12V→19V DC/DCコンバーター(車内PC用電源)
<カテゴリ 電源>
車で移動運用する時、車内でPCを使う為に車用12V電源からノートPC用の19V電源を作る為の昇圧型DCDCコンバーターの製作です。
車内でPCを使う時は一般的にDC12VからAC100Vを作るインバーターを利用しますが、このインバーターの出力は疑似正弦波と真正弦波の2種類があり、真正弦波を利用できるインバーターは高価です。 安価な疑似正弦波の波形は矩形波で、ノイズだらけです。 ノートPCに限れば、このノイズだらけの矩形波でも動作します。 しかし、車内でPCを使う目的がHF交信ですので、かなりの周波数で、このノイズが受信され、使用可能な周波数範囲が狭くなります。
一方、DC12VからいきなりDC19Vを作る昇圧型DC/DCコンバーターはその回路構成は実に簡単で、コンパクトに作れば、インバーターよりはるかに少ないノイズで回路の効率もインバーターより良いのですが、この場合の最大のネックは各PCのDC Jackに合致するDC Plugの入手です。 最近のPCは軒並みサイズの大きなDC JackとPlugを使っており、これに合うPlugの入手はかなり難しいのが現状です。
そんな中、昔のXPが走るノートPCを調べたら、秋月でも入手できる内径2.5mmのPlugを使える事が判り、これは幸いと、ジャンク箱をかき回して、昇圧型DC/DCのICを見つけましたので、さっそく作って見る事にしました。
配線図を以下に示します。
ICはトレックスのXC9103Dと言う品番で1.8Vから10Vの電源で、1.5Vから30Vまで出力を設定できます。 1.8Vから10VというスペックはICの電源電圧の範囲で、昇圧する入力電源電圧とは無関係です。 従い、12V電源を3端子レギュレーターを使い、5Vに落とし、これでICの電源をまかない、12Vのバッテリーから19Vを作る回路のFETゲートをドライブするだけです。
スィッチングのFETはAM送信機の試作の中でPWM変調に使ったFKI10531です。 ダイオードもAM送信機のPWM変調回路に使ったあまりを使いました。
この回路の中で手作りした部品はL3の24uHのコイルのみです。そこらへんに転がっていたコアにAWG24のリード線を巻きつけ、22uHを目指して巻きましたが、ぴったしのインダクタンスにはなりませんでしたので、やや多めの24uHとしました。 この時、自作のLCメーターが大活躍です。 また、このICは電流センス用に0.1Ωくらいの抵抗を要求しますが、この抵抗値の両端の電圧が250mVになると電流制限がかかります。 0.1Ωの場合2.5Aで電流制限がかかりますが、私のPCは最大で3.5Aも流れますので、そのままではNGです。 よって、この0.1Ωを2個パラ付して、5Aで電流制限がかかるようにしました。
左上は部品挿入面、黄色の線で巻いたコイルが24uHで、両脇にあるコイルが80uHです。最初、放熱板無しでしたが、さすがにPCを接続すると熱くなりますので、放熱板を取り付けました。 右上は基板のチップ面です。 トレックスのICは米粒みたいな大きさですので、これを実装できるパターンを別の基板から切り出し、それをユニバーサル基板に載せてあります。
19Vの電圧設定はR4とR5の比率で変わります。 回路図の定数で19Vに設定されますが、無負荷時19.7V、PCの電池充電中で19.0V、PC動作時18Vとなりました。
電源の入出力に80uHのコイルを挿入してありますが、これは、送信機のRFがDC/DCに混入しないように予防として入れてあるもので、これも、ジャンク箱から拾ってきたものです。100uHくらいで5Aくらい流せるコイルならなんでも良いと思います。 なければ、送信機をSENDにした途端、DC/DCが火を噴いたことがありましたので、必ず挿入する事にしています。
左の写真は出来上がった基板をケースの中に入れたもので、一応基板の保護だけが目的です。 ただ、放熱板がほんのりと熱くなりますので、後日、プラスチック加工用の電気コテで通気孔を開ける事にします。
入力側の電流は、PC OFFで内臓電池を充電中の場合0.9Aくらい。 Windows XPが立ち上がり完了してHamlogを使用している間は、HDDが動くと3.25Aくらいまで増えますが、何も操作が無ければ2.7Aくらいで、平均して3Aくらいになっています。
AmazonでPC用DCプラグを検索すると、沢山のプラグの広告が見つかります。 その中で、LENOVO用も含まれるaceyconというブランド名か商品名か判らない34種のプラグをセットにしている製品がありました。 失敗しても止む無しで、これを購入しました。 結果はGoodでした。 私のPCはSHARP Mebius, SONY VAIO, LENOVOと3台のノートタイプですが、全て対応していました。
これで、移動運用時のノイズ問題が改善できます。
2019年1月
50MHzのSSBモードで移動運用を行った結果、S/Nが極端に悪化する事が判りました。 7MHzや144MHzではほとんど気にならなかったのですが、PCが電池で動作している場合、RS51の信号も、このDCDCからPCへ電源を供給した途端、RS33になってしまいます。 対策は、プラスチックケースを金属ケースにする事、電源の入出力にコモンモードチョークを追加しました。 ケースは100円ショップで見つけた鉛筆立てです。
出力ケーブルに括り付けられているフェライトコアはNECトーキンのESD-R-16Cという100MHz用で、これに4ターン巻いてあります。
これらの対策で、PCが電池動作でも、このDCDC電源動作でもノイズは変化なしとなりました。