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2016年5月 1日 (日)

パワーアップ40W(D級プッシュプルパワーアンプ)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

E級アンプの出力は電源電圧によって決まり、パラレルドライブにしようが、プッシュプルドライブにしようが出力は変わらないという事ですが、E級プッシュプル回路の記事はインターネット上に沢山存在します。 私も、最初、パワーが大きくならないプッシュプル回路なんか必要ないと思っていましたが、いざシングルドライブのE級アンプを実際に作ってみると、その第2高調波の多さには閉口しました。 しかし、みなさんがプッシュプルを単に偶数次の高調波対策の為だけの目的で採用しているのではなく、パラレルドライブ同様、負荷インピーダンスを下げてパワーアップも同時に行っていると考え、実験を始める事にしました。

ところが、教科書通りの回路を組んでも、さっぱり効率が得られません。 そこで、E級を止め、D級プッシュプル回路にして検討を開始しました。

シングルドライブの時の第2高調波レベルは-6dBくらいで、7次LPFを使っても-35dB前後にしか減衰できません。 従い、さらに6次のBPFを挿入して、かろうじて第2高調波を-50dB以下にするという状態でした。 これをプッシュプルドライブにすると、LPFなしで第2高調波を-30dB前後に抑制できますので、7次LPFのみで、第2高調波を-50dB以下に抑制できます。 そして、電力効率も向上します。

シングルドライブでドライブインピーダンスを6Ω以下にすると、例えD級アンプでも効率は60%以下になってしまいますが、プッシュプルにして、これが70%以上になるなら、低い電源電圧でも出力を上げられる可能性が有ります。 電源電圧28.2Vで最大出力18WのE級アンプをD級プッシュプルにして、30Wくらいの出力を確保できないか実験する事にしました。

今回のパワーアップ計画は、D級アンプだから80%以上の効率を確保するという目標ではなく、最大許容損失をアップする手立てを行い、例え効率が70%以下になろうが、実運用状態で連続動作可能な最大出力を得る事を目標としました。

まず、回路図です。

AMTX_PP0.pdfをダウンロード (この配線図は初期のもので、最新では有りません。)

D級プッシュプル回路は3.8MHz用のFAT5回路を参考にし、STF19NF20によるシングルプッシュプルドライブで、それぞれ、TC4452というFETドライバーでドライブします。 

Ampp_eamp1

Ampp_eamp2

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Ampp_pcb

STF19NF20の入力容量はIRF640より30%以上小さいですが、それでもドライブ電流がふたつのICで400mAも必要となります。 その為、28Vから12Vを作るレギュレーターはアルミシャーシに直止めしてありますが、かなり熱くなります。 

今回のD級プッシュプル回路の基板は片面のユニバーサル基板の銅箔面にベタ状態に銅箔シートを張り付け、これをカッターでカットして回路パターンを作成しました。使用する部品は終段のドレイン、ソース間に入るコンデンサ以外、すべてチップ部品で作りましたので、パターン構造は、はるかに簡単です。 各端子間を板状の銅箔で接続し、難しい所は、部品挿入面に短冊状の銅板を配置しました。 これらの構造が功をはくし、今回はリンギング対策が一発で完了しました。

プッシュプルの出力はメガネコアに1ターンの1次巻線の銅パイプの中を2ターンの2次コイルを通し、2次側で共振回路を構成し、その出力が50Ωのインピーダンスになるようにしています。 変調回路からの14VのVdは1次コイルのセンターより供給します。 この回路で最大効率を得る為のアンプの負荷インピーダンスは6Ωくらいになります。 本来のインピーダンスマッチング負荷は3.1Ωくらいなのですが、そのインピーダンスでは、電流増大による損失が増え、ミスマッチの6Ωくらいが最大効率となっているものです。

Vdmaxpower

終段FETのドレインアース間に入っているC4とC67のコンデンサにより最大ピークドレイン電圧を下げる事ができます。このコンデンサが無い場合のピークドレイン電圧は電源電圧14Vのとき、100Vくらいですが、330PFで約60Vまで下げる事ができ、出力はほとんど変わりませんが効率が数%良くなります。 左の波形はドレイン電圧の波形ですが、ふたつのドレイン電圧が180度の位相差で発生しています。 コンデンサ無しの時はこの波形の幅が狭くなって高さが高くなります。 ちなみにこの容量をさらに大きくしていくと、次第に波形が崩れてきますので、一応、教科書通りの波形に近い状態で止めておきます。

2次側のコイルとコンデンサで7.2Mhzに共振させます。 コイルのインダクターを2uHくらいから10uHくらいまで変更してみましたが、劇的には効率は変わりませんでした。 色々検討して、50Ωの負荷に対してQ=5.5くらいになる6uHくらいのコイルにし、それに共振するコンデンサをシリーズにいれます。 調整は仮接続した430PFのエアーバリコンを最大容量から次第に小さくしていきますが、Vdの波形の内、0V付近のリンギングが最少になるような出力にします。 この調整ポイントを超えてさらにバリコンの容量を少なくすると出力最大点がえられますが、このときのVdの波形はかなりリンギングが乗ります。 従い、この最大出力の60~80%くらいの出力状態が最適な調整ポイントになるようです。

この回路では、最大出力は49Wとなりましたので、調整ポイントは30Wと置きました。 この時のLPFを含めたアンプ効率は73%くらいになっております。 

Ampp_eampvc

仮接続のバリコンを取り去り、固定コンデンサに置き換えると、バリコンのもつ浮遊容量の影響で、同じ容量の固定コンデンサでは、うまくいきません。 そこで、数10ピコのコンデンサを何個がパラ接続し、そこそこの出力が得られるようにし、さらに20PFのバリコンを恒久的に接続し、完成した時点で微調する事にしました。 このバリコンはタイト製の送信用ですが、最初100V耐圧のトリーマーを付けていました。 出力を30Wにして、変調をかけた途端トリーマーが絶縁破壊し、煙を出してショートしてしまいました。かなり高電圧になるようですので、バリコンの耐圧には十分注意が必要です。 ところで使用している固定コンデンサは昭和40年代に生産された50V定格の円板タイプです。 従来より100Wのアンテナチューナーにも使用しており、このコンデンサが絶縁破壊した事は有りません。

変調段は現在のFKI10531 1石でも計算上はピーク160Wのドライブが可能なのですが、どうせFETも余っていますので、TC4422のFETドライバーはそのままで終段だけ2石のパラレルドライブとしました。 また、約6Ωの出力インピーダンスにマッチするLPFを再計算して、2次のフィルターとしました。

LPFは-3dB:8500Hz 250Khz:-60dBとして算出した L=159uH, C=4.4uFとしてあります。

Ampp_400hzmod

左は、30W出力で最大変調度の時の波形です。 変調回路のデューティを調整し波形のピーク部分はクリップしておりますが、最少レベルでキャリアがゼロにならないようにしてあります。 しかし、変調のエンベロープは決してきれいでは有りません。 ピークがとがったような波形をしています。 ピーク時に正帰還がかかっているような波形です。

今回、従来の配置のままでパワーアップしましたので、D級アンプからの回り込みが発生して、低周波で発振しました。 やむなく変調回路とRF回路の間にシールド板を建て静電結合を削減しました。 しかし、まだこの結合に伴う変調信号の歪が生じている感じです。 もう少し大きなシャーシに変調部とRF部を完全に分離できるような配置の再検討をする事にします。

 

Ampp_30wout

左のスペクトルは40W出力時の高調波レベルです。 前回使ったTS-930S用の7MHz BPFは有りません。 7次LPFのみで第2高調波は十分減衰しています。 逆に3次の高調波はシングルの時より増えていますが、OKレベルです。 実際に運用する場合、6次BPFを付けて使います。 また、変調波形の改善の為、RF回り込み対策や、LPFのコア変更など再検討する事にします。

一応、30W出力で1時間以上のエージングテストを行い、異常なしでしたので、続けて40W出力状態で1時間以上のエージングテストを実施しました。 今回、用意したPCのCPU用放熱板をファンで冷却していますが、ほんのりと暖かくなります。推定温度が45度くらいです。 この40W出力時のE級アンプ効率はLPF込で73%でした。 使用しているクラニシの終端型電力計はかなりあっちっちになっています。

さらに、数日間連続テストを行った結果、数時間のエージングで出力が5Wくらい上昇する事が判りました。 原因は温度上昇で、同調用コンデンサの容量が変化するもののようです。 シルバードマイカコンデンサを使えば問題ないのでしょうが、そこまでする必要もありませんので、常用出力を35Wにして運用するつもりです。 

後日、このエージングで出力が上昇する真の原因はコンデンサの容量変化ではなく、74HC04の性能が変化する事が原因と解りました。 使ったICの能力不足が原因だったみたいです。

全体の構造は前回の18W出力用とほとんど変わりません。

TSSに提出したブロック図を添付します。

3rd_TX_AM_PP_BlockDia.pdfをダウンロード

Ampp_all

35W出力のAM送信機が出来上がったように見えましたが、エージングを継続するにつれ、予想したオーディオの周波数特性が得られなかったり、レギュレーターが壊れたりと問題が続出しました。 変調音の歪はRFのフィードバックが最大の原因で、各ユニットの配置再検討は避けられなくなりました。

シャーシ変更と音質改善 に続く。

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