KR-400RCの改造(プリセット化)
長年使って来たローテーターですが、最近、勝手に指針が動いたり、アンテナの向きとコントローラーの指示の不一致が目立つようになりました。 不一致は当初より有ったのですが、最近は30度くらいのずれがあり、CWとCCWを交互にONさせるといつの間にか直ってしまいます。回路はアナログのサーボ回路で構成されていますので、温度による不安定さが一番影響しているようです。
これを一挙に解決する為、マイコンによるデジタル駆動に改造する事にしました。
アナログサーボに頼らない簡単な方法は、屋外のローテーターの方位に連動した可変抵抗値と、屋内のコントローラーの可変抵抗値を読み取り、両方の抵抗値が常に一致するようマイコンで制御すれば実現できます。 両方の可変抵抗値を読み取る代わりに、この可変抵抗値に比例した電圧を、アナログデジタル変換(ADC)でデジタルにした後、数値の比較だけでOKなので、ADCの温度特性だけが、制御誤差を生む原因となります。 しかし、マイコンに内臓されているADCは温度特性など全く気にする必要が無いほど、安定していますので、アナログの時のようにアンテナの方位とコントローラーの方位がずれるという問題は簡単に解決しそうです。
と、簡単に前説を述べましたが、いざ作り始めると、期待通りに動かない事が多発しました。 構想から2か月かけやっと出来ましたので、以下紹介する事にします。
屋外のローテーターの中に500Ωの可変抵抗があり、ローターの回転に応じてこの抵抗が変化します。 コントローラーの中にも同じ500Ωの可変抵抗があり、これが、アンテナの方向を示すアジマスメーターに連動し、それぞれのギア比が同じなら、ローターの回転角とアジマスメーターの回転角が同じとき抵抗値も同じとなります。 抵抗値を直接測定できませんので、同じ電圧を加え、この可変抵抗器の片端とGND間の電圧が常に等しくなるように制御してやれば、ローターの方向とアジマスメーターの方向は一致します。 (後日、このギア比が同じでないという事が判り、調整で難儀しました。)
この可変抵抗の両端の電圧を測るのはマイコンに内臓されたADコンバーターで行い、得られたデジタルデータが一致するまで、どちらかの方向へモーターを駆動してやれば、良いわけです。
上はこの改造回路を蛇の目基板に組んだ状態です。 マイコンはPIC12F675を使いました。
この改造案では、アジマスモーターを高速で回転させ、目標とする角度になるようにアジマス指針がセットできたら、それを追いかけて屋外のローテーターモーターがゆっくり回るという動作にしました。 従い、従来、コントローラーに付いていたCWとCCWのスイッチはローテーターのモーターを回すのではなく、アジマスモーターを回すスイッチになり、ローテーターのモーターはPICマイコンが制御するリレーで回します。
この考え方でコントローラーのCW、CCWのスイッチを見ると、回路数が足りません。CWは1Cと言わるスイッチ接点ですがCCWは1aと言われる接点構造で、ACモーターは反転出来てもDCモーターは反転できません。 そこで、CCWのスイッチでリレーをON/OFFさせ、このリレーが持っている2Cの接点を使いDCモーターを反転させることにしました。 左の写真はCCWのスイッチにリレーを縛り付け、配線した状態です。
ローテーターはアンテナを回す物ですから、一番怖いのは雷です。 雷の直撃を受けた場合、諦めますが、誘導雷くらいなら、なんとか軽傷で済んでくれるように仕掛けが必要になります。 今回は誘導雷を受けた場合、バッファとなるトランジスタが壊れて、マイコンはなんとか生き延びる事が出来るように構成しました。 また、最悪マイコンも壊れてもすぐに交換が出来るようにマイコンはDIP8タイプにし、かつICソケット対応としました。
左の写真は基板を実装し、配線完了したコントローラーです。ワイヤリングの一部は最終になっていない部分もあります。
ローテーターに実装する前に、500Ωの可変抵抗だけを配線し、手で抵抗を変化させながら、同じ電圧になったら、モーター駆動のリレーがOFFになるか確かめたところ、電圧が一致したら停止はしますが、その後、カチカチとリレーがバタつきます。原因はADの値がドリフトして、数値が変わる為安定しないものです。 対策として、CWまたはCCWの操作が有ったらADの値比較が有効になるようにし、一度でも一致を見つけたら、不一致検出を禁止するようにソフトを変更しました。
この対策により、電源をONしただけではローテーターが回転しませんので、安全対策にもなります。
調整の仕方
ローテーターは0度から365度くらいまで回転します。一方アジマス指針は420度くらい回転しますので、ローテーターのVRとアジマスのVRの回転角が異なります。 従い、アジマス指針が360度回転したときローテーターも360度回転するように、設けられたVRを調整しなければなりません。 ローテーターのモーターはCWまたはCCWのスイッチを操作しない限り回転開始しません。 ローテーターモーターの停止位置確認は必ず、CWかCCWのスイッチを押して、一度目標とする停止位置から遠くなるよう回転させた後、目的方向のCWかCCWのスイッチを押します。
①外部ローテーター用コネクタCNS1を抜いて置きます。
②アジマスモーターをCCW方向に回し続け可変抵抗器のストッパーに当たるまで回転させ、その時のGP4の電圧が0.6Vになるように、VR5を調整します。 この時のアジマス指針の位置は無視します。
③アジマスモーターをCW方向に回転させ、可変抵抗器ストッパーに当たるまで回した時のGP4の電圧が4.00VになるようにVR4を調整します。
④VR4を変化させると、②の電圧も変化しますので、②と③を繰り返します。ぴたりと設定できない場合、0.6Vは小数点以下2桁目で高め、4Vは小数点以下2桁目で低めとしておきます。
⑤次にCNS1をCNP1に挿入し、VR1の代わりに500Ωの固定抵抗を接続します。 電源をONしてもローテーターのモーターは回りません。 この状態でGP2の電圧が4Vから4.1Vの範囲になるようVR2を調整して置きます。 調整完了したら、電源をOFFし、VR1を正常状態に接続します。
⑥CCW方向にローテーターを回し、ローテーターのモーターがメカニカルロックするまで回します。 多分最初はメカニカルロックする前でローテーターが止まりますので、そこから、GP4の電圧が0.01V単位で下がる方向にVR5を調整します。 この時、VR5は目見当で回さず、必ずデジタルテスターで電圧を確認しながら回します。 電圧を0.01V下げる度にCCWのスイッチを押すと、ロテーターのモーターが少しだけ回ります。 これを繰り返して、ロテーターのモーターがメカニカルロックするまで繰り返します。 ローテーターのモーターがメカニカルロックしたら、すぐに電源スイッチを切ります。
⑦電源をONして、GP2の電圧を読みます。 仮に読んだ電圧が0.55Vであった場合、GP4の電圧が、これより0.02V高い0.57VになるようにVR5を調整して置きます。
⑧アジマスモーターをCW方向に回転させ、ローテーターがロックするまで回します。この場合でも、ロックするまで回らない時は、GP4の電圧を読みながら少しづつ電圧が高くなるようにVR4を調整します。ローテーターのモーターがロックしたら、すぐに電源をOFFします。
⑨電源をONして、GP2の電圧を読みます。 仮に4.05Vであったとします。 GP4の電圧がGP2より0.02V高い4.07になるようにVR4を再調整します。 そして、アジマス指針のセンターにあるビスを緩め、指針が365(5度)度を指すように修正します。 CCWをONして指針が360度を指す位置で止めます。ローテーターが動かない時は、330度くらいまで回し、次に360度をさすようにCWスイッチを操作します。 ローテーターが止まった位置に目印を付けます。
⑩CCWスイッチを操作して、指針が0度をさすようにアジマス指針を360度回転させます。 ローテーターが1回転して、先ほど付けた目印の位置で停止したら成功です。 もし、多少ずれた場合、GP4の電圧をモニターしながら、VR3を調整します。 ローテーターが回り不足ならGP4の電圧を0.01V下げ、行き過ぎなら0.01V上げます。 正しい位置で停止するようになりましたら、CW方向に360度回転させ、ローターが正しい位置で停止する事を確認します。 もし、ずれている場合、VR4を少し回しGP4の電圧を0.01V単位で調整します。
この調整はVR4やVR3を再調整しなくなるまで繰り返します。
私の場合、2回の調整で完了しました。
使い勝手は、非常に良好で、今までのように、遅いロテーターの回転を見ながら、CWやCCWのスイッチ操作をする必要がなく、アジマスメーターの指針が目的とする角度まで達したらスィッチをオフします。 ローテーターは従来のスピードで回転し、この期間は追加したLEDが点滅し、指定位置に停止したら、このLEDが消灯することで、動作を確認できます。
また、何らかの異常が発生し、ロテーターのモーターが回らない状態、例えば、ケーブルが断線したとか、モーターがメカニカルロックしたなどの場合、CWやCCWのスイッチをONした後1秒以上ローテーター側の可変抵抗器に変化が無ければ、LEDを点灯しっぱなしにして、モーター駆動を中止するように保護ソフトを入れてあります。 このメカニカルロックはローテーターのストッパーに当たった場合や、アンテナマストが傾いたりして、ローテーターに異常な負荷がかかった場合発生しますので、LEDがつきっぱなしで、停止した場合、必ずローテーターとアンテナアマストを目で確かめて下さい。 頻繁にLED点灯が発生するので、そろそろ寿命かと買い替えを検討していましたが、真の原因は四方に張ったステーの1本が緩んでおり、その為にマストが傾いてしまい、ローテーターに無理がかかった為でした。 このエラー状態は再度CWかCCWのスィッチを押すと解除します。モーターがロックしている場合、反対に回すと正常に戻りますが、再調整が必要です。 ケーブル断線の場合、何回やってもエラーになりますので、修理するしか有りません。
PIC12F675コントローラーのKR-400RCmk2.cをダウンロード
2023年4月
HFの運用再開に伴い、照明ランプが切れていたので、LED照明に変えました。
2023年5月
コントローラーのアジマスメーターの針が狭い角度しか回転しなくなりました。 モーター軸に取り付けられたピニオンギアが空回りして、指針が動かなくなっていました。 良く観察すると、モーターシャフトはDカットされているのですが、挿入されたプラスチックのギアは、圧入しただけで、せっかく回り止めとしてあるDカットのシャフトを利用していません。 そこで、このギアを引き抜き、邪魔にならないところに1.5φの穴を明け、その穴にM1.7のビスをねじ込みました。このネジの先端がDカットの平面に当たれば、それだけで回転止めになりますので、めでたく修理完了。 まだ、当分は使えそうです。