TS-850 Feed

2018年1月 3日 (水)

TS850 スピーカー出力小(低域出ず)

<カテゴリ:TS-850>

AM受信機専用として使っていました、TS-850ですが、自作のDSP受信機が調子が良いので、しばらく通電もしていなかったのですが、約1年ぶりに電源ONしてみました。 すると、スピーカーから出る音が極端に小さくなり、かつ低域の音声がほとんど聞こえません。

電源ONしたのが、2018年の正月3日。 幸い、暇ですので、修理する事にしました。

スピーカー出力側から、オシロのプローブを当てていくと、異常個所はすぐに見つかりました。 オーディオパワーアンプの出力カップリングコンデンサC187の両端で出力レベルが10dB以上の差が生じております。

Ts500_apaschema

Ts850_apa470mf

Ts500_apaceng

このコンデンサの近くに以前、液漏れを起こした電解コンデンサがあり、同様なタイプでしたので、液漏れかも知れないとこのコンデンサを外してみました。 外したコンデンサは液漏れの形跡が有りますが、もれた液はすべて蒸発してしまい、テスターを当てても電解コンデンサ特有の針の振れはありません。

左上は取り外したC187、右上は、C187を外した後の基板状態ですが、今回は銅箔の腐食は有りません。

Ts850_cechange

定格は10V470uFですが、あいにく手持ちが有りません。ジャンクの基板から16V470uFというコンデンサを抜き取り、仮配線にて実装すると、音は正常に戻りました。 ただ、この16V470uFのコンデンサはすでに足を短くカットされていましたので、そのままでは基板に実装できません。 そこで、すぐ近くに有った同じようなサイズの電解コンデンサにロックタイで縛り付け、写真のごとく配線しました。低周波ですので、全く問題有りません。

今回の故障修理を境にTS850はまたAM専用受信機に戻りました。

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2016年6月11日 (土)

TS850 スタンバイSW動作せず

<カテゴリ:TS-850>

久しぶりのトラブルです。 TS-850SをAM受信専用機として利用していますが、送信する時は、受信部をミューテイングする事はもちろんですが、送信もされないように内部設定していました。 本日、AM送信機を送信にしたのに、TS-850Sの受信ミューティングが動作しません。 ハウリングが起こり、Sメーターは+60dB以上を示します。 1週間前はOKだったのに。

Acc2_schema_2

このAM専用受信機のスタンバイ機能はRTTY用のスタンバイ機能を使っています。動作しないスタンバイ端子のホット側の電圧を計っても0V。 C214の両端も0Vです。 内部で異常が起こっているようです。 セットの底板を外し、配線図と基板図と現物を照合していくと、電解コンデンサC182の底当たりで断線しているような気配です。 この電解コンデンサを取り外してみました。

C218ura1

C218ura2

Elna_ecap

左上が電解コンデンサを取り外した直後の基板状態です。細いストリップラインが腐食しています。真ん中はこの腐食部分をふき取った状態で、一見つながっているように見えますが、テスターで当たると導通は有りません。 右は取り外した問題の電解コンデンサです。 漏れていた電解液をふき取った後なので、きれいに見えますが、ふき取る前は明らかに電解液だらけでした。

 

Stanbyng

Jumper

 基板上では左の基板図の赤のラインの途中が断線しているものでした。

修理はC182を新品の16V470に変更した上で、リード線で、この断線したラインをバイパスしてやりました。

このモデルの修理事例を見ていると、電解コンデンサの事故が結構あります。 メーカーはELNAというかなりしっかりした会社の製品なのですが、同じ時期のニチコンやケミコンより事故例が多いようです。

結局、この問題で、本日はAM交信が出来ませんでした。

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2012年11月29日 (木)

TS-850S ALC動作異常

<カテゴリ:TS-850>

ALCが動作しているとき、ALCレベルを示す棒グラフと、送信出力が脈打つというトラブルの対策です。

メインのTS-930Sが機構部品の破損で操作不能になり、その部品探しをしている最中なので、サブのはずのTS-850Sが現在メインで使用されております。 その中で、3.5メガのアンテナは7メガのフルサイズダイポールをMTUで強制同調させて使っている関係で、非常に帯域が狭くなっております。ベランダに置かれたMTUをいちいち調整し直すのが面倒なので、SWR1.5位いの範囲ならそのまま使っていますが、CWで送信すると、ALCレベルが周期的に揺れて、それに伴い出力も波打つというトラブルが発見されました。アンテナとの整合状態がSWR 1.2以内くらいなら異常は発生しません。

判りやすく説明すると、アンテナのマッチングがSWR1.5くらいまで悪くなっている状態で3.5メガでTUNEテストをすると、出力を上げたとき、ALCのメーターの棒グラフが最小から最大まで1秒くらいの間隔で脈打つというものです。この脈打ちの周期に同期して出力も脈打ちます。7メガでは発生しませんが、3.5メガで発生します。

故障なのか、もともとの性能なのか、不明でしたのでGoogleで「TS-850S ALC」で検索してみました。すると、いっぱい出てきました。You Tubeに動画が存在するほどの、かなり有名なトラブルみたいです。

原因はALCアンプのマイナス電源を作っているDC/DCコンバーターの不具合みたいです。新品のころは、元気良く発振していたマルチバイブレーターが、トランジスタのhFEが低下したのか、周囲の電解コンデンサが劣化したのか、なんらかの原因で発振が停止するようになったのが直接の原因のようです。

手っ取りばやく対策するには、マルチバイブレーターの正帰還量を増やしてしまえばよいことです。修理事例としてはベース抵抗を小さくする方法が多くありました。

Ts850dcdc 問題の基板の名称は「X59-1100-00」で、その中にあるR2とR3を22KΩから13KΩに変更したら直ったと有りました。この対策なら現行の22KΩにパラに抵抗を足してやれば済むことで、早速、ケースを開け、この基板を探し出し、抵抗を追加しようとしましたが、かなり奥まったところにあり、とてもそのままでは半田付けできません。やむなく、基板を引っ張りだして、コネクターを外し、基板単体にした上で、手持ちの47KΩをR2とR3にパラ付けしました。合成抵抗は15KΩとなり、13KΩにはまだ不十分ですが、基板を元通りに取り付け、3.5メガでテストしました。SWR 3でも、問題なしとなりました。

Ts850dc1_2  Ts850dc2_3

とりあえず、当面の異常現象は解決しましたが、3.5メガでSWRが悪化したときに、出力を制限するALC動作が、他のバンドのときより、きついという現象が残っています。SWRが1.5くらいのとき、最大出力は70Wくらいしか出ません。SWR1.2くらいでやっと100Wです。いくらアンテナチューナーを内蔵しているからと言っても、プロテクトのかけ過ぎです。これが正常状態なのか異常状態なのか判りませんので、暫く様子をみます。

Ts850dc3 暫く様子を見ていましたら、3.5メガでCW送信すると、時々、ALCの動きがおかしくなり始めました。どうも以前の症状が再発したようです。アンテナの負荷条件が変ったのかもしれません。ベース抵抗を小さくするという対策だけでは不完全のようです。正帰還量を増やす為ならベース・コレクタ間の2200PFを増やせばよいことですから、このコンデンサC1,C2に1000PFをパラに追加することにしました。前回の47KΩ追加と合わせれば、CR時定数はほぼ同じとなりますので、都合もよさそうです。ちょうど手元に1608サイズのチップコンデンサがありましたので、これをパラに追加しました。今度は問題なさそうです。ただし、プロテクトのかけ過ぎは直りません。

そうこうしている内に、故障中のTS-930Sが修理完了しましたので、またサブ機に逆戻りしてしまいました。プロテクトのかけ過ぎの問題は、とりあえずお蔵入りです。

プロテクトのかけ過ぎは、TS-850Sの問題では無く、アンテナ系が原因でした。詳細は、カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムの3.5MHz ALC動作異常 で紹介しています。

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2012年9月11日 (火)

TS-850S 28MHz 100WのTSS保障認定

<カテゴリ:TS-850>

古いTS-850Sを頂きましたので、修理して、使えるようになった事からこれを現行モデルとして工事設計書に追加申請することにしました。TSSに申請したところ、「28MHz帯は50W出力のはず。100Wにする為の具体的改造内容を説明しなさい」とコメントが付きました。

Img_0873tところが、私のTS-850Sはメーカー出荷時点ですでに100W出力に設定されており、改造したところはありません。メーカー出荷時点より100Wであるという証拠は付属している取説の中にあります。

取説の最後の方に、製品の仕様や、当時JARLの保障認定で局免許を受ける為の事項書と工事設計書の書き方見本があり、これらの記述はすべて28MHz帯は最大出力100Wと記載されています。

TSSには、メーカー出荷時点より100Wに設定されていた旨の説明と、この取説の抜粋をpdfファイルにコピーし添付しました。

結果、申請通り、TSSの保障認定を得る事ができました。

28MHzの最大出力が100Wで許可されるようになったのは1992年1月6日よりで、私のトランシーバーは1992年12月に製造されたもののようです。推定ですが、KENWOODは法律が施行された日以降の生産出荷分から最大出力を100Wに変更したみたいです。しかし、それ以前の生産品は50W仕様だったことから、TSSから前述のごとくコメントが付いたものと思われます。

貴方のTS-850Sの28MHzがすでに100W出力になっている場合、取説のコピーを添付するだけで、TSSは承認してくれるでしょう。

TS850S 28MHz 100W出力に関連する抜粋取説をダウンロード

もし、28MHzが50Wのままでしたら、周波数を29MHzにして、CWモードでCARをmaxにしておき、RFユニットのVR4を回して、100Wになるよう調整します。 (取説に記載済み)

100W機を移動に使うために50Wにしたい場合、裏側のスイッチを切り替える方法が取説の中で説明されています。  回路図を追いかけると、50W設定の時もVR4が機能するようになっていますので、28MHzを100Wに調整した後の場合、VR4で50Wに再調整する必要があるようです。   50W機として、TSSの保障認定を受ける場合、多分スイッチを50Wに設定したと説明するだけで、承認されるかも知れません。 以前、同じような設定ができるモデルで50Wの承認を取った事がありました。 (ただし、申請人の資格が2アマ以上でないと、却下されるという情報もあります。)  なお、この場合、すでに固定局で免許を得ているTS-850Sを50Wに改造して、移動局の免許を得る事はできません。移動局用にもう1台のTS-850Sを用意するか、固定局で免許を受けていたTS-850Sを撤去してから申請するしかありません。

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2012年8月25日 (土)

TS-850S RFフィードバック

<カテゴリ:TS-850>

マイクアンプへRFが回り込みフルパワー運用が出来ないという問題の対策です。

時々動作しなくなるというTS-850SをローカルのOMさんから頂きました。約1ヶ月かけてオーバーホールを行い、異常が発生しなくなりましたので、現用のTS-930Sを差し置いてメイン機にならないかともくろみました。

時期は、同調フィーダーによる給電システムのアンテナで日夜DXに励んでいるころです。10MHz以下では何も問題ないのですが、14MHz以上のバンドでRFの回り込みが激しくSSBでの運用が思うように出来ません。24MHz以上では、CWモードでもRFの回り込みがあります。

このモデルは、RFフィードバックに弱いという情報がインターネット上にも存在しますが、これほどひどいとは思いませんでした。TS-930SよりRFの回り込みをおこしやすいところに、追い討ちをかけるように、同調フィーダーシステムによる給電方式をとっている事が、このトランシーバーを使えない状態にしてしまっているようです。

CW時の回り込み対策はパワーを下げるしかなく、50Wまで下げると全バンドOKになります。

しかし、SSBは20Wくらいしか出ていないのに変調がにごり、何を言っているのか判らなくなるほどの回り込みが発生します。

せめて、SSBでも50Wくらいまでは持ちこたえて欲しいと、昔取った杵柄で、RFの回り込み対策をすることにしました。

対策の方法は実に簡単で、オーディオアンプのベース・エミッタ間に1000PFを追加すると言う手法です。

この方法は、オーディオ製品を設計する上では常識で、いわゆる「AMP- i」対策です。当然KENWOODのオーディオ製品にも実施されています。しかし、同じKENWOODでもトランシーバーを開発する部門のエンジニアはご存知無かったようです。

マイクアンプの出力をショートすると、RFのフィードバックが無くなりますから、マイクアンプのトランジスタが拾っている事はあきらかです。そこで、マイクアンプのQ1とQ2のベース・エミッタ間にそれぞれ1000PFのコンデンサを追加します。

Ts850mic2 Ts850mic1

1000PFを追加した結果、マイクボリュームをMAXにしてもマイクアンプへのRFの回り込みは起きなくなりました。しかし、モジュレーター段への回り込みは相変わらず発生します。モジュレーター段への回り込み対策は回路をシールドしたり、基板を書き直すしか方法がありませんので、対策はとりあえずここまで。

一応対策の効果もあり50W出力なら全バンド運用できるようになりました。

このTS-850Sが晴れてフルパワーで運用できるようになるのは、「マルチバンドアンテナシステム」でも触れましたが、同調フィーダーによる給電を同軸ケーブルに変更した時からでした。それでもメイン機のTS-930Sにとって代わる事にはならず、現在はRTTYの専用機として使用しています。

Ampiic 回り込みを起こすオーディオ回路がICの場合、ICのプラス入力とマイナス入力の間に1000PFを追加しますが、トランジスタより対策効果が小さくなります。その為、入力ラインに1KΩのシリーズ抵抗を追加したり、もし、NF抵抗に発振止めのコンデンサがパラに入っている場合、このコンデンサにシリーズに1KΩの抵抗を追加したりして出力側からRFが入力に回り込むのを阻止したりします。 入力端子に追加するコンデンサは、アンプがトランシーバー用のマイクアンプなら1000PFで良いのですが、アンプがステレオアンプなどのように数10KHzまで扱う必要が有る場合、周波数特性に影響がでますので、100PFくらいで我慢します。

追加する抵抗やコンデンサはチップタイプにして、ICの足のすぐ近くに実装すると、いっそう効果が増します。

この対策はTS-850に限らず、全てのオーディオアンプに有効ですから、マイクアンプへRFが回り込んで困っている方、アンプ- i で困っている方、一度、試してみてください。

追加情報(2016/07)

RFが回り込んで変調が濁る対策として、受け身の対策ではなく、マイクやマイクアンプの周囲に強電界が発生しないようにすれば、回り込みの対策にもなります。  今までで一番効果が有ったのは、アンテナの根本にコモンモードチョークを挿入する事でした。

同軸ケーブルの長さが、使用周波数の1/4波長に近い場合、アンテナの根本から流出したコモンモード電流が送信機へ逆流し、送信機付近で電圧腹になる事があります。 このような場合、回り込みが発生しやすくなります。 この同軸はなにも、送信に使っている同軸ケーブルに限らず、ローテーターのケーブルだったり、他のバンドのアンテナ用ケーブルだったりします。  アンテナの根本と言っても、給電部のすぐ近くにいれた訳ではなく、ベランダの手の届くところにこのように手当り次第にコモンモードチョークを挿入しました。

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