« SX-200 SWRメーター修理 | メイン | 7MHz用逆Vアンテナ(国内用) »

2012年10月12日 (金)

AA-170 インピーダンス指示不良

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

コメットのアンテナアナライザーAA-170にて、50Ωのダミー抵抗を接続しても35Ωくらいしか指示しないという故障品の修理を頼まれました。

また、検波ダイオードの不良だろうと、簡単に考え、インピーダンス検出用のダイオードをテスターで当たると、逆方向の抵抗が正常なダイオードの1/10くらいしかありませんでしたので、手持ちの1SS108に交換して、一件落着と思いきや、HFはOKになりましたが、バンドEやFの症状が改善しません。

簡単に直るだろうと思って軽く引き受けた修理でしたが、さあ、困りました。

物置から、借用中のタケダ理研の重さ30kgもありそうな古いスペアナを引っ張りだし、AA-170のアンテナ端子とスペアナの入力を同軸ケーブルで直結してみました。  以前チェックした、まともなAA-170はバンドFで-1.5dBmくらいを指していましたが、今回は-6dBmくらいです。一応インピーダンス表示が正常になったバンドAでは-2dBmくらいの表示となっています。

この出力は半固定抵抗で調整できるようになっておりますが、半固定抵抗を回しても、これ以上出力は上がらないという状態です。

このアナライザーは+5V、+12V、-12Vの3系統の電源ラインを持ちますが、いずれも正常。

発振段からバッファを経由してブリッジ回路に出力するFETやトランジスタのDC電圧をチェックしても異常は見られません。ただし、異常が無いだけで、チェックした電圧が正しいのかどうかは判りません。手元に動作異常なしのAA-170があればすぐに比較できますが、あいにくこの故障した1台しかありません。

色々調べていくにつれ、発振回路そのものの、レベルが不足しているようにしか思えません。 手がかりは、バンドFの時の、Q1,Q2のソース直流電圧がかなり低く、すでに電源電圧フルスイングで動作している事でした。

発振段のFET Q1,Q2は2SK241GR。幸い手持ちがありましたので2個とも交換しましたら、出力レベルが大幅にアップ。50Ωダミー接続時100Ωくらいを指示するようになりました。

これで多分直ったと思いますが、検討している間に半固定抵抗をいじってしまいましたので、ちゃんと調整作業をしておかねばなりません。

調整の仕方は以下です。(コメットに教えてもらった訳ではありません。自我流です)

調整はOSC基板上と電源基板上の半固定抵抗を調整しますが、REF No.が重複していますので、間違わないように。バンドSWはCとして14MHz付近に周波数を設定して、かつ50Ωのダミー抵抗を接続しておきます。

  1. インピーダンスメーターが最大に振れるように、電源基板のVR1を回しきります。
  2. OSC基板のVR2を目視でほぼセンターにします。(これは発振出力の微調整用)
  3. メーター指示が70Ωを指すようにOSC基板のVR1を調整します。(100Ωに調整するという説もあるが、あまり変らなかった)
  4. 電源基板のVR1を調整してメーター指示が50Ωになるようにします。

Aa170pcb1

バンドSWをAからFまで切り替え、どのバンドでもほぼ50Ωを指示するようになりました。

故障の原因はFETの劣化でした。通常、FETの劣化という現象は製品寿命に比べて頻度が低いのですが、それはメーカーが保障する動作環境の中だけの話。2SK241はVdsが10Vで色々な特性を規定し管理されていますが、AA-170は2Vくらいで使っています。2VのVdsはFETのメーカーにとっては管理範囲外でしょうから、FETの劣化という現象が生じたものと思われます。  後日、東芝の他の品種のFETデータシートを読んでいると、劣化すると書いてありました。

50Ωのダミー抵抗を接続しても、インピーダンスメーターの指示が50Ωにならない。不足するという症状で検波ダイオード以外の原因の一例として紹介しました。

なお、調整用半固定抵抗でオフセット用とかSWR用というのがありますが、今回は全く動かしませんでした。

INDEXに戻る