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2013年1月28日 (月)

YAESU G-800DXAの修理

<カテゴリ:ローテーター>

YAESUのローテーターのコントローラーの修理を頼まれました。 私のFT-450が誘導雷により壊れた同じ日に、落雷の直撃を受けたタワーに設置してあったローテーターとのこと。

電源を入れてもヒューズが飛び全く動作しない状態ですので、雷により、電源を含めた、かなり電力の高い範囲が損傷しているようです。

ローテーターの場合、回路図があれば、なんとかなるのですが、幸い今回は、八重洲無線から正規ルートで回路図を入手できており、回路図とテスターだけで、対応できました。

壊れていたのは、

  • Q1(2SC5198)が全端子ショート。
  • Q1025(2SC2812)全端子オープン。
  • D1031,1032(1SR154-400)ショート。
  • C1049(0.01uF)リーク。・・・ローテーターのポテンションメーターのセンター端子に接続されたコンデンサ。

2SC5198 は秋月に有りましたので、秋月で販売していた2SC3325(2SC2812の代用)と一緒に購入。 1SR154-400は手持ちの1N4002で代用。 C1049も手持ちの1608タイプのチップコンデンサに交換。

G800dxa_0_2


以上で修理完了です。

G800dxa_1
このコントローラーの設計は良くできています。   制御回路と動力回路が完全に分離された基板に乗っていて、電源系統もそれぞれ独立しています。雷の直撃を受けても、制御回路は、ローテーター内臓のポテンションメーターからの入力部分にあるセラッミクコンデンサがリーク(実際はショートに近い)しているだけで、その他の回路は、無傷で残っているのは偶然ではなさそうです。

ローテーターの修理をする為に、配線図が欲しい場合、YAESUのUSAホームページから取説をダウンロードすると、最後のページに付いています。解像度が悪いので、目を凝らしても、よく見えませんが、正規ルートで入手した配線図も、同じように良く見えませんでした。

下記のサービスマニュアルの中に基板部分だけですが、きれいな配線図があります。     全体図はUSAホームページからダウンロードした配線図を参照して下さい。

G-800DXA, G-1000DXAのサービスマニュアルのダウンロード。

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2013年1月23日 (水)

3.5MHz ALC動作異常(RFフィードバック)

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

TS-850Sをメインで使っていた時、3.5MHzで、ALCがかかり過ぎ、フルパワーが出ないという問題がありました。TS-930Sの修理が完了して、運用していると、TS-930Sでも少しその傾向があります。 2モデルとも似たような問題があるのなら、これはトランシーバーが原因ではなく、アンテナ系に原因がありそうです。

大進無線から買った、コモンモード電流計で色々なケーブルのコモンモード電流を測ってみると、大きな電流が流れているケーブルが見つかりました。プリセットMTUをコントロールする8芯ケーブルです。同軸ケーブルの10倍以上のコモンモード電流が検出されました。

すでにコネクター加工済みのケーブルですので、コネクターを外さずにチョークコイルが巻けるようにFT240#43というコアを手配し、対策することにしました。

80mcomon1


このアンテナシステムは、「プリセット式MTU 3」 で紹介の通り、Cの部分に厳重にチョークを挿入し、かつ、各トランシーバーからのアンテナケーブルE,Fにもコモンモードチョークが挿入され、Aの部分にもMTUのキャビネット内ですが、チョークが挿入され、全バンドうまく動作していました。  しかし、BとDの部分にはチョークは入っていない状態でした。

Img_0310
そこで、DとBの位置にチョークを追加し、コモンモード電流を1/20以下にしました。 左の写真はプリセットコントローラーに内臓されている送信機、アンテナの切り替え回路に接続されるケーブル類に追加された、トロイダルコアに巻かれたコモンモードチョークです。

DとBにコモンモードチョークを挿入したことにより、3.5MHzのプリセットMTUの整合がずれました。  コントローラーケーブルが悪さしていた影響が無くなった為でしょうから、MTUを再調整してALCテストを実施してみました。 ところが、全く改善されません。

思考錯誤の結果、Aの部分にFT240コアによるチョークをいれると、ALC動作の異常が無くなりました。 今まで挿入されていたクランプコアによるチョークでは能力不足だったようです。

80mcomon3左の写真がプリセットMTU側に挿入されたコントロールケーブル用コモンモードチョークと同軸ケーブル用コモンモードチョークです。 これで問題点が解消した理由は以下の通りです。

プリセットMTUとリグの間はケーブル長で約22mあります。  3.5MHzの場合、1/4波長の長さに近いですから、プリセットMTU側から流れ出た電流はリグ付近では電圧腹を少し過ぎたあたりでかなり高い電圧がかかっていたようです。この高電圧がトランシーバーへフィードバックしALC用のレベルピックアップ回路を誤動作させていたものでした。

また、この電圧腹の付近には火災報知器の検出器があり、時々、3.5MHzのアンテナの調整を間違うと火災報知器のベルが鳴りだす原因でもありました。

 

コモンモードチョークはMTUの近くに挿入しただけで、ALC動作異常は解消しましたが、現在は、コントローラー側を含めて、両方に挿入してあります。

6m_chorkこのマルチバンドアンテナシステムには、6m用のヘンテナも同居しており、ベランダの手すり付近でバランによる、平衡/不平衡変換とインピーダンス変換の後、そこから、約20mの同軸ケーブルでリグに接続しております。

この6m用の同軸ケーブルはシャック内では、長さに余裕があり、バランに接続するベランダ側では、ギリギリの長さになっていました。 その為、宙吊りのバランに張力がかかり、リード線の被覆が割れてしまい、中の導体があらわになっている状態でしたので、この同軸ケーブルを50cmくらいベランダ側にたぐって、張力を緩和してやりました。

数日後、コンテストに備えて、3.5MHzの試験電波を出したところ、火災報知器のベルが鳴りだしました。 翌日、詳細をチェックすると、この6m用の同軸にも3.5MHzが乗り、ちょうど火災報知器の当たりで電圧腹になった事がわかりました。わずかに、50cm移動しただけでしたが、これが致命傷になったようです。結局、この6mの同軸ケーブルにも、チョークコイルを追加する事になりました。

 

チョークを挿入してから、3.5MHzも7MHzも、近隣の局からの応答率が、さらに悪くなりました。 今まで、地上高8mに水平に展開していたコントロールケーブルや同軸ケーブルがカウンターポイズの役目をして、打ち上げ角を高くしていたと思われます。 国内コンテストの時だけは、臨時の2バンド用のフルサイズ逆Vでトライする事にします。

Comon2m_2

しかしながら、まだ、火災報知器が誤動作する要因が有りました。HFアンテナのすぐそばに2m用のJポールが立っており、このアンテナの同軸ケーブルも22mくらいあります。  たまたま、この同軸をリグから外していたところ、3.5Mhzで30W以上出すと、火災報知器が鳴り出します。同軸ケーブルのGNDをリグにつなぐと、鳴りません。  3.5メガのとき、まだ、打ち上げ角を下げられない要因があるみたいです。この2m用同軸ケーブルにも、FT240によるチョークを追加する事にしました。当初5D2Vの同軸を5ターンしか巻いていませんでしたが、火災報知器の誤動作は解消していました。 しかし、4エリアや5エリアの局の信号が結構強く入感するので、打ち上げ角はあまり改善していないようです。そこで、3D2Vの同軸に変更し12ターン品に変えました。これでしばらく様子見です。

2014年10月

このHFのスカイドアに近接したJポールはスカイドアのエレメントと干渉して、特定の方向にヌルポイントを生じさせる事が判りました。 その為、3.5MHzの打ち上げ角への影響を確認する前に、Jポールのアンテナごと撤去されてしまいました。

 

 

アンテナシステム立て替え へ続く


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TS-930 Sメーター振り切れ

<カテゴリ:TS-930>

温度が下がった状態で電源ONすると、Sメーターが振り切れて、受信不能になり、温度が上がってくるといつの間にか直ってしまうという問題の修理事例です。

預かってすぐに、電源ONしたら、問題の症状が再現しましたので、本格的に原因を探す為に、ポイントクーラーと言われる瞬間冷却スプレーを探す事にしました。記憶にあるのは、サンハヤトの「キューレイ」です。結構な値段がしていました。問題が起こると、あっと言う間に使い切ってしまい、かなりコストが高い修理になると認識していました。

Qray1しかし、最近スポーツ用に同じ原理の冷却スプレーがあるとのこと。スポーツ用品を扱うホームセンターで探すと、キューレイより2~3割アップの容量で、価格は1/3くらいで売られています。ただし、問題がひとつ。スポーツ用は冷却スプレーがある程度拡散するようになっており、噴射したとき患部が凍傷にならないようになっています。

電気製品の修理の場合、めざす部品だけを冷やし、その他の部品は常温のままという状態を作って、不良部品をあぶり出すやり方ですから、スプレーが拡散するのは都合が悪い訳です。 

Qray2


何種類かの冷却スプレーの中から、ノズルを追加して取り付けられる物を探し、これに直径3mmのアクリルパイプをねじ込むことにしました。アクリルパイプをドライヤーで温めると簡単に柔らかくなりますので、この柔らかくなったパイプをスプレーに付いている小さなノズルに差し込みます。温度が冷えると、固まってしっかりと固定できます。使わないときは引き抜いて置けば、問題ありません。

Qray3こうやって、かなりエコノミーなポイントクーラーが出来上がりましたので、さっそく不良部品探しを始めました。

トランジスターや電解コンデンサにスッポリとかぶせる事ができる紙の筒を作り、その筒の上部から冷気のスプレーを吹き付けますと、Q133で期待する反応がありました。

Q133を冷却するとSメーターが振り切れます。AGCをOFFにしても振り切れは直りません。 R722をオープンにすると、AGC OFF状態になって症状は出なくなります。

どうも低温でコレクタにリーク電流が流れているようです。手持ちの2SC1815GRに交換しましたら、AGC OFF時はSメーターが振れなくなりましたが、AGC FASTやSLOWの時は振り切れています。

症状が出なくなるまで待ってから、次にQ131を冷却すると、Sメーターが振り切れます。Q131のエミッターにオシロをつなぐと100KHzくらいの信号が見えます。Sメーターが正常時は、何も見えません。どうもQ131が低温で発振しているみたいです。正常状態で、Q131のコレクターにテスターを当てるとSメーターが振り切れます。これで判りました。低温でC529(0.047)が容量ダウンして発振していました。 C529に0.1uFのセラミックコンデンサをパラに追加しました。これでテスターで当たっても発振は起こらなくなり、問題は解決しました。

Ts930agc_3


結論はQ133のリークとC529の温度特性不良だったのですが、しかし、それで直ったと決定するまで半日以上かかってしまいました。理由は急冷スプレーを吹きかけると目当ての部品はすぐに冷えるのですが、その部品と周辺に霜がつき、その霜が溶け出すと基板上の部品間を水分でショートする状態となります。 スプレーをしてから10秒以上経過した後、Sメーター振り切れの症状が発生してしまいます。この霜の溶ける問題と本来の部品不良の区別がつかず、かなりロスタイムがありました。   
もしかしたら、Q133のリークも霜の影響で、ほんとうの原因はC529だけだったかも知れませんね。

冷却スプレーを使うときは、回路のインピーダンスを十分把握した状態で検討しないと、何をやっているのか判らなくなるという事でした。 対策完了してから、昔、同じような問題で悩んだことをやっと思い出しました。

今回は、低温で異常が発生する状況でポイントクーラーを使いましたが、高温で異常が発生する場合も、ポイントクーラーは大いに役立ちます。ドライヤーで異常現象が出るように温めておき、ポイントクーラーで特定の部品を急冷し、異常が解消したら、もう問題は解決です。

ただし、どの付近の部品を急冷するのですか?という問題は残りますが。

2019年10月追記

1エリアのOMさんより、Sメーター振り切れの別の対策案を頂きました。 その対策は、Q133のベースからGND間に1MΩの抵抗を追加するものです。 このアイデアを頂いて、改めて、このQ133の周辺を眺めてみますと、確かにKenwoodのオリジナル設計では、Q133のベースの直流電位は固定されておらず、温度や継時変化で不安定になる回路のようです。 この対策アイデアで、この不安定な症状は確実に安定すると思われます。

貴重なアイデアを連絡頂いたOMさんに感謝致します。

 

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2013年1月 5日 (土)

QRP CWトランシーバー 6

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

北京放送の混信の原因が判りました。

アンテナからの信号を2個の同調コイルでフィルターをかけて十分な選択度を確保したはずでしたが、フィルターをかけた後の信号線路をアンテナ切り替えリレーの端子へ接近させた為に、強入力信号に当たる、北京放送の信号がフィルターをバイパスしてICの入力端子へ漏れるという、基板設計のミスが原因でした。 このリレー端子に接近している回路はIC入力部のホット側ではなくGND側なのですが、510Ωの抵抗でGNDより浮いていますので、そこへ静電結合したようです。

Kemrxb4


幸い、ICの配置変更の必要はなく、同調コイルL5の出力を裏付け配線で直にICの入力端子へ接続してやると聞こえなくなりました。

Kemrxaf
以下、その具体的対策内容を紹介します。

左の画像に示すように、アンテナ入力ラインに近接して配置されているR14(510Ω)を抜き取り、これをIC3の2番ピンに直付けし、基板の裏側でL5のピンに配線します。今まで配線されていた銅箔パターンはL5の近くでカットし、これをGNDへ結びます。

IC3の1番ピンからL5の2次側コイルに入り、コイルの反対側からR14を経由して、IC3の2番ピンに戻るという入力回路のループが出来ています。 従い、裏付けでR14を配線する場合、このループが作る面積が最少になるように配置し、かつ、配線します。画像にある、R14の傾きや、曲がりくねった抵抗のリード線は、ちゃんと意味が有るのです。

以上の対策で、北京放送は、ほとんど聞こえなくなりました。スピーカーに耳を近づけると、かすかに放送らしき音声信号が聞こえますが、なにを言っているのか判らないくらいまで減衰しました。

約1年後の12月に、この対策済トランシーバーで鹿児島県の「さつま湖」から夕方オンエアーしました。北京放送はすでに始まっていましたが、問題なく各局と交信できました。

同じような問題でお困りでしたら、ぜひ修正対策して下さい。

北京放送よりも強敵が現れました。7275KHzの韓国放送(KBS)です。TS-930のSメーターは完全にオーバースケールで、針は指針ストッパーに当たったきり降りてきません。 また、季節により、北京放送もKBSと同じくらいの強度で入感する時もあります。相手の信号がS9程度ならQRMを受けながらもQSOできますが、これ以上の改善は、この回路構成では無理です。 ハイ。

エレキー回路の追加 へ続く

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2013年1月 4日 (金)

QRP CW トランシーバー 5

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

久しぶりに九州鹿児島へ帰りました。 暇つぶしの為、、このQRP CWトランシーバーを持って帰ることにしました。

ホームQTHで架設したアンテナは全長16mのロングワイヤーと10mのカウンターポイズです。

場所が谷の中なので、昔から電波の飛びはよくないところです。昼間は所用でQRVできなかったので、夜になってから交信しようと、ワッチすると、聞き覚えのある放送が狭帯域のフィルターごしに聞こえCWの信号はS9相当なのにQRMで判りません。しかもダイヤルを回してもまったく関係なし。

犯人は北京放送です。

Img_4301k私のホームQTHは南さつま市。昔、ラジオ少年だったころ最初に作った鉱石ラジオで唯一聞こえ たのが北京放送でした。どうも、いまでもその信号強度は維持されているみたいです。

結局、時間の取れる夜間帯はこの北京放送に邪魔されて1局もQSOできずでした。 唯一夕方、まだ北京放送の電波が聞こえない時間帯に5局ほどQSOできただけでした。

アンテナチューナーが悪さしているのか、受信機初段の同調回路の能力不足なのか? AM放送の混信排除能力は著しく悪いみたいです。 

広島に戻ってから、夜間に再確認した結果、同じように北京放送が聞こえます。アンテナチューナーを取り外しても、全く変化無しです。 TS-930をゼネカバ受信機にして詳しく調べると、MWの放送ではなく、7325KHzのれっきとした短波放送でした。 CWバンドと320KHzくらいしか離れていないのも一因とは思いますが、鹿児島ほどでは無いにせよ、じゃまである事は変わり有りません。

鹿児島では、夜間でも7メガの国内信号は聞こえます。7エリアや8エリアが主です。 しかし、広島では、夜間の国内交信はスキップの為、ほとんどチャンスがありませんので、とりあえず実害はありませんが、いつか対策しようと思います。

QRP CWトランシーバー 6 へ続く

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QRP CW トランシーバー 4

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

QRP CWトランシーバーが完成して、既存のアンテナやベランダに臨時に展開した釣竿アンテナでQSOの実績も増え実用域になりましたので、移動運用にトライしました。運用日はとても移動運用びよりとは言えない、北風のかなり強い1月でした。

アンテナを架設して、チューニング操作を開始すると、最初はOKでしたが、数分もするとロータリーエンコーダーをどっちに回しても周波数はダウンばかり。そのうちバンドの下限を超えてしまい、アップ出来ません。受信も送信も出来るのに、周波数が設定できないという状態で、結局その日は1局も交信できずじまいでした。

原因を確認する為、家に帰ってから屋内と屋外の温度差を利用して温度試験です。どうやら低温になると、アップが出来なくなるようです。その低温は7度くらい。15度以上になると正常になります。エンコーダーの端子電圧をオシロでモニターすると、かなり摺動ノイズが発生しており、低温になるとそれがひどくなるというものでした。通常、チャタリングはスイッチの切り替わった直後に振動状態で発生する、断続信号で、マイコンのソフトで基本対策を行い、それをさらにカバーするためにエンコーダー端子にコンデンサを追加し、波形をなまらせるという対策を行いますが、このエンコーダーの摺動ノイズはパルスのLレベルの範囲全体で出ています。

Kemre3

コンデンサでなまらしたら、エンコーダーとしての機能までなくなってしまうほどのノイズです。秋月で販売しているエンコーダーと同じものだそうですので、ALPS製のエンコーダーに交換することにしました。交換したら一応7度くらいでは誤動作しなくなりましたが、しかし、ALPS製は、すばやい回転には応答しますが、ワンステップのアップとかダウンを行うと、動作ミスが多発します。たぶん、マイコンのタイミングが合っていないのでしょう。 KEMのBBSで問いかけしましたら、秋月のエンコーダーの中にあるグリスをふき取れば良くなる可能性があるとアドバイスがありましたので、エンコーダーのカバーにあるツメを起こし、内部を開け、綿棒でグリスをふき取りましたら、動作力が軽くなったと同時にアップダウンが正常になりました。 しかし、数か月すると、また誤動作の頻度が高くなってきます。再度、ケースを開け、今度は接点復活剤で清掃しました。その効果は絶大ですが、いつまでモツ事やら。

半年以上経過した12月に、移動運用に出かけました。外気温は10度くらい。  太陽が当たっている間は良かったのですが、日蔭になってしばらくすると、今度はUPばかり。ロータリーエンコーダーをどっちに回してもUPばかりです。    帰ってから詳しく調べるとエンコーダーの一方の出力波形にかなり激しい摺動ノイズが出ていました。 こういうノイズはチャタリングとは言わず、ソフトで回避する方法は有りません。 最初にチェックした時よりノイズの幅は小さいですが、高さは同じくらいです。 エンコーダーの摺動面には、もうグリスはありません。やむなく、コンデンサを追加して波形をなまらす事にしました。

Kemren2Kemren1

左が、対策前、右がエンコーダーのA,B端子とGND間に0.47uFのコンデンサを追加したものです。 上昇の時しかコンデンサの効果は有りませんが、ノイズのパルスの高さがかなり抑えられました。これで、ゆっくり、あるいは高速でエンコーダーを回すと、時々動作しない事はありますが、アップダウンが逆になる事はなくなりました。

Renc

このエンコーダーの端子はマイコンの中で、抵抗によりプルアップされているようですが、プルアップ抵抗の値が小さすぎます。(このマイコンの内部プルアップ抵抗は1.5KΩ) マイコン内でのプルアップをやめ、外付けの10KΩくらいでプルアップした方が対策はしやすいのですが、プログラムの書き換えが必要になり対応できません。

左の回路図は、パナソニックが自社のエンコーダーをテストする時の回路ですが、この回路のコンデンサを0.01から0.047に変更した上で、ロタリーエンコーダーのA端子入力を外部割込みに指定してやると、アルプス製はほとんど問題なく動作します。 秋月の中国製はグリスをふき取らない限り改善しません。

完全な動作を望むなら、フォトインタラプターによる光学式エンコーダーにするしかありません。 この0.47μFを追加した状態でも誤動作が頻発するようになったら、パナソニックの回路の後にCMOSのバッファを入れてその出力をPICの入力端子に接続するつもりです。

QRP CW トランシーバー 5 へ続く

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QRP CW トランシーバー 3

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

Kemhaichi
内部の収納物が決まり、操作つまみや表示器などのサイズが確定したら、それを収納できる既成のケースを用意し、その中や側面に電気的に問題の無い形で物を配置し、かつ操作性を考えてコントロールつまみなどの位置を決めますが、この検討の為に、私は昔からエクセルを使ってきました。エクセルの図形処理はかなりラフなものですが、イメージを図示化するには、非常に簡単な作業でそこそこのシュミレーションが可能です。

今回もそれぞれの基板や部品のサイズを測り、エクセルの中でそれを並べて最適位置を決めました。

このイメージをベースにJW CADで図面化し、その図面を実寸大で印刷したあと、ケースに貼り付け、ケースの加工を行います。この手法で、ほぼエクセルでシュミレーションした通りの部品配置が可能になります。

Kemcs1 Kemcs2

最終的に配線を完了させると、結構様になったケース入り完成品が出来上がりました。

Kemcs4_2 Kemcs6_2

Kemcs5_2

もの作りの一番楽しい時期です。

完成度が上がってくると、気になる部分も出てきます。CWのモニター音が途中でブツッと途切れます。一瞬、キー操作を誤ったと思うのですが、出ているキャリアは問題ありません。モニター音だけのバグみたいです。良く観察すると、10秒間に1回、現在の設定内容をEEPROMに退避させていますが、これに同期して出ているようです。メールでバグ報告はしておきましたが、修正版はまだ未確認です。

QRP CW トランシーバー 4 へ続く

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QRP CW トランシーバー 2

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

5WのパワーアンプをKEMのトランシーバーでドライブできるように配線し終え、キャリアーを連続送信しても最大で2Wくらいしか出力がありません。KEMの0.5Wパワーアンプの出力インピーダンスは50Ωのはずですから、TS-930からのドライブのときと同じと考えましたが、考察に抜けがありました。前回の実験では、50Ωのダミー抵抗があって、その両端から5Wパワーアンプへ供給していましたが、今回はダミー抵抗が有りません。

それに気づいて50Ωの抵抗で信号ラインをダンプしてやると、6Wの出力が出るようになりました。 ただし、6Wでは大きすぎますので、5Wになるよう100Ωに定数変更し、かつ0.5Wに切り替えられるように、リレーを使い5Wパワーアンプをスルーできる様にしました。

ダミー抵抗をつないで、連続キャリア送信テストも完了し、つぎにCWでの送信テストをやっているうちに、モニターで聞いているTS-930の受信音に気になる音が出ます。CWのキーイングが終わった直後、バサバサと言った感じのノイズがほんの少しの時間ですが聞こえます。

送信出力の波形をオシロでモニターすると、CWの7MHzのキャリアが途切れたあと、信号がゼロにならず、一瞬かなり低い周波数の信号が残って、すぐにゼロになります。不信に思いスペアナを接続してみましたら、7MHzのキャリアが途切れたとたん、基本波が約1MHzくらいの不要輻射が発生していました。しかもかなり汚い波形らしく高調波が10MHz付近まで見えます。

良く調べると、これは0.5Wアンプの異常発振でした。CWのキャリアーが無くなってもセミブレークインの為に、0.3秒間くらい送信状態を維持します。この0.3秒間の間に1MHz付近で異常発振しているものでした。KEMの説明書の中に、必ずダミー抵抗をつなぐか、実際のアンテナをつないでくださいというコメントがあります。要は、無負荷や設計された以上の軽い負荷をつなぐと発振しますよ、ということです。今回、5Wのアンプを接続しましたので、発振しやすくなったのでしょう。とりあえず、オリジナルの0.5Wパワーアンプのコレクタ側チョークコイルにダンプ抵抗を入れてゲインを下げ発振を阻止しました。

発振対策として、ダンプ抵抗はあまりにも芸が無いので、負帰還をかけたり、アッテネーター回路の定数を変えたりして、発振対策を行い、うまくいってましたが、温度が下がると異常発振が再発してしまいました。面倒なので、チョークコイルのQダンプを継続する事に。 この方法なら温度変化があっても安定して動作します。

また、受信状態でも、5Wのパワーアンプは生きている訳ですが、時々、受信状態のとき発振し、受信音がビートだらけになります。対策として、コレクタからベースへ、CRによる負帰還をかけています。

最終的な出力は

  • VCC 12V     5W     /      0.5W
  • VCC 10V     4W     /      0.4W
  • VCC   8V     3.2W  /      0.26W
  • VCC   7V     2.4W  /      0.2W
  • VCC   6V     1.6W  /      0.12W

QRPモードもQRPPモードもパワーアンプ以外は5Vの安定化電源ですから、パワーはダウンしますが、6Vまで使う事ができます。

ここで、電池によるパワーの差をレポートします。

12V DC電源では5W出ています。

8個で、800円の単3アルカリ電池を買ってきて、テストしました。受信状態での電圧は12.8Vあります。 送信すると、11.8Vになりましたが、かろうじて5W出ていました。しばらくCQなどを出して、10分経過したら11Vまで電圧が下がり4.5Wくらいしか出ません。

次に、6個で105円という単3アルカリ電池を買ってきました。受信時の電圧は13.2Vです。これはすごい! しかし、送信したら、10.2Vになりました。 え? とVVVを10回くらい送信したら9.6Vになりました。約10分後には9Vになりました。100円ショップの電池では、例え新品でも5Wは出ませんでした。

2015年2月:最近は12Vのリチウムイオン電池を使っています。電動釣竿用の電池なので、数回の移動運用でも、電池の心配をする事がなくなりました。

 

バラック状態での検討がほぼ完了しましたので、次はマニュアルアンテナチューナーを実装します。回路はL型です。コイルは連続可変できませんので、12接点のロータリーSWを用意し、トロイダルコアに18ターン巻いたコイルから12個のタップを出し、これをSWでショートすることにしました。バリコンは250PFくらいのポリバリコンです。SWRの検出は抵抗ブリッジ方式として、ブリッジの不平衡電流のみをバッテリーチェッカー用の小さなメーターで見る方式としました。  アンテナチューナーは3mくらいから20mくらいまでのロングワイヤーに無理なく整合させることができます。

Kemmtu1a_2 Kemmtu2_2

トロイダルコアに巻き込んだコイルのQが全く使いものにならないくらい低い事がわかりました。 現在は、空芯コイルに変更しています。詳しくは、「QRP用アンテナチューナーの内部ロス改善」を参照して下さい。

オリジナルの回路はイヤホーン出力しかありません。これをスピーカーでも聞けるようにオーディオパワーアンプを追加することにしました。材料は粗大ごみ入れに捨ててあったPC用のスピーカーシステム。パワーアンプもスピーカーも付いていますので、スピーカーとアンプ基板を取り出し、いとも簡単にオーディオアンプが出来上がりました。

Kemaudio1_2  この状態でCWの送信を5Wで行うと、モニター音はキークリックだらけです。音量ボリュームを絞っても出ています。パワーアンプの入力部にシリーズに1KΩとICの+/-入力間に1000PFを追加する事にしました。 最初、アキシャル抵抗とラジアルコンデンサで対応したのですが、効果は有るものの、十分では有りません。 チップ抵抗とチップコンデンサに変更し、かつICのピンのすぐそばに配置したら、音量ボリュームを絞ると聞こえなくなりました。 音量ボリュームを上げたときの対策として、送信時には受信音声系をトランジスタでミューティングすることにしました。 また、トーンボリュームや音量ボリュームの配線をすべてシールド線で行った結果、クリック音は発生しなくなりました。  また、CWのモニター音のクリック音も、全く気にならないくらいに改善しました。

とかく、キークリック音のあるCWは聞いていて疲れますので、これで安心です。

Kem5wmod1_2 借用していたタケダ理研のアナログ式スペアナを返却し、代わりにアドバンテストのデジタル式スペアナを借用したついでに、高調波を調べてみると、今まで-60dB以下はノイズに埋もれて見えませんでしたが、デジタル式のこのスペアナは-70dBまで見る事ができます。そして第4次高調波以上が予想以上に多い事に気付きました。原因を調べると、トランジスタのベース電流が歪んで、その影響が0.5Wのアンプのタンク回路まで及び、ここで高次のリンギングが発生しているものでした。

色々と検討した結果、ベース回路に同調回路を置き、かつインピーダンス変換できるトランス式に変更すると、2次、3次は-63dBくらい、4次は-68dBくらいですが、5次以上の高調波は-70dB以下に収まりました。(回路図修正済み)

5W QRPトランシーバーの回路図をダウンロード

TSS保障認定用送信機系統図をダウンロード

一応、トランシーバーとして必要な回路部材がそろいましたので、これを移動運用にも耐えるようにケースへ収納することにします。

QRP CW トランシーバー 3 へ続く

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QRP CW トランシーバー 1

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

車で行けないような山でも、リュックサックに詰め込んで運べる乾電池で動作するQRPトランシーバーを探していましたら、「貴田電子設計」という会社がQRPPのキットを販売している情報を入手し、さっそく注文して組み立て開始しました。(2010年の製品で現在は見当たりません)

Kemmain キットの商品名は「KEM-TRX7-LITE」というもので0.5Wの出力の7MHzオンリーのCWトランシーバーです。このキットは良く出来ていまして、説明書通り作ったら、すぐにQRPPの交信が出来てしまうほど、完成度の高いものです。バラックのままで、しばらく交信を楽しんでおりましたが、さすがに0.5Wでは、コンディションの影響も大きく、ストレスが溜まります。そこで、せめてQRPと言える最大出力である5WまでQROすることにしました。

たかが、7MHzの5Wアンプと軽く考えていましたが、(昔、水平出力管による10Wのアンプで苦労したころに比べたら雲泥の差があります。) オリジナルの設計に加味されていない変更を行うと、なかなか思うようにいかず、オリジナルの設計内容まで対応が必要になり、かなり難儀しました。 

目標の仕様を設定します。

  • 出力は5Wと0.5Wの切り替え方式。
  • 電源は単3アルカリ電池 8本使用の12V。
  • 手動アンテナチューナー内蔵。
  • 受信音はスピーカー/イヤホーン両用。
  • 移動に使っても十分な強度が保てるケース入り。

Kempa11_2まずは、パワーアンプの検討から。電池仕様ですから、効率の良いC級アンプと決めて、回路例を探している内にE級アンプという、もっと効率の良いアンプがある事がわかりました。C級が65%くらいの効率なのに対してE級は85%くらいはいけるみたい。乾電池で動作させる場合、この効率が即連続運用可能時間につながりますので、内容も良く調べずにE級アンプに決定。インターネットでE級アンプを検索すると、私が設計するには十分過ぎる技術情報が得られました。E級アンプのカナメは負荷となるLCのフィルターですので、最初、このLを色々な資料がほとんど採用しているトロイダルコアで作ることにしました。

Kem5wpa ところが、参考資料として提示されているインダクタンスやキャパシタンスになるように設定してもパワーはなかなか出ません。効率も50%以下。指定された型名のコアを使っていない事が原因なのでしょうが、うまくいきません。ジタバタしている内に、コアを使わなくても空芯コイルで実現できることがわかりました。MMANAでコイルの直径や巻き数を求め、エナメル線をPPシートを丸めたボビンに巻き込み、瞬間接着剤で固めてしまいます。Lが大きかったら解き、小さかったら作りなおして、調整すると、6Wの出力が出るようになりました。 無理すると7Wくらいでます。効率は能書き通りにはいかず6W出力で70%くらいです。 コレクターの電流波形は、E級アンプの技術資料に出てくる通りの波形をしていますので、曲りなりにもE級アンプとして動作しているのでしょう。 スペアナで高調波を調べたら-60dBくらいのノイズフロアーに隠れて見えません。 多分LCの組み合わせを最良にもっていけば80%くらいの効率も可能かも知れませんが、とりあえずこれで良しとしました。

スペアナを交換したら、-60dB以下のレベルも見れるようになりましたので、5Wアンプの入力部分を設計変更しました。添付配線図やアンプの画像は変更後の回路に差し替えてあります。

これまでの検討はTS-930SをTUNEモードにしてダミー抵抗に0.5Wくらいの出力を消費させ、これを信号源として使っていました。 いよいよ、KEMのトランシーバーへ組み込み作業です。

QRP CW トランシーバー 2 へ続く

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