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2016年2月 6日 (土)

放熱設計

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

こいう事を巷では「どろ縄」と言います。

28Vの電源に1分くらいつないだらFETが壊れてしまいました。しかも、E級アンプと変調用のD級アンプ、ふたつともです。 この対策を考えていましたら、パワーアンプで最初にやらねばならない放熱設計が完全に抜けていました。 FETシングルで何ワット出力できるか? パラレルでは何ワット?という以前の問題でした。

そして、改めて放熱設計を検討する事にしました。

Heatsink3 

 上の表は、放熱設計の基本を表にしたものです。 各熱抵抗はFETの品種ごとに決まった値になります。 また、使用する放熱板やFETを放熱板に固定する方法で決定される数値です。 これらの数値から、今回の送信機では、FETに許容出来る最大損失が10Wであると計算されました。 

次に実際の使用環境を考察します。  この送信機はAM送信機ですので、無変調時の定格出力と100%変調時の最大出力を考慮必要です。最大出力は無変調時の1.5倍となりますので、定格出力状態で論議するときの最大許容損失も、10Wの1/1.5の6.7Wになります。 この6.7Wを超えたら、このFETが壊れるわけですから、ディレーティングという考え方を行い、最大許容値の70%を通常状態と設定します。この通常状態での許容損失は4.7Wとなりました。

E級アンプの効率を仮に80%と仮定すると、4.7Wの許容損失になる時のDC入力は23.3Wとなります。 ここから4.7Wの損失を引き算して、アンプの出力は最大で18.7Wとなります。 この18.7WにはLPFの挿入損失は含まれていませんので、現在のLPF挿入損失-1dBを考慮すると、LPF出力部での最大出力は14.8Wと計算されます。

FETが90%変調状態で1分くらいで壊れた時、LPFを通過した後の無変調出力が21Wくらいでしたから、FETが壊れても不思議ではありません。

これから、回路を再設計するに際し、測定誤差もありますので、一旦、目標最大出力はLPF挿入前で18Wと置きます。  18W以上が欲しければ、FETパラレルドライブにして、放熱板も2倍の放熱量を確保できるサイズにしなければならないという事です。 FETパラレルドライブの出力アップ構想も許容放熱量の制限から不可となりました。

なお、ここでシングルFETで最大18Wというのは、フルモールドパックのFETと、秋月の小さな放熱板での話で、ドレインが直接フィンに接続された絶縁が必要なTO-220や、ファンの付いた放熱器を採用する事により、この2倍くらいの出力まで上げられる事は補足して置きます。

これらの条件を実際の回路に当てはめようとすると、そう単純にはいきません。 まず、LPF挿入前の出力というのが測定できません。 電力計が熱電対型の真の実効値を検出するタイプなら問題ありませんが、クラニシの電力計やCM結合器を使った通過型電力計の場合、LPFを通る前の大きな歪のある信号の電力を計る事は不可能です。 これらの電力計は正弦波の片方のみをダイオードで整流して、その直流電圧から電力を換算していますので、歪が生じたとたん、指示された電力値は誤差が大きくなります。ひどい時は入力されたDC電力よりも測定された高周波電力が大きいというウソのデータも出てきます。 従い、LPF単体の挿入損失を正弦波の信号源を使い、実測で求めておき、LPF出力端で測定した電力からLPF無しの出力を計算で割り出しています。

E級アンプを再設計するに当たり、一度熱暴走で壊している負い目がありますので、最初は14Vの電源で10Wくらいを目指して、回路設計を行い、おそるおそるFETや放熱板を手で触りながら、パワーを上げるかどうかを判断することになります。

そんな訳で、フライホイール回路のコイルを0.61uHとして、この状態で最大効率が得られるように各定数を調整した結果以下のようになりました。

Amtx_comp_out1_2

上の段は、変調器なしでRFユニットに直接DC14Vを加えた時のもので、LPF通過後、9.1Wの出力となり推定出力は11.5W、76.4%の効率となりました。 RFアンプ効率というのは、LPFのロスを含んだ全体の効率です。

下段は、変調器を接続し、電源電圧も28.2Vに上げた時のデータとなります。 変調器とRFユニットの間にあるLPFのインピーダンスが影響していると思われますが、単体の時より効率が上がり、LPFなしの推定効率は80%くらいで、まずまずです。

Amtx_vdvg

Amtx_rfout 

左の画像の下の波形がVg、上の波形がVdです。 オシロの縦の目盛は20V/divです。 右側の画像はLPFを通った7MHzのキャリ波形です。

この状態で、PCから音楽ソースを入力し、1時間くらいのエージングテストを行いました。   RFファイナルの放熱板はかなり熱を持ちます。1秒以上触り続ける事は出来ません。多分50度を超えていると思われます。また、28Vから12Vを作る3端子レギュレーターも負けずに熱くなっています。 変調器のFETは100x120mmのアルミ板にビス止めしてありますが、ほとんど温度は感じられません。

E級アンプの放熱板に定格12Vのファンを8Vで駆動して風を当ててみました。すると放熱板の温度はずっと指を当てていられる状態まで下がり、出力も以下のようになりました。

Amtx_fantukiout

 

効率83.5%はマユツバものですが、ファンで強制空冷するとかなり効果がある事はわかりました。ファンを恒久的に取り付ける方法を考える事にします。

一方、1時間もエージングすると、7MHzのLPFのコアがかなり熱くなります。これは、なるべく早く改善する必要があるようです。

今回の変更でE級アンプのインピーダンスは14Ωくらいになりましたので、従来、7.2Ωで計算されていた変調器のLPFのままでは、変調の周波数特性が変わり高域が、かなり出るようになりました。スイッチングの250KHzも減衰量が減ったと思われます。 この変調段のLPFは周波数特性のみに影響すると思っていましたが、インピーダンスが大幅に違うと、オーディオの波形が歪む事を発見しました。 E級アンプの負荷インピーダンスが10倍を超え始めると次第に歪を目視できるようになります。 従い、きれいな変調を維持する為には、常にこのフィルターのインピーダンスはE級アンプに合わせておく必要がありそうです。 

最新回路図 AMTX_11.pdfをダウンロード (IC6の in,outが逆です。)

LPF改善 に続く。

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