ATU 防水BOX (実際のアンテナによる整合)
アンテナセレクターの防水加工が完了しましたので、ATUのメインユニットを防水BOXの中に収納しました。 当初、メインUnitのマイコン基板はATU前面のパネル面にビス止めしてあったのですが、いざ防水BOXに収納すると、ソフト書き換えの為のPICKIT3を繋ぐ事が大変難しく、基板にハード的な変更が生じたとき、防水BOXからATU本体を取り外さないと処理できないという事が判り、下の写真のごとく基板を収納する金属ケースをATUから分離し、基板のメンテと、ATU本体のメンテが防水BOXの蓋を開けるだけで出来るように変更しました。
写真は基板もATUも天板を開けた状態ですが、通常は両方とも天板をかぶせる事にします。 防水BOX内でATUの出力端子を外部に引き出す配線をし、かつATUの天板をかぶせると、10MHzのバンドのみはどうしても整合出来なくなりました。 やむなく、VC2のタップを初期の6.5Tに戻しました。50Ω負荷では最小SWR1.7くらいにしかなりませんが、200Ωなら1.04になりますので、実際のアンテナで確認する事にします。
この防水BOXに組み込んだ後、イニシャライズの時のモーターが異常音を出します。原因は、モーターが起動トルク不足で回っていない状態でした。 モータードライバー基板の中にあるSMTタイプの半固定抵抗の接触不良でモーターの電流制限が250mAでないとダメなところ70mAくらいしかなったものでした。 半固定抵抗をぐりぐりとまわして電流値を250mAに再設定してやると正常になりました。 過去、このSMTタイプの半固定抵抗の品質はかなり悪く、大型の村田製に変更した事がありましたが、ここにきて中華製の品質問題に遭遇してしまいました。 こんな部品をいくら防水BOXに収納したとしてもベランダに置いて大丈夫なのか? 一気に不安がよぎります。 とりあえず呉印の接点復活剤を吹き付けておきましたが、心配ですね。
春分の日を過ぎた最初の土曜日に急に暖かくなり日中の気温が18度を超えます。 南西の風がやや強いですが、従来のバリコン式ATUを降ろし、Z Match ATU(以後ZATU)を急遽上げる事にしました。約3時間花粉が飛び交う中で作業した結果は以下の写真です。
アンテナセレクターとZATU間に接続したはしごフィーダーは100均にあった仕切り板で作ったインピーダンス約500Ω、長さ3mのフィーダーです。
すぐに動作テストを行い、9600ボーのUART通信も問題なく動作している事を確認できました。
さっそく、実アンテナによる整合テストにトライしました。
1820kHzではWVCの容量不足でSWRは1.51、1896では1.79、ここは追加のコンデンサで解決しそうです。
修正済み配線図 zmatch_atu_main_04.pdfをダウンロード
50Ωダミー抵抗では整合出来なかった10MHzはWVCを最大容量にしてSWR 1.08
29600kHzはSVC,WVCともに容量最小でSWR1.53
その他のバンドはSVC,WVCともに可変範囲内でSWR1.11以下となりました。
ただし、昨日1.1以下に整合したのに、今日は4以上とか再現性が良くありません。 この再現性が悪いのはステッピングモーターの脱調かも知れないと、改めて電流制限の設定を見直してみました。現在はふたつのモーターとも250mAでの駆動です。 電流が原因で脱調する場合、定格電流以内で少なすぎても多く過ぎても発生するとWEB上で解説されており、カットアンドトライが必要なようです。 この為、いくつかの設定を試した結果SVC用は400mA、WVC用は600mAに設定して様子を見ます。
また、モーターのstepが0以下もしくは1500以上に動こうとするようなATUとしてのカバー範囲以外となった場合、タイムアウトでエラーになるようにしたつもりでしたが、タイムアウトのチェックルーチンが機能しないというバグがありましたので、修正しました。
現在のSWR限度値は1.08に設定してあり、整合開始してから10秒間は1.08以下になるまで、整合動作を行います。 しかし、リアクタンスが大きいバンドでは、2stepの回転でもSWRディップポイントを飛び越える場合があり、10秒以上経過したら次の限度値であるSWR1.35以下を探します。SWR1.35でも整合しない時は次の限度値1.65を探します。 そこで、整合スタートした後、再度STARTキーを押すと、その時の条件をEEPROMに記憶し、整合したという処理をするように修正しました。 この修正により、例えばSWR1.2くらいで行ったり来たりしている状態であるなら、この機能を使い一旦SWR1.08以上の場合でもEEPROMにデータを記録できるようにしましたので、とりあえずは運用できます。 時間のあるとき、この仮の整合状態を開始ポジションとして自動整合を開始すると、最終的に1.08以下のポジションを見つけて記憶できるようになりました。
ステッピングモーターの脱調が原因と思われる、整合条件の再現性は一向に改善されません。 一度、SWR1.08以下に整合した後、他のバンドへ移り、そこで、整合条件をEEPROMに記憶させた後、前のバンドに戻り、プリセットコールを行い、送信モードにすると、SWR3くらいに跳ね上がっています。 そこで、再度整合動作を行うと、前回EEPROMに記録されたモーターステップと7から30くらい異なります。 この差はSVC、WVCいずれもありますが、WVC側がSVC側の2倍から4倍あります。
このZ Match ATUのオリジナルは50MHzをカバーしていませんが、試しに50.3MHzで自動整合を行うとSWR1.2くらいで整合し、VK局とFT8で交信できました。 レポートは私が相手局に送ったのが-08dB、相手から貰ったのが+03dB。 アンテナの指向性データから実用出来ないバンドと諦めていたのですが、実際のアンテナはシュミレーションデータとはかなり違うみたいで、これはうれしい誤算でした。 ただし、まだ国内交信は出来ていません。
脱調による再現性の問題の為、次の土日にZATUは降ろし、従来のバリコン式ATUを再度上げるつもりでしたが、急に寒の戻りがあり昼間でも最高気温が8度しかなく、ATUの入れ替えは次週に延期となりました。 代わりに、50MHzの運用を行い、DXCCのエンティティが7に増えました。
ATUメインUnit Z_Match_ATU_main_04.cをダウンロード
2025年4月
ZATUをマストに上げてから2週間後にこれを降ろし、問題点の整理と対策を行いました。
まず、プリセットコールの再現性ですが、当初、ステッピングモーターの脱調が主原因と考えていましたが、脱調が全くない訳ではありませんが、一番大きな原因はタイミングベルトの張りの強さでした。特にSVC側のバックラッシュが大きく、バリコンの回転方向がCWとCCWで10ステップ以上異なる事でした。 SVCの位置が10ステップ異なる状態で自動整合を行うと、WVCはSVCをあまり動かさない状態でSWRを1.08以下にしようとしますので、WVCの位置が20から30ずれてしまうというものです。 これは、SWR最小ポイントなら、SVCとWVCの位置はそれぞれ1か所しかありませんが、SWR1.08が最小SWR値でない場合、その組み合わせは無数にあるという事が原因です。 幸い、SVC側にはベルトの張りの強さを調整する機構が付いており、これを調整し、ベルトを軽く押さえたときのたるみの幅が3mmくらいになるようにすると、我慢できるレベルまで改善できました。 一方、WVC側もアイドラアングルのスペーサーの厚みを調整して、張りの強さを変えてみましたが、こちらは現状のレベルが最良のようでした。
さらに、モーターを台形駆動する時の回転速度の加速度を3.2%で50段階と設定していたものを、1.6% 100段階に変更しました。 この変更で0度から180度までバリコンが回転する時間は従来の約3秒から約4秒になりましたが、違和感はないのでそのままです。
電源投入時のゼロポイントを探す動作で、最終的に位置を決定する時のモーターのステップは1.8度で行っており、この時、ATUのシャーシが振動して、ベルトも同様に振動していましたので、この時も1/4マイクロステップで回転するように変更しました。 振動は無くなり、騒音も解決しました。 また、整合時のSWRが1.02とか1.01の場合、電源OFF/ONによる原点再設定時でも、SWRの変化幅がすくなく、28MHzの50Ω負荷の時、SWRが0.01程ずれるだけとなります。 従い、現在SWR1.08以下なら整合したとする定義を1.03未満のとき整合したと判定するように変更しました。
ここまでやっても、負荷抵抗が15くらいになると、SWR1.03の状態でモーターが1マイクロステップ回転するだけでSWR1.8くらいまで変化してしまうZ Matchチューナーの特性の為、完全な再現は得られない状態です。 根本的な原因は脱調が無いという条件下でもベルトのバックラッシュをゼロにする事ができない事に尽きるようです。 これを解決する手段としてスプレッドバリコン方式にして、バックラッシュが有ってもVCの容量変化を小さくするアイデアはありますが、現在の構造のままでは対応に無理があり、改造するにしても、また1年くらいかかりそうですから、その間にサイクル25も終わってしまいます。
マイクロステップの実際の使用例について情報を集めてみました。 バイポーラタイプのステッピングモーターを使う3Dプリンターの場合、機械的な減速機構と合わせてマイクロステップを使う事が標準となっており、その時のステップは1/4、1/8、1/16が主に使われているとの事。 このZATUの場合、過去、1/8や1/16のテストやってきましたが、期待通り動きませんでした。 しかし、モーターのスタンバイ機能を制御する為に、ソフト的なタイミングの調整と、モーター電流の最適化とタイミングベルトのバックラッシュなどの最適化をやった今、1/8や1/16のマイクロステップに設定すると、ちゃんとモーターは正常に動作するようになりました。 1/4のマイクロステップでは、SWR最小ポイントを飛び越えるクリチカルな負荷条件も存在しますので、今までの1/4マイクロステップを1/8マイクロステップに変更する事にしました。 これで、SWR最小ポイントを飛び越える確率も半分になりますので、SWR1.03以下も狙いやすくなります。 さっそく、ソフトを変更してやると、モーターの音が全く変わり、今までグーーと言っていた音がウィーンになりました。 音だけは大きく品位が上がりましたが、SWRの再現性はあまり変わりませんでした。 この変更でモーターの回転速度も最大882PPSまで上げましたので、バリコンの回転速度は従来とほぼ同じです。
臨時に上げているバリコン式のATUは、机上では50MHzもOKでしたが、実際にマストにアップすると、自動整合出来ず、マニュアルで整合させるとSWRは1.3くらいになりますが、バランに使用しているフェライトコアが発熱して、10秒もするとSWR3を超えます。50MHzで40Wくらいまで絞れは送信は可能ですが、コンディションが悪く、交信に至っていません。
これらのことから、ZATUの整合の再現性は未完成ですが、このままマストに上げる事にします。 そして、送信する場合、最初に自動整合を確認しながら使う事にします。 ちょっと受信状態を確認するだけなら、プリセットコールのみで問題なしです。
使用しながら、改善策が出てきたら、必要に応じ改善する事にします。
以下、現時点での最新プログラムです。
なお、配線図は前回アップしたまま変更は有りません。
Z_Match_ATU_controller_6.cをダウンロード
アンテナセレクター、LCD用フォントの変更はありません。