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2014年9月21日 (日)

プリセットMTU作り変え

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

自作ATUの製作が進行中なので、このATUを防水BOXに収納する為、個々のMTUのサイズダウンを行い、ほぼ同サイズの新しいコンテナBOXを用意し、全バンドのMTUを作り変える事にしました。

 

Mtu140926

Mtu2_c

コンテナBOXはアステージのNTボックス#22で、従来より横幅が10mmくらい広くなりました。この中に、幅を約8mm切り詰めたMTUを16台収納可能なように配置し、右側の一番下にバリコン式ATUを収納しました。 このATUについては、バリコン式ATUの実装 を参照下さい。

新作したプリセットMTUは従来のMTUをサイズダウンして収納するだけのもので、目新しい細工は考慮しませんでしたが、いざ実装の段階になると、技術的な問題が続出し、従来のMTUを大改造する羽目になってしまいました。

このアンテナシステムをMMANAでシュミレーションした結果は、インピーダンス値は低めに出るものの、共振周波数はかなり合致していました。 しかし、TLWによるアンテナチューナーのシュミレーションと実際のMTUの設定定数はローバンドはともかく、ハイバンドは全く一致していない状況でした。 そこで、このBOXを新作したのを機会にBOX内の電気定数を調べてみる事にしました。 その結果、各MTUをリレーに接続するコモンラインの容量が50PFもある事が判りました。この50PFはTLWのシュミレーション定数のひとつである「Output Stray Capacitance」に相当します。通常デフォルトで10PFと設定されますが、実は10PFではなく50PFであったという事です。そして、この容量を50PFにすると、ハイパスTタイプのチューナーでも整合する定数が得られますが、実際は整合しないというバンドが続出します。 その原因はMTUの入力側の浮遊容50PFの存在です。 この入力側の浮遊容量はTLWでもシュミレーションの対象ではなく、計算上は常に0PFとして扱われます。 従来は、これが原因で整合しないチューナーを同調フィーダーの長さを変えてごまかしてあったという事が判った次第です。 このごまかした長さは2m分でしたが、これが、天候で整合状態をころころ変化させる原因のひとつにもなっていました。 MTUを作り替えたついでに、この不安定となる2mの追加フィーダーを廃止し、アンテナから垂直に引き降ろした約4.5mのみで整合させることにトライしました。

このアンテナの給電点付近にはフロートバランが挿入され、実測したインダクタンスと浮遊容量と前述の50PFを加味してMMANAでシュミレーションしても、共振周波数はほぼ一致しますが、MMANAから算出したインピーダンスを元にシュミレーションしたチューナーの回路では、全く整合できません。従い、シュミレーションを当てにせずに整合回路を模索する事になります。 14メガから28メガまで全バンド、ハイパスTタイプでは、いくらやってもSWR2以下になりません。これらのバンドについては、ハイパスTにこだわらず、整合可能な回路方式を含めて検討する事にしました。

Mtu2_b大きなコイルは使えませんので、インダクタンスが4μH以下のコイル1個、最大容量150PFのバリコン2個で変形したチューナーを空中配線で作り、うまくいきそうになったら、改造したコイルと、手作りポリバリコンに置き換えるという試行錯誤を行った結果、全バンド整合可能になりました。

左は各バンド毎のチューナーの基本回路です。コイルはカット&トライですが14MHz以上のバンドでは、最大でも直径18mmのボビンに21ターンとなっています。

80m,75mバンドは従来通り、ローパス型、パイマッチタイプです。このバンドは容量性リアクタンスがかなり大きいので、ハイパス型を使うと内部ロスが増大します。 このパイマッチ式チューナーのロスは50%くらいです。  送信機側のバリコンは2000PFを超えますので、大半は固定コンデンサで、ポリバリコンは微調整するだけとなります。雨が降ると、この微調整の範囲を超えてしまいます。

40m及び30mバンドは、ハイパス型Tタイプです。これらのバンドでのチューナーロスは5%から15%くらいです。リアクタンスは30mで+300Ωくらいになっています。 調整はかなりクリチカルです。天候により大きく整合状態が変わります。

20mバンドは50Ω以下の抵抗成分と、+200Ωくらいの誘導性リアクタンス成分になります。基本形はローパス型Lタイプですが、出力側でVCによる調整を行っています。 この回路ズバリの挿入ロスのデータはありませんが、5~10%くらいのロスになると思われます。

17m及び15mバンドと10mバンドはキャパシタンスインプット、インダクタンスアウトプットの変形回路です。 抵抗成分が50Ωよりかなり低く、アンテナのリアクタンスが容量性を持っている場合、この回路がバンド幅も広くなり使いやすくなっています。

12mバンドはハイパスTタイプのコイルをVCで可変しています。 200Ω以上の抵抗成分と+600Ωくらいのリアクタンス成分となっておりますが、調整は以外とブロードです。

これらの検討を行う途中で、このMTUを接続する場所にクラニシのNT-636を持って来て、調整すると、どういう訳か、全バンド整合できます。NT-636はハイパス型Tタイプオンリーですが、整合してしまいます。NT-636は整合出来るのに、私の自作のハイパス型TタイプMTUはなぜ整合できないのか調べた結果、その最大の原因は、MTUの入力側に存在する50PFの浮遊容量の有無でした。 NT-636を接続した場合、出力側の50PFは同じように存在しますが、入力側の50PFは存在しません。 この事は、後日、同じハイパスTタイプのATUを実装する時、役立つ事になりました。

現在の最新配線図 MTU-PIC3.pdfをダウンロード

(エンコーダー側のPICkit3接続コネクタの配線に誤りがありました。)

 

製作してから10年以上経った2023年1月、家のメンテの為、ベランダに設置したこのアンテナシステムは全て撤去しました。 撤去は3時間で完了。 

このアンテナを再開する為の検討を始めました。

マルチバンドアンテナシステム2へ続く。

 

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