50MHz AM受信機 (DSPラジオ)
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50MHzのAM送信機が出来ましたので、これとペアで使用する50MHz用AM受信機の製作です。
すでに7MHz用として、1KHzステップ可変のDSP受信機がありますので、これを親機とするクリスタルコンバーター(クリコン)をこのDSP受信機の中に内臓させる事にします。 DSP受信機は30MHzまで1KHzスパンで動作しますので、手に入る水晶振動子できりの良い32MHzを選定し、IF周波数が18MHz台となるクリコンにします。
このクリコン部分の配線図です。 50M_clicon.pdfをダウンロード
一般的にはシールドケースのかぶったインダクタンス可変式のトランスを使いますが、最近はほとんど入手不可能です。 生産はされていますがMOQ 10,000個とかの条件がつきますので、販売店もリスクが大きすぎるのでしょう。 そこで、現在量産中のチップインダクタと表面実装用トリーマーでこれを実現する事にしました。 これらの部品はRSとかDigi-keyで少量でも入手できます。
まずは、BPFの計算です。 ここで計算しました。 TKS.
左は、チップインダクタとトリーマーで構成した50MHz用BPFです。 BPFの計算で、低いカットオフ周波数と高いカットオフ周波数を指定しますが、中心周波数がバンドの真ん中にくるように設定すると、インダクタンスの値が量産品のE12シリーズに一致しなく、かつ、全ての値のインダクタを手持ちしている訳では有りませんので、手持ちのインダクタが使えるようにこのカットオフ周波数を調整します。
手持ちのチップインダクタに1uHが有りましたので、これを使い計算した定数でBPFを作りました。
アンテナアナライザをSSGの代用として、出力端にオシロをつなぎ調整する事にしました。
ところが、トリーマーを回してもピークポイントが見つかりません。 しかも挿入ロスが20dBくらいあります。 このインダクタの仕様を再確認すると、Q無管理品で、コイルのQが必要な場合、Qを管理したインダクタを使うようにとコメントがあります。
サイズが3216でかなり大きなチップインダクタでしたので、QはOKと考えたのですが、使用しているフェライトコアが50MHzまでは対応していないようです。
この1uHインダクタと同じメーカーでQがmin 30と管理されている太陽誘電製のインダクタLBM2612Tタイプを幸いにも手持ちしておりました。 手持ちしていたのは1.5uHのコイルでしたので、再度計算をやり直し、実装した結果、アンテナアナライザの周波数を可変し、その出力をオシロでみている限り、周波数特性は一応50MHzのBPFとして実用レベルであり、挿入ロスも6dB程度である事を確認できました。
IF周波数が18MHz帯ですので、このバンドのBPFも同じように作成しましたが、入出力インピーダンスの関係で直列共振回路によるBPFはうまく行かず、ミキサーの出力は18MHzのタンク回路と2次コイルによるトランス形式の回路としました。 トランスはカーボニルコアに0.28mmφのUEWを22ターン巻いて約5uHのインダクタンスを確保した後、2次側は5ターンとしてあります。
ミキサーは定番のジャンクションFET 2SK241ですが、最初、ソース抵抗の最適値と局発の出力レベルの最適値を探す為、オシロで波形をモニターしていましたが、周波数変換された18MHzのレベルが良く判りませんでした。 そこで、IF出力にスペアナを接続し、18MHzのレベルが最高になるよう定数を選定した結果が左のスペクトルです。
32MHzが局発レベル、50MHzが入力信号、18MHzがIFレベルとなります。 また、14MHzは局発の32MHzとIFの18MHzの差分で生じたイメージです。
18MHz以外の不要信号はDSPラジオの内臓フィルターで除去してもらう事にします。
左は、クリコンの全体構造です。 入力は右側の50MHz BPF側から加えられ、左側のトロイダルコアと、20Pのトリーマーで18MHzに共振させた後、18MHzのDSPラジオに繋ぎます。 中央上に32MHzの水晶発振回路、それに7MHzと50MHzを切り替えるPINダイオード回路と、マイコンからのクリコンON/OFFのコントロール信号により、全体をスイッチングする回路も実装しました。 PINダイオードは大量に手持ちしているインフィニオン製を使いましたが、ここはロームの1SSxxxでも使えると思います。
これを7MHz用AM受信機の基板上に実装した上で、PICのソフト変更を行わないと50MHzを受信しているのかも判りません。
DSPラジオの基板にこのクリコンの基板を2重構造で張り付けますが、DSPラジオの基板の裏側もクリコン基板の裏側も銅箔をべったり貼り付けてありますので、両方の銅箔を真鍮のボスとビスで導電的に結合しました。
全体の配線図 DSP_50M_RX.pdfをダウンロード
次は、PICマイコンのソフト改造です。
一番の問題は、周波数を表示する文字フォントが大きすぎて、5ケタの数値を並べられないことです。 クリコンのハードをコントロールするソフトは簡単に改造出来るのですが、周波数を表示する為に一回り小さなフォントを作るのが最大の問題でした。
このフォントデータの生成器は以前アンテナアナライザの開発のとき、GIF画像をベースに自動生成するプログラムを作ってあったのですが、取説が有る訳でもなく、このTcl/TKのプログラムの復習からせねばなりませんでした。 操作案内は無く、作るフォントサイズやGIFデータの条件によりいちいちソースを手直ししながら操作する必要があるみたいで、GIF文字データを何度も作り代え、やっとフォントデータはできましたが、DSP受信機のプログラムで動かすと、まともに文字が出ません。 結局判った事は、フォントのX方向のピクセルは、8の倍数か8以下でなければ、うまく表示しないという、LCD表示ソフトのバグでした。
フォントコードジェネレーターにはバグは有りませんので、今回使用したソースを公開しておきます。
フォントコードジェネレーターCcord_Generator5.tclをダウンロード
コードジェネレーターがGIF画像を読み込んだ状態のPC画面を添付して置きます。 0から9まで数字の後にスペースの部分がありますが、サンプルでは見えませんね。(スペースだから見えている?)
バグの原因が判りましたので、バグを修正し、正しく文字が表示されるようソースコードを修正しました。 文字が表示できるようになると、50MHz受信機はあっと言う間に完成してしまいました。
完成して、その感度をFT450と比較すると20dBくらい感度が悪そうです。 そこで、50MHzのBPFの後に非同調のRFプリアンプを挿入しました。 このデュアルゲートFETのゲインは約20dBくらいです。
左上は動作確認中の50MHz AM受信機です。 右上は、アンテナアナライザからATTを介して信号を加えた時のSメーターの振れです。 同じようにFT450へ信号を加えるとSメーターはS9+30dBくらいまで振ります。 Sメーターの感度は自作が勝りますが、実用感度はFT450の方が良さそうな感じです。
自作の送信機にダミロードをつなぎ、音楽を変調したおこぼれ信号をこの受信機で受信すると、ブツブツと小さなノイズがでます。 信号強度がS5から9くらいの時が一番大きくなります。 原因はマイコンとDSP間の通信によるノイズです。 以前FM受信時でもあったノイズでこの時の原因はSメーターのデータ転送のノイズでしたので、FM受信の時だけはSメーター駆動を止めた経緯があります。 7MHz受信時はほとんど気になりませんでしたが、50MHz帯ではFMのときより大きなノイズとなっています。 原因は、DSP基板から出ているハーネスにノイズが乗っており、これをクリコンが拾うもののようです。 ハーネスを束ねたり、ケースの底に押し込むと少し改善しました。
スピーカーに接続される線に50MHzか18MHzの成分のノイズが乗っているようで、この線を動かすと、ノイズが増えたり、音量が変化します。 MWや7MHzでは異常は起こらないのですが、50MHzの時だけ起こります。 狭い空間にシールドなしでクリコンが同居していますので、対策としては、スピーカーケーブルを2芯シールドに変更しました。 この対策でスピーカーケーブルを動かしてもノイズや音量に変化はなくなりました。
プリアンプ付の回路図DSP_50M_RX2.pdfをダウンロード
残念ながら、完成したこの日の50MHzは実際のAM局はおろか、SSBの局すら聞こえませんでした。
ちゃんと使えるのか心配ですね。
50MHzの受信が便利なように、ラスト状態をメモリーし、次に電源ONした場合、バンド、周波数、ボリュームレベル、IFバンド幅が復元するようにソフトを改造しました。 また、激しいQSBやオーバー変調の信号を聞くと、パチパチノイズが連続して、了解度が落ちるのを少しでも改善する為、DSPのAM AGCのパラメーターを少しいじっています。
以下、改善部分の関数です。
void DSPinit() {
unsigned int Rdata;
writeDSP(0x04,VOLUME);
writeDSP(0x05,DSPCFGA);
writeDSP(0x0F,RXCFG);
writeDSP (0x2E,SOFTMUTE);
Rdata=readDSP(0x22);
// writeDSP(0x22,(Rdata & 0xFCFF) | 0x0200);
writeDSP(0x22,(Rdata & 0xF0FF) | 0x0200);
Rdata=readDSP(0x0A);
writeDSP(0x0A,Rdata & 0x0400);
Rdata=readDSP(0x22);
// writeDSP(0x22,Rdata & 0xF3FF);
writeDSP(0x22,Rdata & 0xF0DF | 0x0240);
// Rdata=readDSP(0x23);
// writeDSP(0x23,Rdata & 0xE3FF | 0x1C00);
Rdata=readDSP(0x3F);
writeDSP(0x3F,(Rdata & 0xFF88) | 0x0013);
}
全体のソフト AM_RX50MHz_lastmemory.cをダウンロード
2018年11月の日曜日にFT450にて50MHzをワッチしていると、50.53付近でAMの信号が聞こえます。 RS52くらいです。 広島市の局らしい。 これは幸いと、このDSPラジオをONして聞いてみました。 残念ながらRS31です。 ゲインがまだ足りないようですので、ゲインアップの対策を行う事にしました。 50MHzのBPFの後にFETの非同調アンプを設けていますが、これを同調アンプにして10dBくらいのゲインアップになるように改造します。 ところが、ゲインが上がり過ぎ発振してしまいますので、同調回路にQダンプの抵抗を入れ、同調した時の最大感度でも発振しないようにしました。 アンテナアナライザとATTで確認した結果では6dB以上は感度アップしているようです。
当然、この改造が終わったころには、またしてもAMもSSBも聞こえませんので、改善したかどうかは判りません。 次の機会を待つしかないですね。
改造後の配線図です。 DSP_50M_RX2A.pdfをダウンロード
2019年1月
約10Km離れたローカル局に協力頂き、AM 2way QSOが成功しました。 相手局は40Wキャリアにて59+10dB、私の方は8Wキャリアにて57でした。 受信音は正常で、ゲインも十分という事を確認できました。
この受信機は7MHzも使用できますので、このままにしておき、50MHzトランシーバー用DSP受信機を新たに作る事にしました。 こちらをご覧下さい。