天体写真入門 (星空撮影用多重露出タイマーの作成)
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天体写真入門という題名ですが、実際に撮影できるのは何時になることやら。大昔、中学のころ、自作の天体望遠鏡で木星と4つの衛星を見たり、三日月型の金星を見て楽しんでいたのですが、45mm幅のフィルムと蛇腹のカメラを庭の片隅に置き、北極星に向け、絞り開放で約1時間シャターを切って写し込んだ写真が現像から上がった時、小躍りして喜んだものでした。 あれから60年過ぎてしまいました。 昨年の11月に寿祝いの返礼としてギフト券をもらいましたが、これと言った欲しい物がなく、カタログの中で見つけたケンコーの星を自動追尾する反射望遠鏡をゲットする事にしました。 夢は、アンドロメダ星雲の写真を撮る事です。
ただ、写真を撮るにも、持っていいるカメラはスマホか、キャノンとSONYのコンパクトデジカメくらいで、とても星雲の写真を撮れるしろものでは有りません。 そこで、50年くらい前に買ったペンタックスの50mm固定焦点、及び200mm望遠レンズを使える最新のデジタル一眼レフカメラの中古を探す事にしました。 そして見つけたのが、15年くらい前のペンタックス K20D。レッキとした有名カメラ店が12000円で売りに出していたのを見つけ、これをゲット。
レンズに仕掛けが必要なオートフォーカスや自動絞りは使えませんが、絞り優先のシャッター速度自動撮影と全てのマニュアル機能を使えると言う事で、まずは、忘れていたマニュアル操作の勉強を始めました。 そして、デジタルカメラによる星の撮影に関するインターネット情報をかき集めると、赤道儀で星を追いかけながら、長時間(数十秒)露光したRAW画像を何枚も撮影し、これをベースに専用アプリで重ねる事により、良く雑誌やインターネットで見るきれいな星や星雲の写真が出来上がる事を理解しました。
ところで、今回の中古カメラは、RAW撮影機能があり、付属CD-ROMのアプリの中に、長時間露光を何回も繰り返すアプリもある事はわかりましたが、残念ながら、このCD-ROMは付いていませんでした。 また、ホームページからダウンロードできるソフトは更新バージョンのみで、CD-ROMによるオリジナルアプリがPCの中に無いと使えないという事も判りました。 そこで、このCD-ROMの中古を探そうとしている最中に、待てよ、この程度のソフトならPCのソフトに頼らずとも、PICマイコンで簡単に出来るではないか。
思い立ってから1週間で、そのコントローラーを作ってしまいました。
露出時間は1秒単位で最大255秒、インターバル時間も1秒刻みで最大255秒、そして繰り返し回数も1回から最大255回まで設定できます。 1秒のタイムゲートが必要なので、PICの内部クロックも水晶を使う事にし、ジャンク箱に大量に転がっている7.2MHzの水晶を使い、4倍PLLの28.8MHzのFoscを作り、秋月で1石100円で購入したPICにプログラムを書き込もうとするとエラー。調べてみると、PICkit4でないとダメとのことで、この新しいICは私の開発環境では開発できない事がわかり。がっくり。
やむなく、またジャンク箱をひっくり返して、ピンコンパチのPIC16F1938を見つけましたので、これに変更。 タイマー1を使い、1秒間隔の割り込みを作ろうとしましたが、プリスケーラーの分周比が小さく、実現できないことにやっと気づきました。 仕方がないのでT1OSCを使い32.768KHzの水晶を発振させ、これで、1秒間隔の割り込みは簡単にできます。 この32.768KHzの水晶もジャンク箱の中に5個ほど有りました。 たしか1個15円くらいでしたので、何かのついでに買って有ったものですが、やっと日の目を見る事ができました。
この32.768KHzの水晶を使えば、7.2MHzの水晶は不要で内蔵のCR発振器で8MHzを発振させれば良いのですが、面倒なので、そのままです。
ケースはダイソーから110円で入手した透明なアクリルケース。これに、LCDの窓を切り抜いたインクジェットプリンター用光沢写真用紙に操作ツマミの名称を印刷し、裏から張り付けました。
機能としては、単純なマニュアルモード(レリーズケーブルによるリモート)、Bモードによるワンショットシャッターオープン、シャッターONとOFFの時間を秒単位で設定でき、かつこれを最大255回繰り返す事が出来るマルチタイマーモードを選択できるようにしてあります。 また、マルチモードで、インターバル時間をゼロとすると、最大255x255秒(約18時間)シャッターを開けっぱなしにできますので、カメラを北極星に向けると星が回転している良く見る写真を撮る事が出来ます。 タイマーカウント中に中止したい場合、STARTキーをもう一回押すか、電源をOFFします。電源をOFFしてもセットしたデータは記憶されており、再度電源ONすると、電源をOFFする前の状態に復帰します。
赤道儀を使わずに星が点に見えるシャッター開放時間をNFPルールで計算したところ、K20Dと50mm焦点レンズの場合、2.8秒と出ました。 1秒ステップのタイマーなら2秒が限度なので、タイマーステップを0.1秒に切り替えられる様にしました。 STARTキーを押しながら、POWER ONしてLCDが表示し始めてからキーを離すと0.1秒ステップになります。
配線図 CAMERA_RELEASE_SYSTEM.pdfをダウンロード
本体マイコンプログラム Camera_release_1.cをダウンロード
ヘッダーファイル Font9.hをダウンロード
先に、タイマーが完成したところから紹介しましたが、もし、同じように自作される方の参考になればと、以下紹介する事にします。
左の図はK20Dのレリーズジャックに挿入する2.5mmステレオプラグの接続を調べたものです。 プラグの先端の電極と根本の電極(GND)をスィッチでショートすると、シャッターを切る事ができます。 また、カメラのMODEダイヤルをBにして置き、スィッチを押し続けると、シャッターは開きっぱなしになります。 真ん中の電極とGND間をショートした場合、多分、オートフォーカスが起動するのだと思いますが、確かめていません。
リモートレリーズ用のケーブルはアマゾンなどでかなり販売されており、各社のカメラで使えるようなコメントが見られますので、2.5mmジャックを採用したカメラなら、どれでも使えるのではと思われます。
このタイマーはシャッター用のスィッチのON/OFFをマイクロコンピューターで制御しますので、機械的なスィッチでは無く。電子スィッチでON/OFFします。 今回は、電子スィッチとしてFETを使いました。 トランジスターでも実現できますが、トランジスターの場合、コレクタがエミッターと同電位の場合、ベース電流がコレクタ側にも流れます。 カメラの電源がOFF状態でトランジスターをONすると、ベース電流がカメラ内に流れ込む事になり、故障の原因になるかも知れません。FETの場合、印加したゲート電圧がドレイン側に漏れる事は有りませんので、安心です。
電源は7Vから16V 150mA以上の外部電源か、内蔵の単3電池 3個ですが、LCDのバックライトを一番明るい状態にして100mAくらい消費します。 内蔵電池のみで、100mA、数時間連続はしんどいですので、バックライトの明るさを調整する可変抵抗を付けてあります。最も暗くすると、12mAくらいの消費電流となりますが、昼間は文字が良く見えません。 しかし、使うのは夜の暗闇の中ですので、文字はちゃんと読む事ができます。
連日PM2.5の為、星が良く見えなかったのですが、8月の下旬にさしかかったころ、家の3階のベランダから北極星が見える夜がありました。 この晩、今回作成したタイマーを使い、シャッター開放10秒、インターバル5秒で15回繰り返しの撮影をしてみました。 使用するレンズは18mmから55mmのズームの中古でヤフオクでゲットしたもので、18mmの時、最大10秒くらいのシャッター時間はOKのようです。 街の中での撮影なので、肉眼では2等星くらいまでしか見えない状態でした。 撮影が終わり、記録されたRAW画像をRawTherapeeというアプリでオープンしてみると、かすかに星明かりが写っているのですが、表示されたシャッター開放時間が7秒から9.8秒くらいの範囲でバラついており、指定した時間通りのシャッター開放が行われていませんでした。 この時間のバラツキは、レリーズをONしてから、実際にカメラのシャッターが開放されるまでの間のバラツキであることが判りました。 どういう条件でどれくらいバラつくのか調べる事にします。
調査した結果、撮影完了と同時にカメラは何か処理しているみたいで、その処理が完了するまでは、次のシャッターONを受け付けないみたいです。 最初、RAW形式でデータをセーブしますので、そのセーブ時間がシャッター開放時間と関係しているのだろうと予想しましたが、ファイルをJPEGオンリーにしても、同じでした。 シャッター開放5秒の場合、インターバル時間を5秒とると、4.8秒間開放したというデータが、10秒開放ならインターバル時間を10秒とると、シャッター開放時間は9.8秒とRawTherapeeの画面に表示されます。 多分0.2秒の差はミラーの反転時間ではないかと思います。 この開始時間の遅延のバラツキは、当初ノイズリダクション処理時間かと疑ったのですが、ノイズリダクションをOFFにしても、変化なしでした。 以後、シャッターON時間とインターバル時間は同数に設定する事にします。
この条件で、我が家のベランダから、北斗七星と北極星を狙った15枚のショットをSequatorで処理した結果が下の画像です。
実際に目に見える以上の星が写っていました。
インターバル時間とシャッター開放時間をほぼ同じ時間にしておかないと、 シャッター開放時間が短くなる問題ですが、カメラのファームウェアを調べてみたらV1.00でした。 このカメラの最終バージョンはV1.04との事で、リコーのホームページからダウンロードし、アップデートしてみましたが、この問題の症状は改善されませんでした。 Cカスタムメニューの 高感度のNR ON/OFFが機能しないのか、長秒時NRをOFF出来ない仕様なのか、ISO感度設定に関係なく常にNRがON状態の様です。 その後、2008年の口コミ情報の中に、長秒時、OFF出来ないと言うのがありました。 諦めます。
例えば、10秒の露光で100回行うと、1000秒(16分40秒)となります。 1回の露光を16分40秒で撮影完了すると、その画像の出来栄えは、絶対に1回16分40秒の方が勝ると言われていますので、16分40秒露光しても星が流れないポータブル赤道儀を作る事にします。