2012年11月30日 (金)

FT-450 CWモニターのキークリック音

<カテゴリ:FT-450>

CWモニター音のキークリック音の改善の話です。

Img_0868t_2私のFT-450はもっぱら6m専用機として使用されており、ヘンテナとの組み合わせで、すでにDXCCの19エンティティーもワークしておりますが、そのほとんどはCW QSOです。 以前、ヘッドフォーン音量と音質がおかしく、モニターのキークリック音が大きいと紹介しましたが、その修復後でもCWのモニター音のクリック音は、メイン機のTS-930やサブ機のTS-850に比べて、比較できないほどのレベルでした。価格の差もあり、諦めていましたが、偶然、このキークリック音を改善するためのソフトのバージョンアップがある事を知りました。

そのページからダウンロードしたファームウェーアーをインストールすると、確かにクリック音の改善が認められます。TS-930のようにはいきませんが、十分我慢できるレベルまで改善されていると思います。

YAESUの公式WEBページから探すことは出来ませんが、YahooやGoogleの検索エンジンからなら、今でもそのページをアクセスできます。 (gooからは検索できませんでした)

「FT-450 バージョンアップ」で検索してみてください。 ”アップデート”という表題が見つかると思います。

ソフトの変更だけで改善する手段ですから、限界はありますが、バージョンアップ後、キークリックはあまり気にならなくなりました。

なお、このバージョンアップは”D”の付いていない旧モデル用ですので、くれぐれも間違いの無い様にしてください。”D”モデルの使用者に聞いたところ、すでに改善済みとのことでした。

INDEXに戻る

2012年11月29日 (木)

TS-850S ALC動作異常

<カテゴリ:TS-850>

ALCが動作しているとき、ALCレベルを示す棒グラフと、送信出力が脈打つというトラブルの対策です。

メインのTS-930Sが機構部品の破損で操作不能になり、その部品探しをしている最中なので、サブのはずのTS-850Sが現在メインで使用されております。 その中で、3.5メガのアンテナは7メガのフルサイズダイポールをMTUで強制同調させて使っている関係で、非常に帯域が狭くなっております。ベランダに置かれたMTUをいちいち調整し直すのが面倒なので、SWR1.5位いの範囲ならそのまま使っていますが、CWで送信すると、ALCレベルが周期的に揺れて、それに伴い出力も波打つというトラブルが発見されました。アンテナとの整合状態がSWR 1.2以内くらいなら異常は発生しません。

判りやすく説明すると、アンテナのマッチングがSWR1.5くらいまで悪くなっている状態で3.5メガでTUNEテストをすると、出力を上げたとき、ALCのメーターの棒グラフが最小から最大まで1秒くらいの間隔で脈打つというものです。この脈打ちの周期に同期して出力も脈打ちます。7メガでは発生しませんが、3.5メガで発生します。

故障なのか、もともとの性能なのか、不明でしたのでGoogleで「TS-850S ALC」で検索してみました。すると、いっぱい出てきました。You Tubeに動画が存在するほどの、かなり有名なトラブルみたいです。

原因はALCアンプのマイナス電源を作っているDC/DCコンバーターの不具合みたいです。新品のころは、元気良く発振していたマルチバイブレーターが、トランジスタのhFEが低下したのか、周囲の電解コンデンサが劣化したのか、なんらかの原因で発振が停止するようになったのが直接の原因のようです。

手っ取りばやく対策するには、マルチバイブレーターの正帰還量を増やしてしまえばよいことです。修理事例としてはベース抵抗を小さくする方法が多くありました。

Ts850dcdc 問題の基板の名称は「X59-1100-00」で、その中にあるR2とR3を22KΩから13KΩに変更したら直ったと有りました。この対策なら現行の22KΩにパラに抵抗を足してやれば済むことで、早速、ケースを開け、この基板を探し出し、抵抗を追加しようとしましたが、かなり奥まったところにあり、とてもそのままでは半田付けできません。やむなく、基板を引っ張りだして、コネクターを外し、基板単体にした上で、手持ちの47KΩをR2とR3にパラ付けしました。合成抵抗は15KΩとなり、13KΩにはまだ不十分ですが、基板を元通りに取り付け、3.5メガでテストしました。SWR 3でも、問題なしとなりました。

Ts850dc1_2  Ts850dc2_3

とりあえず、当面の異常現象は解決しましたが、3.5メガでSWRが悪化したときに、出力を制限するALC動作が、他のバンドのときより、きついという現象が残っています。SWRが1.5くらいのとき、最大出力は70Wくらいしか出ません。SWR1.2くらいでやっと100Wです。いくらアンテナチューナーを内蔵しているからと言っても、プロテクトのかけ過ぎです。これが正常状態なのか異常状態なのか判りませんので、暫く様子をみます。

Ts850dc3 暫く様子を見ていましたら、3.5メガでCW送信すると、時々、ALCの動きがおかしくなり始めました。どうも以前の症状が再発したようです。アンテナの負荷条件が変ったのかもしれません。ベース抵抗を小さくするという対策だけでは不完全のようです。正帰還量を増やす為ならベース・コレクタ間の2200PFを増やせばよいことですから、このコンデンサC1,C2に1000PFをパラに追加することにしました。前回の47KΩ追加と合わせれば、CR時定数はほぼ同じとなりますので、都合もよさそうです。ちょうど手元に1608サイズのチップコンデンサがありましたので、これをパラに追加しました。今度は問題なさそうです。ただし、プロテクトのかけ過ぎは直りません。

そうこうしている内に、故障中のTS-930Sが修理完了しましたので、またサブ機に逆戻りしてしまいました。プロテクトのかけ過ぎの問題は、とりあえずお蔵入りです。

プロテクトのかけ過ぎは、TS-850Sの問題では無く、アンテナ系が原因でした。詳細は、カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムの3.5MHz ALC動作異常 で紹介しています。

INDEXに戻る

2012年11月13日 (火)

クラニシ NT-636の修理

<カテゴリ:アンテナチューナー>

マニュアルのアンテナチューナーで、クラニシ製のNT-636を、クラニシが店仕舞いするとアナウンスがあってから、慌てて購入しました。約1年くらい使っていたころ、煙が出て使えなくなりました。 中を開けると、バンドスイッチのベーク板が黒ずんで焦げています。 送信中にバンドスイッチを回したために、アークが飛び、その勢いでベークが燃え出したようです。アークの飛んだ端子の部分は割れてしまい、スイッチの役目をしなくなりました。

ロータリースイッチを手配するため、インターネットで調べましたが、同じ形状のものを見つける事ができませんでしたので、寸法が明示されている「岩崎アイセック(株)」という会社のB1111Dという品番のロータリースイッチを手配しました。(すでに廃番で現在は入手不可)。 シャフトを切断して、取り付け配線をする段階になって、ロータリースイッチのストッパーの位置が変更出来ない事が判りました。 スイッチは11接点で、切り替えポジションは12ポジションです。12番目のポジションはコモン端子になっており、どの接点とも接触しない構造です。電気的には、この構造でも、NT-636に使用できますが、NT-636のオリジナルスイッチは1番目のポジションがオープン状態でどの接点にもつながりません。

Nt636

これは、オリジナルのNT-636は、1番目が、1.9MHzのAポジションに設定されいるのに対して、新規に手配したスイッチは12番目が1.9MHzのAポジションになるということです。スイッチを反時計方向に回しきったときが3.5MHzで、時計方向に回していき、50MHzを過ぎて最後のポジションが1.9MHzになります。 操作面で不自由しますが、動作はOKですので、これでやむなしです。

もし、また壊れたら、今度はこのストッパーの位置を確かめてから買うことにします。

なお、取説には、送信中にバンドスイッチを操作するときは、10Wで行うことと書いてありましたが、どのアンテナチューナーでも同じことですが、送信中にコイルのタップを切り替えるとスパークする可能性は高く、以降、タップを切り替えるときは送信しないことにしました。

NT-636の取説をダウンロード

ところで、今頃気づいたのですが、取説には「ワンタッチCAL」というつまみがあり、進行波電力と反射電力、それにSWRのキャリブレーション機能が付いたプッシュプルSW付きの可変抵抗器が説明されています。 しかし、私の現物は単純な可変抵抗器と、セパレートになったCAL切替SW式となっていました。 途中で変更した理由は判りませんが、現在のセパレート方式が直感的で判りやすいですけど。

INDEXに戻る

マッチングトランス式アンテナチューナー

<カテゴリ:アンテナチューナー>

マッチングトランスを使ったアンテナチューナーの試作記です。

フェライトコアを使った広帯域バランは主に、不平衡/平衡の変換に使われますが、インピーダンス変換用トランスとしても利用する事ができます。

これを利用してこのブログでも21MHz用短縮デルタループを紹介しています。このときのトランスは、6本の平行ワイヤーを束にして6回巻いたコイルを直列に接続したもので、そのタップ位置を選ぶ事による目標に近いインピーダンスへ変換すると同時に平衡変換しておりました。(カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムのアマチュア無線局 再開局参照)

Trans3_2

上の表はコイルが6組のときのインピーダンス変換テーブルで、50Ω不平衡を1.4Ωから1250Ωまでの平衡に変換できることを示しています。

Hentena_2 この考えを一歩進めて、すでに共振しているアンテナエレメントに1/2波長の整数倍の長さの同調フィーダーを取り付け、この根本に、このトランスを取り付けても同じ効果が得られます。キュビカルクワッドの共振周波数を調整するのにスタブを使いますが、このスタブがλ/2になったと思えばいいんです。こうすると、マッチングトランスをマストの上に置かなくても、少なくとも手の届く位置まで降ろしてくることができます。スタブの長さは1/2波長ごとに変化しますので、任意長では駄目ですが、50MHzなら3mの整数倍ですから、処理が楽です。

Img_2980 このアイデアで6mのヘンテナを作り、ベランダの手すり付近につけたマッチングトランスで広帯域の整合を実現しております。実際のスタブの長さはマッチングトランスの誘導性リアクタンスが加味されますので、その分短くしアンテナ側に容量性リアクタンスを含むようにする事により共振させます。 トランスのタップを調整して、SWRを1.0に追い込みますが、タップを切り替えるとリアクタンス成分が変化しますので、共振周波数がずれます。共振周波数がずれたら、同調フィーダーの長さを再度調整します。 このようにかなり面倒な調整が必要ですが、何よりも、全ての作業がベランダで完結するという高所恐怖症持ちにとっては非常に有り難いメリットがあります。

2014年7月追記

整合トランスのロスを測定したら、約半分がトランスでロスしている事がわかりました。現在はコイルとバリコンによるL型アンテナチューナーに変更しています。 詳細は、50MHz用 L型アンテナチューナー を参照下さい。

今までのトランスは多重巻きのコイルの数で分母と分子を構成する分数計算でしたが、スライダックトランスのように、ひとつのコイルに、いくつものタップを出して、このタップ位置でインピーダンス比を変えるオートトランス形式の高周波トランスの可能性を検討しました。

Trans2

オートトランス式12ターン巻きのインピーダンス変換テーブルです。黄色の部分は巻き数が少ない為、ロスが多いと予想し、使わないとしても3.1Ωから800Ωまで変換できます。ただし、このスタイルでは不平衡のままです。平衡変換しようと思えば、対称型のオートトランスにするか、このトランスの後にバランを付けるかで対処できます。

(対称型トランスで作った場合、このチューナー内で発生するロスも2倍になりました。結論的には、不平衡のままでインピーダンス変換した後、フロートバランで平衡に変換する方法がロス最少となりました。)

適当なダミー抵抗とアンテナアナライザーでチェックすると、ほぼ理屈通りのタップでインピーダンス整合ができました。周波数が10MHzを越えると、トランスのインダクタンスが無視できなくなりますが、それは、アンテナチューナー化したとき、アンテナの持つリアクタンスと一緒にキャンセルさせれば問題ありません。

Img_3220 オートトランスによるインピーダンス変換のメドが出ましたので、共振していないアンテナエレメントにキャパシタンスかインダクタンスを付加し、目的周波数に共振させた後、この純抵抗になったアンテナインピーダンスにマッチするようにトランスのタップを切り替えて整合させるタイプのアンテナチューナーを作ってしまいました。

Autotrans2

使用したオートトランスは5ターンのコイルを4組、平行巻きしたもので、それをシリーズに接続し、1ターンごとにタップを出したものです。従い、1ターン目のタップのすぐ隣にあるタップは6ターン目のタップとなっています。全部で19個のタップが有りますが、使っているのは9ターン目から19ターン目までの11個だけです。

コイルは最大32uH、最小0.5uH、12個のタップがあり、これをショーティングタイプのスライドスイッチで可変します。 当初、オープンタイプのスイッチで作成していましたが、ダミーアンテナを用意して、300Wくらいを加えると、コイルのタップとスライダーの間でスパークが起こりましたので、ショーティングに変更しました。100Wくらいなら、オープンスイッチでも実際のアンテナで実用できました。

バリコンは最大1200PF、最小20PFのスライド式ポリバリコンで、計算上の耐圧はAC10KVです。

操作は簡単です。トランスは50Ωに仮設定したまま、バリコンかコイルを調整して、アンテナを共振させます。共振したかどうかはSWR値をディップさせる事で知ることができます。共振したら、トランスのタップを順次切り替えて、SWR最小のポジションを選択します。タップを切り替えると、トランスのインダクタンス分が変動するので、共振周波数がずれますから、バリコンで微調整します。トランスのインピーダンス可変ステップは階段的ですが、SWRはすんなりと1.0付近まで、いとも簡単にスコンと気持ち良く落す事ができます。このチューナーの特徴は、LCタイプのチューナーより、帯域が広いということ。LCで整合回路を構成すると、アンテナの共振以外にインピーダンス整合回路も周波数特性を持ちます。従い、アンテナ自身がもつ帯域より通常狭くなりますが、このタイプは帯域の縮小がほとんどありません。ベランダから突き出した釣竿や、現用アンテナに接続して、100W運用で全く問題なく使えました。

チューナー内部で発生するロスは、7MHz用垂直ダイポールを3.5MHzに同調させた時、πマッチのMTUと同等か、それよりいくらか良いレベルでした。 クラニシのNT-636(Tマッチ)よりはロスが少ないようです。ロスの原因は誘導性リアクタンスの連続可変にバリコンを使っている事です。連続可変のインダクターが実現できれば、Lタイプに近い効率が期待できるかも知れません。 しかし、何回か使っている内に、整合状態でのトランスのタップ位置が、予想されるインピーダンスと大きくかけ離れる場合がありました。 特に、周波数が高くなったり、アンテナが50Ωより低いインピーダンスになった場合です。 このような状態では、計算通りのインピーダンス変換をしていないようです。 このチューナーはATUを作る為の基礎検討の為試作したものでしたが、トランスの特性がネックとなり検討はストップしてしまいました。

マッチングトランスだけのその後の検討結果はインピーダンス変換トランスを参照下さい。

また、連続可変可能なATUの試作と実使用検討は、後日、T型整合回路を使用して実験する事にしました。 こちらを参照下さい。

INDEXに戻る

続きを読む »

Z-Match(Zマッチ)アンテナチューナー

<カテゴリ:アンテナチューナー>

リレーを使わないオートアンテナチューナーを模索しておりましたら、バンド切り替えなしで1.8MHzから28MHzまでカバーできるアンテナチューナーの存在を知りました。 バンドSWが無いのなら、少なくともメカニカルSWが不要ということで、バリコンをモーターで回転させるだけで、HFを全てカバーするオートアンテナチューナーが実現できます。 「Z-Match」と呼ばれるこのチューナーについての実験記です。

「Z-Match」をGoogleで検索すると、いっぱい出てきました。

・1組のコイルで1.8MHzから28MHzまで、バンドSW無しでカバー。

・バリコンに2連タイプが必要になるけど、耐圧は半分で良い。

・構造が簡単で再現性が良い。

など、世界中のハムが実際に製作して使っているレポートが存在します。さすがに、1.8MHzはローディングコイルを追加する構造がほとんどでしたが、ここはリレーを1個追加してやれば済むことで、AH-4みたいなリレー式ATUでは実現出来ない、無段階調整が可能なATUの可能性を秘めています。 そんなに良いチューナーなら、すぐにでも作ってみようと実験を始めました。

Zmtch1 左がZマッチチューナーの基本回路です。1次コイルと2次コイルで構成される極普通の高周波コイルの1次側に500PFくらいの2連バリコンと300PFくらいのシングルバリコンを接続し、シングルバリコンから送信信号を送り2次コイルにアンテナをつなげばOKというしろものです。1次コイルの巻き数も、10数ターンと、逆に簡単すぎて驚く構造です。

本当に、ちゃんと整合するのか?作ってみることにしました。いい加減に作ったのにちゃんと1.8から28メガまで整合します。2連バリコンが曲者かもと、これをシングルバリコンに交換してみてもちゃんと動作します。2次コイルと1次コイルの結合構造が難しそうなので、2次コイルでなく、1次コイルにタップを立ててそこからアンテナに接続しても問題なし。

Z_mutch1 Z_mutch

実験中のZマッチアンテナチューナー

一応、動作確認は終えたので、かなりきつい負荷条件で、チューナー内にどれだけロスが発生するか調べてみました。送信機から1Wくらいの出力を加え、抵抗とリアクタンスを直列に接続したダミーアンテナをチューナーに接続しSWRが1.0になる様に調整します。次にチューナーの入力(50Ω)端でのRF電圧をオシロで測ります。また、ダミーアンテナの抵抗部分の両端電圧を測り、それぞれ電力計算したのち入力電力とダミー抵抗電力の差がチューナー内部でロスした電力とします。その結果を次の表(ロス比較 1)に示します。Zマッチのデータは実測値です。その他はシュミレーターによる計算値です。シュミレーターの計算と実際の数値はほぼ一致している事は別の検討で確認済みです。 Zマッチはチューナー内のロスが非常に大きい事が判りました。7MHzでもインピダンスが4.7Ωのアンテナの場合、45%がチューナーの中で消費されています。1.8MHzで4.7-j800の負荷の場合、実際の測定では、4.7Ω両端のRF電圧を見る事ができませんでした。さらにこの状態で、ダミーアンテナを取り去っても、SWRは1.0を示したままでした。これは、50Ωで捕らえた送信電力をきれいにチューナーの中で消費し、空中へは一切放射しません。反射電力も一切返しませんというダミー抵抗と同じです。 別の見かたをすれば、どのような負荷に対しても、見かけ上、整合できたように調整できると言うことですから、SWR計が1.0を指しているのに、電波は一切放射されないという事が起こりかねません。

色々と実験の結果、7MHz以上のバンドで使う場合、Tマッチ同様、使いやすさを天秤にかけたらコンパクトで簡単に使えるチューナーと思いますが、今回は160mや80mバンドがターゲットでしたので、採用は諦めました。

以下のZ-Matchのデータは、1次側14ターン、2次側4ターンのコイルで1次、2次間は絶縁状態で測定したもので、1.8MHzの場合、ローディングコイルを挿入しましたがインダクタンスがいくらだったのかデータが有りません。

Zmtch2

上の表の「ロス比較 2」は私が良く使う、クラニシのNT-636を実測した時のロス値です。クラニシ以外の数値はシュミレーションした値です。NT-636はTマッチ式ですから、シュミレーションで設定したコイルのQ=100より、NT-636のコイルのQは良いみたいです。 3.5MHzで2.5-j529というアンテナは接地抵抗が良好な 全長7mの垂直ホイップに相当します。カバーするインピーダンスの広いアンテナチューナーは総じてロスが多いのですね。πマッチは整合しませんでしたが、パイマッチの一方のバリコンを取り去るとLマッチになりますので、パイマッチ回路が持つ、浮遊容量を減らす必要がありそうです。

しかしながら、このようにデータを取り始めると、アンテナチューナーは使わずに済むものならそれに越した事は無いという事が良くわかります。また、例え、使うにしても、Lマッチで使う連続可変インダクタが欲しくなります。

2024年8月追記

その後、160mのアンテナをいくつか実験しましたが、この比較表で確認したアンテナのインピーダンスの抵抗分は全てMMANAでの計算値であり、実際のアンテナではありえない数値である事が判りました。 1.8MHzで実際に実測したアンテナインピーダンスの抵抗値の最小値は12.5Ωでした。 原因はローディングコイルによる高周波抵抗の増加と、接地抵抗はゼロにはならない事のようです。 この抵抗値は他のOMもWEB上で15Ω以下になる事はないと述べていますので、実際のアンテナでは比較表のような結果にはならない事を追記して置きます。 

Z-Matchのアンテナチューナーのもう一つの課題が高耐圧の2連バリコンの入手ですが、最近、3Dプリンターの市場が広がり、これに使われる、ステッピングモーターやタイミングベルト、タイミングプーリーが簡単に入手出来るようになりました。 これらを利用して、2個のバリコンをタイミングベルトをかけて同期して動かす事ができそうです。 このヒントをベースにコメットのMTUに使われていた高耐圧のバリコンを4個入手し、連続可変のインダクターが不要のこのZ-MatchアンテナチューナーのATU化に再度挑戦すべくトライ中です。

INDEXに戻る

プリセット式MTU 4

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

プリセット式MTUをフルに使用して1年以上経過しました。この間に行われたDX、国内コンテストに参加して、それなりの成果が得られていますので、シンプル構成のアンテナシステムにしては、上出来と思っています。

Mtu111年以上も経過すると、色々とトラブルも発生します。 24MHzに使われているポリバリコンのPPシートが熔けて、アルミ板にくっついている事があります。運用上は特に問題はないのですが、何が原因か判りません。中国製A4サイズ20枚で100円のPPシートの品質なのか?

21MHzをアナライザーでSWR1.0に調整した後、実際に100Wで送信すると、SWRが2を超える時があります。この状態で、再度アナライザーでチェックすると、SWR2を超えています。絶縁破壊が起こった時の症状です。21MHzのPVCのPPシートを見ると、ごみがついたように汚くなっています。分解して調べると、ごみではなく、表面がすりガラス状に解けているものでした。 やはり、PPシートの品質の問題みたいです。

ホームセンターからブランド名が通った赤色のPPシートを買ってきてハイバンド側全部を交換して様子を見ることにしました。  途中で赤色のPPシートを使い切りましたので、趣きを変える為、黄色のPPシートに変えてみました。絶縁性能は赤も黄色も差はありませんが、黄色のPPシートは透明度が悪く、ポリバリコンのローターの羽をそろえるのに苦労します。 黄色を使い終わったら、また赤色に戻す予定です。  最初の中国製PPシートより、20倍くらいの価格のこのPPシート(アクリサンデー PPクラフトシート PF-12、三菱レーヨン製)は、とりあえず問題なしで使えそうです。

 ポリバリコンはローターとステーターの隙間管理はラフで良いのですが、一度絶縁破壊が起こると、絶縁材を交換するしか対応方法はありません。エアバリコンのように、絶縁破壊が起こっても、パワーを少し下げればすぐに使える便利さは有りません。


3.5MHzをTタイプで作成して、耐圧問題でπに変更しましたが、この時の絶縁破壊も安物のPPシートが原因だったのかも知れません。ただし、チューナー内部ロスはT型が大ですので、π型にしたのは正解でした。

Mtu12m_2 各MTUのコイルに使われているボビンは黒色のABS製です。黒色はカーボンで着色されているから、高周波では損失が増えそうだという話を聞き、透明アクリル製のボビンに交換してみることにしました。 たちまち、気が付くような効果は見られませんが、少し時間をかけて観察することにします。

アンテナのメンテナンスの為に何度も倒したり、立てたりする内に、ループと垂直ダイポールの支柱を兼用している鉄製のパイプが弓なりに曲がってしまい、見苦しくなったことと、この曲がりの癖の為にやや強い風でアンテナの向きが変ってしまうという問題が出てきました。アンテナチューナーの課題は収束しつつありますので、唯一不満のアンテナの帯域幅を改善したく、全面的に立て替えることにしました。と言っても、垂直ダイポールとワンエレループの構造は変えません。

Newskydoor 支柱の材料を10m長のグラスファイバー製ポールに変更した上で、細での釣竿を継ぎ足して11m長に変えることと、ループの横幅を2mから3mに変更して帯域幅を現行の1.5倍以上に広げることです。 横幅を広げた結果、縦横比が1.7くらいにしかなりませんので、もうスカイドアとは言えないかも知れませんね。 また、ローバンド用の垂直ダイポールは、線材を3.5mmSQのKIV線に変更し、上部エレメントの最高部は18mまで上げ、下部エレメントは、最下部で1mを折り返しています。 

当初、ループの線材も3.5SQのKIV線で作ったのですが、重くて、釣竿がピンと支えてくれません。やむなく、ループだけは2mmのアルミ線としました。

この変更工事が完了した時点で、MTUは全部再調整となりましたが、初期の頃あった経時変化も収まっていましたので、バリコンの角度調整だけで20mバンド以外は整合できました。 20mバンドは、リアクタンスの変化が大きかった為、コイルを含めて変更となりました。

プリセット式MTUが成功する前提として、同調フィーダー(又の名をハシゴフィーダー)の存在が欠かせません。ひとつのエレメントをマルチバンドで使用するとき、同調フィーダーというのは、とても便利なものであることが判りましたが、今までの試行錯誤の経過から、同調フィーダーはあくまでもアンテナの一部であると言う事を肝に命じる事になりました。
同調フィーダーは自由空間に置かないといけない。金属材料と平行したり、鴨居をくぐったり、天井裏を走ったり、ベランダの柵に束ねたりしたら駄目なんです。

同調フィーダーのセパレーターとして使っているトリカルネットは、4年でボロボロになりました。日光が当たらない所は問題ないので、ボロボロになった部分のみ取り替えました。 黒色のネットなら寿命が長いそうですが、残念ながら、当地のホームセンターには白色しか在庫がなく、取り寄せた場合、1巻(何mは不明)全部購入になるとの事で、今後4年に一度くらいは、定期的に交換するしかないようです。


 

3.5MHz ALC動作異常(RFフィードバック)に続く。

INDEXに戻る

続きを読む »

TS-930 腐ったスルーホール(表示トラブル)

<カテゴリ:TS-930>

TS-930の故障で、その頻度がかなり多いのが、デジタル基板です。 VFDの表示やキー操作の異常が発生したら、大抵の原因は、このデジタル基板にあります。しかも、その異常の原因は両面基板の裏表の銅箔パターンを接続するスルーホールと言われる、両面をつなぐジャンパーみたいのものですが、これが、経時変化と熱で時々断線するというものです。現在のスルーホール技術はこのような問題は解決済みですが、このモデルが発売された時代での民生機用両面基板のスルーホール技術は未熟で、10年もすると、あっちこっちで問題が多発しました。

VFD(蛍光表示管)の表示がおかしいとか、操作に同期して異常な音がするとか、全く表示しないとか、キー操作して異常が認められる様な場合、真っ先に、このデジタル基板を疑った方が、修理が早く済むというものです。しかも、個々の部品不良は一切なく、基板を再ハンダするだけで直ってしまいます。

この、スルーホールが原因による故障は、世界中の修理者の間では既知であり、KENWOODは、どこのスルーホールが非道通になったら、どんな症状が発生すると、書かれたサービス資料を配布していました。

「TS-930S Digital Unit through-plated hole defects and their symptoms」で検索すると見つかるでしょう。

Ts930digitalpcb ところが、私が修理した3件のVFD表示異常は、いずれも、このリストに記載されていない箇所のスルーホールが原因でした。特に、交信中に発生する異常は困りもので、この異常の為に、交信が中断し、尻切れQSOで終わったのも数回。

修理しようと、電源を入れたり切ったりしている内に症状が出なくなり、万事休す。

とうとう我慢できなくなり、サービスマニュアルの基板図から調べつくした、全てのスルーホールをジャンパー線でショートしてやりました。     

この対策をして、すでに2年経過してますが、表示に関する故障は皆無になりました。  このブログで、パワーアンプのスルーホール対策を紹介していますが、それより2年前の出来事です。

4年目で問題が再発しました。ただし、今回はスルーホールではなく、コネクターの接触不良でした。デジタル基板につながるコネクターを全て抜き、オス、メス両方を接点復活剤で清掃しました。 すでに半年経過しましたが安定しています。

930th2 2013年4月に、電源ONして5分もしない内に表示が出なくなるというTS-930Sが持ち込まれました。調べると、ON後、2分くらいで表示が全部消えます。36.1MHzは異常なし。ダイヤルを回すと、表示が復帰します。この症状はKENWOODのサービス資料の中に出てきます。原因はスルーホール不良です。症状から問題のスルーホールはすぐに特定でき、対策完了しましたが、このまま持ち主に返しても、また別の問題で舞い戻ってくる事は、目に見えていますので、今回も全スルーホールをショートしてやりました。多分これで、スルーホールが原因の故障は皆無になることでしょう。

デジタル基板の不良でもVFDが全く表示しないという症状が発生しますが、この一切VFD表示せずの原因で最も多いのはPLLアンロックです。さらにPLLアンロックの原因で一番多いのが36.1MHzの局発停止です。

Ts930back2 特に、長い間、放置してあったTS-930を通電したときレベルメーターのバックライトはつくけど、VFDに何も表示されない。当然受信も出来ないという症状に遭遇しましたら、まず最初にこの局発停止を疑って下さい。36.1MHzのキャリアが発振停止しているかいないかは、オシロがあったらすぐに判ります。無い場合でもセットのフロントパネルを手前にして裏返したら、左手前に配置されているL77のコアを割らないようにしてグリグリと回してみてください。表示が戻り受信できるようになる事が多いですよ。 コアを割らない為に、私は、いつもツマヨウジをマイナスドライバーの先端の形状になるようにナイフで削ってから使用しています。

INDEXに戻る

2012年10月29日 (月)

ケンプロ KR-400RCの修理

<カテゴリ:ローテーター>

現用中のアンテナは、ブロードな8の字の指向性を持ったスカイドアとかヘンテナであり、アンテナは必要に応じて、手で回転させていましたが、夜中に方向を変えたいときなど不便でしたので、頂き物のローテーターでこれを回転させることにしました。 

Krp400c  ローテーターは KR-400RCというケンプロ製のモデルですが、300度付近を向くように操作すると、コントローラーの針がストッパー位置まで移動し、ロックしてしまうという症状がありました。270度くらいまで戻してやると正常に動作します。 原因を調べると、ローテーター側に内臓されている可変抵抗器がガリオームになっており、300度付近の回転角度では、抵抗がときどき無限大になります。抵抗が無限大になると、コントローラーは回転角不足と判断して、ストッパー位置まで指針が回転します。しかし、指針はそれ以上回りませんので、モーターがロックされてしまいます。 たまにガリオームが無い位置に止まると、正常な位置で指針が止まるという症状です。

Krp400v ローテーターから取り外した可変抵抗器の捺印からメーカーを割り出し、インターネットで調べても、通販はしていないようです。仕方なく、似たような形状をした物を探し出し、注文しました。

物が届いて取り付けようとするとシャフトが短くてギアが止められません。再度シャフトの長いものを探して注文。今度はうまくいきました。結局送料を含めると4倍以上の高い部品になってしまいました。

コントロールケーブルは20mくらい必要です。手元に5mくらいのLANケーブルが有り、AWG24のより線が8本入っています。5m長のDC抵抗を実測し、20mになっても0.1Ω以下に収まりそうです。 3本の動力ラインはこのより線を2本パラにして6本使用し、2本の制御線は各1本でまかなえる事がわかりましたので、8本の芯線の構成はちょうど具合がよさそうです。 近くのホームセンターでも買えますが、その半額で売り出されている20mのLANケーブルをインターネットで見つけこれを注文しました。ケーブルが届いてコネクター加工を始めると、このケーブル、いやに細く、かつ導体に半田が付きません。どうやらアルミ線らしい。案の定、コントローラーとローテーターを接続しても、回転せず。電圧降下が大きくてモーター電圧が不足し、回転しないという症状です。 ケーブルの表面にはAWG24と印刷してあります。うそだろう! AWG規格は導体の断面積を決めるもので、AWG24とは、0.2SQ相当で、直径約0.5mmの銅線の断面積に相当します。このケーブルは直径0.2mmくらいのアルミ線が4本(0.125SQ)。 結局、このケーブルもローテーター用として販売されている正規品を再手配することに。

しばらく使用していましたら、今度はコントローラー側の可変抵抗器がガリオームになってしまいました。症状は、コントローラーの指針がいったりきたりして、なかなか止まらないといものです。 結局、コントローラー内の可変抵抗器も新品に交換しました。

KR-400RCの配線図をダウンロード

ローテーターの修理という技術的な部分は実に簡単なことですが、ローテーターに限らず、トランシーバーの修理の為の部品手配も、失敗は数多く、これが、修理完了までの期間を長引かせると共に、宅配業者の上お得意様になってしまいました。

地方に住んでいるのでしょうが無いですかね。

2014年9月

ローテーターを半時計方向に回すと、コントローラーの指針の動きが、シャクトリ状態で動いていました。 しかし、最近この現象がひどくなりましたので、改善できないものかとトライしました。  現物と配線図を見ながら考察していると、この回路はローテーターとコントローラー間のケーブル本数を1本ケチッタ為に、回路的にかなり無理をしている事が判りました。 ローテーター側の可変抵抗器を2本の線でしか結んでいない為、抵抗値が変化すると、当然電流も変化し、これがブリッジのバランスをくずしてしまいます。 この対策の為、Q5,Q6を使い、ブリッジ内の電流に負帰還をかけ、抵抗値が変わってもバランスが崩れないようにしています。 ところが、詳細を調べると、このQ6が可変抵抗の値に関係なく、いつも完全ONの状態で、この為、Q5はいつも完全OFF状態にあり、R16の電流は常に0となっていました。

これは、この負帰還回路が動作していない事にほかなりません。 何か間違いがありそうと、抵抗の値をチェックすると、R19が4.7Kとなっていました。配線図では33Kですから7倍近い差があります。 試に、手元にあった36Kに交換しましたら、シャクトリ現象がかなり改善されました。 この抵抗を56Kにすると、指針が半時計方向に回りだし、止まらなくなります。 47Kにすると、正常動作します。 相手がトランジスターですので、温度変化による影響などを考慮し、33KΩくらいが一番よさそうですが、あいにく手持ちが有りませんので36Kとしました。 

これらの検討中に配線図と実際の抵抗値がかなり違っている箇所の有る事もわかりました。 R1,R2は配線図は220Ωですが実際は120Ωです。配線図の通り220Ωに変更すると、温度が下がると指針モーターが起動しなくなりますので、これはまた、120Ωに戻しました。

結果的にはR19の抵抗が不適切だったのが原因ですが、元から4.7Kだったのか、誰かが修理したとき間違ったのか不明のままです。

2017年8月

とうとう、アンテナの方向とアジマスメーターの指示が一致しなくなりました。 このままでは不便ですので、回路を丸ごと入れ替える事にしました。 改造内容はこちらを参照下さい。

INDEXに戻る

2012年10月21日 (日)

7MHz用逆Vアンテナ(国内用)

<カテゴリ:アンテナ>

7メガ用逆Vアンテナと垂直ダイポールを比較しました。使用する目的により優越が異なります。両方設置したほうが良いという話です。

高さが十分に取れない為、下側のエレメントは折り返して設置した、かなりいい加減な7MHz用垂直ダイポールですが、給電方式を最適化するにつれ、打ち上げ角が下がり、国内QSOが非常にやりにくいアンテナになっていきました。と言って、すでに、7MHzで82、10MHzで100エンティティーもwork済みのこのアンテナを、元の状態に戻す気はありませんので、国内QSO用に打ち上げ角の高いアンテナが欲しくなってきました。 私の家は狭い敷地で7メガ用の水平ダイポールすら張れないところです。 そんな環境で給電点の高さが屋根より低く、家の壁に近接平行した逆Vアンテナなら、常設しない限り設置できそうです。MMANAでシュミレーションしながら、寸法を決め、国内コンテストのときだけ仮設する逆Vアンテナを使ってみました。

給電点の高さは7m。左右のエレメントは一方が8m、もう片方が12mのオフセット給電の逆Vで、両端は高さ1.8mくらいまで下ろしています。 長さがラフなのは、給電点のすぐ近くにMTUがあるので、適当で良いのです。

Mmanavdp_2 Mmanainv_2

左が垂直ダイポール、右は逆Vの垂直面指向性シュミレーションデータです。

MMANAによるシュミレーションでは、 真上方向のゲインは、 垂直ダイポールが-12.5dBiで有るのに対して、逆Vは+5.3dBiとなりその差は18dB近くも有ります。 両方のアンテナをスイッチで切り替え比較すると、4エリアや5エリアの局はTS-850のSメーターで最大で20dBくらいの差がついて逆Vが有利です。1エリアはどちらに切り替えてもあまり変らず、7エリア以遠は垂直ダイポールが有利というシュミレーション通りの結果が得られます。ただし、近隣以遠の局では、コンディションにより状態が逆転することもあります。  また、逆Vによる受信信号は、垂直ダイポールよりS/Nが良く、昔から、垂直系はノイズが多いと言われる通りに聞こえます。  これは、打ち上げ角に関係しているのでしょう。   昔、衛星通信を行ったとき、衛星が天頂になるほど、ノイズが減ったのを思い出しました。

送信もこの受信の差と同等の差があるようで、パイルを受けている4エリアや5エリアの局を垂直ダイポールで呼ぶと、パイルも終わってCQを出していた事もありましたが、逆Vで呼ぶと、一発で応答があり、その差は歴然です。

Ex40l

このフルサイズの逆Vのインピーダンス整合の為、TタイプのMTUを使っていますが、Tタイプの一方のバリコンは890PFの固定コンデンサにして、限りなくL型に近くなるようにしました。TLWによるシュミレーションではMTU内のロスが1%以下に収まっています。

アンテナは通常、いかに打ち上げ角を下げるかがひとつのポイントになりますが、事、国内QSOに限れば、いかに打ち上げ角を高くして、かつゲインを高くするかが勝負となります。アンテナは高ければ高いほど良いという説は国内QSOには通用しませんでした。MMANAでシュミレーションすると、地上高をどんどん低くするに従い、真上へのゲインはどんどん上がっていきます。地上高1mでゲインは10dBiを越えます。しかし、同時にインピーダンスもどんどん下がっていきます。インピーダンスが下がると、整合回路や、エレメント自身によるロスも増えますので、どこかに最適地上高がありそうです。どうも1/8λ付近の高さが一番良さそうだというのはシュミレーションで判りましたが、実際に1/8λの高さに張ったダイポールは、それほどの効果は出してくれませんでした。(隣の空き地に臨時に仮設したもので、実験終了後撤去) 地面の電気的特性や周囲の建物などが影響してシュミレーション通りにはいかないみたいです。 こういう事が判ってくると、また、次のコンテストまでに、なにがしか改良出来ないかと、課題が出てきました。 同時に垂直系アンテナは、国内QSO向けではないという事もはっきりしました。未交信のJCCやJCGは中国、四国地方に集中しているのがアンテナの特性を物語っています。

良く、初心者向けに、マルチバンド対応GPなどの宣伝を見かけますが、少なくとも垂直に設置したGPは国内QSOには向かず、例え同じ短縮率でも、地上高の低い水平系のアンテナの方が国内QSOは楽しめそうです。小型マルチバンドGPでDX QSOも出来ますよ!と言うのは間違いで、DX QSOしか出来ませんョ、と言うのが正しいのかも知れません。 しかし、アンテナの短縮率以上に効率がダウンし、DXも聞こえないというのが実態ですが。

この逆Vは、もっぱら、国内コンテストだけに使用しておりますが、沖縄から北海道までの距離なら、これ1本でも十分ですね。 ただし、常設しない条件で、設置していますので、コンテストの始まる前に展開し、終わったら、さっさと片付けしまいます。設営に10分、撤去は15分です。

比較しました、垂直ダイポールについては、カテゴリ「マルチバンドアンテナシステム」の中で紹介しています。

コンテストに使う臨時逆Vは、7MHzだけでなく、3.5MHz用も用意しています。   このフルサイズ逆Vも、片方が12m、もう一方が27mのオフセット給電で、給電点の高さは7mしかありませんが、7MHz用垂直ダイポールを、アンテナチューナーで強制同調させた時と、臨時逆Vとの真上方向のゲイン差は、MMANAとTLWのシュミレーションによると約26dBの差があります。実際にTS-930SのSメーターで確認すると、国内の信号は30dBくらいのレベル差がついて逆Vが有利です。 しかし、逆Vでは、DX信号は全く聞こえません。 

Ex80l 

このフルサイズ逆Vにも上のようなパイ型MTUを使用しています。このMTUも限りなくL型に近づけましたので、MTUの内部ロスは1.2%以下です。

一方、7MHz用垂直ダイポールをMTUで3.5MHzに強制同調させた場合、最近、DX信号が聞こえるようになりました。そして、初めてヨーロッパとも交信できました。 他のバンド用の同軸ケーブルやMTU、ローテーターのコントロールケーブルを整理した結果、3.5MHzの打ち上げ角が下がったみたいです。 しかし、まだシュミレーション通りの打ち上げ角にならない原因がありそうです。

アンテナから垂直に引き下ろした、同軸ケーブルは地中を通ってリグにつながるというのが理想のようですね。  しかし私のアンテナは地上高8m付近を水平に伸びていますので、せっせとコモンモードフィルターを追加するくらいが唯一の改善策です。 その介もあってか、垂直ダイポールによるDXCCのエンティティは

3.5MHzで34、 7MHzで94、 10MHzで108

まで増えました。(2017年12月)

 -

国内QSOを存分に楽しみたいなら、最大地上高7mくらいの逆Vが一番というのが私の結論です。 2016年になってから、7MHzのAMを始めましたが、出力18WのAM送信機で運用する時は、朝から臨時逆Vを仮設して楽しんでいます。 AMの周波数は夜になると、放送局の側波帯による混信で使えなくなりますので、夕方には逆Vを撤去しています。

 

2020年9月

国内交信用として、ツェップアンテナを作りました。 このアンテナは架設がダイポールより楽ですがアンテナチューナーで好きなバンドに出る事は出来ません。

 

INDEXに戻る

続きを読む »

2012年10月12日 (金)

AA-170 インピーダンス指示不良

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

コメットのアンテナアナライザーAA-170にて、50Ωのダミー抵抗を接続しても35Ωくらいしか指示しないという故障品の修理を頼まれました。

また、検波ダイオードの不良だろうと、簡単に考え、インピーダンス検出用のダイオードをテスターで当たると、逆方向の抵抗が正常なダイオードの1/10くらいしかありませんでしたので、手持ちの1SS108に交換して、一件落着と思いきや、HFはOKになりましたが、バンドEやFの症状が改善しません。

簡単に直るだろうと思って軽く引き受けた修理でしたが、さあ、困りました。

物置から、借用中のタケダ理研の重さ30kgもありそうな古いスペアナを引っ張りだし、AA-170のアンテナ端子とスペアナの入力を同軸ケーブルで直結してみました。  以前チェックした、まともなAA-170はバンドFで-1.5dBmくらいを指していましたが、今回は-6dBmくらいです。一応インピーダンス表示が正常になったバンドAでは-2dBmくらいの表示となっています。

この出力は半固定抵抗で調整できるようになっておりますが、半固定抵抗を回しても、これ以上出力は上がらないという状態です。

このアナライザーは+5V、+12V、-12Vの3系統の電源ラインを持ちますが、いずれも正常。

発振段からバッファを経由してブリッジ回路に出力するFETやトランジスタのDC電圧をチェックしても異常は見られません。ただし、異常が無いだけで、チェックした電圧が正しいのかどうかは判りません。手元に動作異常なしのAA-170があればすぐに比較できますが、あいにくこの故障した1台しかありません。

色々調べていくにつれ、発振回路そのものの、レベルが不足しているようにしか思えません。 手がかりは、バンドFの時の、Q1,Q2のソース直流電圧がかなり低く、すでに電源電圧フルスイングで動作している事でした。

発振段のFET Q1,Q2は2SK241GR。幸い手持ちがありましたので2個とも交換しましたら、出力レベルが大幅にアップ。50Ωダミー接続時100Ωくらいを指示するようになりました。

これで多分直ったと思いますが、検討している間に半固定抵抗をいじってしまいましたので、ちゃんと調整作業をしておかねばなりません。

調整の仕方は以下です。(コメットに教えてもらった訳ではありません。自我流です)

調整はOSC基板上と電源基板上の半固定抵抗を調整しますが、REF No.が重複していますので、間違わないように。バンドSWはCとして14MHz付近に周波数を設定して、かつ50Ωのダミー抵抗を接続しておきます。

  1. インピーダンスメーターが最大に振れるように、電源基板のVR1を回しきります。
  2. OSC基板のVR2を目視でほぼセンターにします。(これは発振出力の微調整用)
  3. メーター指示が70Ωを指すようにOSC基板のVR1を調整します。(100Ωに調整するという説もあるが、あまり変らなかった)
  4. 電源基板のVR1を調整してメーター指示が50Ωになるようにします。

Aa170pcb1

バンドSWをAからFまで切り替え、どのバンドでもほぼ50Ωを指示するようになりました。

故障の原因はFETの劣化でした。通常、FETの劣化という現象は製品寿命に比べて頻度が低いのですが、それはメーカーが保障する動作環境の中だけの話。2SK241はVdsが10Vで色々な特性を規定し管理されていますが、AA-170は2Vくらいで使っています。2VのVdsはFETのメーカーにとっては管理範囲外でしょうから、FETの劣化という現象が生じたものと思われます。  後日、東芝の他の品種のFETデータシートを読んでいると、劣化すると書いてありました。

50Ωのダミー抵抗を接続しても、インピーダンスメーターの指示が50Ωにならない。不足するという症状で検波ダイオード以外の原因の一例として紹介しました。

なお、調整用半固定抵抗でオフセット用とかSWR用というのがありますが、今回は全く動かしませんでした。

INDEXに戻る

2012年10月 2日 (火)

SX-200 SWRメーター修理

<カテゴリ:SWR計>

SX-200のメーター指示がおかしいという事をブログで紹介した以上、おかしい原因を調べて、名誉回復をしておかねばなりません。

Sx200diodevr 内部をチェックした結果、REF側検波ダイオードの逆方向インピーダンスがかなり低下していました。SWRが通常より良く表示されたり、電圧対電流の関係が正常値とは異なる状態になっている事の原因でした。 1年以上6mのアンテナとFT-450のアンテナ端子の間につなぎぱなしでしたので、静電気で劣化したものと思われます。

正規品はチップタイプのショットキーダイオードですが、品番は判らないので、手持ちのダイオードで代用する事にしました。ジャンク箱をひっくり返したらリード線を短く切ったショットキーダ イオードが見つかりました、テスターでVFをチェックすると0.15V。 1N60を同じテスターでテストすると0.23V。 テスターの電流は0.4mAですから、見つかったショットキーダイオードはかなり優れもののようです。 このSWRメーターに使われていたダイオードのVFを確認していなかったことが悔やまれます。

ちょうど「ローデ・シュワルツ」の通過型電力計を別の目的で借用中でしたので、これで校正することにしました。この通過型電力計の周波数帯は25MHzから1GHzとなっていましたので、校正はTS-850Sから28MHzのキャリアーを出して行いました。

5W、20W、100Wの出力で各半固定抵抗を調整して、目盛りに合わせこみましたが、50W、10Wや、5W以下1Wまでの目盛り合致度はおおむね誤差10%以内に収まっていました。  多分、正規のダイオードなら5%以内に収まると思われます。

Sx200cal

この状態で30Ωの抵抗負荷をつなぐと、SWRは

  • 1W出力時  1.4 
  • 5W出力時  1.7
  • 10W出力時 1.7
  • 50W出力時 1.7

の表示となりました。本来のSWR値は1.67ですから5W以上では正常になりました。

SWR測定時のCALは1Wでも十分フルスケールを振りますので、1Wでも誤差の少ない指示が出来るように改善して欲しいですね。 KWレンジが付いたメーターで10Wでもまともに測れないSWR計よりはましですが。

INDEXに戻る

2012年9月23日 (日)

TS-930 受信感度小

<カテゴリ:TS-930>

長い時間放置していたTS-930に久しぶりに電源を入れると受信感度が大幅に低下している場合があります。過去の修理事例をまとめて紹介します。

1.アンテナなし時のノイズも受信信号も非常に小さい。Sメーターもほとんど振れない。

電解コンデンサが劣化し、各回路が正常に動作していないもの。 通電を3時間くらい続けると自然に治ってきます。20年以上通電しなかったら、この症状がまず発生します。

2.アンテナを接続していない時のノイズは正常のようだけど、受信感度が悪い。Sメーターの振れも正常時の半分以下。

メカニカルスイッチの接点接触不良。

930rx1 アンテナ端子から入力された信号はふたつのメカニカルSWを通った後、BPF回路に接続されます。ひとつは受信用アンテナの切り替えSW。もうひとつはトランスバーターなどを接続したとき、アンテナ系の切り替えの為に設けられたSWです。いずれもスライドSWですが、このSWの接触不良が結構多く発生していました。SWの端子をピンセットなどでショートすると、受信感度が大幅に改善しますので、すぐに判断できます。SWをカチカチと何度も切り替えると良くなる事もありますが、完全ではありません。接点復活剤を注入して何度かSWを切り替えると直ります。  このようにして修理して3年以上経過していますが、問題の再発はありません。

Kure_splay_3

接点復活剤として、最近、あるOMさんから紹介していただいたスプレーを紹介します。 左の「KURE」印のスプレーです。 従来品よりベトツキが無く、他の部品への悪影響もかなり少ないようです。 基板の清掃にも使えると言うことから、64QFPのマイコンをはぎ取り、フラックスだらけの基板に吹きかけて、布でふき取るとフラックスを含めて除去でき、簡単に基板がきれいになります。 新しいマイコンをハンダ付けする時など、重宝しております。 サイズも2種類あり、価格もリーズナブルです。 多分、近くのホームセンターで手に入る事でしょう。

(2015年9月追記)

BPF回路のスイッチングダイオードの劣化。

各BPFをバンドSWにより切り替えますが、この切り替えはBPFの入力と出力に設けられたダイオードスイッチで行っています。このダイオードが劣化すると、感度ダウンやイメージ妨害排除能力のダウンが起こります。感度のダウンは聞いていたら判りますが、イメージ妨害排除能力のダウンは、単純に聞いていても判りません。受信感度をチェックしようと思い立ったときは、このスイッチングダイオードのチェックをお勧めします。私のチェックでは4台の修理品のうち2台に劣化したダイオードが有りました。海外の修理情報では、かなり頻繁に発生しているみたいです。

930rx2 感度がダウンしている場合、全バンドだったり、特定のバンドだったりします。感度が足りないと思われるときは、RFプリアンプ入力に、アンテナ信号を直接加えてみると判ります。左の写真に示すようにアンテナ入力線のコネクターとRFプリアンプの入力線のコネクターを基板から抜き取り、このふたつをお互いに接続すると、受信感度が大幅に改善する場合、ダイオードが劣化している可能性があります。 ただし、このテストの場合、BPFを通りませんのでダイオードが正常でも感度が少し良くなります。ほんとうに原因がダイオードであるかは、ダイオードをチェックしなければ判りません。

電源OFF状態で、すべてのダイオードの導通テストをします。BPFの周囲にあるダイオード全てを当たれば安心です。順方向の抵抗分が大きくなっている場合、そのバンドで感度小が発生します。逆方向の抵抗分が小さくなっていたり、ショートしている場合、イメージ妨害排除能力が著しく低下していると思われます。対象となるダイオードはD15からD35までです。

ダイオードの不良を発見したら、交換することになりますが、正規のダイオードは多分入手できないでしょうから、代替品としてロームの1SS133をお勧めします。このダイオードは名前はショットキーダイオードですが、VFが一般のシリコンダイオードとほぼ同じ0.6Vくらです。ロームのデータシートでは汎用品で高周波用とは書いてありませんが、構造がショットキーダイオードであることから、実際の接合容量値は0.8PFくらいしかありません。 値段も安いですから、大量に買い込んで色々なところで使用しています。日立の1S2076Aか東芝の1S1555Vかで市場が2分されていた時代にロームが殴りこみをかけてきたダイオードですねェ。

(参考:表面実装の場合1SS400がお勧め。)

ダイオードのチェックや交換が終わりましたら、次は全局発の周波数を正確に合わせなおします。 周波数の詳細はサービスマニュアルに記載されています。日本語のサービスマニュアルはWEB上で見つける事はできませんでした。英語版なら見つける事ができます。

「Welcome to the Kenwood Hybrid File page of N6WK」で検索すると、色々な資料をダウンロードできるページを見つけられるでしょう。 

*******************************************

2014年5月追記

メイン機として使用中のTS930Sの受信感度がかなり低下しているようで、先日のWPXコンテストでも、SメーターがS9以上振れるのは野呂山山頂からの信号のみで、全てのDX局がS7以下でした。サイクル24も下り坂だからと諦めていましたが、どうもリグの故障みたいです。サブ機のTS850SでS5で聞こえる信号が930ではS1以下です。

ダイオードが壊れたのかとチェックすると、案の定、D22の逆方向インピーダンスが300Ωくらいしかありません。D22は14-18MHz用のダイオードですから、21メガ受信時、イメージ妨害排除能力はかなりダウンしていた模様ですが、これを1SS133に交換した後も、受信感度は、Sひとつくらいは改善したものの、TS850Sにはまだ及びません。 BPFとIF回路のトランスの同調ポイントがずれている可能性もありましたので、サービスマニュアルを頼りにこれらのコイルを再調整することにしました。

SSGが有りませんので、14MHz付近の周波数にセットしたアンテナアナライザーと急きょこの為に手作りしたATTをアンテナ端子との間に入れ、かつ930のATTを30dBに設定すると、SメーターがS7くらい振れています。この状態で、IFトランスのT3,T4,T5,L125,L126,L127のコアを回してSメーターが最大に振れるように調整した結果、SメーターはS9+10dBくらいまで振れるようになりました。

930rx1

930rf_2

次に、周波数を29MHz付近にして、Sメーター最大になるようL43を調整。周波数を21MHz付近にしてL45を調整、最後に周波数を25MHz付近にしてL44を調整しSメーターが最大に振れるようにしました。この状態でSメーターはS9+20dBまで振れるようになりました。  BPF回路の調整はスィープジュネレーターを使い、バンド全体がフラットになるように調整するのが正しいやり方ですが、私の場合、21MHz、24MHz、28MHzの各ハムバンドで感度最高になれば、ハムバンド以外はどうでも良いので、スィープジュネレーターが無くても問題ありません。

なお、プリント基板に印刷されているシルクプリントの間違いが結構あります。D32とD33は逆ですね。

この再調整で、比較したTS850Sより感度は良くなりました。 結局、オリジナル状態より30dBくらい感度ダウンが起きていたようです。  

今回、コメットのアンテナアナライザーCAA-500をSSG代わりに使いましたが、周波数はかなり安定しており、通電後30分以上たつと、受信時のビート音の変化は感じられなくなりました。受信機の調整は、この周波数安定度と、いかにして弱い振幅一定の信号を作るかにかかっております。 CAA-500のアンテナコネクター部分の出力レベルは全バンドでほぼ一定で約-2dBmくらいです。 これとATTがあればSSGの代用ができます。このTS-930Sは受信感度の劣化が定期的におこりますので、-20dBから-90dBくらいを連続可変できるATTを作ってしまいました。ジャンク箱の中にあった部品だけで作りましたので、ATTの絶対値は判りませんせんが、受信機能の調整道具としては、28MHz帯まで十分実用になります。

930att

 

930attschema_2

 

 

 

INDEXに戻る

続きを読む »

2012年9月11日 (火)

TS-850S 28MHz 100WのTSS保障認定

<カテゴリ:TS-850>

古いTS-850Sを頂きましたので、修理して、使えるようになった事からこれを現行モデルとして工事設計書に追加申請することにしました。TSSに申請したところ、「28MHz帯は50W出力のはず。100Wにする為の具体的改造内容を説明しなさい」とコメントが付きました。

Img_0873tところが、私のTS-850Sはメーカー出荷時点ですでに100W出力に設定されており、改造したところはありません。メーカー出荷時点より100Wであるという証拠は付属している取説の中にあります。

取説の最後の方に、製品の仕様や、当時JARLの保障認定で局免許を受ける為の事項書と工事設計書の書き方見本があり、これらの記述はすべて28MHz帯は最大出力100Wと記載されています。

TSSには、メーカー出荷時点より100Wに設定されていた旨の説明と、この取説の抜粋をpdfファイルにコピーし添付しました。

結果、申請通り、TSSの保障認定を得る事ができました。

28MHzの最大出力が100Wで許可されるようになったのは1992年1月6日よりで、私のトランシーバーは1992年12月に製造されたもののようです。推定ですが、KENWOODは法律が施行された日以降の生産出荷分から最大出力を100Wに変更したみたいです。しかし、それ以前の生産品は50W仕様だったことから、TSSから前述のごとくコメントが付いたものと思われます。

貴方のTS-850Sの28MHzがすでに100W出力になっている場合、取説のコピーを添付するだけで、TSSは承認してくれるでしょう。

TS850S 28MHz 100W出力に関連する抜粋取説をダウンロード

もし、28MHzが50Wのままでしたら、周波数を29MHzにして、CWモードでCARをmaxにしておき、RFユニットのVR4を回して、100Wになるよう調整します。 (取説に記載済み)

100W機を移動に使うために50Wにしたい場合、裏側のスイッチを切り替える方法が取説の中で説明されています。  回路図を追いかけると、50W設定の時もVR4が機能するようになっていますので、28MHzを100Wに調整した後の場合、VR4で50Wに再調整する必要があるようです。   50W機として、TSSの保障認定を受ける場合、多分スイッチを50Wに設定したと説明するだけで、承認されるかも知れません。 以前、同じような設定ができるモデルで50Wの承認を取った事がありました。 (ただし、申請人の資格が2アマ以上でないと、却下されるという情報もあります。)  なお、この場合、すでに固定局で免許を得ているTS-850Sを50Wに改造して、移動局の免許を得る事はできません。移動局用にもう1台のTS-850Sを用意するか、固定局で免許を受けていたTS-850Sを撤去してから申請するしかありません。

INDEXに戻る

2012年9月 5日 (水)

CAA-500 検波ダイオード修理交換

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

プリセット式アンテナチューナーの調整の為、アンテナアナライザーを多用しています。この為、故障も何回も経験しました。

私のアナライザーはコメットのCAA-500ですが、ブリッジ部分に配置された検波ダイオードの破壊が何回か発生しました。破壊が発生すると、その再現テストをして原因を突き止め、2度と同じ環境では使用しないことにしましたので、すでに2年以上経過していますが、以降、故障はありません。

コメットのアナライザーに限らず、全メーカーのアナライザーに共通する事ですので、参考になれば幸いです。

故障の症状:

アンテナ端子に、アンテナを接続していない時インピーダンスもSWRも無限大を指しますが、特にインピーダンスの指示が無限大(スケールオーバー)を指さなくなったり、50Ωのダミー抵抗をつないでSWRは1を示しますが、インピーダンスは、40数Ωしか指さないとか、ひどい時は、ほとんどゼロ付近しか指示しない。

このような症状になった場合、それは調整不良ではなく、検波ダイオードの劣化もしくは破壊です。 (SWRが1.0ではなく1.1以上を示している場合はダミー抵抗が原因の場合が多い。)

修理の仕方:

Caa500sensor 内部を開け、検波ダイオードを見つけて、テスターで導通テストします。検波ダイオードは通常3個ないし4個付いていますので、それら全てをチェックすると、逆方向での抵抗が異常に低いとか、両方向で導通がないとかなどの異常ダイオードを発見できます。

不良のダイオードが特定できて、かつ、その製品に使われている検波ダイオードと全く同じ品番のダイオードが入手できるなら、異常のあるダイオードだけ交換すればOKです。しかし、このモデルの検波ダイオードの品番は公開されていませんので、コメットに聞かない限り判りません。

とりあえずHFだけでも使えるようにと考えるなら1N60で代用できました。しかし、この場合、異常のあるダイオードだけでなく、問題のないダイオードも一緒に交換する事が必要でした。ただし、サイズが大きいのでハンダ付けに苦労します。あまりお勧めしません。

代替を探すときは、「高周波ショットキーダイオード」で検索をかけると見つかります。順方向電圧と端子間容量がなるべく小さいUHF帯以上で使用可能な物を選べば代用可能です。 私は手持ちのHSC285で代用しましたが、個別販売しているところが無く入手に苦労します。

HSC285の代替え品の情報はこちらにあります。

代替品の場合、VHFもUHFも高い周波数でインピーダンス表示が不正確になったり、3.5MHzなのに50Ω以外のインピーダンス指示が不正確になったりします。我慢できない人は正規品のダイオードに交換するしかありません。 

HSC285の場合、不良のダイオードのみ交換すれば、再調整は不要でした。

検波ダイオードが破壊する原因:(実際に発生した事例です)

  • 雷はまだ鳴らないけど、雷雨が始まる直前まで調整作業をしていた。受信機から時々放電時のノイズらしきものが出ていました。

  • アンテナ調整作業中に雪が降り出したとき、インピーダンスメーターの指示がどんどん下がっていくのを目撃した。そして約2分後にメーターは完全に振れなくなりました。ダイオードが完全に死んだみたいです。雪が降り続いている時より、降り始めのときが壊れ安い。

  • 黄砂がまっている日にアンテナ調整をした。信じられないかもしれませんが、この日、ダイポールから引き込んだオープン状態の同軸ケーブルのコネクター付近でパチ、パチという音が10数秒置きに発生し、アンテナをつながない受信機からその音に合わせて小さなノイズが出ていました。

壊れるのは、決まって、インピーダンス検出用のダイオードです。ダイオードを交換して、50Ωのダミー抵抗で確認すると、全バンド50Ωを指しますので、再調整はやっていません。

これらの事故は、ダイポールの調整を行っている時発生しました。ループアンテナの調整時は問題なしでした。 ダイポールの場合、 アンテナが帯電始めると、受信機から周期的に放電ノイズが聞こえます。このノイズが聞こえ始めたら、アンテナアナライザーをアンテナにつながないことです。

<後日談です>

受信機のTS-930のスピーカーから、いかにも放電ノイズらしき音が聞こえます。TS-930の電源をOFFしてもその放電ノイズは継続しています。 そして同じ机の上に置いてあるPC VAIOのUSB認識音が継続して聞こえます。アンテナチューナーコントローラーのSWノブに触ったら、静電気による感電を起こしました。急いで窓のカーテンを開けると、雪が降り出していました。雪による帯電は雷より怖いですね。

せっかくの便利グッズです。上手に使って長持ちさせましょう。

INDEXに戻る

2012年8月25日 (土)

TS-850S RFフィードバック

<カテゴリ:TS-850>

マイクアンプへRFが回り込みフルパワー運用が出来ないという問題の対策です。

時々動作しなくなるというTS-850SをローカルのOMさんから頂きました。約1ヶ月かけてオーバーホールを行い、異常が発生しなくなりましたので、現用のTS-930Sを差し置いてメイン機にならないかともくろみました。

時期は、同調フィーダーによる給電システムのアンテナで日夜DXに励んでいるころです。10MHz以下では何も問題ないのですが、14MHz以上のバンドでRFの回り込みが激しくSSBでの運用が思うように出来ません。24MHz以上では、CWモードでもRFの回り込みがあります。

このモデルは、RFフィードバックに弱いという情報がインターネット上にも存在しますが、これほどひどいとは思いませんでした。TS-930SよりRFの回り込みをおこしやすいところに、追い討ちをかけるように、同調フィーダーシステムによる給電方式をとっている事が、このトランシーバーを使えない状態にしてしまっているようです。

CW時の回り込み対策はパワーを下げるしかなく、50Wまで下げると全バンドOKになります。

しかし、SSBは20Wくらいしか出ていないのに変調がにごり、何を言っているのか判らなくなるほどの回り込みが発生します。

せめて、SSBでも50Wくらいまでは持ちこたえて欲しいと、昔取った杵柄で、RFの回り込み対策をすることにしました。

対策の方法は実に簡単で、オーディオアンプのベース・エミッタ間に1000PFを追加すると言う手法です。

この方法は、オーディオ製品を設計する上では常識で、いわゆる「AMP- i」対策です。当然KENWOODのオーディオ製品にも実施されています。しかし、同じKENWOODでもトランシーバーを開発する部門のエンジニアはご存知無かったようです。

マイクアンプの出力をショートすると、RFのフィードバックが無くなりますから、マイクアンプのトランジスタが拾っている事はあきらかです。そこで、マイクアンプのQ1とQ2のベース・エミッタ間にそれぞれ1000PFのコンデンサを追加します。

Ts850mic2 Ts850mic1

1000PFを追加した結果、マイクボリュームをMAXにしてもマイクアンプへのRFの回り込みは起きなくなりました。しかし、モジュレーター段への回り込みは相変わらず発生します。モジュレーター段への回り込み対策は回路をシールドしたり、基板を書き直すしか方法がありませんので、対策はとりあえずここまで。

一応対策の効果もあり50W出力なら全バンド運用できるようになりました。

このTS-850Sが晴れてフルパワーで運用できるようになるのは、「マルチバンドアンテナシステム」でも触れましたが、同調フィーダーによる給電を同軸ケーブルに変更した時からでした。それでもメイン機のTS-930Sにとって代わる事にはならず、現在はRTTYの専用機として使用しています。

Ampiic 回り込みを起こすオーディオ回路がICの場合、ICのプラス入力とマイナス入力の間に1000PFを追加しますが、トランジスタより対策効果が小さくなります。その為、入力ラインに1KΩのシリーズ抵抗を追加したり、もし、NF抵抗に発振止めのコンデンサがパラに入っている場合、このコンデンサにシリーズに1KΩの抵抗を追加したりして出力側からRFが入力に回り込むのを阻止したりします。 入力端子に追加するコンデンサは、アンプがトランシーバー用のマイクアンプなら1000PFで良いのですが、アンプがステレオアンプなどのように数10KHzまで扱う必要が有る場合、周波数特性に影響がでますので、100PFくらいで我慢します。

追加する抵抗やコンデンサはチップタイプにして、ICの足のすぐ近くに実装すると、いっそう効果が増します。

この対策はTS-850に限らず、全てのオーディオアンプに有効ですから、マイクアンプへRFが回り込んで困っている方、アンプ- i で困っている方、一度、試してみてください。

追加情報(2016/07)

RFが回り込んで変調が濁る対策として、受け身の対策ではなく、マイクやマイクアンプの周囲に強電界が発生しないようにすれば、回り込みの対策にもなります。  今までで一番効果が有ったのは、アンテナの根本にコモンモードチョークを挿入する事でした。

同軸ケーブルの長さが、使用周波数の1/4波長に近い場合、アンテナの根本から流出したコモンモード電流が送信機へ逆流し、送信機付近で電圧腹になる事があります。 このような場合、回り込みが発生しやすくなります。 この同軸はなにも、送信に使っている同軸ケーブルに限らず、ローテーターのケーブルだったり、他のバンドのアンテナ用ケーブルだったりします。  アンテナの根本と言っても、給電部のすぐ近くにいれた訳ではなく、ベランダの手の届くところにこのように手当り次第にコモンモードチョークを挿入しました。

INDEXに戻る