2013年1月23日 (水)

TS-930 Sメーター振り切れ

<カテゴリ:TS-930>

温度が下がった状態で電源ONすると、Sメーターが振り切れて、受信不能になり、温度が上がってくるといつの間にか直ってしまうという問題の修理事例です。

預かってすぐに、電源ONしたら、問題の症状が再現しましたので、本格的に原因を探す為に、ポイントクーラーと言われる瞬間冷却スプレーを探す事にしました。記憶にあるのは、サンハヤトの「キューレイ」です。結構な値段がしていました。問題が起こると、あっと言う間に使い切ってしまい、かなりコストが高い修理になると認識していました。

Qray1しかし、最近スポーツ用に同じ原理の冷却スプレーがあるとのこと。スポーツ用品を扱うホームセンターで探すと、キューレイより2~3割アップの容量で、価格は1/3くらいで売られています。ただし、問題がひとつ。スポーツ用は冷却スプレーがある程度拡散するようになっており、噴射したとき患部が凍傷にならないようになっています。

電気製品の修理の場合、めざす部品だけを冷やし、その他の部品は常温のままという状態を作って、不良部品をあぶり出すやり方ですから、スプレーが拡散するのは都合が悪い訳です。 

Qray2


何種類かの冷却スプレーの中から、ノズルを追加して取り付けられる物を探し、これに直径3mmのアクリルパイプをねじ込むことにしました。アクリルパイプをドライヤーで温めると簡単に柔らかくなりますので、この柔らかくなったパイプをスプレーに付いている小さなノズルに差し込みます。温度が冷えると、固まってしっかりと固定できます。使わないときは引き抜いて置けば、問題ありません。

Qray3こうやって、かなりエコノミーなポイントクーラーが出来上がりましたので、さっそく不良部品探しを始めました。

トランジスターや電解コンデンサにスッポリとかぶせる事ができる紙の筒を作り、その筒の上部から冷気のスプレーを吹き付けますと、Q133で期待する反応がありました。

Q133を冷却するとSメーターが振り切れます。AGCをOFFにしても振り切れは直りません。 R722をオープンにすると、AGC OFF状態になって症状は出なくなります。

どうも低温でコレクタにリーク電流が流れているようです。手持ちの2SC1815GRに交換しましたら、AGC OFF時はSメーターが振れなくなりましたが、AGC FASTやSLOWの時は振り切れています。

症状が出なくなるまで待ってから、次にQ131を冷却すると、Sメーターが振り切れます。Q131のエミッターにオシロをつなぐと100KHzくらいの信号が見えます。Sメーターが正常時は、何も見えません。どうもQ131が低温で発振しているみたいです。正常状態で、Q131のコレクターにテスターを当てるとSメーターが振り切れます。これで判りました。低温でC529(0.047)が容量ダウンして発振していました。 C529に0.1uFのセラミックコンデンサをパラに追加しました。これでテスターで当たっても発振は起こらなくなり、問題は解決しました。

Ts930agc_3


結論はQ133のリークとC529の温度特性不良だったのですが、しかし、それで直ったと決定するまで半日以上かかってしまいました。理由は急冷スプレーを吹きかけると目当ての部品はすぐに冷えるのですが、その部品と周辺に霜がつき、その霜が溶け出すと基板上の部品間を水分でショートする状態となります。 スプレーをしてから10秒以上経過した後、Sメーター振り切れの症状が発生してしまいます。この霜の溶ける問題と本来の部品不良の区別がつかず、かなりロスタイムがありました。   
もしかしたら、Q133のリークも霜の影響で、ほんとうの原因はC529だけだったかも知れませんね。

冷却スプレーを使うときは、回路のインピーダンスを十分把握した状態で検討しないと、何をやっているのか判らなくなるという事でした。 対策完了してから、昔、同じような問題で悩んだことをやっと思い出しました。

今回は、低温で異常が発生する状況でポイントクーラーを使いましたが、高温で異常が発生する場合も、ポイントクーラーは大いに役立ちます。ドライヤーで異常現象が出るように温めておき、ポイントクーラーで特定の部品を急冷し、異常が解消したら、もう問題は解決です。

ただし、どの付近の部品を急冷するのですか?という問題は残りますが。

2019年10月追記

1エリアのOMさんより、Sメーター振り切れの別の対策案を頂きました。 その対策は、Q133のベースからGND間に1MΩの抵抗を追加するものです。 このアイデアを頂いて、改めて、このQ133の周辺を眺めてみますと、確かにKenwoodのオリジナル設計では、Q133のベースの直流電位は固定されておらず、温度や継時変化で不安定になる回路のようです。 この対策アイデアで、この不安定な症状は確実に安定すると思われます。

貴重なアイデアを連絡頂いたOMさんに感謝致します。

 

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2013年1月 5日 (土)

QRP CWトランシーバー 6

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

北京放送の混信の原因が判りました。

アンテナからの信号を2個の同調コイルでフィルターをかけて十分な選択度を確保したはずでしたが、フィルターをかけた後の信号線路をアンテナ切り替えリレーの端子へ接近させた為に、強入力信号に当たる、北京放送の信号がフィルターをバイパスしてICの入力端子へ漏れるという、基板設計のミスが原因でした。 このリレー端子に接近している回路はIC入力部のホット側ではなくGND側なのですが、510Ωの抵抗でGNDより浮いていますので、そこへ静電結合したようです。

Kemrxb4


幸い、ICの配置変更の必要はなく、同調コイルL5の出力を裏付け配線で直にICの入力端子へ接続してやると聞こえなくなりました。

Kemrxaf
以下、その具体的対策内容を紹介します。

左の画像に示すように、アンテナ入力ラインに近接して配置されているR14(510Ω)を抜き取り、これをIC3の2番ピンに直付けし、基板の裏側でL5のピンに配線します。今まで配線されていた銅箔パターンはL5の近くでカットし、これをGNDへ結びます。

IC3の1番ピンからL5の2次側コイルに入り、コイルの反対側からR14を経由して、IC3の2番ピンに戻るという入力回路のループが出来ています。 従い、裏付けでR14を配線する場合、このループが作る面積が最少になるように配置し、かつ、配線します。画像にある、R14の傾きや、曲がりくねった抵抗のリード線は、ちゃんと意味が有るのです。

以上の対策で、北京放送は、ほとんど聞こえなくなりました。スピーカーに耳を近づけると、かすかに放送らしき音声信号が聞こえますが、なにを言っているのか判らないくらいまで減衰しました。

約1年後の12月に、この対策済トランシーバーで鹿児島県の「さつま湖」から夕方オンエアーしました。北京放送はすでに始まっていましたが、問題なく各局と交信できました。

同じような問題でお困りでしたら、ぜひ修正対策して下さい。

北京放送よりも強敵が現れました。7275KHzの韓国放送(KBS)です。TS-930のSメーターは完全にオーバースケールで、針は指針ストッパーに当たったきり降りてきません。 また、季節により、北京放送もKBSと同じくらいの強度で入感する時もあります。相手の信号がS9程度ならQRMを受けながらもQSOできますが、これ以上の改善は、この回路構成では無理です。 ハイ。

エレキー回路の追加 へ続く

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2013年1月 4日 (金)

QRP CW トランシーバー 5

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

久しぶりに九州鹿児島へ帰りました。 暇つぶしの為、、このQRP CWトランシーバーを持って帰ることにしました。

ホームQTHで架設したアンテナは全長16mのロングワイヤーと10mのカウンターポイズです。

場所が谷の中なので、昔から電波の飛びはよくないところです。昼間は所用でQRVできなかったので、夜になってから交信しようと、ワッチすると、聞き覚えのある放送が狭帯域のフィルターごしに聞こえCWの信号はS9相当なのにQRMで判りません。しかもダイヤルを回してもまったく関係なし。

犯人は北京放送です。

Img_4301k私のホームQTHは南さつま市。昔、ラジオ少年だったころ最初に作った鉱石ラジオで唯一聞こえ たのが北京放送でした。どうも、いまでもその信号強度は維持されているみたいです。

結局、時間の取れる夜間帯はこの北京放送に邪魔されて1局もQSOできずでした。 唯一夕方、まだ北京放送の電波が聞こえない時間帯に5局ほどQSOできただけでした。

アンテナチューナーが悪さしているのか、受信機初段の同調回路の能力不足なのか? AM放送の混信排除能力は著しく悪いみたいです。 

広島に戻ってから、夜間に再確認した結果、同じように北京放送が聞こえます。アンテナチューナーを取り外しても、全く変化無しです。 TS-930をゼネカバ受信機にして詳しく調べると、MWの放送ではなく、7325KHzのれっきとした短波放送でした。 CWバンドと320KHzくらいしか離れていないのも一因とは思いますが、鹿児島ほどでは無いにせよ、じゃまである事は変わり有りません。

鹿児島では、夜間でも7メガの国内信号は聞こえます。7エリアや8エリアが主です。 しかし、広島では、夜間の国内交信はスキップの為、ほとんどチャンスがありませんので、とりあえず実害はありませんが、いつか対策しようと思います。

QRP CWトランシーバー 6 へ続く

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QRP CW トランシーバー 4

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

QRP CWトランシーバーが完成して、既存のアンテナやベランダに臨時に展開した釣竿アンテナでQSOの実績も増え実用域になりましたので、移動運用にトライしました。運用日はとても移動運用びよりとは言えない、北風のかなり強い1月でした。

アンテナを架設して、チューニング操作を開始すると、最初はOKでしたが、数分もするとロータリーエンコーダーをどっちに回しても周波数はダウンばかり。そのうちバンドの下限を超えてしまい、アップ出来ません。受信も送信も出来るのに、周波数が設定できないという状態で、結局その日は1局も交信できずじまいでした。

原因を確認する為、家に帰ってから屋内と屋外の温度差を利用して温度試験です。どうやら低温になると、アップが出来なくなるようです。その低温は7度くらい。15度以上になると正常になります。エンコーダーの端子電圧をオシロでモニターすると、かなり摺動ノイズが発生しており、低温になるとそれがひどくなるというものでした。通常、チャタリングはスイッチの切り替わった直後に振動状態で発生する、断続信号で、マイコンのソフトで基本対策を行い、それをさらにカバーするためにエンコーダー端子にコンデンサを追加し、波形をなまらせるという対策を行いますが、このエンコーダーの摺動ノイズはパルスのLレベルの範囲全体で出ています。

Kemre3

コンデンサでなまらしたら、エンコーダーとしての機能までなくなってしまうほどのノイズです。秋月で販売しているエンコーダーと同じものだそうですので、ALPS製のエンコーダーに交換することにしました。交換したら一応7度くらいでは誤動作しなくなりましたが、しかし、ALPS製は、すばやい回転には応答しますが、ワンステップのアップとかダウンを行うと、動作ミスが多発します。たぶん、マイコンのタイミングが合っていないのでしょう。 KEMのBBSで問いかけしましたら、秋月のエンコーダーの中にあるグリスをふき取れば良くなる可能性があるとアドバイスがありましたので、エンコーダーのカバーにあるツメを起こし、内部を開け、綿棒でグリスをふき取りましたら、動作力が軽くなったと同時にアップダウンが正常になりました。 しかし、数か月すると、また誤動作の頻度が高くなってきます。再度、ケースを開け、今度は接点復活剤で清掃しました。その効果は絶大ですが、いつまでモツ事やら。

半年以上経過した12月に、移動運用に出かけました。外気温は10度くらい。  太陽が当たっている間は良かったのですが、日蔭になってしばらくすると、今度はUPばかり。ロータリーエンコーダーをどっちに回してもUPばかりです。    帰ってから詳しく調べるとエンコーダーの一方の出力波形にかなり激しい摺動ノイズが出ていました。 こういうノイズはチャタリングとは言わず、ソフトで回避する方法は有りません。 最初にチェックした時よりノイズの幅は小さいですが、高さは同じくらいです。 エンコーダーの摺動面には、もうグリスはありません。やむなく、コンデンサを追加して波形をなまらす事にしました。

Kemren2Kemren1

左が、対策前、右がエンコーダーのA,B端子とGND間に0.47uFのコンデンサを追加したものです。 上昇の時しかコンデンサの効果は有りませんが、ノイズのパルスの高さがかなり抑えられました。これで、ゆっくり、あるいは高速でエンコーダーを回すと、時々動作しない事はありますが、アップダウンが逆になる事はなくなりました。

Renc

このエンコーダーの端子はマイコンの中で、抵抗によりプルアップされているようですが、プルアップ抵抗の値が小さすぎます。(このマイコンの内部プルアップ抵抗は1.5KΩ) マイコン内でのプルアップをやめ、外付けの10KΩくらいでプルアップした方が対策はしやすいのですが、プログラムの書き換えが必要になり対応できません。

左の回路図は、パナソニックが自社のエンコーダーをテストする時の回路ですが、この回路のコンデンサを0.01から0.047に変更した上で、ロタリーエンコーダーのA端子入力を外部割込みに指定してやると、アルプス製はほとんど問題なく動作します。 秋月の中国製はグリスをふき取らない限り改善しません。

完全な動作を望むなら、フォトインタラプターによる光学式エンコーダーにするしかありません。 この0.47μFを追加した状態でも誤動作が頻発するようになったら、パナソニックの回路の後にCMOSのバッファを入れてその出力をPICの入力端子に接続するつもりです。

QRP CW トランシーバー 5 へ続く

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QRP CW トランシーバー 3

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

Kemhaichi
内部の収納物が決まり、操作つまみや表示器などのサイズが確定したら、それを収納できる既成のケースを用意し、その中や側面に電気的に問題の無い形で物を配置し、かつ操作性を考えてコントロールつまみなどの位置を決めますが、この検討の為に、私は昔からエクセルを使ってきました。エクセルの図形処理はかなりラフなものですが、イメージを図示化するには、非常に簡単な作業でそこそこのシュミレーションが可能です。

今回もそれぞれの基板や部品のサイズを測り、エクセルの中でそれを並べて最適位置を決めました。

このイメージをベースにJW CADで図面化し、その図面を実寸大で印刷したあと、ケースに貼り付け、ケースの加工を行います。この手法で、ほぼエクセルでシュミレーションした通りの部品配置が可能になります。

Kemcs1 Kemcs2

最終的に配線を完了させると、結構様になったケース入り完成品が出来上がりました。

Kemcs4_2 Kemcs6_2

Kemcs5_2

もの作りの一番楽しい時期です。

完成度が上がってくると、気になる部分も出てきます。CWのモニター音が途中でブツッと途切れます。一瞬、キー操作を誤ったと思うのですが、出ているキャリアは問題ありません。モニター音だけのバグみたいです。良く観察すると、10秒間に1回、現在の設定内容をEEPROMに退避させていますが、これに同期して出ているようです。メールでバグ報告はしておきましたが、修正版はまだ未確認です。

QRP CW トランシーバー 4 へ続く

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QRP CW トランシーバー 2

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

5WのパワーアンプをKEMのトランシーバーでドライブできるように配線し終え、キャリアーを連続送信しても最大で2Wくらいしか出力がありません。KEMの0.5Wパワーアンプの出力インピーダンスは50Ωのはずですから、TS-930からのドライブのときと同じと考えましたが、考察に抜けがありました。前回の実験では、50Ωのダミー抵抗があって、その両端から5Wパワーアンプへ供給していましたが、今回はダミー抵抗が有りません。

それに気づいて50Ωの抵抗で信号ラインをダンプしてやると、6Wの出力が出るようになりました。 ただし、6Wでは大きすぎますので、5Wになるよう100Ωに定数変更し、かつ0.5Wに切り替えられるように、リレーを使い5Wパワーアンプをスルーできる様にしました。

ダミー抵抗をつないで、連続キャリア送信テストも完了し、つぎにCWでの送信テストをやっているうちに、モニターで聞いているTS-930の受信音に気になる音が出ます。CWのキーイングが終わった直後、バサバサと言った感じのノイズがほんの少しの時間ですが聞こえます。

送信出力の波形をオシロでモニターすると、CWの7MHzのキャリアが途切れたあと、信号がゼロにならず、一瞬かなり低い周波数の信号が残って、すぐにゼロになります。不信に思いスペアナを接続してみましたら、7MHzのキャリアが途切れたとたん、基本波が約1MHzくらいの不要輻射が発生していました。しかもかなり汚い波形らしく高調波が10MHz付近まで見えます。

良く調べると、これは0.5Wアンプの異常発振でした。CWのキャリアーが無くなってもセミブレークインの為に、0.3秒間くらい送信状態を維持します。この0.3秒間の間に1MHz付近で異常発振しているものでした。KEMの説明書の中に、必ずダミー抵抗をつなぐか、実際のアンテナをつないでくださいというコメントがあります。要は、無負荷や設計された以上の軽い負荷をつなぐと発振しますよ、ということです。今回、5Wのアンプを接続しましたので、発振しやすくなったのでしょう。とりあえず、オリジナルの0.5Wパワーアンプのコレクタ側チョークコイルにダンプ抵抗を入れてゲインを下げ発振を阻止しました。

発振対策として、ダンプ抵抗はあまりにも芸が無いので、負帰還をかけたり、アッテネーター回路の定数を変えたりして、発振対策を行い、うまくいってましたが、温度が下がると異常発振が再発してしまいました。面倒なので、チョークコイルのQダンプを継続する事に。 この方法なら温度変化があっても安定して動作します。

また、受信状態でも、5Wのパワーアンプは生きている訳ですが、時々、受信状態のとき発振し、受信音がビートだらけになります。対策として、コレクタからベースへ、CRによる負帰還をかけています。

最終的な出力は

  • VCC 12V     5W     /      0.5W
  • VCC 10V     4W     /      0.4W
  • VCC   8V     3.2W  /      0.26W
  • VCC   7V     2.4W  /      0.2W
  • VCC   6V     1.6W  /      0.12W

QRPモードもQRPPモードもパワーアンプ以外は5Vの安定化電源ですから、パワーはダウンしますが、6Vまで使う事ができます。

ここで、電池によるパワーの差をレポートします。

12V DC電源では5W出ています。

8個で、800円の単3アルカリ電池を買ってきて、テストしました。受信状態での電圧は12.8Vあります。 送信すると、11.8Vになりましたが、かろうじて5W出ていました。しばらくCQなどを出して、10分経過したら11Vまで電圧が下がり4.5Wくらいしか出ません。

次に、6個で105円という単3アルカリ電池を買ってきました。受信時の電圧は13.2Vです。これはすごい! しかし、送信したら、10.2Vになりました。 え? とVVVを10回くらい送信したら9.6Vになりました。約10分後には9Vになりました。100円ショップの電池では、例え新品でも5Wは出ませんでした。

2015年2月:最近は12Vのリチウムイオン電池を使っています。電動釣竿用の電池なので、数回の移動運用でも、電池の心配をする事がなくなりました。

 

バラック状態での検討がほぼ完了しましたので、次はマニュアルアンテナチューナーを実装します。回路はL型です。コイルは連続可変できませんので、12接点のロータリーSWを用意し、トロイダルコアに18ターン巻いたコイルから12個のタップを出し、これをSWでショートすることにしました。バリコンは250PFくらいのポリバリコンです。SWRの検出は抵抗ブリッジ方式として、ブリッジの不平衡電流のみをバッテリーチェッカー用の小さなメーターで見る方式としました。  アンテナチューナーは3mくらいから20mくらいまでのロングワイヤーに無理なく整合させることができます。

Kemmtu1a_2 Kemmtu2_2

トロイダルコアに巻き込んだコイルのQが全く使いものにならないくらい低い事がわかりました。 現在は、空芯コイルに変更しています。詳しくは、「QRP用アンテナチューナーの内部ロス改善」を参照して下さい。

オリジナルの回路はイヤホーン出力しかありません。これをスピーカーでも聞けるようにオーディオパワーアンプを追加することにしました。材料は粗大ごみ入れに捨ててあったPC用のスピーカーシステム。パワーアンプもスピーカーも付いていますので、スピーカーとアンプ基板を取り出し、いとも簡単にオーディオアンプが出来上がりました。

Kemaudio1_2  この状態でCWの送信を5Wで行うと、モニター音はキークリックだらけです。音量ボリュームを絞っても出ています。パワーアンプの入力部にシリーズに1KΩとICの+/-入力間に1000PFを追加する事にしました。 最初、アキシャル抵抗とラジアルコンデンサで対応したのですが、効果は有るものの、十分では有りません。 チップ抵抗とチップコンデンサに変更し、かつICのピンのすぐそばに配置したら、音量ボリュームを絞ると聞こえなくなりました。 音量ボリュームを上げたときの対策として、送信時には受信音声系をトランジスタでミューティングすることにしました。 また、トーンボリュームや音量ボリュームの配線をすべてシールド線で行った結果、クリック音は発生しなくなりました。  また、CWのモニター音のクリック音も、全く気にならないくらいに改善しました。

とかく、キークリック音のあるCWは聞いていて疲れますので、これで安心です。

Kem5wmod1_2 借用していたタケダ理研のアナログ式スペアナを返却し、代わりにアドバンテストのデジタル式スペアナを借用したついでに、高調波を調べてみると、今まで-60dB以下はノイズに埋もれて見えませんでしたが、デジタル式のこのスペアナは-70dBまで見る事ができます。そして第4次高調波以上が予想以上に多い事に気付きました。原因を調べると、トランジスタのベース電流が歪んで、その影響が0.5Wのアンプのタンク回路まで及び、ここで高次のリンギングが発生しているものでした。

色々と検討した結果、ベース回路に同調回路を置き、かつインピーダンス変換できるトランス式に変更すると、2次、3次は-63dBくらい、4次は-68dBくらいですが、5次以上の高調波は-70dB以下に収まりました。(回路図修正済み)

5W QRPトランシーバーの回路図をダウンロード

TSS保障認定用送信機系統図をダウンロード

一応、トランシーバーとして必要な回路部材がそろいましたので、これを移動運用にも耐えるようにケースへ収納することにします。

QRP CW トランシーバー 3 へ続く

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QRP CW トランシーバー 1

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

車で行けないような山でも、リュックサックに詰め込んで運べる乾電池で動作するQRPトランシーバーを探していましたら、「貴田電子設計」という会社がQRPPのキットを販売している情報を入手し、さっそく注文して組み立て開始しました。(2010年の製品で現在は見当たりません)

Kemmain キットの商品名は「KEM-TRX7-LITE」というもので0.5Wの出力の7MHzオンリーのCWトランシーバーです。このキットは良く出来ていまして、説明書通り作ったら、すぐにQRPPの交信が出来てしまうほど、完成度の高いものです。バラックのままで、しばらく交信を楽しんでおりましたが、さすがに0.5Wでは、コンディションの影響も大きく、ストレスが溜まります。そこで、せめてQRPと言える最大出力である5WまでQROすることにしました。

たかが、7MHzの5Wアンプと軽く考えていましたが、(昔、水平出力管による10Wのアンプで苦労したころに比べたら雲泥の差があります。) オリジナルの設計に加味されていない変更を行うと、なかなか思うようにいかず、オリジナルの設計内容まで対応が必要になり、かなり難儀しました。 

目標の仕様を設定します。

  • 出力は5Wと0.5Wの切り替え方式。
  • 電源は単3アルカリ電池 8本使用の12V。
  • 手動アンテナチューナー内蔵。
  • 受信音はスピーカー/イヤホーン両用。
  • 移動に使っても十分な強度が保てるケース入り。

Kempa11_2まずは、パワーアンプの検討から。電池仕様ですから、効率の良いC級アンプと決めて、回路例を探している内にE級アンプという、もっと効率の良いアンプがある事がわかりました。C級が65%くらいの効率なのに対してE級は85%くらいはいけるみたい。乾電池で動作させる場合、この効率が即連続運用可能時間につながりますので、内容も良く調べずにE級アンプに決定。インターネットでE級アンプを検索すると、私が設計するには十分過ぎる技術情報が得られました。E級アンプのカナメは負荷となるLCのフィルターですので、最初、このLを色々な資料がほとんど採用しているトロイダルコアで作ることにしました。

Kem5wpa ところが、参考資料として提示されているインダクタンスやキャパシタンスになるように設定してもパワーはなかなか出ません。効率も50%以下。指定された型名のコアを使っていない事が原因なのでしょうが、うまくいきません。ジタバタしている内に、コアを使わなくても空芯コイルで実現できることがわかりました。MMANAでコイルの直径や巻き数を求め、エナメル線をPPシートを丸めたボビンに巻き込み、瞬間接着剤で固めてしまいます。Lが大きかったら解き、小さかったら作りなおして、調整すると、6Wの出力が出るようになりました。 無理すると7Wくらいでます。効率は能書き通りにはいかず6W出力で70%くらいです。 コレクターの電流波形は、E級アンプの技術資料に出てくる通りの波形をしていますので、曲りなりにもE級アンプとして動作しているのでしょう。 スペアナで高調波を調べたら-60dBくらいのノイズフロアーに隠れて見えません。 多分LCの組み合わせを最良にもっていけば80%くらいの効率も可能かも知れませんが、とりあえずこれで良しとしました。

スペアナを交換したら、-60dB以下のレベルも見れるようになりましたので、5Wアンプの入力部分を設計変更しました。添付配線図やアンプの画像は変更後の回路に差し替えてあります。

これまでの検討はTS-930SをTUNEモードにしてダミー抵抗に0.5Wくらいの出力を消費させ、これを信号源として使っていました。 いよいよ、KEMのトランシーバーへ組み込み作業です。

QRP CW トランシーバー 2 へ続く

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2012年12月24日 (月)

M型同軸コネクター

<カテゴリ:アンテナチューナー>

インチネジとメートルネジの違いによるトラブル例です。

Img_0140事の発端は、秋月で安いMコネクターのプラグが売られており、これを大量に買ったのが始まりです。左の写真がそうですが、安さにつられて、私同様、大量に買った方もいるかもしれませんね。このコネクター、締めても締めても、接触不良が発生し困っていましたら、同じようなトラブルで困った人がインターネット上に原因を紹介していました。 これは、インチネジと呼ばれるネジ山で作られている米国向けのプラグだそうです。このコネクターの受け側になる通常MRと言われるメス側は、日本国内では、メートルネジでネジ山が切られていますので、ネジのピッチが異なります。このピッチがずれた状態では、いくつかのネジ山まではねじ込まれても、それ以上は締まらないという事になり、接触不良を起こす元になっています。

安物買いの銭失いの典型でもありますが、救いの手がありました。

Img_0142アンテナチューナーや、SWRメーターを作って世界中に輸出しているメーカーは皆知っていることらしいのですが、インチ、メートルネジ兼用のメス型コネクターがあるとのこと。  左側の写真にある2種類のMRコネクターはいずれもメートルネジですが、左側のコネクターが先端から根本までいっぱいにネジ山を切ってあるのに対して、右側のコネクターのネジ山は5つしかなく、先端部分もネジ山の無い部分が2mm以上あります。このおかげで、右側のコネクターに、インチネジのプラグがねじ込まれても、ずれたピッチが詰まってしまう前に、ネジ山を通り越してしまい、最後まできっちり締まるというものでした。 実際に試してみましたが、問題なしでした。

自作のアンテナチューナーやSWR計のコネクターを、順次、このインチ、メートル兼用コネクタに交換していこうと思います。

ただし、一つだけ問題があります。この兼用コネクターがインターネット上でもなかなか見つからないことです。見つかったら、このブログでも紹介したいと思います。

見つかりました。

コスモ電子という会社で品番は「92795」 M-Rコネクターという品名です。クラニシ製品(アンテナアナライザー)用純正部品と書いてありました。「コスモ電子 92795」で検索すれば見つかります。

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2012年12月18日 (火)

SWRメーターの自作

<カテゴリ:SWR計>

40年以上前に購入したオスカーブロック製のSWRメーターは、いまだに健在でしたが、パワー表示に周波数依存性があり、パワーを計測する時は、換算表を頼りに、ATTを調整してから読むという不便さがありました。トロイダルコアを使ったCM結合器なら、原理的にフラットであるという事から、このCM結合器を作り変えることにしました。

基本回路は、トロイダルコア活用百科に出てくる回路通りです。 この回路による自作事例は、インターネット上に数多く存在しますので、具体的な製作例はそれらを参照いただくとして、このブログでは、個々の定数の決め方について、実験結果を紹介します。

Swrcm2

トロイダルコアを使ったCM結合器の上限周波数

同軸伝送路の中心導体から電圧成分をピックアップする為に、通常、数ピコのコンデンサをつなぎ取り出しますが、この容量はいくらが適正か?ということです。 
SWRメーターを同軸伝送路に挿入しますと、必ず、その伝送路のSWRは悪化します。 SWRを測るために挿入した計測器が線路のSWRを乱すとはけしからんと思われるでしょうが、それは、どんなに精巧に作られたSWRメーターでも避けられない問題です。
従い、良いSWR計とは、挿入したことによりSWRを悪化させる程度が小さいSWR計になります。 
悪いSWR計とは、SWR計無しの伝送路のSWRが1.03のとき、SWR計を挿入した途端、SWRが1.4に跳ね上がったにも関わらず、自分のSWRメーターの指示は1.0と表示するSWR計です。

実験の結果、高い周波数で影響を与える最大の要因は、このピックアップ用コンデンサの容量でした。そして、SWRの悪化が我慢できるのは、その最高測定周波数時のリアクタンスが500Ω以上の場合でした。54MHzまでカバーしようと思えば、C1とC3の合成容量は5.8PF以下が望ましいということです。逆に小さすぎると、後述のごとく最低周波数に影響がでます。

良く、回路例で10PFのコンデンサでピックアップしてあるのを見かけますが、30MHzまでなら10PFでもOKである事がわかります。1.8MHzで誤差を少なくしたいなら、ここの容量はぎりぎりまで大きくした方が良いでしょう。 

もうひとつの制限事項は、トロイダルコアに巻き込まれた、ワイヤーの線長と、測定高周波の波長の関係です。分流比を狂わせる原因となります。この問題はARRLのアンテナハンドブックの中に記述がありますが、一体、どれくらいから駄目なのかは、書かれていませんでした。
これを実験で確かめた結果、ワイヤーの長さは、波長の1/16くらいが限界のようです。仮にコイルの線長が0.3mだったとすると、波長が4.8mの周波数、すなわち62.5MHz以上の周波数では、無視できないほどの大きな誤差が生じるということでした。54MHzまでカバーしようとすると、34cmくらいが限界です。実際に作ったトランスは10Tで25cmでした。 ただし、この誤差はパワー表示の周波数特性のみで、SWR値にはあまり影響しません。

ここで、疑問が出た方もいらっしゃると思います。なぜなら、市販のSWR/POWERメーターでトロイダルコアを使って200MHzまでOKという製品がありますから。

Rw211a_2これらの製品は、理論的に不可能な電力の計測を全体の浮遊容量や、浮遊インダクタを考慮した基板設計と、トランスの設計を細かく調整してバランスをとり、実用可能なレベルになるように設計されています。この極限の周波数は230MHzくらいです。
アマチュアが1台作るのとは、開発費のかけ方が違います。多分数十万円から100万円以上かけて開発したものが商品として売られているのでしょう。 アマチュアでも、運がよければ1台の試作で2mまでOKのSWR/POWER計が出来るかも知れませんが。

ただし、メーカー設計でも最初に述べたピックアップ用コンデンサによる悪影響を取り除く事は出来ません。 200MHzを超える周波数で動作するSWR計を作る場合、トロイダルコア自身による線路のSWR悪化は避けられません。 従い、CM結合器はストリップライン式にして、バンドSW(例えば、430MHz用、1200MHz用に切り替えられるバンドスイッチ)を設けて、線路のSWRの乱れを最少にする方がベターでしょう。

Cmcschema 上は、ストリップラインを利用した430MHz用のCM結合器です。ストリップラインを基板上に作成するのは手間ですが、両面生基板をカッターで削り出して試作した時の物です。 この基板上に実装する抵抗、コンデンサやダイオードは全てチップ部品で作るというところが成功へのキーワードになります。リード線付のいわゆるアキシャルやラジアル部品で構成すると、必ず失敗します。 100Ωと220Ωの抵抗は基板のパターンカットが終わった後、REF方向の検波DC電圧が最少になるように値を設定します。 ストリップラインの幅は2.7mmで厚さ1.6mmのガラスエポキシ基板上に描きました。 ストリップラインの長さは任意で良いのですが、感度に関係します。この寸法で、300MHzくらいでも問題なく動作しました。1200MHzでもOKでしょう。

SWR計の下限周波数

下限周波数に一番影響するのが、トリーマーを含めた、C結のGND側容量(TC1+C5)と電流取り出し用にシリーズに入った抵抗R3です。シリーズ抵抗はその中を流れる電流で電流計を振らせますので、感度の低いメーターの場合、大きく出来ないという制限があります。この抵抗を小さくしていくと、トリーマーを含めたC結による分電圧比が影響を受けます。
実験の結果、C結のGND側分圧コンデンサのリアクタンスの5倍以下のインピーダンスの場合、トリーマーを調整してもSWR1.05以下が得られませんでした。目安としては10倍くらい欲しいですね。 逆に5倍以下のリアクタンスで、1.9MHzのSWRが1.0になったら、それはダイオードの性能が悪い証拠になります。

メーター感度や、分流比の問題から抵抗を大きく出来ない場合、チョークコイルを挿入してインピーダンスを大きくします。ただし、チョークコイルには自己共振周波数というのがあります。 自己共振周波数より高い周波数では、次第にインピーダンスが低下してきますので、前述の条件に合うようにシリーズ抵抗でカバーします。この検討は厳密にやる必要はなく、メーカーが公開しているチョークコイルの周波数対インピーダンス特性データから机上検討で決定したものでOKでした。

トロイダルトランスの分流比

事例としては10:1の巻き数比が多く紹介されています。2次側のダミー抵抗R1,R2を50Ωにしたら、このCM結合器は1/50の電力を消費することになります。(10:1のトランスの場合、電流が1/10になりますので、ダミー抵抗での消費電力はそれぞれ、1/100となり、2本ありますので、全体では1/50となります。) 100W入れたら、2WがSWRメーターの為にロスするということです。 メーカー製SWR計で時々、抵抗から煙が出たと聞きますが、大抵の場合、この抵抗に1/4Wか1/2Wくらいの抵抗しか使っておらず、100Wや200Wで連続送信テストをしたら、SWR計が壊れたというのが実態のようです。
ロスを少なくするには、二つの方法があります。ひとつは分流比を大きくすることです。20Tにするとロス電力は1/200になりますが、前述のごとく巻き線の線長が長くなり、高い周波数の計測が難しくなります。 巻き数比を大きくしたい場合、トロイダルコアのサイズを小さくするのが一番効果的です。 ただし、小さすぎると、コアが磁気飽和する以前に、巻線したコアの内側の穴にファラーデーシールドした同軸ケーブルが通らないという問題が出てきますが。

ロス電力を小さくする、もうひとつの方法は、ダミー抵抗を小さくする方法です。 抵抗を半分にすると、ロスも半分になります。

ロスを小さくすると、 低電力時の抵抗両端のRF電圧が小さくなり、 ダイオードの非直線性により10W以下の電力時、検出される直流電圧はさらに小さくなり、SWRの指示誤差が大きくなります。1Wでも誤差の少ない測定を実現しようとすると、この抵抗両端の電圧を大きくする必要があり、高出力時に、検出用ダイオードの逆耐圧をオーバーしてしまいます。
最近のショットキーダイオードの逆耐電圧は低いのが多いので、この問題はすぐに表面化します。今回の実験中でも1WでまともにSWRが表示できるように定数を設定したところ、50W以上は誤差だらけというダイオードもありました。 測定可能な最低電力と最大電力から、最適な抵抗値を決めますが、その値は、ダイオードのVfと逆耐電圧との兼ね合いになります。
ダイオードは、HF+6m帯くらいをカバーするものなら、昔ながらの1N60が最適でした。

いずれにしても、10W以下でも使えるようにするなら、最高表示電力を必要最小限に抑えるべきでしょう。最大通過電力が1KWを超えるようなSWR計では、例えレンジを30Wにしても、10W以下のSWRは誤差だらけです。 特にクロスメーター式のものは、目盛の補正ができませんので、もっと誤差が大きくなります。 ただ、この誤差は必ず良い数値が表示される方向にずれますので、考えようによっては都合が良いかもしれませんね。 

SWR計の通過電力は決して、大は小を兼ねる事はありません。 最大通過電力3KWのクロスメーター式SWR計でFT-817につながれたアンテナのSWRは、レンジを30Wにしても測れません。


 

C結のGND側容量

トリーマーと固定コンデンサの合計容量はトランスの分流比とダミー抵抗の値で決定されます。浮遊容量を無視すると、このGND側コンデンサの容量Cgは、分流比をN、 ダミー抵抗をR, C1,C3の合成容量をChとすると

Cg は概略 Ch x N x (50/R) となり、

例の回路では、4PF x 10 x (50/51)ですから 約40PFです。

40PFの1.8MHzのリアクタンスは約2.2KΩですから、R3,R4は22Kもあれば十分ということになります。 しかし、さすがにオスカーブロック製のSWRメーターに使用されていたメーター感度でも1Wでフルスケールは得られず、後日、10KΩに変更しました。 シリーズに入れた470uHのチョークコイルを1.8mHに変更すれば22kΩくらいのインピーダンスになりますが、あいにく手持ちがありませんでしたので、470uHを4個シリーズに接続して、効果の確認だけは行い、また、1個に戻しました。

このようにして作られた回路で、トリーマーを調整してFWDとREFのバランスを調整しますが、正しい調整は必ず、最低周波数でREFが最小になるようにトリーマーを調整することです。
実際に作ると、1.8MHzでのREF最小と50MHzのREF最小のトリーマー位置は異なります。ここは、1.8MHzの最小位置が理論的なバランス位置です。50MHzでトリーマーの位置が異なるのは、回路の浮遊容量やインダクタンスが影響してバランスをくずしているものです。従い、この高い周波数でバランスを崩す要因を探し出し、それを矯正するのが正しい調整方法となります。 しかし、それは、とても大変は作業で、場合によっては、CM結合器を丸ごと作り変える必要まで生じます。 
どうせ、アマチュアが使用するものと、割り切れば、自分で納得できる周波数でバランス調整し、その他の周波数は我慢するという考えが、一番利にかなっていると思います。

下の画像は、実験に使用したCM結合器です。 バラック配線された、かなりいい加減な基板ですが、純抵抗負荷の場合、ローデ・シュワルツで確認できるSWR値に対して、針の幅くらいの誤差しかありません。

1.8MHzでREF最少になるようトリーマーを調整した後、50MHzで、REF最少になるよう、トロイダルコアの位置や傾き、さらに抵抗、コンデンサの向きや傾き、コア中心を貫通する同軸ケープルの位置や、配線経路を細かく調整しました。 バラック構造だから調整できましたが、同じ物を、もう1個作れと言われても、多分できないでしょうね。

Swrm3

28.5MHzで50Ωダミー抵抗へ出力し、ローデ・シュワルツの通過型電力計で39.6W、SWR1.03と表示されるときのパワーメーターとSWRメーター振れです。  実際のSWR値より低く出ています。これが誤差ですが、SWR1.0でないところがまだ救いです。  私たちが通常扱う同軸ケーブルを含めたアンテナ系でSWR1.0という数値はあり得ない数値です。もし、SWRメーターがSWR1.0を指したら、それは内部のダイオードの特性を含めたSWR計の性能があまいと考えねばなりません。

Swrm1

私の自作のSWR計も、市販の数万円程度のSWR計も、純抵抗だけで校正されていますので、リアクタンスを含んだ実際のアンテナの場合、SWRメーターの値が1.0以外を指していたら、「SWR1.0ではありません」という事だけは正しいですが、指示されたSWR値は正しい値かどうかは解りません。  SWRとリアクタンスの関係で触れたように、リアクタンスが含まれるとメーター指示は低いSWR値を指示する傾向があるようです。実際値より良い値が指示される訳ですから、健康にはよさそうです。

SWR計がSWR1.5とか2と指示したら、SWR1.0ではないという事と、2より1.5の方が、まだましであるという事だけは正しいと思わないと、長生きできないかもしれませんね。 

ところで、自作のSWRメーターの校正ですが、SWRは100Ωの抵抗をSWR計のアンテナ端子に直接接続し、1.8MHzとか3.5MHzのような低い周波数で5Wくらいを出力し、SWR2.0になるように調整したらOKです。28MHzや50MHzでSWR2.0を調整すると、100Ω自身のSWRが不明ですので、意味がありません。 また、パワーの調整は中心周波数、例えば14とか21MHzで50Ωダミー抵抗に出力しますが、出力値はトランシーバー内臓のパワーメーターで校正を行えば問題なしです。 ローデシュワルツのパワー計でチェックしたとき、昔のTS-930SやTS-850S及び最新のFT-450、FT-991のパワーメーターの指示は誤差5%以内に収まっていました。

ここでご留意いただきたいのは、リグ内臓のパワーメーターは正確でありますが、最近のモデルについている、出力設定をデジタル表示で可変できる出力表示は誤差だらけとい事です。 100W機でも50W機でも最低5Wくらいまでは1Wきざみで可変できるようになっていますが、仮に5Wと設定しても3.5MHzでは5Wの出力が出ても、28MHzでは2Wしか出ないという事を知っておくべきです。 ただし、この場合でも内臓出力計は2Wと正しく表示します。

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2012年12月 6日 (木)

TS-930S 電源レギュレーター破損

<カテゴリ:TS-930>

話題は、私が再開局した4年前に遡ります。 壊れたTS-930Sを貰い受け、動作チェックを始めました。 受信は出来るようだけど、AMが全く音なし。送信モードには切り替わるけど、POWERメーターは全く振れない。ICもほとんど振れない。VCに切り替えたら、メーター振り切れ。あわてて送信中止。 受信状態で+Bラインをチェックすると、28Vの電源が安定化されていなく38Vくらいになっていました。 今のチェックでファイナルが壊れていないかな? とにかく、ファイナルへ電源を供給する赤と黒のワイヤーにつながれたギボシ端子を抜くことにしました。

(電源修理完了後、改めてファイナルをチェックしたところ、トランジスタはすべて生きてました。ただし、出力は出ませんでしたけど。)

電源OFF状態でこの安定化電源用のQ1とQ2をテスターで導通テスト。コレクタ・エミッタ間が通通でした。2石ともNGです。このトランジスタの品番は2N5885。スペックを調べると

  • IC max 20A
  • VCEO max 60V
  • hFE 20-100
  • PC max 200W

Ts930ps この程度のスペックなら、いくらでも代替があると、その他の補修部品を含めて広島市内にある量販店系列のパーツ屋に部品探しに出かけました。 トランジスタ売り場には、CQ出版社のトランジスタデータブックが紐でつるしてあります。部品棚にある現物の形状からPC=200Wくらいのトランジスタを見つけては、データブックでスペックを確認していましたら「サンケン」の2SC2922という馬鹿でかいトランジスタが見つかりました。IC maxが17Aですが、その他の規格はすべてOK。TS-930Sのファイナルの最大電流は12A以下であり、その他の電流を入れても15A以下。これを2個パラに使えば余裕がいっぱい。しかし、値段が1個1500円。他を探しましたが、使えそうなトランジスタはこれしかありません。結局これを2個買いました。今、このトランジスタを通販で買うと840円ですから、かなり高い買い物でした。

代替のトランジスタの形状は全く無視です。既存の壊れたトランジスタを放熱板から取り除き、代替のトランジスタが貼り付けられるように放熱板に新たにタップを切ります。タップは製品開発の過程で、追加するのは当たり前で、昔使ったタップが、工具箱の中に、ごろごろ転がっています。電動ドリルで下穴をあけ、3ミリのタップを切っていくと途中で動かなくなりました。駄目だア、と逆回転させたとたん、タップが折れてしまいました。しかも、アルミの表面から0.数ミリの高さで折れてしまい、抜く事も出来ません。

やむなく、折れたタップはそのままにして、このタップを避けながら、また別の位置に穴を開け、タップを切ります。今回は下穴の直径を2.8ミリにしました。最初は2.7ミリの下穴でしたので0.1ミリアップです。タップが折れてから2.7ミリの下穴は1ミリ厚の鉄板用だったと後悔。

レギュレーターのトランジスタの交換というのは、タップ切りがうまく出来るかだけが難題であり、それ以外は楽勝です。回路図通り配線したら簡単に安定化電源は復帰しました。しかし、まだ問題が。 電圧を28Vに調整しようと、半固定抵抗を回すと、この半固定抵抗がバラバラに壊れてしまいました。半固定抵抗を、又買いに行かねばなりません。しかし、面倒なので180Ωの抵抗を3本シリーズに接続し、その接続部分からタップを出し、固定抵抗にしてしまいました。調整はできませんが、電圧は28.2Vとなり問題なしです。

930pwrtr_2  930pwrsvr_2

シリコングリスたっぷりのサンケントランジスタ(左)  180Ω3本で代用した半固定抵抗(右)

2SC2922のデータシートをダウンロード

同じように、タップを切り直してでも、トランジスタを交換しようと、お思いでしたら、トランジスタの外形がプラスチックモールドで、絶縁シートや特殊なワッシャを必要としない物を選べば楽勝ですよ。 2SC2922のコレクタは、絶縁されていなかったような。・・・・ 忘れました。

別件の用事で、Digi-Keyを覗いたら、2N5885Gが356円で売られていました。3000円+交通費もかけて買い、タップを折りながら苦労したのは何だったん! これぞ、ほんとのタップ折り損のくたびれ儲け。  ただし、Digi-Keyの送料は一律2000円です。ご参考まで。

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2012年12月 2日 (日)

TS-930 MODEスイッチ破損

<カテゴリ:TS-930>

メイン機として使用していました、TS-930Sのモードが突然切り替わらなくなりました。 モードSWはロータリーノブですが、スイッチ部分はスライドSWになっており、ロータリーノブを回転させると、それを水平移動に変換し、薄いステンレスの板でスライドSWまで伝達する構造です。 このステンレスの板が折れてしまい、シャフトの回転がスライドSWへ伝わらないというのが故障の全容でした。

Ts930modesw アマチュアが修理する場合、一番困るのが、こういう電気機構部品といいますか、メカニカルな部品の故障です。しかも、今回は30年前くらいに流行したロータリーSWをプリント基板に実装できると、設計者の間で人気が出たリモートシャフトと呼ばれるスイッチです。商品を開発する上で、非常に便利で、デザイナーがデザインしたパネル配置と電気屋が設計する基板とのマッチングがフリーに出来、アルプス電気や松下電子部品(現パナソニック)が商品化したものです。 TS-930には松下電子部品製が使われていました。 ところが時代が過ぎ、どんなに安い家電製品にもマイコンが搭載されるようになると、回路の切替はIC化され、メカニカルSWの出る幕はなくなっていき、いつの間にか廃番部品となり、市場から姿を消しました。

KENWOODにメールでKENWOODのサービスパーツナンバーで在庫を問い合わせしましたが、予想通り在庫なし。近くのハムショップにジャンク品の問い合わせをしましたが、これも無し。 ヤフオクでこのSWが売りに出されるのを3ヶ月間待ちましたが、さすがにモードSWのみの出品はなく、やむなく、完成品をゲットすることに。もちろん、故障品です。

やっと、MODEスイッチのリモートシャフトのみを交換して、TS-930Sは、またメインに返り咲きました。

同じようなトラブルに遭遇されたとき、安全にリモートシャフトをスライドSWから取り外す方法を紹介します。むやみに引っ張ってロック用のツメが壊れたら、おしまいです。壊さないようにうまく取り外して下さい。

Ts930mode1sw

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2012年11月30日 (金)

FT-450 CWモニターのキークリック音

<カテゴリ:FT-450>

CWモニター音のキークリック音の改善の話です。

Img_0868t_2私のFT-450はもっぱら6m専用機として使用されており、ヘンテナとの組み合わせで、すでにDXCCの19エンティティーもワークしておりますが、そのほとんどはCW QSOです。 以前、ヘッドフォーン音量と音質がおかしく、モニターのキークリック音が大きいと紹介しましたが、その修復後でもCWのモニター音のクリック音は、メイン機のTS-930やサブ機のTS-850に比べて、比較できないほどのレベルでした。価格の差もあり、諦めていましたが、偶然、このキークリック音を改善するためのソフトのバージョンアップがある事を知りました。

そのページからダウンロードしたファームウェーアーをインストールすると、確かにクリック音の改善が認められます。TS-930のようにはいきませんが、十分我慢できるレベルまで改善されていると思います。

YAESUの公式WEBページから探すことは出来ませんが、YahooやGoogleの検索エンジンからなら、今でもそのページをアクセスできます。 (gooからは検索できませんでした)

「FT-450 バージョンアップ」で検索してみてください。 ”アップデート”という表題が見つかると思います。

ソフトの変更だけで改善する手段ですから、限界はありますが、バージョンアップ後、キークリックはあまり気にならなくなりました。

なお、このバージョンアップは”D”の付いていない旧モデル用ですので、くれぐれも間違いの無い様にしてください。”D”モデルの使用者に聞いたところ、すでに改善済みとのことでした。

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2012年11月29日 (木)

TS-850S ALC動作異常

<カテゴリ:TS-850>

ALCが動作しているとき、ALCレベルを示す棒グラフと、送信出力が脈打つというトラブルの対策です。

メインのTS-930Sが機構部品の破損で操作不能になり、その部品探しをしている最中なので、サブのはずのTS-850Sが現在メインで使用されております。 その中で、3.5メガのアンテナは7メガのフルサイズダイポールをMTUで強制同調させて使っている関係で、非常に帯域が狭くなっております。ベランダに置かれたMTUをいちいち調整し直すのが面倒なので、SWR1.5位いの範囲ならそのまま使っていますが、CWで送信すると、ALCレベルが周期的に揺れて、それに伴い出力も波打つというトラブルが発見されました。アンテナとの整合状態がSWR 1.2以内くらいなら異常は発生しません。

判りやすく説明すると、アンテナのマッチングがSWR1.5くらいまで悪くなっている状態で3.5メガでTUNEテストをすると、出力を上げたとき、ALCのメーターの棒グラフが最小から最大まで1秒くらいの間隔で脈打つというものです。この脈打ちの周期に同期して出力も脈打ちます。7メガでは発生しませんが、3.5メガで発生します。

故障なのか、もともとの性能なのか、不明でしたのでGoogleで「TS-850S ALC」で検索してみました。すると、いっぱい出てきました。You Tubeに動画が存在するほどの、かなり有名なトラブルみたいです。

原因はALCアンプのマイナス電源を作っているDC/DCコンバーターの不具合みたいです。新品のころは、元気良く発振していたマルチバイブレーターが、トランジスタのhFEが低下したのか、周囲の電解コンデンサが劣化したのか、なんらかの原因で発振が停止するようになったのが直接の原因のようです。

手っ取りばやく対策するには、マルチバイブレーターの正帰還量を増やしてしまえばよいことです。修理事例としてはベース抵抗を小さくする方法が多くありました。

Ts850dcdc 問題の基板の名称は「X59-1100-00」で、その中にあるR2とR3を22KΩから13KΩに変更したら直ったと有りました。この対策なら現行の22KΩにパラに抵抗を足してやれば済むことで、早速、ケースを開け、この基板を探し出し、抵抗を追加しようとしましたが、かなり奥まったところにあり、とてもそのままでは半田付けできません。やむなく、基板を引っ張りだして、コネクターを外し、基板単体にした上で、手持ちの47KΩをR2とR3にパラ付けしました。合成抵抗は15KΩとなり、13KΩにはまだ不十分ですが、基板を元通りに取り付け、3.5メガでテストしました。SWR 3でも、問題なしとなりました。

Ts850dc1_2  Ts850dc2_3

とりあえず、当面の異常現象は解決しましたが、3.5メガでSWRが悪化したときに、出力を制限するALC動作が、他のバンドのときより、きついという現象が残っています。SWRが1.5くらいのとき、最大出力は70Wくらいしか出ません。SWR1.2くらいでやっと100Wです。いくらアンテナチューナーを内蔵しているからと言っても、プロテクトのかけ過ぎです。これが正常状態なのか異常状態なのか判りませんので、暫く様子をみます。

Ts850dc3 暫く様子を見ていましたら、3.5メガでCW送信すると、時々、ALCの動きがおかしくなり始めました。どうも以前の症状が再発したようです。アンテナの負荷条件が変ったのかもしれません。ベース抵抗を小さくするという対策だけでは不完全のようです。正帰還量を増やす為ならベース・コレクタ間の2200PFを増やせばよいことですから、このコンデンサC1,C2に1000PFをパラに追加することにしました。前回の47KΩ追加と合わせれば、CR時定数はほぼ同じとなりますので、都合もよさそうです。ちょうど手元に1608サイズのチップコンデンサがありましたので、これをパラに追加しました。今度は問題なさそうです。ただし、プロテクトのかけ過ぎは直りません。

そうこうしている内に、故障中のTS-930Sが修理完了しましたので、またサブ機に逆戻りしてしまいました。プロテクトのかけ過ぎの問題は、とりあえずお蔵入りです。

プロテクトのかけ過ぎは、TS-850Sの問題では無く、アンテナ系が原因でした。詳細は、カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムの3.5MHz ALC動作異常 で紹介しています。

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2012年11月13日 (火)

クラニシ NT-636の修理

<カテゴリ:アンテナチューナー>

マニュアルのアンテナチューナーで、クラニシ製のNT-636を、クラニシが店仕舞いするとアナウンスがあってから、慌てて購入しました。約1年くらい使っていたころ、煙が出て使えなくなりました。 中を開けると、バンドスイッチのベーク板が黒ずんで焦げています。 送信中にバンドスイッチを回したために、アークが飛び、その勢いでベークが燃え出したようです。アークの飛んだ端子の部分は割れてしまい、スイッチの役目をしなくなりました。

ロータリースイッチを手配するため、インターネットで調べましたが、同じ形状のものを見つける事ができませんでしたので、寸法が明示されている「岩崎アイセック(株)」という会社のB1111Dという品番のロータリースイッチを手配しました。(すでに廃番で現在は入手不可)。 シャフトを切断して、取り付け配線をする段階になって、ロータリースイッチのストッパーの位置が変更出来ない事が判りました。 スイッチは11接点で、切り替えポジションは12ポジションです。12番目のポジションはコモン端子になっており、どの接点とも接触しない構造です。電気的には、この構造でも、NT-636に使用できますが、NT-636のオリジナルスイッチは1番目のポジションがオープン状態でどの接点にもつながりません。

Nt636

これは、オリジナルのNT-636は、1番目が、1.9MHzのAポジションに設定されいるのに対して、新規に手配したスイッチは12番目が1.9MHzのAポジションになるということです。スイッチを反時計方向に回しきったときが3.5MHzで、時計方向に回していき、50MHzを過ぎて最後のポジションが1.9MHzになります。 操作面で不自由しますが、動作はOKですので、これでやむなしです。

もし、また壊れたら、今度はこのストッパーの位置を確かめてから買うことにします。

なお、取説には、送信中にバンドスイッチを操作するときは、10Wで行うことと書いてありましたが、どのアンテナチューナーでも同じことですが、送信中にコイルのタップを切り替えるとスパークする可能性は高く、以降、タップを切り替えるときは送信しないことにしました。

NT-636の取説をダウンロード

ところで、今頃気づいたのですが、取説には「ワンタッチCAL」というつまみがあり、進行波電力と反射電力、それにSWRのキャリブレーション機能が付いたプッシュプルSW付きの可変抵抗器が説明されています。 しかし、私の現物は単純な可変抵抗器と、セパレートになったCAL切替SW式となっていました。 途中で変更した理由は判りませんが、現在のセパレート方式が直感的で判りやすいですけど。

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マッチングトランス式アンテナチューナー

<カテゴリ:アンテナチューナー>

マッチングトランスを使ったアンテナチューナーの試作記です。

フェライトコアを使った広帯域バランは主に、不平衡/平衡の変換に使われますが、インピーダンス変換用トランスとしても利用する事ができます。

これを利用してこのブログでも21MHz用短縮デルタループを紹介しています。このときのトランスは、6本の平行ワイヤーを束にして6回巻いたコイルを直列に接続したもので、そのタップ位置を選ぶ事による目標に近いインピーダンスへ変換すると同時に平衡変換しておりました。(カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムのアマチュア無線局 再開局参照)

Trans3_2

上の表はコイルが6組のときのインピーダンス変換テーブルで、50Ω不平衡を1.4Ωから1250Ωまでの平衡に変換できることを示しています。

Hentena_2 この考えを一歩進めて、すでに共振しているアンテナエレメントに1/2波長の整数倍の長さの同調フィーダーを取り付け、この根本に、このトランスを取り付けても同じ効果が得られます。キュビカルクワッドの共振周波数を調整するのにスタブを使いますが、このスタブがλ/2になったと思えばいいんです。こうすると、マッチングトランスをマストの上に置かなくても、少なくとも手の届く位置まで降ろしてくることができます。スタブの長さは1/2波長ごとに変化しますので、任意長では駄目ですが、50MHzなら3mの整数倍ですから、処理が楽です。

Img_2980 このアイデアで6mのヘンテナを作り、ベランダの手すり付近につけたマッチングトランスで広帯域の整合を実現しております。実際のスタブの長さはマッチングトランスの誘導性リアクタンスが加味されますので、その分短くしアンテナ側に容量性リアクタンスを含むようにする事により共振させます。 トランスのタップを調整して、SWRを1.0に追い込みますが、タップを切り替えるとリアクタンス成分が変化しますので、共振周波数がずれます。共振周波数がずれたら、同調フィーダーの長さを再度調整します。 このようにかなり面倒な調整が必要ですが、何よりも、全ての作業がベランダで完結するという高所恐怖症持ちにとっては非常に有り難いメリットがあります。

2014年7月追記

整合トランスのロスを測定したら、約半分がトランスでロスしている事がわかりました。現在はコイルとバリコンによるL型アンテナチューナーに変更しています。 詳細は、50MHz用 L型アンテナチューナー を参照下さい。

今までのトランスは多重巻きのコイルの数で分母と分子を構成する分数計算でしたが、スライダックトランスのように、ひとつのコイルに、いくつものタップを出して、このタップ位置でインピーダンス比を変えるオートトランス形式の高周波トランスの可能性を検討しました。

Trans2

オートトランス式12ターン巻きのインピーダンス変換テーブルです。黄色の部分は巻き数が少ない為、ロスが多いと予想し、使わないとしても3.1Ωから800Ωまで変換できます。ただし、このスタイルでは不平衡のままです。平衡変換しようと思えば、対称型のオートトランスにするか、このトランスの後にバランを付けるかで対処できます。

(対称型トランスで作った場合、このチューナー内で発生するロスも2倍になりました。結論的には、不平衡のままでインピーダンス変換した後、フロートバランで平衡に変換する方法がロス最少となりました。)

適当なダミー抵抗とアンテナアナライザーでチェックすると、ほぼ理屈通りのタップでインピーダンス整合ができました。周波数が10MHzを越えると、トランスのインダクタンスが無視できなくなりますが、それは、アンテナチューナー化したとき、アンテナの持つリアクタンスと一緒にキャンセルさせれば問題ありません。

Img_3220 オートトランスによるインピーダンス変換のメドが出ましたので、共振していないアンテナエレメントにキャパシタンスかインダクタンスを付加し、目的周波数に共振させた後、この純抵抗になったアンテナインピーダンスにマッチするようにトランスのタップを切り替えて整合させるタイプのアンテナチューナーを作ってしまいました。

Autotrans2

使用したオートトランスは5ターンのコイルを4組、平行巻きしたもので、それをシリーズに接続し、1ターンごとにタップを出したものです。従い、1ターン目のタップのすぐ隣にあるタップは6ターン目のタップとなっています。全部で19個のタップが有りますが、使っているのは9ターン目から19ターン目までの11個だけです。

コイルは最大32uH、最小0.5uH、12個のタップがあり、これをショーティングタイプのスライドスイッチで可変します。 当初、オープンタイプのスイッチで作成していましたが、ダミーアンテナを用意して、300Wくらいを加えると、コイルのタップとスライダーの間でスパークが起こりましたので、ショーティングに変更しました。100Wくらいなら、オープンスイッチでも実際のアンテナで実用できました。

バリコンは最大1200PF、最小20PFのスライド式ポリバリコンで、計算上の耐圧はAC10KVです。

操作は簡単です。トランスは50Ωに仮設定したまま、バリコンかコイルを調整して、アンテナを共振させます。共振したかどうかはSWR値をディップさせる事で知ることができます。共振したら、トランスのタップを順次切り替えて、SWR最小のポジションを選択します。タップを切り替えると、トランスのインダクタンス分が変動するので、共振周波数がずれますから、バリコンで微調整します。トランスのインピーダンス可変ステップは階段的ですが、SWRはすんなりと1.0付近まで、いとも簡単にスコンと気持ち良く落す事ができます。このチューナーの特徴は、LCタイプのチューナーより、帯域が広いということ。LCで整合回路を構成すると、アンテナの共振以外にインピーダンス整合回路も周波数特性を持ちます。従い、アンテナ自身がもつ帯域より通常狭くなりますが、このタイプは帯域の縮小がほとんどありません。ベランダから突き出した釣竿や、現用アンテナに接続して、100W運用で全く問題なく使えました。

チューナー内部で発生するロスは、7MHz用垂直ダイポールを3.5MHzに同調させた時、πマッチのMTUと同等か、それよりいくらか良いレベルでした。 クラニシのNT-636(Tマッチ)よりはロスが少ないようです。ロスの原因は誘導性リアクタンスの連続可変にバリコンを使っている事です。連続可変のインダクターが実現できれば、Lタイプに近い効率が期待できるかも知れません。 しかし、何回か使っている内に、整合状態でのトランスのタップ位置が、予想されるインピーダンスと大きくかけ離れる場合がありました。 特に、周波数が高くなったり、アンテナが50Ωより低いインピーダンスになった場合です。 このような状態では、計算通りのインピーダンス変換をしていないようです。 このチューナーはATUを作る為の基礎検討の為試作したものでしたが、トランスの特性がネックとなり検討はストップしてしまいました。

マッチングトランスだけのその後の検討結果はインピーダンス変換トランスを参照下さい。

また、連続可変可能なATUの試作と実使用検討は、後日、T型整合回路を使用して実験する事にしました。 こちらを参照下さい。

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