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2013年1月 4日 (金)

QRP CW トランシーバー 2

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

5WのパワーアンプをKEMのトランシーバーでドライブできるように配線し終え、キャリアーを連続送信しても最大で2Wくらいしか出力がありません。KEMの0.5Wパワーアンプの出力インピーダンスは50Ωのはずですから、TS-930からのドライブのときと同じと考えましたが、考察に抜けがありました。前回の実験では、50Ωのダミー抵抗があって、その両端から5Wパワーアンプへ供給していましたが、今回はダミー抵抗が有りません。

それに気づいて50Ωの抵抗で信号ラインをダンプしてやると、6Wの出力が出るようになりました。 ただし、6Wでは大きすぎますので、5Wになるよう100Ωに定数変更し、かつ0.5Wに切り替えられるように、リレーを使い5Wパワーアンプをスルーできる様にしました。

ダミー抵抗をつないで、連続キャリア送信テストも完了し、つぎにCWでの送信テストをやっているうちに、モニターで聞いているTS-930の受信音に気になる音が出ます。CWのキーイングが終わった直後、バサバサと言った感じのノイズがほんの少しの時間ですが聞こえます。

送信出力の波形をオシロでモニターすると、CWの7MHzのキャリアが途切れたあと、信号がゼロにならず、一瞬かなり低い周波数の信号が残って、すぐにゼロになります。不信に思いスペアナを接続してみましたら、7MHzのキャリアが途切れたとたん、基本波が約1MHzくらいの不要輻射が発生していました。しかもかなり汚い波形らしく高調波が10MHz付近まで見えます。

良く調べると、これは0.5Wアンプの異常発振でした。CWのキャリアーが無くなってもセミブレークインの為に、0.3秒間くらい送信状態を維持します。この0.3秒間の間に1MHz付近で異常発振しているものでした。KEMの説明書の中に、必ずダミー抵抗をつなぐか、実際のアンテナをつないでくださいというコメントがあります。要は、無負荷や設計された以上の軽い負荷をつなぐと発振しますよ、ということです。今回、5Wのアンプを接続しましたので、発振しやすくなったのでしょう。とりあえず、オリジナルの0.5Wパワーアンプのコレクタ側チョークコイルにダンプ抵抗を入れてゲインを下げ発振を阻止しました。

発振対策として、ダンプ抵抗はあまりにも芸が無いので、負帰還をかけたり、アッテネーター回路の定数を変えたりして、発振対策を行い、うまくいってましたが、温度が下がると異常発振が再発してしまいました。面倒なので、チョークコイルのQダンプを継続する事に。 この方法なら温度変化があっても安定して動作します。

また、受信状態でも、5Wのパワーアンプは生きている訳ですが、時々、受信状態のとき発振し、受信音がビートだらけになります。対策として、コレクタからベースへ、CRによる負帰還をかけています。

最終的な出力は

  • VCC 12V     5W     /      0.5W
  • VCC 10V     4W     /      0.4W
  • VCC   8V     3.2W  /      0.26W
  • VCC   7V     2.4W  /      0.2W
  • VCC   6V     1.6W  /      0.12W

QRPモードもQRPPモードもパワーアンプ以外は5Vの安定化電源ですから、パワーはダウンしますが、6Vまで使う事ができます。

ここで、電池によるパワーの差をレポートします。

12V DC電源では5W出ています。

8個で、800円の単3アルカリ電池を買ってきて、テストしました。受信状態での電圧は12.8Vあります。 送信すると、11.8Vになりましたが、かろうじて5W出ていました。しばらくCQなどを出して、10分経過したら11Vまで電圧が下がり4.5Wくらいしか出ません。

次に、6個で105円という単3アルカリ電池を買ってきました。受信時の電圧は13.2Vです。これはすごい! しかし、送信したら、10.2Vになりました。 え? とVVVを10回くらい送信したら9.6Vになりました。約10分後には9Vになりました。100円ショップの電池では、例え新品でも5Wは出ませんでした。

2015年2月:最近は12Vのリチウムイオン電池を使っています。電動釣竿用の電池なので、数回の移動運用でも、電池の心配をする事がなくなりました。

 

バラック状態での検討がほぼ完了しましたので、次はマニュアルアンテナチューナーを実装します。回路はL型です。コイルは連続可変できませんので、12接点のロータリーSWを用意し、トロイダルコアに18ターン巻いたコイルから12個のタップを出し、これをSWでショートすることにしました。バリコンは250PFくらいのポリバリコンです。SWRの検出は抵抗ブリッジ方式として、ブリッジの不平衡電流のみをバッテリーチェッカー用の小さなメーターで見る方式としました。  アンテナチューナーは3mくらいから20mくらいまでのロングワイヤーに無理なく整合させることができます。

Kemmtu1a_2 Kemmtu2_2

トロイダルコアに巻き込んだコイルのQが全く使いものにならないくらい低い事がわかりました。 現在は、空芯コイルに変更しています。詳しくは、「QRP用アンテナチューナーの内部ロス改善」を参照して下さい。

オリジナルの回路はイヤホーン出力しかありません。これをスピーカーでも聞けるようにオーディオパワーアンプを追加することにしました。材料は粗大ごみ入れに捨ててあったPC用のスピーカーシステム。パワーアンプもスピーカーも付いていますので、スピーカーとアンプ基板を取り出し、いとも簡単にオーディオアンプが出来上がりました。

Kemaudio1_2  この状態でCWの送信を5Wで行うと、モニター音はキークリックだらけです。音量ボリュームを絞っても出ています。パワーアンプの入力部にシリーズに1KΩとICの+/-入力間に1000PFを追加する事にしました。 最初、アキシャル抵抗とラジアルコンデンサで対応したのですが、効果は有るものの、十分では有りません。 チップ抵抗とチップコンデンサに変更し、かつICのピンのすぐそばに配置したら、音量ボリュームを絞ると聞こえなくなりました。 音量ボリュームを上げたときの対策として、送信時には受信音声系をトランジスタでミューティングすることにしました。 また、トーンボリュームや音量ボリュームの配線をすべてシールド線で行った結果、クリック音は発生しなくなりました。  また、CWのモニター音のクリック音も、全く気にならないくらいに改善しました。

とかく、キークリック音のあるCWは聞いていて疲れますので、これで安心です。

Kem5wmod1_2 借用していたタケダ理研のアナログ式スペアナを返却し、代わりにアドバンテストのデジタル式スペアナを借用したついでに、高調波を調べてみると、今まで-60dB以下はノイズに埋もれて見えませんでしたが、デジタル式のこのスペアナは-70dBまで見る事ができます。そして第4次高調波以上が予想以上に多い事に気付きました。原因を調べると、トランジスタのベース電流が歪んで、その影響が0.5Wのアンプのタンク回路まで及び、ここで高次のリンギングが発生しているものでした。

色々と検討した結果、ベース回路に同調回路を置き、かつインピーダンス変換できるトランス式に変更すると、2次、3次は-63dBくらい、4次は-68dBくらいですが、5次以上の高調波は-70dB以下に収まりました。(回路図修正済み)

5W QRPトランシーバーの回路図をダウンロード

TSS保障認定用送信機系統図をダウンロード

一応、トランシーバーとして必要な回路部材がそろいましたので、これを移動運用にも耐えるようにケースへ収納することにします。

QRP CW トランシーバー 3 へ続く

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