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2023年4月 5日 (水)

屋外設置用ATUの組み立て

<マルチバンドアンテナシステム2>ATU 自作 ループアンテナ 

ATU本体はなんとか完成しましたので、これを屋外に設置する為に、防水加工したBOXに収納し、アンテナマストに括り付けられるようにします。

防水BOXの加工を始める前に、強制バランの作成です。このバランはATUとアンテナの間に挿入する為、インピーダンスは50Ω標準にはならないのですが、まともに不平衡ー平衡変換ができているかを簡単に調べる為に、50Ω/50Ωのバランとして作り、後は、その時のアンテナのインピーダンスに任せるという事にします。 ステップダウンの目標インピーダンスを22Ωにしたのは、過去実際に作ったアンテナで実測値が10Ω以下になった事はなく、平均的に15~35Ωで、1.8MHz用でも、最低12Ω、平均25Ωだった事によります。 この値は、シュミレーションと、実態は異なるみたいです。

強制バランは、FT-140 #43のコアを使い。負荷抵抗が50Ωと22Ωを切り替えられるようにしたい為、以前インピーダンスステップダウンの検討をした4層並列接続のUN-UNをベースにUN-BLNを作成する事にしました。 今回はAWG26のビニール電線が手元になく、やむなく、LANケーブルの中に有るAWG24の電線を使ったのですが、線が固くコアに密着しません。 結果的に1:1のバランでも7MHzでSWR3を超えてしまい、うまくいきませんでした。 そこで、再現性がよさそうなバランの記事を見つけ、最初に1mmのUEWで製作しましたが、これも線がコアに密着せず、前述のAWG24ワイヤーと同じような結果となり失敗に終わりました。

そこで、最大パワーが少し落ちるかもしれませんが、0.6mmのUEWで作り直したところ、我慢できるレベルまで改善しましたので、最終的にこのバランで進行する事にします。

 

バランの接続は下のようになります。

Balan_schema

左下が巻線加工完了状態。ワイヤーの接続部分は半田が裸状態ですので、これとコアが接触した時の絶縁が心配でしたので、紙製のマスキングテープをコアに巻いた後、ワイヤーを巻いてあります。 紙を選んだのは、半田付け作業中に溶けてしまわないように配慮したものです。そして、右下のように丸いタッパーの中に収納し、後々、ワイヤーがばらけないようにしました。

Blan_0

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この完成したバランをネットワークアナライザでSWRを測定してみました。 左下が、2:2の特性です。 青色のカーブが補正コンデンサなし、赤色が50MHzで補正コンデンサを挿入したものです。 ただし、補正コンデンサを入れても、50MHzで1.7程度までしか改善せず、逆に21MHzが2を超えてしまいます。 挿入する位置がATUとアンテナの間ですから、補正コンデンサなしにしておき、浮遊インダクタンス分はATUで補正した方がよさそうです。 右下のグラフは、3:2のステップダウンバランですが、補正コンデンサなしの状態です。 以前の検討で、ステップダウンのトランスだけでも難しいところで、バラン形式の場合、もっと難しいようです。 使うアンテナのインピーダンスが28MHzで20数オームですから、28MHzまでステップダウンバランを使いたいのですが、 SWR3.5くらいを示しています。 このステップダウンバランが実際に使えるものかは、アンテナ建設が完了してから判断します。

Blan11

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1:1であろうが、ステップダウンであろうが、うまくいかない時は、以前、プリセットMTUで使った、ソーターバランに変更しますが、このバーアンテナ3本を束にしたソーターバランは結構大きく、実装が難しい為、まずは強制バランでトライするものです。

 

これらの部品を収納する為に防水BOXを手配しました。 内外電気のプラボックスという商品で、品番がPNB283013XL 外形が301x280x130です。 それにステンレスの外部端子や、リレーを取り付け、最終的にはマストに括り付けますが、今回は、全機能部品を内蔵させ、机上でのシュミレーションを行うところまで実行します。

Nbatucomp1

Nbatucomp3

手配したBOXは防水等級が有りませんが、従来のコンテナBOXも防水等級の設定は無く、10年以上問題無く動作しましたので、多分問題ないと判断しました。

この組み立て状態で実働テストをすると、2Wくらいの通過電力でマイコンが誤動作します。箱入れする前は60WまではOKだったのにと焦ります。 原因はBOXの中に追加した5個のリレーのラインを通って、マイコンに高周波が流入しているもので、このリレー用のコネクタを外して、シールドBOXの外に置くと、問題有りません。 対策は、フェライトビーズとコンデンサによるフィルターと、コモンモード対策としてのシールドBOX内へのコモンモード対策コネクターを設ける事とリレーワイヤーへ、フェライトコアの追加です。 左下が、シールドしたマイコンBOXの周辺のフェライトコアで、右下がマイコンBOXの中のアクセスコネクター追加状態です。写真では良く見えませんが、フェライトビーズの後に接続されるコンデンサはBOXのシャーシに直接落とす事により、アクセスコネクタとして動作します。 この状態で連続出力60W、SSBで100Wpep出力でも誤動作は有りませんでした。

Nbatu04

Nbatu03

一応この状態で、1.8MHzから24MHzまで10,25,50,100,500Ωのダミー抵抗にSWR1.5以下で整合しています。 28MHzは10Ωだけはどうしても整合出来ず、25,50,100,500ΩがSWR1.5以下に整合しました。 50MHzは10Ωから500Ωまで一応は整合出来るのですが、ATUの通過損失が極端に大きくなります。 この原因は、ATUのLやCが大きい場合、負荷の状態に関係なく、整合する定数を選んでしまう事のようです。 この状態に陥らない為に、27MHz以上は周波数帯ごとに、最大LとCを制限し、LCの可変ステップを通常の8倍から、4倍、2倍と変更する事にしました。

実際のアンテナは抵抗以外にリアクタンスが含まれますので、整合しやすい時もあれば、しにくい場合もあります。 その場合、バランや追加のコイルやコンデンサを見直す事にします。

 

このAUTを作る上で、今回、送信せずとも、指定した周波数のプリセット条件を呼び出す機能を追加しましたが、その動作仕様の詳細は、以下のようにしました。 

・一度も整合動作をした事の無いバンドの場合、プリセットコール要求をOFFにして、キャリアを出力し、チューニング開始させます。

・すでに整合済みか、整合済みかが不明な周波数だが、少なくとも1回は整合した事のあるバンドの場合、プリセットコール要求をON(白色LED点灯)にして、キャリアを出さずに、コントローラーから周波数のみ指定します。 

・もし、整合済みの周波数なら、青LEDが点灯し、いきなり送信可能となります。 この送信がSSBの場合でも、SWRは表示されますが、FWDとREVの電圧検出に時間のずれがある為、正確な表示にはなりません。 

・青LEDが点灯しない場合、ATUは一度整合した周波数のデータを読み出し、リレーの設定だけは済ませておりますので、キャリアを出して、チューニング開始します。チューニング中は約0.3秒間隔で緑色のLEDが点滅し、現在のSWRを表示します。 

・SWRが6以下になったら、SWRを連続して表示し、SWR1.15以下で停止します。 もし、1.15が不可の場合、1.5以下で停止します。 さらに不可の場合、1.8以下で停止しますが、今までの実験では1.5以下に収まっています。 

・SWRのディップポイントを探し始めるのは、SWR6以下になった時からで、SWR6以下を見つけたらかなりの頻度で、1.5以下まで収束します。 SWR1.8 以下に整合出来なかった場合、SWR1.8以上を表示したまま、整合成功の青色LEDが点灯せずに停止しますが、この状態で、インピーダンス変換トランスの切り替えや、インダクターやキャパシターの設定を変更して、再度TUNEを開始すると、SWR1.8以下に整合出来る事があります。 今までのテストでも、この方法でSWR1.5以下に出来ました。 また、SWR1.5から1.8以上の状態でも、再度TUNE動作をすると、SWR1.15以下になる事もあります。

25mのコントロール用ケーブルを使った実験も行いました、特に異常は有りませんでした。

このコントローラーのTUNEスィッチのチャタリングと思われる現象で、TUNE開始のプッシュSWの感触に問題が付きまとっていました。 とにかく、プッシュ操作にATUの動作が思うように追従しないのです。 ずうっとチャタリング対策のみを追求してきましたが、思うように改善しません。 インターネットでチャタリング対策を見つけては改善し、もうこれ以上対策のしようが無いところまで実施しましたが、かなり改善はしたものの、10回の操作で3回は無視されるという状況でした。 デジタルオシロをマイコンの入力端子に接続して、波形をモニターしても、正常な時と異常時の波形の差異が判りませんでした。 2週間くらい悩んだ末、思い出したのが、タクトSWによる、i/oのラッチアップです。 そのように意識してデジタルオシロの画面を見ると、約0.5Vくらいですが、プッシュONの時、入力端子の電圧が一瞬マイナスに振れます。 よおく観察すると、このマイナス電圧が0.5Vから0.6Vくらいマイナス方向にバラツキ、マイナス0.6V付近になった時、誤動作を起こす事がわかりました。 ここまで判ると、対策は簡単です。プッシュSWは現在ゼロΩでGNDへ落ちるようになっていましたが、このゼロΩを220Ωにしたところ、誤動作は完全になくなりました。 

コントローラー側にも沢山のプッシュSWがありますが、こちらは、全てダイオードを介してGNDへ落すようになっているので、ダイオードの内部抵抗の為、問題にならなかったようです。

 

次は、実際にアンテナを建設し、評価を行いますが、アンテナが建つのは5月連休になりそうです。

MAINユニットの配線図 NB-ATU_nain2.pdfをダウンロード

コントローラーの配線図 NB-ATU_contoroller2.pdfをダウンロード

MAINユニットのマイコン NB-ATU-main_2.cをダウンロード

コントローラーのマイコン NB-ATU-controller_2.cをダウンロード

周波数リスト FREQ_Span.hをダウンロード

       FREQ_Center.hをダウンロード

Nbatuconttollorcmp

  

アンテナ建設へ続く

 

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