エレキー回路の追加
このQRPキットのPICマイコンの中には、CW用のエレキーソフトが内臓され、縦振電鍵用とエレキーパドル用とに切り替えられるようになっています。ただし、エレキー用を選択したときのキーイングスピードの調整は、とてもQSO中に変更できるようなアクションになっていません。 そのため、今までは外付けのエレーキーユニットを使用していました。
移動運用するには、このQRPトランシーバーとハイモンドのシングルレバーパドル、エレキーユニット、乾電池、アンテナワイヤー、アンテナポール用の6.3m釣竿など、かなりの荷物でした。これらの荷物を少しでも減らそうと、まず、ハイモンドのパドルを自作の軽いパドルに変更しました。この自作パドルの詳細は、エレキー用パドルの製作を参照してください。
次に、外付けのエレキーユニットをビルトインにすることにしました。
メイン機がTS-930Sであることから、最近のモデルには当然内臓されているエレキー回路がありません。よって、外付けの回路を使っています。 この回路はサーキットハウスがキットで発売していたもので、CK-100AというN9BQタイプのC-MOS ICによる回路です。現在はマイコンタイプが一般的ですが、006Pタイプのアルカリ電池につなぎっぱなしで2年半も使用できるという、超ロングライフな消費電流の為、QRPトランシーバーに内臓するエレキー回路もこの回路をそのままコピーして使おうと考えました。
ジャンク箱をひっくり返すと、この回路に使うC-MOS ICが出てきました。HitachiブランドでHD14001のような品番です。30年くらい前のICです。これを、ユニバーサル基板に並べて、CRはチップタイプで作りました。基板の表側にはICだけしかみえませんが、1608タイプのCRは、裏側の2.5mmピッチのランドに結構うまく乗ります。 オリジナルの回路はモニター用のサイドトーン発振器もついていますが、KEMのトランシーバー側にその機能がありますので、エレーキー基板には実装しません。
配線が完了して、いざ、実働テスト。 残念ながら動きません。まず、クロックジュネレーターが動作しません。 速度調整用可変抵抗を可変すると、時々発振はするけど、まともな波形ではありません。 発振回路に使う0.1uFのコンデンサは1608のセラミックでしたので、これをCK-100Aと同じようにマイラータイプに変更したら、一応発振は継続するようになりましたが、周波数の可変がうまくいきません。 電源ラインには、ごく当たり前に、47uFの電解コンデンサと0.1uFのセラミックコンデンサを挿入してありました。しかし、オリジナルの回路では、電源ラインに電解コンデンサは使用していませんので、これを廃止しましたら、連続して、きれいに発振するようになりました。 それでもまだキーイングする出力は出ません。
配線図の写し間違いが無いか再三にわたりチェックしましたが、間違いはありません。しかし、おかしな部分に気付きました。ICの各端子をオシロで当たっていくと、H/Lの動作をしていますが、9Vと7Vくらいの間を変動している端子があります。C-MOS ICの出力どうしが、つながっているようです。 少なくともキットで組み立てた回路は正しく動作していますので、CK-100Aに付属の回路図が間違っているのでしょう。 出力どうしがつながっている箇所はすぐに判りましたが、正しい接続方法は判りません。 現物の基板を何度も裏表をひっくり返しながら、やっと正しい配線方法を見つけました。 正しい配線に修正すると、正常に動作するようになりました。
基板単体でOKとなりましたので、これをQRPトランシーバーに組み込みました。しかし、今度は、クロック発振が起動しません。基板単体のとき電解コンデンサを廃止したら正常になりましたが、トランシーバーの電源ラインには電解コンデンサがいっぱい入っています。どうも、この4001によるクロック発振器は電源のインピーダンスが低いと起動しないようです。ためしに、エレーキー回路の電源ラインに直列に抵抗を入れてみました。15Ωの抵抗で発振が起動しました。さらに抵抗を大きくしていくと1KΩでも発振起動します。いくらの抵抗が最適か探りましたが良く判らず、とりあえず、電圧降下が0.1V以内に収まる47Ωとしました。
トランシーバーに組み込んで、電源SWをONにすると、ONした直後に送信状態になります。電源投入のタイミングにより、短点、または長点が発生しているものでした。電源ONするたびに、勝手に送信状態になる訳ですから、これは対策が必要です。 今までの外付け回路は電池に接続したままでしたので、この現象は2年半に1回起こるだけですから、問題になりませんでした。
対策としては、電源ON直後はキーイング出力にミューティングをかけることにしました。トランジスタ1石追加です。これで、エレキーのスピードを最低にしても電源ONで勝手に送信になる事はありません。
トランシーバーのキーイング回路をON/OFFする出力回路は、トランジスタ2石のダーリントン接続になっていますが、このベース抵抗とコレクタ抵抗の値が、通常より逆になっています。 この逆の状態でも、私が使用しているリグすべてキーイング操作は可能ですが、回路的におかしいので、定数を入れ替えました。通常はベース抵抗よりコレクタ抵抗が小さく、わずかなベース電流で大きなコレクタ電流を制御します。現在のままなら、ダーリントン接続は不要です。
5年使用したGHDキーのパドルの接点がチャタリングを起こすようになり、このチャタリングによるノイズがキークリックとして耳障りになってきましたので、ダッシュとドットの端子に3.3KΩ(R9,10)を追加しました。たったこれだけでノイズは皆無になりました。
配線図の中にR8 360Kというのがありますが、これはチップタイプの330Kが手持ちになかった為の代用です。AXIタイプの330Kで動作確認し、OKでしたが、実装時、サイズが大きくなりますので、あえてチップ抵抗にしました。
QRPトランシーバーは12V仕様ですから、このエレキーも12Vラインへ直接つないでいます。 電池の電圧が下がるとスピードはダウンしますが、12Vから、いきなり6Vに変更して、スピードが落ちたと気付く程度の差しかありません。通常の電池交換時(約8Vくらい)までなら、スピードの変化は気が付かないかも知れません。
エレキー回路内蔵のトランシーバーが出来上がりました。最初、5Wの出力時、アンテナ回路からこのC-MOS回路へのRF回り込みを気にしましたが、写真のように実装しても誤動作はありません。
トランシーバーの改造が完了しましたので、手作りパドルを入れるケースを100円ショップで調達し、いつでも移動にでかけられるよう準備万端整いました。
サイドトーン回路追加に続く。
マイコン開発の勉強をする為に、このエレキーと全く同一機能のエレキーをPICマイコンで作りました。
詳細はエレキー回路の自作(PIC12F675)を参照して下さい。