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2013年1月23日 (水)

TS-930 Sメーター振り切れ

<カテゴリ:TS-930>

温度が下がった状態で電源ONすると、Sメーターが振り切れて、受信不能になり、温度が上がってくるといつの間にか直ってしまうという問題の修理事例です。

預かってすぐに、電源ONしたら、問題の症状が再現しましたので、本格的に原因を探す為に、ポイントクーラーと言われる瞬間冷却スプレーを探す事にしました。記憶にあるのは、サンハヤトの「キューレイ」です。結構な値段がしていました。問題が起こると、あっと言う間に使い切ってしまい、かなりコストが高い修理になると認識していました。

Qray1しかし、最近スポーツ用に同じ原理の冷却スプレーがあるとのこと。スポーツ用品を扱うホームセンターで探すと、キューレイより2~3割アップの容量で、価格は1/3くらいで売られています。ただし、問題がひとつ。スポーツ用は冷却スプレーがある程度拡散するようになっており、噴射したとき患部が凍傷にならないようになっています。

電気製品の修理の場合、めざす部品だけを冷やし、その他の部品は常温のままという状態を作って、不良部品をあぶり出すやり方ですから、スプレーが拡散するのは都合が悪い訳です。 

Qray2


何種類かの冷却スプレーの中から、ノズルを追加して取り付けられる物を探し、これに直径3mmのアクリルパイプをねじ込むことにしました。アクリルパイプをドライヤーで温めると簡単に柔らかくなりますので、この柔らかくなったパイプをスプレーに付いている小さなノズルに差し込みます。温度が冷えると、固まってしっかりと固定できます。使わないときは引き抜いて置けば、問題ありません。

Qray3こうやって、かなりエコノミーなポイントクーラーが出来上がりましたので、さっそく不良部品探しを始めました。

トランジスターや電解コンデンサにスッポリとかぶせる事ができる紙の筒を作り、その筒の上部から冷気のスプレーを吹き付けますと、Q133で期待する反応がありました。

Q133を冷却するとSメーターが振り切れます。AGCをOFFにしても振り切れは直りません。 R722をオープンにすると、AGC OFF状態になって症状は出なくなります。

どうも低温でコレクタにリーク電流が流れているようです。手持ちの2SC1815GRに交換しましたら、AGC OFF時はSメーターが振れなくなりましたが、AGC FASTやSLOWの時は振り切れています。

症状が出なくなるまで待ってから、次にQ131を冷却すると、Sメーターが振り切れます。Q131のエミッターにオシロをつなぐと100KHzくらいの信号が見えます。Sメーターが正常時は、何も見えません。どうもQ131が低温で発振しているみたいです。正常状態で、Q131のコレクターにテスターを当てるとSメーターが振り切れます。これで判りました。低温でC529(0.047)が容量ダウンして発振していました。 C529に0.1uFのセラミックコンデンサをパラに追加しました。これでテスターで当たっても発振は起こらなくなり、問題は解決しました。

Ts930agc_3


結論はQ133のリークとC529の温度特性不良だったのですが、しかし、それで直ったと決定するまで半日以上かかってしまいました。理由は急冷スプレーを吹きかけると目当ての部品はすぐに冷えるのですが、その部品と周辺に霜がつき、その霜が溶け出すと基板上の部品間を水分でショートする状態となります。 スプレーをしてから10秒以上経過した後、Sメーター振り切れの症状が発生してしまいます。この霜の溶ける問題と本来の部品不良の区別がつかず、かなりロスタイムがありました。   
もしかしたら、Q133のリークも霜の影響で、ほんとうの原因はC529だけだったかも知れませんね。

冷却スプレーを使うときは、回路のインピーダンスを十分把握した状態で検討しないと、何をやっているのか判らなくなるという事でした。 対策完了してから、昔、同じような問題で悩んだことをやっと思い出しました。

今回は、低温で異常が発生する状況でポイントクーラーを使いましたが、高温で異常が発生する場合も、ポイントクーラーは大いに役立ちます。ドライヤーで異常現象が出るように温めておき、ポイントクーラーで特定の部品を急冷し、異常が解消したら、もう問題は解決です。

ただし、どの付近の部品を急冷するのですか?という問題は残りますが。

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