<カテゴリ:TS-850>
マイクアンプへRFが回り込みフルパワー運用が出来ないという問題の対策です。
時々動作しなくなるというTS-850SをローカルのOMさんから頂きました。約1ヶ月かけてオーバーホールを行い、異常が発生しなくなりましたので、現用のTS-930Sを差し置いてメイン機にならないかともくろみました。
時期は、同調フィーダーによる給電システムのアンテナで日夜DXに励んでいるころです。10MHz以下では何も問題ないのですが、14MHz以上のバンドでRFの回り込みが激しくSSBでの運用が思うように出来ません。24MHz以上では、CWモードでもRFの回り込みがあります。
このモデルは、RFフィードバックに弱いという情報がインターネット上にも存在しますが、これほどひどいとは思いませんでした。TS-930SよりRFの回り込みをおこしやすいところに、追い討ちをかけるように、同調フィーダーシステムによる給電方式をとっている事が、このトランシーバーを使えない状態にしてしまっているようです。
CW時の回り込み対策はパワーを下げるしかなく、50Wまで下げると全バンドOKになります。
しかし、SSBは20Wくらいしか出ていないのに変調がにごり、何を言っているのか判らなくなるほどの回り込みが発生します。
せめて、SSBでも50Wくらいまでは持ちこたえて欲しいと、昔取った杵柄で、RFの回り込み対策をすることにしました。
対策の方法は実に簡単で、オーディオアンプのベース・エミッタ間に1000PFを追加すると言う手法です。
この方法は、オーディオ製品を設計する上では常識で、いわゆる「AMP- i」対策です。当然KENWOODのオーディオ製品にも実施されています。しかし、同じKENWOODでもトランシーバーを開発する部門のエンジニアはご存知無かったようです。
マイクアンプの出力をショートすると、RFのフィードバックが無くなりますから、マイクアンプのトランジスタが拾っている事はあきらかです。そこで、マイクアンプのQ1とQ2のベース・エミッタ間にそれぞれ1000PFのコンデンサを追加します。
1000PFを追加した結果、マイクボリュームをMAXにしてもマイクアンプへのRFの回り込みは起きなくなりました。しかし、モジュレーター段への回り込みは相変わらず発生します。モジュレーター段への回り込み対策は回路をシールドしたり、基板を書き直すしか方法がありませんので、対策はとりあえずここまで。
一応対策の効果もあり50W出力なら全バンド運用できるようになりました。
このTS-850Sが晴れてフルパワーで運用できるようになるのは、「マルチバンドアンテナシステム」でも触れましたが、同調フィーダーによる給電を同軸ケーブルに変更した時からでした。それでもメイン機のTS-930Sにとって代わる事にはならず、現在はRTTYの専用機として使用しています。
回り込みを起こすオーディオ回路がICの場合、ICのプラス入力とマイナス入力の間に1000PFを追加しますが、トランジスタより対策効果が小さくなります。その為、入力ラインに1KΩのシリーズ抵抗を追加したり、もし、NF抵抗に発振止めのコンデンサがパラに入っている場合、このコンデンサにシリーズに1KΩの抵抗を追加したりして出力側からRFが入力に回り込むのを阻止したりします。 入力端子に追加するコンデンサは、アンプがトランシーバー用のマイクアンプなら1000PFで良いのですが、アンプがステレオアンプなどのように数10KHzまで扱う必要が有る場合、周波数特性に影響がでますので、100PFくらいで我慢します。
追加する抵抗やコンデンサはチップタイプにして、ICの足のすぐ近くに実装すると、いっそう効果が増します。
この対策はTS-850に限らず、全てのオーディオアンプに有効ですから、マイクアンプへRFが回り込んで困っている方、アンプ- i で困っている方、一度、試してみてください。
追加情報(2016/07)
RFが回り込んで変調が濁る対策として、受け身の対策ではなく、マイクやマイクアンプの周囲に強電界が発生しないようにすれば、回り込みの対策にもなります。 今までで一番効果が有ったのは、アンテナの根本にコモンモードチョークを挿入する事でした。
同軸ケーブルの長さが、使用周波数の1/4波長に近い場合、アンテナの根本から流出したコモンモード電流が送信機へ逆流し、送信機付近で電圧腹になる事があります。 このような場合、回り込みが発生しやすくなります。 この同軸はなにも、送信に使っている同軸ケーブルに限らず、ローテーターのケーブルだったり、他のバンドのアンテナ用ケーブルだったりします。 アンテナの根本と言っても、給電部のすぐ近くにいれた訳ではなく、ベランダの手の届くところにこのように手当り次第にコモンモードチョークを挿入しました。
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