« ケンプロ KR-400RCの修理 | メイン | プリセット式MTU 4 »

2012年11月13日 (火)

TS-930 腐ったスルーホール(表示トラブル)

<カテゴリ:TS-930>

TS-930の故障で、その頻度がかなり多いのが、デジタル基板です。 VFDの表示やキー操作の異常が発生したら、大抵の原因は、このデジタル基板にあります。しかも、その異常の原因は両面基板の裏表の銅箔パターンを接続するスルーホールと言われる、両面をつなぐジャンパーみたいのものですが、これが、経時変化と熱で時々断線するというものです。現在のスルーホール技術はこのような問題は解決済みですが、このモデルが発売された時代での民生機用両面基板のスルーホール技術は未熟で、10年もすると、あっちこっちで問題が多発しました。

VFD(蛍光表示管)の表示がおかしいとか、操作に同期して異常な音がするとか、全く表示しないとか、キー操作して異常が認められる様な場合、真っ先に、このデジタル基板を疑った方が、修理が早く済むというものです。しかも、個々の部品不良は一切なく、基板を再ハンダするだけで直ってしまいます。

この、スルーホールが原因による故障は、世界中の修理者の間では既知であり、KENWOODは、どこのスルーホールが非道通になったら、どんな症状が発生すると、書かれたサービス資料を配布していました。

「TS-930S Digital Unit through-plated hole defects and their symptoms」で検索すると見つかるでしょう。

Ts930digitalpcb ところが、私が修理した3件のVFD表示異常は、いずれも、このリストに記載されていない箇所のスルーホールが原因でした。特に、交信中に発生する異常は困りもので、この異常の為に、交信が中断し、尻切れQSOで終わったのも数回。

修理しようと、電源を入れたり切ったりしている内に症状が出なくなり、万事休す。

とうとう我慢できなくなり、サービスマニュアルの基板図から調べつくした、全てのスルーホールをジャンパー線でショートしてやりました。     

この対策をして、すでに2年経過してますが、表示に関する故障は皆無になりました。  このブログで、パワーアンプのスルーホール対策を紹介していますが、それより2年前の出来事です。

4年目で問題が再発しました。ただし、今回はスルーホールではなく、コネクターの接触不良でした。デジタル基板につながるコネクターを全て抜き、オス、メス両方を接点復活剤で清掃しました。 すでに半年経過しましたが安定しています。

930th2 2013年4月に、電源ONして5分もしない内に表示が出なくなるというTS-930Sが持ち込まれました。調べると、ON後、2分くらいで表示が全部消えます。36.1MHzは異常なし。ダイヤルを回すと、表示が復帰します。この症状はKENWOODのサービス資料の中に出てきます。原因はスルーホール不良です。症状から問題のスルーホールはすぐに特定でき、対策完了しましたが、このまま持ち主に返しても、また別の問題で舞い戻ってくる事は、目に見えていますので、今回も全スルーホールをショートしてやりました。多分これで、スルーホールが原因の故障は皆無になることでしょう。

デジタル基板の不良でもVFDが全く表示しないという症状が発生しますが、この一切VFD表示せずの原因で最も多いのはPLLアンロックです。さらにPLLアンロックの原因で一番多いのが36.1MHzの局発停止です。

Ts930back2 特に、長い間、放置してあったTS-930を通電したときレベルメーターのバックライトはつくけど、VFDに何も表示されない。当然受信も出来ないという症状に遭遇しましたら、まず最初にこの局発停止を疑って下さい。36.1MHzのキャリアが発振停止しているかいないかは、オシロがあったらすぐに判ります。無い場合でもセットのフロントパネルを手前にして裏返したら、左手前に配置されているL77のコアを割らないようにしてグリグリと回してみてください。表示が戻り受信できるようになる事が多いですよ。 コアを割らない為に、私は、いつもツマヨウジをマイナスドライバーの先端の形状になるようにナイフで削ってから使用しています。

INDEXに戻る