QRP CW トランシーバー 4
QRP CWトランシーバーが完成して、既存のアンテナやベランダに臨時に展開した釣竿アンテナでQSOの実績も増え実用域になりましたので、移動運用にトライしました。運用日はとても移動運用びよりとは言えない、北風のかなり強い1月でした。
アンテナを架設して、チューニング操作を開始すると、最初はOKでしたが、数分もするとロータリーエンコーダーをどっちに回しても周波数はダウンばかり。そのうちバンドの下限を超えてしまい、アップ出来ません。受信も送信も出来るのに、周波数が設定できないという状態で、結局その日は1局も交信できずじまいでした。
原因を確認する為、家に帰ってから屋内と屋外の温度差を利用して温度試験です。どうやら低温になると、アップが出来なくなるようです。その低温は7度くらい。15度以上になると正常になります。エンコーダーの端子電圧をオシロでモニターすると、かなり摺動ノイズが発生しており、低温になるとそれがひどくなるというものでした。通常、チャタリングはスイッチの切り替わった直後に振動状態で発生する、断続信号で、マイコンのソフトで基本対策を行い、それをさらにカバーするためにエンコーダー端子にコンデンサを追加し、波形をなまらせるという対策を行いますが、このエンコーダーの摺動ノイズはパルスのLレベルの範囲全体で出ています。
コンデンサでなまらしたら、エンコーダーとしての機能までなくなってしまうほどのノイズです。秋月で販売しているエンコーダーと同じものだそうですので、ALPS製のエンコーダーに交換することにしました。交換したら一応7度くらいでは誤動作しなくなりましたが、しかし、ALPS製は、すばやい回転には応答しますが、ワンステップのアップとかダウンを行うと、動作ミスが多発します。たぶん、マイコンのタイミングが合っていないのでしょう。 KEMのBBSで問いかけしましたら、秋月のエンコーダーの中にあるグリスをふき取れば良くなる可能性があるとアドバイスがありましたので、エンコーダーのカバーにあるツメを起こし、内部を開け、綿棒でグリスをふき取りましたら、動作力が軽くなったと同時にアップダウンが正常になりました。 しかし、数か月すると、また誤動作の頻度が高くなってきます。再度、ケースを開け、今度は接点復活剤で清掃しました。その効果は絶大ですが、いつまでモツ事やら。
半年以上経過した12月に、移動運用に出かけました。外気温は10度くらい。 太陽が当たっている間は良かったのですが、日蔭になってしばらくすると、今度はUPばかり。ロータリーエンコーダーをどっちに回してもUPばかりです。 帰ってから詳しく調べるとエンコーダーの一方の出力波形にかなり激しい摺動ノイズが出ていました。 こういうノイズはチャタリングとは言わず、ソフトで回避する方法は有りません。 最初にチェックした時よりノイズの幅は小さいですが、高さは同じくらいです。 エンコーダーの摺動面には、もうグリスはありません。やむなく、コンデンサを追加して波形をなまらす事にしました。
左が、対策前、右がエンコーダーのA,B端子とGND間に0.47uFのコンデンサを追加したものです。 上昇の時しかコンデンサの効果は有りませんが、ノイズのパルスの高さがかなり抑えられました。これで、ゆっくり、あるいは高速でエンコーダーを回すと、時々動作しない事はありますが、アップダウンが逆になる事はなくなりました。
このエンコーダーの端子はマイコンの中で、抵抗によりプルアップされているようですが、プルアップ抵抗の値が小さすぎます。(このマイコンの内部プルアップ抵抗は1.5KΩ) マイコン内でのプルアップをやめ、外付けの10KΩくらいでプルアップした方が対策はしやすいのですが、プログラムの書き換えが必要になり対応できません。
左の回路図は、パナソニックが自社のエンコーダーをテストする時の回路ですが、この回路のコンデンサを0.01から0.047に変更した上で、ロタリーエンコーダーのA端子入力を外部割込みに指定してやると、アルプス製はほとんど問題なく動作します。 秋月の中国製はグリスをふき取らない限り改善しません。
完全な動作を望むなら、フォトインタラプターによる光学式エンコーダーにするしかありません。 この0.47μFを追加した状態でも誤動作が頻発するようになったら、パナソニックの回路の後にCMOSのバッファを入れてその出力をPICの入力端子に接続するつもりです。
QRP CW トランシーバー 5 へ続く