サイドトーン回路追加(ウィーンブリッジ発振回路)
このトランシーバーのPICマイコンの中に、CWモニター用のサイドトーン発振器が内臓されており、CWのキーイングに同期してモニター音が出力されるのですが、約10秒に1回このサイドトーンが途切れます。 たまたま、キー操作のマーク信号の時、これが発生すると、キー操作をしばしば誤ります。 原因は、10秒に1回、現在の設定状態をフラッシュメモリーに退避させていますが、これに同期して出るバグです。 この現象は、モニター用のサイドトーンのみで、送信されるキャリアーは正常に出ていますので、時々キー操作を間違いながらも使ってきました。
最近、このトランシーバーの使用頻度が高まるにつれ、サイドトーンの途切れが気になり出しました。対策は、送信モードの時のみ、メモリーへの退避動作を禁止したらいいのですが、PICマイコンの中をいじれないので、PICから出力されるサイドトーン信号は使わずに、独立したハードによるCR発振器を設け、これを、内臓したエレーキー回路でON/OFFしてやる事にしました。
約850Hzの正弦波発振回路は、OP-AMPによるウィーンブリッジ式のCR発振器です。 CR発振器できれいな正弦波を出力させるには、発振回路の出力安定が重要です。 この為、OP-AMPの負帰還量を自動的に制御する必要がありますが、今回、この制御の為にバイアス回路内蔵のデュアルゲートMOS FETを使いました。 UHF帯の増幅用FETを製造しているメーカーなら大抵製品ラインの中にあります。 簡単な回路配置で、DCから430MHzまで10dB以上の増幅が出来るので、私は好んで使っています。 しかし、かなり特殊なFETなので、バラ売りはあまり有りません。 今回は、ばら売りされているNXP製のBF1211WRというFETを使いました。 (ルネサスの場合BB504が相当しますが、生産中止予告品。バイアス回路無しなら3SK318) このFETはG2の電圧を可変すると、40dB以上のATTをかけられる為、本来のUHF用LNAとしての使い方以外に、AGCやATTとしても利用しています。 今回はG2の電圧でドレインソース間のインピーダンスが変化するのを利用して、OP-AMPの帰還量制御に使いました。 最初バラックで組んで、基礎検討を行い、実用になるように各定数を詰めていきます。検討は片面の2.54ピッチの蛇の目基板に1608タイプのチップ部品を並べて行います。 離れた位置にある部品の接続は裸銅線を使い基板の裏側でつなぎます。 部品装着面でのワイヤーが少なくなり、部品交換がかなり楽になります。 しかし、チップ部品ですから、拡大鏡を併用しながらかなり根気のいる作業です。
左上が、850Hz連続発振時の出力波形、右がキーイングによる波形です。
正弦波は負帰還と制御回路のCR定数をもう少し詰めると、さらにきれいになるようですが、CWモニター用としてはこれで十分ですから、ここらへんで妥協しました。 また、キーイングはソフトスタートになるよう、いつもは発振停止していて、キーダウンが有ったら、初めて発振開始し、キーアップで発信停止するようにしましたので、連続波をスイッチ回路で断続する時に比べ、はるかにキークリックが少なくなっています。
こうやってできた小さな基板を、QRPトランシーバーのシャーシに両面テープで張り付け、配線してやると、出来上がりです。
実際に送信すると、OP-AMPに送信出力が回り込み、モニター音がとぎれとぎれになります。OP-AMPの+と-の入力の足に1005タイプの1000Pのコンデンサを直付けしてやると、異常が無くなりました。 安心の為、この基板をアースされた銅板でカバーしています。
これで、移動運用も楽しくなりそうです。
今回、作成したCR発振器の配線図は以下からダウンロードできます。R9は最初22KΩにしましたが、小さすぎた為シリーズに18KΩを足して実験し、うまくいきましたので、そのままになっています。39Kでも良いかも知れませんが、確認しておりません。 また、コンデンサは実装した時点で容量がいくらか判らなくなりましたので、間違っているかも知れません。