2012年8月23日 (木)

SWRメーターとアンテナのリアクタンスの関係

<カテゴリ:SWR計>

アンテナは共振状態で使いましょう。という話です。

アンテナのインピーダンスが純抵抗でなく、リアクタンスを含む場合のVSWRはどのようになるのか? 

一般にSWRと言われているのは、電圧定在波比 (Voltage standing wave ratio - VSWR)
の事で、伝送線路上の波(定在波)の最大電圧の絶対値VMAXを最小電圧の絶対値VMINで割った値と定義されており、複素数は含みません。

出力インピーダンスがZoの純抵抗で、アンテナ負荷がRaの純抵抗ならVSWRはZo/RaまたはRa/Zoで表すことが出来ます。 この計算式を、アンテナ負荷がZa=Ra+jXaの様にリアクタンスXaを含む複素数の場合でもそのまま、このZaの絶対値で現せると考えている人が意外に多くいます。果たしてそうでしょうか。

50Ωの特性インピーダンスを持つ同軸ケーブルに接続されたアンテナが、仮に純リアクタンスの50Ωであったとすると、このアンテナは電力の消費がありませんので、送り込まれた全ての電力が反射されてしまいます。交流理論を理解されている方なら、納得の結論です。すなわちSWR無限大になると言う事です。そして、このリアクタンスだけのアンテナに少しづつ純抵抗を加え、リアクタンスを少しづつ減少させていくと、次第にSWRは下がってくるのも納得できます。ご存知の通り、50Ωの純抵抗のみになったときSWRは1.0です。

では途中はどんなSWRを示すのでしょうか。進行する波に対し反射して戻ってくる波の電圧振幅の割合を「電圧反射係数」と呼び、ギリシャ文字のΓ(ガンマ)で表しますが、この反射計数は複素数です。そして、VSWRの定義の部分で絶対値に変りますので、かなり面倒な計算を必要とします。

アンテナが、50Ωのリアクタンスだけの場合、SWR無限大ですから、抵抗分とリアクタンス分を含んだアンテナインピーダンスの絶対値が50Ωの場合、SWR1.0にはならないと予想できます。

そこで、市販のSWRメーターはこれをどう現しているか実測することにしました。

比較したのはDIAMONDのSX-200、クラニシ アンテナチューナーNT-636に内蔵のSWRメーター、コメットのアナライザーCAA-500、それに自作のSWRメーターです。

Swr3


これらに同じR+C又は、R+Lの直列負荷を接続し、SX-200のみは1W出力と5W出力、クラニシと自作SWRメーターは1W出力でドライブして表示したSWRを読んでいます。CAA-500は内臓発振器の出力でのドライブです。SX-200は現行モデルで生産販売中の物ですから、一番信頼性が高いだろうと考え、比較メーターの中に加えましたが、見ての通り、通過させる出力レベルで大きくメーター指示が変ります。1W出力時の誤差は、しょうがないと諦める範囲ですが、5W出力で33Ω時のSWR値が実際よりオーバーし、100Ω時のSWR値が実際値以下という誤差は異常です。私の製品だけの問題と思いますが。

SX-200は故障していました。詳細は SX-200 SWRメーター修理を参照下さい。修理した結果、5W以上のパワーがあり、負荷が純抵抗なら、ほぼ正確にSWRを表示できるようです。

この中で、純抵抗の時の信頼度が一番高いのはCAA-500でした。

Tlw結果は純リアクタンス時、無限大を指しました。また、33Ω+560PFの負荷は7.1MHzで約52Ωの絶対値のインピーダンスになりますが、この場合平均でSWR2付近を指しました。 一般的に、SWR計やアンテナアナライザーの校正は純抵抗で行いますので、リアクタンスが含まれた負荷に対するSWR値は誤差が大きいようです。

「TLW」というアンテナチューナーのシュミレーターソフトがあります。これに33Ω+560PFのインピーダンス33-J40.05と周波数7.1MHzをセットすると、SWRは約2.8と出ます。多分これが正しいSWR値なのでしょう。

なお、容量性リアクタンスが含まれる時のSWR値が、計算値に近いのは、SX-200で、誘導性リアクタンスが含まれる時のSWR値が計算値に近いのはNT-636ですが、これは、電流、電圧の検出方式の違いによるものです。NT-636はCM結合器と言われる、コンデンサとトランスでピックアップしていますが、SX-200はいわゆるMM結合器(ARRLの技術資料では Cross-connected transformers タイプとして紹介されている)で電流も電圧もトランスでピックアップしている事からこの差が生じたものです。

SWRメーターやアンテナアナライザーのSWR値が1.0を指したら、その時のアンテナは間違いなく共振していて、かつその時のインピーダンスが50Ωであると理解してよさそうです。共振していないアンテナのインピーダンスの絶対値が50Ωになっても、SWRメーターは決してSWR1.0を指示しないと。

この記事の中で紹介しているリアクタンスを含んだ負荷に対するSWR計算シート で、抵抗を一定にしておき、リアクタンスを-100から+100まで少しずつ増加させて、SWRをチェックすると、例え抵抗が50Ωでなくても、リアクタンスゼロの時がSWR最少になる事が判ります。 ただし、実際のアンテナの場合、周波数を可変すると、抵抗分も少なからず変化しますので、リアクタンスゼロの周波数とSWR最少周波数は微妙にずれます。 アンテナの帯域幅が狭い場合、その差は測定誤差の範疇ですが、帯域の広いアンテナの場合、かなりずれます。 しかし、それは、アナライザが表示したリアクタンスゼロの周波数とSWR最少の違いほどの差は無く、真の共振周波数とSWR最少の周波数が違うと、目くじら立てるほどのものでは有りません。

これらの事から、周波数を広範囲に可変できるアンテナアナライザーで、SWR最少の周波数を検知できたら、例えその最少のSWR値が1.0で無くても、その周波数はアンテナの共振周波数であると言う事ができます。(ただし補足のごとく例外も有ります)

バンド内にSWRの最少の周波数があるなら、例え最少のSWR値が2であっても、そのアンテナは共振していますので、SWR1.0の時と同じくらい、よく飛ぶと考えられます。

良く、SWR2でも3でも飛びはほとんど変わらないと言いますが、それは、共振しているときの話で、共振していない、リアクタンスの多い状態では、SWR計が2とか3を指していたら、その時の実際のSWRは4以上かも知れません。 SWR最少周波数がバンド外にあり、そのときのSWRが1.0に近いなら、リアクタンスだけのアンテナをドライブしているに等しいかもしれませんね。

リアクタンスを含んだ負荷に対するSWR計算シート.xlsをダウンロード

リアクタンスを含んだ、アンテナ負荷のインピーダンスの絶対値とSWRが判っていれば、抵抗分Rと、リアクタンス分Xを分離して計算できます。この時のリアクタンス分の極性(プラスかマイナスか?)は判りません。 一般的には、周波数を少しずらす事により、誘導性(プラス)なのか、容量性(マイナス)なのかは判りますが、同軸ケーブル越しに見たアンテナの場合、この判定は出来ません。

Swrrxz


この計算式を利用して、一部のアンテナアナライザーは抵抗分Rと、リアクタンス分Xをデジタル表示させています。 しかしながら、リアクタンスが含まれた途端、SWRやインピーダンスの絶対値は怪しくなってきますので、これをベースに計算されたRやXはもっと怪しいと考えねばなりません。 ただし、怪しいと認識した上で使う場合、表示が無いより価値はあります。   SWRメーターやアンテナアナライザーの表示で唯一信じていいのは、周波数を可変して、SWRが1.0を示したときのみでしょう。

 

 

補足です。

実際にアンテナに接続された同軸ケーブル越しにアンテナアナライザーやSWR計を接続すると、本来のアンテナの共振周波数以外でも、SWRのディップ周波数が存在します。 これは、アンテナを含めた被測定系内に存在する浮遊インダクタや容量が影響して、疑似共振回路を構成している場合と、周波数を可変すると、リアクタンス以外に抵抗分も変化しますので、このリアクタンスと抵抗分の比率により、SWRがディップしたように見える場合です。 そして、正規の共振周波数付近でもデイップしますので、ディップ周波数が複数現れます。 その中でSWRがより1.0に近いディップ周波数が正規の共振周波数に最も近いと考えられます。 この現象はフルザイズや超短縮アンテナではあまり見かけませんが、50%くらいの短縮率のとき時々見られます。 なお、多素子で構成される八木アンテナやキュビカルクワッドのようなアンテナの場合、設計的に共振周波数が2か所出来るようにして広帯域化したアンテナもあります。

また、フルサイズのアンテナでも抵抗成分は周波数により変化しますので、共振時の抵抗成分が50Ωより離れるほど、SWR最少の周波数とリアクタンスゼロの周波数はずれてきます。しかし、この状態のときのSWR変化カーブはブロードで真のSWR最少値とリアクタンスゼロの時のSWR値に大きな差は出てきません。 従い、このような場合、真の共振周波数でもSWR最少の周波数でも、そのSWRの差は極わずかであり、飛びという面ではほとんど変わりません。

合わせこんだSWR最良状態が共振状態であるかどうかは、アンテナのリアクタンスがゼロであるかどうかで判断できますが、SWR1.0でない時は、リアクタンス表示のついたアンテナアナライザーでは判定できません。   長さの長短にかかわらず、同軸ケーブルを介して接続されたアンテナアナライザーでは、アンテナの共振インピーダンスが50Ωなら、アンテナの共振周波数とアナライザーが検出したリアクタンスゼロの周波数は一致しますが、50Ω以外の場合、一致しません。  もし、この不一致が発生しましたら、リアクタンスゼロの周波数と、SWR最少の周波数も一致しません。 この状態の時、より正しい共振周波数に近いのはリアクタンスゼロではなく、SWR最少の周波数となります。(詳細はここで説明しています)

Delicagdm

アンテナの共振周波数を測る測定器として、昔から有るのがグリッドディップメーターです。 左の写真は、真空管をトランジスターに変えて、同じような機能を持つ三田無線の「トランスディッパー」です。

この計器は、理屈的に、アンテナの共振周波数を正確に測る事ができますが、最大の難点は、この計器の発振コイルを電磁的にアンテナエレメントに結合しなければならない事です。 その結合の方法はアンテナエレメントの中央付近にワンターンコイルを設け、そのコイルとこの計器の発振コイルを結合させます。

この状態とは、グリッドディップメーターを手に持ち、アンテナエレメントに結合するわけですから、空中高く張ったアンテナエレメントまで、絶縁材で出来た梯子を用意し、ディップ周波数を探す必要があります。 当然、アンテナエレメントの直下にディップメーターを操作する人が居る訳であり、この人体が導体や誘電体となり、実際の共振周波数より共振周波数が下がってしまいます。

もし、梯子を使わずに、アンテナエレメントを手の届くところまで、降ろしてきた場合も、アンテナの共振周波数は下がってしまいますので、人体の影響と合わせて、もっと周波数は低い方へずれる事になります。

結局、グリッドディップメーターでは、確かに正確な共振周波数は測れますが、実際にアンテナを空中へ張り、そこから給電線となる同軸ケーブルを引き降ろした状態での共振周波数は判らないのです。

SWR計やアンテナアナライザーでSWR最良のディップ周波数が、アンテナの共振周波数とは限らない事は説明しましたが、ディップメーターで測った周波数と実際のアンテナの共振周波数のずれは、SWR最少周波数と共振周波数とのずれよりかなり大きく、アンテナアナライザーを入手した後は、このトランスディッパーは、お蔵入りになってしまったのでした。

プロ、アマチュアを問わず、実際に架設されたアンテナのインピーダンスやリアクタンスを測るのは至難の業です。 結局、ハムバンド以外の周波数範囲までSWRを測定し、 SWR 最小値を確認した上でSWR1.0を追及するしかないのでしょうね。

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2012年8月22日 (水)

TS-930S シリコングリス

<カテゴリ:TS-930>

TS-930も修理が4台目ともなると、電源を入れただけで、どこが一番怪しいか判るようになります。今回も、VFDが一切表示しないという症状から、36.1MHzが発振停止しているのだろうとテストポイントにオシロをつなぐと、出力無し。L77のコアをグリグリと回すと、発振開始。電源を切って10分以上経過してからも確実に発振が開始する位置にコアを固定して、とりあえず致命傷は解決。

サービスマニュアルを片手に全局発のチェックと再調整。各CARの周波数はかなりずれていましたが、すべて、調整の範囲内でした。受信感度もそこそこで問題なし。調整完了後、ダミー抵抗を接続して送信テスト。

TUNEモードで50W出る。CWモードで100Wでる。PROCをONすると、SSBが送信できない。PROC OFFではOKゆえ、7MHzで交信テスト。

JCC移動局と1局交信。問題なし。湯けむりアワードの移動局を見つけ、2局目の交信。ファイナルを送るころ、突然、湯けむりならぬ、白煙がファイナル付近からもくもくと舞い上がり、送信不能に。慌てて、別のトランシーバーでファイナルだけは送り交信終了。

ここから、悪戦苦闘の始まりです。

930fu1_2 送信できなくなった、ファイナルを取り外してみると、ドライバー段Q2,Q3のベースとGND間にはいっている22オームの抵抗が黒こげ。Q2,Q3のMRF485のベース、エミッタ間、ベース、コレクタ間がオープン状態。 22Ωのこげ状態からベースにかなり高い電圧がかかったみたいです。 海外の修理情報ではMRF485の耐圧が25Vしかなく、28Vを印加しているこのモデルは設計ミスであると。 さては、耐圧オーバーでトランジスターがショートしたのか? 

しかし、信頼のKENWOOD。 まさかそのような設計ミスは無いだろうと、MOTOROLAが正式に発行しているMRF485の英文データシートを確かめるとVCEOは最大で35V。なんにも問題なし。先の修理情報が間違っていることに。人の話は鵜呑みにせずに自分で確かめるに限ります。では、今回どうして壊れたのか。

930fu2 原因は放熱板からファイナルユニットの基板を取り外して判りました。放熱板とトランジスタの間に塗布するシリコングリスが蒸発してしまい、全くと言っていいほどありません。結局、この状態で100W運用した為にドライバートランジスタが熱破壊したのが原因でした。

MRF485は入手が難しい為、定番の代替トランジスタ2SC1969に交換すべく通販で注文を行い、その待ち時間の間に、他に問題が無いかチェックする事に。 とりあえず手持ちの2SC1909を取り付け、22Ωは手持ちの1/4Wを取り付けました。

ファイナルユニットの無信号電流が3Aを越えています。相当長い間、放置されていた為バイアス設定がずれているみたいです。これはVR1を調整して1.3Aに設定しなおしました。

次に、ドライバー段のドライブ電流はと、L7を外して電流計(テスター)を挿入し、SENDにしたらテスターがピクリと動いて以後応答なし。テスターが壊れたみたいです。別のテスターでQ2,Q3のベース電圧をチェックしたら0V。何が原因か? 調べたら、D5のBZ192がショートしていました。22Ωの抵抗が燃えた時は、少なくともこのD5は生きていたはず。そして先ほどSENDにしたとたんショートしたみたいです。D5を交換しなければなりませんが、なぜこのD5が19Vのツェナーダイオードなのか判りません。この部分の最大電圧は1.4Vくらいですので、安全を見ても1.9VのZDで十分なはずなのに。

いずれにしても19VのZDなど手持ちがありませんので5.1VのZDで代用することに。

ZDを取り替えて再びドライバー段の電流を調整することに。もちろん、壊れたテスターは内部のヒューズを交換してまた復活。しかし、こんども全く電流が流れません。まだ壊れた部分があるようです。

ここまで来て、関係するパーツを全部チェックすることにしました。結果、さきほど交換したD5は再びショート。Q6 2SC496Yはショート。L6の150μHはオープン。 仮付けした2SC1909もオープン。

L6は手持ちの100μHのコイルで代用し、手持ちの無い2SC496Yはまた通販で注文。

930fu3_2 全ての部品がそろい、各トランジスタの絶縁用マイカシートの裏表にシリコングリスをたっぷりと付けて基板と放熱板を固定します。写真では雑に塗ってあるように見えますが、厚く塗ってあり、この状態で基板を密着させると、自然に均一状態になります。現役時代のノウハウです。 また、ドライバー段の発熱を検出して、アイドリング電流を調整するサーミスタD2とQ2の止めビスの間にもたっぷりとシリコングリスを塗り、かつD2がビス頭に常に接触するようD2の足を成型しました。その上でドライバー段のアイドリング電流を70mAに、ファイナルのアイドリング電流を1.3Aに再調整。この状態で十数分間放置し、アイドリング電流がドリフトしない事を確認。

もちろん、Q2,Q3のベース、エミッタ部分のスルーホールには銅線を挿入してハンダ割れ対策も実施。

最後にバラック状態で10Wの送信テストを行い異常なしを確認。

930fu4 930fu5

放熱板を最終状態に取り付けて7MHzフルパワーで交信テストもOK。

PROC ONでSSBが発射できないのはPROC SWの接触不良。接点復活剤を注入してSWも復活しました。

チェックし始めてから1週間。晴れて、修理4台目のTS-930Sは復活しました。

ファイナル段のような大電力を扱う回路の修理は最初に全部品の異常有無を確認すること。半田付けされていて、テスターだけでは判断が付かない半導体は取り外してでも確認する必要があると理解できたところです。確認不足なら今回みたいに、OKの部品を次々に壊してしまいます。

また、かなりの期間、未使用のトランシーバーは、例え短時間の送信テストがOKでも、基板をめくって、シリコングリスの状態をチェックすることですね。

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2012年7月21日 (土)

FT-450送信トラブル(落雷による誘導雷)

<カテゴリ:FT-450>

受信感度大幅低下でダイオードを交換し、6mで交信まで行って、故障が直ったことを確認したのですが、一夜明けて、次の朝、6mで交信をしようとすると、SWRが無限大を指します。 アンテナにトラブル発生とバランをチェックすると線が1本宙ぶらりん。 よし、これこれと修理して再度送信しても、まだ、SWRは3くらいを示します。 アンテナアナライザーでチェックしても問題なし。アンテナを外して、アンテナの代わりに50Ωのダミー抵抗をつなげば、SWRは1.0。ケーブルも異常なし。

そうこうしている内に、FT-450の出力調整が効かない事がわかりました。Modeに関係するかとモード変更している内に、つい、さっきまでOKだったSSBで、変調かからず、キャリアーのみ送信。CWのキーイングがしなくなった。 50MHzのFM送信時150Wの出力になった。 7MHzのAMでPTTをONしてもキャリアが大きくならず、最大になるまで7秒もかかる。

色々いじっている間にどんどん症状が悪化していきます。

これ以上いじっても壊していくばかりなので、近くのハムショップへ修理依頼。

故障の原因で思い当たるのは、前日の雷。HFのアンテナは全部トランシーバーから外したのに。FT-450は6mのアンテナをつけたままで外し忘れ。 案の定、修理完了した結果、壊れたのはアンテナ入力関連部品とダイオードSW用電源ラインに入ったタンタルコンデンサのリーク。

Ft450schema

上の配線図の赤文字のパーツが交換対象になりました。

最初SWRが無限大になったのは誘導雷の電流でバランのハンダ付け部分が熔けて線が外れた為。ここを修理してもSWRが3くらいにしかならなかったのは、送信周波数のコントロールが効かなくなり、53MHz当たりの周波数で送信されていたことが原因でした。

修理から返ってきたセットに同梱されていた修理明細書には、前回壊れて代用したダイオードも正規品に変更されていました。これは、修理依頼書に過去の修理履歴を書いておいたのでサービス担当者が親切に正規品の1SV271に交換してくれたようです。

雷がなったら、アンテナを外す。電源コードを抜く。今後徹底することにします。

ところで、このトラブルを再度検証してみると、プログラミングの未熟さがにじみ出ていますね。 ハードトラブルが発生した結果、プログラミング上の想定外が発生したため、それに対応する処理がされていなく、表面上の動作がめちゃくちゃになったのが実態のようです。 プログラミングのプロは想定外が起こったら無視するというプログラムをつくり、ユーザークレームが有ったら、対策するという方法を取ります。(私の意見ではなく、NEC系列のさるソフト開発者の言葉でした) ”D”以降のモデルは対策されているかも知れませんね。

 

 

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2012年7月18日 (水)

TS-930S 送信不能(ファイナルユニット不良)

<カテゴリ:TS-930>

930pwrunit_4送信不能の原因は、ファイナルアンプのドライバー付近のスルーホールが、熱でひび割れし導通不能となっていることです。これは、初回の修理で判っており、疑わしいスルーホールのハンダを再度熔かして修理してきました。その後3年以上経過する内に、ここ1年くらいの間で、たまに送信不良が発生し、フルパワー送信を行うと直ってしまうという状態でした。しかし、最近送信不能の発生の頻度が増えてきましたので、スルーホールを銅線で結んでしまおうと、ファイナルユニットの分解修理をする事にしました。

サービスマニュアルの基板図に、部品の足が貫通せずに、ハンダだけで両面を結んでいるところを見つけ、印を付け、スルーホールの穴のハンダを熔かしながら、銅線を貫通させ両面で再ハンダしていきます。

この作業を始めていたら、ドライバートランジスターQ2,Q3のコレクターからファイナルまでの大電流が流れるスルーホールには、すでにワイヤーが埋め込まれており、両面の銅箔パターンに、ワイヤーがハンダ付けされている事が判りました。設計的に予め対応したのか、修理の途中で誰かが処理したのかは不明ですが、ハンダだけでなく、銅線でも両面をつなぐという処置は有効なようです。なぜなら、発熱はこれら銅線入りスルーホールの方が大きいのですが、ここでの導通不良は一度もありません。

930pwrunit2_3 930pwrunit3_2 

過去何回となく、送信不能となり、その都度、Q2とQ3のコレクタ、ベース、エミッタの各ハンダ付け部分を、再ハンダして対応した訳が判りました。このQ2とQ3のコレクタ側はワイヤーで両面をつないでいますが、ベースとエミッタはハンダだけでつながっています。設計的にはここの穴にトランジスタの足を貫通させて、両面でハンダ付けするつもりだったかも知れませんが、実際のセットではトランジスタの足を短く切り、貫通させていません。今回この部分の穴にワイヤーを貫通させ、両面で結びました。もちろん、その他のハンダだけのスルーホールにもワイヤーを貫通させて修理完了。

この状態で様子をみようと思います。

3年経過しましたが、問題の再発はありません。

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2012年7月16日 (月)

TS-930S 28MHz 100W WARCバンド送信TSS保障認定

<カテゴリ:TS-930>

故障したTS-930Sを貰い受け、販売店経由でKENWOODに修理を依頼したところ、断られてしまいましたので、インターネットで英文サービスマニュアルを入手し、自分で修理する事にしました。首尾よく修理できましたので、このモデルを使えるようにTSSで認定を受けることにしました。古い機種ですので、18,24MHzの送信は禁止措置が取られていることと、28MHz帯の最大出力が昔の規定通り50Wとなっています。これを改造して18,24MHz帯の送信可、28MHz帯での最大出力100Wの保障認定を受けました。

以下その方法を紹介します。  

WARCバンド(18,24MHz)の送信許可。

Img_4056 これは、非常に簡単です。スピーカーと電池ケースが取り付けられたアングルの止めビス4個を外すと、その下にデジタル基板があります。ちょうど電池ケースの真下当たりにX57-1020-00 という基板が有り、そこにコネクタが接続されていますので、このコネクタを抜きとります。それだけです。心配な方はこの基板を取り外してください。

マイクボリュームを最小にして、スタンバイスィッチをSENDにすると、ON AIRのインジケーターが点灯するのを確認してください。

スピーカーアングルを元通りに取り付けるとき、引き抜いた電池用コネクタの挿入を忘れないように。

28MHz帯の最大出力を100Wに変更する。

出力を50Wに規制する為に設けられたダイオードD150をカット(OPENに)するだけで対応できます。セットを裏返して、受信用バンドバスフィルターが集中するエリアの右側にあります。このダイオードのリード線をニッパでカットするだけでOKです。

930tss

TSSの保障願いには、

18,24MHz帯送信可の改造内容:X57-1020-00 基板にあるコネクターを抜き取る。

28MHz帯最大出力100Wの改造内容:D150カット(廃止)。

と書いて、図面や写真は添付しませんでしたが、承認していただきました。

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2012年7月12日 (木)

Super Rad(スーパーラド)アンテナ

<カテゴリ:アンテナ>

Super Radアンテナの存在を知り、160mバンドでの可能性が有りそうということで、また実験を始めました。(実験は2010年5月~6月ごろ)

Sra

上の写真は左から製作した順番に、15m、17m、40mそれに80m用です。

それぞれ、この室内設置状態で交信できています。室内と言っても木造鉄骨の3階の部屋の窓際で地上高はすでに8mあります。 交信数は全23局、内訳は

  • 21MHz 6局
  • 18MHz 3局
  • 7MHz  10局
  • 3.5MHz 4局

全て国内交信。貰ったり送ったRSリポートは全て59か599。スーパーラドアンテナを検討しようと試作始めたのは、160m用のアンテナが無いので、それを実現しようと、簡単な21MHz用から製作を始めたものです。しかし、160m用を作る前に中止してしまいました。

現用のアンテナとの差を比較していくと

  • 21MHzでは、ワンエレループと比較。受信感度S2つの差。このバンドのみ相手からの受信レポートがあり、Sメーターの読みでS2つ差との事。こちらの送信出力を5Wにして、SRAではS7、ループではS9のレポートでした。
  • 18MHzでもワンエレループとの比較で受信感度S2つの差。
  • 7MHzは垂直ダイポールとの比較で、受信感度でS2つの差。
  • 3.5MHzも7MHz用垂直ダイポールとの比較で、受信感度でS2つの差。

Img_2560 室内は不利だろうと、7MHzだけですが、3階のベランダから2mのポールで持ち上げて、地上高10mを実現しましたが、期待とは裏腹にダイポールとS2つの差は変りませんでした。

S2つとは約12dBのことで、このゲインがそのまま送信にも当てはまります。 また、概設の7MHz用垂直ダイポールを3.5MHzで使った時と、仮設した3.5MHz用フルサイズ逆Vを比較すると、垂直ダイポールの方が10dBから26dBくらい感度が悪い事が判りました。

仮に感度は10dBしか悪化しないとしても、スーパーラドは3.5MHzで、22dBも感度のダウンが起こり、また送信電力のロスが起こると言う事になります。1.9MHzの場合、もっとロスが大きいと考えられます。

一方、7MHz用垂直ダイポールに1.8MHzをのせたMMANAでのシュミレーションでは、  -0.5dBi くらいのゲインになり、このアンテナをNT-636で整合させたときの整合回路のロスはTLWにて99.3%と計算されます。 この状態は、スパーラドと同等か、まだましな状態と想像できます。

これが諦めた理由でした。

このアンテナは旅行カバンの中から取り出した21MHz用アンテナを高層ホテルの窓際においたり、アパートのベランダや窓際に置いて、HFの交信を楽しむには最適と思います。Sふたつの差があろうが、このサイズで交信を楽しめるのは立派ですね。

いつか、もう少し小さくして、いつも持ち歩けるものを作るつもりです。

その後、160mバンドは、7MHzの垂直ダイポールで頑張ったのですが、まだ3エンティティー。内訳は台湾、小笠原、それに日本本土。 160m用のアンテナは未だに模索中です。

2017年9月

移動運用の為、7MHz用SRAを再製作中ですが、うまくいきません。 受信感度が、7MHz垂直ダイポールと比較して30dBくらいの差があります。 過去の写真からヒントを得ようと昔のCD-ROMを再生していましたら、当時のSRAの製作メモが見つかりました。 残念ながら、21と18MHz用だけで、7MHzや3.5MHz用は見つかりませんでした。 7MHz用の写真が数枚見つかりましたので、写真を基に、再度トライしています。 以下は最初に紹介した21Mhz、18MHz用SRAの緒元です。

Sra1518m_memo

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2012年7月11日 (水)

プリセット式MTU 3

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

14MHz以上のハイバンドのMTUが完成したので、次は、10MHz以下の対応です。ハイバンドのMTUを検討している最中に「TLW」という名のアンテナチューナーのシュミレーターを使い始めました。ARRL発行のCD-ROM版アンテナハンドブックの中にあります。(うまくいかないアンテナチューナーを見かねた、1エリアのOMさんがわざわざ送ってくださった物です。) このシュミレーターソフトの利点はバリコンにかかる電圧とチューナーのロスが一発で判ることです。特に耐圧問題で悩んでいる時は重宝します。

3.5MHz用のMTUのコイルをシュミレーターソフトで計算したら、当然、直径18mmのボビンでは不足です。直径34mmに変更して、このサイズをベースにMTUを並べたときの寸法を決めます。

Img_3086_2Img_3108_2

MTUは3.5,  3.7, 3.8, 7.0, 7.1, 10.1の6個並べる予定ですので、アルミアングルのスリット位置を決めていきます。 まず3.5MHz用を作成し、テストすることにしました。出力50Wくらいで、ものの見事にバリコンが絶縁破壊。いままでのシュミレーションでヤバイと思っていましたが的中です。T型では無理と、このバンドはπタイプに変更決定。バリコンの容量を増やす為、3枚しかない羽を5枚にしたポリバリコンに、45年くらい前に確保していた50V耐圧のセラミックコンデンサをパラ付けして調整完了。シュミレーションでは数百ボルトの電圧になりますが50V耐圧のセラミックコンデンサは良く耐えます。最近のセラミックコンデンサは耐圧オーバーしたら正直に絶縁破壊しますが、昭和40年代のセラミックコンデンサは50Vと書いてあっても1000Vくらいの耐力がありました。やみくもに使っている訳ではありません。決して真似しませんように。

Img_3111 7MHz用も惰性でπタイプで製作。10MHz用はTタイプです。 7MHzで出力を上げていくと、SWRが少しづつ悪化していき、100Wにするとほぼ無限大に。こういう変化をするのは、大抵フェライトコアが関係するのですが、案の定、バランとして使っていたフェライトコアがあっちっちで、一部のワイヤーのビニール絶縁が溶けています。どうも、雑に作ったバランが7MHz付近で共振したみたいです。バランを廃止する検討を以前やったことがありましたが、バランを廃止したとたん、24や28メガでノイズが増えるという現象があり、一応バランはそれなりに役立っているため、廃止は出来ません。シャックの中にあるMTUで使っているバランはすでに2年使って問題なしですので、これと交換しました。

クランプコアに巻いた、このバランは、浮遊容量が大きく、ローバンドでロスを増加させていましたので、フェライトバータイプに変更しました。詳細は、バランによるロスを参照下さい。

Img_3103_2 すると、バランに含まれるインダクタンス成分が変ったことによりハイバンドの全バンドを再調整する必要が生じました。調整はMTUですからすぐに完了し、念の為と、送信テストすると、18MHzでスパーク発生。ポリバリコンのPPシートに穴が開き、絶縁破壊していました。バランを交換したことにより、MTU位置での電圧値が変り、5KV以上の電圧がかかった模様です。せっかく落ち着いていた絶縁破壊のトラブルがまた再燃してきました。

TLWとMMANAを駆使して同調フィーダーの最適長を割り出すと、現在のMTUの並びが悪い事がわかりました。従来は9台のMTUを上から周波数の高い順に並べていました。特に深い理由などなく、周波数が高いから上、くらいの認識です。また、アンテナ、MTU、同軸ケーブルの配置も集中定数的な考えで、MTU BOXの中の取り付け状態によりMTUの位置が40cmも違うという事も無視されていました。かって、同調フィーダーを10cm間隔で切断して調整するような作業も意味をなさないような構造です。

Mtusetuzoku1 ここは分布定数的な考えで、同調フィーダーの長さがシビアに効く周波数の高いバンドのMTUを一番アンテナに近いところに置き、MTUの配置による誤差を最小とし、かつ信号の流れも分布定数の考えを取り入れ、すっきりさせました。この結果、バリコンにかかる電圧がほぼシュミレーション通りとなり、シュミレーションで得られた同調フィーダーの長さでフルパワー運用が可能になりました。

3.5MHzをアンテナアナライザーで調整したときとのSWR最小周波数が実際の送信状態でのSWR最小周波数とずれを生じます。

以前、この対策の為、アナライザー調整時も同軸ケーブルのGNDはMTUにつなぐ必要ありとして、そのように対応してきたのですが、3.5MHzでは20KHzくらいずれます。原因は同軸ケーブル側に設けたコモンモードフィルターの能力不足でした。フェライトコアに3D2Vを7ターン巻いたフィルターを1個から2個にしたら直りました。

7MHzはアンテナ単体でほぼ目的の周波数に共振しており、7MHzのMTUはインピーダンス整合だけの役目しかしていないのですが、このような状態で雨が降ると、リアクタンスの変化が大きく、πタイプのMTUでカバーしきれないという問題が発生しました。晴れた日に調整して置き、雨が降ったからと再調整しようとすると、コイルまで修正しなければなりません。これは非常に不便です。ここで、Tタイプにした時のバリコンにかかる電圧をTLWで調べると、共振周波数にほぼ合っていることもあり、100Wでも500Vくらいしか加わらないことが判りました。また、チューナーによるロスはπタイプが1%くらいに対してTタイプが5%くらいです。調整の不便さからこのロスの差は我慢することにして、7MHzはTタイプに戻しました。

 MTUの完成度が上がってくると、今まで、こんなもんだろうと妥協していた部分も気になるようになります。28MHzは28.05MHzと28.5MHZを中心としたふたつのMTUで構成していますが、このMTUに使われているコイルに、かなり大きな差があります。ひとつが4ターンなのに、もうひとつは6ターンです。シュミレーションしても、この付近にリアクタンスの変極点はないので、少なくともバリコンの角度は変っても、コイルは同じもので良いはず。 思考錯誤していましたら、コントロールケーブルの中のワイヤーを、指で触れると整合状態が変る事を発見。どうも、28MHzの信号がケーブルの芯線に流れ込んでいるみたいです。  その芯線は、リレーを選択する4ビットライン。このラインにはチョークコイルをいれてあるはずと、探しても見つかりません。どうやら付け忘れ。ジャンク箱にあった100uHくらいのコイルを4個追加しましたら、28MHzのふたつのMTUのコイルは、いずれも、4ターンで整合が取れるようになりました。

Feeder_2

左側の画像は、MTUに接続される同調フィーダーや、同軸ケーブル、コントロールケーブを処理した状態です。 ハイバンド用のスカイドア用同調フィーダーは当初設定より2m長くしましたので、画像のごとくジグザグ状に束ね、かつ機械的に動かないようにプラスティックの支柱に縛り付けてあります。 雨が降ったり、強風によりSWRが変化する量をかなり改善できています。

7MHz用垂直ダイポールをMTUを使い、3.5から10MHzまでカバーするようにしたアンテナシステムが出来上がりました。7と10メガのノイズは減少しました。7メガでは、Sふたつも減少しましたが、同時に信号も、Sふたつ落ちました。1000Km以上離れた局はそれほどでもありませんが、近隣の局ほどSの落ち込みが大きくなりました。JCC移動局をコールしたら以前は、一番か、かなり早い順番でピックアップしてもらえたのに、このMTUでは、なかなかピックアップしてくれません。中にはコールしてスタンバイするとCQを出していたとか。どうやら水平に張ってあった同調フィーダーからかなり輻射していた模様です。それがなくなった為、打ち上げ角が下がり、国内交信能力は大幅に落ちてしまいました。 一方、DXに対しては応答率がかなり上がり、コンテストのときなど、一番最初にピックアップしてもらえる確率が増えました。 これが本来の姿でしょうから、国内QSO対策は別途考えることにします。

10MHzは最近DXの入感と巡り合う機会が少なくなって比較しにくいですが、100エンティティをWorkedできました。

3.5MHzは逆にノイズも信号も上昇しました。その程度はS1くらいです。原因は同調フィーダーによるロスとアンテナチューナーによるロスを、合計で約6dBくらいの改善が出来ていますので、それがそのまま、受信時のSメーターの振れになっているようです。 また、帯域幅が大幅に向上しました。  同調フィーダー使用時のSWR1.3の帯域幅は、13KHzしかありませんでしたが、これが47KHzまで広がりました。
ただ、4エリアや5エリアに対して、このアンテナでは、ストレスが溜まるくらい飛んでくれませんので、国内コンテストの時は、臨時にフルサイズ逆Vを仮設しています。

プリセット式MTU 4へつづく 

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プリセット式MTU 2

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

9台のMTUをケースに収納するところまで出来ましたので、いよいよ、個々のMTUを目的の周波数で整合するように調整(プリセット)していきます。

Img_2955 プリセットは便利なアンテナアナライザーで行います。一番上が28MHz用で下に行くほど周波数が下がり、一番下は14MHzです。 28MHzから調整を始めますが、このバンドは最初に手作り試作して確認してありましたので、バリコンを回すだけで整合しました。しかし、24MHz以下、全てのバンドでバリコンの調整範囲を超えてしまい、コイルのタップ位置変更か、巻きなおしになってしまいました。また、構造的に上下のMTUに挟まれたMTUのコイルをいじる事ができませんので、それより下側にあるMTUは一度全部取り去り、コイルを交換なり、巻き数ダウンを行い整合可能になったら、次のMTUを取り付けて、また同じ作業を行うという繰り返しです。ここで、システム設計上の問題点が発覚しました。ベランダに置かれたMTUはリレーで選択切り変えられるのですが、その切り替えはシャック内にあるコントロールBOXからしか出来ないことです。ひとつのMTUの調整が終わると、シャックに戻り、ロータリーSWで次のMTUを選択しては、ベランダに戻り、調整を行うという作業は2日間もかかりました。

一通りの調整が出来て、実際に送信機から10Wくらいの出力で各バンドのSWRをチェックしていきます。アンテナアナライザーでSWR最小の周波数と送信状態でのSWR最小の周波数にズレが生じています。原因は、アナライザーを接続したとき、送信機までの同軸ケーブルをはずしていたので、アンテナとMTUが宙に浮いた状態になっていることでした。アナライザーで調整中でも同軸ケーブルのGND側は常にMTUにつながっているようにすると、この周波数のズレは無くなりました。

全バンド確認が出来ましたので、14MHzから順次、フルパワーでの動作テストです。 10Wから序々にパワーを上げていき30Wになったところで、SWRが無限大に。ベランダとシャックは8mくらい離れた別部屋なので様子が判らず、てっきりバリコンが絶縁破壊?かと調べてみると、配線に使ったリード線が異極に接触してビニール絶縁が黒こげになったり溶けていました。バリコンの耐圧には十分配慮したのに、配線はお粗末。

Img_2931 Img_2933

Img_3022 結局、全部のMTUを抜き取り絶縁距離が確保できるように線処理のやり直しです。バリコンが回転しても線がぶらぶらしないように、また、隙間の狭いところは同軸ケーブルの芯線で配線して絶縁距離を確保しました。

全てのMTUを再調整して、また14MHzからフルパワーテスト。18,21MHzと100Wフルパワーでも異常なし。9台のMTUのうち、6台までOKです。ところが、24MHz 50W出力でSWRメーターがフラフラと揺れます。ベランダに見にいくと一番下の14MHz用MTU当たりから白い煙が上がり、しかもバリバリと音がしています。

慌てて、シャックに戻り、送信を中止。 まだテストしていない28MHzはどうかと出力を上げると50WはOK。しかし、100Wで突然SWRが無限大になります。原因を調べねばなりません。 煙を出したのはどうもリレーみたいです。また、14MHzのMTU付近のリレーの部分は電圧腹となって一番高い電圧になっていた模様。MMANAでのシュミレーションでも24MHzは電圧給電に近い状態でしたので、MTUの接続ポイントの電圧が下がるように同調フィーダーの長さを変えることにしました。このフィーダーの長さ変更は逆に問題なかったバンドでの電圧上昇を伴います。24MHzと相反する状態になるのは18MHzと28MHzです。結局同調フィーダーを10cm刻みで切っていき全バンド100W送信OKの長さを求めることにしました。切りすぎてまた継ぎ足したりしてやっと長さを決定。当初の同調フィーダーの長さより2m長くなりましたが、一応完了。晴れて、全バンドフルパワーで使用出来るようになりました。

安心したのはほんの2~3日。21MHz以上のバンドでCW QSOをフルパワーで開始するとSWRが無限大になります。最初は100Wで発生しましたが、そのうち50Wでも発生するようになりました。   どうやら、リレーの内部で絶縁破壊が起こっているようです。使用していたリレーの電極とコイル間の耐電圧は1500VAC。 今まで実力でもっていたのが繰り返しの絶縁破壊で劣化してしまったようです。対策はリレーをより高耐圧のものに交換するしかありません。

Img_3023 Img_3031

秋月で5000V耐圧のリレーを購入し、全部のリレーを入れ替えると同時に、いちいちシャックに戻らなくてもバンド切り替え可能なSWを追加しました。 この作業は約2週間かかりましたが、構想開始してから、すでに4ヶ月、やっと全バンドフルパワー運用が出来る状態になりました。

このプリセット式MTUと従来の同調フィーダー給電方式とをリレーを使い、簡単に切り替えられるようになっています。少なくとも受信比較はすぐに出来ます。全バンドでSふたつ程ノイズが下がりました。28MHzでは受信信号のSも上がり、従来339くらいの信号が559まで改善しました。送信は簡単比較ができませんが、指向性がまともに効くようになったようで、アンテナが45度以上横を向いていると、コールしても取ってくれない事が多くなりました。正常に動作しだした証拠です。 RFのフィードバックも解消しました。今まで、14MHz以上のバンドではRFフィードバックでフルパワー運用が出来なかったTS-850Sも問題ありません。 QSYがマニュアルチューナー時より劇的に改善しました。ATUでもQSYの度にチューニング操作が必要でしたが、今は一切不要です。ロータリーSWをカチカチと切り替えるだけ。

課題もあります。MTUに経時変化があり、2日もすると、整合状態が狂ってしまいます。バリコンのバックラッシュで調整に難儀します。 

雨が降ると、アンテナもMTUも湿度による影響を受け、整合状態が狂います。

Pre Set MTUの配線図をダウンロード

プリセット式MTU 3に続く

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2012年7月10日 (火)

プリセット式MTU 1

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

TタイプのMTUをバンドの数だけ並べて、QSYする度に、使用するMTUを選択するチューナーを作ることに決めましたが、どうもバンドの数だけでは足りないようです。現用のスカイドアアンテナはその飛びという面では期待以上の成果をもたらしてくれますが、バンド幅が狭いという欠点があります。クラニシのMTUで確認しても、14MHzはCWとSSBでそれぞれ1台の計2台。 21MHzはCW、国内SSB、国内コンテストと3台。28MHzでも+/-70KHzくらいしかカバーしませんので、CWとSSBで最低2台。これに18MHzと24MHzを加えると14-28メガだけで9台も必要です。バリコンはMTU1台に2個使いですから、18個も必要となります。いくら暇とは言え、これは大変です。

Img_2896 Img_2899

まず、MTU1台の最適寸法を決めますが、それは100円ショップで売っているポリエチレン製のまな板で決めることにしました。1枚のまな板から4台分のMTUベースを板取します。 このサイズをベースにMTUを24台分収納できる防水ケースを確保し、アルミアングルで固定枠を作り、整然と並べていきます。

Img_2905 Img_2911

Img_2928 約1ヶ月かかり、9台のMTUを並べ終わりました。ただし、コイルは計算で出したインダクタンスになるよう巻き込んだだけですから、実装が終わったら各バンドごとにアンテナアナライザーを使ってトリミングが必要です。

コントロールはシャックに置いた、12接点のロータリーSWで行いますが、どのSWを選択したかをC-MOS ICでエンコードし、シリアル信号として、アンテナチューナーに送り、これをラッチ付きデコーダー回路でデコードし、目的のリレーをON/OFFさせるという、誰もが考え付く回路で試したところ、10W送信しただけで回路が誤動作。C-MOSがRFを拾いやすいのだろうと考え、TTLに変更したら少しは良くなったものの、50Wで誤動作。目標は100Wで安定動作ですから、TTLも却下。結局、12接点の情報を一度4ビットの2進にダイオードマトリクスで変換し、それを4本の線でアンテナチューナーに送り、ダイオードマトリクスとトランジスタだけでデコードするという、50年前のDTL回路に落ち着きました。実際の回路はこの4本の線にもう1ビット加えて合計24台をセレクトできる回路にしました。 また、必ず必要となるコモンモードチョークをコントロールケーブル側に予め内臓させました。

コモンモードチョークをキャビネット内に内臓させた場合、見た目はきれいに収まりますが、回路に近すぎて、チョークから外部へ引き出すコネクターまでの短い、経路に高周波が誘導し、チョークの効果がほとんど効かない事が後でわかりました。コモンモードチョークは不恰好でもケースの外に置いた方が良さそうです。

プリセット式MTU 2に続く

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2012年7月 9日 (月)

アンテナチューナー(MTU)の自作

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

18MHz用スカイドアアンテナと7MHz用垂直ダイポールをベランダに設置し、ATUでオールバンド対応できるアンテナを、あえてMTUでトライするマルチバンドアンテナの実用記です。

L型アンテナチューナーは挿入ロスが少ない反面、コイルもコンデンサも可変でないと使いこなすのに苦労します。特にコイルの可変は高度の工作技術が必要ですので、手におえません。せいぜい、バリコンを自作して実現できそうなチューナー回路としてハイパス型Tタイプとローパス型π(パイ)タイプがあります。広範囲のインピーダンスに整合するには、Tタイプの整合回路が適しますが、整合状態での帯域幅が狭く、バリコンに高耐圧が要求されます。また、アンテナインピーダンスが50Ωより低い程、容量性リアクタンスが大きい程、ロスがπタイプより大きいという欠点があります。πタイプはTタイプと反対の特性を持ちますが、対応するインピーダンスの範囲が狭く、かつ、バリコンに要求される容量が比較的おおきくなり、バリコンを自作する場合ネックになりそうです。

Mtu0

色々検討して、7MHzでも100PFのバリコンがあれば整合可能で、ロスも5%くらいと思われるTタイプでMTUを試作することにしました。

バリコンはポリプロピレンシート(PPシート)を絶縁に使ったポリバリコンで110PFくらいの最大容量とAC4KV以上の耐圧を目標とします。
0.1mm厚のPPシートはDC4KVの耐圧がありますので、0.2mm厚のPPシートを使用します。DCで規定された耐圧を単純に√2で割ってもAC時の耐圧にはならないらしい。実測するしかないみたいです。 また、空間距離1mm当たり、インパルス2KVの耐圧ですから、最低3mmの空間距離や沿面距離があれば、AC4KVを超える事ができそうです。

JW CADでバリコンの部品図を作成し、実物大の大きさでプリントアウトした紙をアルミ板やPPシートに貼り付け、ハサミで切り取っていきます。

Pvcjw Pvc2

左がJW-CADで作成した紙型。 右は切り取ったPPシート。
PPシートセンターは8mmの「穴あけポンチ」と言われる工具できれいに抜きます。

これらの部品をプラスチックの板上に組み立てます。

Pvc3a

出来上がった部品をタッパーの中に組み込んで、28MHzで実験できる試作品をつくりました。

Img_2893 Img_2894

実際のアンテナやダミー負荷で、いとも簡単に整合できることを確認できましたので、いよいよ同様なMTUを各バンドごとに作り、これをリレーで切り替える、いわゆる、「プリセット型マニュアルアンテナチューナー」の製作開始です。

Pvcdrg 

カテゴリ<マルチバンドアンテナシステム>の「プリセット式MTU 1」 に続く。

MTUではなくATU(オートアンテナチューナー)の製作はこちらを参照ください。

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オートアンテナチューナー(ATU)

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

送信不能になったトランシーバーを貰いうけ、それを修理し、現用機として使用しているTS-930Sの中にオートアンテナチューナーが内蔵されています。動作確認すると、ちゃんと動作します。 しかし、送信機の筐体の中に組み込まれたチューナーは送信機と同軸ケーブルのマッチングをとるチューナーであり、私が欲しいのは同軸ケーブルとアンテナのマッチングをとるチューナーです。 従い、これを取り外して、ベランダに設置すれば、欲しい連続可変のオートアンテナチューナーが手にいる事になります。

Atu_ts930 ただし、カバーするインピーダンスの範囲が通常の外付けチューナーより狭いからどうかな?と思いつつも、とりあえずシャックからコントロールできるように回路を改造して動作テストに臨みました。 7MHzと10MHz、21MHzと整合は出来るけど、その他のバンドは、バリコンの回転が止まらず、そのうちタイムアウトでエラーになります。

チューナーの回路構成はT型とπ型の変形。内部のコイルをいじったりしてインピーダンスの拡大を試みましたが、うまくいかず。構造的には、マニュアルチューナーのバリコンをモーターで回すという基本原理に忠実な構成ですから、巷のリレー式ATUとは一線を引けるものですが、もともとSWR2か3のアンテナを1.5以下にするくらいの能力しかありませんので、今回の目的には合致せずと納得し、もと有ったTS-930の中に戻すことなく物置行となりました。

2014年7月

このATUを物置から引っ張りだし、バリコン式ATUを作る事にしました。詳細は、バリコンを使用したATUの自作を参照下さい。

Hc200at_1 次に、インターネット上でもユーザーレポートの多いリレー式ATUを実験しました。 最初は東京ハイパワーのHC-200ATでトライ。3.5から28メガまでの8バンド全部で整合は取れるのですが、いくつかのバンドがSWR2以下には収束しません。同調フィーダーの長さを調整して1.5以下に収束するようにすると、今までOKだったバンドが2以上になり、こちらを立てればあちらが立たずの繰り返し。リレー式ATUの最大の欠点はインダクタンスやキャパシタンスの最小分解能限度が設定され、バリコンのように細かい調整が不可能な事です。HC-200ATでもSWR2で収束した整合状態をアンテナアナライザーで調べるとSWR1.5以下の周波数はバンド外にあります。取説には、アンテナ長を調整して、上手に使ってと、コーションがありますが、私のアンテナは先に形状寸法が決まり、かつ設置場所も変更不可のもの。その状態でクラニシのマニュアルアンテナチューナー(MTU)では、全バンドともきれいにSWR1.0まで整合できる為、ATUの性能限界は受け入れられません。

そこで、このリレー式ATUを改造して使えないかと、壊してもダメージの少ない、安いATUを探すと、LDGという会社でU$120くらいで販売してるATUがあります。送料を入れてもU$160くらい。おりしも1U$=80円くらいの時期でしたので、これを米国の販売店に注文。1週間で届きました。 

Kt100 購入したのはKT-100というモデルでTS-850に接続すれば、そのまま使えるというしろものです。さっそく、リモートコントロールできるように改造した後、実験を開始。案の定、東京ハイパワー製と同様な結果となりました。しかし、今回は、チューナーの内部を改造して最小分解能10PFのコンデンサを5PFまで小さくしてみました。もちろん、各リレーにつながる容量は順繰り変更し、最大容量は正規品の半分しかありません。 最悪3.5メガは諦めるつもりでしたが、結果は意に反してあまり改善されません。 巷で人気の高い、AH-4と回路構成を比較してみると、チューナーの基本回路に大きな差は有りません。KT-100はローパス型Lタイプと言われる整合回路を使用しています。AH-4も基本はローパス型Lタイプです。しかし、π型にも切り替えできるようになっています。それに加えて、AH-4はコイルもコンデンサもリレーの数が多く、細かく調整が出来る構造です。

MMANAのオプションの中に色々なアンテナ負荷にマッチングさせられるLタイプ整合回路の定数計算機能があります。これに色々な数値を入れて見ていると、負荷によってはローパス型Lタイプでは整合しない範囲がある事が判ります。この範囲はハイパス型Lタイプなら整合します。私のアンテナのアンテナチューナー接続部分のインピーダンスをMMANAでシュミレーションすると、9バンド中、2バンドがハイパス型Lタイプでないと整合しない結果が出てきました。同調フィーダーの長さを調整して、どこかに全バンドOKの長さがあるはずとトライしましたが、見つけることはできませんでした。

 

やはり、評判通り、AH-4を導入するかと傾きましたが、AH-4もローパス型オンリーです。クラニシのNT-636というマニュアルチューナーはハイパスT型チューナーで、コイルの切り替えが12通り可能です。 AH-4がこれに匹敵するほどの整合能力を持つとは考えられません。

これらの実験は約半年続きましたが、うまくいきそうも無いATUの使用を諦めて、MTUをバンドの数だけ並べる方式に方向転換することにしました。

数年後に判った事ですが、LとCの組み合わせを、例え、時間がかかろうとも、全組み合わせを試すプログラムにすると、ほとんどのアンテナをSWR1.1以下に整合出来ます。 当時のリレー式ATUは、各社がその整合速度を競っていた時代であり、高速整合を行う為に独自のプログラムを採用し、これが原因で、最適状態に追い込む事が出来なかったのではないかと思われます。

一旦、物置行きとなったLDGのKT-100を再度、引っ張り出して、改造を試みました。詳細はここで紹介しています。

アンテナチューナー(MTU)の自作に続く

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アマチュア無線局 再開局

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

2008年6月にリタイヤして、暇になりましたので、昔からの趣味ながら、仕事多忙で休止していたハム活動を再開することにしました。ハムで遊ぼうと思えば、アンテナが必要になりますが、住居は西条の住宅地。7MHzの水平ダイポールすら張れない環境で、どうしたらHFのQSOが楽しめるか試行錯誤の始まりでした。

最初に実験したのは、21MHz用マグネチックループアンテナ(MLA)。直径1.2mのアルミループと自作の高耐圧バタフライ型ポリバリコンでオンエア。

Bvc1


0.5mm厚のPPシートを絶縁に使ったバタフライ型バリコン。白色のアルミがステーター。黄色のアルミがローター。タミヤのギアBOXで駆動。

Eスポシーズンも終わりかけた8月末には、国内QSOながら、ほぼ不自由なく出来るようになり、これに味をしめて、直径1.8mの7MHz用を作成することにしました。調整も済み、7MHzのSSBで長崎の局を呼ぶと、応答があり、つい大きな声を出したところ、プッツンと音がしたような気がしたと同時にSWRが無限大に。QSOは途中で中断し、そのままQRT。100Wの出力がまともに出て、高圧バリコンが絶縁破壊されていました。一度絶縁破壊すると、もう20Wくらいの出力でも絶縁破壊するようになり、8月の日中に汗だくで作ったバリコンはあっけなくアルミくずになってしまいました。 

Img_1895_3 21deltaloop_3

MLAの失敗の後、デルタループを作成し、3階のベランダに設置。 4.5mの釣竿の先端部分を取り去り、3.5mのスプレッダーとして、上部水平部を4m確保。 波長15mに対してループ長の不足分は、ワイヤーを釣竿にコイル状に巻きつけて、21MHzでの同調をとりました。 この状態での給電部インピーダンス約78Ωを自作のトロイダルトランスで50Ωに変換すると同時に平衡/不平衡変換も行い、21MHZの全バンドをSWR1.05以下に抑えることに成功。気を良くして運用していると、家族から「かっこ悪い」とクレーム。

(デルタループのSWRの測定はDIAMONDのSX-200で行ったもので、その後、このSWRメーターが故障していた事が判りましたので、実際はもっと悪かったと思われます。  また、線材に2芯シールドとありますが、これは、廃棄されたワイヤーラッピング用シールド線を流用したもので、3.5SQ相当の銅線です。)

さすがに1辺が約3.5mの逆三角形は、外から見ると、この周辺の景色にはそぐわない。  庭から、あるいは向かいの道路から眺めてみて、上げた本人もこのクレームに同意。   結局このデルタループも1週間で降ろす羽目に。

Img_1897_6 Ant_3  

また、別のアンテナを考えねばなりませんが、3階のベランダに設置する関係で、良好なアースが確保できません。従い、検討するアンテナは、すべて非接地タイプに限定しています。

そんな中で、MMANAを駆使して見かけが良くて、なんとか使えそうなオールバンドアンテナとして登場したのが、21MHz用スカイドアアンテナと7MHz用GPの組み合わせ。 これをアンテナチューナーで強制同調して3.5から28までQRVするアイデア。  スカイドアアンテナの横幅はグラスファイバー製の伸縮釣竿を使うことにしたので、この最小長さ(1m)2本分の2mに決定。縦方向は通常3倍の6m必要とするので、三角屋根のように多少変形して、ほぼ確保。  このループを吊り下げるポールは、4mの鉄パイプの上に、5.4mのグラスファイバー製釣竿を継ぎ足し、さらに一番下に1mの塩ビパイプを継ぎ足して、鉄パイプは完全に絶縁された状態にしました。  このふたつのアンテナを20mも長さがある同調フィーダーで引っ張り、リグのそばに置いたクラニシのアンテナチューナーで整合させると言うシステム。 

Mutiantsys0_2

この同調フィーダーを20mも使用したマルチバンドアンテナシステムは2008年10月に使用開始し、2009年10月までに141エンティティーをWorked。 Lowバンドの成績が芳しくないので、同年11月に、GPを止め、7MHzの垂直ダイポールに変更しながら、2011年5月まで使われました。その間に交信できたDXCCのエンティティーは全バンドで189。 バンド別には、

Dxcc2011 

回転半径1mの簡単アンテナですが、サイクル23のどん底からサイクル24の上がりかけの時期としては、決して悪くない成績でした。

しかし、問題点もだんだん浮き彫りになってきました。TVI こそ起きませんが、3.5MHzでは、時々、ガス漏れ警報器がCWのモニターをしたり、火災報知器のベルが鳴りだしたりします。また、24MHzや28MHzで、RFのフィードバックが発生し、両バンドとも100Wフルパワー運用ができません。 さらに、受信の耳が悪いと言うか、貰うRSレポートと相手の聞こえる状態とに大きな隔たりがあります。太平洋の島からRST579を貰っても、こちらでは339くらいにしか聞こえません。 原因はいずれも同調フィーダーからの輻射とノイズのピックアップです。

これを解消するには、同調フィーダーを止め、同軸ケーブルに変更しようと考えますが、同軸ケーブルを使うと、アンテナチューナーはアンテナ直下かベランダに移す必要が生じます。マルチバンドアンテナシステムは、共振していないアンテナを無理やりチューナーで共振させることにより成り立っているわけですから、この場合、バンド切り替えする度に、ベランダに置いたチューナーをいちいち調整するか、オートアンテナチューナーで自動整合させるかしかありません。 真っ先に考えるのが、オートアンテナチューナーです。 よし、オートアンテナチューナーを作ろうと思い立つのは自然の流れでしょう。 あ!違いますね。オートアンテナチューナーを買おうというのが自然の流れで、自分で作ろうと思うところに無理がありそうな。

オートアンテナチューナー(ATU)に続く

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2012年7月 7日 (土)

FT-450受信感度不良

<カテゴリ:FT-450>

昨日の朝、FT450の受信感度が異常に低下していることに気づきました。

いつものように、6mのEスポをチェックすべく、SW ONすると、いやに静か。180KHz付近でいつも聞こえるキャリアノイズが聞こえない。アンテナがおかしいのか?と軽く10Wくらいで送信テストするとSWRが3を示しているではありませんか。 ベランダに出て、目視でアンテナをチェックするも異常なし。念の為と、バラン取り付け用のMコネクタをひねると、あらら! 簡単に回る状態。2箇所のMコネクタをしっかり締め付けて、再度送信テスト。SWRは1.01に戻り、一件落着。と思いきや、ローカル局がCQを出し始めて、Sメーターを見ると、振れなし。この局はいつも+40dBくらいで入感する局なのに。 やはりどこかに異常があるみたい。7MHzのアンテナにつなぎ換えても、いつもS7くらいあるノイズはS0相当。隣のTS-930Sで受信すると+40dBくらいで入感する局がS1くらいの振れ。7MHzも送信は異常なし。

さあ、困りました。 この週末は6m & Downコンテストなのに、6mに出られない。

Img_4039sh 配線図で疑わしい部品を選びだし、PDFファイルで入手済みの英文サービスマニュアルからその部品の位置を探しだし、現品を特定したら、テスターで電圧や導通をチェック。 5箇所目くらいで、送信時、大きな信号が受信機の初段に加わらないように設けた、スイッチングダーオードが順方向も逆方向も100KΩくらいを示すことを発見。

このダイオードD2009は1SV271という品番。Googleで調べると東芝製の高周波スイッチングダイオードとのこと。同じ部品の手持ちは無いので、廃棄予定の基板についていた1SS355というロームのダイオードを剥ぎ取り、壊れた1SV271と交換したら、一発で直ってしまいました。1SS355は高周波用ではありませんが、接合容量は実力で1PFくらいしかなく、スペック(max 3PF)とかけ離れています。代替えしても問題ないでしょう。

 

このダイオードが壊れた原因を推定すると、最初に見つかった、コネクターの緩みによるSWRの悪化状態で最近何回かやったFM 100W連続送信の実験が一番怪しい。とりあえずコンテストで様子を見ることに。(誘導雷で送信不能になり、この年のコンテストには参加できませんでした。)

 受信機の修理が完了した次の日、誘導雷により送信不能になりました。 この修理時に、受信部を保護するダイオードD2001,2002も壊れていた事が判りましたが、誘導雷で壊れたのか、それ以前に壊れていたのかは不明でした。 

 

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受信部プロテクターのダイオードが壊れるのは、FT-450の設計ミスのようです。

2014年5月

再び、受信感度不足の症状が発生しました。調べてみると、

  • D2002オープン
  • D2013-D2017逆方向インピーダンス低すぎ(数百Ω)
  • T2025断線

LEDとダイオードは正規品では有りませんが、代用可能な手持ちのチップLEDと1SS355に交換しましたが、広帯域トランスT2025はカスタム品で代替え可能品がありません。やむなくメーカーへ修理依頼しました。 修理完了した修理伝票を見ると、Q2061(DBM)も壊れていたとの事で、これも交換されていました。

この修理の過程で、強入力信号から受信機を保護する為に設けられたD2001とD2002がチップLEDである事がわかりましたが、LEDが壊れたのは、これで2回目です。LEDは過電流、過電圧に弱く、最大定格を超えるとすぐに劣化します。普通はプロテクターとしては使いません。

450ledcurent

修理が終わって返ってきたリグで、このLEDに流れる電流を測ってみました。条件はFT-450のアンテナ端子に6m用のヘンテナを接続した状態で、その外側にある18メガ用スカイドアに10Wの電力を加えた状態です。そして、出力が50W、100Wになったときの電流を計算で求めました。 結果は左の表の通りで、隣のアンテナに10W加えただけで、14,21,24メガでLEDの絶対最大定格を超えます。特に24メガでは、すでに最大定格の5倍を超えてしまいました。 ただ、最大定格を5倍超えたくらいでは短時間ならまだもちます。

450led

左の画像は隣のアンテナに28メガの10Wを加えた時のLEDの光具合です。この後、周波数を24メガに変更し、出力を50Wにしたら、2個のLEDとも煙を出して消えてしまいました。

TS-930SでHFを運用する時は、FT-450に接続された6m用ヘンテナの同軸ケーブルを外すという事を心掛けていましたが、Eスポが出たときなど、うっかりしてヘンテナがFT-450につながったまま24メガの送信をする事がありました。 多分SSBでは持ちこたえてもCWでは壊れたと思われます。このプロテクタのLEDが壊れると、まともに大きいRF信号がバンドパスフィルターへ流れ込みますので、スィッチング用のダイオードが次々に劣化していったと思われます。

450diode

対応策として、LEDを止め、通常のダイオードを2個シリーズにして互いに逆方向に実装することにしました。実装したダイオードは1N4148という品名で平均電流の最大定格が200mAのものです。秋月で50本100円で売られていたものです。 一応、短時間なら1Aくらいはもつダイオードです。TS930やTS850の保護ダイオードも品番は違いますが、200mAクラスのダイオードを使っています。

LEDのVfは2Vくらいあり、強入力が有ったら2Vでクリップさせられるから、都合が良いと考えたのでしょうが、実使用状態を知らない技術者が設計したとしか思えませんね。

LEDやダイオードが壊れる原因は判りましたが、広帯域トランスが断線した理由がわかりません。唯一考えられるのが、このトランスの足の部分に2個のチップ抵抗を手半田してあります。この手半田した時の半田フラックスが粗悪品で、細いエナメル線を腐食させてしまったくらいしか考えつきませんね。トランスが壊れたからQ2061(ダブルバランスミクサーダイオード)も壊れたのでしょうかね。

450dbm

このトランシーバーはその後、50MHzでAM送信をすると、出力が徐々に上昇し、約20秒かかって規定出力になるという故障症状が発見され、この基板をそっくり交換するという事態まで発展しました。 なので、いままでのトラブルの原因は結局不明のままとなりました。

知らぬ間にプロテクターのLEDが壊れて、バンド切り替えダイオードが次々に壊れていくという現象は、FT-450 1台しかない場合、全く問題ありませんが、HFトランシバーが複数台有り、アンテナも複数本有る場合、くれぐれもご注意ください。

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FT-450 ヘッドフォーン出力 レベル小

<カテゴリ:FT-450>

中古のFT-450で、ほとんど使用実績のない初期のものを格安で買いました。

私の場合、CW運用が多いので、CWのモニター音量を設定していましたら、スピーカーの場合よりヘッドフォーン出力のときのモニター音がかなり小さい事に気づきました。

改めて、スピーカーとヘッドフォーンの音量や音質の比較を行うと、ヘッドフォーンの音質が格段に悪くなります。高域がカットされている音質です。このためもあり、CWのモニター音はとても聞くに堪えないキークリックだらけの音です。

配線図を追いかけると、ヘッドフォーンはスピーカー出力から120Ωの抵抗をシリーズに介して接続されますが、なんと、この抵抗の出力端が22μFの電解コンデンサでショートされているではありませんか。22μFのコンデンサの1KHzのリアクタンスは約7Ωですので、8Ωのヘッドフォーンを使った場合、2KHzで6dB以上もカットされます。もし30Ωのヘッドフォーンなら完全なハイカットになってしまいます。

配線図だけの問題で実際は違うかもしれないとサービスマニュアルにある基板図をチェックすると、ちゃんと正しく、配線図通り、電解コンデンサでショートしていました。

Hpout_2 Hp_pwb_2

高周波の回り込み対策として0.1μFくらいのコンデンサは必要でしょうから、この電解コンデンサを交換することにしました。この電解コンは表面実装タイプです。昔から、このタイプのコンデンサを剥ぎ取るのは苦労します。半田コテを2本持って両方の電極のハンダを溶かそうとしますが、コンデンサの本体に阻まれて、半田コテの先が電極をうまく暖めません。そのうち、コンデンサ本体や周辺のプラスティックを溶かしながらも、無理やり剥ぎ取りました。

その結果、銅箔パターンまで一緒に剥ぎ取られ、スピーカーの音が出なくなってしまい大慌て。 とりあえず、ジャンパー線で剥ぎ取られたパターンをつないで、事なきを得ました。

良く考えると、これは完全に設計ミスですね。最近FT-450Dを購入したローカル局に、この話をしても、問題ないとのこと。”D”の前のモデルがそうなのかも知れません。

一度貴方のFT-450の配線図を確かめてみてはいかがですか?

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