新アンテナの構想
<マルチバンドアンテナシステム2>ATU ループアンテナ 電波防護指針>
2008年に作り始めた、最初のマルチバンドアンテナシステムは、コンディションの低下や、再就職で、時間がとりにくくなった事も有り、2018年には、メインのエレメントであるスカイドア用ループを降ろし、そして、家のメンテの為、2023年1月には、全アンテナを撤去してしまいました。
家のメンテが終了し、3月末までには、それまで家を囲っていた足場も撤去されますので、新しい、アンテナシステムを構築する為の構想作りを始めました。
そのメインとなるのは、又、スカイドアアンテナです。 このループアンテナは、簡単な割に、過去良く飛んでくれまして、カリブやロングパスでアフリカの珍局をパイルに打ち勝ってゲットした事もあり、再度作るにしても、第一候補はスカイドアになります。 ただし、タワーや丈夫なマストが無く、ベランダに設置する条件としては、かなりの風圧を受け、台風シーズンになると、アンテナを降ろす必要がありました。 そこで、台風が直撃する場合はともかく、遠くをかすめる程度の場合、いちいちアンテナを降ろさなくてもすみそうなアンテナをMMANAを駆使して検討したところ、超ナロー幅、回転半径50cmのスカイドアに行きつきました。ゲインは従来のスカイドアとほぼ同等か少しアップ、打ち上げ角もほとんど同じである事が判りましたので、次のアンテナはこの新スカイドアと7MHz垂直ダイポールで構成する事にします。
左が、新スカイドアアンテナの基本図で、幅1m(回転半径50cm)、全ループ長は従来と同じ13.5mです。
そして、上の表は、14MHzから50MHzまでのアンテナインピーダンスと利得と打ち上げ角です。この表のデータはループの赤丸の給電点の高さを11mとした時のデータになります。 6mは国内専用になるかも知れませんが、良しとします。この表の中で出てくる利得の単位はdBi(絶対利得)であり、標準の水平ダイポールを地上高12mくらいに張った場合、ダイポールの絶対利得は約6dBiくらいになります。 従い、当スカイドアANTの利得は14MHzで-0.6dBくらい、24MHzで+4dB位いダイポールと差が有るという事になります。
上のパターンは21MHzの水平、垂直パターンで過去のスカイドアと同じです。
ただし、一つだけ大きな欠点があります。
それは、帯域幅です。 とにかく狭い。
上のグラフは21MHzで整合した時のSWRカーブですが、SWR1.5の範囲は約49KHzしかありません。450KHzもあるこのバンドの1/10しかカバー出来ない事になってしまいます。
この解決策として、アンテナ給電部に直付けしたアンテナチューナーで強制整合させ、バンド内をくまなく利用出来るようにプリセットMTUも作り替える事にしました。 ただし、MTUでは無く、プリセットATUにし、一度記憶した周波数帯のプリセットされた条件を電波を出す事無く呼び出す事が出来るATUに仕上げます。
ベースとなるATUは、以前改造してその後未使用になっていたLDGのKT-100です。 このLDGのATUに限らず、リレー式のATUはMTUと異なり、LとCのきざみがstep状に変化しますので、最適整合状態でもSWRが1.5以下にならない事がかなり頻繁に起こります。 そこで、小リアクタンスを持つコイルとコンデンサをアンテナに直列に挿入し、これをリレーでショートしたり解放したりできるようにし、どの周波数でもSWR1,5以下を実現出来るようにします。 また、アンテナのインピーダンスもかなり低くなりましたので、50Ωと、22Ωを切り替えられるようなバランを兼ねたトランスを設ける事にします。
一方、10MHz以下のバンド用として、左の図に示す垂直ダイポールを、スカイドアンテナのマストを兼用して設置し、10MHzから3.5MHzまでをカバーさせます。下側のエレメントが斜めになっているのは、マストのステーを兼用している為です。
垂直系のアンテナのゲインは、水平系と直接比較出来ませんが、標準的なフルサイズ垂直ダイポールのゲインが、約2.1dBiですから、エレメント長が短い分、ゲインは下がりますが、地上高が低くても、打ち上げ角を低くできるというメリットが有り、下側のエレメント長は、さらに2mくらいは長く出来るところを、この長さに留めています。(最終的に、3.5MHzで整合が取れないという事から、下側のエレメント長は10.5mに変更されました。)
このアンテナの7MHzに於ける放射パターンはMMANAのシュミレーションにて以下のようになります。
それらの構想を盛り込んだ配線図は以下です。
ATU本体配線図 NB-ATU_nain.pdfをダウンロード
コントローラー配線図 NB-ATU_contoroller.pdfをダウンロード
これらのコントロール用として、マイコンをつかいますが、ATU本体は、PIC18F47K42という8bitタイプで、12bitのADコンバーターと1024バイトのEEPROMを持つマイコンを使います。 また、コントローラー側は、PIC18F25K42というEEPROMが256バイト品を使います。
従来のプリセットMTUのコントローラーは、2バイトのデータを1200ボーのスピードで20mのケーブルを使い通信していましたが、この新ATUでは5バイトのデータを最低2400ボーで25mのケーブル長を使い通信出来るようにします。
まずは、この二つのマイコンのソフト開発から開始します。
ATUが一度整合状態になった周波数の条件は、ATUのマイコンのEEPROMに記憶されますが、周波数をアンテナのSWRが1.5以内になるバンド幅で区切り、1.8MHzから52MHzまでを152のバンドに分け(最終的には154まで増加)、そのバンド毎に整合条件を記憶させます。 これは、改造したKT-100の機能と同じですが、バンド数を拡大します。 一方、コントローラー側から、周波数データをマニュアルで送る機能を設け、周波数が指定されると、その周波数に相当する記憶されたバンドデータを呼び出し、ATUをプリセットさせます。 指定された周波数でのプリセットデータが無い場合、一番近いプリセット済みの周波数のデータを呼び出し(この機能は最終的に廃止し、有効なプリセットデータが無い旨をコントローラーへ返す仕様に変更)、送信してATUを整合させる事を促します。これらの機能により、一度整合させた事のある周波数帯の場合、送信しなくても、ATUをプリセット出来るようになり、ちょっと、他のバンドを聞いてみたい時など便利になります。 この周波数を指定する操作はコントローラーのつまみで行いますが、最新のリグの場合、受信周波数をUSB経由で出力する機能が有り、受信機を操作するだけでATUをプリセット出来るようにする事もできますが、ほとんどのリグが、一度コントローラーからリグに受信周波数を問い合わせしないと、受信周波数は返してくれません。 従い、コントローラーから周波数を問い合わせするアクションが必要になります。 私のリグはTS-930Sですから、この機能は使えませんので、送受信周波数の指定はコントローラーから手動によるアクションのみとしました。
このプリセットATUの機能は以下のような案で進めます。
・アンテナは14MHz以上のスカイドアループと、10MHz以下3.5MHzまでの7Mhz用垂直ダイポールに加え、後1本、1.8MHzを含む任意のワイヤーアンテナを接続出来るようにリレーで切り替えます。
・プリセット周波数の指定はバンド切り替えツマミと周波数切り替えツマミを独立させ、各バンド毎にラスト周波数を記憶し、バンドを切り替えた時は最初にこのラスト周波数をATUに送ります。
・周波数によって、SWRが1.5以下に下がらない場合、リアクタンスを微調する機能を設けます。
・コントローラーが指定した周波数と実際の送信周波数をずらしたままでも送信出来るようにします。 これは雨や雪で当初の整合状態がずれた場合でも、再度整合を取り直す事無く、SWRの低い条件をプリセットデータから選択する機能です。 送信状態で、プリセット周波数を変化させると、その時のSWRをコントローラーでモニターする事が出来ます。
上がコントローラーで左が、KT-100のマイコンソケットにコネクターを挿し、新たなマイコンを追加した状態です。
とりあえず、基本動作が出来るようになりましたので、そのソフトを公開します。 ただし、デバッグは完了していませんので、バグはいっぱい含まれています。
25Ωと100Ωの抵抗を使い、実働テストを行うと、21MHzで通過電力が10Wを超える時、ATU側のマイコンが暴走します。21MHz以外は20WくらいまではOKですが、20Wを超えると同様に暴走します。 オリジナルのKT-100には、それなりの対策が施されているのですが、今回、オリジナルのマイコンソケットに中継用のコネクターを挿し、別の基板を継ぎ足す構造にしたことから、配線が長くなり、通過させる高周波がまともにマイコンへ流入しているのが原因です。
小手先のいくつかの対策を実施しましたが、全く効果がなく、基板構造を全面的に再検討する必要が生じました。 以前製作したバリコン式ATUは全バンド100Wpep通過でも問題ありませんでしたので、その時のノウハウを再検討します。
改造ATUによる再検討 へ続く。
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