TS-930 Feed

2023年7月16日 (日)

とうとう売却処分になりました。

<カテゴリー:TS-930S>

1週間前、T-F SET機能がNGとなったのを修理したばかりでしたが、今度は、CWのブレークインが動作した後、自動的に受信に戻らないという問題に遭遇しました。 どこが怪しいのかと、配線図を頼りにコネクター周りを追いかけていると、コネクターに触れただけで、ワイヤーの断線が発生します。 切れたワイヤーをコネクターのコンタクトに半田付けして、さらに調査をつづけると、今度は別のコネクタのワイヤーが断線します。 結局、ブレークインの原因を対策出来るどころか、さらにいろいろな症状が現れ、いたちごっこになってしまいました。

このTS-930Sを修理しながら15年間も使ってきましたが、今回の故障で、修理を諦めました。 ただ、CWのブレークインだけがNGでSSB運用は全く問題ありませんので、中古無線機を買い取っている店に相談し、買い取り価格ゼロ円で引き取ってもらいました。 (実際は送料約2000円を着払いで処理頂いたので、実質買取価格は2000円)

これでメイン機が無くなりましたので、TS-850Sをメインに代えようと思いましたが、こちらも古いリグですので、最新のリグに買い替える事にします。 それまでは、移動運用に用意しているFT-991で50W運用です。

 

Indexへ戻る

2023年7月 1日 (土)

T-F SET SW 動作せず

<カテゴリー:TS-930S>

CWブレークイン機能が直ったと思ったら、今度はスプリット運用で使うT-F SETスィッチが受信状態では機能するのですが、送信時に周波数が切り替わりません。 またSWの接触不良だろうとチェックすると、案の定、SWがONされても、ON端子が接触しないという現象です。 ただし、このSWの接点部分には、接点復活剤は届きませんので、現在遊んでいる回路に配線を移しました。

Tfsw

上の回路図の赤丸で囲ったSWです。 この改造を行った後、動作が正常になったのを確認し、その日はそのままでケースインは次の日に行う事にしました。 そして翌日、ケースインをする前に念の為と確認すると、また送信時周波数が変わりません。 ここから悪戦苦闘の連続で、1週間過ぎた次の土曜日、原因が判りました。

Cnwcut

デジタル基板の赤枠で囲んだコネクターのワイヤーがカシメ部分で折れていました。 修理の為、折れたワイヤーをコネクターのコンタクトに直接半田付けし、いざ動作テストしても、時々OKになる事は有りますが、T-F SET機能以外のFLブラックアウトとか、ピーという連続音が発生するとかの症状です。 困りはてて、コネクターを抜いたり挿したりしている内に全部のワイヤーが断線してしまいました。 対策は、部品取り用に置いてあった動作しないTS-930Sより該当するコネクターをワイヤーごと切り取り、このコネクターと断線しまくっているコネクターを根元から切断し、コネクターごと交換しました。 これで不安定現象は全て解消し、また、メイン機として使う事が出来るようになりました。

 

Indexへ戻る

2023年4月25日 (火)

CWのブレークイン機能動作せず

<カテゴリー:TS-930S>

久しぶりの修理です。

2018年に旧スカイドアアンテナを降ろし、同時に、このTS-930Sでの交信も途絶え、自作無線機の実験以外、電源ONした事が無かったのですが、2023年の4月に、新スカイドアンテナを上げて、HF交信を楽しもうと、電源を入れ送信テストをすると、SSBはOKですが、CWの電波が出ません。 電波が出ないだけで無く、CWのモニタートーンも聞こえず、かつ受信の音も聞こえません。 再開するHF交信のメインはCWですので、修理するか、廃棄して、隣に鎮座するTS-850Sにメインの座を渡すかの選択となりました。

とりあえず、カバーを外し、操作SWの裏側が見えるようにして、スィッチの端子間の導通を確認する事にしました。

CWのモニタートーンが出ないのは、VOXとMONITOR SWの接触不良でした。 いずれも何度もON/OFFを繰り返すと、時々OKになったり、NGになったりでしたので、KURE印の接点復活剤を吹き付けてやりましたら、OK状態になりました。

次に、CWやTUNEの時、受信音が聞こえないという問題です。 詳しく調べると、NAR(ナロー)とWIDEの切り替えSWの接触不良です。 このSWの接点に接点復活剤を吹き付けるのは、ほとんど不可能なので、パネル面のSWをNAR方向に倒し、基板の裏側の、NARモード時、ONするSWの端子間をワイヤーでショートしてやりました。 WIDEで交信する事は全くないので、これで不都合は生じません。 ほかにPROC ON/OFFのSWも接触不良で、PROCがONになりません。 このSWもPROC ON状態にワイヤーでSWの端子をショートし、常にPROC ON状態としました。

次は、サービスマニュアルを片手に、送受信系統の再調整を行います。

周波数関係は最大で80Hzくらいのずれが有りましたので、これを+/-20Hz以内に調整しました。 また、コイルのコアをレベル最大にする指定のあるコイルは全て、最大付近に調整されており、問題なしでした。 受信感度も送信レベルも9年前にオーバーホールした時から、ほとんど変わっていなく、特に受信感度は、追加したプリアンプの為、常時20dBくらいのATTをONしておきたいくらいでした。

約2時間で、SW不良対策とオーバーホールが完了し、CWの送受信も問題なくできる状態になりましたので、まだ当分はメインの座に留まる事ができそうです。

TS-930が正常になりましたので、新マルチバンドアンテナシステムの確認に戻ります。

Indexへ戻る

2018年9月15日 (土)

TS930 VFDブラックアウト、メーター逆振れ

<カテゴリ:TS-930>

久しぶりにTS930が故障しました。 1年くらい前から、時々、VFDが消え、メーターが逆に振れる現象があり、これが発生して10数秒経つと、「パカ!」と音がして正常になるというものでした。

Dcdcoff

しばらく通電していなかったのですが、先日電源をONすると、上の写真のようになり、当然音も出ません。 しばらく待っても正常に復帰しません。

この症状はインターネット上に沢山のOMが修理事例を公開しており、DCDCの発振が停止し、マイナス電源が正常に動作していないのが原因のようです。 

Digitalpwbaddwire

左の基板図の赤線で示すようにワイヤーを追加してやると、この現象が出なくなりました。

ケースをかぶせ、2~3日使っていましたところ、同じ問題が再発しました。 基板を取り出し、ドライバーの柄で軽く基板をたたくと、この現象が出たり、正常になったりします。 どこが悪いのかと、部品を一つづつたたいていく内に、DCDC付近から煙が出だし、その内、DCDCのトランジスタが2石とも壊れてしまいました。 ベースエミッタ間オープンです。

トランジスタは2SC2274KというSANYO製で、中電力増幅用でしたので、同じくらいのPcのある手持ちのトランジスタに交換しましたが、波形がオリジナルの綺麗な矩形波になりません。 3種類くらいの代替えTRを試しましたが、いずれもNG。 やむなく、部品取り用に確保しておいた、TS930からこのデジタル基板を取り外し、基板ごと交換しました。  しかし、問題は解決しません。

原因は、コネクターのコンタクトにワイヤーをカシメてありますが、これがあっちこっちで抜けており、その数6本。 ひとつのコネクターに集中する事無く、どの断線が、どのような症状を出すのか調べるのも面倒ですので、コネクタのハウジングの上部をニッパでカットし、コンタクトが見える状態にして、これに切れたワイヤーをハンダ付けしました。 もちろん、交換したデジタル基板は、スルーホール対策として、ジャンパー線を追加してあります。

とりあえず、これで正常に動作していますので、様子を見る事にします。

スルーホールは以前から、故障の最大の原因でしたが、ここにきて、コネクターのワイヤー断線が続出する状態になってきました。 もし、デジタル基板が原因と思われる故障に遭遇しましたら、コネクターのワイヤーをピンセットでつかんで軽く引っ張ってみて下さい。以外と簡単に抜けるワイヤーがあり、これが接触不良をおこしている場合があるようです。

2019年6月

ダイヤルを回すとVFDが表示しなくなり、止めると表示が正常になるという症状が発生しました。この現象は、Kenwoodのサービス情報に出ており、原因のスルーホールの位置まで示されており、当然このデジタル基板は、全てのスルホールをジャンパー線で結んであります。 コネクターの接続リード線のカシメ不良によるかもと、全てのコネクターワイヤーを調べてみましたが、該当なし。 そこで、全てのコネクターを引き抜き、接点復活剤「KURE」でオス、メスとも洗浄してやりました。 すると、このVFD異常現象は、ぴたりと止まりました。 そろそろジャンク行きかと思っていたのですが、後数年は使えそうです。

INDEXに戻る

2014年8月16日 (土)

TS-930 メインダイヤル誤動作(アップしない)

<カテゴリ:TS-930>

突然、メインダイヤルで周波数がアップしなくなりました。どっちに回してもダウンばかり。時々アップしますが、不規則に変化し、全体的にはダウン方向です。 KEMのトランシーバーでも似たような現象がありましたので、メインダイヤルのエンコーダー出力をチェックしました。

Ts930mewave1

デジタル基板に4ピンのコネクター(④のマーキング)で接続されていますので、デジタルオシロをつなぐと、ME1には信号がありますが、ME2はHのままで、パルスが有りません。セットを逆さまにしてこのメインエンコーダーと呼ばれる基板の端子をモニターすると、今度はME2にもパルスが出ていますが、そのパルス幅が非常に狭い状態でした。高速でダイヤルを回転すると、パルスが細くなりさらに高速にするとパルスが出なくなります。

左の画像の上の波形がME1、下の波形がME2です。最初チェックした時は、ME2のパルス波形は有りませんでした。

Ts930nainencorder

このメインエンコーダーの回路図が見つかりませんが、左に基板図を示します。半固定抵抗でフォトトランジスターのしきい値を調整しているようですので、とりあえず、半固定抵抗VR2を回してみました。すると、ME1と同等のパルス幅になり、半固定抵抗を元の角度まで戻してもパルス幅は少しは狭くなりますが、ME1と同等です。 どうやら、この半固定抵抗が接触不良を起こしていたみたいです。ドライバーでグリグリと何度か回転させ、ME1とME2のパルス幅が同じようになるポイントに固定しました。

Ts930mewave2

以上の作業でダイヤル動作は正常状態に戻りました。 左の画像は修正後のME1とME2のパルス波形です。

最初コネクター部分でパルス波形が見えない状態の時は、完全に接触不良を起こしていたようです。その後、セットを分解するとき振動を与えましたので、わずかに接触して不完全ながらパルスは出力するようになったと思われます。

私の場合は、デジタルオシロがありましたので、簡単に原因が判りましたが、同じような現象に遭遇され、オシロが無い場合、この基板についている半固定の元の位置が判るようにマジックなどで印をつけた上でグリグリ回してみて下さい。正常にもどりましたら、半固定の位置を元の位置にもどしておきます。

Ts930mepcb

左の画像はセットを裏返し、フロントパネルが手前にあるように置いた時のメインエンコーダー基板ですが左側の半固定がME1を、右側の半固定がME2のパルス幅を調整します。

INDEXに戻る

2013年5月12日 (日)

TS-930 ノイズブランカー動作せず

<カテゴリ:TS-930>

修理して使い始めてすでに4年経過していますが、最近、ノイズブランカーSWをON/OFFしてもノイズに変化が無い事に気づきました。

サブ機のTS-850では、ちゃんとノイズに差がでますので、ノイズブランカーで低減できるノイズは存在しているようです。サービスマニュアルを頼りに修理する事にしました。

SWをON/OFFしても全く変化が無いことから、フロントパネル裏のSW基板を疑いましたが、おかしな部分はありません。サービスマニュアルにある、ノイズブランカーの動作原理の説明を読みながら、オシロスコープで各トランジスターのDC電圧とノイズ波形をチェックしていきますが、ここでも、おかしいと思われる症状はみつかりません。ただし、マニュアルでは70dBのゲインがあると書かれているノイズアンプの出力波形がいやに綺麗です。70dBも増幅した後の波形は、例え入力が無くても、それなりのノイズがあるものなのですが、それが見えません。たぶんゲインが70dB無いのでしょう。一番最初に疑ったのは、ふたつの同調回路です。経時変化で同調がずれている可能性があります。

930nb1 ノイズアンプの出力になるD51のカソードにオシロのプローグを接続し、波形を見てみると、この日一番ノイズの大きかった24MHzを受信しても1Vpp以下です。そこで、同調コイルL80とL81を回して見る事にしました。D51のノイズ出力レベルが最大となるように、ふたつのコアを交互に調整しました。

調整完了した結果、D51のノイズレベルは2Vppまで上昇しました。

NB1もNB2も動作するようになりました。原因は単純に同調回路の同調ずれで、ゲインが8dBくらいダウンしたため、ノイズをブランクする、しきいち電圧までノイズレベルが達していなかったと言うものでした。

930nb2

ノイズブランカーの効きが悪いとか、効かなくなった場合、NB1をONして、NB LEVELを最大にした状態で、Sメーターがノイズで振れるバンドを選び、Sメーターの振れが最少になるよう、L80とL81を回してみて下さい。この方法ならオシロは必要ありません。

INDEXに戻る

2013年1月23日 (水)

TS-930 Sメーター振り切れ

<カテゴリ:TS-930>

温度が下がった状態で電源ONすると、Sメーターが振り切れて、受信不能になり、温度が上がってくるといつの間にか直ってしまうという問題の修理事例です。

預かってすぐに、電源ONしたら、問題の症状が再現しましたので、本格的に原因を探す為に、ポイントクーラーと言われる瞬間冷却スプレーを探す事にしました。記憶にあるのは、サンハヤトの「キューレイ」です。結構な値段がしていました。問題が起こると、あっと言う間に使い切ってしまい、かなりコストが高い修理になると認識していました。

Qray1しかし、最近スポーツ用に同じ原理の冷却スプレーがあるとのこと。スポーツ用品を扱うホームセンターで探すと、キューレイより2~3割アップの容量で、価格は1/3くらいで売られています。ただし、問題がひとつ。スポーツ用は冷却スプレーがある程度拡散するようになっており、噴射したとき患部が凍傷にならないようになっています。

電気製品の修理の場合、めざす部品だけを冷やし、その他の部品は常温のままという状態を作って、不良部品をあぶり出すやり方ですから、スプレーが拡散するのは都合が悪い訳です。 

Qray2


何種類かの冷却スプレーの中から、ノズルを追加して取り付けられる物を探し、これに直径3mmのアクリルパイプをねじ込むことにしました。アクリルパイプをドライヤーで温めると簡単に柔らかくなりますので、この柔らかくなったパイプをスプレーに付いている小さなノズルに差し込みます。温度が冷えると、固まってしっかりと固定できます。使わないときは引き抜いて置けば、問題ありません。

Qray3こうやって、かなりエコノミーなポイントクーラーが出来上がりましたので、さっそく不良部品探しを始めました。

トランジスターや電解コンデンサにスッポリとかぶせる事ができる紙の筒を作り、その筒の上部から冷気のスプレーを吹き付けますと、Q133で期待する反応がありました。

Q133を冷却するとSメーターが振り切れます。AGCをOFFにしても振り切れは直りません。 R722をオープンにすると、AGC OFF状態になって症状は出なくなります。

どうも低温でコレクタにリーク電流が流れているようです。手持ちの2SC1815GRに交換しましたら、AGC OFF時はSメーターが振れなくなりましたが、AGC FASTやSLOWの時は振り切れています。

症状が出なくなるまで待ってから、次にQ131を冷却すると、Sメーターが振り切れます。Q131のエミッターにオシロをつなぐと100KHzくらいの信号が見えます。Sメーターが正常時は、何も見えません。どうもQ131が低温で発振しているみたいです。正常状態で、Q131のコレクターにテスターを当てるとSメーターが振り切れます。これで判りました。低温でC529(0.047)が容量ダウンして発振していました。 C529に0.1uFのセラミックコンデンサをパラに追加しました。これでテスターで当たっても発振は起こらなくなり、問題は解決しました。

Ts930agc_3


結論はQ133のリークとC529の温度特性不良だったのですが、しかし、それで直ったと決定するまで半日以上かかってしまいました。理由は急冷スプレーを吹きかけると目当ての部品はすぐに冷えるのですが、その部品と周辺に霜がつき、その霜が溶け出すと基板上の部品間を水分でショートする状態となります。 スプレーをしてから10秒以上経過した後、Sメーター振り切れの症状が発生してしまいます。この霜の溶ける問題と本来の部品不良の区別がつかず、かなりロスタイムがありました。   
もしかしたら、Q133のリークも霜の影響で、ほんとうの原因はC529だけだったかも知れませんね。

冷却スプレーを使うときは、回路のインピーダンスを十分把握した状態で検討しないと、何をやっているのか判らなくなるという事でした。 対策完了してから、昔、同じような問題で悩んだことをやっと思い出しました。

今回は、低温で異常が発生する状況でポイントクーラーを使いましたが、高温で異常が発生する場合も、ポイントクーラーは大いに役立ちます。ドライヤーで異常現象が出るように温めておき、ポイントクーラーで特定の部品を急冷し、異常が解消したら、もう問題は解決です。

ただし、どの付近の部品を急冷するのですか?という問題は残りますが。

2019年10月追記

1エリアのOMさんより、Sメーター振り切れの別の対策案を頂きました。 その対策は、Q133のベースからGND間に1MΩの抵抗を追加するものです。 このアイデアを頂いて、改めて、このQ133の周辺を眺めてみますと、確かにKenwoodのオリジナル設計では、Q133のベースの直流電位は固定されておらず、温度や継時変化で不安定になる回路のようです。 この対策アイデアで、この不安定な症状は確実に安定すると思われます。

貴重なアイデアを連絡頂いたOMさんに感謝致します。

 

INDEXに戻る

2012年12月 6日 (木)

TS-930S 電源レギュレーター破損

<カテゴリ:TS-930>

話題は、私が再開局した4年前に遡ります。 壊れたTS-930Sを貰い受け、動作チェックを始めました。 受信は出来るようだけど、AMが全く音なし。送信モードには切り替わるけど、POWERメーターは全く振れない。ICもほとんど振れない。VCに切り替えたら、メーター振り切れ。あわてて送信中止。 受信状態で+Bラインをチェックすると、28Vの電源が安定化されていなく38Vくらいになっていました。 今のチェックでファイナルが壊れていないかな? とにかく、ファイナルへ電源を供給する赤と黒のワイヤーにつながれたギボシ端子を抜くことにしました。

(電源修理完了後、改めてファイナルをチェックしたところ、トランジスタはすべて生きてました。ただし、出力は出ませんでしたけど。)

電源OFF状態でこの安定化電源用のQ1とQ2をテスターで導通テスト。コレクタ・エミッタ間が通通でした。2石ともNGです。このトランジスタの品番は2N5885。スペックを調べると

  • IC max 20A
  • VCEO max 60V
  • hFE 20-100
  • PC max 200W

Ts930ps この程度のスペックなら、いくらでも代替があると、その他の補修部品を含めて広島市内にある量販店系列のパーツ屋に部品探しに出かけました。 トランジスタ売り場には、CQ出版社のトランジスタデータブックが紐でつるしてあります。部品棚にある現物の形状からPC=200Wくらいのトランジスタを見つけては、データブックでスペックを確認していましたら「サンケン」の2SC2922という馬鹿でかいトランジスタが見つかりました。IC maxが17Aですが、その他の規格はすべてOK。TS-930Sのファイナルの最大電流は12A以下であり、その他の電流を入れても15A以下。これを2個パラに使えば余裕がいっぱい。しかし、値段が1個1500円。他を探しましたが、使えそうなトランジスタはこれしかありません。結局これを2個買いました。今、このトランジスタを通販で買うと840円ですから、かなり高い買い物でした。

代替のトランジスタの形状は全く無視です。既存の壊れたトランジスタを放熱板から取り除き、代替のトランジスタが貼り付けられるように放熱板に新たにタップを切ります。タップは製品開発の過程で、追加するのは当たり前で、昔使ったタップが、工具箱の中に、ごろごろ転がっています。電動ドリルで下穴をあけ、3ミリのタップを切っていくと途中で動かなくなりました。駄目だア、と逆回転させたとたん、タップが折れてしまいました。しかも、アルミの表面から0.数ミリの高さで折れてしまい、抜く事も出来ません。

やむなく、折れたタップはそのままにして、このタップを避けながら、また別の位置に穴を開け、タップを切ります。今回は下穴の直径を2.8ミリにしました。最初は2.7ミリの下穴でしたので0.1ミリアップです。タップが折れてから2.7ミリの下穴は1ミリ厚の鉄板用だったと後悔。

レギュレーターのトランジスタの交換というのは、タップ切りがうまく出来るかだけが難題であり、それ以外は楽勝です。回路図通り配線したら簡単に安定化電源は復帰しました。しかし、まだ問題が。 電圧を28Vに調整しようと、半固定抵抗を回すと、この半固定抵抗がバラバラに壊れてしまいました。半固定抵抗を、又買いに行かねばなりません。しかし、面倒なので180Ωの抵抗を3本シリーズに接続し、その接続部分からタップを出し、固定抵抗にしてしまいました。調整はできませんが、電圧は28.2Vとなり問題なしです。

930pwrtr_2  930pwrsvr_2

シリコングリスたっぷりのサンケントランジスタ(左)  180Ω3本で代用した半固定抵抗(右)

2SC2922のデータシートをダウンロード

同じように、タップを切り直してでも、トランジスタを交換しようと、お思いでしたら、トランジスタの外形がプラスチックモールドで、絶縁シートや特殊なワッシャを必要としない物を選べば楽勝ですよ。 2SC2922のコレクタは、絶縁されていなかったような。・・・・ 忘れました。

別件の用事で、Digi-Keyを覗いたら、2N5885Gが356円で売られていました。3000円+交通費もかけて買い、タップを折りながら苦労したのは何だったん! これぞ、ほんとのタップ折り損のくたびれ儲け。  ただし、Digi-Keyの送料は一律2000円です。ご参考まで。

INDEXに戻る

続きを読む »

2012年12月 2日 (日)

TS-930 MODEスイッチ破損

<カテゴリ:TS-930>

メイン機として使用していました、TS-930Sのモードが突然切り替わらなくなりました。 モードSWはロータリーノブですが、スイッチ部分はスライドSWになっており、ロータリーノブを回転させると、それを水平移動に変換し、薄いステンレスの板でスライドSWまで伝達する構造です。 このステンレスの板が折れてしまい、シャフトの回転がスライドSWへ伝わらないというのが故障の全容でした。

Ts930modesw アマチュアが修理する場合、一番困るのが、こういう電気機構部品といいますか、メカニカルな部品の故障です。しかも、今回は30年前くらいに流行したロータリーSWをプリント基板に実装できると、設計者の間で人気が出たリモートシャフトと呼ばれるスイッチです。商品を開発する上で、非常に便利で、デザイナーがデザインしたパネル配置と電気屋が設計する基板とのマッチングがフリーに出来、アルプス電気や松下電子部品(現パナソニック)が商品化したものです。 TS-930には松下電子部品製が使われていました。 ところが時代が過ぎ、どんなに安い家電製品にもマイコンが搭載されるようになると、回路の切替はIC化され、メカニカルSWの出る幕はなくなっていき、いつの間にか廃番部品となり、市場から姿を消しました。

KENWOODにメールでKENWOODのサービスパーツナンバーで在庫を問い合わせしましたが、予想通り在庫なし。近くのハムショップにジャンク品の問い合わせをしましたが、これも無し。 ヤフオクでこのSWが売りに出されるのを3ヶ月間待ちましたが、さすがにモードSWのみの出品はなく、やむなく、完成品をゲットすることに。もちろん、故障品です。

やっと、MODEスイッチのリモートシャフトのみを交換して、TS-930Sは、またメインに返り咲きました。

同じようなトラブルに遭遇されたとき、安全にリモートシャフトをスライドSWから取り外す方法を紹介します。むやみに引っ張ってロック用のツメが壊れたら、おしまいです。壊さないようにうまく取り外して下さい。

Ts930mode1sw

INDEXに戻る

2012年11月13日 (火)

TS-930 腐ったスルーホール(表示トラブル)

<カテゴリ:TS-930>

TS-930の故障で、その頻度がかなり多いのが、デジタル基板です。 VFDの表示やキー操作の異常が発生したら、大抵の原因は、このデジタル基板にあります。しかも、その異常の原因は両面基板の裏表の銅箔パターンを接続するスルーホールと言われる、両面をつなぐジャンパーみたいのものですが、これが、経時変化と熱で時々断線するというものです。現在のスルーホール技術はこのような問題は解決済みですが、このモデルが発売された時代での民生機用両面基板のスルーホール技術は未熟で、10年もすると、あっちこっちで問題が多発しました。

VFD(蛍光表示管)の表示がおかしいとか、操作に同期して異常な音がするとか、全く表示しないとか、キー操作して異常が認められる様な場合、真っ先に、このデジタル基板を疑った方が、修理が早く済むというものです。しかも、個々の部品不良は一切なく、基板を再ハンダするだけで直ってしまいます。

この、スルーホールが原因による故障は、世界中の修理者の間では既知であり、KENWOODは、どこのスルーホールが非道通になったら、どんな症状が発生すると、書かれたサービス資料を配布していました。

「TS-930S Digital Unit through-plated hole defects and their symptoms」で検索すると見つかるでしょう。

Ts930digitalpcb ところが、私が修理した3件のVFD表示異常は、いずれも、このリストに記載されていない箇所のスルーホールが原因でした。特に、交信中に発生する異常は困りもので、この異常の為に、交信が中断し、尻切れQSOで終わったのも数回。

修理しようと、電源を入れたり切ったりしている内に症状が出なくなり、万事休す。

とうとう我慢できなくなり、サービスマニュアルの基板図から調べつくした、全てのスルーホールをジャンパー線でショートしてやりました。     

この対策をして、すでに2年経過してますが、表示に関する故障は皆無になりました。  このブログで、パワーアンプのスルーホール対策を紹介していますが、それより2年前の出来事です。

4年目で問題が再発しました。ただし、今回はスルーホールではなく、コネクターの接触不良でした。デジタル基板につながるコネクターを全て抜き、オス、メス両方を接点復活剤で清掃しました。 すでに半年経過しましたが安定しています。

930th2 2013年4月に、電源ONして5分もしない内に表示が出なくなるというTS-930Sが持ち込まれました。調べると、ON後、2分くらいで表示が全部消えます。36.1MHzは異常なし。ダイヤルを回すと、表示が復帰します。この症状はKENWOODのサービス資料の中に出てきます。原因はスルーホール不良です。症状から問題のスルーホールはすぐに特定でき、対策完了しましたが、このまま持ち主に返しても、また別の問題で舞い戻ってくる事は、目に見えていますので、今回も全スルーホールをショートしてやりました。多分これで、スルーホールが原因の故障は皆無になることでしょう。

デジタル基板の不良でもVFDが全く表示しないという症状が発生しますが、この一切VFD表示せずの原因で最も多いのはPLLアンロックです。さらにPLLアンロックの原因で一番多いのが36.1MHzの局発停止です。

Ts930back2 特に、長い間、放置してあったTS-930を通電したときレベルメーターのバックライトはつくけど、VFDに何も表示されない。当然受信も出来ないという症状に遭遇しましたら、まず最初にこの局発停止を疑って下さい。36.1MHzのキャリアが発振停止しているかいないかは、オシロがあったらすぐに判ります。無い場合でもセットのフロントパネルを手前にして裏返したら、左手前に配置されているL77のコアを割らないようにしてグリグリと回してみてください。表示が戻り受信できるようになる事が多いですよ。 コアを割らない為に、私は、いつもツマヨウジをマイナスドライバーの先端の形状になるようにナイフで削ってから使用しています。

INDEXに戻る

2012年9月23日 (日)

TS-930 受信感度小

<カテゴリ:TS-930>

長い時間放置していたTS-930に久しぶりに電源を入れると受信感度が大幅に低下している場合があります。過去の修理事例をまとめて紹介します。

1.アンテナなし時のノイズも受信信号も非常に小さい。Sメーターもほとんど振れない。

電解コンデンサが劣化し、各回路が正常に動作していないもの。 通電を3時間くらい続けると自然に治ってきます。20年以上通電しなかったら、この症状がまず発生します。

2.アンテナを接続していない時のノイズは正常のようだけど、受信感度が悪い。Sメーターの振れも正常時の半分以下。

メカニカルスイッチの接点接触不良。

930rx1 アンテナ端子から入力された信号はふたつのメカニカルSWを通った後、BPF回路に接続されます。ひとつは受信用アンテナの切り替えSW。もうひとつはトランスバーターなどを接続したとき、アンテナ系の切り替えの為に設けられたSWです。いずれもスライドSWですが、このSWの接触不良が結構多く発生していました。SWの端子をピンセットなどでショートすると、受信感度が大幅に改善しますので、すぐに判断できます。SWをカチカチと何度も切り替えると良くなる事もありますが、完全ではありません。接点復活剤を注入して何度かSWを切り替えると直ります。  このようにして修理して3年以上経過していますが、問題の再発はありません。

Kure_splay_3

接点復活剤として、最近、あるOMさんから紹介していただいたスプレーを紹介します。 左の「KURE」印のスプレーです。 従来品よりベトツキが無く、他の部品への悪影響もかなり少ないようです。 基板の清掃にも使えると言うことから、64QFPのマイコンをはぎ取り、フラックスだらけの基板に吹きかけて、布でふき取るとフラックスを含めて除去でき、簡単に基板がきれいになります。 新しいマイコンをハンダ付けする時など、重宝しております。 サイズも2種類あり、価格もリーズナブルです。 多分、近くのホームセンターで手に入る事でしょう。

(2015年9月追記)

BPF回路のスイッチングダイオードの劣化。

各BPFをバンドSWにより切り替えますが、この切り替えはBPFの入力と出力に設けられたダイオードスイッチで行っています。このダイオードが劣化すると、感度ダウンやイメージ妨害排除能力のダウンが起こります。感度のダウンは聞いていたら判りますが、イメージ妨害排除能力のダウンは、単純に聞いていても判りません。受信感度をチェックしようと思い立ったときは、このスイッチングダイオードのチェックをお勧めします。私のチェックでは4台の修理品のうち2台に劣化したダイオードが有りました。海外の修理情報では、かなり頻繁に発生しているみたいです。

930rx2 感度がダウンしている場合、全バンドだったり、特定のバンドだったりします。感度が足りないと思われるときは、RFプリアンプ入力に、アンテナ信号を直接加えてみると判ります。左の写真に示すようにアンテナ入力線のコネクターとRFプリアンプの入力線のコネクターを基板から抜き取り、このふたつをお互いに接続すると、受信感度が大幅に改善する場合、ダイオードが劣化している可能性があります。 ただし、このテストの場合、BPFを通りませんのでダイオードが正常でも感度が少し良くなります。ほんとうに原因がダイオードであるかは、ダイオードをチェックしなければ判りません。

電源OFF状態で、すべてのダイオードの導通テストをします。BPFの周囲にあるダイオード全てを当たれば安心です。順方向の抵抗分が大きくなっている場合、そのバンドで感度小が発生します。逆方向の抵抗分が小さくなっていたり、ショートしている場合、イメージ妨害排除能力が著しく低下していると思われます。対象となるダイオードはD15からD35までです。

ダイオードの不良を発見したら、交換することになりますが、正規のダイオードは多分入手できないでしょうから、代替品としてロームの1SS133をお勧めします。このダイオードは名前はショットキーダイオードですが、VFが一般のシリコンダイオードとほぼ同じ0.6Vくらです。ロームのデータシートでは汎用品で高周波用とは書いてありませんが、構造がショットキーダイオードであることから、実際の接合容量値は0.8PFくらいしかありません。 値段も安いですから、大量に買い込んで色々なところで使用しています。日立の1S2076Aか東芝の1S1555Vかで市場が2分されていた時代にロームが殴りこみをかけてきたダイオードですねェ。

(参考:表面実装の場合1SS400がお勧め。)

ダイオードのチェックや交換が終わりましたら、次は全局発の周波数を正確に合わせなおします。 周波数の詳細はサービスマニュアルに記載されています。日本語のサービスマニュアルはWEB上で見つける事はできませんでした。英語版なら見つける事ができます。

「Welcome to the Kenwood Hybrid File page of N6WK」で検索すると、色々な資料をダウンロードできるページを見つけられるでしょう。 

*******************************************

2014年5月追記

メイン機として使用中のTS930Sの受信感度がかなり低下しているようで、先日のWPXコンテストでも、SメーターがS9以上振れるのは野呂山山頂からの信号のみで、全てのDX局がS7以下でした。サイクル24も下り坂だからと諦めていましたが、どうもリグの故障みたいです。サブ機のTS850SでS5で聞こえる信号が930ではS1以下です。

ダイオードが壊れたのかとチェックすると、案の定、D22の逆方向インピーダンスが300Ωくらいしかありません。D22は14-18MHz用のダイオードですから、21メガ受信時、イメージ妨害排除能力はかなりダウンしていた模様ですが、これを1SS133に交換した後も、受信感度は、Sひとつくらいは改善したものの、TS850Sにはまだ及びません。 BPFとIF回路のトランスの同調ポイントがずれている可能性もありましたので、サービスマニュアルを頼りにこれらのコイルを再調整することにしました。

SSGが有りませんので、14MHz付近の周波数にセットしたアンテナアナライザーと急きょこの為に手作りしたATTをアンテナ端子との間に入れ、かつ930のATTを30dBに設定すると、SメーターがS7くらい振れています。この状態で、IFトランスのT3,T4,T5,L125,L126,L127のコアを回してSメーターが最大に振れるように調整した結果、SメーターはS9+10dBくらいまで振れるようになりました。

930rx1

930rf_2

次に、周波数を29MHz付近にして、Sメーター最大になるようL43を調整。周波数を21MHz付近にしてL45を調整、最後に周波数を25MHz付近にしてL44を調整しSメーターが最大に振れるようにしました。この状態でSメーターはS9+20dBまで振れるようになりました。  BPF回路の調整はスィープジュネレーターを使い、バンド全体がフラットになるように調整するのが正しいやり方ですが、私の場合、21MHz、24MHz、28MHzの各ハムバンドで感度最高になれば、ハムバンド以外はどうでも良いので、スィープジュネレーターが無くても問題ありません。

なお、プリント基板に印刷されているシルクプリントの間違いが結構あります。D32とD33は逆ですね。

この再調整で、比較したTS850Sより感度は良くなりました。 結局、オリジナル状態より30dBくらい感度ダウンが起きていたようです。  

今回、コメットのアンテナアナライザーCAA-500をSSG代わりに使いましたが、周波数はかなり安定しており、通電後30分以上たつと、受信時のビート音の変化は感じられなくなりました。受信機の調整は、この周波数安定度と、いかにして弱い振幅一定の信号を作るかにかかっております。 CAA-500のアンテナコネクター部分の出力レベルは全バンドでほぼ一定で約-2dBmくらいです。 これとATTがあればSSGの代用ができます。このTS-930Sは受信感度の劣化が定期的におこりますので、-20dBから-90dBくらいを連続可変できるATTを作ってしまいました。ジャンク箱の中にあった部品だけで作りましたので、ATTの絶対値は判りませんせんが、受信機能の調整道具としては、28MHz帯まで十分実用になります。

930att

 

930attschema_2

 

 

 

INDEXに戻る

続きを読む »

2012年8月22日 (水)

TS-930S シリコングリス

<カテゴリ:TS-930>

TS-930も修理が4台目ともなると、電源を入れただけで、どこが一番怪しいか判るようになります。今回も、VFDが一切表示しないという症状から、36.1MHzが発振停止しているのだろうとテストポイントにオシロをつなぐと、出力無し。L77のコアをグリグリと回すと、発振開始。電源を切って10分以上経過してからも確実に発振が開始する位置にコアを固定して、とりあえず致命傷は解決。

サービスマニュアルを片手に全局発のチェックと再調整。各CARの周波数はかなりずれていましたが、すべて、調整の範囲内でした。受信感度もそこそこで問題なし。調整完了後、ダミー抵抗を接続して送信テスト。

TUNEモードで50W出る。CWモードで100Wでる。PROCをONすると、SSBが送信できない。PROC OFFではOKゆえ、7MHzで交信テスト。

JCC移動局と1局交信。問題なし。湯けむりアワードの移動局を見つけ、2局目の交信。ファイナルを送るころ、突然、湯けむりならぬ、白煙がファイナル付近からもくもくと舞い上がり、送信不能に。慌てて、別のトランシーバーでファイナルだけは送り交信終了。

ここから、悪戦苦闘の始まりです。

930fu1_2 送信できなくなった、ファイナルを取り外してみると、ドライバー段Q2,Q3のベースとGND間にはいっている22オームの抵抗が黒こげ。Q2,Q3のMRF485のベース、エミッタ間、ベース、コレクタ間がオープン状態。 22Ωのこげ状態からベースにかなり高い電圧がかかったみたいです。 海外の修理情報ではMRF485の耐圧が25Vしかなく、28Vを印加しているこのモデルは設計ミスであると。 さては、耐圧オーバーでトランジスターがショートしたのか? 

しかし、信頼のKENWOOD。 まさかそのような設計ミスは無いだろうと、MOTOROLAが正式に発行しているMRF485の英文データシートを確かめるとVCEOは最大で35V。なんにも問題なし。先の修理情報が間違っていることに。人の話は鵜呑みにせずに自分で確かめるに限ります。では、今回どうして壊れたのか。

930fu2 原因は放熱板からファイナルユニットの基板を取り外して判りました。放熱板とトランジスタの間に塗布するシリコングリスが蒸発してしまい、全くと言っていいほどありません。結局、この状態で100W運用した為にドライバートランジスタが熱破壊したのが原因でした。

MRF485は入手が難しい為、定番の代替トランジスタ2SC1969に交換すべく通販で注文を行い、その待ち時間の間に、他に問題が無いかチェックする事に。 とりあえず手持ちの2SC1909を取り付け、22Ωは手持ちの1/4Wを取り付けました。

ファイナルユニットの無信号電流が3Aを越えています。相当長い間、放置されていた為バイアス設定がずれているみたいです。これはVR1を調整して1.3Aに設定しなおしました。

次に、ドライバー段のドライブ電流はと、L7を外して電流計(テスター)を挿入し、SENDにしたらテスターがピクリと動いて以後応答なし。テスターが壊れたみたいです。別のテスターでQ2,Q3のベース電圧をチェックしたら0V。何が原因か? 調べたら、D5のBZ192がショートしていました。22Ωの抵抗が燃えた時は、少なくともこのD5は生きていたはず。そして先ほどSENDにしたとたんショートしたみたいです。D5を交換しなければなりませんが、なぜこのD5が19Vのツェナーダイオードなのか判りません。この部分の最大電圧は1.4Vくらいですので、安全を見ても1.9VのZDで十分なはずなのに。

いずれにしても19VのZDなど手持ちがありませんので5.1VのZDで代用することに。

ZDを取り替えて再びドライバー段の電流を調整することに。もちろん、壊れたテスターは内部のヒューズを交換してまた復活。しかし、こんども全く電流が流れません。まだ壊れた部分があるようです。

ここまで来て、関係するパーツを全部チェックすることにしました。結果、さきほど交換したD5は再びショート。Q6 2SC496Yはショート。L6の150μHはオープン。 仮付けした2SC1909もオープン。

L6は手持ちの100μHのコイルで代用し、手持ちの無い2SC496Yはまた通販で注文。

930fu3_2 全ての部品がそろい、各トランジスタの絶縁用マイカシートの裏表にシリコングリスをたっぷりと付けて基板と放熱板を固定します。写真では雑に塗ってあるように見えますが、厚く塗ってあり、この状態で基板を密着させると、自然に均一状態になります。現役時代のノウハウです。 また、ドライバー段の発熱を検出して、アイドリング電流を調整するサーミスタD2とQ2の止めビスの間にもたっぷりとシリコングリスを塗り、かつD2がビス頭に常に接触するようD2の足を成型しました。その上でドライバー段のアイドリング電流を70mAに、ファイナルのアイドリング電流を1.3Aに再調整。この状態で十数分間放置し、アイドリング電流がドリフトしない事を確認。

もちろん、Q2,Q3のベース、エミッタ部分のスルーホールには銅線を挿入してハンダ割れ対策も実施。

最後にバラック状態で10Wの送信テストを行い異常なしを確認。

930fu4 930fu5

放熱板を最終状態に取り付けて7MHzフルパワーで交信テストもOK。

PROC ONでSSBが発射できないのはPROC SWの接触不良。接点復活剤を注入してSWも復活しました。

チェックし始めてから1週間。晴れて、修理4台目のTS-930Sは復活しました。

ファイナル段のような大電力を扱う回路の修理は最初に全部品の異常有無を確認すること。半田付けされていて、テスターだけでは判断が付かない半導体は取り外してでも確認する必要があると理解できたところです。確認不足なら今回みたいに、OKの部品を次々に壊してしまいます。

また、かなりの期間、未使用のトランシーバーは、例え短時間の送信テストがOKでも、基板をめくって、シリコングリスの状態をチェックすることですね。

INDEXに戻る

2012年7月18日 (水)

TS-930S 送信不能(ファイナルユニット不良)

<カテゴリ:TS-930>

930pwrunit_4送信不能の原因は、ファイナルアンプのドライバー付近のスルーホールが、熱でひび割れし導通不能となっていることです。これは、初回の修理で判っており、疑わしいスルーホールのハンダを再度熔かして修理してきました。その後3年以上経過する内に、ここ1年くらいの間で、たまに送信不良が発生し、フルパワー送信を行うと直ってしまうという状態でした。しかし、最近送信不能の発生の頻度が増えてきましたので、スルーホールを銅線で結んでしまおうと、ファイナルユニットの分解修理をする事にしました。

サービスマニュアルの基板図に、部品の足が貫通せずに、ハンダだけで両面を結んでいるところを見つけ、印を付け、スルーホールの穴のハンダを熔かしながら、銅線を貫通させ両面で再ハンダしていきます。

この作業を始めていたら、ドライバートランジスターQ2,Q3のコレクターからファイナルまでの大電流が流れるスルーホールには、すでにワイヤーが埋め込まれており、両面の銅箔パターンに、ワイヤーがハンダ付けされている事が判りました。設計的に予め対応したのか、修理の途中で誰かが処理したのかは不明ですが、ハンダだけでなく、銅線でも両面をつなぐという処置は有効なようです。なぜなら、発熱はこれら銅線入りスルーホールの方が大きいのですが、ここでの導通不良は一度もありません。

930pwrunit2_3 930pwrunit3_2 

過去何回となく、送信不能となり、その都度、Q2とQ3のコレクタ、ベース、エミッタの各ハンダ付け部分を、再ハンダして対応した訳が判りました。このQ2とQ3のコレクタ側はワイヤーで両面をつないでいますが、ベースとエミッタはハンダだけでつながっています。設計的にはここの穴にトランジスタの足を貫通させて、両面でハンダ付けするつもりだったかも知れませんが、実際のセットではトランジスタの足を短く切り、貫通させていません。今回この部分の穴にワイヤーを貫通させ、両面で結びました。もちろん、その他のハンダだけのスルーホールにもワイヤーを貫通させて修理完了。

この状態で様子をみようと思います。

3年経過しましたが、問題の再発はありません。

INDEXに戻る

2012年7月16日 (月)

TS-930S 28MHz 100W WARCバンド送信TSS保障認定

<カテゴリ:TS-930>

故障したTS-930Sを貰い受け、販売店経由でKENWOODに修理を依頼したところ、断られてしまいましたので、インターネットで英文サービスマニュアルを入手し、自分で修理する事にしました。首尾よく修理できましたので、このモデルを使えるようにTSSで認定を受けることにしました。古い機種ですので、18,24MHzの送信は禁止措置が取られていることと、28MHz帯の最大出力が昔の規定通り50Wとなっています。これを改造して18,24MHz帯の送信可、28MHz帯での最大出力100Wの保障認定を受けました。

以下その方法を紹介します。  

WARCバンド(18,24MHz)の送信許可。

Img_4056 これは、非常に簡単です。スピーカーと電池ケースが取り付けられたアングルの止めビス4個を外すと、その下にデジタル基板があります。ちょうど電池ケースの真下当たりにX57-1020-00 という基板が有り、そこにコネクタが接続されていますので、このコネクタを抜きとります。それだけです。心配な方はこの基板を取り外してください。

マイクボリュームを最小にして、スタンバイスィッチをSENDにすると、ON AIRのインジケーターが点灯するのを確認してください。

スピーカーアングルを元通りに取り付けるとき、引き抜いた電池用コネクタの挿入を忘れないように。

28MHz帯の最大出力を100Wに変更する。

出力を50Wに規制する為に設けられたダイオードD150をカット(OPENに)するだけで対応できます。セットを裏返して、受信用バンドバスフィルターが集中するエリアの右側にあります。このダイオードのリード線をニッパでカットするだけでOKです。

930tss

TSSの保障願いには、

18,24MHz帯送信可の改造内容:X57-1020-00 基板にあるコネクターを抜き取る。

28MHz帯最大出力100Wの改造内容:D150カット(廃止)。

と書いて、図面や写真は添付しませんでしたが、承認していただきました。

INDEXに戻る