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2018年8月 4日 (土)

50MHz PWM変調方式 AM送信機 3 (完成)

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PLL方式のVFOがなんとか完成しましたので、これを送信機に接続して最終調整です。

50mtxtopview

最終調整と言っても、すでにいじる所は調整済みですので、動作確認のみになります。

左がPLL VFOを送信機に接続した状態です。送信機のドライバー段の発熱が大きいので、シールドケースの天板は取り除いてあります。

50mtx12w

無変調時の送信出力は12Wでした。 この出力は1時間くらいエージングすると10Wくらいまでダウンします。ドライバー段を扇風機で冷やすと、ゆっくりと12Wまで回復します。

PLL VFOに変更した事によるスプリアスは以下のようになりました。

50mtx1mspan

50mtx100kspan

50mtx200mspan

左上が1MHzスパンのスペクトルで、DDS VFOの時有った240KHzのスプリアスは有りません。 また、PWM変調用の210KHzキャリア漏れも60dB以下まで減衰しています。 右上は、100KHzスパンですが、DDS VFOの時有ったキャリア近傍のノイズベースのスプリアスも改善され、スペック内です。

左のスペクトルは200MHzスパンで、第3高調波までノイズに隠れて判りません。 4次以上の高調波も確認し、ノイズレベル以下でした。 これで、安心してTSSへ保障願いを出す事が出来ます。

50mtxmaxmod

左は、400Hzの最大変調状態です。PWM変調器の出力は電源電圧0Vから12Vをフルスイングしていますが、ドライバー段からの漏れが1.5Wほどありますので、写真のごとくキャリアがゼロになりません。 左の波形で、キャリアの幅が一番狭くなっている部分が1.7Wくらいの出力状態です。 この時、変調度計は98%くらいをさします。 しかし、ピーク値は無変調の1.8倍くらいですので、39Wくらいしか出ていないようです。 (13.8Vの電源ですが、変調PWM終段の内部電圧降下と、LPFによる電圧降下でRF段にかかるmax DC電圧は12Vくらいです。)

この状態で音楽を変調してエージングを続けています。 変調度計の目盛が80%くらいまで振れる範囲では、歪感はほとんど有りません。 変調度計の針が90%を超えるくらいになると、聴感上の歪が感じられますが、音声としては全く問題ないレベルです。 この歪は、変調による歪ではなく、PWM発生器に内臓されている振幅制限回路(リミッター)の応答特性によるもののようです。 振幅変化が無い連続した正弦波の場合、オシロの波形で見ても、実際に音を聞いても歪感は有りません。 また、音量もSSB信号を聞いているときと同等ですので、交信には支障はないと思われます。

FT450のSメーターは変調がかかってもその振れは変わりませんが、FT991のSメーターは完全にプラス変調の振れを示します。 変調がかかると、Sひとつ分くらい大きく振れます。

50mtxfrontview

PLL VFOの側面をシールドする必要はなさそうですが、送信機の側面に近くなるPLL基板のみはシールドケースで覆うことにし、木製キャビネットに収納する事にします。 木製キャビネットは100円ショップで見つけた物入れです。

Pllvfosheeld

50mvfo

左上はシールドで覆われたPLL基板、右上は化粧パネルを張り付けたVFOの正面です。

50mvfotrimer

エージングが2時間を過ぎたころ、突然、出力がダウンし、1W以下になってしまいました。 調べてみると、VFOの出力が極端に小さくなっています。 VFOの逓倍回路の基板に衝撃を与えると時々正常になりますが、その内、また出力小になります。 逓倍回路の20PF トリーマーを回しても、同調点が有りません。 このトリーマーを取り外して、単体の容量をLCメーターで測定すると、2PFくらいを示し変化しません。 このトリーマーはセラミックの上に電極を蒸着したものでしたが、断線したみたいです。 代わりにPICの水晶発振周波数を微調整する為に手配しておいた20PFのトリーマーに交換しました。 このトリーマーは2個使っていますので、2個とも交換です。 新しいトリーマーで同調させた時、出力が12.5Wまで上昇しました。 左上がトリーマーを交換した逓倍回路の基板です。 今までの物は何か問題のあるトリーマーだったようです。 約30個、20年くらいジャンク箱の中にストックしていた物でしたが、全部廃棄しました。

ここまでの配線図 6m_AMTX_03.pdfをダウンロード

変調の周波数特性が、400Hzで-3dBと、低域をカットし過ぎた音質となっていましたので、100Hzで-3dBとなるようコンデンサC31とC51を変更しました。

PWM生成の為のキャリア(今回は210KHz)漏れを最少にする為の対策は、作成したインダクターの巻始めと巻終わりの距離をある程度確保するのが一番有効でした。少なくともコアの1/4くらい巻線なしの部分を作ると60dBの減衰量は容易に確保できる事が判りました。 その為にはなるべく直径の大きなコアが有利です。 

最終状態のVFO配線図 PLL_VFO_50MHz_2.pdfをダウンロード

TSSへ提出したブロックダイアグラム 6mAMTXblocgdiagram.pdfをダウンロード

TSSに申請してから2週間で承認が下り、総通に変更届を提出しました。 そして1週間後に審査終了となり、交信可能になりましたが。

50m90pctmod

2018年11月

ドライバー段からのキャリア漏れの為、深い変調がかけられない問題の対策として、ファイナルだけでなく、ドライバー段にも変調をかけてみました。

左がその時の1KHz変調波形です。 キャリア出力は7Wまで下がりましたが、かなり深い変調がえられ、見た目、聞いた感じの歪もそれほど大きくなりませんでした。 実際の交信は出来ていませんが、12W 52%変調の信号と、7W 87%の変調信号、どちらが聴きやすいかを、ダミー抵抗へ出力した送信信号にて聞き比べた感じでは、後者の方に軍配があがります。

7W出力を少しでも上げる為、VFOの出力を40mWから80mWまで増加させましたが、出力は8Wどまりでした。 そこで、電圧ロスが多そうなPWMキャリアのLPFとなっているインダクターをフェライトに変え、導線の直径を2倍くらいに増やしてみました。 導線のDC抵抗は確かに減少し、出力は9Wくらいまで上昇しましたが、音の歪は見た目も聞いた感じもかなり悪くなってしまいましたので、元に戻すハメに。

変調をドライバー段までかける、この変更でLPFの負荷抵抗が約半分になってしまいましたので、LPFの再計算を行い、得られたインダクタンスは33uHでしたが、カーボニルコアに1.25SQのりード線を巻けるだけ巻いたところ、27uHしか巻けませんでした。 コイルのインダクタを固定としてPWMのキャリア漏れを60dB以下にすべく、コンデンサの値を吟味しました。

吟味した結果、2段目のコイルの出力端に設けるコンデンサ容量は手持ちの関係で、7.7uFになりました。

Newlpf1r6_2

Lpfjissou

そして、左上のスペクトルのごとく210KHzのキャリアもれは-70dBくらいまで対策できました。 この対策の為に追加した3.3uFのマイラーコンデンサは取り付ける場所が無く、終段のシールドケースに貼り付けてあります。

最終的な無変調キャリア出力は、1.25SQワイヤーのLPFが効いて、13.8Vの電源で9.5Wとなりましたが、実際の移動運用で、電源電圧が常時13.8Vという事はありえず、良くて13Vくらいですから、実際の運用状態での出力は8.5Wくらいです。

目標とした10Wキャリア出力には若干不足しますが、これを元の12Wに戻す為には、ドライバーやファイナルのFETの選定からやり直す必要がありそうという事が判ってきました。 この送信機に使っているMOS-FETはIRFI510ですが、これより新しいFETが無いかRSで探しましたが、コストパーフォーマンスの良いFETは見つかりませんでした。 従い、現時点では、ここで、目標達成とする事にしました。 将来、入力容量が小さく応答速度が20nsec以下のFETが出るまで待つ事にします。  ちなみに、1石、40円のFET FKI10531はTonとToffの合計の応答速度は16.7nsecで私が見つけたMOS-FETの中で最高のコストパーフォーマンスを有しておりますが、入力容量Cissが1530PFも有り、50MHzでは使えませんでした。

6mamtx

ドライバー段にも変調を掛けたことで、発熱量が減り、当初の予定通りシールドの天板も付ける事が出来るようになりました。 また、2時間くらいエージングしても出力の増減は有りません。

サンワサプライのマイクは中高域が全く伸びず、トランシーバー向きではない事が判りましたので、YAESUの無線機用のマイクに変更しました。 このマイクは、PTTスィッチ付でしたので、その機能を含めて回路変更を実施しています。 また、サンワサプライのマイクの中高域を伸ばす定数変更も実施していましたが、マイクを変更した後も、この定数変更はそのままにしてあります。

最終配線図 6m_AMTX_05.pdfをダウンロード

この送信機が完成しても、交信相手はいないのでは?という心配は現実になりそうです。 この送信機を製作し始めてから、度々6mをワッチしていますが、AMどころかSSBの局も聞こえません。 当地ではコンテスト以外の日に局を見つけるのは無理かも知れません。

平地では信号は聞こえませんので、いざこの送信機を持って山の上にでも移動するとき、受信用にFT450を持っていっても自作の意味が有りません。 そこでDC12Vで動作する、50MHzのAM専用受信機を作る事にしました。

ついでに移動用のアンテナも作りました。

2019年1月

念願のAM 2way 1st QSOが実現しました。 約10Km離れたローカル局で、途中に山が有り、見通し距離では有りませんが、相手が59+、当局の信号は57で届いているとの事。 Sの差はキャリア出力の差です。 了解度が確保できていますので、やっと交信成功となりました。

このバンドで、セパレート式リグは使いにくい事を実感しましたので、この送信機と別に作成したDSPラジオ+クリコンによるトランシーバー化へトライする事にします。

50MHz AMトランシーバー(PLL VFO)へ続く。

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