2番ピンに直付けし、基板の裏側でL5のピンに配線します。今まで配線されていた銅箔パターンはL5の近くでカットし、これをGNDへ結びます。

IC3の1番ピンからL5の2次側コイルに入り、コイルの反対側からR14を経由して、IC3の2番ピンに戻るという入力回路のループが出来ています。 従い、裏付けでR14を配線する場合、このループが作る面積が最少になるように配置し、かつ、配線します。画像にある、R14の傾きや、曲がりくねった抵抗のリード線は、ちゃんと意味が有るのです。

以上の対策で、北京放送は、ほとんど聞こえなくなりました。スピーカーに耳を近づけると、かすかに放送らしき音声信号が聞こえますが、なにを言っているのか判らないくらいまで減衰しました。

約1年後の12月に、この対策済トランシーバーで鹿児島県の「さつま湖」から夕方オンエアーしました。北京放送はすでに始まっていましたが、問題なく各局と交信できました。

同じような問題でお困りでしたら、ぜひ修正対策して下さい。

北京放送よりも強敵が現れました。7275KHzの韓国放送(KBS)です。TS-930のSメーターは完全にオーバースケールで、針は指針ストッパーに当たったきり降りてきません。 また、季節により、北京放送もKBSと同じくらいの強度で入感する時もあります。相手の信号がS9程度ならQRMを受けながらもQSOできますが、これ以上の改善は、この回路構成では無理です。 ハイ。

エレキー回路の追加 へ続く

INDEXに戻る

続きを読む »

2013年1月 4日 (金)

QRP CW トランシーバー 5

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

久しぶりに九州鹿児島へ帰りました。 暇つぶしの為、、このQRP CWトランシーバーを持って帰ることにしました。

ホームQTHで架設したアンテナは全長16mのロングワイヤーと10mのカウンターポイズです。

場所が谷の中なので、昔から電波の飛びはよくないところです。昼間は所用でQRVできなかったので、夜になってから交信しようと、ワッチすると、聞き覚えのある放送が狭帯域のフィルターごしに聞こえCWの信号はS9相当なのにQRMで判りません。しかもダイヤルを回してもまったく関係なし。

犯人は北京放送です。

Img_4301k私のホームQTHは南さつま市。昔、ラジオ少年だったころ最初に作った鉱石ラジオで唯一聞こえ たのが北京放送でした。どうも、いまでもその信号強度は維持されているみたいです。

結局、時間の取れる夜間帯はこの北京放送に邪魔されて1局もQSOできずでした。 唯一夕方、まだ北京放送の電波が聞こえない時間帯に5局ほどQSOできただけでした。

アンテナチューナーが悪さしているのか、受信機初段の同調回路の能力不足なのか? AM放送の混信排除能力は著しく悪いみたいです。 

広島に戻ってから、夜間に再確認した結果、同じように北京放送が聞こえます。アンテナチューナーを取り外しても、全く変化無しです。 TS-930をゼネカバ受信機にして詳しく調べると、MWの放送ではなく、7325KHzのれっきとした短波放送でした。 CWバンドと320KHzくらいしか離れていないのも一因とは思いますが、鹿児島ほどでは無いにせよ、じゃまである事は変わり有りません。

鹿児島では、夜間でも7メガの国内信号は聞こえます。7エリアや8エリアが主です。 しかし、広島では、夜間の国内交信はスキップの為、ほとんどチャンスがありませんので、とりあえず実害はありませんが、いつか対策しようと思います。

QRP CWトランシーバー 6 へ続く

INDEXに戻る

QRP CW トランシーバー 4

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

QRP CWトランシーバーが完成して、既存のアンテナやベランダに臨時に展開した釣竿アンテナでQSOの実績も増え実用域になりましたので、移動運用にトライしました。運用日はとても移動運用びよりとは言えない、北風のかなり強い1月でした。

アンテナを架設して、チューニング操作を開始すると、最初はOKでしたが、数分もするとロータリーエンコーダーをどっちに回しても周波数はダウンばかり。そのうちバンドの下限を超えてしまい、アップ出来ません。受信も送信も出来るのに、周波数が設定できないという状態で、結局その日は1局も交信できずじまいでした。

原因を確認する為、家に帰ってから屋内と屋外の温度差を利用して温度試験です。どうやら低温になると、アップが出来なくなるようです。その低温は7度くらい。15度以上になると正常になります。エンコーダーの端子電圧をオシロでモニターすると、かなり摺動ノイズが発生しており、低温になるとそれがひどくなるというものでした。通常、チャタリングはスイッチの切り替わった直後に振動状態で発生する、断続信号で、マイコンのソフトで基本対策を行い、それをさらにカバーするためにエンコーダー端子にコンデンサを追加し、波形をなまらせるという対策を行いますが、このエンコーダーの摺動ノイズはパルスのLレベルの範囲全体で出ています。

Kemre3

コンデンサでなまらしたら、エンコーダーとしての機能までなくなってしまうほどのノイズです。秋月で販売しているエンコーダーと同じものだそうですので、ALPS製のエンコーダーに交換することにしました。交換したら一応7度くらいでは誤動作しなくなりましたが、しかし、ALPS製は、すばやい回転には応答しますが、ワンステップのアップとかダウンを行うと、動作ミスが多発します。たぶん、マイコンのタイミングが合っていないのでしょう。 KEMのBBSで問いかけしましたら、秋月のエンコーダーの中にあるグリスをふき取れば良くなる可能性があるとアドバイスがありましたので、エンコーダーのカバーにあるツメを起こし、内部を開け、綿棒でグリスをふき取りましたら、動作力が軽くなったと同時にアップダウンが正常になりました。 しかし、数か月すると、また誤動作の頻度が高くなってきます。再度、ケースを開け、今度は接点復活剤で清掃しました。その効果は絶大ですが、いつまでモツ事やら。

半年以上経過した12月に、移動運用に出かけました。外気温は10度くらい。  太陽が当たっている間は良かったのですが、日蔭になってしばらくすると、今度はUPばかり。ロータリーエンコーダーをどっちに回してもUPばかりです。    帰ってから詳しく調べるとエンコーダーの一方の出力波形にかなり激しい摺動ノイズが出ていました。 こういうノイズはチャタリングとは言わず、ソフトで回避する方法は有りません。 最初にチェックした時よりノイズの幅は小さいですが、高さは同じくらいです。 エンコーダーの摺動面には、もうグリスはありません。やむなく、コンデンサを追加して波形をなまらす事にしました。

Kemren2Kemren1

左が、対策前、右がエンコーダーのA,B端子とGND間に0.47uFのコンデンサを追加したものです。 上昇の時しかコンデンサの効果は有りませんが、ノイズのパルスの高さがかなり抑えられました。これで、ゆっくり、あるいは高速でエンコーダーを回すと、時々動作しない事はありますが、アップダウンが逆になる事はなくなりました。

Renc

このエンコーダーの端子はマイコンの中で、抵抗によりプルアップされているようですが、プルアップ抵抗の値が小さすぎます。(このマイコンの内部プルアップ抵抗は1.5KΩ) マイコン内でのプルアップをやめ、外付けの10KΩくらいでプルアップした方が対策はしやすいのですが、プログラムの書き換えが必要になり対応できません。

左の回路図は、パナソニックが自社のエンコーダーをテストする時の回路ですが、この回路のコンデンサを0.01から0.047に変更した上で、ロタリーエンコーダーのA端子入力を外部割込みに指定してやると、アルプス製はほとんど問題なく動作します。 秋月の中国製はグリスをふき取らない限り改善しません。

完全な動作を望むなら、フォトインタラプターによる光学式エンコーダーにするしかありません。 この0.47μFを追加した状態でも誤動作が頻発するようになったら、パナソニックの回路の後にCMOSのバッファを入れてその出力をPICの入力端子に接続するつもりです。

QRP CW トランシーバー 5 へ続く

INDEXに戻る

続きを読む »

QRP CW トランシーバー 3

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

Kemhaichi
内部の収納物が決まり、操作つまみや表示器などのサイズが確定したら、それを収納できる既成のケースを用意し、その中や側面に電気的に問題の無い形で物を配置し、かつ操作性を考えてコントロールつまみなどの位置を決めますが、この検討の為に、私は昔からエクセルを使ってきました。エクセルの図形処理はかなりラフなものですが、イメージを図示化するには、非常に簡単な作業でそこそこのシュミレーションが可能です。

今回もそれぞれの基板や部品のサイズを測り、エクセルの中でそれを並べて最適位置を決めました。

このイメージをベースにJW CADで図面化し、その図面を実寸大で印刷したあと、ケースに貼り付け、ケースの加工を行います。この手法で、ほぼエクセルでシュミレーションした通りの部品配置が可能になります。

Kemcs1 Kemcs2

最終的に配線を完了させると、結構様になったケース入り完成品が出来上がりました。

Kemcs4_2 Kemcs6_2

Kemcs5_2

もの作りの一番楽しい時期です。

完成度が上がってくると、気になる部分も出てきます。CWのモニター音が途中でブツッと途切れます。一瞬、キー操作を誤ったと思うのですが、出ているキャリアは問題ありません。モニター音だけのバグみたいです。良く観察すると、10秒間に1回、現在の設定内容をEEPROMに退避させていますが、これに同期して出ているようです。メールでバグ報告はしておきましたが、修正版はまだ未確認です。

QRP CW トランシーバー 4 へ続く

INDEXに戻る

QRP CW トランシーバー 2

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

5WのパワーアンプをKEMのトランシーバーでドライブできるように配線し終え、キャリアーを連続送信しても最大で2Wくらいしか出力がありません。KEMの0.5Wパワーアンプの出力インピーダンスは50Ωのはずですから、TS-930からのドライブのときと同じと考えましたが、考察に抜けがありました。前回の実験では、50Ωのダミー抵抗があって、その両端から5Wパワーアンプへ供給していましたが、今回はダミー抵抗が有りません。

それに気づいて50Ωの抵抗で信号ラインをダンプしてやると、6Wの出力が出るようになりました。 ただし、6Wでは大きすぎますので、5Wになるよう100Ωに定数変更し、かつ0.5Wに切り替えられるように、リレーを使い5Wパワーアンプをスルーできる様にしました。

ダミー抵抗をつないで、連続キャリア送信テストも完了し、つぎにCWでの送信テストをやっているうちに、モニターで聞いているTS-930の受信音に気になる音が出ます。CWのキーイングが終わった直後、バサバサと言った感じのノイズがほんの少しの時間ですが聞こえます。

送信出力の波形をオシロでモニターすると、CWの7MHzのキャリアが途切れたあと、信号がゼロにならず、一瞬かなり低い周波数の信号が残って、すぐにゼロになります。不信に思いスペアナを接続してみましたら、7MHzのキャリアが途切れたとたん、基本波が約1MHzくらいの不要輻射が発生していました。しかもかなり汚い波形らしく高調波が10MHz付近まで見えます。

良く調べると、これは0.5Wアンプの異常発振でした。CWのキャリアーが無くなってもセミブレークインの為に、0.3秒間くらい送信状態を維持します。この0.3秒間の間に1MHz付近で異常発振しているものでした。KEMの説明書の中に、必ずダミー抵抗をつなぐか、実際のアンテナをつないでくださいというコメントがあります。要は、無負荷や設計された以上の軽い負荷をつなぐと発振しますよ、ということです。今回、5Wのアンプを接続しましたので、発振しやすくなったのでしょう。とりあえず、オリジナルの0.5Wパワーアンプのコレクタ側チョークコイルにダンプ抵抗を入れてゲインを下げ発振を阻止しました。

発振対策として、ダンプ抵抗はあまりにも芸が無いので、負帰還をかけたり、アッテネーター回路の定数を変えたりして、発振対策を行い、うまくいってましたが、温度が下がると異常発振が再発してしまいました。面倒なので、チョークコイルのQダンプを継続する事に。 この方法なら温度変化があっても安定して動作します。

また、受信状態でも、5Wのパワーアンプは生きている訳ですが、時々、受信状態のとき発振し、受信音がビートだらけになります。対策として、コレクタからベースへ、CRによる負帰還をかけています。

最終的な出力は

  • VCC 12V     5W     /      0.5W
  • VCC 10V     4W     /      0.4W
  • VCC   8V     3.2W  /      0.26W
  • VCC   7V     2.4W  /      0.2W
  • VCC   6V     1.6W  /      0.12W

QRPモードもQRPPモードもパワーアンプ以外は5Vの安定化電源ですから、パワーはダウンしますが、6Vまで使う事ができます。

ここで、電池によるパワーの差をレポートします。

12V DC電源では5W出ています。

8個で、800円の単3アルカリ電池を買ってきて、テストしました。受信状態での電圧は12.8Vあります。 送信すると、11.8Vになりましたが、かろうじて5W出ていました。しばらくCQなどを出して、10分経過したら11Vまで電圧が下がり4.5Wくらいしか出ません。

次に、6個で105円という単3アルカリ電池を買ってきました。受信時の電圧は13.2Vです。これはすごい! しかし、送信したら、10.2Vになりました。 え? とVVVを10回くらい送信したら9.6Vになりました。約10分後には9Vになりました。100円ショップの電池では、例え新品でも5Wは出ませんでした。

2015年2月:最近は12Vのリチウムイオン電池を使っています。電動釣竿用の電池なので、数回の移動運用でも、電池の心配をする事がなくなりました。

 

バラック状態での検討がほぼ完了しましたので、次はマニュアルアンテナチューナーを実装します。回路はL型です。コイルは連続可変できませんので、12接点のロータリーSWを用意し、トロイダルコアに18ターン巻いたコイルから12個のタップを出し、これをSWでショートすることにしました。バリコンは250PFくらいのポリバリコンです。SWRの検出は抵抗ブリッジ方式として、ブリッジの不平衡電流のみをバッテリーチェッカー用の小さなメーターで見る方式としました。  アンテナチューナーは3mくらいから20mくらいまでのロングワイヤーに無理なく整合させることができます。

Kemmtu1a_2 Kemmtu2_2

トロイダルコアに巻き込んだコイルのQが全く使いものにならないくらい低い事がわかりました。 現在は、空芯コイルに変更しています。詳しくは、「QRP用アンテナチューナーの内部ロス改善」を参照して下さい。

オリジナルの回路はイヤホーン出力しかありません。これをスピーカーでも聞けるようにオーディオパワーアンプを追加することにしました。材料は粗大ごみ入れに捨ててあったPC用のスピーカーシステム。パワーアンプもスピーカーも付いていますので、スピーカーとアンプ基板を取り出し、いとも簡単にオーディオアンプが出来上がりました。

Kemaudio1_2  この状態でCWの送信を5Wで行うと、モニター音はキークリックだらけです。音量ボリュームを絞っても出ています。パワーアンプの入力部にシリーズに1KΩとICの+/-入力間に1000PFを追加する事にしました。 最初、アキシャル抵抗とラジアルコンデンサで対応したのですが、効果は有るものの、十分では有りません。 チップ抵抗とチップコンデンサに変更し、かつICのピンのすぐそばに配置したら、音量ボリュームを絞ると聞こえなくなりました。 音量ボリュームを上げたときの対策として、送信時には受信音声系をトランジスタでミューティングすることにしました。 また、トーンボリュームや音量ボリュームの配線をすべてシールド線で行った結果、クリック音は発生しなくなりました。  また、CWのモニター音のクリック音も、全く気にならないくらいに改善しました。

とかく、キークリック音のあるCWは聞いていて疲れますので、これで安心です。

Kem5wmod1_2 借用していたタケダ理研のアナログ式スペアナを返却し、代わりにアドバンテストのデジタル式スペアナを借用したついでに、高調波を調べてみると、今まで-60dB以下はノイズに埋もれて見えませんでしたが、デジタル式のこのスペアナは-70dBまで見る事ができます。そして第4次高調波以上が予想以上に多い事に気付きました。原因を調べると、トランジスタのベース電流が歪んで、その影響が0.5Wのアンプのタンク回路まで及び、ここで高次のリンギングが発生しているものでした。

色々と検討した結果、ベース回路に同調回路を置き、かつインピーダンス変換できるトランス式に変更すると、2次、3次は-63dBくらい、4次は-68dBくらいですが、5次以上の高調波は-70dB以下に収まりました。(回路図修正済み)

5W QRPトランシーバーの回路図をダウンロード

TSS保障認定用送信機系統図をダウンロード

一応、トランシーバーとして必要な回路部材がそろいましたので、これを移動運用にも耐えるようにケースへ収納することにします。

QRP CW トランシーバー 3 へ続く

INDEXに戻る

続きを読む »

QRP CW トランシーバー 1

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

車で行けないような山でも、リュックサックに詰め込んで運べる乾電池で動作するQRPトランシーバーを探していましたら、「貴田電子設計」という会社がQRPPのキットを販売している情報を入手し、さっそく注文して組み立て開始しました。(2010年の製品で現在は見当たりません)

Kemmain キットの商品名は「KEM-TRX7-LITE」というもので0.5Wの出力の7MHzオンリーのCWトランシーバーです。このキットは良く出来ていまして、説明書通り作ったら、すぐにQRPPの交信が出来てしまうほど、完成度の高いものです。バラックのままで、しばらく交信を楽しんでおりましたが、さすがに0.5Wでは、コンディションの影響も大きく、ストレスが溜まります。そこで、せめてQRPと言える最大出力である5WまでQROすることにしました。

たかが、7MHzの5Wアンプと軽く考えていましたが、(昔、水平出力管による10Wのアンプで苦労したころに比べたら雲泥の差があります。) オリジナルの設計に加味されていない変更を行うと、なかなか思うようにいかず、オリジナルの設計内容まで対応が必要になり、かなり難儀しました。 

目標の仕様を設定します。

  • 出力は5Wと0.5Wの切り替え方式。
  • 電源は単3アルカリ電池 8本使用の12V。
  • 手動アンテナチューナー内蔵。
  • 受信音はスピーカー/イヤホーン両用。
  • 移動に使っても十分な強度が保てるケース入り。

Kempa11_2まずは、パワーアンプの検討から。電池仕様ですから、効率の良いC級アンプと決めて、回路例を探している内にE級アンプという、もっと効率の良いアンプがある事がわかりました。C級が65%くらいの効率なのに対してE級は85%くらいはいけるみたい。乾電池で動作させる場合、この効率が即連続運用可能時間につながりますので、内容も良く調べずにE級アンプに決定。インターネットでE級アンプを検索すると、私が設計するには十分過ぎる技術情報が得られました。E級アンプのカナメは負荷となるLCのフィルターですので、最初、このLを色々な資料がほとんど採用しているトロイダルコアで作ることにしました。

Kem5wpa ところが、参考資料として提示されているインダクタンスやキャパシタンスになるように設定してもパワーはなかなか出ません。効率も50%以下。指定された型名のコアを使っていない事が原因なのでしょうが、うまくいきません。ジタバタしている内に、コアを使わなくても空芯コイルで実現できることがわかりました。MMANAでコイルの直径や巻き数を求め、エナメル線をPPシートを丸めたボビンに巻き込み、瞬間接着剤で固めてしまいます。Lが大きかったら解き、小さかったら作りなおして、調整すると、6Wの出力が出るようになりました。 無理すると7Wくらいでます。効率は能書き通りにはいかず6W出力で70%くらいです。 コレクターの電流波形は、E級アンプの技術資料に出てくる通りの波形をしていますので、曲りなりにもE級アンプとして動作しているのでしょう。 スペアナで高調波を調べたら-60dBくらいのノイズフロアーに隠れて見えません。 多分LCの組み合わせを最良にもっていけば80%くらいの効率も可能かも知れませんが、とりあえずこれで良しとしました。

スペアナを交換したら、-60dB以下のレベルも見れるようになりましたので、5Wアンプの入力部分を設計変更しました。添付配線図やアンプの画像は変更後の回路に差し替えてあります。

これまでの検討はTS-930SをTUNEモードにしてダミー抵抗に0.5Wくらいの出力を消費させ、これを信号源として使っていました。 いよいよ、KEMのトランシーバーへ組み込み作業です。

QRP CW トランシーバー 2 へ続く

INDEXに戻る

続きを読む »