2016年6月11日 (土)

PLL  VFO(7MHz AM用) 失敗でした。

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

AM/FMラジオのPLLシンセサイザーICを使ったAM送信機用VFOの製作です。

目標は7000KHzから7200KHzまでを1KHzステップで可変できるPLL VFOとします。 使うICは廃番候補のTC9256Pです。 ネット上で7.2MHzのクリスタル付で売られています。

回路図 PLL_OSC_schema0.pdfをダウンロード

PICのクロックが7.2MHzの水晶になっているのは、最初PIC16F84で作り始めたところ、LCDドライブの部分だけでRAM容量オーバーになり、ピンコンパチのPIC16F1827に差し替えた事によります。OSC部分はそのまま使いました。

この回路は東芝の提供するデータシートを理解し、その通り、マイコンソフトを作れば、PLLロックという状態を得る事ができますが、そこに至るまでの工程を以下紹介します。

Pll_claposc

まず、VCOですが、クラップ発振回路の見本みたいな回路です。 手持ちのインダクターで発振コイルに使えそうなコイルは太陽誘電製のLBM2016T120Jしかありませんでしたので、このコイルとONセミコンのバリキャップSVC389で7MHz付近を中心とした発振回路を机上計算して定数を決めます。 PLLのICの代わりに10KΩの可変抵抗でバリキャップ電圧を調整し、約4Vくらいで7.1MHz付近を発振するようにC16を決めてやります。 C0,C1,C2の直列合成容量とLで計算される共振周波数が7100KHzになるように各コンデンサを調整します。 最初、6.6MHzから7.8MHzくらいをカバーするCを求めてテストしましたが、バリキャップ電圧の振動が止まらず、4MHzから12MHzくらいまでのカバー範囲に設定し、実際は7000KHzから7200KHzしか使わない事にしました。 ただし、クラップ発振回路の出力はかなり歪んでいましたので、エミフォロで出力した後、LCのタンク回路で波形整形し、PLLのICに戻したり、トロイダルコイルによるトランスでインピーダンス変換した後、送信機へ出力するよう回路を構成しました。 トロイダルコイルはamidonのT37-2で1次側が10uHになるよう0.3mmのUEWを巻いてあります。

Pll_flow_2

このPLL ICのデータシートの中に、左のような周波数変更を実施してから、PLLロック完了までのフローチャートが示されており、その通りにプログラムを組めれば良いのですが、私の技量では、この入り組んだフローをC言語の関数のみでは、どうしても記述できなく、禁止事項となっている「goto」文で記述する破目になりました。

とりあえず、プログラムが完成し、いざ走らせると、PLLロック検出まではうまくいきますが、最後の位相誤差判定を抜ける事が出来ず、そこで永久ループに陥ってしまいます。 多分ハードの精度が悪くて、要求された一定の位相差を維持できない事が原因と思いますので、とりあえず、この位相誤差判定の行はコメントアウトしたところ、ロータリーエンコーダーを回す毎に周波数が1KHzステップで可変できるようになりました。 

その後、LPFの定数設定を吟味し、PE1-PE3が「0」のとき、ループから抜けられる様にフィルターを改善しました。 

ネット上でこのICを使った製作例は沢山みつかりますが、東芝が指定したこのフローをフォローしたソースコードは見つかりませんでした。 もしかしたら、プログラムカウンターだけ設定すれば、勝手にPLL LOCKになるのかも知れませんが、確認しておりません。

基本動作はOKになりましたが、プログラマブル分周器の分周比を7195に指定しても発振周波数は7196KHzとなります。この問題を調べていくと、7.2MHzの水晶発振周波数が7200KHzではなく7201KHzになっているのが原因でした。 この7.2MHzの水晶はネット通販で10個で150円という格安品ですが、スペックなど有りません。 

 Xtalosc
色々と情報を調べていくとアマゾンで似たような水晶が50個単位で売られており、その商品説明の中に負荷容量20PFと書かれていました。多分同じような値段なので、同一メーカーの同一品だろうと予想し、水晶発振子の両端に接続するコンデンサを計算してみました。 

メーカー発表の負荷容量をC0とすると、左の回路のCgとCdはどちらも同じ容量として

Cg = Cd =2 x (C0 - 5) [PF]

と簡易的に計算できますので、実装した後、周波数をトリミングする事にします。

計算結果は30PFと出ました。 一般的な負荷容量は12PFとか9PFですので、15PFくらいを想定したのがいけなかったようです。 コンデンサを33Pと15PF+20Pトリーマーで7200KHzちょうどを発振するようになり、分周比と発振周波数は一致するようになりました。 この発振周波数の確認は受信機で行うのが一番確実です。

    PLL IC用クリスタルは正確に7200KHzでなければなりませんが、PICの発振は水晶である必要も7.2MHzである必要もありません。 今回は7.2MHzの水晶が有り余っていたので、使用しただけです。 水晶の両端に付けられたコンデサも最初に見つかった27Pにしただけで他意はありません。

PLL-VCO式の発振器の留意点はピュアな信号が得られるかです。 位相ジッタが原理的に付きまといますので、フィルターや電源、GNDをセオリー通りにやらないと、濁った信号になってしまうと言われております。

Pllsin

Pll10m_2

Pll50k_2

左上が7195KHzのVFO出力波形です。画像はありませんが、第2高調波が-30dBくらいになっています。 これはLPFやBPFで簡単に減衰できます。 真ん中が10MHzスパンで見たスペクトル、右側は50KHzスパンで見たスペクトルです。使用しているスペアナの限界の為、これ以上細かくみられませんが、異常な隣接不要輻射は見えません。 実際にCWモードで受信してみても、濁りのない綺麗なトーンをしています。

今回採用したロータリーエンコーダーはアルプス製の1回転パルス数24のものです。シャフトがFカットでつまみに自由度が無く、パネルにナット止めできないという欠点はありますが、温度による摺動ノイズの問題が全くなく、かつ百数十円で買えるというメリットがあるものです。

このVFOは送信のとき使用しますが、受信の時は使用しません。 受信時はVFOの電源をOFFする事も考えましたが、電源ON時にLCDの待ち時間が影響して、すぐにPLLがロックしません。 そこで、常時VFOは生きていて、受信の時のみ発振周波数を50KHzアップして、受信時の妨害にならないようにする事にしました。 この機能は実際に送信機へ組み込んだとき、検討する事にします。

電源ONした時のデフォルト周波数は7195KHz固定です。 ラスト周波数をEEPROMに記録する事も考えましたが、 AM送信機のメイン周波数固定で問題なさそうです。

ソースコード PLL_VFO.cをダウンロード

Pllvfo_a

Pllvfo_b

左が7195KHzを発振中のVFO基板。上がその基板の裏側です。  LCDの左上に見えているゼロはPE1-PE3の位相誤差データです。

送信機に実装する場合、RFの回り込みが多分発生すると思われますので、シールドケースに入れる事にします。

Pll_vfo_comp

Pll_vfo_sbox

左上がシールドケース内部の基板、右上はシールドBOXとした状態です。 このように厳重にRFのまわり込みを対策したにも関わらず、わずか10Wの出力にて、ロータリーエンコーダーを回しても周波数は変わらなく、VCOの発振周波数はあさっての方に飛んで行っているという状態で全く使い物になりません。 周波数が変わらないのはマイコンの外部割込み端子にRFが混入して、マイコンが暴走している為。 周波数があさっての方向に行ってしまうのは、終段のRFの漏れがPLL入力端子に混入し、位相が狂ってしまっている為。 これらの問題を丸一日かかり対策し、40W出力でもVFOが安定して発振するようになりました。

これらの対策済み回路図です。 PLL_OSC_schema1.pdfをダウンロード

この状態で出力10W時の不要輻射をチェックしてみました。

 

Xtal_10w

Pllvfo_10w

左上が水晶発振(VXO)の不要輻射データ、右上がPLL VFOの不要輻射データです。PLL VFOの方はキャリアを中心に隣接周波数の不要輻射が10dB程多くなっています。 この原因を調べていましたら、送信周波数とVFOの発振周波数が同じなら、例え、厳重にシールドしたとしても、送信波の回り込みは阻止できず、このような状態になる事が判りました。 市販されているトランシーバーのVFO周波数を調べたところ、送信周波数とPLL VFO周波数は重ならないように設定し、なおかつ、厳重シールドしてありました。 

下のスペクトルは40W出力時の10MHzスパンのもので、左がVXO 右がPLLです。 やはり、このPLLの状態で送信はダメでしょう。

Vxo_40w10m

Pll_40w10m

今回のVFOはAM送信機に組み込むのが目的でしたので、PLL VFOは無理と諦める事にしました。 送信周波数と原発信周波数を同じに出来るのはDDSの場合のみのようです。 もちろん、DDS制御のPLLもNGでしょう。 

SSBトランシーバーのように送信周波数と無関係な周波数、例えば9MHz台で発振させ、16MHzの水晶発振周波数とMIXし、7MHzを得るとかすればOKと思われますが、それも面倒です。

7195KHz以外の周波数を使える手段として、別のアイデアを練る事にします。

VXO再検討 に続く

7MHz用では失敗しましたが、50MHz用として再検討したPLL VFOは成功でした。

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2016年5月26日 (木)

AM50W カーボニルコアの効果

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

T200-26のコアはまだですが、T150-26というAmidonかMicrometalか、はたまた中国製のセカンドソースか判りませんが、それらしきコアが入手できましたので、最大重畳可能なDC電流を気にしながら、LPFの再計算を行い交換する事にしました。

Amtx_mod_lpf_carbonilcore

再計算された4次LPFの各定数は上のようになりましたので、コイルもコンデンサも、この数値に最も近くなるように設定し、巻き上げたコイルが左下、このLPFでの変調波形が右下になります。

 

Amtx_carbonilcore

Amtx_t15026_90mod

左側のコイルはACコードを裂いて作ったビニール線で、右側のコイルはLANケーブルを裂いて取り出したAWG24の2本より線で巻いてあります。 変調周波数は630Hzですが、はっきりと従来のフェライトコアより歪が少なくなっています。

Mic_ftoku_2

さっそく、音楽を変調し、TS-850のAMモードで受信してみました。 すると、確かに歪は大幅に減少していますが、周波数特性の高域に伸びが有りません。 そこで、MICアンプから変調段までの周波数特性をチェックしてみました。

左のグラフがMIC入力から変調終段FETゲートまでの特性を青色で、250KHzのLPFの出力端までの特性を赤色で示しています。 グラフを見る限り、フェライトコアの時の特性と差異はありません。 しかし、聴感上は大きく異なります。 

原因はコアの鳴きの有無でした。 今回のコイルは変調音がコイルからほとんど聞こえません。 従来のフェライトコアはツィータースピーカーを思わせる高域のみがコイルから発せられており、かつこの高域の音はかなり歪んでいました。

TS-850もこの送信機も同じテーブルの上に置いてありますので、TS-850のスピーカーがウーハーとなり、フェライトコアがツィーターとして2-WAYのスピーカーシステムを作ってしまい、歪んだ音ですが、広帯域の音として聞こえていたものでした。 このカーボニルコアの方が、正常な音質のはずなのですが、いまひとつ物足りなさを感じます。 しかし、さらにエージングを続けたり、レッキとしたオーディオシステムで聞き比べてみた結果、今までの音質が異常であり、このカーボニルコアによる音質が正常である事が判りました。

LPFのコアを音鳴りさせない為には、巻線がコアに密着する事が一番のようです。 その為には、単線より、ビニール被覆のより線で、かつ出来るだけ細い線が有効のようです。 ただし、あまり細いと抵抗分が増大しますので、複数本パラに巻くというのはかなり効果ありました。 最初のNECトーキン製コアに巻いたときもKIV線というビニール被覆でしたが、このコアはフェライトコアを樹脂のケースでカバーしたものでしたので、コアと線が密着するという条件は満たされなかった為、音鳴りしたと思われます。

このコア変更に当たり、フェライトとカーボニルの差が出るものかを確かめる為にデータを取っていますので、以下紹介します。

 

Amtx_2ndharmo

Amtx_carbonil0601

上は、40W出力無変調時の高調波データです。左がフェライト、右がカーボニルです。 コアは変調段の特性には影響しますが、高調波には影響しません。 差があるとすれば9MHz付近の不要輻射レベルです。気持ち的にはフェライトの方が少ないように思えます。

 

Amtx_250k30mod

Amtx_1m0601_2

上は1KHz 30%変調状態で250KHzのPWMスイッチング周波数の漏れを見たものです。 左がフェライト、右がカーボニルです。 250KHzの漏れはどちらもあまり変わりません。不要輻射となるノイズフロアーレベルも同じくらいです。

 

Amtx_1k30mod

Amtx_100k0601_2

上は1KHz30%変調時のキャリア近傍の不要輻射データです。左がフェライトで右がカーボニルです。 このデータもフェライトとカーボニルの差はほとんどありません。 

Amtx_10m0601_2

これらのデータを取る前は、絶対にカーボニルの方が良くなるはずと思っていましたが、フェライトでもちゃんと磁気飽和対策さえ行えば問題ない事が判りました。

また、気にしていた9MHz付近の不要輻射も改めて確認したところ、左のスペクトルのごとくカーボニルコアでも問題はないようです。

従い、このAM送信機はカーボニルコアで進行します。理由は、変調波形のエンベロープは明らかにカーボニルコアの方が歪が少なく、聴感上の歪も、カーボニルコアのほうが少なかった為です。

エージングで壊れて、仮使用しているD1のショットキーダイオードは60V5Aのショットキー2本パラ接続に変更しました。 このダイオードはSMTタイプですので、基板の裏側に移り、写真では見えなくなりました。

ここまでの配線図 AMTX_PP2.pdfをダウンロード

Amtx0526

40Wでエージングを続けて、延べ20時間くらい過ぎたところで、ファイナルから煙が出て出力は10W以下に落ちてしまいました。 しかも、部品の焼ける匂い。 最初、どこで問題が起こったのか判らず焦りました。 1時間くらいああでも無い、こうでも無いとやったあげく、判った原因は終段タンク回路のシリーズコンデンサが絶縁破壊しているものでした。 例の昭和40年代に作られた50V耐圧のセラミックコンデンサです。 たちまち手持ちが有りませんので、2個のコンデンサをシリーズに接続し、とりあえず耐圧を2倍にして使っています。

2016年12月11日 追記

電源として使っているTS930Sの電源回路にある30V以上をプロテクトするツェナーダイオードを廃止して、31.6Vまで電圧を上げる事ができましたので、ダミーロードをつないでいきなり送信にしたら、またまた、終段のタンク回路のコンデンサが煙を出してショートしてしまいました。 やむなく、この昭和のコンデンサは全部廃止し、3KV耐圧のコンデンサに変更したのですが、使ったコンデンサがF特と言われる温度特性管理があまい物だった為、数分も通電すると、容量が変わってしまい、出力が20Wくらいまで落ちてしまいます。 マイカコンは手持ちしていませんので、とりあえず、セラミックコンデンサを全廃して、150Pのエアバリコンに交換してみました。 さすがにエアバリコンは安定しており、エージングしてもほとんど変化はありません。

Amtx_tank

この150Pの送信用バリコンを取り付ける方法を思案しましたが、スペースが無く、やむなく50Pのバリコンに代え、不足の容量はCH特性のセラミックコンデンサでカバーさせる事にしました。 ここで、また昭和のコンデンサが登場です。 しかし、今度は220PのCHコンデンサを4個直列に接続し、50Pのバリコンで出力最大点が探せるようにタンクコイルのタップを選び直しました。 最大出力は60Wとなりますが、リンギングが発生します。 従い、バリコンを容量が増える方向に調整し、50W出力ポイントに固定しました。 ここまでの対策で送信開始直後から50Wとなり、以後出力は変化しなくなりました。

最新回路図 AMTX_PP3.pdfをダウンロード

VFOの製作に続く

13.8V電源による50Wアンプの検討はこちら

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2016年5月17日 (火)

シャーシ変更と音質改善

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

有り合わせのシャーシに組んだ回路ブロックは、その配置と距離の関係でRFの回り込みが発生し、それが、変調音の歪となっていました。 そこで、シャーシをもう一回り大きな物に変更し、将来ケース収納も視野にいれた構造とすべく改造する事にしました。

Amtx_pwr

FETドライバーTC4452を2個も使った事からDC12Vのシリーズレギュレーターの電力損失が10W近くになり、長時間のエージングで破壊したのをきっかけに、このレギュレーターをDC/DCコンバータータイプに変更する事にしました。採用したDC/DCコンバーターはサンケン製のMPM80という2Aタイプでしたが、キャリアーを送信した途端、アース線のビニール被覆が火を噴いてICはショート状態で壊れてしまいました。 RFイミュニテイに無防備のDC/DCは自ら壊れると同時に無線機を破壊します。 昔、菊水のAC/DC電源に2mのトランシーバーを繋ぎ、送信にした途端、出力電圧が制御不能になりトランシバーを壊した事を思い出しました。  しかし、またシリーズレギュレーターに戻す事は不可能ですから、今度は新電元の3Aタイプに変更し、入出力にチョークコイルを入れ、RF混入を防止する策をとり、なんとか40W出力でも正常に動作させる事に成功しましたので、 このDC/DCとパワーリレー、コモンモードフィルターなどを小さな基板にまとめてメンテしやすくしました。

RFのD級アンプはほぼ完成していましたが、メガネコアとドレイン間を結ぶワイヤーがリンギングの元になっている可能性がありましたので、これを短冊状の銅板に変更しました。

Amtxe_pp_amp

Amtxe_pp_vd

左上は、配線を銅板に変更した状態。右上はその状態で出力35W時のドレイン電圧波形です。それぞれ、60Vピークくらいです。 ゼロ電位のリンギングが前回より少しだけ改善しました。

Amtx_mod0516Amtx_micftoku0522 

また、変調回路もメンテを容易にする為、左上の写真のように放熱板を基板上に取り付け、D級アンプのFET 2石を基板上に配置しました。 今回、この変調回路にちょっとしたEQ機能を追加しました。 リミッターアンプの2番ピンに270Ωと1μFのパラ回路を追加し、2KHz付近でピークが出来るような周波数特性とし、少しでも了解度のアップを期待する事にします。 右上は、MICアンプからD級アンプのLPFまでの周波数特性です。 低域をカットし、中域を強調しています。 ただし、そのレベル差はわずかです。

D級アンプのLPFについても検討を加えました。 LPFの設計は、RFのD級アンプの動作インピーダンスに合わせる必要があります。 35W出力時の動作インピーダンスは4Ωくらいです。 従い、4ΩでLPFを再計算し、各定数を決め、LPFのコアはNECトーキンのESD-R-47N-Hという品番で200MHzくらいまで使える物に変更してありましたが、このコアはNi-Zn系の非分割タイプでした。

Amtxlpf0501

Amtxnogaplpf

従い、左上の写真のごとく、巻き数も少なく太い線で巻線出来ていましたが、右上の写真のごとく、変調波形に歪が見られました。 正弦波のエンベロープを良く観察すると、レベルが高くなる方向で振幅が抑えられた上下に非対称となっています。 この原因を調査したところ、直流電流重畳によるインダクタンスの変化のようです。 FAT5ではアミドンのT200-26のコアを指定していますが、このコアはフェライトではなく、カーボニル鉄粉による焼結コアです。アミドンのHOMEページから確定した許容DC電流は読み取れませんが、同じようなコアを使っている北川工業のメタルコアMPTRは20AのDC重畳でもインダクタンスは変わらないと言っています。 アミドンが例え20Aまでないにしても、5Aや10Aではインダクタンスに変化は無いと推定できます。 メタルコアの個人による入手は全く不可能ですから、コアをT200-26に変更したいのですが、入手にかなり時間がかかりそうです。 そこで、テンポラリィとして、北川工業の分割コアGTFC-41-27-16にもどし、1mmのエアギャップを2か所確保して、このDC重畳特性を改善したのが、左下のコイルで、このコイルのときの変調波形が右下になります。

Amtxlpf0517

Amtxw_gaplpf

フェライトコアにエアーギャップを設けて、磁気飽和対策をしても、直流電流増加によるインダクタンスの減少率がゼロになる訳では有りませんので、直流電流が、およそ2Aを超え始めると、インピーダンスが非線形になる事を防止する事は出来ないようです。 今後、カーボニルコアを入手できたら、どれくらい改善するか確認する事にします。

Amtx0522

今回シャーシを一回り大きくしましたので、全体の配置は左のようになりました。前回より大きく変わっていませんが、各ブロック間の距離を確保できましたので、RFの回り込みによりDC/DC電源の異常動作、変調音の歪は解消されました。 

また、変調段のLPFが鳴く問題をすこしでも改善する為、このコアを2枚のベーク板で挟みこみ、1mmのUEW線の振動を抑える事にしました。効果はベーク板がないよりはマシというレベルにしかなりませんでしたが、専有面積の削減にはなりました。 

 当初20W以下の出力でD級アンプの電流も2A以下でしたので、D1のショットキーバリアダイオードは3A定格品を使っていました。 出力40W近くになった現在は3Aを超える電流が流れています。 そして、エージング途中でこの3Aのダイオードもショート状態で壊れてしまいました。 とりあえず代用品を使っていますが、なるべく早く大きな定格のダイオードに変更が必要です。 電源入力部分には5Aのヒューズを設けていますが、すでに2回もこのヒューズが飛ぶというアクシデントもありましたので、28Vラインの電流も監視できるように電流計を追加しました。  

変調段を含めた効率は71%でまずまずです。 変調器のD級アンプは95%くらいの効率で動作しているようです。

エージングを続けていると、小出しに問題が出てきます。 日曜日の朝一番にエージングの為、送信にしたら、出力が10Wも出ません。 スタンバイスイッチを何回かON/OFFしているうちに35W出るようになりました。 一度35W出始めると、継続してOKとなります。 この不安定な動作の原因を調べてみると、TC4452の入力レベルがアンバランスで、一方は正常なレベルですが、もう一方は、スレッシホールドレベルギリギリで、温度が低い時は、レベルが下がりプッシュプル動作となっていないのが原因でした。 どうも前段のCMOSインバーターに問題があるようで、オシロでチェックすると、74HC04の出力が電源電圧の半分くらいしかスイングしていません。 ドライブ電流不足かと、インバーターをパラレル接続してみましたが関係なし。 改めてスペックを見ても、7MHzでスイッチングするには問題ないレベルです。  このICは取り付けた直後は実力でOKでしたが、いじっている間になんらかの原因で壊れたみたいです。 残念ながら、このICの在庫がなくなりましたので、手持ちのTIの74LS04に変更する事にしました。

Mm74hc04recomend

Mm74hc04 

ドライバー段で、 このドライブ不足が起こると、基本波近傍の不要輻射が極端に大きくなるようです。 ドライブ不足の状態で音楽を変調しながら、受信周波数を次第に離調させると、20KHzくらい離れた周波数では、歪んだノイズに近い復調音になりますが、受信機のSメーターは同調時に比べ40dBくらい低く指示します。 しかし、74LS04に替えた後は、同じように歪んだ復調音ですがSメーターは同調時よりも60dBくらい低く指示します。 ドライブ不足は不要輻射の増減に大きく関係するようです。

74LS04に変えてから、VR5を調整すると第2高調波レベルが最低になるポイントが出てくるようになりました。 さらに、送信開始すると、従来の調整状態のままで、いきなり出力40Wになります。 以前、エージング中に5Wほど出力がアップすると言いましたが、その原因は温度でコンデンサの容量が変わるのではなく、CMOSインバーターの状態が変化していた事が原因でした。 

ここまでの配線図をダウンロード AMTX_PP1.pdfをダウンロード

カーボニルコアの効果 に続く。

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2016年5月 1日 (日)

パワーアップ40W(D級プッシュプルパワーアンプ)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

E級アンプの出力は電源電圧によって決まり、パラレルドライブにしようが、プッシュプルドライブにしようが出力は変わらないという事ですが、E級プッシュプル回路の記事はインターネット上に沢山存在します。 私も、最初、パワーが大きくならないプッシュプル回路なんか必要ないと思っていましたが、いざシングルドライブのE級アンプを実際に作ってみると、その第2高調波の多さには閉口しました。 しかし、みなさんがプッシュプルを単に偶数次の高調波対策の為だけの目的で採用しているのではなく、パラレルドライブ同様、負荷インピーダンスを下げてパワーアップも同時に行っていると考え、実験を始める事にしました。

ところが、教科書通りの回路を組んでも、さっぱり効率が得られません。 そこで、E級を止め、D級プッシュプル回路にして検討を開始しました。

シングルドライブの時の第2高調波レベルは-6dBくらいで、7次LPFを使っても-35dB前後にしか減衰できません。 従い、さらに6次のBPFを挿入して、かろうじて第2高調波を-50dB以下にするという状態でした。 これをプッシュプルドライブにすると、LPFなしで第2高調波を-30dB前後に抑制できますので、7次LPFのみで、第2高調波を-50dB以下に抑制できます。 そして、電力効率も向上します。

シングルドライブでドライブインピーダンスを6Ω以下にすると、例えD級アンプでも効率は60%以下になってしまいますが、プッシュプルにして、これが70%以上になるなら、低い電源電圧でも出力を上げられる可能性が有ります。 電源電圧28.2Vで最大出力18WのE級アンプをD級プッシュプルにして、30Wくらいの出力を確保できないか実験する事にしました。

今回のパワーアップ計画は、D級アンプだから80%以上の効率を確保するという目標ではなく、最大許容損失をアップする手立てを行い、例え効率が70%以下になろうが、実運用状態で連続動作可能な最大出力を得る事を目標としました。

まず、回路図です。

AMTX_PP0.pdfをダウンロード (この配線図は初期のもので、最新では有りません。)

D級プッシュプル回路は3.8MHz用のFAT5回路を参考にし、STF19NF20によるシングルプッシュプルドライブで、それぞれ、TC4452というFETドライバーでドライブします。 

Ampp_eamp1

Ampp_eamp2

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Ampp_pcb

STF19NF20の入力容量はIRF640より30%以上小さいですが、それでもドライブ電流がふたつのICで400mAも必要となります。 その為、28Vから12Vを作るレギュレーターはアルミシャーシに直止めしてありますが、かなり熱くなります。 

今回のD級プッシュプル回路の基板は片面のユニバーサル基板の銅箔面にベタ状態に銅箔シートを張り付け、これをカッターでカットして回路パターンを作成しました。使用する部品は終段のドレイン、ソース間に入るコンデンサ以外、すべてチップ部品で作りましたので、パターン構造は、はるかに簡単です。 各端子間を板状の銅箔で接続し、難しい所は、部品挿入面に短冊状の銅板を配置しました。 これらの構造が功をはくし、今回はリンギング対策が一発で完了しました。

プッシュプルの出力はメガネコアに1ターンの1次巻線の銅パイプの中を2ターンの2次コイルを通し、2次側で共振回路を構成し、その出力が50Ωのインピーダンスになるようにしています。 変調回路からの14VのVdは1次コイルのセンターより供給します。 この回路で最大効率を得る為のアンプの負荷インピーダンスは6Ωくらいになります。 本来のインピーダンスマッチング負荷は3.1Ωくらいなのですが、そのインピーダンスでは、電流増大による損失が増え、ミスマッチの6Ωくらいが最大効率となっているものです。

Vdmaxpower

終段FETのドレインアース間に入っているC4とC67のコンデンサにより最大ピークドレイン電圧を下げる事ができます。このコンデンサが無い場合のピークドレイン電圧は電源電圧14Vのとき、100Vくらいですが、330PFで約60Vまで下げる事ができ、出力はほとんど変わりませんが効率が数%良くなります。 左の波形はドレイン電圧の波形ですが、ふたつのドレイン電圧が180度の位相差で発生しています。 コンデンサ無しの時はこの波形の幅が狭くなって高さが高くなります。 ちなみにこの容量をさらに大きくしていくと、次第に波形が崩れてきますので、一応、教科書通りの波形に近い状態で止めておきます。

2次側のコイルとコンデンサで7.2Mhzに共振させます。 コイルのインダクターを2uHくらいから10uHくらいまで変更してみましたが、劇的には効率は変わりませんでした。 色々検討して、50Ωの負荷に対してQ=5.5くらいになる6uHくらいのコイルにし、それに共振するコンデンサをシリーズにいれます。 調整は仮接続した430PFのエアーバリコンを最大容量から次第に小さくしていきますが、Vdの波形の内、0V付近のリンギングが最少になるような出力にします。 この調整ポイントを超えてさらにバリコンの容量を少なくすると出力最大点がえられますが、このときのVdの波形はかなりリンギングが乗ります。 従い、この最大出力の60~80%くらいの出力状態が最適な調整ポイントになるようです。

この回路では、最大出力は49Wとなりましたので、調整ポイントは30Wと置きました。 この時のLPFを含めたアンプ効率は73%くらいになっております。 

Ampp_eampvc

仮接続のバリコンを取り去り、固定コンデンサに置き換えると、バリコンのもつ浮遊容量の影響で、同じ容量の固定コンデンサでは、うまくいきません。 そこで、数10ピコのコンデンサを何個がパラ接続し、そこそこの出力が得られるようにし、さらに20PFのバリコンを恒久的に接続し、完成した時点で微調する事にしました。 このバリコンはタイト製の送信用ですが、最初100V耐圧のトリーマーを付けていました。 出力を30Wにして、変調をかけた途端トリーマーが絶縁破壊し、煙を出してショートしてしまいました。かなり高電圧になるようですので、バリコンの耐圧には十分注意が必要です。 ところで使用している固定コンデンサは昭和40年代に生産された50V定格の円板タイプです。 従来より100Wのアンテナチューナーにも使用しており、このコンデンサが絶縁破壊した事は有りません。

変調段は現在のFKI10531 1石でも計算上はピーク160Wのドライブが可能なのですが、どうせFETも余っていますので、TC4422のFETドライバーはそのままで終段だけ2石のパラレルドライブとしました。 また、約6Ωの出力インピーダンスにマッチするLPFを再計算して、2次のフィルターとしました。

LPFは-3dB:8500Hz 250Khz:-60dBとして算出した L=159uH, C=4.4uFとしてあります。

Ampp_400hzmod

左は、30W出力で最大変調度の時の波形です。 変調回路のデューティを調整し波形のピーク部分はクリップしておりますが、最少レベルでキャリアがゼロにならないようにしてあります。 しかし、変調のエンベロープは決してきれいでは有りません。 ピークがとがったような波形をしています。 ピーク時に正帰還がかかっているような波形です。

今回、従来の配置のままでパワーアップしましたので、D級アンプからの回り込みが発生して、低周波で発振しました。 やむなく変調回路とRF回路の間にシールド板を建て静電結合を削減しました。 しかし、まだこの結合に伴う変調信号の歪が生じている感じです。 もう少し大きなシャーシに変調部とRF部を完全に分離できるような配置の再検討をする事にします。

 

Ampp_30wout

左のスペクトルは40W出力時の高調波レベルです。 前回使ったTS-930S用の7MHz BPFは有りません。 7次LPFのみで第2高調波は十分減衰しています。 逆に3次の高調波はシングルの時より増えていますが、OKレベルです。 実際に運用する場合、6次BPFを付けて使います。 また、変調波形の改善の為、RF回り込み対策や、LPFのコア変更など再検討する事にします。

一応、30W出力で1時間以上のエージングテストを行い、異常なしでしたので、続けて40W出力状態で1時間以上のエージングテストを実施しました。 今回、用意したPCのCPU用放熱板をファンで冷却していますが、ほんのりと暖かくなります。推定温度が45度くらいです。 この40W出力時のE級アンプ効率はLPF込で73%でした。 使用しているクラニシの終端型電力計はかなりあっちっちになっています。

さらに、数日間連続テストを行った結果、数時間のエージングで出力が5Wくらい上昇する事が判りました。 原因は温度上昇で、同調用コンデンサの容量が変化するもののようです。 シルバードマイカコンデンサを使えば問題ないのでしょうが、そこまでする必要もありませんので、常用出力を35Wにして運用するつもりです。 

後日、このエージングで出力が上昇する真の原因はコンデンサの容量変化ではなく、74HC04の性能が変化する事が原因と解りました。 使ったICの能力不足が原因だったみたいです。

全体の構造は前回の18W出力用とほとんど変わりません。

TSSに提出したブロック図を添付します。

3rd_TX_AM_PP_BlockDia.pdfをダウンロード

Ampp_all

35W出力のAM送信機が出来上がったように見えましたが、エージングを継続するにつれ、予想したオーディオの周波数特性が得られなかったり、レギュレーターが壊れたりと問題が続出しました。 変調音の歪はRFのフィードバックが最大の原因で、各ユニットの配置再検討は避けられなくなりました。

シャーシ変更と音質改善 に続く。

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2016年3月12日 (土)

LDG KT-100の改造(失敗)

カテゴリ<ATU LDG KT-100

今まで、移動する時はMTUを持参して手動でチューニングしていました。

ATU自作の前に検討し、使い物にならなかったので、物置行きとなっていたLDGのKT-100ですが、このATUのリレーはラッチタイプで、一度チューニングが成功すると、リレーに電流が流れないので、乾電池で動くトランシーバーでも使う事ができます。 そこで、このATUを引っ張りだし、改造して実用出来るようにする事にしました。

Kt100open

改めて、ダミー抵抗を接続し、7MHzでチューニングテストをしてみました。

50Ωのダミー抵抗ではSWR1.1以下に収束します。(当たり前)

100Ωの抵抗ではSWR1.5くらいで収束します。しかし、時々一度SWR1.5くらいで停止した後、すぐにSWR2くらいに跳ね上がり停止します。このとき、グリーンのLEDは点灯しません。

25Ωの抵抗ではSWR3くらいでチューニングし、SWR OKの印であるグリーンLEDが点灯します。外付けのSWR計を見ていると、時々SWR1.5以下になる事もありますが、そこで停止せず、SWRが4くらいまで上がってから停止します。

中を開けると、CM結合器の部分にREVとFWDという名前のテストポイントがありますので、ここに電圧計を接続して、ダミー抵抗を変えて電圧を計って見る事にしました。

Cmc_test1original

 

上の表はKT-100に送信機とダミー抵抗を接続して、通常の入出力関係で接続した「正接続」と送信機とアンテナの端子を反対にした時の「逆接続」時のCM結合器が検出したFWDとREFの電圧値と、その電圧値から計算したSWR値です。 正接続と逆接続時の電圧値が大きく異なるデータがありますが、出力の設定をアナログメーターでやっている為、正確に2Wや5Wになっていない為です。出力が異なる場合の目安として見て下さい。

50Ωのダミー抵抗の時は、素晴らしいバランスです。

100Ωのダミー抵抗の場合、2Wのときも5Wの時も少し甘く出ていますが、まあ、許せる範囲です。

25Ωのとき、最初デジタルテスターを疑いました。なんでREFがマイナスになるのか?デジタルテスターが2台有りましたので、確認しましたが、2台ともマイナスを示します。高周波が漏れて悪さしてるかも知れないと、アナログテスターを持ってきて測りましたが、マイナスはマイナスの電圧です。

このATUのSWR測定が甘く誤差が大きいのは、50Ω以下のインピーダンスの時に発生するのではないかと思います。 生産工程で、調整がずれている可能性もありましたので、25Ωのダミー抵抗でSWRが2くらいになるよう再調整して、再度データを取る事にしました。

 Cmc_test2readj_2

 

Kt100cmc_schema

50Ωのダミーの時のSWRは、まあまあです。25Ωで調整しましたから、25Ωの時のSWRも、こんなものでしょう。しかし、今度は100ΩのときにREFがマイナスになります。 REFがマイナスというSWRの定義は有りませんから、これは、SWR1.00と解釈されます。

左はKT-100に使われているCM結合器の配線図です。 ()内の定数は推定値です。 配線図で見る限り、バランスして方向性結合器を構成していますが、実際はバランスが非常にクリチカルのかも知れません。

Ldgcmc_coil_2

CM結合器のコイルの部分を良く観察すると、2重に巻かれたコイルの端末処理がかなりラフであることと、コイルが等間隔で巻かれていない所に、静電シールドのない芯線がコイルの中心から外れたところを貫通していますので、かなりバランスは崩れていると思われます。

過去何台もSWR計用のCM結合器を作ってきましたが、ファラデーシールドが無い場合、芯線の位置が変わると、ころころREF電圧最少ポイントが変化した記憶があります。 このセンタータップの電位を1個のトリマーでバランスさせるCM結合器は、その動作がかなりクリチカルになることから、日本製のATUやSWR計ではほとんど見かけません。

結局、ATUの品質を左右する一番重要なCM結合器が貧弱で、使い物にならないATUに仕上がっていると考えられます。

そこで、この内臓のCM結合器を止めて、日本製のSWR計に使われているCM結合器に付け替えてみる事にしました。

Cmc_test3_newcmc_2 

上の表は、日本製のSWR計に使用されていたCM結合器を仮接続して、同じようにSWRを測定したものです。 さすがに日本製CM結合器でも正接続と逆接続でSWRの違いがあり、今回のテストでは、逆接続の方がまともな数値を出しています。 そこで、逆接続の状態が正接続になるよう、入出力を入れ替えて、実際にATUの動作をさせてみました。

ところが、50Ωの時は問題なしですが、100Ωや25Ωの場合、SWR1.5以下に一瞬整合するのに、最後のリレー動作でSWR5以上になります。 何度やっても同じ事でした。

ここから推測ですが、CM結合器のバランスが傾斜しているので、マイコンソフトで最良値を求めても、最後に、補正として、LCの組み合わせを少しずらしているのではないかと思われます。 LDG製のATU全てがそうとは思いませんが、少なくともこのKT-100はそうとしか思えません。 なぜなら、実際のアンテナでは、ダミー抵抗ほど、おおきくSWRが狂うことはなく、なんとなくSWR3以下にはなります。ただし、半数以上のバンドでSWR2以上です。

CM結合器がおかしいなら、CM結合器を変更すればよかろうと思って始めた実験でしたが、いいかげんなCM結合器と、それをカバーする為のソフトウェアーの為、またしても、このATUはお蔵入りとなってしまいました。

LDG KT-100の改造(マイコン)に続く

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2016年2月20日 (土)

リミッターアンプ追加

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

正弦波テストでは、大きな歪は確認できないのですが、音楽ソースで変調すると、曲によって歪が感じられる事が有りました。 その原因を調べていたところ、原因は変調器のLPFに使用されている2個目のフェライトコアによるコイルがRFのフライホイール回路の空芯コイルに近づきすぎ、この空芯コイルとフェライトコアコイルが互いに誘導しあっているものでした。 誘導の程度は正弦波も音楽信号でも同じなのですが、歪レベルが単純に正弦波上では良く見えなかっただけでした。

Eamp_2b_3対策として、この2個目のフェライトコアは廃止しました。 250KHzの減衰量を心配しましたが、左のスペアナ画像のごとく、33MHz付近にあったノイズも無くなって綺麗になりました。

E級アンプの放熱板はファンで冷却する事にし、8Vの電源ラインでモーターを駆動していましたが、変調用音量ボリュームを上げると、このモーターの駆動ノイズが同時に変調され雑音となっていました。 この対策の為、12Vラインから68Ωの抵抗と470uFのデカップリング回路を通して駆動するように変更しました。

最近のSSBトランシーバーは定格出力を1.5倍くらいオーバーしてもリニアリティが確保されており、内臓するコンプレッサーは単に出力が定格を超えないようにしているだけですが、AM送信機の場合、変調度が100%を超えたとたん、スプラッターをまき散らすという原理上の問題がありますので、このオーバー変調はどうしても避けねばなりません。

そこで、マイクに向かってしゃべっている時でも変調度を読み取れるように変調度計を追加しました。 

Mod_meter

Mod_amp

左が今回追加した変調度計、右は、SMT用ユニバーサル基板上に組んだメーター駆動回路で、後日、糸ノコで切り落とし、メーターの後ろ側に貼り付けます。

この変調度計はピークホールド型で、針の振れは遅いですが、オシロで波形観測をしながらチェックすると、指針が80%を超えなければ、おおむね100%以下の変調度が維持できるようです。 このメーターを見ながらしゃべる事にします。

さらに、突発的な過変調に対応する為、録音やカラオケのマイクアンプに使われるリミッターアンプを追加し、過変調の確率を減らす事にしました。 使うICはTA2011のセカンドソースであるSA2011です。ゲインは標準回路の47dBのままですが、アタックタイムを数ミリ秒にする為、6番ピンの抵抗コンデンサを変更しました。 うれしい事に、このICはトランシーバーのマイクアンプでの使用も想定されているようで、内部OP-AMPの差動入力間に20PFのコンデンサが接続されており、AMP-Iの問題は全く有りません。

この回路で、過入力があっても90%以上の変調がかからないようにVR2を調整しています。

また、前回の効率アップ検討時に実施したリンギング対策も下記の絵のように、すっきり配線することで、ほぼ確実に対策できました。 今回は短冊状の銅板を使いましたが、プリント基板の銅箔に幅を持たせて板状の導体で配線するのが一番の対策のような気がします。

E_ampringing

Amtx0303

左は最終状態の送信機で、変調度計を狭いフロントパネルに括り付けました。 そして、その後微調整をして、電源電圧28.2Vで18Wの出力が得られ、効率はE級アンプ部分で82%くらいになっています。

配線図 AMTX_15.pdfをダウンロード

ファンの振動をスタンドマイクが拾い、うるさいですから、シャーシの下にスポンジたわしを敷いています。

TSSに申請してから、約1か月後の3月中旬に、総通から設備追加の許可が降りました。 土日の休日しかON AIRできませんが、テスト運用しております。

さらにパワーアップにトライします。

パワーアップ(E級プッシュプルパワーアンプ) に続く。

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2016年2月11日 (木)

LPF改善

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

トロイダルコアで作った7次LPFはその挿入損失が大きく、E級アンプの効率アップの効果が全く生かされていませんでした。

そこで、最初に作った空芯コイルによるLPFを改造して、7次LPFを作り直す事にしました。

最初のLPFも空芯コイルでしたが、各コイル間のシールドがされていなく、これが、目標とした特性が得られなかった原因と考え、仕切り板のある構造にします。

New_lpf_schema

基本定数はトロイダルコアタイプと同じですが、空芯コイルに換え、各コイル間には仕切りを入れコイルどうしの干渉をなくし、かつ次のコイルへの接続は100Pの貫通コンデンサ経由で行うという方式にしました。 厚さ0.3mmの銅板でシールド枠を作り、はんだ付けして組み立てますが、強度確保の為、底辺にアルミの角アングルを当て補強してあります。

今回は手持ちの銅板で製作しましたが、原理的には、銅より鉄の方がシールド材としては優れていますので、次回製作が必要になりましたら、ブリキで製作するつもりです。

New_lpf_1_2

New_lpf

このLPFに50Ωの負荷をつなぎ、アンテナアナライザーで測定したSWRカーブが左の状態です。 7.199MHzのときSWR1.14となっており、この時の挿入損失が約0.45dBでした。 トロイダルコイルタイプの時は約1dBのロスでしたので、約0.55dBの改善です。

また、14MHzの減衰量をアンテナアナライザーとオシロスコープで確認したところ、30dB以上はあるようです。 

前回の検討で、FETシングルの時の最大DC入力は、23Wと出ていましたので、この新しいLPFの場合でもDC入力23Wくらいを目安として、コイルやコンデンサのカットアンドトライを行い、トランスの巻き数比も1:2にした結果、LPF outで15Wくらいの出力を確保する事が出来ました。 この時のE級アンプの推定効率は80%くらいになりました。

そして、効率の良いE級アンプと言えども、電源電圧を上げて、電流を押さえるようなハイインピーダンス回路にしないと、高効率は得られないという事が良く理解できました。 電源電圧はまだ上げる事はできますが、熱損失が目いっぱいですので、今回はこの辺で手を打つ事にします。

Am_tx0211

上の表は電源電圧を14Vにして、フライホイール回路の再設計を行ったときの出力データです。一番上は、効率最大の条件にしたもので、LPF outで約12Wの出力です。 熱損失的には、もう少し余裕がありますので、効率はダウンしますが、ギリギリまで出力アップしたのが真ん中のデータです。14V電源で16W出ています。 そして、この状態のままで、変調器をつなぎ、変調器に28.2Vを加えた時のデータが一番下です。かろうじて80%の効率を確保しました。

Vd0211

Mod0211

左上がVdの波形、右上は電源電圧28.2Vで1KHzの変調をかけた状態です。これより変調レベルを1dB上げると、1KHzの上下がクリップ始めます。従い最大変調度は90%くらいです。波形歪は音楽を変調して聞いてみても、ほとんど感じられません。

そして、配線を最短にやり直し、エージングを1時間した結果

無変調時のDC入力23.06W、LPF out 17.2W RFアンプ効率74.5%が最終値となりました。

Lpf_mod3a

上は変調段の後のLPF計算結果です。実際の回路では、L1=200uH、L2=130uH、C2=4.4uFとなっています。 このLPFはオーディオ信号で鳴きます。かなり歪んだ音です。マイクをつなぎハウリングは起こりませんので、現状のままです。 (その後、L2とフライホイール回路のコイルとの結合が問題となり、L2は廃止しました。)

計算URLは下に再掲します。

http://gate.ruru.ne.jp/rfdn/Tools/BlpfForm.asp#p1

E級アンプの検討開始時、VK1SVの設計シートを紹介し、うまく行かなかったと書きました。 しかし、うまく行かなかったのは私のやり方が悪かった為で、 今回は、かなり当てに出来るデータが得られました。

http://people.physics.anu.edu.au/~dxt103/calculators/class-e.php

そのURLを再掲しますが、ここの計算で重要なのは、トランスの1次:2次の巻数比でした。 巻数比は計算上では、小数点付で表示されますが、ここは1か2か3の整数しか無いという事です。色々なパラメーターを調整し、巻数比が整数になるようにしなければならないという事です。 今回、再計算するに当たり、電源電圧14Vと固定して、その他のパラメーターを設定しますが、VoとかL1は固定されますので、主にPOWERを選択して、トランスの巻き数比を2.0xくらいにします。この状態で得られた、L2をそのまま採用し、C1とC2を調整すると、計算で得られた容量の60~70%くらいで最適となりました。 L2は必ず、LCメーターで計測されたインダクターか、アンテナアナライザーを使い、既知のコンデンサとの直列共振周波数を求め、これから算出されたインダクタンスが目標値の最少誤差になるよう調整して置くのがキモです。

また、計算シートにあるようにQ=5からスタートしたらいいのですが、巻数比を3.0にすると、誤差が大きくなりますので、Q=3くらいまで落とした方が良いみたいです。 ただし、巻数比が大きくなるに従い、効率はどんどん下がっていきますので、巻数比2.0が最適なようでした。

このようにして、最大効率のC1,C2を求めた後、空芯コイルで作ったL2のピッチを微調整します。 C1,C2が計算通りにならない主な理由はQをいくらにするかという事のようです。 通常、動作状態のQを予想するのは難しく、ここで労力を使うより、計算値よりずれる事を受け入れる方が楽です。

ファイナルの電源をOFFにして、変調器のLPFを検討しようと、ハンダゴテを使い部品交換をしていましたら、誤ってFKI10531のソースとGNDをショートしてしまいました。電源OFFにしてあるので安心してましたが、FKI10531がショート状態で壊れてしまい、手持ちのFETを全部使い果たしてしまいました。  

Amtx_0211vomp

この原因は電源ラインに挿入した2200uFの電解コンデンサが放電せずに残っており、ソースとGNDをショートしたとき、電解コンデンサの放電電流が流れ、FETを電流破壊したものでした。 対策として、この2200uFの両端に5.6KΩの抵抗をパラに入れ電源OFF時はすぐに放電するようにします。

左がこれまでの対策を全て盛り込んで、完成したPWM変調方式AM送信機です。

ファンの音が少し気になりますが、FETが壊れるよりはましですので、我慢する事にします。

Wout_bpf0212

Bpf_add0212

Amtx_wbpf

左上は、この送信機でフルパワー出力時の高調波レベルです。Qをかなり高くした、7次LPFでも第2高調波を十分に減衰させる事は出来ていません。 右は、この出力の後に、TS-930Sに内臓していた7MHz用BPFを取り付けたものです。 33MHz付近でPWMアンプのフィルターから放射されたノイズがBPFに誘導しています。 左の写真がBPFを取り付けてエージングをしている様子です。 クラニシのパワーメーターは17.5W付近を指しています。 さすがにKENWOOD設計のBPFだけあって、挿入ロスはほとんどありません。

AUX端子からの音質は問題ないのですが、TS-850Sにヘッドフォーンを付け、マイクに向かってしゃべってみると、高域が抜けた、了解度が悪い音質になっていました。 原因は、常用しているマイクの出力インピーダンスが50KΩであり、これを10KΩのボリュームで受けた為、高域が落ちてしまったものでした。ボリュームを50KΩに換えればOKなのですが、あいにくスイッチ付の可変抵抗器が有りません。やむなく、OP-AMPを追加し、50KΩで受けるように変更しました。 

配線図 AMTX_13.pdfをダウンロード (IC6の in,outが逆です。)

この状態でTSSに申請しましたが、音楽を変調した信号により、フルパワーでダミーロードをドライブし、そのおこぼれを、TS850Sで聞いていると、曲によって歪が気になる事があります。 しばらくは、正弦波ではなく、音楽信号による歪改善が必要なようです。  実際にON AIRするのはいつになる事やら。

TSSに提出した送信機系統図2nd_TX_AM_BlockDia.pdfをダウンロード

リミッターアンプ追加 へ続く。

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2016年2月 6日 (土)

放熱設計

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

こいう事を巷では「どろ縄」と言います。

28Vの電源に1分くらいつないだらFETが壊れてしまいました。しかも、E級アンプと変調用のD級アンプ、ふたつともです。 この対策を考えていましたら、パワーアンプで最初にやらねばならない放熱設計が完全に抜けていました。 FETシングルで何ワット出力できるか? パラレルでは何ワット?という以前の問題でした。

そして、改めて放熱設計を検討する事にしました。

Heatsink3 

 上の表は、放熱設計の基本を表にしたものです。 各熱抵抗はFETの品種ごとに決まった値になります。 また、使用する放熱板やFETを放熱板に固定する方法で決定される数値です。 これらの数値から、今回の送信機では、FETに許容出来る最大損失が10Wであると計算されました。 

次に実際の使用環境を考察します。  この送信機はAM送信機ですので、無変調時の定格出力と100%変調時の最大出力を考慮必要です。最大出力は無変調時の1.5倍となりますので、定格出力状態で論議するときの最大許容損失も、10Wの1/1.5の6.7Wになります。 この6.7Wを超えたら、このFETが壊れるわけですから、ディレーティングという考え方を行い、最大許容値の70%を通常状態と設定します。この通常状態での許容損失は4.7Wとなりました。

E級アンプの効率を仮に80%と仮定すると、4.7Wの許容損失になる時のDC入力は23.3Wとなります。 ここから4.7Wの損失を引き算して、アンプの出力は最大で18.7Wとなります。 この18.7WにはLPFの挿入損失は含まれていませんので、現在のLPF挿入損失-1dBを考慮すると、LPF出力部での最大出力は14.8Wと計算されます。

FETが90%変調状態で1分くらいで壊れた時、LPFを通過した後の無変調出力が21Wくらいでしたから、FETが壊れても不思議ではありません。

これから、回路を再設計するに際し、測定誤差もありますので、一旦、目標最大出力はLPF挿入前で18Wと置きます。  18W以上が欲しければ、FETパラレルドライブにして、放熱板も2倍の放熱量を確保できるサイズにしなければならないという事です。 FETパラレルドライブの出力アップ構想も許容放熱量の制限から不可となりました。

なお、ここでシングルFETで最大18Wというのは、フルモールドパックのFETと、秋月の小さな放熱板での話で、ドレインが直接フィンに接続された絶縁が必要なTO-220や、ファンの付いた放熱器を採用する事により、この2倍くらいの出力まで上げられる事は補足して置きます。

これらの条件を実際の回路に当てはめようとすると、そう単純にはいきません。 まず、LPF挿入前の出力というのが測定できません。 電力計が熱電対型の真の実効値を検出するタイプなら問題ありませんが、クラニシの電力計やCM結合器を使った通過型電力計の場合、LPFを通る前の大きな歪のある信号の電力を計る事は不可能です。 これらの電力計は正弦波の片方のみをダイオードで整流して、その直流電圧から電力を換算していますので、歪が生じたとたん、指示された電力値は誤差が大きくなります。ひどい時は入力されたDC電力よりも測定された高周波電力が大きいというウソのデータも出てきます。 従い、LPF単体の挿入損失を正弦波の信号源を使い、実測で求めておき、LPF出力端で測定した電力からLPF無しの出力を計算で割り出しています。

E級アンプを再設計するに当たり、一度熱暴走で壊している負い目がありますので、最初は14Vの電源で10Wくらいを目指して、回路設計を行い、おそるおそるFETや放熱板を手で触りながら、パワーを上げるかどうかを判断することになります。

そんな訳で、フライホイール回路のコイルを0.61uHとして、この状態で最大効率が得られるように各定数を調整した結果以下のようになりました。

Amtx_comp_out1_2

上の段は、変調器なしでRFユニットに直接DC14Vを加えた時のもので、LPF通過後、9.1Wの出力となり推定出力は11.5W、76.4%の効率となりました。 RFアンプ効率というのは、LPFのロスを含んだ全体の効率です。

下段は、変調器を接続し、電源電圧も28.2Vに上げた時のデータとなります。 変調器とRFユニットの間にあるLPFのインピーダンスが影響していると思われますが、単体の時より効率が上がり、LPFなしの推定効率は80%くらいで、まずまずです。

Amtx_vdvg

Amtx_rfout 

左の画像の下の波形がVg、上の波形がVdです。 オシロの縦の目盛は20V/divです。 右側の画像はLPFを通った7MHzのキャリ波形です。

この状態で、PCから音楽ソースを入力し、1時間くらいのエージングテストを行いました。   RFファイナルの放熱板はかなり熱を持ちます。1秒以上触り続ける事は出来ません。多分50度を超えていると思われます。また、28Vから12Vを作る3端子レギュレーターも負けずに熱くなっています。 変調器のFETは100x120mmのアルミ板にビス止めしてありますが、ほとんど温度は感じられません。

E級アンプの放熱板に定格12Vのファンを8Vで駆動して風を当ててみました。すると放熱板の温度はずっと指を当てていられる状態まで下がり、出力も以下のようになりました。

Amtx_fantukiout

 

効率83.5%はマユツバものですが、ファンで強制空冷するとかなり効果がある事はわかりました。ファンを恒久的に取り付ける方法を考える事にします。

一方、1時間もエージングすると、7MHzのLPFのコアがかなり熱くなります。これは、なるべく早く改善する必要があるようです。

今回の変更でE級アンプのインピーダンスは14Ωくらいになりましたので、従来、7.2Ωで計算されていた変調器のLPFのままでは、変調の周波数特性が変わり高域が、かなり出るようになりました。スイッチングの250KHzも減衰量が減ったと思われます。 この変調段のLPFは周波数特性のみに影響すると思っていましたが、インピーダンスが大幅に違うと、オーディオの波形が歪む事を発見しました。 E級アンプの負荷インピーダンスが10倍を超え始めると次第に歪を目視できるようになります。 従い、きれいな変調を維持する為には、常にこのフィルターのインピーダンスはE級アンプに合わせておく必要がありそうです。 

最新回路図 AMTX_11.pdfをダウンロード (IC6の in,outが逆です。)

LPF改善 に続く。

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2016年1月31日 (日)

変調性能確認

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

変調部とRF部が完成しましたので、電源電圧13.8Vの状態で、AM送信機としてまとめ、変調の度合いを確認する事にしました。 出力はLPFを通った後4.5W出ています。

Amtx_comp

左は、コの字の形に曲げたアルミシャーシの上に、変調部、RF部、及び送信のスタンバイスイッチやマイクジャックを設け、一応送信ON/OFFが出来るようにしたものです。 送信のON/OFFはできますが、受信機の制御まではまだ出来ていません。 実際にON AIRするまでには、追加予定です。

ひとつのシャーシにまとめるに当たり、変調器、水晶発振器など前段の部分は実験用のシリーズ型安定化電源から電源を供給し、RFと変調器のファイナル部分はKENWOODのPW18-3ADという、れっきとした工業用電源から供給していました。 キャリアを無変調でダミー抵抗に送信し、それをTS-850SをAMモードにして受信すると、すさまじいハム音です。しかもかなり高調波も含まれています。 そこへ、ダミー抵抗にオシロを接続して変調波形をモニターしようとすると、このハム音がさらに大きくなります。

困りはてて、再度分解して、電源回路に電解コンデンサを追加したりしましたが、一向に改善しません。 KENWOODのDC電源の+/-両端にオシロをつなぎ、ゲインを最大にすると、かすかに方形波が見えますが、それが変調器に混入している訳ではなさそうです。 とりあえず、この電源を止めて、いつも使っているFT-991用のDAIWAのDC電源に交換して見ました。 すると、ハム音は画期的に改善しました。 工業用電源は選択可能な電流リミッターやデジタル表示の電圧、電流計や、プリセット機能など、回路検討時は大変便利なものですが、自身のノイズ対策がかえってGNDラインをノイズでフローティングするようになってしまうようです。

ファイナルの電源をFT-991用にしても、ハム音は完全にゼロでは有りません。 そこで、前段に接続されているアナログ電源をはずし、前段もFT-991用の電源から供給するようにしてやると、きれいにハム音が消えました。 ふたつのACトランスを介した電源では、ハムの誘導ノイズが消えないようです。

Music_mod

PCのヘッドフォーン端子から音楽信号を入力できるようにしてテストしてみると、懐かしいAMラジオの音がTS-850Sのスピーカーから聞こえてきました。 左の波形は音楽で変調されたキャリアです。 ピークで90%くらいまで変調がかかっております。

音楽はスペクトルの範囲が比較的狭い昭和の音楽ほど良く聞こえました。 そして、歪感は全くありません。 計画当初、変調後のRF信号を検波して、PWMアンプの差動入力端子へ負帰還をかけようと考えていましたが、その必要は全くないようです。

変調器ファイナルのデュティを可変できるようにTLP552のLED電流を調整する半固定抵抗VR3を追加しました。 これで、変調段のLPF出力ポイントでのDC電圧を供給電源の電圧の1/2に調整しようとしましたが、半固定を最少から最大まで可変しても、この電圧は0.数ボルトしか変わりません。 470Ω固定でも問題ないようです。 また、RFが変調回路に回り込んで、波形歪を起こす対策として、OP-AMP入力の+/-端子間に1608タイプのチップコンデンサ1000PFを追加しました。 

実験は13.8Vの電源で行いましたが、最終的にはこの電源電圧を28V以上にアップする予定ですので、MOS-FETによるシリーズレギュレーターを追加しました。

28V以上のDC電源はジャンクのTS-930Sの電源から取り出す事にしました。このTS-930Sは動作しませんが、電源だけは生きています。 整流直後の電圧は40Vくらいあり、これをシリーズレギュレーターで28Vに安定化しています。 しかも、28Vで10A以上の容量がありますので、今回のAM送信機の電源としては、ちょうど良さそうです。

FETによるレギュレーターを実装し、電源電圧28Vで送信テストを行ったところ、20W出力され、成功と思いきや、90%の変調にすると、1分くらいで送信不能になりました。 直接の原因はRF部のファイナルSTF19NF20のドレイン、ソース間ショートですが、その原因は熱暴走と思われます。 今まで25W出力のテストもしてきましたが、それはせいぜい30秒以内の動作でした。 今回のように1分近く動作させた事がありませんでしたので、シリコングリスも塗布していない事によりFETが熱破壊したと思われます。 そして、当然変調段のFKI10531もドレインソース間がショートしていました。

また、追加したFETのレギュレーターは異常発振を起こし、その上、7MHzのRF信号が混入し、電圧制御不能なっていました。 このレギュレーターはリップルリジェクションが非常に良いことで知られ、LDOという名称で、もてはやされてていますが、負荷側の変動や、高周波妨害に対しては極端に弱いようです。 7812のようなバイポーラの3端子レギュレーターに変更します。  

また、壊れたRFファイナルを修理し、元の状態に戻すまでかなり時間がかかりそうです。

失敗した回路図 AMTX_10.pdfをダウンロード

熱暴走を少しでも対策する為に、さらに、効率アップが出来ないかも再検討する事にします。

放熱設計 へ続く

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2016年1月17日 (日)

E級アンプ 出力アップ検討

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

AM送信機のRFユニットの効率が、WEB上で紹介されている例に比較して、かなり落ちる原因を調べる目的で、RFユニットだけの検討を行いました。

Eamp_2a

 上が検討したE級アンプの回路で、コイルはその時の出力に応じて選択しています。

Etest

Vdの波形をオシロでモニターしながら、VC1とVC2を交互に回し、最良ポイントを探しますが、教科書通りの波形に近くなるように調整する事により最大効率ポイントが見つかります。この効率最大ポイントと出力最大ポイントは異なります。どちらかと言えば効率優先です。また、このVdの波形がきれいになる為にはゲートをドライブするデューティも大きく影響します。 従い、回路図には出ていませんが、VXOのバッファーアンプのベースバイアスを調整して、ドライブのデューティが可変できるようにしてあります。 実験開始時は、ファイナルのトランスにTS930S用の入力トランスを使用していましたが、10Wくらいで、ほんのり暖かくなるので、また出力トランスに戻しました。

この検討の途中で効率90%超の数値が時々出る調整ポイントがある事が判りました。しかし、その時のVdの波形はオシロのトリガが安定しない程、寄生振動を伴った波形で、LPFを通った後もFM成分とAM成分を持ったかなり汚い信号になっていました。 E級アンプはオシロが手元にある場合のみ自作できる回路かも知れません。

このようにして、2SK3234とFKI10531で最良ポイントを求めた結果は以下の通りです。

Efet1 2SK3234の場合、Vdを13.8Vに固定して、コイルを変えて最適ポイントを探したものです。10W以上の出力が出るようにコイルを小さくすると、効率が50%を切りますので、10W以上の検討はしていません。

一方、FKI10531の場合、13.8Vで20Wくらいの出力になるようコイルを選択した後、調整ポイントは動かさずにVdを18.4Vや9Vに変えたものです。 18.4Vで40W出て効率も72%となっています。このFETの場合、最高効率が得られるVdはもっと高い電圧かも知れませんが、DC電源の電圧がこれ以上上がらないのでテスト出来ていません。 ちなみに、この時のVC1の値は170PF、VC2は700PFでした。

そして、写真にもあるように、バリコンを接続して、最適容量を探し、そのバリコンと同じ容量の固定コンデンサに置き換えても、バリコン使用時と同じ状態になりません。 バリコンまでのリード線がもつインダクタンスや、図体がでかいことによる浮遊容量の影響が無視できないようです。 以後、面倒でも固定コンデンサを付けたり外したりして検討する事にしました。

これらの結果から、FETのスペックと、このE級アンプの性能についての関連性を調べてみる事にしました。

Fet_spec

 上の表は手元にあるFETのスペックを抜粋したものです。 限界FREQというのは私が勝手に作ったデータでtd(on),tr,td(off)及びtfの合計値の逆数で、基本的にはこの周波数以上では正常にスイッチングしないという周波数です。 ただし、個々のFETで条件が異なり、実際に使用している条件はこれ以下の環境という事もあり、表示された周波数より上の周波数でもスイッチング動作はしております。 従い、比較したときの目安として気にしたらよいデータと考えます。 また、個々のタイムスペックはメーカー発表のノーマル値ですので、実際はこれ以下の周波数になる事もあります。

このようにして眺めてみると、サンケンのFKI10531はON抵抗を含め最良の数値を示しています。  他の3種類の限界周波数は似たり寄ったりで、バラツキによっては逆転するくらいの実力ですが、効率に関係するオン抵抗の値がそのまま表れている感じです。  また、データとして残していませんが、限界周波数も最も低く、ゲート入力容量が最も大きい2SK2382は、最大出力も効率も全くダメでした。

ただ、FKI10531にも欠点があります。それはゲートの入力容量がこの中では比較的大きいことです。これは、ドライバーICの負担が大きく、TC4422がアッチッチになる原因のようです。そして最大の欠点は耐圧が100Vしかないという事でしょう。  40W出力のときのVdmaxは75Vでした。AM送信機の場合、ピーク電力を確保する為にVdを上げますので、これがネックになります。

8vvd

一応、FKI10531 1石で定格出力10W(ピーク出力40W)のAM送信機を作る事は出来る事は判りましたが、激しいリンギングの為、動作が安定しません。

左は、FKI10531を9Vで動作させた時のVdの波形です。 ピーク部分で凹みが出来ていますが、長時間送信していると、温度が変わり、次第に波形が崩れます。これは使用しているコンデンサの温度特性が大きく影響し、発振寸前の帰還状態がクリチカルになっているのが原因のようです。

色々検討している内に、FKI10531を2個もショート状態に壊してしまいました。 また、リンギングは出力インピーダンスが小さくなるほど出易いようです。 そこで、この際、FETも変更し、電源電圧を上げられるE級アンプを再設計する事にしました。

Fet_spec2_2 

ところで、私の手元に有った、IRF640はIR製ではなく、セカンドソースだったようです。 WEBで紹介されているIR(インターナショナル レクティファイアー)製の場合、私が勝手に定義した限界周波数がリーズナブルの周波数を示すようです。 上の表はIRオリジナルのIRF640のスペックを抜粋したもので、納得出来る限界周波数を示しています。

そこで、IR製のIRF640を手配しようと考えたのですが、入手できるのはTO-220でドレインがそのままフィンにつながっている物しか有りませんでした。 出来たら、フルモールドパッケージのFETが無いかRSで物色しました。 結果、IRF640と似たようなスペックを持つSTマイクロのFETが見つかりました。 上の表にその仕様の抜粋を示します。  STF19NF20は、TO-220Fパッケージで絶縁シート無しで放熱板にビス止めできます。 このほど、このFETを手配出来ましたので、同時に入手したTC4452を使い、下記のように回路を改造しました。 TC4452はVdd端子がフィンに接続されていますので、絶縁シートと絶縁ワッシャは必要です。  (後日、フルモールドパックを選択したのは間違いだったと後悔します。 面倒でもマイカシートで絶縁し、シリコングリスたっぷりのドレインむき出しのFETの方が良いです)

OSCバッファーとFETドライバーの間に挿入されていたインバーターがDC直結になっており、OSC段の異常でFETのゲートがHになりっぱなしという現象が再現しましたので、OSCバッファの出力をコンデンサでDCカットし、インバーターをC-MOSに変えました。C-MOSの入力にはプロテクトのダイオードが実装されていますので、このダイオードで入力信号が0Vでクランプされ、うまく動作します。 ただし、そのままでは、入力が無いとき、FETゲートは常にHとなりますから、もうひとつインバーターを入れてあります。

Eamp5

Rfunit5

また、基板上のレイアウトも変更し、TC4452とSTF19NF20は基板上に配置した放熱板に固定し、リンギング対策としてFETの出力ラインは5mm幅の短冊状に切った厚さ0.3mmの銅板で配線し、極力浮遊インダクタンスを削減しました。

左がその基板ですが、TC4452とSTF19NF20のパラレルドライブが可能なように配置してありますが、今はシングルドライブです。

この状態で、電源電圧13.8Vのとき、15Wの出力が得られ、効率は63%くらいです。

TC4452の消費電流は200mAくらいでTC4422と同じですが、FETのゲート電圧波形が気持ちだけ良くなりました。 また、このゲートドライバーも終段FETと同じ放熱板上に止めてある関係で、長時間連続送信でも安定しています。

Amtx_640hz

このRFユニットを変調器と組み合わせて見ました。 電源電圧を18.4Vにすると、無変調時の変調器DC出力は9Vとなり、RF出力は7Wとなっています。 最大変調度は、87%くらいで、電流の増加はありますが、クラニシの終端型電力計は7Wのままです。 この電力計は熱電対型ではないので、変調度が変わっても指示は変わりません。 少なくとも、マイナス変調にはなっていないようです。

 左の波形は680Hzで変調した時の波形です。 現在、RFユニットと変調ユニットを無造作に置いてある為、RFが変調器へ回り込み、波形が崩れる事もあります。 実際に組み立てる場合、配置やシールドを検討する必要があるかも知れません。

 

New_lpf0129

7MHzのLPFは計算で求めた定数のままで、特性の確認はやっていませんでしたので、出力側に50Ωのダミー抵抗をつなぎ、入力側にアンテナアナライザを接続してSWRを計ってみました。すると、7MHzでSWRが2を示します。インピーダンスは25Ω付近です。周波数を3.5MHzまで下げると、SWR1.1くらいになります。 どうやら、計算間違いがあるようです。 このLPFは再設計する事にします。

上が、新たに設計したチェビシェフLPFの定数です。 計算は下記URLで行いました。

http://gate.ruru.ne.jp/rfdn/Tools/ClpfForm.asp#

計算されたインダクタンスやキャパシタンスを実装できる訳はありませんので、自由の効かない、インダクタンスを一番近い巻き数にしておき、後は、コンデンサで微調整した結果が上の定数です。

Lpf0129

このLPFに50Ωのダミー抵抗をつなぎ、入力部分に自作のアンテナアナライザーを接続した時の周波数対SWR特性を表示させたグラフを左に示します。 SWR最少周波数が7.200MHzで1.16となっており、そこそこの特性は得られているものと考えます。 しかし、事前確認では、かなりの挿入損失が有りそうでした。

過去、いくらやっても、60%かそれ以下の効率しか出ないのは、このLPFの挿入損失の性かもしれません。 そこで、新たに作成したこのLPFでLPF有り無しの時の効率データを取ってみました。

Lpf_pwr

結果は下の表の通りで、LPFが無い場合のE級アンプの効率は74.8%とそこそこの値が出ていますが、LPF有りの場合、62.1%となり、LPFだけで、27%もロスしております。 今回のLPFはコイルにT-50-2というトロイダルコアを使ったものです。 今までのLPFは定数設定に誤りがあり、LPFのロスも30%を超えていたようです。

E級アンプの効率が悪いのは、LPFの問題であり、実験した回路で、世間並の効率は確保されている事が判りましたので、以降、単純にパワーアップに絞って検討していく事にします。

E_amp0130

左の表は、E級アンプの回路を当初のコイルとコンデンサが直列に接続されたフライホイール回路に戻し、トランスを1対3の巻き数として、最適値を探した時のデータです。 LPF無で、81.6%の効率は良く出来た方と思われます。

E0130vd

左の波形は、12.84Vで15Wの出力が得られている時のVdの波形です。 ほぼ教科書通りの波形をしています。 また、リンギング対策もかなり効いてきました。 

電源電圧を17Vくらいまで上げると、LPF付でも25Wの出力が得られていますので、 定格出力20W(ピークパワー80W)のAM送信機がこのFET1石で可能かも知れません。 これから、36VのDC電源を模索します。

Eamp0130

左は、E級アンプのファイナルとフライホイール回路及び出力トランスの部分です。 使っているコンデンサは200V耐圧のセラミックで、わざわざ温度特性がかなり良いB特を選定しましたが、パワーON直後の1分くらいは出力が変動します。 最終的には、シルバードマイカに変更しなければならないかも知れません。

左の隅に一部写っているのが問題のLPFです。これは、この送信機が完成した後、再検討する事にします。

ここまでの配線図 AMTX_8.pdfをダウンロード

変調性能確認 へ続く

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2016年1月 3日 (日)

低周波信号発生器

PICマイコンによる正弦波発生器を使いやすくする為、このコントローラーを作成しました。

DAコンバーターを利用した正弦波発生器はこちらを参照下さい。

PICで作成した正弦波発生器はDAコンバーターの駆動周期を初期設定した後、この設定値に基づき、ただひたすらに正弦波を発生し続けるもので、周波数を変更したい場合、PICをリセットする必要がありました。 また、発生する正弦波の周波数はPICのクロックや命令サイクルに依存し、きりの良い1000Hzとか3000Hzとかは不可能で、PIC内部の分周値による決まった周波数しか発生できません。 よって、発生した正弦波の周波数を計測して、なんらかの形で表示が必要でした。 その為、コントローラーには、正弦波発生器の初期値を決めて、RESETする機能、発生した低周波の周波数を計測する機能、計測した周波数を表示する機能が必要となります。

まずは、ソフト開発のデバッグにも使える、周波数(整数)をLCDに表示する機能をつくりました。 詳細はこちらを参照下さい。

正弦波発生器の初期設定とRESETは、本来、メカニカルSWで行っていたi/o操作をオープンコレクタのデジトラで行えるようにするだけですので、これは簡単に実現できます。

Sin_osc_cntler

発生した低周波の周波数を計測する周波数カウンターが必要になりますが、Hz単位での表示となりますので、カウンターのゲートタイムは1秒必要です。 最初,100msec単位で計測し、10回分を合計したカウント値を表示していましたが、周波数が低くなるほどカウント誤差が大きくなりました。 原因は100msecの間に発生するカウントの実際は小数点付になるのですが、PICの中では整数としかカウントしませんので、10回分合計しても、最大で-10の誤差が出ることでした。 やはり、表示はとろいですが1秒間待って表示しています。 周波数を可変すると、正しい周波数を表示するまで1秒以上かかりますが、周波数切り替えやLCD表示に違和感はありません。 

この回路の低周波の出力電圧は約0.78V(0dBm)ありますので、20dBと40dBのATTを設け、-20,-40,-60dBmの信号を得る事ができ、また、可変抵抗器で連続可変できるように、可変抵抗器のつまみの周りに実測値による目盛を入れ、-16dBまで1dB刻みで絞れるようにしました。

1khz_spectol

上のスペクトル画像は1KHzの出力をフリーソフトWaveSpectraで表示させたものです。第2高調波レベルが-40d以下になっていますので、なんとか1%以下の歪率は確保できました。

Sinosc_box

完成した基板やコントロール類、LCDを透明のタッパーの中に収め、単3電池8本の電池パックで動くようにしてあります。 これで、AM送信機の検討が便利になりそうです。

ソースファイル OSC_controller.cをダウンロード

配線図 OSC_schema.pdfをダウンロード

AM送信機のテストの為に使ってみました。一応基本動作はOKで、歪の確認や周波数特性のチェックは出来るのですが、送信ONにすると、周波数があさっての方に飛んでいきます。OFFにしても同じ。 マイコンの高周波妨害耐力は甚だ弱いようです。 少しでも効果があるようにと、タッパーの内側に銅箔テープを貼り、アースしたのですが、イマイチでした。

そして、AM送信機の出力を40Wまでアップしましたら、送信中に周波数変更もできない事が発生しました。 暇なら対策しますが、今はAM送信機を完成させる事の方が優先で、インターネット上で「WaveGene」というフリーソフトを入手し、PCから正弦波を供給しています。 こちらの方は、PCが誤動作しない限り大丈夫ですが、そのままでは誤動作しますので、USBマウスの根本に40mmの長さのフェライトコアを挿入し、このコアにUSBケーブルを4回も巻きつけております。

暇になりましたので、RF回り込みによる対策を行いました。 配線図とソースファイルは修正済みです。(2016年7月31日)

その後、PCのWGの利用と、パナソニック製のファンクションジェネレーターなどの入手により、この発振器はジャンク箱いきとなり、今では部品取りの材料になってしまいました。

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2016年1月 1日 (金)

LCD-TS174をPICによりドライブ

<カテゴリー:PICマイコン

「aitendo」という通販ショップで99円のLCDが売られていました。 その他の部品を含めてこのLCDを2個購入したのですが、仕様書はなし、有るのは、使用されているICの品名と、ATMELのチップ用デモソフトのみという物でした。 

今、PICマイコンで正弦波発生器を作っていますが、この周波数表示にちょうど良さそうですので、このデモソフトをPIC用に書き換え、WEB上からダウンロードしたICの仕様書を基に周波数を表示させてみる事にしました。

使用するマイコンはPIC16F1827という8bitのマイコンです。 周波数表示ですので、マイコンのクロックは7.2MHzの水晶発振で、これをPLLで4倍とした28.8MHzのメインクロックとしてあります。

回路図 LCD_demo_schema.pdfをダウンロード

オリジナルのデモソフトをこの配線図に合わせてi/o変更をした上で、XC8でコンパイルできるように書き換えました。 オリジナルの仕様では、一旦LCD全画面をクリアーした後、左側から順番に各セグメントが点灯していきます。 これをヒントに7セグの数値を表示させるコードを調査し、下記のように解析しました。

Ts147_segmap

このコード表をベースに7ケタの整数を表示するプログラムを作りました。数値以外に文字やドットがありますが、今回は使っていません。

Lcd1250disp

このLCD用のICのクロックは3.3uS以上を要求していますので、余裕を見て約6uSくらいのクロックになるようディレーを入れてあります。 また、メイン関数の170行目にwhileで無限ループを作り、以下のプログラムは実行されないようにしてあります。 この170行目のwhile文をコメントアウトすると、オリジナルデモソフトが動作します。  

また、プログラム上にはLEDが出てきますが、デバッグ用です。 さらに、RB0からの外部割込みの記述もありますが、このLCD表示については不要です。

PICkit3からHEXファイルを書き込もうとするとき、このICもVDDを5Vを指定するとエラーになります。4.875Vに設定すると問題無しです。

99円のLCDでも十分実用になります。 周波数のLCD表示が可能になりましたので、正弦波発生器のコントローラーを作る事にします。

ソースコード LCD_TS174BNLdemo.cをダウンロード

このオリジナルソースをベースにXC16でコンパイルしたところ、LCDのデータラインに信号が出ません。 色々調べた結果、下のLCD_Wr_Data()の関数の中で、

 B=B>>7; の処理を追加しないと、現状のままでは、データをi/oポートへ送る事が出来ない事が判りました。 判ってしまえば当たり前の事で、いままで動いていたのが不思議なくらいです。

void LCD_Wr_Data(unsigned char Data,unsigned char cnt) {
   unsigned char i,d,B;
    d = Data;             //Dataを一度ローカル変数に置き換える
    for (i=0;i<cnt;i++) { 
         LCD_WR=0;
         delayNop();
         B=d & 0x80;         //Dataと0x80とアンドを取った値を一度ローカル変数に置く
        B=B>>7;
         LCD_DA =B;          //LCD_DA=Data & 0x80 ではうまくいかない
         delayNop();

         LCD_WR=1;
         delayNop();
         d = d<<1;
       }
  }

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2015年12月28日 (月)

7MHz RFユニット

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

AM送信機のRFユニットの作成です。

まず、7195KHzと予備として7190KHzをカバー出来るVXO回路を作る事にしました。

 

Amtx_vxo_2

7.2MHzという水晶はAM/FMラジオ用PLLシンセの基準周波数として使われていたものですが、最近、この周波数の水晶が大量に格安で売られています。 今回は「aitendo」という通販ショップから購入しました。 

この回路で7199KHzから7188KHzまでの11KHzを可変できます。水晶に直列に入れたコイルはSMTタイプの固定インダクタですので、最適インダクターとはなっていないかも知れませんが、目標とした2つの周波数は確保できましたので、良しとします。

AMのもうひとつの常用周波数である7181KHzをカバーするVXO回路の製作はこちらにあります。

次に、ドライバーとMOS-FETによるファイナル部分です。

送信機全体の回路図 AMTX_0.pdfをダウンロード

Q3でTTLレベルまで増幅し、波形整形の為、CMOSゲートを通した後、FETドライバーのTC4422に入力し、その出力でMOS-FET FKI10531をドライブします。FETのドレイン側にはチョークコイルとフライホイール回路とインピーダンス変換トランスを設け、7MHzの7次LPFを通してアンテナに出力されます。 E級アンプの基本回路では、FETのドレインとGND間にCdsなるコンデンサが必要なのですが、FETのドレイン、ソース間に120Pの出力容量が存在しますので、60PFのトリーマーだけを入れてあります。 このトリーマーを回しても、出力や効率はほとんど変化しませんが、Vdの0V付近で発生するリンギングの様子が変化します。 調整はこのリンギングが最少となるポイントに合わせました。

この回路は下記のURLを参考に、13.8Vの電源で50Wを出そうと考え、設計しましたが、残念ながら出力も効率も全くダメでした。 (ダメな原因は私の使い方でした。ここで正しい使い方を紹介しています。)

http://people.physics.anu.edu.au/~dxt103/class-e/

当初6V12.5Wで設計したのですが、2SK3234で1Wしか出力できず、効率も30%以下でした。 色々WEB情報を調べても、6V12.5Wクラス(12V50W同等)のアンプは130KHzくらいのアンプの例しかなく、7MHzくらいの周波数では無理があるようです。 従い、6V5W(12V20W相当)まで出力を落とす事にしました。しかし、2SK3234ではどんなに頑張っても3Wくらいしか出ず、効率も50%くらいでした。 また、手元にIRF640もありましたので交換したところ4W出ましたが、効率は50%止まりでした。 そこで、変調器のFETはサンケンが一番良かったので、キャリア増幅用もサンケンのFKI10531に換えてみました。すると、5Wの出力で効率も60%くらいまで改善しました。 

Amtx_6v_test

手前の基板がVXOとキャリア送信部です。 今回はVXOの出力は使用せず、アンテナアナライザーから7195KHz付近のキャリアを入力し、周波数を可変しながら、フライホイール回路が最適になっているかをテストしました。 基板上の黒い四角の物体はメガネコアで、ジャンク扱いのTS-930Sのファイナル段から取り外したものです。1次側は銅パイプによる1ターンの巻き数で、2次側はAWG24のビニール線を3ターン巻いてあります。 この出力は左上にあるコイル3個のLPFを経由してクラニシの終端型パワー計につないであります。

FETのドレインに接続される10uHのチョークコイルもTS-930Sのファイナル段から取ってきたものです。

Amtx_7mout

左のオシロ波形は下がFETのゲート電圧波形で8Vピークあります。 E級アンプの技術資料には決まって台形の波形が登場します。1.8MHzくらいなら、きれいな台形波形をしていますが、7MHzともなると、だんだん角が取れてくるようです。 当初、教科書通りの波形にならないので悩みましたが、WEBで見つけた7MHzや14MHzの1KWアンプのゲート波形はこれよりもっとひどくなまっておりましたので、安心しました。 

上の波形はドレイン電圧の波形で、37Vピークあります。この時の正確なVDDは6.01Vでしたので、約6.2倍の電圧が発生しています。 このFETのVdmaxは100Vですので、16V以上の電源では使えないという事になります。 パワーアップする場合、再度FETの品種選定が必要です。  

Amtx_7mhz_out

左の波形は7次バターワースLPFを通過した後の7MHz出力波形です。見た目での高調波歪はかなりよさそうです。 変調器との結合が出来たらスペアナでチェックする事にします。 この7次バターワースLPFの計算もPWM変調器用LPFと同じURLで計算しました。

Eamp04uh_2

コイルのインダクタンスが少し大きいとおもわれますので、現在の約1μHから約0.4μHくらいまで小さくし、シリーズコンデンサを約1500PFくらいまで増やしてみましたら、左のようなきれいなVd波形となりました。パワーは6Vで4W出ていますが、効率は、50%前後まで落ちました。

その後、13V 10Wの出力になるよう定数を変え、実験しましたが、テストした3種類のFETいずれでも55%以上の効率を確保できませんでした。 効率が上がらない理由は、FETも関係しますが、コイルやコンデンサ、トランスが最適になっていないのが原因のようです。

E級アンプの調整箇所を少なくして、検討しやすくする記事が見つかりました。 これによると、コイルにシリーズに入るコンデンサを無くした代わりに、コイルの前後にコンデンサを追加し、コイルとコンデンサ2個を最良状態にもっていけばいいようです。 

フライホイール回路の直列共振コンデンサを廃止し、トランスも止めて、LCによるインピーダンス変換回路をジャングル配線で試したところ、2SK3234では55%の効率でしたが、FKI10531では75.5%まで改善しました。 ただし、5Vで1.5Wしか出ていません。 12V換算で9W弱ですから、目標にはまだまだですが、効率を上げる方法が判ってきました。

Amtx_01

効率を上げようとすると、出力にリンギングが激しく乗ります。これを対策する事を含めて、各回路の配置をやり直し、かつトランスも廃止したのが左の写真です。

コイル両端のコンデンサをバリコンに置き換え、コイルも効率最大となる値になるよう試行錯誤した結果4.8Vの電源で1.8Wの出力が得られた時のIdは0.392Aでした。 効率は95.6%と計算されました。 この時の負荷インピーダンスは約12Ωです。 

ここまで出来ると、後は、効率を我慢できるレベルまでダウンさせ、6Vの電源で何ワット出力できるか探ることにより、なんとか実用できそうです。

Vd_0109左は、この95.6%の効率の時のVdの波形です。従来の波形よりいびつですが、FET OFFの時のVdの面積が明らかに広くなっています。 また、この時の波高値は25Vくらいで、初期のころよりピークは小さくなっています。 この事は、Vdmax100VのFETでも電源電圧を19Vまでかけても良いという事になります。

この状態の時の回路図を以下に示します。

Amtx_rf1_3

当初の目標である6V 5Wの出力にトライし、効率78%を得ましたが、激しいリンギングが発生し、回路が安定しません。 リンギング対策は難航を極めました。 上のトランスの無い回路では、フライホイール回路に流れる歪んだ電流経路が多技に渡り、発振現象を押さえるのがとても難しくなりました。 そこで、最終的に、フライホイール回路のコイルの向きを90度変え、かつトランスを復活させフライホイール回路電流通路の単純化を行い、出力も3.4Wまで落とした結果、なんとか安定して動作するようになりました。この時の効率は70%くらいです。

Amtx0111

また、OSCとFETドライバーの途中に挿入したバッファーもインバーターに換えました。 これはOSC回路が動作停止したとき、ファイナルのFETのゲート電圧が8Vで固定され、大電流が流れ、FETが壊れるのを防ぐ為です。

復活したトランスはTS930Sのファイナルの入力段に使用されていた小型のメガネコアに変えました。

 変調器から見たインピーダンスは約7.2Ωとなりました。

ファイナルのFETはベースのアルミ板にビス止めしてある事もあり、ほとんど発熱しませんが、TC4422はかなり熱くなります。 このICはスペック的にデータが公表されているのは2MHzまでで、7MHzは実力で動作していますので、製品ロットでかなりバラツキがあるのかも知れません。 データシートによれば、FETのゲート容量1500PFで、8Vの時の消費電流は2MHzにて74mAくらいと予想できますが、実際の回路では7MHzで200mA流れています。 次回の検討では、このICよりもう少しドライブ能力の高いTC4452を手配してみる事にします。

修正した回路図 AMTX_2.pdfをダウンロード

TC4452手配がまだですので、先にパワーアップ検討を行いました。

E級アンプ 出力アップ検討 に続く。

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2015年12月19日 (土)

PWM変調器

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

7MHzバンドで使えるPWM変調方式のAM送信機を作る事にしました。 CQ誌に掲載されたオール半導体によるPWM変調方式のAM送信機の記事を見て、作ってみたくなったのがきっかけです。

WEB上にあるOM諸氏の記事や解説を頼りに、構成を決め、机上検討していましたが、いよいよ部品集めの段階になり、ぼちぼち、部品が集まってきましたので、まずは変調回路から試作する事にしました。

Amtxmod1

Amtxmod2

 

Amtx_mic_freq

マイクの入力感度は-50dBmくらいですので、最大ゲイン60dBくらいのオーディオアンプの初段にDual-GateのFETを使い、G2の電圧をコントロールしてリミッターアンプ機能を付けています。また、3KHzをカットオフ周波数としたOP-AMPによる3次LPFも実装しました。 これらのアンプの動作テストも行い、リミッターがちゃんと動作する事は確認済みです。 ただし、リミッターのアタックタイムやリカバリタイムは実際にマイクに向かってしゃべってみないと良く判らないので、送信機が完成した時点で再調整します。 Dual-Gate FETの最大VDDは6Vなので、8VのLDOの出力をダイオードとLEDで無理やり5Vに電圧シフトして使っています。 これらのテストの為、作成したPICマイコンによる正弦波発生器は重宝しております。

このマイクアンプの出力は、TPA2006というTIのPWMオーディオパワーアンプに入力し、スピーカー出力用の+側端子からPWM波を取り出し、これをフォトカプラー経由でMOS-FETの終段をドライブします。

Amtx_1khz_tpa2006out

PWM変調に使うTPA2006は秋月で2.5ピッチの変換基板付で300円で売られているものですが、入力端子にシリーズに付いている抵抗とコンデンサは変更してあります。  左の波形は、このアンプのPWM出力をLPFを通した時の1KHzの波形です。 5Vの電源で4Vppの無歪出力が得られています。出力を上げていくと4.5Vppくらいからクリップしますので、リミッターアンプがクリップ寸前で飽和するようにVR2により調整します。

このパワーアンプの出力はVR4を経由して、高速フォトカプラーに入力されます。 この入力抵抗が5KΩの半固定抵抗になっているのは、内部のLEDとフォトTRのバラツキで、PWMのデュティが変わってしまうので、これを調整する為のものです。 最終的に7MHzのE級アンプに接続して、無変調状態で、E級アンプに供給されるDC電圧がファイナル用電源電圧の1/2になるように調整します。

Amtxpwmfetcomp_2

左の表は、最終段のMOS-FETの品種を変えて、測定した出力電力です。

FETのドレインに13.2Vを加え、ソースとGND間に2.2Ωを負荷として接続し、無変調状態で、この負荷抵抗の両端電圧と電流を計測したものです。 オシロスコープでモニターし、いずれも250KHzのデュティ50%の矩形波である事は確認しています。

結果は、秋月で1個40円で売っていたサンケンのFKI10531が一番良い結果を示しました。このFETはON抵抗は小さいのですが、入力容量が1500pFくらいありますので、7MHzのキャリア増幅には向かないかも知れません。 変調段は250KHzでのスイッチングですので、変調段のFETはサンケン製に決定します。

Amtxlpf_cal

左の表は、PWM終段のFET出力からE級アンプまでの途中に挿入されるLPFの計算結果です。 LPFは3段バターワースでカットオフ周波数を9KHz,入出力インピーダンスを1.8Ωとして設定してあります。 この計算はWEB上で計算方法を公開しているRFDNのサイトで計算しました。 URLは以下です。

http://gate.ruru.ne.jp/rfdn/Tools/BlpfForm.asp#p1

3dBカットオフ周波数と250KHzの減衰量を指定しますが、3段のLPFにしたいので減衰量は80dBとしました。次にLPF パイ入力型でインピーダンスを1.8Ωにしてやると、この表のような結果が得られます。 後日検討するE級アンプのインピーダンスをシュミレーションしましたら、1.8Ωくらいで出力10Wが得られるようですので、LPFのインピーダンスも1.8Ωで計算しました。

トロイダルコアにコイルを巻いて必要なインダクタンスを確保しますが、手持ちのトロイダルコアに1mmのPPシートによるギャップを2か所設けて、重畳される直流電流で磁気飽和しないように配慮した上で、1.5mmのPEW線を27ターン巻き約64uHを確保しました。 コアは北川工業のGTFC-41-27-16という品番です。 

Amtx_lpf63uh

左の画像は、トロイダルコアに巻かれたコイルに0.0056uFのマイラーコンデンサをシリーズに接続し、自作のアンテナアナライザーで共振周波数をチェックしているところです。  

L1の63.7uHと0.0056uFの共振周波数の計算値は約266KHzですが、実測値は263KHzでしたので、ほぼOKと思われます。

トロイダルコアはFT-140#61が一般的に入手しやすいのですが、たちまち手持ちがありませんでしたので、かなり特殊な北川工業のコアを使いました。 また、今回はLW帯で使用可能なアンテナアナライザーで測定しましたが、コンデンサを0.0056ではなく100PFにしてやると計算上は約2MHzの共振周波数となります。 しかし、一般的な1.8MHz以上で使用可能なアナライザーでは、コイルの浮遊容量などの影響で正しい共振周波数を見つける事は出来ませんでした。

 2016年1月10日 追記

LPFの定数が決まり、変調段だけのテストしたら、波形が大きく歪みます。原因を調査したところ、フォトカプラーの選定ミスという事が判明しました。TLP552クラスを選定しないとPWMのスイッチングスピードに追いついていかないようです。 TLP552を手配している間に予備検討したところ、スィッチング周波数250KHzは高すぎるかも知れないという不安がありました。 

TLP552が入手できましたので、各段における歪状態を確認する事にしました。

Mod_tpaout_clep_2

Mod_tpaout__2Mod_fet_sout_

波形は左側がPWMオーディオアンプのスピーカー出力端の波形で上下がクリップした状態で、このレベルから1dB下げた状態が真ん中の波形です。 右側が終段FETのソースとGND間に4.4Ωのダミー抵抗を接続し、その両端にLPFを接続した時の波形です。ひずみやクリップは有りません。 この状態でレベルを1dBアップすると、この出力も上下がクリップ始めます。 

スイッチング周波数が高すぎるのでは心配しましたが、波形を見る限り問題はなさそうです。

 

Mod_lpf1_2

RFユニットのE級アンプがなんとか使える状態になりましたので、インピーダンスを再設定して、LPFを再設計することにします。

E級アンプのインピーダンスは実測で7.2Ωとなりましたので、3dBカットオフ周波数を10KHzとして、再計算した結果は左の表のようになりました。 L1の値がかなり大きくなりましたので、コイルは作り直しです。 インダクタンスが大きくなりましたのでコアに挟んだギャップスペーサーは全て廃止し、ワイヤーも1mmのUEWに変えました。

さあ、出来たと、RFユニットと結合して変調の度合いを見る事にしました。ところが、1KHzのプラス側半分がつぶれた波形で、流れる電流も単体のときの約2倍。 まったく使い物にならないひどい変調です。 単体のときのモニターではきれいな正弦波が得られていたのにと焦りました。 原因はLPFのC1の存在でした。C1はFETのソースとRFのGNDの間に接続され、ここで250KHzのキャリアがフィルターへ行かずバイパスされていました。 変調回路のフィルターはパイ型は使えないということです。 C1の2.2uFのコンデンサを廃止し、その他のLCはそのままで、インダクターインプット型にするときれいな正弦波で変調がかかりました。

Amtx_mod90

上の波形が7MHzのキャリアに1KHzの変調をかけた状態です。 電源電圧は9VでRF出力は約1.5Wです。 残念ながら、この状態が約82%の最高変調度で、これより少しオーディオゲインを上げると1KHzの波形が上下でクリップ始めます。 原因は大体推測は出来ます。 FETの飽和電圧と思われます。 波形を見ていると、過大入力が有っても、このオーディオ信号のクリップの為、7MHzのキャリアがゼロになる事は有りません。 これは、過変調によるスプラッタ増大を防止する効果があるかも知れません。

デュアルゲートFETを使用したリミッターアンプを付けていましたが、このFETアンプのリップルリジェクション能力がほとんどなく、変調音に電源のリップルや、送信したRF信号が電源ラインに乗り、ノイズとして聞こえます。 よって、このFETによるリミッターアンプは廃止する事にしました。 とりあえずリミッター無しで進行し、その内にリミッターICでも追加する事にします。

修正した配線図 AMTX_9.pdfをダウンロード

F

最終的な変調器の周波数特性は左のようになりました。 -3dB幅は125Hz~3500Hzくらいです。

7MHz RFユニット へ続く

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2015年12月 9日 (水)

正弦波発生器(PIC18F14K50)

<カテゴリー:PICマイコン

CQ誌のPWM変調AM送信機の記事に魅せられて、微力ながら、このアナログの塊のオールソリッドステートの送信機を作りたくなりました。  WEB上の情報から、この送信機の構成は理解できましたので、部品集めを進める傍らで、AM変調用の低周波発振器の必要性を認識しました。 実は、45年前に購入した20Hzから200KHzまでカバーするKENWOOD製の低周波発振器を6年前に完動品のまま粗大ごみに出してしまった事を悔やんでいます。 

CWのサイドトーン用にウィーンブリッジ式の正弦波発振器の製作例はこのブログでも紹介していますが、せっかくPICマイコンを曲がりなりにもいじれるようになりましたので、マイコンからDA変換を利用した正弦波発生器ができないか検討する事にしました。 WEBで検索すると、PICマイコンで正弦波を発生させる方法が沢山見つかりました。 その中で、マイコンのシステムクロックをフリーランの外部クロックで駆動し、任意の低周波周波数を得る方法と、固定クロックでADの出力周期を変えながら複数のスポット周波数として発生させるアイデアがあるようですが、その中で、比較的ひずみ率が良好で、簡単なCRフィルターで構成出来る8bitのラダー抵抗式DAコンバーターが良さそうです。

AM送信機で必要な周波数は1KHz、及び300Hzから3KHzの変調周波数特性と、これより広い範囲でどれだけ減衰しているかをチェックできる周波数帯となる100Hzから6KHzくらいをスポットでカバーできる周波数があれば良く、周波数も大体でOKですが、ひずみ率は1%以下とし、全周波数帯域に渡り出力レベルは+/-0.5dBくらいに抑えたいという条件があります。

マイコンは、使い道が無く、ジャンク箱に転がっていたPIC18F14K50というチップを拾い上げ、これにアセンブラでソフトを仕込む事にしました。 アセンブラによるソフトの開発は30年以上前にMC68000で少しかじっただけでしたが、データシートやWEBでの情報を頼りに再挑戦する事にしました。

まずは、ちゃんと正弦波が発生できるかどうかですが、約1週間かかり、なんとかそれらしき信号が得られました。 

40hz_nolpf_2

9khz_nolpf_3

左は最低周波数、1サイクルを256分割した40Hzの波形。右は最高周波数、1サイクルを64分割した12.5KHzの波形です。いずれもまだLPFは入っていないDAC出力直後の波形です。

波形の様子から、簡単なCRによるLPFでクロックによる高調波は取り除く事ができそうです。OP-AMPによりカットオフ周波数約30KHzのLPFを作り、DACとこのLPFが持っている周波数特性をもう1段のOP-AMPで補正し、40Hzから12.5KHzまでほぼフラットな正弦波発生器ができました。

40hz_lpf

1khz_lpf

9khz_lpf

左から40Hz,1KHz,12.5KHzのLPF後の波形で、周波数特性の補正を行い、振幅を一定にしたものです。ひずみ率計がありませんので、はっきりした数値は判りませんが、経験的にいずれもひずみ率は1%以下になっているようです。

配線図をダウンロード

A_osc2

A_osc1_2

上がPICによるDAコンバーターとLPFのOP-AMPを実装した基板です。 基板裏側の左側の空き地は後日、この正弦波発生器をコントロールするマイコンを実装するスペースです。

PICのプログラムは周波数を初期設定した後、無限ループに入って、正弦波を出力し続けますので、周波数を変更したい場合、周波数設定用のSW1からSW5をセットした後、RESETスイッチSW9を押すことで実現します。 これをロータリーSWかロータリーエンコーダーの操作のみで実現する為に、周波数表示が可能な簡単なマイコンを実装する予定にしていますが、今回の目的が、AM送信機を作る事なので、コントロールマイコンやケース入れは後回しにします。

 ソースコード sin_wave_osc.ASMをダウンロード

SW1-SW4に対応した周期カウント値は適当な値ですので、周波数カウンターを使い、トリミング必要です。

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