オートアンテナチューナー(ATU)の製作 Feed

2025年2月 1日 (土)

Z Match ATU アンテナセレクター

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

Z Match ATU本体とコントローラーがほぼ完成しましたので、ATUとアンテナの間に設置するアンテナセレクターの製作です。

今回のZマッチのATUは、その出力が平衡タイプとなっており、これは、平衡アンテナに直接給電出来る事から、FT8の時、バランのコアが発熱して、100W連続送信ができないとか、バランの中で生じるロスが大きいとか言う問題が発生しません。 また、アンテナが不平衡タイプで有っても、そのまま給電しても、ATUとアンテナ給電ポイントまでの距離が短ければ、給電線に不平衡電流が流れても不要輻射や外来ノイズのピックアップも大きくはならないという利点があります。 不平衡アンテナの場合、ノイズも不要輻射もアンテナが原因なのか、給電線が原因なのかよく判りませんが。

Z Match MTUの内部ロスはL型MTUと同等という事がオリジナルのホームページに書かれており、極端な低インピーダンスで無い限り、大きくても数%以下と判断されます。 このロスを測定する方法は知っていますが、かなり面倒です。 このATUの場合、測定するのは止めます。

ATUからアンテナセレクターまでの3mの距離は、はしごフィーダーで給電し、3種類のアンテナに分配するアンテナセレクターをマストの給電ポイントに括り付けて対応する事にします。

Iantselector1

コントローラーから送られるUART信号をATUで中継して、受信信号のみをアンテナセレクターまで送り、そこで、アンテナナンバーを解析して、リレーをON/OFFする事により、目的を達成します。

左の写真が、そのセレクター基板です。 マイコンは部品箱の奥から探し出した、PIC18F14K50を使います。 このマイコンのEEPROMに分割バンドとそれに対応するアンテナナンバーを記憶させる機能も入れましたので、後々、バンド分割の変更やアンテナのタイプ変更が発生しても、いちいちマストから降ろさなくても良いようにしてあります。

ところで、今頃気づいたのですが、このPICのUART信号の極性は該当bitを0にしたら「正論理」、1にしたら「負論理」と書いてありますので、その言葉通り正論理にしたら、動きませんでした。 最近のPIC18の場合、1の場合、アイドル時L、0の場合、アイドル時Hレベルと書かれております。 RS232Cの場合、アイドル時Hの状態をノーマル状態としていますので、この古いPICでは、ノーマル状態を正論理と表現したのでは? このおかげで、自作のハードとプログラムが悪いのではと3日間も悩みました。

プログラムの確認も終わりましたので、実際にアンテナセレクターを内蔵する防水BOXを製作したらこの記事を更新します。

配線図 Z-Match-ANT_selector.pdfをダウンロード

プログラム Z_Match_ATU_ANT_selector_0.cをダウンロード

 

NDEXに戻る

2024年11月10日 (日)

Z Match ATU 自動整合システムの検討

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

タイミングプーリーに付加したフォトセンサー検出用遮蔽版が大きくてケースの天面蓋が取り付けられないという問題の対策の為、タイミングプーリーの直径を一回り小さくした結果、天板の取り付けが可能となり、ATU本体のハード面は完成しました。 (前回記事参照

Zmatchatucmp3_2

Zmatchatucmp2_2

Zmatchatucmp1

前回の記事で判明したノイズに関しては、ケースインしても当然変化はないですが、モータードライバーをスタンバイモードにするとノイズは綺麗に消えます。しかし、この時、1/4マイクロステップで刻んだアドレスのバリコン角度は、一番近い1.8度ステップの停止位置に移動してしまいます。そこで、モーターのステップは1/4マイクロステップの4ステップ単位で移動し、バリコンの停止位置は常に1.8度の基本ステップの位置と同じになるようにし、バリコンがターゲット角度に達したらモータードライバーをスタンバイモードに移す事にします。 そして、バリコンの停止位置が粗くなり真のSWRディップポイントを飛び越えるような状態が発生するバリコン容量の少ない角度では、バリコンに直列にコンデンサを挿入し、スプレッドバリコンとして使う事により、この飛び越し現象を解消する事にします。 ただし、まだ、自動整合機能が未完成ですので、このスプレッド機能の追加は完成してから追加する事にし、たちまちは、最小4ステップによる1/4マイクロステップで検討を続行します。

1/4マイクロステップにこだわる理由は、モーターの騒音です。1/4マイクロステップの回転音は夜でも我慢できる音量と音質ですが、1.8度基本ステップの時は、昼間でも許容できない音量と音質で、どうしても1.8度ステップでモーターを回す必要があるイニシャライズの時のみは、じっと我慢するしかない音なのです。

自動整合のプログラムは、とりあえず現用中のバリコン式T型ATUのプログラムのタップ選択機能を廃止し、モーター駆動を時間指定で行っていたものをステップに置き換えた状態だけのものからスタートです。 7MHzの場合、シングルバリコンもダブルバリコンも容量最小付近が整合ポイントになり、例えば、両バリコンとも容量中央付近にある状態から自動整合をスタートさせると、その付近で行ったり来たりして、全く整合ポイントへ移動しません。 マニュアルで整合ポイント付近までバリコンを移動させて、整合を開始すると、ダブルバリコンはすぐに反応し、SWR最小ポイントへ移動しますが、シングルバリコンは現在位置で行ったり来たりして、結局、真のSWR最小ポイントを見つける事無く時間切れとなります。

まあ、今始まったばかりの整合アルゴリズム探しですから、これから、色々と実験しながら、最適な整合アルゴリズムを探す事にします。 ただ、かなり難攻が予想されます。

2024年12月末日

整合システムの検討が中断して1か月以上たちましたが、その他の雑用が多くてなかなか取り掛かれません。 その他の用が一段落しましたので、このZ Match ATUの検討に戻れるようになりました。 この検討再開に先立ち、コントローラーの表示をリニューアルしトライします。

Controllernewlcd

 表示をLCDに変更した事により、デバッグ情報をLCD上に表示可能となり、開発環境が大幅に改善したのですが、従来のキャラクタディスプレーに比べ、表示時間が10倍以上に増え応答が悪くなりました。この応答速度の悪さはLCDとシリアル通信によるところが大きく、元に戻すわけにもいきませんので、表示回数を出来るだけ減らす工夫をしながら検討を進めます。

このATUをケースに収納してから、各バンドの整合テストを行っていなかったので、手動による整合テストにトライしましたが、ハングアップがかなり頻繁に発生し、整合試験はいまだに出来ていません。 最大の原因はLCDと8MHzのクロックでSPI通信を行っていますが、このラインのリンギングが激しく、たちまちは、CLOCKとDATAラインに100Ωのダンプ抵抗を直列に入れて様子見です。 その他にもバグがありそうで、いつまで経ってもSWRが収束しません。

2025年の正月休みはバグ対策についやし、やっと成人の日になんとか基本動作が行えるようになりました。 最大の功績は、SWRを小数点以下2桁まで表示していたものを、SWRが2.0を超える状態では小数点以下二桁目を四捨五入して小数点以下1桁しか表示しないようにした事です。 自動整合はバリコンのどの位置からもSWR最小ポイントに行く訳ではなく、本来の整合ポイントの近くでSWR10くらいまで絞り込んだ場合、TUNEキーを押すと、SWR1.1以下に整合するようになりました。 この動作は、シングルバリコンを少々回したくらいではSWRが全く変化しないという、このATUの基本動作が影響しており、何度も時間をかけて自動整合を試みると、その内SWR最小ポイントを探しますが、それまで5分間くらいかかります。 5分も待つくらいなら、マニュアルでSWRが変化し始める角度までバリコンを回転させた後、自動整合をスタートさせると5秒から10秒くらいでOKとなります。 さらに例えマニュアルでも一度整合条件を記憶して置けば、数秒で整合状態になりますので、これ以上のアルゴリズ探しは諦めました。

一応50Ωのダミー抵抗で1.8MHzから28MHzまで整合できます。 整合状態の最小SWRは、10MHzのみ直列のインダクタを有効にして1.7くらい、その他のバンドは直列インダクタなしでSWR1.08以下となりました。

今後、他のインピーダンス負荷でも行えるかなどの確認を行いながら、バグ取りを続けます。

ステッピングモーターから出るノイズ対策はまだですが、モーターを回す必要がある時以外、PWM回路をST-BYにする検討もこれから行います。

Zmatchatu250113

デバッグ中のZ Match ATU
 

1.8MHzから28MHzバンドまで50Ωの抵抗負荷なら曲がりなりにも整合が取れるようになり、かつマニュアル操作でバリコンを思い通りに動かせるようになった事から、抵抗負荷の整合範囲の確認を行うと、これがさっぱり駄目になります。 15Ωの抵抗負荷でどのバンドもSWR2以下になりません。 500Ωの抵抗負荷ではSWR3以下になりません。また、いずれの抵抗負荷でもSWR5以下にならないバンドが大半です。 どうも、オリジナル設計のコイルをサイズダウンした事、バリコンの最小容量がオリジナルより10PFも高い事も影響しているようです。 そこで、原点に戻り、対策を考えねばならなくなりました。

 

デバッグ中にLCDがハングアップする問題が出続けていました。 CLKとSDAラインには100Ωをシリーズに追加してリンギング対策をしていたのですが、その他の制御ラインにも100Ωのシリーズ抵抗を追加したら、多少は改善しましたが、まだ完全では有りません。 

LCDのSPIクロックを8MHzにしても、LCD表示には数十msecの時間がかかり、送信側でのタイミングによては送信したデータが処理されないという問題が付きまとっていました。1回送信する度に150msec以上の待ち時間を取ると、ほぼOKなのですが、この状態では自動整合の動作が非常に遅くなり、当初目標としていた35秒以内に整合完了するという現用のVC式ATUと同じターゲットが達成できません。 そこで、ATUユニットからコントローラーへ送る場合、その前に送った送信データを受信し、ディスプレーを含むコントローラー全ての処理が終わったら、完了信号をATU側に返し、この完了信号を受信するまでは次のデータを送信しないという対応を行いました。

まだバグがあるかも知れませんが、なんとかハングアップなしで動いています。

次に15Ωから500Ωまでの抵抗負荷に対して整合しなかったり、整合してもSWRが2以下に下がらない問題に対して、コイルの巻き数とタップ位置を見直す事にしました。

この見極めはVK5BRがホームページで公開している、SVCとWVCの容量に最も近くなるようにコイルの巻き数やタップ位置を選ぶ事から始めます。

7MHzで50Ωの負荷抵抗に整合した時のバリコン容量はこのVK5BRのデータを読み取り

SVC=130PF WVC=30PF でした。

一方、私のATUのバリコンステップから読み取った7MHz 50Ωの時の各VCの容量は

SVC= 160PF WVC = 40PF

この状態はコイルのインダクタンスが不足している状態ですので、まず、メインのコイルの巻き数を13Tから14Tに増やし、SVCのつながるタップ位置を9Tから10Tに変更しました。

Maincoil14t_3

すると、整合時のVCの容量は以下のようになりました。

SVC=130PF  WVC=37PF

この状態で負荷抵抗を変えて確認したVC容量は下の表のようになりました。

40m_tunedata_2

 

 SVCはオリジナルと同じ容量になりWVCはやや多い値になっていますが、以降、この状態で全バンドの整合確認を行ってみます。

下の表の中で表示されているのは各バリコンの容量値ですが、実際に容量を測定した訳では有りません。バリコンの角度は180度を1500ステップとしてLCDに表示されますので、そのステップ数から、最小容量30P、最大容量350P、そして、その間はステップ数/1500で直線的に変化するとして計算されたものです。 実際値と合致はしませんが、傾向は把握出来ます。

Z_match_all_band_data_2

この表で、黄色の部分はモーターの4step分解能では自動整合出来ず、一番低いSWRになるようにマニュアルで設定した時のデータになります。(表をクリックすると拡大できます) このデータ取得中にメインユニットやコントローラーユニットがハングアップする事がありました。 メインユニットはRFキャリアによる誤動作で、コントローラーはLCDのSPIのようです。 しばらくはこれらの対策に時間がかかりそうです。 

まず、メインユニットのハングアップ問題から。 症状は21MHz以上のバンドで100W CW送信すると、ハングアップするものです。 リレー、角度センサー、SWR計の順序でコネクターを抜いても改善しません。 ステッピングモーターのコネクターを2個とも抜くと、28MHzまでOKとなります。 全てのコネクターを挿入した状態で、オシロスコープのGNDをメインユニットの基板のGNDに繋ぐと、24MHz以上はNGですが、21MHzはOKとなります。 コントローラーとメインユニット間のケーブルにコモンモード電流が流れているみたいなので、測定してみました。 オシロのGNDを繋がないときが70mA以上、オシロのGNDを繋ぐと35mAくらいになります。 そして、オシロのGNDを繋がない状態でステッピングモーターのふたつのコネクターを抜くと、5mA以下になりますが、ATUとして動作しません。 ここまでの確認で、モーターのワイヤーから漏れたRF信号が悪さしている事は確かなので、まず、モーターの電源ラインの+側とGND側に15uHのチョークコイルを入れました。 さらに、コントローラーから供給する12Vラインにコモンモードフィルターを追加しました。 このコモンモードフィルターは村田製のSMDタイプで品番がPLT5BPH5013R1SNという長い名前になりますが、許容電流3.1A 10MHzでのインピーダンスが350Ωくらいのものです。メイン基板にこの変更を盛り込んで、メインとコントローラー間のケーブルに50uHくらいのフェライトコア5個によるフィルターを付けた状態で28MHz 100W CW送信でも誤動作しなくなりました。 このフェライトコアによるコモンモードフィルターの効果を調べる為に、巻いたコアを1個づつ外していくと。最後の1個ではNGで2個のコアの時OKとなります。 恒久的なフェライトコアによるコモンモードフィルターを作る為に2個のコアの時のインダクタンスを測ると18uHでした。 この数値はメモして置きます。ちなみにこれらの対策後のケーブル上のコモンモード電流は7mA程度まで小さくなりました。

21MHz以上で自動整合は出来ないが、マニュアルならなんとかSWR1.1以下に追い込めるという現象がありましたので、自動整合の時の移動ステップを最小1stepとしてみると、21MHz以上のバンドではOKとなりますが、7MHz以下のバンドではベルトのバックラッシュが影響しているようで、なかなかSWRが収束しません。 最小ステップは2stepの時、全バンドOKになります。 当初この細かいstepは不可能だから、スプレッドバリコン方式でやると考えていましたが、いざスタンバイ機能をプログラムに追加して動作させると、モーターがスタンバイ状態になっても、ベルトでつながれたバリコンの負荷が重くて、モーターのプーリーは動きません。 スタンバイ状態でもモーターの軸の角度は保持しているようです。 以降の検討は最小2stepのままでどれくらいステップ角度がずれるか見てみる事にします。  何度も整合テストを行っていると、SWR1.1以下になるVCのステップ数は多少バラツキます。原因はSWR最小ポイントではなく、整合途中に最初にSWR1.1以下になったポイントを整合ポイントと定義しているからですが、この1.1以下の範囲は意外と広く3.5MHzで10くらい、28MHzで3くらいはあります。

Zmatch_spi

左の波形は100Ωを追加した後の、SPIクロック波形です。 一番上がPICマイコンのCLK出力。真ん中は5V-3.3V変換IC74LCX245の出力端子につながった100Ωを通過した波形。 一番下は、約20cmのワイヤーを経由してLCDの端子に差し込まれたコネクター端子の波形です。いずれも少しづつ劣化はしていますが、ハングアップが起こりそうなハイレベルのパルスはないし、マイナス側にはみ出すパルスもありません。 LCDがハングアップするのでは無く、コントローラーに使用されているPICがハングアップするのかも知れません。 前述のように、RF混入によるコモンモード電流をかなりのレベルで対策出来ましたので、これでしばらく様子を見る事にします。

50Ωの抵抗負荷にて、WVCを最大容量にしてもSWRが1.1以下にならなかった10MHzですが、実際のアンテナのインピーダンスは240+J650Ωくらいなので、実際のアンテナに接続してから対策を考える事にします。

コントローラーをケースに入れました。 まだデバッグ中ですので、LCDの保護シートが付いています。また、ここまで出来て電源スィッチの在庫が無い事に気が付き、慌てて秋月に注文しましたので、まだ取りついていません。 今回のBOXは中華製で直取りです。送料込みで1300円くらいでした。 前後のパネルが電気的に接続されていないという構造では有りますが、コントローラー程度なら問題ないでしょう。 材料はアルミでは無く鉄板で青色に塗装されていました。パネル面には光沢印刷用紙の裏側にインクジェットプリンターで印刷した紙を張り付けましたので結構綺麗に仕上がりました。(光沢面に印刷した場合、すぐに傷がつくのであえて裏側に印刷)

Zmatch_case_in1

Zmatch_case_in2


一応、気が付いたバグは対策しました。 このATUを実用する為には、屋外作業が山の様にありますので、以後の作業は温かくなる春まで待つことにします。

ここまでの配線図とマイコンプログラムを公開します。 

ATU本体回路図 zmatch_atu_main_03.pdfをダウンロード

コントローラー回路図 Z-Match-ATU_contoroller_02.pdfをダウンロード

ATU本体プログラム Z_Match_ATU_main_03.cをダウンロード

コントローラープログラム Z_Match_ATU_controller_3.cをダウンロード

ヘッダーファイル Z_Match_FreqRang_0.hをダウンロード

         StepFreq_List_1.hをダウンロード

         Font9.hをダウンロード

         Font12.hをダウンロード

Atchcontpannel

電源SWが入手できましたので、紹介します。 使った感じでは、少々重さがたりませんね。プッシュSWを押す時、左手でケースを押さえていないとコケそうです。
 

このATUには3種類のアンテナを使い分けるアンテナセレクターは付いていません。 アンテナセレクターは別BOXとしてマストに括り付けます。

 

NDEXに戻る

2024年10月30日 (水)

Z-Match ATUの製作 2

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

最初に手配した80歯のタイミングプーリーの直径は用意したケースの内寸以内だったのですが、バリコンの最大容量を検出する為に用意したフォトセンサーの遮蔽体がケースの内寸をオーバーし、天板を取る付けられないという問題がありました。(前回記事) この時のタイミングプーリーの直径は55mmでしたが、フォトセンサーの遮蔽体の直径は73mm必要となる事を見落としていたのが原因でした。 対策として60歯のタイミングプーリーに交換する事にしました。 60歯のプーリーの直径は44mmでこれにフォトセンサー用の遮蔽体を追加した時の直径は62mmとなり、なんとかケースの内寸に収まります。 この変更が可能になる条件はステッピングモーターの1/4マイクロステップが解決しました。 従来の80歯のプーリーの場合、モーターは1.8度の1/4(0.45度)刻みで回転しますが、バリコンはタイミングプーリーの減速比 1/5で0.09度刻みで回転します。 この0.09度刻みはベルトのバックラッシュで吸収されてしまう角度で実質3ステップとなる0.27度が最小分解能でした。 今回60歯のプーリーを使えば、その減速比は1/3.75となり、VCの最小回転角は0.12度となります。 ただし、ベルトのバックラッシュを吸収できるステップではないですが、この2倍の0.24度ならほぼ確実にバックラッシュを超える事ができます。

以上の考察からプーリーとベルトを変更する事を決断し、かつ、ベルトのたるみの調整機能が無かったシングルバリコン側にもその調整機構を追加します。 

下の写真は60歯のプーリーに交換し、かつそれにマッチしたベルト掛けを行った状態です。

60t_pully_1

60t_pully_2

上の写真はベルトの張力調整を兼ねたバリコン軸のタワミ補正治具(左側)を取り付けた状態です。

 

60t_pully_3

フォトセンサーの出力がリンギングして、誤動作する為、コンデンサを追加して、動作の安定化を行いましたが、その時のコンデンサの容量の許容誤差の範囲が狭いという問題がありました。 そこで、このフォトセンサーの仕様書を入手して確認したところ、標準の使い方はエミフォロ回路で有る事が判りました。 そこで、エミフォロ(エミッターに負荷抵抗を接続した正式名称 エミッターフォロワー回路)に改造すると、きれいなスィッチング波形が得られました。コンデンサは無くてもOKなのですが、前回追加した0.1uFのままで進行します。 ただし、この変更で論理も逆転しますので、プログラムも修正しました。 そして、マイコン基板を接続し、やっと前回の80歯の時の動作まで再現できました。

ここから、いよいよ本命である自動整合機能の検討に移る事が出来る様になりました。

MAIN Unit 回路図   zmatch_atu_main1.pdfをダウンロード

コントローラー回路図 Z-Match-ATU_contoroller-1.pdfをダウンロード

ATU本体のプログラム Z-Match-ATU-main_02.cをダウンロード

ここにアップしましたプログラムは開発途中のもので、自動整合システムはまだ稼働していません。 唯一完成したのが、1/4マイクロステップで動作するステッピングモーターの台形駆動システムのみです。

  

最初にSWR計の動作チェックを行いました。 7MHzで動作チェックしようと、FTDX101Dをつなぐと、すごい受信ノイズです。S9あります。 最初、何のノイズか判らなかったのですが、ステッピングモータードライバーのPWMが原因でした。 以前、アンテナワイヤーをドライバーICに近づけるとS7のノイズが出ていましたが、アンテナ線を離すと、距離に応じてノイズは小さくなり、1mも離すと無視出来るくらいになりましたので、ここまでひどいとは考えていませんでした。 この状態ではアンテナチューナーとしては使い物になりません。 完全な致命傷です。

解決策があるのかを含めて再検討必要です。

NDEXに戻る

2024年10月 6日 (日)

Z Match ATU コントローラー

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUの本体(Main Unit)のステッピングモーターの初期設定や、プリセットした位置にバリコンを回転させる機能は完成しましたが、自信でSWRを測りながら、SWR最小ポイントを探すという本来のプログラムは全く手が付けられていません。 理由は、ATUをコントロールするコマンド送出手段やATUの状態を手元で確認できる手段が未完成だからです。

そこで、ATUのメインユニットの開発は、途中で止めて、コントローラーの制作にかかる事にしました。 コントローラーとして完成度の高いのは前回製作し現用中のバリコン式T型ATUですが、マイコンが古くて、そのまま利用する事が出来ません。 従い、さらにそれより前のリレー式ATUのコントローラーのプログラムをコピーして、周辺機器の機能はリレー式のプログラムから、動作の基本はバリコン式のプログラムからコピーし、コンパイルすると、エラーばかりのプログラムでしたが、約1週間、奮闘した結果エラーも収まり、ATUに向かってコマンドを送る事が出来るようになりました。

Zmatch_controller_0

上のボードはいつもの仮パネルにより動作確認できるように組んだコントローラーの全体です。 

Z Match ATUコントローラー配線図 Z-Match-ATU_contoroller-0.pdfをダウンロード

コントローラーとATU間の通信確認をしましたが、さっぱり通信出来ません。 UART通信の初期設定に帰って原因を確認していますが、どうも送信時のP-MOSのスイッチングスピードに問題が有りそうです。 デジタルオシロで観測するとパルスのデューティが変わっていました。 

Flistinitcomp1

そこで、PICKit3の修理に使った+/-50mAの出力能力がある74LVC1T45というラインドライバーに変更し、このドライバーの極性に合うようにUARTの送信極性も変更すると、晴れて双方向通信が出来るようになり、コントローラーから周波数リストをメインユニットのEEPROMに書き込めるようになりました。ここまで1週間かかっています。

双方向通信が可能になった最初の機能追加は、マニュアルによるバリコンのアップダウンです。キーのチョン押と連続押に対応して、バリコンが回転できれば、ATU化する為のアルゴリズムを突き止める事ができます。 チョン押の時のバリコンの回転角度は後で好きなように変更できますが、この機能が完成するまで3日間かかりました。

このマニュアルでバリコンを回転させる時、29MHzでキーのチョン押を行うと、SWR最小ポイントを飛び越していく事が判りました。この実験の時のモーターの回転ステップは1回のチョン押で10ステップでしたので、飛び越しが起こらないように1回のチョン押で2ステップしか回転しないようにすると、バリコンを180度回転させるための時間が10秒以上かかってしまいます。 特に1.8MHzの時のシングルバリコンのSWR変化率は29MHzのダブルバリコンの1/10くらいしか無く、2ステップのモーター回転ではSWRはほとんど変化しなく、自動整合の時間が大幅に長くなってしまいます。 そこで、シングルバリコンとダブルバリコンのチョン押時のステップ数にも差を設ける事にしました。 

その後の検討で、このシングルバリコンとダブルバリコンのステップ差は無しにし、最小ステップは2という事で落ち着いています。

ここまでソフトが出来た時点で、一旦、ATUを分解し、バリコンプーリーを80歯から60歯に変更し、バリコン最大容量検出用のフォトセンサー回路と位置を変更し、ATUの天板をかぶせる事が出来るようにします。 このプーリー変更に伴い、タイミングベルトも交換になりますが、プーリーを変更して、ベルト長を実測し、中国の販売店に注文しました。 注文して5日後にベルトが到着しましたので、その日の晩に交換作業を行い、実働テストまでこぎつけました。

 

NDEXに戻る

2024年9月22日 (日)

Z-Match ATU 製作開始

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

Z-Matchチューナーに必要な高耐圧2連バリコンを実現する為、シングルバリコン2個をステッピングモーターで同期駆動するバリコン駆動機構が完成しましたので、これをATU化する為にケースインしました。

Zmatchatu_system1

モーター駆動バリコンに初期化位置検出用フォトセンサーを追加して、バリコン機構は完成です。 SWRを検出するCM結合器も追加しました。 今回、ケースとしてコメットのCAT-300のキャビネットをつかいますが、コイルがオリジナルのサイズではどうしても収納できなかったので、直径を57mmから47mmに変更しました。さらに高さを抑える為に銅線の中心ピッチを6mmから4mmに変更し、ほぼ同じ巻き数で同等のインダクタンスが得られるようにしました。このピッチを狭めた事により銅線間のショートの可能性が発生しますので、オリジナルではコイルサポートが2か所でしたが、これを4箇所に増やしました。 この絶縁材のサポーターは、100均の板厚3mmのまな板で作りましたので、銅線を通す穴径は2.2mmとして、前回より簡単に作成できました。 このケースの中には、2次コイルに直列に入るコイルと1.8MHz対応のコンデンサ追加の為のリレーはまだ実装しておりませんが、そのスペースは確保してあります。 ATUとして動作させるためのコントロール回路はこのケースの外側に小さな金属ケースを取り付けその中にマイコンを実装した基板を収納させます。 モーターを配置するスペースが無く、やむなくふたつのモーターを縦に重ねたところ、ケースの天板が当たります。 最終的には当たっているコネクターの向きが横になるようにモーターの取り付けを90度回転させ、リード線が隣のバリコンに当たらないように線処理するつもりです。また、モーターを固定するアングルもカットします。

Main Unit 配線図 zmatch_atu_main0.pdfをダウンロード

配線図はVCのモーター駆動に関する動作は確認済みです。 nEN端子にSWを設けたのは、頻発するプロググラム書き換え時、モーターが勝手に起動するのを防ぐ為、プログラム書き換え中、モーターをOFFする為です。

ATU本体と基板全ての配線が完了し、動作チェックを行った後、マイコンソフトの開発に取り掛かります。

ATUの開発も初期のバリコン式ATUから数えて4回目になりますので、結構ノウハウも溜まってきて、このATUのMainユニットには操作キーは1個もありません。 Mainユニットの基本ソフトができたら、すぐにコントローラーを作成し、全ての操作はコントローラーから行います。このため、UARTの通信速度は9600ボーに設定し、Mainユニット内の情報を出来るだけ早くコントローラーの表示器に表示する事を目標とします。 今までは、Mainユニットの中にプリセットコールが有効なBand分割を予めプログラムしていましたので、アンテナを実際にアップした時、周波数分割が実態と合わなくなる事がありました。 周波数変更してもSWRの変化が少ない場合、問題ありませんが、隣の周波数帯に移る前にSWRが1.5を超えるような場合、ATU本体を一度降ろして、周波数分割データを書き換える必要がありました。 今回のATUより、この周波数分割データをコントローラーから書き換える事が出来るようにします。 

ATUの実装状態として、このATUはベランダに置き、出力は平衡出力Onlyとします。 そして、実際のアンテナの給電点まではラダーラインで給電し、マスト上に括り付けたアンテナ切り替え器にて、ループや垂直、ロングワイヤーの選択が出来るようにします。 この構造により、マスト上のBOXはアンテナ切り替えのリレーだけとなり、小さなBOXに変更して風圧を軽減できます。 また、ATUのメンテも楽になります。

 

製作開始してから1週間、やっとメインユニットの基板が完成しました。

Zmatchpcb1_3

まだ、電源系統の確認が終わったばかりですが、以降実際にソフトを作成し、まずは各バリコンが予想通り動くかの確認になります。 すでに無負荷での動作確認は、前回の記事で紹介しておりますが、負荷がかかった状態で夏冬の環境でも動作出来る条件の確認が必要です。 それを実験出来るような恒温槽はありませんので、ある程度の余裕を見て、最低電流の値を決定する事になります。 このへんは決まった計算式がある訳でもありませんので、かなりいい加減なあてずっぽで決めます。

とりあえず、ふたつのモーターが動作するようになりましたので、2連VC側のモーターが正常に動作する最小電流を調べてみました。75mAで誤動作が起こります。100mA、室温26℃では異常なしでした。 余裕をみて、250mAで電流制限をかける事にしました。 シングルVC側も250mAに設定しました。 以降、この状態で運転し、不都合があれば都度最適値に修正する事にします。

次に、電源投入したら最初にモーターの起点を初期設定します。 やり方はバリコンの位置がマイコン上から不明の状態ですので、まず、正回転(容量が抜ける方向CW)へ360度回転させ、フォトセンサーがOFFからONになる所見つけて一旦停止した後、同じ方向に25度だけ回転させ、次に逆回転(CCW)させ、フォトセンサーが容量最大位置でONになるのを検出したら、その位置で停止し、この位置をゼロとし、180度の位置(容量最小位置)を500と定義します。 このイニシャル動作時、モーターは1.8度ステップ、200Hzのクロックで回転します。 この200Hzはマイコンの中のクロックの事で、モーターのパルス周期(PPS)はこの半分の100PPSとなります。 このイニシャル動作の最初の回転の時は、バリコンの現在位置が全く判りませんので、360度回転させ、VC最大容量付近で停止させ、そこから、本当のゼロ番地を探しにいくのですが、何回もテストしていると、容量最大では無く容量最小位置に止まる事が頻発しました。 ソフトの作りが悪いのかと1週間近くああでもないこうでもないとやったのですがうまくいきません。 とうとうハードの部分まで疑いデジタルオシロをつないで、フォトセンサーの出力をモニターすると、ONの時は問題ないのですが、OFFのとき、電源電圧をフルスィングするほどのリンギングが出ており、このリンギングのバラツキで誤動作する事が判りました。対策は、コレクタ抵抗を12Kから120Kに変更し、かつコレクタとGND間に0.1uFのコンデンサを追加する事で解決しました。 しかし、このコンデンサを0.047uFまで小さくしたり、0.22uFまで大きくすると即誤動作しますので、最終的には温度変化を含めてカットアンドトライが必要になるかも知れません。(配線図は修正済み)

この最初のモーター回転時、数100msec後に一旦モーターが停止し、またすぐに回転を始めますが、この時間がランダムで変化し、時には一時停止しない事もあります。 原因が判らないので、ダミーで45度くらい回転させた後、VCの容量最大位置を探すようにしました。 また、この容量最大位置を探す時は逆方向(CCW)で行うとイニシャライズ時間が短くなる事が判りましたので、モーター回転方向も変更しました。

次に、ラストデータとして記憶されているふたつのVC位置を読み出し、その位置にVCをプリセットして、初期設定完了です。 このプリセット時は通常回転ステップとなる1.8度の1/4(0.45度)、400Hzのクロック(200PPS)で動作します。 180度の位置は2000ステップ目となります。 バリコンの回転速度は、前回作成したT型ATUのVC回転速度と同じくらいです。 しかし、何回もテストを行うと、正転と逆転の時のバリコンの回転角度が一致しません。 脱調と呼ばれる現象らしいのですが、その原因はモーター電流や、ステッピング周期に関係があり、かつモーター自身の個性とドライバーのアンマッチなど調べれば調べるほど心配ごとが出てきます。 今回の脱調の原因は電流ではなく、ステップ周期でした。400Hzクロックのとき脱調が起こり、200Hzでは起こりません。しかし、200Hzで1/4マイクロステップでは時間がかかり過ぎます。 モーターの仕様書では無負荷状態で、最大起動レートは1000PPS以上となっていますが、負荷をかけた場合どのくらいになるかは判りません。 これは実際の負荷で限界値を調べるしかなさそうです。 今後さらに脱調対策を進めていきます。 ここで台形駆動という方式について勉強しました。 高速でモーターを回転させたいときは100ppsくらいでスタートし、徐々に回転数を上げ、最高速度で一定期間回転させた後、目的の角度に近づいたら逆に徐々に速度を落とし、100ppsまで落として停止させるのだそうですが、それをC言語で組んでトライする事4日間。やっと最高速度400ppsまで実現できました。 

この1/4ステップで400pps駆動中の騒音は1.8度基本ステップで駆動中の騒音に比べ、大変静かです。 そこで、電源投入直後のイニシャライズも1/4マイクロステップで実行してみました。 方法は、VCの容量最大位置を検出し停止したら、この位置を仮の原点として、CW方向に100ステップ(VC角度で9度)回転させた後、1.8度ステップでCCW方向に回転させ、停止した位置を真の原点とします。 このやり方の場合、騒音がうるさいのは真の原点を見つける時の9度の回転だけですから、大幅な静音化が実現できました。 しかし、この動作は電源OFFの期間が3分以上あるときだけで、数秒から3分以内のOFF時間では、最初の1/4マイクロステップ動作がうまくいかず1.8度ステップで回転する時間が長くなります。 原因は電源回路に2200uFの電界コンデンサが2個挿入されており、電源OFF時この電解コンデンサの放電が遅く、モータードライバーがリセットされないことのようです。 ICの説明ではSTANBY端子をLOWからHIGHにした時RESETされると書いてありますが、RESETされるのは一部のみで、IC全体がRESETされるのではないようです。 対策として、なるべく早く放電するように電界コンデンサの両端に1.5KΩの抵抗をパラ付けしました。 この結果、電源OFF後、5秒以上経つとICがRESETされるようになり、正常にイニシャル動作を行います。

ATUとしての組み立て、配線が完了しました。 いざ、天板を取り付けようとしたら、フォトセンサー用の遮蔽板も天板に当たります。 これが判った時点で、天板を取り付けるのは一時諦めたのですが、前述したモーターのコネクタの高さ変更が一応できましたので、プーリーの径を小さくして天板がかぶるように検討するつもりです。

マイコン基板の中に、12Vから6Vを作るDCDCコンバーターをマウントした為、この基板を収納する金属ケースの蓋も取り付けられません。 これより小さなサイズのDCDCコンバーターは沢山あるのですが、スィッチング周波数50KHzというコンバーターはこれしか無かったので、やむなしです。 小型のDCDCコンバーターのスィッチング周波数はMHz帯のものが多く、アンテナのそばに置く事が出来ません。 リレー式ATUやバリコン式ATUの基板はオープン状態でも問題なかったので、とりあえずこのまま行きます。 多分シールドは不要と思われます。

Zmatchpcb2

Zmatchatu_system3

Zmatchatu_system4

Zmatchdcdc2

ステッピングモーターのドライバー回路はモーター停止中もPWM制御による電流制限回路が動作し、ノイズを発生させます。ATUという装置はアンテナ直下もしくはアンテナの一部に組み込まれるものであり、ノイズの発生は厳禁です。 現在、DCDCコンバーターのサイズが大きすぎてドライバー回路を収納している金属ケースの蓋が閉める事が出来ません。 これが原因で受信時に問題が生じてもこまりますので、ノイズの少ない小さなDCDC電源を再度探す事にします。 すると、アマゾンで65KHzスイッチングのDCDCコンバーターが見つかりました。 6個まとめて690円くらいで出ていましたので、これを手に入れ上の写真のように交換しました。 HF帯へのノイズはまだ確認できていませんが、多分OK?。また、バリコンの金属軸とつまみを絶縁する為に、バリコンのシャフトはプラスチックの丸棒を継ぎ足してありましたので、これにプーリーを取り付け、タイミングベルトを張ると、ベルトの張力でプラスチックの軸が曲がってしまいました。 対策として、軸の先端の位置を固定するプラスチックの板を取り付けました。

ATUの配線は完了したので、モータープーリーを指で回し整合テストをやってみました。一応3.5MHzから29MHzまで10Ωから200Ωまでの純抵抗負荷に整合させる事はできました。 2連のバリコンはかなりクリチカルで、1度くらいの角度でSWR1から3くらいまで大きく変化します。 一応設計上は0.09度ステップでバリコンは回転しますが、ベルトにバックラッシュがありますので、それがどのくらいになるかは判りません。 この課題は、早くコントローラーとメインユニットのプログラムを完成させ、確認するしか有りません。

10月の下旬に差し掛かりましたが暑い日が続いています。 ATUのバリコンをコントローラーからリモート操作する事が出来るようになりました。 アンテナ端子に50Ωのダミー抵抗を繋ぎ、アンテナアナライザーでATUの整合テストをマニュアルで行ってみました。 キーのチョン押で10ステップ変化するようにソフトは組んであります。1.8MHzや7MHzは全く問題有りません。なんなくSWR1.01程度まで合わせ込みが出来ますが、29MHzではチョン押しでSWR最小ポイントを飛び越えてしまいます。4ステップくらいがちょうど良さそうです。

以後、ひとつの機能を追加する度にATUユニットとコントローラーを交互に開発しながら進める事にします。 コントローラーの設計と製作は次のページにあります。 

 

NDEXに戻る

2024年9月 8日 (日)

モータードライブバリコン機構(Z-Match ATU)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

前回の記事はこちら

バリコンをステッピングモーターで駆動するメカニカル構造の設計を行い、入力の単バリコンと2連バリコンのドライブ機構の構想が完成しました。

Zmatchayu_motor_system1

タイミングベルトの長さは9.6cmくらいから350cmくらいまで販売されており、20cm程度の長さの場合2mm刻みで、30cm程度の長さの場合、4~6mm刻みで販売されていますが、その長さがどこの寸法なのか判らないので、とりあえずベルトの内周寸法と決めて中国のメーカーに発注しました。このベルトも5日間で届きました。 ベルトの価格と送料が別に表示されていましたので、それを合計しても国内で買うより安いです。 いざ、最終金額を計算すると、2本買ったら送料も2倍になるらしく、製品の価格の一部を送料に上乗せし、製品がいかにも安く見えるようにインターネットで表示する通販の常とう手段でした。 このベルトが手に入りましたので、36度の気温の中で汗だくで作業を行い組み立てたモータードライブ機構が下の写真です。

Zmatchayu_motor_system2

Zmatchayu_motor_system3

アルミアングルの穴あけ精度が悪く一部のアングルは傾いていますが、なんとか完成しました。 ただし、買ったベルト長が短い時は対処のしようがないので、若干長めに長さを決め注文したのですが、ご覧のとおり、たるみだらけです。 張力の微調整の方法は考えてあるのですが調整範囲を超えてしまいまいそうです。 張力調整のアイドラーを入手できましたので、確認してみると、案の定、微調整範囲を超えてしまい、ふたつのベルトとも短い寸法のものに交換が必要になりました。 新しいベルトの寸法は短い法で2mm刻みで3種類、長い方はいきなり8mm短いベルトを発注しました。 短いベルトは秋のキャンペーン中という事で1本140円(送料無料)、長い方はキャンペーンが無く送料込みで1500円くらいでした。

注文してから4日後には届きました。 短い方は3種類の長さの中間の1本が、長い方は指定した寸法が1種類のみでしたので、予め用意していたアイドラの高さ調整範囲に入り、2mm厚のスペーサーを挟む事で最適となりました。 下の写真は最終調整状態です。 ところで、長い方は同じものが5本届きました。 どうも私が5本まとめ買いになる事を見逃したみたいです。 ちょっと高いなあと思っていましたが、私のミスでした。

Zmatchayu_motor_system4

ここまで出来ますと、次は駆動回路を含めたATUの回路設計に移ります。

 

 

INDEXに戻る

2024年8月26日 (月)

Z-Match ATU ステッピングモーター

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

前回の記事はこちら

バイポーラステッピングモーターとモータードライバー及び5V2AのDCDCコンバーターがそろいましたので、初めてのステッピングモーター動作確認です。 確認する為に、まずPICでモータードライバーのテストプログラムを作ります。

テスト回路配線図 steping_motor_test.pdfをダウンロード

テストプログラム STEPPING_MOTOR_Test.cをダウンロード

実際のATUの場合、EEPROMが1Kバイトは必要になりますが、手持ちが無いので、NB-ATUのコントローラーに使っていたPIC18F25K42でテスト用のプログラムを作り、モーターを思うようにコントロールできるかどうかのテストです。 テストプログラムはTimer1で周期的な割り込みを発生させ、割り込みが発生する度にモーターのSTEP入力を反転させます。 反転周期の2倍がワンクロックとなりその逆数がクロック周波数となります。実験ではクロック周波数100Hzで行いました。 またこのSTEP入力は常時LレベルでMOTOR ON SWを1回押すと、指定したパルスの数だけクロックが発生し、最後にLレベルで停止するようにソフトを組んであります。 ソフトの行数が多いのはMOTOR ON SWのチャタリングを除去する為の処理です。

17hs3401s

上の表に出てくるモーターの型番の最後にSの文字が付きませんが、この実験で使用しているモーターの型番は17HS3401Sで、中文で書かれた仕様書では、定格電流1A, 定格電圧7.3V、コイル抵抗3.4Ω となっており、他の解説資料に書かれている、定格電圧=定格電流xコイル抵抗 の定義に合いません。 そこで電圧3.4Vの電源と電流リミッターを0.25Aに設定して、テストを開始しました。 基本となるワンステップ1.8度の回転は成功しましたので、次は基準の1/2となるワンステップ0.9度にトライ。 ところが、うんともすんとも言わず全く動きません。 配線がわるいのかと全接続をチェックしましたがまったくダメ。 電流制限を1Aにしてもモーターが起動しません。 試しに1/4はどうかとテストすると、やはり起動しませんが、電源OFF状態でモーターのローターを何度分か回転してやると回転を始めます。一度回転を始めて、止めてまたONしてもちゃんと回転します。 起動トルクは1/2ステップより1/4ステップの方が大きい様です。 従い、以後、1/4ステップのみで実験を継続する事にしました。

そして、確実にモーターが起動する為には、モーター電圧は5V以上、電流制限は0.75A以上の設定が必要という事がわかりました。 安定してドライブ出来る為にはモーター電圧6V、電流制限1Aとし、モーター回転中、及び停止中の12V電源の消費電流は0.45A程度で有る事が判りました。 この状態は、ステッピングモーターの解説書にある定格電圧の2倍くらいの電源電圧に設定し、電流を定格以下で使うという説明にはまだ合致しません。さらに停止中は電流制限を0.2A程度まで落としても、静止トルクは指では回せないくらい大きい状態で、この時の12V電源の全電流は100mA程度になりました。 この静止トルクを維持出来る最低電流は再検討する事にします。

この実験の中で、得られたその他の情報で重要なのが、電源OFF時の停止位置と電源ON時の起動位置の誤差でした。1.8度ステップ以下のステップの途中で停止したモーターは電源をOFFしない限り、停止した位置から起動しますが、一度電源をOFFすると、静止トルクは無くなり、一番近い1.8度の停止角度の位置に移動してしまいます。 次に起動するときは、電源OFF前の位置からずれた角度位置から起動する事になります。 この事は、電源を再投入する毎に機械的位置のイニシャライズが必要であると言う事です。 これは、バリコンの最大容量または最小容量の位置を電源ONする度に何らかの手段で検出し、その位置をゼロ番地として回転ステップ数を刻む必要がある事になります。 さらに、このイニシャライズ動作時は基準ステップ(1.8度)で駆動しないと駄目だという事も判りました。

ATUの電源をONにしたらその後電源を切る事ができませんので、モーターSTOP中の電流を最低レベルに切り替える回路を追加必要です。 さらに、モーターがSTOPする度に、現在位置をEEPROM上に記憶させて置かないと、電源OFF後に前の状態に復帰出来ないという事になります。 さらに、受信中も電源をOFFできないので、この間に発生するノイズも確認しておかねばなりません。 モーター駆動中はPWM電流でドライブしていますので、それ相当のノイズが発生するとは考えられますが、モーターOFF時の電流制限もPWMで行っているので、ノイズは消えません。 いずれにしても、事前確認が必要です。

Mdriver3

上の写真はテスト用のマイコン基板とモーター、DCDC電源、電流制限値(0.2x5A)を測りながらテストしている状態です。 電流制限は1Aですが、モータードライバーのパッケージを指で触ってもほんのりと温かいですが、ずっと触っていられる状況です。 メーカーの説明によると基板が熱伝導の良い金属製の基板に絶縁膜を作りその上に導体を印刷した構造の物で、基板自身が放熱板になっているとの事。さらにその基板に銅製の放熱板をハンダ付け出来るようにしてありますが、私が使うATUでは、追加の放熱板は不要です。 写真の基板上には配線図にない部品も映っていますが、NB-ATUのコントローラーで使用した部品がそのまま残っています。実際に配線されている部品は配線図通りです。

Mdriver2

左が、約1000円のモータードライバーですが、最初、この基板の裏表を間違って、ピンを半田付けしてしまい、一度半田付けしたpinを一本づつ引き抜いて再半田する羽目になってしまいましたが、壊れもせずにちゃんと動作しています。

テスト基板に直接ハンダ付けしてしまうと、本番の基板に移すのが大変ですから、ICソケットを用意して、抜き差し出来るようにしましたが、このドライバーに付属していたピンは太くてICソケットに挿す事が出来ませんでした。 秋月で手配した細いヘッダーピンがありましたので、これに交換して、写真のように実装出来ました。

 

モーター停止時のみ電流制限値を小さくする為、VREF信号が(2)ピンに接続されるよう基板の裏にあるショートパターンをハンダでショートしてあります。

モーター静止状態のロックトルクを確認しました。 制限電流設定で50mAでは手でモーター軸を回す事ができますが、100mAの場合、軸を回す事が出来ません。 設定は余裕を取って150mAとします。 この時の12V電源側の電流は25mAでした。 25mAはリレーを1個ONしている状態に等しく、電源的には全く問題有りません。 

次にノイズの確認です。 受信機のアンテナ端子に接続された同軸ケーブルの先端に50cmくらいのワイヤーを接続し、このワイヤーをモータードライバーのICの上に置いてみました。 すると、モーター停止中、回転中いずれも、SメーターがS8まで触れます。 最大の振れは28MHzでした。 ICとワイヤーの距離を30cmくらい離すとS3くらいまで落ち、1m離すとS1くらいになります。 モータードライバーの回路はシールドした方がよさそうです。モーター電源をOFF するとノイズは無くなりますが、1.8度の基準ステップ以下のマイクロステップモードで使う場合、電源OFFしたとたん、モーターの停止位置が一番近い基準ステップの位置に移動してしまうので、電源をOFF出来ません。

この実験の途中で新たな問題が発見されました。 モーターが回っていないときは電流制限を150mAに設定し、モーターが回り出す150msec前に電流制限を1Aに変更してもモーターが起動しません。 電源投入時点よりずっと電流制限1Aにして置き、一度モーターが回転したあと、停止した後で電流制限を150mAにした場合、次のモーターON前に電流制限を1Aに変更すると正常に動作します。 

このイレギュラーの動作を解消する為に、カット&トライを繰り返した結果、以下のシーケンスで完璧に動作するようになりました。ここまで判ったのが10月中旬の最後の金曜日でした。 モーター電圧は7.3V、電流の制限値は250mAです。

①マイコンICのSTEPパルス発生用のタイマーをOFFにする。

②電源投入直後nENをL(active)にして置き、STBYモードで1/4マイクロステップの設定を行う。

③10msec後にSTBYを解除して、さらに10msec待つ。

④以後、モーターを回す前に必ず該当するタイマーをONし、モーターをストップさせた時は必ずタイマーをOFFにする。

⑤1.8度の基本ステップで動作させたい時はMODE1,MODE2をLとして、1.8度ステップの動作が終了したら、設定済みのマイクロステップモードに戻す。

⑥以後、①から③までの処理は行わない。

これで正常に動きだしました。モーター回転中の12V電源の電流は150mA弱、STOP中は25mAです。 そして、このモーターの仕様書を目を凝らして読むと、どうもコネクターの並びが逆ではないかと疑いが生じました。

Driverconnector_1

そこで、コネクターを180度反転してみました。すると、1/2ステップモードでもモーターが回転するようになったのですが、ワンステップ1.8度のノーマルステップでした。その他に、1/8とか1/16を試しましたが、1/8と1/16は同じステップで1/16くさいです。 もしかしたらモーターの構造により、IC屋が意図したドライブタイミングの通り動作しない事もあるのかも知れません。 幸い、1/4ステップは正常に動作していますので、良しとします。

モーター停止時、電流制限を小さくする手段、nENを制御する手段を追加した回路図とテストプログラムです。

配線図:steping_motor_test_1.pdfをダウンロード

ソフト:STEPPING_MOTOR_Test_1.cをダウンロード

ここに示しました、モータードライブプログラムは、初歩的な動作確認用です。 実際に実用しているプログラムでは有りません。 もし、実用的なプログラム例が必要な場合このページを参照して下さい。

 

一応ステッピングモーターの動作確認ができましたので、バリコン駆動機構の設計にとりかかります。 このATUは中古のコメットのMTUのケース内に収納する予定なので、機構のサイズを含めて検討開始しました。

 

INDEXに戻る

2024年8月12日 (月)

Z-Match ATU

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

10数年前に、160m対応のATU候補として試作し、低インピーダンスのアンテナに対する整合テストを行い、ロスが多いと一度は諦めたZマッチアンテナチューナーでしたが、MMANAで計算しただけのアンテナインピーダンスは、実際のアンテナとかけ離れており、どんなに低くても実際の160mバンド用アンテナの実測値は12.5Ω以上になる事を実践的に確かめてきました。 もう一つの難題は高耐圧の2連バリコンの入手でした。 バリコンそのものが生産縮小され、価格も大幅に上昇していましたが、たまたま、コメットのMTUで使われている高耐圧バリコンを4個ほど入手できました。 これをステッピングモータとタイミングベルトで同期ドライブを行い、2連バリコンを実現出来る環境が整ってきました。 さらに、バリコンを使ったハイパスT型のATUにもトライしましたが、コイルのタップ位置で偽のSWRディップポイントにはまり、そこから抜け出せないという問題も有り、コイルのタップ選択が不要なZ-MatchアンテナチューナーのATU化に向け再検討する事にしました。

まず、Z-Matchの基本であるVK5BR OMの資料を読み直し、推奨するコイルの通り空芯コイルを製作し、ATU化する為の基礎データを取得する事にします。

Zmatchmtu

左の回路はVK5BRが推奨するZ-Match MTUのコイルとバリコンの配線図です。検討の都合でオリジナルの回路図に有ったL3は省略してあります。 このMTUの説明の中で、L2の底辺とL1の底辺はGND側で一致させるとありましたので、その通り試作しましたが、彼の資料の中にある写真ではGND側では無く、天面にL2を配置してありますので、もし、違ったら、写真のごとく、コイルを上下反対にすれば良い事なので、このまま行きます。

 

Zマッチチューナーの肝はコイルですから、VK5BRが推奨する線種、サイズ、形状のままでつくりますが、コイルを支える絶縁材は100均の5mm厚のまな板でつくりましたので、1.6φの銅線を通す、穴径は2mmでは難しく、2.5mmにしました。 また、最初直径50mmのパイプに、1.6φの銅線を16回巻き、これをカットした後、絶縁支持材の穴に銅線を押し込みますが、これが結構難しく、きれいな円弧状のコイルに仕上がりません。 結局、最後は板とコイルの間に直径25㎜の塩ビパイプを挟み、さらにL2とL1のコイルの間に5φのアクリル棒を差し込み、コイルの形を整えました。

Zmatchcoil1

Zmatchcoil2

右上は25φのパイプと5φの丸棒を抜き取った状態ですが、なんとか様になりました。

これを、木製のシャーシーに仮止めし、かつバリコンも仮止めして、配線図通り配線しました。 2連バリコンはまだ連動出来ていませんが、タイミングベルト、タイミングプーリーが入手できたら、連動させる事にし、それまでは、手で目見当で回転させます。 また、VC1はシングルで良いのですが、コメットのバリコンは2個連結されていますので、配線のみカットし、シングルバリコンとして使います。 最終的には、2個のバリコンを結合している支持材をカットしますが、今は写真の通りです。

構造が簡単ですので、配線も20分足らずで完成しました。

Zmatchmtu2

次はいよいよ整合テストです。

整合テストはまず7MHzでつまづきました。いくらやってもSWR1.8以下になりません。 色々試して判った事は、VC2を接続するコイルの位置は14Tでは無く、13.5Tに繋ぐとSWRが1.4まで下がるようになりました。 さらに、VC1のつながるコイルのタップ位置を10Tの位置から9Tに変更してやっと1.1まで下がりました。 この原因は、配線の長さも関係しますが、使用しているバリコンの最小容量が影響しているようです。 VK5BRオリジナルのバリコンの最小容量は20Pですが、コメットのバリコンは30Pでした。

ここまでやって、やっと3.5MHzから29MHzまで全部整合出来るようになりました。

次にバリコンのクリチカルの度合いですが、現在ステッピングモーターの候補は秋月で扱っているコパルの3度ステップ品を第1候補としています。 最近の3Dプリンターは1.8度ステップのバイポーラタイプのステッピングモーターが使われ、中華製に絞れば一番安価です。しかし、バイポーラタイプのステッピングモーターは低電圧大電流というドライブが必要で、専用のドライバー回路と専用のスィッチング電源を必要とし、アマチュアが1台限りで製作するには、かなり高コストになります。 アマチュアがシコシコと製作するには、最近あまり見かけなくなったユニポーラタイプのステッピングモーターが取り扱いが簡単なのですが、1.8度のユニポーラタイプはコパルの4倍以上の値段がします。

コパルのワンステップ3度のモーターの場合、5対1の減速比となるプーリーを使い最小ステップ角度0.6度になりますが、これで、ちゃんと整合できるのか心配になります。

実験した結果、一番クリチカルなバンドは28MHz帯でSWR1.01くらいから1度違えばSWR3くらいまで跳ね上がります。SWR1.5までを許容値とすると、0.4度くらいがリミットで、コパルの0.6度ステップは微妙という状態です。 コパル製は350円、1.8度のユニポーラタイプは最小ステップ0.36度になりますが、1640円。 

今回の試作機の場合、VC2とVC3の容量が一致した連動状態のままでは、SWR1.1以下の状態にならないバンドがありました。 12年前にラフに作った試作1号機ではこれほどのクリチカルさは無かったような記憶でしたが、バリコンは連動のままで整合できました。 そして、1号機の時にあった無負荷状態で整合してしまうという問題は再現出来ませんでした。 当時の1号機はQが低く、調整が楽だった代わりにロスが大きかったのかも知れません。 そこでよりQを高める為に、今回の試作機の配置を見直し、配線が最短となるように組みなおしてみました。

Zmatchmtu3

まだVC3への配線が長いですが、改造前より線長で50cmくらい短くなり、かつコイルの下にはGNDとなる銅箔シートを敷き、これにコイルやVCのGNDを落とすようにしたところ、コイルのタップ位置はVC1の接続位置が9Tになった以外、オリジナルの配線図の通りで、3.5MHzから28MHzまでVC2とVC3の角度はほぼ同じ状態、すなわち連動した状態で整合出来るようになりました。 

ステッピングモーターのワンステップの角度については前述しましたが、3Dプリンターにはなぜ1.8度のステッピングモーターが使われているのか調べてみました。 普通に考えたら、あの細かい造形を行う為には1.8度では粗すぎると思えるからです。

バイポーラタイプのステッピングモーターの場合、基準のワンステップ角度に対して、さらに1/2とか1/4の角度にドライバー側で設定できるという説明があります。バイポーラステッピングモーターに使われているドライバーユニットがモーター本体より高価な場合が多いのですが、このドライバーの中で細かく制御する事により、この基準の公称ステップ1.8度をさらに1/2とか1/4のステップに変更できるらしい。 最大で1/256まで可能という資料もありました。 以前はワンステップ1.25度とか0.9度とかのステッピングモーターが有りましたが、最近はほとんど1.8度に統一されているのもうなづけます。

この情報が判っていたら、3Dプリンターでは標準となっている3:1のタイミングプーリーより高価な5:1のプーリーを手配する事は無かったのに。

以上の経緯から、コパルや1.8度のユニポーラタイプを諦め、中華製の安いバイポーラステッピングモーターを2個手配しました。注文した4日後には届きました。2個で1900円弱でした。

このバイポーラタイプのドライバーは秋月で取り扱っていますが、モーターより高価(2台分で2000円弱)です。 中華製なら1台分、600円台であるのですが、使い方を説明した資料がありません。 秋月のドライバーの場合、メーカーのホームページに制御の仕方や発熱についての注意文などが有り、初めて使うには安心です。 そして、基準ステップ角の1/2から1/256までの設定方法も詳しく書かれていますので、中華製ですが、秋月のSTマイクロ製のIC品で進行する事にします。 ただし、基準の1.8度以下のステップにした場合、停止位置で通電を続けないと基準の1.8度の位置に戻ってしまうという情報もあります。 対策として、停止位置をキープする為に、運転中より低い電流を流し続けるというアイデアもあるそうですが、この現象がATUにどのような影響を与えるかは、作ってみないと判らないです。

モーターとプーリーが手に入り、図面化しないと、タイミングベルトの長さが決まらないので、ベルトの手配は最後になります。

また、1.8MHz対応は私のアンテナに合わせて、リレーで切り替える事にします。

 

ステッピングモーターとドライバーが入手出来ましたので、動作確認をしました。

 

INDEXに戻る

2024年7月22日 (月)

バリコン式ATU mark 2

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

新マルチバンドアンテナ用に製作したLDGのKT-100をベースとした、プリセット型ATUを使用して、リレーの接触不良をだましだまし1年間使ってきました。 しかし、この場に及んで、複数のリレーが接触不良を起こし始め7MHzや18MHzが整合しなくなりました。 簡単に整合するのは21MHzだけで、それ以外のバンドは何度も再チューニングが必要となっていました。 また、FT8を運用始めた事により、ATU内のコイルのコアが発熱し、SWRが悪化する現象から、出力を50W以下に落とす必要があるバンドもありました。 このKT-100は12年前に購入したもので、使用されている中華製のリレーなら、こんなもんかと諦めざるを得ません。

この状況から、昔製作して、廃棄処分予定だったバリコン式ATUを引っ張り出し、現在使用中のプリセット型ATUに改造できないか検討を始めました。

まず最初に、コンパイラーがV2.46になったXC8との闘いです。 今までのVC式ATUはXC8のV1.32でコンパイルされていましたので、V2.0から導入された大幅なコンパイラーの仕様変更に対応しなければなりません。 そして、プログラムを詳しく読んでいくと、なぜ、このようなフローにしたのか?と疑問が続出しました。 当時のプログラム開発能力は、やっとエレキーがバグ付きながら動かせる程度のレベルで、今見たら完成度が悪いですね。

今回、mark2化に改造するに当たり、操作は全てシャックに置いたコントローラーから行う事にし、ATU本体のキーもLCDの表示も廃止し、いくつかのデバッグ用LEDのみ付けました。 コントローラーとの通信はUARTを使い4800ボーのスピードで行います。

Vcatu_inside1

Vcatu_inside2


ATUの配線図 VC_ATUmk2_main_V09.pdfをダウンロード

コントローラー配線図 VC-ATUmk2_contoroller_V09.pdfをダウンロード

以前のATUから改善したポイントは以下です。

・回転角を読み取る可変抵抗は270度回転しますが、バリコンは360度以上回転しても、実際に使用出来る範囲は180度です。 この為、モーターが暴走し、可変抵抗のストッパーに当たっても、モーターが止まらず、ギア飛びをおこしていたので、この部分の制御を一からやり直し、考えられる全ての異常動作が発生しても、可変抵抗器のストッパー超えが起こらないようにしました。(したつもり)

・従来のコイルのタップ位置はMTUの仕様にならい周波数に依存するように選択し、それから外れた時は上下の隣のTAPに移るという動作でしたが、実際のアンテナの場合、インピーダンスが低いときなど、大きくずれますので、まず最初に、SWRが最小となるTAP位置を決めてから、VCでSWRのサーチを開始する事にしました。 しかし、VC角度により、SWR最小のTAP位置は異なり、マイコンでは最適値を探す事はできませんでした。 やむなく、デフォルトのTAP位置を5と仮設定し、SWRが1.2以下にならないときはマニュアルでTAP位置を探す事にします。 この場合、SWR最小のTAPが最適とは限らず、TAPだけ切り替えて、SWRが最低となったTAP位置が7で、SWR最小値は1.6にしかならず、一つづつTAPダウンっしてSWRが1.1以下になったTAP位置は4だった事もあり、自動でディップポイントを探すのは不可能と悟った次第です。

・モーターギアのバックラッシュの為、VCの停止位置と可変抵抗の停止位置がぴったりそろわないという従来からの欠点を補う為に、VCの角度も、マニュアルで動かす事が出来るようにし、SWRが最適になったら、これもマニュアルでEEPROMにデータを記録出来るようにしました。 ハイパスT型のATUの場合、真の整合条件とは異なるVCの角度条件でもSWRのディップポイントが存在し、プログラムがこの条件に陥った場合、SWR最小値が1.5以下にならない事が発生します。 この状態に陥った場合、真のディップポイントなのか、偽のディップポイントなのかマイコンでは判断が付きません。その為、TAP位置を変えて再度ディップ条件を探し、もっと良い整合状態があるのかを確認するという動作が必要になりますので、マニュアル動作はマストです。 この様にSWR最適ポイントを探すのは、マニュアル操作を含めて、かなり時間がかかりますが、一度最適整合を見つけたら、EEPROMに記憶させておきますので、2回目からはプリセットコール一発で最適整合できます。

・このバリコン式ATUのオリジナルは、3.5MHzから28MHzがカバー範囲でしたが、1.8MHz用の約40mのロングワイヤーに対応する為1.8MHzまで拡大します。 50MHzは現在のループアンテナが対応出来ておらず、1年間の交信実績もゼロでしたので、このATUでは対応しません。

・ATUをスル―し、SWR計と周波数カウンターだけが機能するモードを設けます。

・リレー式ATUの時有った、使用周波数とアンテナの種類の間違いを防止する機能。 例えば14MHz以上はループアンテナ、1.8MHzを除く10MHz以下は垂直ダイポール、1.8MHzと3.5MHzは、ロングワイヤー、特に3.5MHzは垂直ダイポール(DX用)とロングワイヤー(国内用)のように使い分けるという条件を無視した組み合わせでの使用により、アンテナの性能が発揮されない問題の解決。 手動によるアンテナの選択機能は付いていますが、実際の運用では使用しないようにします。

最終的には、プリセットされた整合条件になるように、VC角度とTAP位置を設定しますが、VC角度はギアのバックラッシュが角度表示で1から2くらいありますので、これによる不整合の度合いが、実際のアンテナで許容できるかという事になりますので、アンテナに接続しないと、使い物になるかどうかは判らない事になってしまいました。

Vcatumk21

上の画像はバラックのコントロール回路で、最終デバッグ中のバリコン式ATUです。

ANTの負荷条件は純抵抗ですが、以下のように整合できました。

Tune50

Tune15

Tune500

上の表は、左から順にアンテナのインピーダンスが50Ω、15Ω、500Ωの時のATUの整合条件を示しています。 全てリアクタンスゼロの条件ですが、VCの角度範囲が約10から190まで有効ですので、リレー式のATUの整合範囲以上をカバーしています。

 

Vcatu_box_1

約1か月のデバッグで、ほぼソフトが完成しましたので、今上げているATUを降ろし、リレー式ATUを取り除き、バリコン式ATUに入れ換えました。 また、コントローラーも中身をそっくり入れ替えて、まずは、机上でのテストです。 とりあえず、50Ωの負荷をつないで、21MHzでの整合テストを行うと、正常に働きましたので、この状態で、デバッグを続ける事にします。

ATUの背が高くなったので、今までのBOXに収納出来るか心配でしたが、約2mmの隙間を確保して、蓋を閉める事ができました。 今まであったLやCの微調整用リレーのみは残っていますが、配線とLやCは取り外してすっきりしました。

Vcatu_box_2

Vcmtu_panel_1

上は、コントローラーと接続し、デバッグ中のVC式ATUです。

50Ωの負荷抵抗ですが、1.8MHzから28MHzまで、整合条件を確認し、かつ100WのCW送信でも問題が無い事を確認できました。 ただし、ほとんどのバンドが1.10以下のSWRに収束しましたが、18MHzのみ1.3以下に落ちませんでした。 原因は、SWRを1.5以下に追い込んだ後のモーターON時間が短く、ギアのバックラッシュ分しかモーターを回していない為、いつまでたっても収束しない状態でしたので、18MHz専用のモーターON時間を設定し、従来の2倍の時間に設定し解決しました。 後は、仮の高さのアンテナに実装して整合テストと25mの通信ケーブルとUARTの相性を確認するだけになのですが、連日39度を超える暑さの中で、しばらくは机上でのデバッグを続けます。

 さらに1週間デバッグを続け、大きなバグも見つかり修正しました。 次の日曜日、相変わらず39度の暑さが続きそうですが、昼前に、ゲリラ豪雨。 雨が止んだ直後の外気温は27度。 これはしめたと、VC式ATUを仮の高さに降ろしてあるマストに括り付け、高さはそのままで、チューニングテストを行う事ができました。 心配していた25mのコントロールケーブルと4800ボーのUART通信は全く問題なく行える事を確認できました。 そして、7MHzから28MHzまで最大SWR1.6で整合できました。 この日はフィルドデーコンテストが行われているのですが、あいにくの磁気嵐の際中で7MHzは雷のノイズだらけで聞こえるSSB局は1~2局だけ。 21MHzでも8エリアのCW局が1局だけ聞こえますが、SSBは皆無。 ゲリラ豪雨が雷を伴いながら連続して迫ってくるので、テストはここまで。 アンテナの同軸ケーブルをリグから外して、様子見です。

 

2024年8月

夏休みの初日にアンテナマストを最長に伸ばし、やっと正規の高さに上げる事ができました。 その日の晩に、1.8MHzから29.7MHzまで全バンドの整合を取り直し、EEPROMに記憶させました。3.5MHz以下のバンドでSWR1.8以下にならない現象がありましたが、FTDX101Dの内蔵SWRメーターではSWR1.2くらいになっています。

ここ3日間くらいは、SNが連日250を超えていますが、DXの入感はさっぱりです。 しばらくはATUのテストだけが続きそうです。

8月のお盆休みを利用して、再度チューニングテストをやってみました。 先日、整合OKでEEPROMに記憶したプリセットデータを呼び出しても、SWRが3を超える場面がかなりの頻度で出ます。 同じ日に記憶したデータなら、これを呼び出しても、ちゃんと整合状態が再現するのですが、数日前のデータの場合、不整合になる事が発生します。 原因を調査中です。

調査した結果、VC2に連動した可変抵抗器のギアが軸との間でスリップしているようです。 昼間、ATUのBOX内が多分50℃くらいになり、若干の熱膨張でスリップが発生し、バリコンは回るけど、可変抵抗器が回らないというのが原因のようです。可変抵抗器の軸を約0.3mm Dカットし、完全な周り止めを追加しました。 また、プリセットコールをON状態で周波数を切り替えた時、ターゲットのバリコン位置をオーバーランして、整合が崩れる問題は、VC2を制御するソフトのバグでした。 バグの原因は、VC2のモーターをONした後、現在のVC角をUARTで送信している内にオーバーランしてしまうもので、タイミングによりオーバーランの量も変わっていました。 対策は、プリセットデータを呼び出してVCをプリセットする時に限り、VC回転中はUART送信を禁止し、VCの回転が停止してからVC角をUART送信するようにしました。 また、回転方向によるVC角のズレを少しでも改善する為に、必ず2回連続して、VC角度を設定するようにし、2回目では、モーターの速度が上昇しきれないうちに指定角度で停止する事により停止角度の精度が上がるようにしました。

また、SWRが下がってくると、モーターのON時間を短くして、SWR最小ポイントを飛び越えないように細工していますが、温度により、この時のモーター回転量が大きく変化し、室温27度で最適に絞りこみが出来るように時間を設定した場合、夏の昼間はBOX内が50度を超えるような熱さになり、短時間のモーターONでもSWRディップポイントを飛び越えてしまい、SWRが収束するまで数倍の時間がかかっています。 室内でのシュミレーションは抵抗負荷による結果で、実際のアンテナの場合、リアクタンスを含みますので、VCの角度がもっとクリチカルになるのも影響しているようです。 この対策として、コントローラーから、モーターON時間を変更出来るようにしました。 キー操作やエンコーダー操作では変更できませんが、コントローラーのプログラムを書き換えると変更が可能になります。 いちいちATU BOXを降ろす必要がなくなりますので、夏と冬でON時間を変更することが簡単になります。

2024年9月

8月末に台風10号が広島を通過する事になり、事前にアンテナをたたんだ為、しばらくATUの検討が出来ていませんでしたが、9月の上旬最後の日に、今回仕込んだモーターON時間の変更確認を行う事ができました。 1.8MHzから28MHzまで最短でSWRが収束するON timeを設定し終わった結果、どのバンドも初期設定の半分以下に落ち着きました。 この確認は夜8時過ぎにおこないましたので、昼間の暑いときとは条件が異なるかも知れませんが、この状態で様子見です。

バンドを切り替えた時、リレー式の場合、受信ノイズが即大きくなりますが、このバリコン式の場合、3秒くらい遅れて急にノイズが大きくなり整合した事が判ります。 

VC_ATU_mk2_main_v1r00.cをダウンロード

VC_ATU-mk2_controller_v1r01.cをダウンロード

FreqRang_3.hをダウンロード

  

 

T型アンテナチューナーの欠点であるコイルのタップ位置により偽のSWRディップポイントが発生する事を解消する為、コイルのタップが無いZ-MatchアンテナチューナーのATU化にトライします。

 

INDEXに戻る

2024年4月 5日 (金)

ATUはFT8に弱い

160mのバンドコンディションが悪く、DXとのQSOが全く出来ていなかったので、今まで気嫌いしていたFT8にトライする事にしました。

ところが、160mで100Wの送信を15秒も続けると、SWRが5を超えます。 CWやSSBの場合、200W送信でもSWR1.5以下です。

Heatupatu_3

原因はATU内部のフェライトコアの発熱です。 このATUは200WのSSB送信時、同じように数秒間送信すると、SWRが大きくなるという現象があり、ATU内部のコイルに流れる電流を半分にして対策したものでしたが、さすがに100W連続送信は15秒間も耐える事が出来ず、15秒間の受信期間中にコアが冷めない為、次の15秒間でさらにSWRがあがるという事を繰り返します。 対策は、FT8の時は出力を50Wまで絞る事でした。

1.8MHzでも50WあればWの西海岸やニュージーランドとは交信できますので、問題なしです。

周波数が高くなれば、このSWRが安定している出力の許容値は上がって行き、21MHzでほぼ100Wまで改善します。ただし、この例は1.8MHzのSSBで200WまでOKのATUの場合です。

ATUをお使いの場合、リグ内蔵のSWR計の指示を注視し、次第にSWRが高くなる場合、上の写真のようになる前にパワーを絞る事です。

 

INDEXに戻る

2023年8月23日 (水)

ATUの挿入位置とケーブルロス

<カテゴリ:アンテナ>

最近のSSBトランシーバーには、ほとんどATUが内蔵され、リニアアンプ等を接続する場合、なくてはならない装置になっておりますが、このATUとは別に外付けの、アンテナ直下に接続する屋外用ATUも多数商品化されております。 本来のATUは共振状態にないアンテナを共振状態にして、かつインピーダンスマッチングを行う事を目的としており、1本のワイヤーアンテナやループアンテナを多バンドで使用したい時、重宝する事になります。 しかし、トランシーバー内蔵のATUの先に同軸ケーブルを接続し、そのケーブルの先にミスマッチのアンテナを接続してON AIRされている方も一部見られます。

OMさん方がATUはアンテナの給電点に接続するもので、送信機と同軸ケーブルの間につなぐものでは無いと言っても、なかなか信じてもらえないのが実情です。

そこで、送信機-ATU-同軸ケーブル-アンテナと接続した時の送信出力のロスを計算する機会がありましたので、いかに損失が大きいか紹介する事にします。

このデータはTLWというARRL監修のアンテナチューナーの解析アプリで計算しただけのもので、トランシーバー内蔵のATUだけでマッチングを取った時に起こるその他の問題点は加味していません。 また、TLWの中に5D2Vのデータが無かったので、RG規格の似たような同軸ケーブルのデータを使い近似しました。

TLWの紹介資料 tlw.pdfをダウンロード

21mhzap_comp

比較を簡単にするために21MHz用寸足らずのダイポールを地上高10mに上げ、アンテナエレメントの中央に接続したバランと5D2Vの同軸ケーブル経由で送信機に接続した状態で、ATUを送信機の根元にいれた場合とアンテナの給電点に入れた場合の、ケーブルロスとATUのロスを計算比較しました。 また、参考として、アンテナの長さを調整して、ほぼ共振状態にした時のロスも計算してみました。

Cableloss_2

アンテナの長さが5mのデータは、長さが寸足らずの結果です。 送信機出力100Wのとき、アンテナ直下のATUの場合、アンテナに供給される電力は80.3Wほどですが、トランシーバー内蔵ATUの場合、34.3Wしか供給されません。

アンテナの長さが6.8mの場合、ほぼアンテナ単体で共振していますので、ATUの目的は、66Ωの抵抗分を同軸や送信機の50Ωに合わせることのみに利用されます。 アンテナ直下のATUが有利である事は変わりませんが、トランシーバー内蔵のATUの場合でも大きな差は無くなっています。 ただし、この状態は、シングルバンドの時だけの話で、バンドを18MHzや24MHzと兼用した場合、21MHz以外は大きくロスが増える事になります。

この記事ではATUとして説明しましたが、外付けのMTUを送信機のすく横に置き、MTUから同軸ケーブルでアンテナに接続した場合も同じ事が起こります。

次に7MHzで良く使われる5mの釣り竿アンテナを計算してみました。釣り竿アンテナをhoipとして使う場合、条件の設定が難しいので、全長10mの釣り竿(5mの竿を2本用意し、水平に張ったアンテナ)で計算してみました。 この条件なら、5m釣り竿によるアンテナとしては最高の効率が得られますので、5mの釣り竿とカウンターポイズや住宅の鉄筋にアースを取ったアンテナの場合、この数値より良くなる事はないでしょう。

Cableloss7mhz

結果は上のようになりました。ATUがリグ内蔵だけの場合、多分相手は拾ってくれないと思われます。

21mhzap_comp3

どうしても、内臓ATUだけでしかON AIR出来ない場合、はしごフィーダーとバランの組み合わせで対応する事が出来ます。

左の図3のように同軸ケーブルを600Ωのはしごフィーダー(ラダーライン)に変更し、従来、ダイポールの給電部に有ったバランはATUの出力側に移動します。

この時、ラダーラインはなるべく建物や金属と平行して設置するのを避け、壁や窓枠を貫通する場合、金属の支持物を避けてATU(MTUも同じ)の出力端子に接続したバランの平衡出力に接続します。 理想的には壁に2個穴を開け、そこに貫通碍子を通し、ラインを部屋の中に引き込みますが、他にも方法がありますので、調べてみてください。

600Ωのラダーラインは市販されていなく、自作するしかありません。昔は割りばしをテンプラにして、防水対策しましたが、今では、プラスチックの棒がホームセンターで手にはいりますし、導線をプラスチック棒に縛るのも、ロックタイを使えば簡単にできます。

下のデータは自由空間に置かれた600Ωのラダーラインを使い21MHzで計算したものです。

Cableloss3

600Ωのラダーラインの場合、ケーブルロスが0.8dBですが、市販の450Ωのラダーラインの場合、ケーブルロスは1.03dBとなります。 また、市販のUHF TV用200Ωリボンフィーダーの場合、残念ながらデータが有りませんが、推定で2dB以内に収まるかも知れません。

リボンフィーダーの場合、昔のUHFテレビを考えると、その取扱いが簡単ですから、同軸ケーブルよりロスがかなり少なく、利用価値はあると考えられます。

ラダーラインを使った場合、ATUやMTUがそのインピーダンスをカバー出来る限り、マルチバンドで使えます。

TLWのソフトは「Arrl Antenna Book」という本の中に付録として挟まっているCD-ROMの中に収録されており、アマゾンでも買う事が出来ます。 

TLWで計算していると、ATUやMTUは使わなくて済むなら、それが一番だと判りますが、結局ATUやMTU頼みになってしまいますね。

そのATUのソフトを一から書いて自作した記事はこちらにあります。

    

INDEXに戻る

2015年8月16日 (日)

細々と改善は続く

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

8月の初めに誘導雷を受けて、自作のATUが動かなくなりました。 チューニングスタートをさせても、すぐにエラーで止まってしまいます。 一応、誘導雷くらいなら、マイコン本体のi/oが壊れる前に、その周辺のパーツが壊れるという設計をしていました。 調べてみると、周波数カウンターが動作せず、RF信号はOKなのに、周波数が範囲外となり、エラーを出しているものでした。 故障個所はカウンター回路の入力にあるチップコンデンサの電極が高電圧の為割れており、コンデンサの役目をしていないのが原因です。 この50V耐圧のチップコンデンサを交換したら直ってしまいました。

Atuk1_2

せっかく、ベランダのBOXから取り外したので、かねてより温めておいた改善事項を盛り込む事にしました。

ひとつは、バリコンの可変範囲が広すぎますので、これを若干狭くする為、以前手配しておいた6000V 390PFというコンデンサをバリコンに直列に挿入する変更です。 3.5MHzでのコイルインダクターを増やすのが面倒なので、入力側のみ追加し、様子を見る事にします。

二つ目は、マイコンのソフトです。 SWR最少位置を探す途中で、次の動作に行くために、数10ミリ秒から数100ミリ秒の待ち時間がありました。 また、プリセット位置にバリコンを移動させるには数秒かかる事もありましたが、これらの待ち時間中は、単純に動作が終わるのを待っているだけで、この待ち時間中にSWRが1.5以下になる事があっても、無視されていました。 今回、この全ての待ち時間中でもSWRを常にチェックし、SWRが3以下ならただちにSWR収束動作へ移るよう変更する事にしました。

ここで、問題が発生です。

LCD表示のアンテナアナライザーを開発する為、PICの開発環境をMPLAB X IDEに変更しましたが、ATUの開発環境は旧MPLABとHi-TECH Cでしたので、この旧MPLABを呼び出しPICKIT3を経由して、プログラムの書き換える事にしました。 ところが、IDが違うとエラーがでます。 困りはてて、色々試しましたが、うまくいきません。  さんざん悩んだ末、MPLAB X IDEでプロジェクトを作り直し、なおかつ、HI-TECH Cで書かれていたソースファイルをXC8用に書き換えると、ちゃんと16F1939を認識して、プログラムの書き換えが出来ました。

さらにプルダウンメニューなどを調べていると、MPLAB XでもHI-TECH Cコンパイラも使えるようです。 結局判った事は、MPLAB Xをインストールした後は旧MPLABは使えないという事でした。

やっと、プログラムの改善ができましたので、21MHzだけですが、オートチューニングを試す事にしました。 以前はバリコンがいったりきたりして、なかなかSWR収束モードにならず、その内、VC maxの位置に収まってしまいSWRが3以下になりませんでした。 やむなく、ハンドでSWRが1.5以下になるようにバリコン角度やコイルのタップ番号を選択した後、収束動作をさせていました。  ところが、今回は1発でSWR1.4くらいまで収束し、再度チューニングさせるとSWR1.05まで収束します。

後日、3.5から28まで全バンド、チューニング出来る事を確認しました。 ただし、28MHzのみですが、SWR1.4以下になるまで、かなり時間がかかるようになりました。 このバンドでチューニング動作を見ていると、1回で送るVCの角度が小さすぎるようです。 ソフトの変更で改善出来そうですが、すでにコンテナBOXに収めてしまいましたので、 次回のチャンスの時、変更する事にします。 この時間のかかる問題は最初のチューニング動作のみで、一度プリセットされてしまうと、次回からは、短時間で整合状態になりますので、実用上の不都合は有りません。

2016年11月3日

LDGのATUのマイコンを改造する為に、このATUのソースコードを調べていましたら、ソフトにバグがある事が判りました。 バグの内容は、ある条件の基ではモーターが反転しないというものです。 これが為に、なかなか整合しないバンドが発生しているようです。 このバグ対策を行った結果、全バンドがかなり早く収束するようになりました。ただし、24MHz以上のバンドでなかなか収束しないのは変わりません。そこで、前回追加しました、バリコンに直列の390PFを廃止しました。

バグ対策を行った後、外付けのSWR計ではSWR1.1以下になるのに、TUNE OKにならない場面が増えてきました。 この原因を調べてみると、モーターにブレーキをかけた後、まだ、バリコンが動いている最中に、SWRをチェックしているというバグが見つかりました。 ここは、50msecのディレー時間を設けて対策しました。 さらに、SWR3以下の時のモーター駆動時間をSWR3以上のときの1/2にし、さらにSWR1.5以下の場合さらに1/2にしていたのですが、SWR1.5から3の期間のモーターON時間が長すぎて、SWRディップポイントを通り過ぎてしまうのが原因でした。 そこで、SWRによりモーターON時間をさらに細分化し、以下のように設定しました。

SWR10以上     200msec

SWR10-5       100msec

SWR5-3        67msec

SWR3-1.5       40msec

SWR1.5以下      33msec

これで、ディップ点を飛び越える確率が大幅に減少した上、収束時間も短くなりました。

最新回路図 ATU-VC11.pdfをダウンロード

バリコン式ではなく、コイルとコンデンサをリレーで切り替えるタイプのATUの例はこちらでPICのソースを含めて公開しています。

2018年1月

プリセットMTUも継時変化が激しく、3.5MHz帯はMTUの調整範囲を超えてしまい、最近はこのATUだけで運用しています。 ただし、他のバンドではATUは使いません。 いくらチューニングを早くしてもプリセットMTUにはかないません。

2024年6月

新マルチバンドアンテナを構築する為に、2023年1月このATUを含めて撤去し、LDGのKT-100をベースとしたリレー式のATUを自作しました。 そして、2023年4月末より運用を始めたのですが、KT-100の中にあるリレーのひとつが時々接触不良を起こしており、ATUをプリセットしても、SWRが許容値にならない事がしばしば発生し、電源ON/OFFの繰り返しでなんとか接触させ使ってきましたが、2024年の6月になり、この接触不良が起こるリレーの数が拡大し、7MHzも18MHzも使用できなくなっていました。 そこで、一旦廃棄処分を決めたバリコン式のATUを再度使用できないか検討を始めました。 

  

INDEXに戻る

2014年10月28日 (火)

ATUの自作:LCD交換

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUのエバレーションを実使用状態で継続していますが、デバッグに使っているLCDでトラブルが発生しました。

Atulcd4

このLCDはAQM0802Aという品番で、ベランダに設置したATUの基板に貼り付けてあったのですが、4週間くらいしたら、LCDが表示しなくなりました。I2Cの回路はまともに動いていますが表示が出ません。 DC/DCの出力をチェックすると、6V以上ある電圧が3Vしか有りません。 発振は停止はしていませんが、昇圧しきれないようです。

ベランダから部屋に持ち帰り、テストすると、ちゃんと表示します。電圧が違うのか?コンデンサの容量が違うのか? 色々検討しましたが、原因は判りません。 部屋のなかで正常動作している状態のままで、ベランダに出てみました。すると、数秒もしない内にLCDの表示が消えます。一度消えたLCDを部屋に戻しても表示は復帰しませんが、電源OFF/ONを行うと、表示は戻ります。  

この、部屋でOK、屋外でNGは何度も再現されますので、原因は光しか有りません。ちなみに、ATUを収納した緑色のコンテナBOXに蓋をして、蓋の隙間から暗くなったLCDを見ると、正常に表示しますが、蓋を取り去ると消えてしまいます。 もともと不安定なDC/DCでしたが、LCD表面に光が照射されると、内部状態が変わるのでしょう。

結局、このLCDは取り外し、別のLCDに交換する事になりました。

交換したLCDはI2CインターフェースのACM1602N1という秋月で取り扱っているLCDです。表示が8桁2行から16桁2行に増加しましたので、かねてより気にしていましたCM結合器のDC出力をADで読んだ値も表示させる事にしました。

Atulcdn1_2

左の3ケタ数字がVCの角度データ、上がVC1、下がVC2です。 次の「7」はタップ番号。真ん中の4ケタ数字がCM結合器のDC出力をADで読んだ値です。上がVfwd,下がVref。 右側の上4ケタがSWRを100倍した数値。 下が周波数で単位はKHzです。

  いままでは、出力を大きくするとSWRが悪化していました。 CM結合器のDC電圧をデジタルテスターで測り、これをベースに計算したSWRは1W出力より10W出力が悪くなりますが、10W出力時と40W出力時のSWR値は変わりません。 しかし、ADが変換した数値から計算したSWR値は0.2くらい悪化します。 

原因は、AD変換回路のサンプルホールド回路の初期充電時間かも知れません。 この充電時間を確保する為、ADのチャンネルを選択してから、10マイクロ秒間のウェイトをかけていましたが、試しに、このウェイトを50マイクロ秒に変えてみました。すると、10W出力時と40W出力時のSWRの差は0.07くらいに収まりました。  

また、大きなアナログ信号をAD変換した後、小さなアナログ信号を変換する場合、前回の計測時の電荷が残っている可能性もあります。  そこで、今まで、Vfwdを測定した後にVrefを測定していましたが、Vrefを先に測定し、Vfwdを後に測定するように変更したところ、10Wと40WのSWR値の差はゼロになりました。

1W時と10W時のSWR差は検波に使っている1N60の非直線性によるもので、気にする必要は有りません。

当面は、不具合が発見されるたびに、LCDの表示を変更しながらエバレーションが続きそうです。

このマイコンのソフト開発はマイクロチップが無償で提供しているMPLAB IDEという開発環境と、PICkit3と呼ばれる書き込みアダプターを使い行っていますが、今回使用しているマイコン「16F1939」の場合、最初のイニシャライズ時、マイコンIDの検出を失敗し、かなりの頻度でエラーになります。 

原因が判らないまま、PCを立ち上げ直したり、アプリの立ち上げタイミングとUSB認識のタイミングなどを取って、かろうじて開発環境を維持していました。 最近、このエラー頻度が高くなり困っていましたら、インターネット上で同じような問題で困っていた記事を見つけました。 記事によると、PICkit3から供給する電圧を5Vではなく、少し下げてやればエラーになる確率が減るという情報です。  さっそく、5Vの電圧を4.6Vまで下げてみました。  すると、全くエラーが発生しなくなりました。

その後のATU動作改善はこちらへ続きます。

INDEXに戻る

2014年9月25日 (木)

バリコン式ATUの実装

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

20mの長さのある同調フィーダーの先に、現用の18メガ用スカイドアと7メガ用垂直DPをつなぎ、シャックの中でテスト運用した自作のATUは快適に動いてくれました。 ただし、20mの同調フィーダーはノイズの受信と不要輻射の面から常用は不可ですので、プリセットMTUを置いてあるベランダにATUを移し、そこまでは同軸で給電する事にしておりました。 

このATUをプリセットMTUの所に移す為に、プリセットMTUをサイズダウンして防水BOXの中に隙間を確保し、ATUを収納できるように改造しました。ATUの動作確認以前の処理事項として、この改造したプリセットMTUが全バンド正常に動作するようになりましたので、ATUの本格稼働に向け動作テストをする段階までこぎつける事ができました。

Atu140926

右下のアルミケースで覆われた箱がATUです。左側の基板はプリセットMTU用のデコーダーで、シャック内のコントローラーからのATUコマンドを中継しています。

このATUの動作テストを行う前に、プリセットMTUの調整も行いましたが、プリセットMTU作り変え にて紹介の通り、ハイパス型Tタイプのアンテナチューナーでは整合しないバンドがかなりあります。 ATUはハイパスTタイプですので、心配しながら、チューニングテストを行うと、3.5、3.8、14,18,24メガが整合しません。 

ATUをリグの近くに置き、アンテナまで20mくらいの同調フィーダーで接続した場合は、全バンドうまくいってましたので、同調フィーダーの長さを調整すると、整合するとは思います。 しかし、現在の同調フィーダーの長さで、せっかくMTUが正常動作している状態ですので、ATUもこの同調フィーダーの長さのままで正常動作させる事にします。 

MTUの整合検討で多くのバンドが整合しない原因は、 MTUのコモンラインの浮遊容量でしたので、ATUを接続する時は、入出力にそれぞれリレーを設け、MTUからGNDを含め完全に分離する事にしました。 その結果、3.5,3.8,18メガ以外は整合するようになりました。

3.5と3.8メガのバンドが整合しない理由は、バリコンの回転が速すぎて、整合ポイントをスキップしてしまうのが原因のようです。 バリコンの回転スピードを超スローにして、数分以上の時間をかけてSWR最少ポイントに追い込んでいくと、このバンドもSWR1.5以下に整合します。 しかし、それでは使い物になりませんから、バリコンが回転中でも5m秒おきにSWRをチェックするようにしました。 これで、従来より10倍くらいの密度でSWRのチェックする事になり、収束するようになりました。

しかし、1分以上経っても整合できない事もしばしば発生します。 これは、バリコン最少容量状態から、小刻みに、VCを回し、SWRが規定以下になるポイント探す時間と、SWRがかなり下がったのに、何らかの原因でSWR20以上の状態に陥る場合です。 対策として、整合の為のサーボ動作を開始するSWRの上限を20から50に修正しました。 

その上で、SWRが10以上ある時は、モーターの駆動時間を従来の2倍にして、SWR10以下になるまでの時間を約半分にしました。 また、整合途中でSWR5以下まで収束したら、その時のVCの角度を記憶させる事にしました。 この後、なんらかの原因でSWRが50を超えても、最初からやり直すのではなく、SWR5以下になったバリコン位置から再スタートさせます。 

また、20秒以上たっても整合しない場合、SWR3以内なら一旦整合したとして停止させ、そこから再度整合をスタートさせると、ほぼ100%の確率でSWR1.5以下に収束します。  

一度整合してしまえば、その時のタップ番号やバリコンの角度を記憶しておりますので、プリセットMTUと同感覚で使用できます。

Atuswadd

ただし、18メガはなかなか整合しません。SWR3くらいまでは比較的簡単に収束しますが、それより、なかなか低くなりません。 原因を確かめる為に、ATUをマニュアルで動かす機能を追加しました。VC1もVC2もキーを押している間だけ、CW,CCW方向に回転できるようにしました。 このマニュアル機能を使い、手動で整合させようとしますが、まだうまくいきません。 このバンドだけは、後日、対策方法を考える事にします。

マニュアル動作が可能なATUの配線図 ATU-VC6.pdfをダウンロード

Mtu_cont1

また、ATUのSWR計がSWR1.4と表示しているのに、シャックの中にあるSWR計はSWR2と表示して、レベルが合いません。  通常はアンテナ直下のSWR計より、リグの近くにあるSWR計の方が良く表示されますが、これは逆の現象です。 

ATUをリグの近くに置き、短い同軸ケーブルで接続すると、このSWRの数値差は出なくなります。 コモンモード電流が悪さをするとこのような現象がでる事は判っていますが、今回も同じ理由なのかは判りません。 今後、使用しながら改善する事にします。

--------------------------------------------------------------------------

18メガがなかなか整合しない原因が判りました。コイルのQが高過ぎて、バリコンが非常にクリチカルになり、モータードライブのバリコンでは合わせきれないのが原因のようです。 ギアのバックラッシュを完全に無くすると、この問題は発生しないのでしょうが、それは、無理ですから、別の方法を考える事にします。 

NT-636がクリチカルながらも整合する理由はコイルをショート状態で使っているのが影響しているのかも知れません。ショート状態とは、タップ番号0のタップはいつもGNDに接続してあるという意味です。このような使い方では、コイルのQが下がり、チューナー内のロスが増えます。 NT-636も一度、この0番タップのGNDを外した事がありましたが、高圧が発生し、スパークが起こりますので、また元に戻した経緯があります。 

試に、このATUのコイルの0番タップを常時GNDに接続してみました。すると、18メガがちゃんと整合するのに加え、他のバンドも使用可能な帯域幅が広がりました。 

また、2種類のSWR計の読みが一致しない、もうひとつの原因は、SWR計の調整の仕方そのものに有る事もわかりました。 SWR計はリアクタンスが含まれたとたん誤差が大きくなる事は、SWR計とリアクタンスの記事で紹介しましたが、SWR計の調整のとき、純抵抗のダミーロードだけで、VREFやVFWDのキャンセル調整を行うと、CM結合器のトリーマーの位置がどうしてもブロードになります。 このトリーマーの調整を実際に共振している50Ωのアンテナで行い、2機種ともSWR最良になるようにトリーマーを調整してやると、共振周波数以外では、SWRの表示に差異がでますが、SWR最少となる共振周波数はかなり一致するようになりました。 

しかし、21MHz以上のバンドでは、一致したとはまだ言えません。 そこで、ATUの直近にあるコモンモードチョークをFT240#43のコアの物に交換し、いままで使っていたFT140#43 2個によるチョークはリグの近くにあるSWR計の出力側に移しました。 この結果、SWR最少周波数が完全に一致しないまでも、ふたつのSWR計の指示はかなり近くなりました。 

Mtu141030d

チューナー内のロスはコイルのQが少し下がった関係で、増加したと思われますが、一応全バンド使えるようになりました。 

ところで、このATUはなかなか整合しないような印象を受けたかもしれませんが、それは、このATUを最初に使う時だけで、一度整合してしまえば、以降は2秒以内で実用SWR域にプリセットされます。 ソフトの開発中は、プログラムを書き換える度に、プリセット用のVC角度がイニシャライズされますので、なかなか収束しないように見えるものです。

このマルチバンドアンテナシステムは10MHz以下のローバンドは7MHz用垂直ダイポールに整合させ、14MHz以上のハイバンドは18MHz用スカイドアに整合させますが、間違って垂直ダイポールに14MHz以上のハイバンドを整合させたり、スカイドアに10MHzや7MHzが整合させてしまいます。

当然、このような想定以外の整合では、アンテナの性能は著しく悪くなります。ATUの場合、この間違った状態でも、整合が成功すると、タップ番号やバリコン角度を書き換えてしまいます。 間違いに気づいて、正しいアンテナで整合させようとすると、以前の正しい整合情報が書き換えられており、また一から整合ポイントを探す事になってしまいます。 

そこで、どのアンテナエレメントを選択しているかをATU側でチェックし、測定した周波数と比較して、エレメントが間違っている場合、エラー警告を出し、整合動作を開始しないようにしました。 この措置で、アンテナ切り替えミスにより、せっかくのATUプリセット情報が書き換えられる事がなくなりました。  しかし、時々、このプロテクタープログラムを入れた事を忘れてしまい、エラーになる理由が判らず、悩む事もあります。 慣れるまで大変です。

このATUが真価を発揮するのは雨の日です。 その効果はすでに実証済みです。 しかし、まだまだ、使い勝手はMTUの方が高い状態です。当面はMTUのサブとして使う事になりそうです。

ATUのPICマイコンによるSWR計の指示とシャックの中にある自作のSWR計の指示に差がある事はすでに触れましたが、この本当の原因が判りました。当初、プリセットMTUのBOXまで同軸ケーブルで接続された後、160mバンド用の延長ケーブルに接続できるように、リレーで回路の切り替えをやっていましたが、このリレー回路は普通のワイヤーで立体配線されたインピーダンスは完全無視の回路でした。 

このリレー回路がハイバンドでSWRを悪化させ、その結果、ATU内のSWR計が21MHzで1.02を指示しても、手元のSWR計は1.2と表示してしまう事が判りました。 このリレー回路を廃止し、ATUに同軸ケーブルを直結すると、ふたつのSWR計の指示差は無くなりました。 

同じベランダで長年使っていた2m用のJポールを廃止しましたので、このアンテナ用の同軸ケーブルが余りました。 これを160mに専用で使用する事にすることで、問題は解決です。 

ATUの整合条件はかなり変わり、今度は21MHzが整合しなくなりました。 原因は、回路のQが高くて、真の整合ポイントを通り越し、VC1もVC2も最大容量に収束してしまうものです。 マニュアルモードで真の整合ポイント付近でSWRが1.5くらいに持っていき、そこから自動整合を開始すると、SWR1.1以下に整合します。 

このテストを何度も繰り返している内に、バリコンの最大容量250PFは大きすぎるという結論になりました。ギアのバックラッシュをもっと少なくするか、バリコンの容量を最大150PFくらいまで落とすなどの対応が必要なようです。

たちまちは、これらの対応を実現できませんので、当面は、ソフトを書き換えたら、また最初の整合ポイント探しはマニュアルで行うしかないみたいです。

ATUの接続方法を変更した配線図ATU-VC9.pdfをダウンロード  (LCDの変更も含まれています。)

ATUの自作 : LCD交換 に続く。

INDEXに戻る

2014年9月 1日 (月)

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

マイコンの開発がほぼ終わり、評価ボードを実用サイズに作り直すところまで来ました。この実用サイズは、現用中のプリセットMTUを含めて収納できる防水ケースに収める事が条件ですから、MTUの作り替えを前提としたサイズにしました。

最終的なサイズは  156x102x118mm となりました。

構造は、二つのL字型シャーシに内部パーツを分割してマウントし、これを四角のBOX状に組み立てるもので、オリジナルのTS-930S用ATUと似たようなサイズになりました。

Atu_comp5

Atu_comp4

上の画像は、バリコン部とCM結合器及びマイコン基板が実装された状態です。 軸の穴径拡大時に失敗し、傾いてしまったギアも、作り直し、傾きが無いものと交換しました。

Atu_comp3_2

Atu_comp6

上はコイルとこのコイルのタップを切り替えるリレーを10個並べたもので、リレーはアルミのLアングルで動かないように固定して有ります。

このふたつのアングルを合体すると以下のようになりました。

Atu_comp2

Atu_comp1

この状態で、動作テストを行い、問題なく動作しましたので、側面のカバーをかぶせて出来上がりです。

JW-CADで組み立て図を書き、その組み立て図から部品図面をおこしますが、組み立て図をコピーして作った部品図面は、間違いはないのですが、寸法のみ拾い、別に図面を書いたものは、穴位置が反対だったり、位置ずれがあったりで、かなりステ穴が増えました。また、板金の曲げ加工はバイスと木の当て板だけで行い、曲げ部分のRを小さくする為、ハンマーでたたくものですから、平面であるべきところが凸凹です。厚さ1mmのアルミ板ですが、この曲げ加工により強度がアップしましたので、みてくれは悪いですが、安心して使えそうです。

Atu_comp0_2

Atu_comp7

マイコン基板はむき出し状態ですが、不安定になるようなら、薄いアルミ板で上からカバーするつもりです。 一番最後の段階で実装する事になるでしょう。

一応、ATUはできました。 これを、現用中のプリセットMTUと平行してテスト運用していますが、どうしても従来のMTUを使う頻度が高くなります。 原因を考察すると、ATUはバンド切り替えの度に、例えTUNE動作は必要なくても、送信というアクションが必要です。バンドの状態はどうかな?とちょっとの間、他のバンドを聞きたくても、チューナーが整合していませんので、7MHzの国内交信は聞こえても、ハイバンドのDX信号は聞こえません。 

一方、プリセットMTUは受信機のバンド切り替えと同時にハンドでカチカチと切り替えるだけですぐに受信できます。このような問題を解決する手段として、最近のモデルは、現在の受信周波数やモードなどを外部へ出力しており、このデータを利用して、ATUも予め決めた調整状態に設定する事ができます。  しかし、残念ながら、私のリグは30年くらい前のリグですから、そんな便利な機能はありません。

そこで、現用のプリセットMTUのバンド切り替え情報のみでATUをプリセット出来るようにしました。もちろん、このプリセット時の送信は一切ありません。プリセットMTUは3.5MHzから28.7MHz(28.7MHz以上は使用していません)までを14バンドに分割しています。ATUの28バンド分割の半分しかなく、バンド全域はダメですが、私が良く使う範囲はSWR1.5以下に収まります。このプログラムを実装しましたので、従来のMTUと同感覚でATUを使用できます。

遠隔操作システムが完成したら、従来のプリセットMTUは不要になるかも知れません。ただし、それを確認できるのは、かなり先の事になりそうです。

バリコン式ATUの実装 に続く。

INDEXに戻る

2014年8月27日 (水)

バリコン式ATUの自作 7 (遠隔操作)

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUとしての基本機能が完成しましたので、これをベランダに設置し、そこから約20mのケーブルをシャックの中まで引きこみ、シャックの中からこのATUを操作する事になります。 この遠隔操作システムの検討と試作を行いました。

現在の遠隔操作システムは、ベランダに置かれた、17台のプリセットMTUをバンドや使用するアンテナに応じ8本のケーブルで操作していました。すべて、パラレル制御です。

Mtucont0

今回ATUを設置するに当たり、MTUの操作を残したまま、ATUの操作を追加しますので、従来通りパラレル制御を行うなら、さらに6本のケーブルが必要になります。 そこで、RS232Cより長い距離でも通信が行えるようにラインドライバーを設計した上で、制御は1本のシリアルラインで行い、電源を含めて3本のラインで構築する事にします。

また、ATUからの戻り信号として、ATUの状態を示す2個のLED出力をそのままパラレルでコントローラーへ返すことにします。 それでも3本のラインが余りますので、将来、ATU側からSWRなどのデータをシャックに戻す為に、ハード設計だけして予約して置くことにしました。

新規に作成するコントローラー(エンコーダー)も、プリセットMTU制御回路(デコーダー)もATUと同一シリーズでピン数のみ28ピンとなるPIC16F1933で作る事にしました。

Mtuenc0_2

Mtudec0_2

左上がエンコーダー、右がデコーダーです。現在のプリセットMTUのコントロール機能はすべて含まれますが、MTUの数は最大で20台までとしました。また、今まで、ベランダ側で操作できなかった、ローバンド、ハイバンドの切り替えと外部アンテナへの切り替えを可能にしました。また、テストモードをOFFし忘れて、シャックに戻ると、手元のコントローラーから操作不能になり、またベランダまで出なければならないという不便を解消する為、例えテストモード状態でも、シャックから操作があると、自動的にテストモードをOFFにする機能も追加しました。

ATUの制御は4つのスイッチだけで行い、その状態は2個のLEDで確認できますので、このLED出力のみパラレルでシャックにもどします。もちろんATU on/offもベランダ側でも操作できるようにしました。

これらの制御は16pitのシリアル信号で行いますが、現在使用されているのは10bitのみで残りの6bitは将来の予約です。

UARTを使用したシリアル通信は初めてのトライで、理解できるまで何日もトラブリました。最大の問題は多重割込みによりメインループが止まってしまうという問題でした。とりあえず、割込み処理ルーチンの処理時間を極力短くして多重割込みが発生するチャンスを減らすくらいの対策しかできませんでした。 なお、このシステムを操作するのは一人の人間で、通常はATU側とエンコーダー側を同時に操作できません。現在のデバッグはエンコーダーもATUも同じ机の上に有り、多重割込みが発生する操作ができるものです。 実際には問題の発生は無いと考えられます。

また、スタックオーバーフローも発生し、これを回避する為に、関数のネストを減らしたり、ローカル変数をグローバル変数に変えるなど何日もロスする事になってしまいました。

UARTの通信速度は1200ボーに設定しましたが、距離が20mもありますので、通常のラインドライバーではなく、1AクラスのP-MOS FETによる電源ラインの直接スイッチング方式としました。とりあえず、10mAくらいの信号電流でトライしますが、誤動作があるようなら、最大で数100mAも流せる回路にしてあります。 20mのケーブルを使った実験では、問題なく動きました。

Mtu_uart_in

Atupcbback

左上の波形は、20mのケーブルに接続されたデコーダーマイコンのRX入力端子の波形です。波形の角が少し丸みを帯びていますが、大きく崩れることなく、伝送出来ています。

右上の基板はATU回路の裏側です。チップ部品より配線のリード線の方が目立ちます。最初から、全ての回路が決まっていたら、配線経路が最少になるように部品の配置を決めますが、今回のように、ソフトを開発しながら、必要に応じてハードを追加したり、変更したりすると、このようにジャングルになってしまいます。 実用するATUに作り替えるとき、この基板は、このまま使いますので、シールドケースがいるかも知れません。 後日、100W出力による動作テストを行いましたが、MTUもATUも誤動作なく動きました。

Atulinedriver

実使用状態にするには、まず、このATUのサイズ縮小と防水設計をする必要があります。また、現在使用中のMTUコントローラーも改造が必要となり、かなり長い期間QRTせねばなりません。 次のステップは秋のDXシーズンが終わってからになりそうです。 それまでは、机の上に置き、時々デバッグをする事にします。

MTUのエンコーダー、デコーダー及び遠隔操作機能を追加したATUの配線図は以下からダウンロードできます。

シリアルコントロールのプリセットコントローラー配線図MTU-PIC3.pdfをダウンロード

遠隔操作機能付ATUの配線図をダウンロード

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成) に続く

INDEXに戻る

2014年8月10日 (日)

バリコン式ATUの自作 6 (角度センサー対応アルゴリズム)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

TS-930S用ATUのギアBOXにバリコンの回転に連動した可変抵抗器を追加し、バリコンの角度を電圧の変化に変換する角度センサーを使ったATUのSWR収束のアルゴリズムを試行錯誤しています。

1.   フラッシュマイコンにプログラムを書き込むとき、VC1,VC2の最大容量時、最少容量時の可変抵抗器出力データをプログラム上で初期設定し、50Ωのダミー抵抗に整合する時のコイルのTAP番号と、VC1,VC2の角度データを予めEEPROMに書き込んで置きます。  バリコンと可変抵抗器がギアで直結されていますので、いかなる事が有っても、バリコンは180度以上は回転しないという条件を設けます。

2.  TUNE状態になったら、キャリアレベルを検出し、規定値以内のレベルなら周波数を測定し、得られた周波数からコイルのTAP番号と、VC1,VC2の初期設定用角度データをEEPROMから読み込みます。

3.  SWRが20以上ある場合、VC1,VC2を初期設定用角度まで回転させ止めます。TAP番号に変更が有ったらタップの切り替えを行います。 バンド内で周波数を変えたときSWRが20を超えるような場合、収束に時間がかかりますので、当初、バンド幅が100KHzを超えるバンドは100KHz~350KHzくらいごとにバンドを分割し、全体を18のバンドに分割していました。 

何度もチューニングを繰り返す内に、前回SWRが規定値以下に収束したバンドはVC1とVC2を前回の角度にプリセットするだけで、かなりの確率でSWRが実用レベルに収まる事がわかりました。これを利用すべく、周波数をチェックしただけで、バリコンの角度とTAP位置のみを設定し、チューニングはしないモードを作る事にしました。このモード対応の為、最終的には、3.5MHzから29.7MHzまでを28バンドに分割しています。

4.  SWRのチェックを行いSWRが20以上ある場合は、VC1,VC2とも最少容量まで回転させ、そこから、VC1を小刻みに容量最大方向へ送りながら、VC2を180度づつ交互に回転させ、SWR20以下を探ります。 最小容量からスタートする事で、VC1,VC2とも最大容量でSWR最少に収束する現象を回避しました。この小刻みに送る角度は周波数により変化させ、ハイバンドは1回の送り角度を2度くらいにしますが、ローバンドは5度くらいの角度で送り、SWR20以下の検出時間を短くします。1回に送る角度が多ければ早く検出出来ますが、検出漏れが発生しやすくなりますので、これらの角度は実験で決めます。

5.  SWR20以下が見つかりましたら、

・ VC2を短時間CW方向に回転させ、SWRが変わらないか下がる場合、SWRが上がるまで繰り返します。(SWR最少ポイントを少し過ぎたところで停止) 停止コマンドを送ってから、実際に停止するまでの時間は非常に重要です。SWRのチェックは、実際に停止してから行わないと判定を誤ります。停止までの待ち時間を長くとると、SWRのチェックは確実ですが、収束時間が長くなります。何回も動作テストを行い最適値を決めます。

・ SWRが上がる場合、VC2を反転しCCW方向に回転させ、SWRの変化を見ます。SWRが変わらないか下がる場合、SWRが上がるまで繰り返します。SWRが上がる場合、VC2を反転させますが、この動作中に回転の反転を2回やったら、この動作は終了。

 

・ VC1を同じように繰り返します。  VC2もVC1も一度SWRが下がった場合、そのときの回転方向を記憶しておき、メインループを1周して、このルーチンに戻ったとき、前回の回転方向でスタートする事により、スムースにSWR最小ポイントを探す事ができます。 この動きはMTUの調整方法と同じです。

・ VC1、VC2いずれも1回に送る時間は周波数で変化させます。24MHz以上の場合、30mSec、5MHz以下の場合、60mSec、その他の周波数では40mSecとしておき、使用しながら最適値に決めます。また、SWRが2以下まで収束しましたら、この送り時間を半分にして微調整モードとします。

6.  5項をSWRが規定値以下になるまで繰り返します。 規定値は時間経過により、次第に緩くしていきます。最初の5秒間はSWR1.10以下への収束としますが、5秒以上経過したら、SWR1.25以下、10秒経過したら、SWR1.50以下、20秒経過したらSWR3.0でもチューニング完了とします。SWR3付近で完了した場合でも再度チューニングをかけると、SWR1.10まで収束しますので、周波数を可変して、SWRが高くなってきたら、再チューニングしています。

7.  VCが最大容量や最少容量を超えたらとりあえずエラー警告して停止させます。 その上で、バリコンが最大容量で停止したら、TAPをひとつ下げます。最少容量で停止したらTAPをひとつ上げます。 エラー状態を示す赤色のLEDが点滅して停止していますので、再度チューニングスタートボタンを押すと、変更されたTAP状態で再調整にトライします。 私のアンテナはこの処置で全バンド整合できます。 これでもエラーが続くようなアンテナの場合、諦めることにしました。(アンテナ自身を調整する事になります)  なお、2回目からは新しいタップ位置でプリセットされていますので、エラーになる事は有りません。

8.  SWRが規定値に収束したら、TAP番号とふたつのバリコン角度データをEEPROMに記憶します。この機能により、一度チューニングが成功したバンドは、ほぼ5秒程度でチューニング完了です。 バリコンがプリセット位置に移動しただけでSWR1.10以下という状態もかなりの頻度で発生します。この時は2秒以内で収束します。

9.  チューニングする時のモードを二通り選択できるようにしました。  キャリアを出した後、スタートボタンを押すと、SWR最少になるよう本来の動作を行います。 キャリアを出さない状態でスタートボタンを押すと、キャリアが無いという表示であるグリーンLEDがスローで点滅します。この状態で、キャリアーを出すと、TAPの切り替えと、VCのプリセットのみ行い、SWRはチェックせずに終了させます。このプリセットのみの場合の所要時間は2秒以下です。 特にSWRのチェックをしませんので、SSBモードでもノイズだけで周波数を読み、プリセットしてしまいます。 

バンドを28に分割しましたので、天気が同じなら全バンドSWR1.5以下になります。 雨が降って状態が変わってしまったら、このモード終了後に再度チューニングをかけると、SWR最少状態に短時間で収束します。 ATUはバンドを変えたら出力を絞ったキャリアーを出してチューニングするのが一般的ですから、その面倒さゆえバンド切り替えがおっくうになりがちですが、このモードでかなり楽になりそうです。

アンテナをつないで、最初にチューニング動作を行わせた時とか、アンテナを変更したためにバリコンをプリセット角度に移動させてもSWRが20以下にならない時だけ、4項の動作を行いますが、それ以外の場合、3項から4項をスキップして、5項に入ります。また、3項の動作は概ね2秒以下ですが、バンド切り替えが無かったら3項の動作時間は1秒以内ですから、チューニング開始してから5秒くらいでSWR1.10以下に収束します。 

 

Atusens2_2

Atu2

3.8MHz帯の整合がクリチカルな状態でしたので、追加コイルを復活させました。ただし今回は5μH分だけです。

 

バリコンの角度は可変抵抗器のセンター端子から得られるDC電圧をADコンバーターで読んでいますが、このデジタルデータは10bitです。EEPROMの記憶エリアは8bit単位ですので、ADのデータも10bitで取得した後、右へ2bitシフトし、8bitデータとして処理しています。  ギアのかみ合わせ調整時、最大容量で10くらいにセットすると、最少容量で205くらいになります。差は195ですから、バリコンの回転角180度を1度弱の分解能で表示している事になります。

  このバリコンの角度データもLCDに表示できるようにしました。左上の写真にあるLCD表示は1行目左3文字がVC1の角度データ、4番目がTAP番号、5番目からSWR値を表示。2行目の左3文字がVC2の角度データ、4番目以降は周波数です。この例では、14.020MHzでSWR1.04に収束した時のTAP番号は4、VC1の角度は163, VC2の角度は169を示しています。このLCD表示は、プログラムのどの部分を検討しているかによって、随時表示を変えていますので、一定ではありません。

角度センサー付の配線図は以下からダウンロードできます。

ATU-VC4.pdfをダウンロード

整合可能範囲が広いという事は、疑似SWRディップポイントへの収束やバリコン最大容量状態への収束にはまりやすいという事と裏腹のようです。 この対策とバグ取りを行っていましたら、XC8というコンパイラーの癖が見えてきました。

関数の戻り値がマイナスになると無視されます。比較演算の中で、マイナス数値を扱うとWarningがでます。単にWarningが出るだけと思っていましたが、比較の対象が負の数の場合、予期しない動作をします。 比較演算式の中に負の数値が表現されないようにすると、Warningも出ずに、結果も常に正しく判定します。データの型をunsigned charで無く、単に「char」にしても同じでした。 この現象の為、バリコンの回転角を180度以内に抑えるプロテクターが働かず、ギアを外して、設定し直した回数は、数えきれません。 

何回か書き込みしていたマイコンがIDを返さなくなりました。従い、書き込みもできません。どうやら壊れたみたいです。壊れた原因が判りませんが、予備のマイコンに交換して継続しています。 ATUの電源を接続したまま書き込むと、書き込みエラーになります。もちろん、書き込み治具側からの電源供給のチェックを外していますが。 これが原因でしょうか?

一度ごみ箱に捨てたマイコンを拾ってきて、PICkit3から供給する電圧を5Vではなく4.6VにするとIDが返ってきました。 そして、書き込みができ、動作も問題なしでした。

アンテナに接続して、最初にチューニングした場合、ハイバンドで10秒くらい、ローバンドで40秒くらいでSWR最少状態に収束します。2回目からは全バンド5秒くらいで収束します。また、バリコンの角度だけプリセットしてSWR収束処理を行わない時は2秒以下で完了します。 実際の運用は、雨が降らない限り、このSWR収束なしで問題なく交信できます。

一応、完成しましたので、遠隔操作機能を追加しますが、現在使用中のMTUを使用したマルチバンドアンテナシステムの制御回路を含めて変更が必要になりますので、しばらくお預けとする事にしました。 

バリコン式ATUの自作 7 (遠隔操作) へ続く。

INDEXに戻る

2014年8月 9日 (土)

バリコン式ATUの自作 5 (角度センサー)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUのソフト開発中ですが、バリコンの角度センサーはマストのようです。 今回は、TS-930S内蔵用ATUに追加したバリコンの角度センサーを紹介します。

部品集めです。

Atugiar

Atugiar4

直径16mmの平ギアで3mmのシャフトに止められる物、16φで軸径が3.2mmの可変抵抗器、25mm長のM3小ネジ、内径4mm長さ15mmのスペーサー、それに可変抵抗器を保持するアルミフレーム。

平ギアと可変抵抗器は千石電商から通販で購入。小ネジとスペーサーは近くのホームセンターで購入。アルミのフレームはJW-CADでギアBOXの組み立て図を作図し、図面を作成した上で、糸ノコと電動ドリルで自作しました。

フレームの図面です。  ギアのかみ合わせの調整を何度もした結果、13.5mmの寸法は13.2mmくらいにした方がいいみたいでした。

Atugiar9

Atugiar5左は、加工済みアルミフレームと、可変抵抗器の軸に装着した平ギアです。 

この平ギアは軸径3mm用であり、可変抵抗器の軸径3.2mmと合いません。よって、3.2mmのドリルで穴を拡大するのですが、購入した4個のギアの内、1個のみ軸径2mm用が混入していました。 ちょうどこの日、台風11号が接近中で大雨となっており、屋外作業となるボール盤が使えません。やむなくハンドの電動ドリルで穴拡大の作業をおこないました。

軸径3mmのギアの穴を3.2mmに拡大するのは問題ないのですが、軸径2mmを3.2mmに拡大すると、穴の軸がほんの少し傾いてしまいました。 ギアが薄いので、かみ合わせがきわどくなってしまいましたが、とりあえず使えます。

この軸径の間違ったギアは後日、注文通りの軸径3mmの物が無償で送られてきました。(TKS)

Atugiar1

Atugiar2

バリコン駆動シャフトにも平ギアを装着しますが、シャフトがサビていて、ギアが挿入できません。ヤスリでシャフトを磨いたり、ギア側のアルミボスの穴をヤスリで削ったりして現物合わせで挿入しました。 ギアBOXはそれぞれ4個のビスでアングルに固定されますが、上側のビスを25mm長のビスに変更し、飛び出したビスに15mm長のスペーサーを差し込みます。 このスペーサーの内径は4mmで、ギアBOX固定用アングルの絞りタップを包み込んでしまいます。

アルミフレームに可変抵抗器を取り付け、ギアを仮止めした状態で、アルミフレームを25mm長のビス4本で固定します。そのままでは、可変抵抗器の本体がアングルに当たり挿入できませんので、一度、25mm長のビスを緩め、アルミフレームを差し込んだら、また元通りに締め直します。

Atugiar7

Atugiar8

バリコンは最大容量位置から半時計方向に10度くらい回した位置にしておき、可変抵抗器は半時計方向に回しきって置き、ふたつの平ギアがかみ合うように固定します。

ここまでできたら、モーターにDC電源をつなぎ、問題なく動作する事を確認します。 ギアのボスの穴径を拡大するとき、穴の軸が傾きましたので、回転すると、ふたつのギアのかみ合い部分がずれます。ずれても、かみ合いが外れない位置にギアを固定しました。

ギアがプラスチックですから、可変抵抗器のストッパーに当たると、ギアの歯が欠けてしまう可能性があります。マイコンソフト作成時十分注意が必要です。最後の保護手段として、ギアがロックされたら、モーターコントロール用ICの電源ラインにシリーズに入れた10Ωの抵抗が断線してギアを保護する事を期待したいと思います。

後日、可変抵抗器のストッパーに当たる事故が何回も発生しましたが、10Ωは断線しない代わりに、電圧降下が起こり、モーターのトルクを弱めますので、ギアも無傷で済みました。

Atugiarlist

この角度センサーに使用した部品リストを左に示します。  軸径が3mmの可変抵抗器を使えば、平ギアが傾く問題は無くなると思います。 

アルミフレームを寸法通り作るこつは、JW-CADで一度作図し、これを実寸大(拡大率100%)でインクジェットプリンターで紙に印刷します。 プリンターはキャノンでもエプソンでもOKです。 この印刷した紙をアルミ板に糊で張り付け、穴の中心にポンチで印をつけると、ハンドドリルでも大きく寸法が狂う事はありません。穴のセンターずれを押さえる為に、一度2φくらいの穴をあけ、その後で目標の穴径に拡大します。  寸法がずれている場合、4個の3.6φの穴径を3.8φとか4φに広げて調整します。 アルミ板は柔らかいので、その他の寸法誤差も吸収してくれます。         紙をアルミ板に張り付ける時は、決して両面テープは使いません。 穴あけ加工後、両面テープをはぎ取るのに苦労しましたから。 糊なら加工後に水洗いすれば、きれいに取れます。

とりあえず、角度センサーができましたので、これに対応するSWR収束のアルゴリズムを検討する事にします。

バリコン式ATUの自作 6 (角度センサー対応アルゴリズム) に続く

INDEXに戻る

2014年8月 5日 (火)

バリコン式ATUの自作 4

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

Atutb

VC1とVC2が容量最大状態に収束し、真のSWR最少ポイントを見つけない問題を解決する為、仮に、バリコンの角度センサーが有った場合どうなるかシュミレーションしていきますと、コイルのTAPを適宜選択する事により収束しやすくなる事が判ってきました。 さらに、前回までの実験はダミー抵抗による収束検討でしたが、実際のアンテナの場合、周波数を変えると、リアクタンスも抵抗も変化するという違いがあり、VC1,VC2ともに最大容量へ収束する確率はかなり低くなる事も判りました。

バリコンの角度センサーをどうするかは、先送りして、角度センサーなしでどこまで改善できるかトライしました。

サーボ機能はその応答特性が重要で、状態の変化に対して、応答が速すぎても、遅すぎても収束に必要な時間は長くかかります。 モーターの駆動時間やブレーキをかけてから完全停止するまでの待ち時間などを変えてやると、SWR最少ポイントへの収束時間は大きく変わります。早い時は1秒くらいで収束し、遅い時は30秒近くかかる場合もあります。 また、バリコンの最大容量もしくは最少容量の付近で行ったり来たりして、永久に収束しない事も出てきます。そこで、収束させる条件を前回より以下のごとく変更しました。

  • サーボ動作に入る為のSWR条件をSWR5からSWR10に変更しました。 例えば、21.05でSWR1.05に収束した状態で周波数を21.40に変えると、私のアンテナでは、SWRが5を超えてしまいます。従来のままなら、SWR5を超えた時点で、メクラ状態でVC1とVC2を回し、SWR5以下を探す事になってしまいます。SWR10以下に変更すると、この値以下のSWRの時は、即サーボ動作を開始しますので、収束が速くなります。

  • SWRの収束目標を3段階にします。 従来はSWR1.15を目標にしていましたが、最初の目標をSWR1.05以下とし、10秒以上経過しても、収束しない場合、SWR1.20まで緩めることにします。 さらに20秒経過しても収束しない場合、SWR1.40で緩めます。 収束しないよりはましです。 1.40くらいで収束した状態で再度チューニングをかけると、1.05以下に収まります。

  • それでも収束しない場合、コイルのタップ位置を手動で切り替えてみる事にしました。 コイルのタップ位置は7メガのダイポールに18メガを整合させる場合と、17メガくらいに共振周波数のあるスカイドアアンテナを18メガに整合させる場合、違ってくる事が判りましたので、バンドとタップの関係は固定しない事にします。 バンドとタップの関係はEEPROMに記憶させ、次回からは成功したタップ位置を呼び出す方式です。

  • チューニング動作を開始する送信機の出力範囲を広げました。 前回までは、5Wから40Wくらいの範囲にしてありましたが、SWRの計算にエラーが発生しない事を確かめて、1Wから40Wまでの範囲でチューニングできるようにしました。 出力が上ると、コイルの切り替え時、リレーへの負担が大きくなるので、実際にチューニングする時は、10W以下の必要最小限に抑える事にしています。 

  • モーターの回転数は12V駆動の高速と4.5V駆動の低速にしていましたが、4.5Vでは加速が遅く、短時間駆動では、ギアのバックラッシュすら吸収できない事がわかりました。この低速状態は機械的に非常に不安定で、温度や湿度でサーボの応答特性が変わってしまいそうです。 色々実験しましたが、低速は6V駆動として、最低限の起動トルクを確保した上で、動作時間を細かく調整する事にしました。 6Vの場合、最初のメクラ状態でSWRのディップポイントを探す時粗くなりますので、ディップポイントを見逃して、結果的に探す時間が長くなりますが、やむなしです。

 

Atutap3_2

以上の改善を行うと、実際のアンテナの場合、角度センサー無しでも、全バンドSWR1.40以下に収束できるようになりました。 左の画像は、現在のタップ位置4をLCDに表示した状態です。またこのタップ番号を手動でアップしたりダウン出来るスィッチを追加しました。 チューニングを開始し、いつまで経っても、終わらない場合、手元でタップ位置を上げたり下げたりして確認する事ができます。 

この為もあり、一定の時間チューニングしてダメなら、そこでチューニング動作を中止するという機能は廃止しました。チューニングを止めたい時はSTOPボタンをおします。 しかし、まだ、収束時間は長く、最適状態にするには、かなりの試行錯誤が必要なようです。 多分、最終的には、バリコンの角度センサーが必要になるとおもわれますが、それまでは、現状でトライしてみます。

今回、PICのTimer4を使い、0.2mSecごとに割込みが発生するようにソフト変更し、この割込みを使い、時限設定機能を使えるよにしましたが、C コンパイラーの中にある関数

__delay_ms(20) ; // (括弧内の数値を変えて任意の遅延が可能。ただし数値は実数のみ)

の実際の遅延時間が設定した時間より8%ほど長くなる事が判りました。Timer4以外に未使用のタイマーとして、Timer2とTimer6がありますが、どれを使っても8%長くなります。この既成の関数もこれらのタイマーを使っている為でしょう。 このATUの場合、周波数カウンター動作時は全割込み禁止で影響なし。その他の遅延設定でも8%くらいの誤差は無視できますので問題なしです。

設定したアルゴリズム通りに動作しないバグを取り除き、モーターの駆動時間や、ブレーキ後の待ち時間の調整をした結果、14MHz以上のバンドでは、サーボ動作開始後からSWR収束までの時間は最短で1秒、長くても5秒くらいになりました。 しかし、10MHz以下のバンドは20秒を超える事がしばしばです。バンドによってサーボ定数を変更しなければならないかも知れません。

検討の為、このATUは、トランシーバーと同じ場所に置いてあり、アンテナからここまで約20mの長さの同調フィーダーでつないでいます。18MHzでラオスが聞こえますので、このATUでチューニングしてコールしてみました。一応交信は成立しましたが、アンテナ直下のプリセットMTUに比べて、受信信号強度はS半分ほど悪く、ノイズはMTUがS2でATUがS5でした。 ATUはアンテナ直下に限りますね。

現在まで発生したハードの変更を網羅した配線図は以下からダウンロード出来ます。

ATU-VC2.pdfをダウンロード

バリコン式ATUの自作 5 (角度センサー) に続く。

INDEXに戻る

2014年8月 2日 (土)

バリコン式ATUの自作 3

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

コイルを1個にして、再度バンド毎のTAP位置を確認する事にしました。前回に比べて大幅にずれました。コイル2個のときは、シャーシとの静電容量の影響もありましたので、今回のTAP位置が素直に見えます。 

Atutap2_2

Atuband0_2

このバンド毎のTAPを切り替える時は、切り替え時に高電圧が発生してスパークするのを防ぐ為、ショーティング切り替えを行います。右上にTAP3からTAP5を切り替えるタイミング例を示します。リレーが動作完了するまでの時間を仕様書で調べたら15mSecとなっていました。これは電極が磁石で引き寄せられる時間と一度接触した接点が反動でバウンズし、それが収まるまでの時間です。 今回は余裕を見て20mSecとしました。

このATUは2個のADコンバーターを使いVFWDとVREFの電圧を読んでいますが、マイコンの中のADコンバーターは、1個のサンプルホールド回路しかなく、指定されたi/oピンに接続し、AD変換が完了したら、レジスターにデータをストアーする構造ですから、VFWDとVREFは同時にAD変換できません。かつ、VFWDの変換を行った後、i/oピンの切り替えを行い、VREFの変換を開始するまでウェイト時間が必要です。

PICの仕様書ではこの待ち時間は数マイクロ秒となっており、今回は余裕を見て5マイクロ秒に設定していました。SWR5以下が見つかり、そこからSWR1.0に向けて収束プログラムが動作するのですが、ときどき、AD変換の結果が異常値を示します。原因が判らず、2日間もロスしましたが、どうも連続1000回くらいのAD変換では、待ち期間5マイクロ秒では不足のようです。これを10マイクロ秒まで増やすと、正常に動作するようになりました。 

このバリコン式ATUの整合アルゴリズムは以下のようにしました。

  1. キャリアの周波数を測定し、そのハムバンドに予め決めたコイルのTAP位置を設定。
  2. VC1を低速、VC2を高速でそれぞれCW(時計方向)方向に回転させ、SWRが5以下を検出したらVC1,VC2とも停止させる。
  3. VC2を短時間CW方向に回転させ、SWRが下がる場合、SWRが上がるまで繰り返す。(SWR最少ポイントを少し過ぎたところで停止)
  4. SWRが上がる場合、VC2を反転しCCW方向に回転させ、SWRの変化を見る。SWRが下がる場合、SWRが上がるまで繰り返す。SWRが上がる場合、VC2を反転させるが、3,4項の動作中に回転の反転を2回やったら、この動作は終了。
  5. VC1を3,4項と同じように繰り返す。
  6. 2-5項をSWRが規定値以下になるまで繰り返す。規定値はとりあえず1.15としました。

一応このアルゴリズムでSWR1.15以下に収束するようになりました。 短時間VCを回転させるときの時間や、回転スピードなど詰めなければならない事項もありますが、「出来た」と喜んでいると、問題点が発覚しました。

Atuswr1

左の画像は、3.532MHzでSWR1.08に収束した時のLCD表示です。 3.5MHzから10MHzまではOKなのですが、14MHz以上はVC1とVC2が最大容量になるように収束し、本当の整合ポイントにはなかなか収束しません。原因を調べる為、NT-636にダミー抵抗をつなぎ、マイコンの動作を手動でシュミレーションしてみました。 

すると、NT-636でも同様に真の整合ポイント以外にVC1,VC2最大容量の位置でSWR最少となります。ただし、SWR1.5くらいまでは収束しますが、それ以上小さくはなりませんから、いつまで経ってもモーターは停止しない事になります。 しかも、真の整合ポイントより、はるかにブロードで、この間違った収束ポイントに向かう範囲もかなり広くなっています。

この問題をTS-930Sはどのように対策したのか調べてみました。3.5-14MHzはT型、18MHz以上はパイ型で動作させ、かつ整合可能な範囲をかなり狭くしていました。 目標はNT-636並みの整合範囲を有するATUですから、TS-930Sのノウハウは使えません。

色々と手動で調べていくと、ハイバンドになると、大きな容量のバリコンはかえって邪魔になるようです。現在の最大容量は250PFですが、NT-636は150PFです。 また、周波数を高くするに従い、この最大容量を小さくしていくと、VC1,VC2最大位置でSWRのディップが現れにくくなる事が判りました。 これを実現するには、周波数に応じて、バリコンの角度を管理するか、バリコンにシリーズキャパシターを追加するか等の対策が必要になります。 KENWOODはこのモデルの後のチューナーはバリコンの角度センサー(可変抵抗器)付で商品化しています。

他の対策方法を含めて検討する必要がありますが、問題の大きさから、やる気が半減してしまいました。趣味でやっていますので、気が向くまで、とりあえずお蔵入です。 

バリコン式ATUの自作 4 に続く

INDEXに戻る

 

2014年7月31日 (木)

バリコン式ATUの自作 2

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

TS-930Sに内臓されていた時のATUの動きは、バンド切り替えに応じ、コイルが選択された後、キャリアーを送信しながら、VC1とVC2を同時に回転させ、SWRが設定された値以下になったら、そのVCの位置からサーボが働き、SWR最少状態に収束させるものでした。 VC1とVC2が同じ回転速度で回転したのでは、いつまで経っても、VC1とVC2の比は変わりませんから、VC1側をVC2より遅く回転させ、時間によって、VC1とVC2の比が変わるようにしていました。  今回製作するATUも同じようなアルゴリズムでSWR最少状態を実現させますが、サーボが開始されるSWR値を高くして、整合可能範囲の拡大を行います。 TS-930Sの場合、SWR2以下を検出しないと、サーボは動作しなかったような。

ATUの出力に50Ωのダミー抵抗を接続し検討します。一応、アンテナのバラツキの中心は50Ωの純抵抗ですから、ダミー抵抗を整合させられるVCの容量とコイルのインダクタンスが、その整合状態の中心となり、これを、どれだけ可変できるかで整合可能インピーダンスの範囲が決まります。

まずは、VC1とVC2の回転速度差をどのように選んだら最短でサーボが動作開始するかを実験してみました。  VC2を12Vで回転させ、VC1を10Vくらいから3Vくらいまで連続可変し、最適な回転速度比を見つける事にしました。 結論はVC1を遅くするほど確実にSWRのディップポイントが発生する事が判りましたが、遅くなるほど、ディップポイントが発生する時間間隔は長くなります。この時間が長いと言う事は、整合状態になるまでの時間が長いという事に他なりません。 また、VC1の回転を速くすると、ディップポイントの出現間隔も短くなりますが、トレースが粗くなりますので、デイップポイントを見逃す頻度も高くなります。  

TS-930Sの場合、VC2よりVC1は半分くらいの回転速度だったような記憶ですが、もう動作しませんので確認のしようが有りません。 とりあえず、実験ではVC1駆動モーターの電圧を4.5Vとして、以後の検討をする事にします。現在は夏なので、冬の屋外で、モーターが起動するか?という不安もありますが、その問題は冬場に対策する事にします。

モーターの回転比を決めたところで、各ハムバンドにおける最適コイルタップ位置を選択する事にしました。 下の画像は、3.5MHzと29.5MHzの時の、Vref電圧の変化をデジタルオシロで記録したものです。時間軸は5秒/DEVです。またSWR=1,3,5の位置を赤線で示しました。29.5MHz時、高周波が重畳しているのはオシロのプローグが送信出力をピックアップしているもので、Vref自身はきれいな直流です。 

Atutap1 同じようにして、3.5MHzから29MHzまでの全バンドを測定した結果は次のようになりました。

Atutap0_3

SWR5以下の検出時間間隔というのは、SWR5以上になった後、次にSWR5以下になるまでの時間の事であり、チューニング動作を開始したら、最低この時間はモーターを回し続けなければならないと言う事になります。 3.5MHzのとき、この時間は13秒になりました。逆に言えば、13秒経っても、SWR5以下が得られない場合、そのアンテナは整合不可と言う事になります。

この13秒は最悪値ですから、実際はこの半分くらいの時間で、サーボ動作に移れると考えています。

Atucoild

コイルのタップ番号は当初の予想とは大きくずれました。 3.5MHzから29MHzまでをカバーするつもりですから、コイルは1個でよく、かつタップの数も9個で良いと言う事になりました。最終的に小さいサイズに収める為には、リレーも9個で済む事はメリットとなります。 評価ボードのコイルも1個に変更しました。リレーは実装されていますが、配線は削除しました。

改造などをやっている内に、LCDが壊れてしまいました。間違って、LCDのGNDに+12Vを接続してしまい、LCD内部のDC/DCが壊れ昇圧しなくなりました。

交換の為に手配したLCDが入手できたので、今度はSMT用ユニバーサル基板に実装する事にしました。ところが、このNEW LCDも表示しません。 調べたら、1-2番pinと3-4番pinがそれぞれショートしていました。ここのショート箇所を直しましたが、時すでに遅し。またもや内部のDC/DCが壊れてしまいました。 

Atulcd2

気を取り直して、予備で手配しておいたLCDに交換です。今度は、ハンダ付けする度にテスターで導通テストを行い、祈りながら通電しましたら、ちゃんと動作するようになりました。 もし、このLCDをお使いになりたい時は、秋月に変換基板がありますので、それを利用されることを強く推奨します。LCD本体より変換基板の方が高いのですが、いまやっと、その価値を理解しました。写真は壊れた2個のLCDとなんとか動いた3個目のLCDです。

また、トラブルが発生しました。このLCDは、ベランダに設置したATUの基板に貼り付けてあったのですが、表示が出なくなりました。結局、ATUの自作 : LCD交換 で紹介のごとく使用を中止しました。

バリコン式ATUの自作 3 に続く。

INDEXに戻る

2014年7月26日 (土)

バリコン式ATUの自作 1

LDGや東京ハイパワーのATUを使ってみましたが、その整合可能範囲はMTUのNT-636と比較した場合、比較にならない程狭いものでした。 この為、現在はバンド専用にプリセットされたMTUを使用していますが、雨で整合状態がずれた時など、手元のNT-636に切り替えていました。  しかし、手元のMTUは長い同調フィーダーを使用する関係で、打ち上げ角が高くなったり、外来ノイズを目いっぱい拾ったりで、どうしてもと言う時以外は使用していませんでした。

最近時間が取れるようになりましたので、NT-636並みの整合能力があるATUを目指して、ATUを試作する事にしました。 (ATUの自作ではなくバリコンの自作の場合、こちらを参照下さい)

Atu_ts930

アンテナチューナーの方式をNT-636と同じとすると、バリコン2個、コイル1個を使用したハイパスT型となりますが、ちょうど、物置に、TS-930Sから取り外したATUが有り、このATUの中に、モータードライブのMax250PFのバリコンが2個ついています。このATUからバリコンのみ抜き取り、コイル切り替えをリレーで行えば、NT-636とほぼ同等のATUができそうです。 ただし、バリコンの角度を電気的に知る方法は有りません。バリコンの回転角をギアを使い、可変抵抗器へ連結し、その分電圧を読むことで、バリコンの角度を得る事ができます。 バリコン駆動のシャフト径は3mmで、これに合うギアや可変抵抗器が通販されている事が判り、ギアボックスを自作したら実現しそうですが、かなり難易度の高い工作が必要です。 よって、もともと、TS-930Sはバリコンの角度センサーなしで動作していましたので、まず最初は可変抵抗器なしで実験する事にしました。

ATUはCM結合器、周波数カウンター、モータードライブのバリコン、コイルのタップ切り替え回路を持ったT型アンテナチューナーで構成されますが、これらを制御する回路はマイコンに頼る必要があります。 マイコンの開発は、開発用のボードを作り、これが構想通りうまく動作するように、まずソフトを開発する事になります。 ソフトが完成したらハードを実用サイズに作り直します。

Atupcb

そこで、蛇の目基板にマイコンを実装し、基本動作に必要なソフトを開発する事にしました。

使うマイコンはPIC16F1939です。 ATUとしては測定した周波数や、SWR値をユーザーが知る必要はないのですが、マイコン開発となると、話は別で、測定した周波数やSWRが見えるようにLCDディスプレーを追加します。

LCDはAQM0802Aという品名で秋月で320円で売っている8文字2行表示のものです。必要に応じて、内部データをLCDに表示させデバッグに使います。 このLCDのピンピッチが1.5mmと特殊で実装に難儀しました。後で判ったのですが、このLCD用のピッチ変換基板が同時に売られているようです。

Atulcd_2

I2Cシリアルラインを使った、このLCD用のPICソフトはインターネット上に公開されています。 このソフトを16F1939用に書き換えて使いますが、なかなか表示がでません。  LCDへ渡すデータがコマンドかデータかの識別コードを最初に送りますが、この識別コードが間違っていると判るまで数日かかりました。   コマンドの時は0x00、データの時は0x40を送ると正しく表示します。

 左の画像は周波数カウンターの結果を表示させたものです。カウンター精度は+/-10KHzくらいでも実用になるのですが、このマイコンは30MHzくらいの外部入力でもカウントしてくれるので、プリスケーラーなしで1mSecのゲート時間にすれば、1KHz単位のカウンターが簡単に実現できます。

TIMER1の16bitでカウント動作をさせ、TIMER0で1mSecのゲート時間を作ります。FOSCが10MHzですから、内部の動作クロックはFOSCの1/4となり、ゲート時間の最少分解能は0.4uSecとなります。 30MHzの入力の場合、カウントは12KHzごとになりますので、全割込み禁止にした上でNOP命令を使いゲート時間を正確に1mSecにしようとしますが、  +/-4KHzまでが限度でした。 これ以上は、10MHzの水晶発振器の発振周波数をトリーマーで微調整し、29MHzで誤差+/-1KHz以下に追い込みます。 ただし、そこまでやるのにまた数日要しました。

Ldgcmc

CM結合器はメーターが壊れて使えなくなったSWR計に使われていたCM結合器を改造して使う事にしました。ATUの中に内臓されたCM結合器はかなりいい加減なものが多く、基板に寝かしたトロイダルコアの中心に1本の裸線を通し、これでSWRの監視を行っているのが普通です。左の画像はLDGのATUの中に内臓されているCM結合器です。 

SWR計に使うようなりっぱなCM結合器をATUで使うことはもったいないのですが、ほかに使い道が無いので、これを利用する事にしました。 ちなみに、この壊れたSWRメーターのメーター部分はすでにCメーターに流用しましたので、SWR計としての再利用はあり得ません。

SWRは1.05などのように小数点以下2桁くらいまでを読む必要がありますので、マイコンのデータ様式をfloat(浮動小数点数型)にし、プログラムをそのように書きましたが、コンパイルエラーになります。よくよく調べるとマイクロチップが無償で提供している HI-TECH C のコンパイラーの中には、floatデータをASCII文字に変換する機能は同梱されていない事がわかりました。 

また、PICでfloatデータを使うと、大量のメモリーを消費し、RAM領域の不足が心配されるし、スピードもかなり遅くなるようです。 SWRの計算はCM結合器で検出したDC電圧をADコンバーターでデジタル化した後、下記のように計算されますが、

Atuswr0

分母で割る前に分子を100倍しておけば、SWR1.05はSWR105として表せますので、すべて整数計算で小数点以下2桁までの計算ができます。 (後日、プロの方にお伺いしましたら、当たり前の処置でその方はすでに1000倍したデータで記述していました。) ただし、long int型のデータを使っていても、大きなSWR値になるとオーバーフローしますので、計算する前にVfwdとVrefをチェックし、SWR値が90を超えるようなら計算せずに一律SWR=90と定義してしまうなどの小細工は必要です。

Atucmc 壊れたSWR計から取り外したCM結合器。 アンテナへつながるストリップラインをカッターでカットし、その間にT型チューナーをつなぎました。

TS-930S用ATUからバリコンとギアボックスのみを取り出し、実装しました。

Atuvc1

コイルはメーカー製アンテナチューナーについていたもので、外径30mmのボビンに1mmの銅線を1mmピッチで25ターン巻いて有ります。これを2個直列接続し、10個のタップをそれぞれ5000V耐圧のリレーに接続します。リレーの接点も2回路を直列に接続し、耐圧を確保します。 開発完了し、小型のケースに収納する場合は、VU40くらいの塩ビパイプに1mmの銅線を巻いて1個のコイルで済ませる予定ですが、開発ボードは、自作の手間を省きました。

Atucoil

Atupcb1

マイコン基板の銅箔面には、全部のチップ部品が実装されています。 CM結合器からのDC電圧を直接マイコンに加えると、誘導雷があった時、マイコンのi/oが壊れる可能性が高い為、ゲイン0dBのOP-AMPによるバッファーを介して、マイコンのAD入力に加えます。

このOP-AMPはグランドセンスタイプになりますが、一般に使われるLM358相当品の場合、出力電圧の最大値は電源電圧より1.5Vくらい低くなります。VCCが5Vですから、マイコンのAD入力には最大で3.5Vしか加わらなく、Dレンジが狭くなってしまいます。これを防ぐ為に、OP-AMPだけVCCを 6.5Vで動作させた事が過去ありましたが、今回は、ちょうど手元に、最大出力電圧がVCCより20mVくらいしかダウンしないというOP-AMP MCP6402が有りましたので、これを実装する事にしました。しかし、このOP-AMPのピンピッチは1.27mmで蛇の目基板と合いません。やむなく、廃棄予定の基板から1.27mmピッチのICパターンを切り取り、その部分にOP-AMPの回路を実装しました。  

モータードライブは秋月で見つけた東芝のTA7291PというICを使用します。このICはメカコン用に必要なすべての動作モードに対応していて、外付け部品が非常に少なくなっています。ディスクリートで作るよりかなり安くできます。マイコンのi/oをon/offして動作テストだけはOKです。

ソフト開発が進むにつれ、ハードの変更は付き物ですから、基板にもかなりの空き領域を確保しました。

全体構造は以下のようになりました。 これは評価ボードですので、完成したあかつきには、もう少し小さく作る必要がありそうです。

Atutestbord

見た目は出来上がったように見えますが、マイコンはLCD表示ができるくらいで何もアクションしません。 本来必要なマイコン動作仕様書は無く、整合状態に追い込む為のアルゴリズムも存在しません。全部、いちから試しては、やり直しの繰り返しになりそうです。 

一応全体の回路図を添付しておきます。VC式ATU配線図をダウンロード

いつ完成することやら。

バリコン式ATUの自作 2 に続く

 

2024年7月

Mark2の開発を始めました。

INDEXに戻る