2014年7月31日 (木)

バリコン式ATUの自作 2

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

TS-930Sに内臓されていた時のATUの動きは、バンド切り替えに応じ、コイルが選択された後、キャリアーを送信しながら、VC1とVC2を同時に回転させ、SWRが設定された値以下になったら、そのVCの位置からサーボが働き、SWR最少状態に収束させるものでした。 VC1とVC2が同じ回転速度で回転したのでは、いつまで経っても、VC1とVC2の比は変わりませんから、VC1側をVC2より遅く回転させ、時間によって、VC1とVC2の比が変わるようにしていました。  今回製作するATUも同じようなアルゴリズムでSWR最少状態を実現させますが、サーボが開始されるSWR値を高くして、整合可能範囲の拡大を行います。 TS-930Sの場合、SWR2以下を検出しないと、サーボは動作しなかったような。

ATUの出力に50Ωのダミー抵抗を接続し検討します。一応、アンテナのバラツキの中心は50Ωの純抵抗ですから、ダミー抵抗を整合させられるVCの容量とコイルのインダクタンスが、その整合状態の中心となり、これを、どれだけ可変できるかで整合可能インピーダンスの範囲が決まります。

まずは、VC1とVC2の回転速度差をどのように選んだら最短でサーボが動作開始するかを実験してみました。  VC2を12Vで回転させ、VC1を10Vくらいから3Vくらいまで連続可変し、最適な回転速度比を見つける事にしました。 結論はVC1を遅くするほど確実にSWRのディップポイントが発生する事が判りましたが、遅くなるほど、ディップポイントが発生する時間間隔は長くなります。この時間が長いと言う事は、整合状態になるまでの時間が長いという事に他なりません。 また、VC1の回転を速くすると、ディップポイントの出現間隔も短くなりますが、トレースが粗くなりますので、デイップポイントを見逃す頻度も高くなります。  

TS-930Sの場合、VC2よりVC1は半分くらいの回転速度だったような記憶ですが、もう動作しませんので確認のしようが有りません。 とりあえず、実験ではVC1駆動モーターの電圧を4.5Vとして、以後の検討をする事にします。現在は夏なので、冬の屋外で、モーターが起動するか?という不安もありますが、その問題は冬場に対策する事にします。

モーターの回転比を決めたところで、各ハムバンドにおける最適コイルタップ位置を選択する事にしました。 下の画像は、3.5MHzと29.5MHzの時の、Vref電圧の変化をデジタルオシロで記録したものです。時間軸は5秒/DEVです。またSWR=1,3,5の位置を赤線で示しました。29.5MHz時、高周波が重畳しているのはオシロのプローグが送信出力をピックアップしているもので、Vref自身はきれいな直流です。 

Atutap1 同じようにして、3.5MHzから29MHzまでの全バンドを測定した結果は次のようになりました。

Atutap0_3

SWR5以下の検出時間間隔というのは、SWR5以上になった後、次にSWR5以下になるまでの時間の事であり、チューニング動作を開始したら、最低この時間はモーターを回し続けなければならないと言う事になります。 3.5MHzのとき、この時間は13秒になりました。逆に言えば、13秒経っても、SWR5以下が得られない場合、そのアンテナは整合不可と言う事になります。

この13秒は最悪値ですから、実際はこの半分くらいの時間で、サーボ動作に移れると考えています。

Atucoild

コイルのタップ番号は当初の予想とは大きくずれました。 3.5MHzから29MHzまでをカバーするつもりですから、コイルは1個でよく、かつタップの数も9個で良いと言う事になりました。最終的に小さいサイズに収める為には、リレーも9個で済む事はメリットとなります。 評価ボードのコイルも1個に変更しました。リレーは実装されていますが、配線は削除しました。

改造などをやっている内に、LCDが壊れてしまいました。間違って、LCDのGNDに+12Vを接続してしまい、LCD内部のDC/DCが壊れ昇圧しなくなりました。

交換の為に手配したLCDが入手できたので、今度はSMT用ユニバーサル基板に実装する事にしました。ところが、このNEW LCDも表示しません。 調べたら、1-2番pinと3-4番pinがそれぞれショートしていました。ここのショート箇所を直しましたが、時すでに遅し。またもや内部のDC/DCが壊れてしまいました。 

Atulcd2

気を取り直して、予備で手配しておいたLCDに交換です。今度は、ハンダ付けする度にテスターで導通テストを行い、祈りながら通電しましたら、ちゃんと動作するようになりました。 もし、このLCDをお使いになりたい時は、秋月に変換基板がありますので、それを利用されることを強く推奨します。LCD本体より変換基板の方が高いのですが、いまやっと、その価値を理解しました。写真は壊れた2個のLCDとなんとか動いた3個目のLCDです。

また、トラブルが発生しました。このLCDは、ベランダに設置したATUの基板に貼り付けてあったのですが、表示が出なくなりました。結局、ATUの自作 : LCD交換 で紹介のごとく使用を中止しました。

バリコン式ATUの自作 3 に続く。

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2014年7月26日 (土)

バリコン式ATUの自作 1

LDGや東京ハイパワーのATUを使ってみましたが、その整合可能範囲はMTUのNT-636と比較した場合、比較にならない程狭いものでした。 この為、現在はバンド専用にプリセットされたMTUを使用していますが、雨で整合状態がずれた時など、手元のNT-636に切り替えていました。  しかし、手元のMTUは長い同調フィーダーを使用する関係で、打ち上げ角が高くなったり、外来ノイズを目いっぱい拾ったりで、どうしてもと言う時以外は使用していませんでした。

最近時間が取れるようになりましたので、NT-636並みの整合能力があるATUを目指して、ATUを試作する事にしました。 (ATUの自作ではなくバリコンの自作の場合、こちらを参照下さい)

Atu_ts930

アンテナチューナーの方式をNT-636と同じとすると、バリコン2個、コイル1個を使用したハイパスT型となりますが、ちょうど、物置に、TS-930Sから取り外したATUが有り、このATUの中に、モータードライブのMax250PFのバリコンが2個ついています。このATUからバリコンのみ抜き取り、コイル切り替えをリレーで行えば、NT-636とほぼ同等のATUができそうです。 ただし、バリコンの角度を電気的に知る方法は有りません。バリコンの回転角をギアを使い、可変抵抗器へ連結し、その分電圧を読むことで、バリコンの角度を得る事ができます。 バリコン駆動のシャフト径は3mmで、これに合うギアや可変抵抗器が通販されている事が判り、ギアボックスを自作したら実現しそうですが、かなり難易度の高い工作が必要です。 よって、もともと、TS-930Sはバリコンの角度センサーなしで動作していましたので、まず最初は可変抵抗器なしで実験する事にしました。

ATUはCM結合器、周波数カウンター、モータードライブのバリコン、コイルのタップ切り替え回路を持ったT型アンテナチューナーで構成されますが、これらを制御する回路はマイコンに頼る必要があります。 マイコンの開発は、開発用のボードを作り、これが構想通りうまく動作するように、まずソフトを開発する事になります。 ソフトが完成したらハードを実用サイズに作り直します。

Atupcb

そこで、蛇の目基板にマイコンを実装し、基本動作に必要なソフトを開発する事にしました。

使うマイコンはPIC16F1939です。 ATUとしては測定した周波数や、SWR値をユーザーが知る必要はないのですが、マイコン開発となると、話は別で、測定した周波数やSWRが見えるようにLCDディスプレーを追加します。

LCDはAQM0802Aという品名で秋月で320円で売っている8文字2行表示のものです。必要に応じて、内部データをLCDに表示させデバッグに使います。 このLCDのピンピッチが1.5mmと特殊で実装に難儀しました。後で判ったのですが、このLCD用のピッチ変換基板が同時に売られているようです。

Atulcd_2

I2Cシリアルラインを使った、このLCD用のPICソフトはインターネット上に公開されています。 このソフトを16F1939用に書き換えて使いますが、なかなか表示がでません。  LCDへ渡すデータがコマンドかデータかの識別コードを最初に送りますが、この識別コードが間違っていると判るまで数日かかりました。   コマンドの時は0x00、データの時は0x40を送ると正しく表示します。

 左の画像は周波数カウンターの結果を表示させたものです。カウンター精度は+/-10KHzくらいでも実用になるのですが、このマイコンは30MHzくらいの外部入力でもカウントしてくれるので、プリスケーラーなしで1mSecのゲート時間にすれば、1KHz単位のカウンターが簡単に実現できます。

TIMER1の16bitでカウント動作をさせ、TIMER0で1mSecのゲート時間を作ります。FOSCが10MHzですから、内部の動作クロックはFOSCの1/4となり、ゲート時間の最少分解能は0.4uSecとなります。 30MHzの入力の場合、カウントは12KHzごとになりますので、全割込み禁止にした上でNOP命令を使いゲート時間を正確に1mSecにしようとしますが、  +/-4KHzまでが限度でした。 これ以上は、10MHzの水晶発振器の発振周波数をトリーマーで微調整し、29MHzで誤差+/-1KHz以下に追い込みます。 ただし、そこまでやるのにまた数日要しました。

Ldgcmc

CM結合器はメーターが壊れて使えなくなったSWR計に使われていたCM結合器を改造して使う事にしました。ATUの中に内臓されたCM結合器はかなりいい加減なものが多く、基板に寝かしたトロイダルコアの中心に1本の裸線を通し、これでSWRの監視を行っているのが普通です。左の画像はLDGのATUの中に内臓されているCM結合器です。 

SWR計に使うようなりっぱなCM結合器をATUで使うことはもったいないのですが、ほかに使い道が無いので、これを利用する事にしました。 ちなみに、この壊れたSWRメーターのメーター部分はすでにCメーターに流用しましたので、SWR計としての再利用はあり得ません。

SWRは1.05などのように小数点以下2桁くらいまでを読む必要がありますので、マイコンのデータ様式をfloat(浮動小数点数型)にし、プログラムをそのように書きましたが、コンパイルエラーになります。よくよく調べるとマイクロチップが無償で提供している HI-TECH C のコンパイラーの中には、floatデータをASCII文字に変換する機能は同梱されていない事がわかりました。 

また、PICでfloatデータを使うと、大量のメモリーを消費し、RAM領域の不足が心配されるし、スピードもかなり遅くなるようです。 SWRの計算はCM結合器で検出したDC電圧をADコンバーターでデジタル化した後、下記のように計算されますが、

Atuswr0

分母で割る前に分子を100倍しておけば、SWR1.05はSWR105として表せますので、すべて整数計算で小数点以下2桁までの計算ができます。 (後日、プロの方にお伺いしましたら、当たり前の処置でその方はすでに1000倍したデータで記述していました。) ただし、long int型のデータを使っていても、大きなSWR値になるとオーバーフローしますので、計算する前にVfwdとVrefをチェックし、SWR値が90を超えるようなら計算せずに一律SWR=90と定義してしまうなどの小細工は必要です。

Atucmc 壊れたSWR計から取り外したCM結合器。 アンテナへつながるストリップラインをカッターでカットし、その間にT型チューナーをつなぎました。

TS-930S用ATUからバリコンとギアボックスのみを取り出し、実装しました。

Atuvc1

コイルはメーカー製アンテナチューナーについていたもので、外径30mmのボビンに1mmの銅線を1mmピッチで25ターン巻いて有ります。これを2個直列接続し、10個のタップをそれぞれ5000V耐圧のリレーに接続します。リレーの接点も2回路を直列に接続し、耐圧を確保します。 開発完了し、小型のケースに収納する場合は、VU40くらいの塩ビパイプに1mmの銅線を巻いて1個のコイルで済ませる予定ですが、開発ボードは、自作の手間を省きました。

Atucoil

Atupcb1

マイコン基板の銅箔面には、全部のチップ部品が実装されています。 CM結合器からのDC電圧を直接マイコンに加えると、誘導雷があった時、マイコンのi/oが壊れる可能性が高い為、ゲイン0dBのOP-AMPによるバッファーを介して、マイコンのAD入力に加えます。

このOP-AMPはグランドセンスタイプになりますが、一般に使われるLM358相当品の場合、出力電圧の最大値は電源電圧より1.5Vくらい低くなります。VCCが5Vですから、マイコンのAD入力には最大で3.5Vしか加わらなく、Dレンジが狭くなってしまいます。これを防ぐ為に、OP-AMPだけVCCを 6.5Vで動作させた事が過去ありましたが、今回は、ちょうど手元に、最大出力電圧がVCCより20mVくらいしかダウンしないというOP-AMP MCP6402が有りましたので、これを実装する事にしました。しかし、このOP-AMPのピンピッチは1.27mmで蛇の目基板と合いません。やむなく、廃棄予定の基板から1.27mmピッチのICパターンを切り取り、その部分にOP-AMPの回路を実装しました。  

モータードライブは秋月で見つけた東芝のTA7291PというICを使用します。このICはメカコン用に必要なすべての動作モードに対応していて、外付け部品が非常に少なくなっています。ディスクリートで作るよりかなり安くできます。マイコンのi/oをon/offして動作テストだけはOKです。

ソフト開発が進むにつれ、ハードの変更は付き物ですから、基板にもかなりの空き領域を確保しました。

全体構造は以下のようになりました。 これは評価ボードですので、完成したあかつきには、もう少し小さく作る必要がありそうです。

Atutestbord

見た目は出来上がったように見えますが、マイコンはLCD表示ができるくらいで何もアクションしません。 本来必要なマイコン動作仕様書は無く、整合状態に追い込む為のアルゴリズムも存在しません。全部、いちから試しては、やり直しの繰り返しになりそうです。 

一応全体の回路図を添付しておきます。VC式ATU配線図をダウンロード

いつ完成することやら。

バリコン式ATUの自作 2 に続く

 

2024年7月

Mark2の開発を始めました。

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2014年7月14日 (月)

クリエートデザインRC5A-3の修理

<カテゴリ:ローテーター>

東広島も7月は落雷が多く、今年もプリセットMTUの制御回路が誘導雷により被害を受けました。 

Rc5a3front

同じ時期に誘導雷でローテーターが壊れたと、修理を頼まれました。単純な修理なら、ブログで紹介するまでも無いのですが、今回のクリエートデザイン製RC5A-3の配線図に誤りがあり、修理に時間がかかってしまいましたので、同じテツを踏まない為、紹介する事にしました。

このローテーターの配線図は取説の中に印刷されています。これは簡単だと思ったのは最初だけで、プリント基板にシルク印刷が無く、配線図と現物の対比が難しくなっています。 壊れた部品を特定し、手持ちがなければ、それを通販で発注する事になりますので、まず最初は壊れた部品探しになります。

U1の4558はプラスチックカバーが吹き飛んで、中のICチップがむき出しですので、これは間違いなく壊れています。U2の4558はスピード制御に使われいますが、電圧をチェックしても配線図に記入された参考値の電圧とはかけ離れています。このOP-AMPも壊れたのだろうと、ICを取り外すし再度電圧チェックをしても、配線図を追いかけて得られる推定電圧にはなりません。 回路図と実際が違うのではと、基板をカメラで撮影し、それに実装部品を並べて確認していく事にしました。

Rc5a3pcb

実体配線図を途中まで作成した時点で、配線図の間違いが判りました。 ダイオードCR6とCR7の交点とU2Bの7番ピンは接続されていました。配線図上で交点を示す黒丸が抜けていたものです。ここがつながっているとすると、U2Bを取り外した後のDC電圧はすべて計算通りの電圧になります。 要はU2Bが壊れている事に他ならないのですが。

それ以外に壊れていた部品はQ2の2SA1015、Q4の2SC1815でしたので、手持ちの部品でまかなうとして、4558のみが通販手配となりました。

このローテーターの動力回路のコモンラインは商用電源と直結しています。修理の最中にうっかり1次側をさわり感電しました。背面の1番~3番端子に触れたら感電します。ローテーターまでこのコモンラインはつながっていますので、要注意です。 多分電安法は不合格と思います。 PSEマークの有無の確認を忘れました。 例え電安法対象外製品でも感電は無いですよね。 安全規格をどう思っているんでしょうかね。 

RC5A-3の配線図をダウンロード

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2014年7月 5日 (土)

50MHz用 L型アンテナチューナー

<カテゴリアンテナチューナー

今までの50MHzアンテナは、ヘンテナと同調フィーダー及びインピーダンス変換トランスによる整合システムで運用していました。 6m & ダウンコンテストが今晩から始まるという事で、久しぶりにこの整合トランスをチェックしてみました。 すると、設置してからすでに5年経過している事もあり、ケースのタッパーはぼろぼろ、内部の絶縁テープははげかかっています。 タッパーを交換する為に、トランス部分を取り出しましたので、ついでにトランスのSWRと内部ロスを測って見る事にしました。

アンテナの代わりに75Ωのダミー抵抗を接続すると、案の定、3.5MHzではSWR1.05くらいですが、50MHzではSWR5を超えます。トランスが誘導性リアクタンスを持っていますので、バリコンを直列に接続し、このリアクタンスをキャンセルさせた場合、ちょうど20PFでSWR1.0になります。  実際の整合は同調フィーダーの長さを調整して、このリアクタンスをキャンセルさせていますので、特に問題は有りません。

次に内部ロスを実測しました。すると、47%のロスがある事が判りました。使っているコアの素成が不明な為、多分、コアによるロスと思われます。  100W送信しても、アンテナには半分しか供給されないという事が判り、 コンテストの始まる前になんとかせねばなりません。

50MHzでもロスの少ないコアに交換するしかありませんが、手持ちは有りません。 時間が無いのでアンテナチューナーを緊急で作る事にしました。

6mmtuschema_2

固定局で使うアンテナである事と、チューナーの設置場所が、いつでも再調整可能なベランダという事で、コイル1個、バリコン1個によるローパスL型チューナーで作る事にします。L型チューナーの場合、コイルも可変できないと、チューニングがうまくいきませんが、6m用コイルの場合、空芯自立コイルですので、コイルのピッチを調整することで可変できます。

ジャンク箱の中からMAX 50PFのバリコンを探しだし、1mmの銅線を指に巻きつけてコイルを作り、空中配線でアンテナチューナーを作って、アンテナアナライザーで確認すると、SWR1.2くらいまで簡単に調整できます。 なんとかなりそうなので、これまたジャンク箱の中から出てきた、プラスチックケースを加工し、1時間でアンテナチューナーが完成しました。 コイルを伸ばしたり、縮めたりして、都度バリコンでSWR最少にする事を繰り返えす事により、50.3MHzでのSWRを1.05まで追い込む事ができました。

6mmtu1_2

6mmtu2_2

 

左上がローパスL型アンテナチューナーの内部、右上がコカコーラのペットボトルをかぶせた防水状態です。

このアンテナチューナーに接続される同軸ケーブルには、チューナーのすぐそばに3.5MHzから144MHzまで十分効果のあるコモンモードチョークが挿入されていますので、専用のバランは挿入していません。  このL型チューナーの内部ロスは2%くらいです。 このバンドの場合、EスポによるQSOは、あまりパワーによる依存性はありませんが、グランドウウェーブの場合、聞こえるけど届かないという場面で効果が期待できそうです。

HFのアンテナチューナーやバリコンの自作はこちらに製作例が有ります。

HFのATU(オートアンテナチューナー)の自作例はこちらに有ります。

2016年9月追記

6mhentena160913

HFのスカイドアアンテナと6mのヘンテナの下部水平エレメントがグラスファイバーロッドに一緒に束ねられ、これがエレメント間の干渉をおこし、パワーでHFの同調周波数がずれるという問題がありましたので、左の写真のように、ヘンテナの下部水平エレメントをスカイドアエレメントより10cmほど離す改造を行いました。

この状態で、L型アンテナチューナーを使い整合させていましたが、使用しているトリカルネットの同調フィーダーがボロボロになってしまいましたので、これを作り替えました。 その結果、L型チューナーでカバーできる整合範囲を超えてしまいましたので、L型チューナーも改造する事にしました。

しかし、この変更したヘンテナと作り直した同調フィーダーの根本に直接アンテナアナライザーを接続し調べてみたら、51.5MHzくらいでSWR1.2くらいを示します。 従来75Ωくらいだったヘンテナのインピーダンスが、改造で60Ω以下まで下がったようです。

という事は、コイルもバリコンも不要で、同調フィーダーの長さを変えて、共振周波数のみ50.4MHz付近に合わせこめば、チューナーは不要になります。

6mmtu160913_2

6mfeeder160913_2

6mnomtu

左上は、コイルとバリコンを取り去り、実験的に長さを決めた2本のワイヤーを BOXの中に押し込んだ状態です。この後、BOXにアルミのカバーをビス止めしましたら、共振周波数が49.7MHzくらいになってしまいましたので、同調フィーダーを一部折り返し、見かけ上短くしたのが真ん中です。 そして、この状態でのSWR特性は右上のごとく、50.39MHz付近でSWR最低の1.17くらいになりました。 LCを使わないので、その分だけSWR1.5以下の帯域幅が広くなっています。

 

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2014年6月20日 (金)

エレキー回路の自作(PIC12F675)

 

<カテゴリ: PICマイコン >

再開局したころから、オートアンテナチューナー(ATU)を模索し、これを自作しようともくろみましたが、挫折が多くて今だに手づかずの状態です。 ここにきて、再度ATUの自作に挑戦しようと思いますが、ATUはそのコントローラーをマイクロコンピューター(マイコン)で作る必要が有り、マイコン開発は避けて通れない状況です。 現役時代はマイコン屋に仕様書を出して、バグを見つけては、ソフト屋をいじめるのが仕事でしたので、自らマイコンソフトを開発した事はありませんでした。 そこで、インターネットでも情報の多いPICマイコンの勉強を始める事にしました。

ハムがマイコンのソフト開発を勉強しようと思えば、最初の教材は、「エレキー」と相場が決まっています。 以下見よう見まねで作ったエレキー回路を紹介します。 なお、ソースファイルは、あまりにも恥ずかしくて公開する自信はありませんでしたが、かなりの方がこの記事にアクセスいただいておりますので、未熟ながら記事の最後の行でダウンロードできるようにしました。

Pickit3_2

使用するマイコンは、開発事例の多い「PIC12F675」とします。秋月で80円で売っていました。 開発環境はMPLAB IDEとHI-TECH Cそれに書き込みアダプターPICkit3です。 書き込みアダプター以外は無償アプリです。

まず、この開発環境構築でトラブリました。メインで使用しているPCはWindows7 64bitバージョンですが、アプリをインストールしてPICkit3を接続してもPICkit3がコネクト状態になりません。USBドライバーがうまくインストールされないようです。Helpをたよりにインターネットで調べていくと、Windows7の64bit版はトラブルらしく、わざわざ解決方法が絵入りで説明されていましたが、私のPCの表示とは一致しません。1日、ああでもないこうでも無いといじったあげく、64bit版を諦めて、Windows XP 32bit版に開発環境を構築する事にしました。インストールが完了し、PICkit3をつなぐと、簡単に認識され、かつファームウェーアーのアップデートを行うということで「OK」をクリックすると、アップデートされ、かつこのPICkit3が正常につながったとコメントがでました。 試に、このファームウェーアーをアップデートしたPICkit3を64bit版のPCにつないでみましたら、こちらも正常に動作するようになりました。  結局、マイクロチップが公式に言っている64bit PCによる不具合ではなく、自社のファームウェーアーにバグが有ったようですね。

やっとPICの開発の勉強ができる環境が整いましたので、PIC12F675の英文データシートとグーグル翻訳を駆使して、ハードの設計を行いました。グーグル翻訳の日本語はほとんど意味が判りません。翻訳された日本語文の中から、判らない単語のみピックアップして、後は英語の原文で理解するのが早いですね。

Elekey675

 上が、このエレキーの全回路図です。 ドットとダッシュの入力端子はマイコンの中の約20KΩの抵抗でプルアップしてあります。送信機に接続されるキー出力はN-MOS FETのオープンドレインとして可能な限り消費電流を減らしました。 また、キーイングのスピード調整は10KΩの可変抵抗で分圧された電圧をマイコンのA/Dコンバーターで読み込み連続可変できるようにし、かつこの可変抵抗器に加える電圧もマーク信号の時だけ加える事により電流を押さえます。 A/Dコンバーターへの信号源出力インピーダンスは10KΩ以下が推奨されていますので、可変抵抗器は20KΩでもOKですが、手持ちが無かったので10KΩとなっています。また、方形波ですが760Hzのサイドトーン信号も出力しています。このサイドトーン信号を実際に使う時は、この端子の後に2段くらいのCRフィルターを設けて高調波を少なくすると聞きやすい音になります。 電源は乾電池3本の4.5Vを想定しています。 CNP1のコネクターはPICkit3を接続する端子で、開発が終われば不要になります。

省電力の配慮をしたのに、SLEEPモード時の消費電流は360μAもあります。乾電池につなぎっぱなしで液漏れせずに使用できる消費電流は、過去の経験から140μAまではOKでしたが、メーカーの判らない100円ショップの電池でも安心していられるのは50μAくらいまでです。SLEEPモードにはいる手順が悪いのか、初期設定が悪いのかと、変更、コンパイル、確認を10数回も繰り返しましたが、一向に改善しません。 もしかしたら、ICが不良品?と予備のマイコンと交換したら、あっさりと直ってしまいました。 動作はすべて正常なのに、SLEEP状態の電流が多いという現象に遭遇しましたら、まず最初にマイコンチップを疑った方が早く解決できそうです。 ICは最初からの不良品ではなく、私が壊したと思われます。なぜなら、一度ラッチアップさせ、マイコンがアッチッチになった事がありましたので。

Elekey675b

最終的な消費電流は以下のようになりました。

マーク出力状態  1.4mA

スタンバイ状態   0.78mA

スリープ状態       1μA以下

マーク信号の出力が終わってから、約3秒後にスリープ状態へ移行します。

左の画像はスタンバイ状態での消費電流を測定したものですが、スリープ状態では、テスターの針はほとんどゼロを指します。 開発ボードにはLEDも見えますが、実際は使っていません。

一応完成したので、キーイングすると、今までのCK-100Aに比べて非常に打ちにくく、さらに時々スリープモードから復帰しません。 CWの短点はコンテストの時など40m秒くらいの長さしかなく、時には35m秒くらいの速さになる事もありますので、通常のチャタリング吸収手法は使えず、とりあえずチャタリング対策なしで設計していました。 キーを自作のキーに変えると、さほど気にならないのですが、GHDのキーにすると、打ちにくさが目立ちます。 そこでGHDキーのチャタリング波形をチェックしてみました。

Elekey675c

左の画像はGHDキーでキーダウンしたときのマイコンのGP4端子の波形です。一応1KΩと0.01μFのフィルターは入っていますがノイズを押さえる効果があっても、チャタリングの吸収は出来ておりません。  チャタリング吸収の為に、通常20~30m秒かけて、入力変化があったと判定させますが、この期間は次の入力を受け付けない訳で、短点、長点メモリーというエレキーには欠かせない機能が制限を受けます。 従い、このキーを受け付けない期間は出来るだけ短くする必要があります。 この為、タイマー0を使ったKey入力の状態チェックは約4m秒くらいで行っていました。 GHDキーのチャタリングを、デジタルストレージオシロで十数回測定した結果、上の画像が一番ひどいチャタリングで幅は5m秒くらいあります。 その為、チャタリング発生中に次のキー状態をチェックする事になり、多重割り込みが発生したり、キー入力を誤判定していたものでした。

キーのチャタリングで5m秒はかなり優秀な方で、手入れが悪いと、10m秒くらいになる事もあります。 よって余裕をみて、タイマー0で割込みが発生してから、約15m秒は次の割込みを禁止し、短点、長点メモリーも機能している事を確かめて、とりあえず逃げました。

ソフト屋からみると、かなり低レベルの部分でトラブりましたが、とりあえず勉強になりました。

しばらく使っていましたが、どうもしっくりいかないので、キー入力のチェック間隔を約16m秒にした上で、割り込み処理中にあった15m秒の割り込み禁止期間は廃止し、かつ長点の長さを従来の3短点から3.3短点に変更しました。 これで、28ワード/分のコンテストスピードでも違和感なく打電できるようになりました。

エレキー用HEXファイルをダウンロード

HEXファイルは説明なしで更新しております。気になる方は最新のファイルをご利用ください。

Eleky675d_2

Elekey675case_2

出来上がったエレーキーは、小さな透明ケースに収納し、FT-450を使った移動運用時に持っていくことにしました。 50MHz 50W運用で時々誤動作がおこりますので、キー出力ラインにLCのフィルターを追加してあります。 LもCもジャンク箱から最初に掴んだものを取り付けましたので、定数は吟味しておりません。

ワンチップマイコンでは無く、プログラムの不要なICによるエレキーの製作はエレキー回路の追加 で紹介しております。

とりあえず、PICマイコンの開発ができるようになりましたので、本来の目的である、ATUの開発に着手しました。 バリコン式ATUの自作 1 を参照下さい。

スリープモードへの入り方、復帰の仕方のみ、ソースファイルを抜粋しました。

void interrupt TimerSleep( void ) {
     if (T0IF == 1) {             // タイマー0の割込み?
          TMR0 = 0x00 ;         // タイマー0の初期化
           if ((GP5 == 0) && (dashfg == 1)) {  
                dotmemofg = 1;
                dashmemofg = 0;
                }
      if ((GP4 == 0) && (dotfg == 1)) {  
             dashmemofg = 1;
             dotmemofg = 0;
             }
       slpcount++;//スリープカウンター
       T0IF = 0;
       }
 if (GPIF == 1) {//sleep modeからの割り込みチェック
       cnt0 = 0;
       GPIF = 0;
       GPIE = 0;
       } 
}

以下main()の中のループの一部です。

if (slpcount > 200) {//スリープカウントが200を超えたら
  GPIF = 0;
  GPIE = 1;
  asm ("sleep");//スリープモードへ
  asm ("nop");//スリープモードから復帰した時のダミー命令
  GPIE = 0;
  }

...

全ソースファイル elekey12f675.cをダウンロード (バグ修正済み)

2017年2月追記

このエレキーの電池は100円ショップの単4アルカリ乾電池3本でしたが、2年8か月でとうとう力尽き、2017年2月に新品と交換しました。

 

2020年11月

プログラムにバグが発見されましたので、XC8用に書き換えて修正しました。

elekey_XC8_version.cをダウンロード

2024年4月

エレキーのWPM速度を表示出来る新エレキーを作り始めました。

 

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2014年6月 9日 (月)

C メーターの製作

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最近、チップ部品を多用していますが、一度実装したチップコンデンサは、いくらの容量であったか判らず、疑義を生じた時は、判っているコンデンサに取り替えるという手間をしいれられていました。 在庫が沢山ある場合、問題ありませんが、手持ちが1個や2個になると、外したコンデンサをまた実装する事になりますが、机の上は外したコンデンサだらけで、どれがいくらの容量だったか忘れてしまう事が度々です。 また、運悪く、テーピングからこぼれたコンデンサは、その容量は?で結局ごみ箱行になります。 何かいい手だてはないかと思案していましたら、「JH1HTK方式Cメータ」なるものがある事が判りました。 1PFの容量も測定できるとインターネット上で紹介されていました。

ちょうど、手元に、壊れたクロスメーター式のSWR計と使い道が決まっていなかった広帯域発振器が有りましたので、ジャンク箱をかき回して、手持ちの部品を使いながら作る事にしました。

まず、アナログメーターですが、メーター感度はフルスケール100μAという高感度品ですので、Cメーターには最適です。 しかし、FWD側のメーターは内部で断線しているようで、全く振れません。REF側は生きていますので、FWD側のメーターユニットを取り去り、新たに0から10PFまでの目盛をJW-CADで作成し、これを光沢フォト印刷用紙に実寸大で印刷すると、メーカー品並みの仕上がりで目盛板ができました。

広帯域発振器は、秋月で販売していたLTC1799という品番の方形波発振ユニットです。 以前、FT-450の修理の為、トランジスターを手配した事がありますが、部品代と送料が同じくらいの金額でしたので、何かに使えるかも知れないと一緒に購入しておいたものです。 LTC1799というLinear Technolgy社のICはRSで買っても400~600円しますので、秋月のユニットはお買い得ですね。

このCメーターはCMOS ICの消費電流が負荷となるコンデンサの容量や、ドライブする周波数により変化する事を利用したもので、アナログメーター式ではありますが、かなり正確に測れるらしい。 そのCMOS ICはインバーター1回路を使用するとのことでしたので、ジャンク箱から40年くらい前のモトローラー製の4069UBといインバーターを見つけ出しこれを使用する事にしました。

また、暗電流キャンセルの為に定電流回路が必要で、ジャンクションFETを使った回路が良く使われているようです。残念ながら、手元にJ-FETが有りませんので、ここはジャンク箱にゴロゴロしている3端子レギュレーター2個で、常に一定の電位差を作り、抵抗値を選ぶ事により常に一定の電流を得る事にしました。 5V用と3.3V用のレギュレーターをシリーズに接続し、CMOS ICや広帯域発振器は3.3Vで動作させ、5Vと3.3Vの電位差1.7Vの間に半固定抵抗を入れば、任意の定電流を作れます。 

2.54mmピッチの蛇の目基板にCMOS ICや発振ユニット、3端子レギュレーターを実装し、動作テストすると、100PFや1000PFはいとも簡単にフルスケールが得られ0PFの暗電流キャンセルも簡単に調整できますが、10PFレンジのテストを行うと、うまくいきません。 うまくいかない最大の原因は、周波数を上げていくと、消費電流も比例して増えていくのが正常ですが、15MHz以上になると、逆に電流が減少していきます。 最近の高速CMOSではないからかもと、データシートを確かめると、昔の4069は電源電圧が5V以下になると急激に動作可能周波数が下がってくる事がわかりました。 原因はJ-FETが手元に無かった為、3.3VでCMOS ICを動作させたことのようです。 3.3Vの電源を外部DC電源に変更し、30MHzくらいまでリニアに電流が増える電圧を探すと、3.7V以上あればOKである事がわかりました。 3端子レギュレーターの出力電圧をかさ上げする場合、GND側にダイオードをシリーズに入れ、本来の出力3.3VにダイオードのVf 0.6Vを加えて3.9Vを作る事ができます。  ところが、ダイオードを1個入れたのに3.5Vにしかなりません。 3.3VのレギュレーターはLDOと呼ばれる安定化電源で、消費電流が少なく、シリコンダイオードのVfが0.2Vくらいしかならないような電流しか流れません。ダイオードを3個シリーズにいれると、3.9Vの電圧を実現できますが、微小電流によるかさ上げは、温度変化に敏感になる可能性が強く却下。 インジケーターとして使用しているLEDの電流をダイオードに流し込み0.6VのVfを確保することにしました。 4069を74AHCシリーズのICに変更し、3.3VのLDOのままで動作するようにする案もありましたが、LTC1799も3.3Vのままでは、周波数が20MHzを超えると方形波出力が難しく正弦波にちかくなり、これがまた周波数対消費電流の変化を狂わせてしまいます。

J-FETが入手でき回路を5Vで動作させるのが一番のようですが、とりあえず、以上の対策で使う事が出来るようになりました。

Cmeter1

Cmeterbk1

一応、基本動作はOKとなりましたので、レンジ切り替え用ロータリースイッチやつまみ、半固定抵抗、ケース、電池用ケースとコネクター、それに電池を加えると、3000円近くかかってしまいました。 全体の消費電流は4mAくらいですので、レンジ切り替え表示のLEDにバッテリーインジケーター機能を持たせ、電池電圧が6.5Vを下回ると、LEDが次第に暗くなり6V以下ではほとんど点灯しなくなるようにしました。

Cmeter2

実際の使用では、取り付けられたターミナルに無接続の状態で0PFのキャンセル回路が調整されています。 コンデンサを掴みやすくするためにミノムシクリップを接続すると、この赤色のリード線を取り付けただけで1.2PFくらいを示します。しかも、リード線を動かすとコロコロと数値が変わりますので、ミノムシクリップを使って10PF以下を測定する時は、この浮遊容量を気にする必要があります。

このCメーターは、容量不明のチップコンデンサの容量確認を目的に作ったものでしたが、いざ、使い始めると、自作のポリバリコンや2本のビニール線を互いによじって作ったアンテナチューナー用のコンデンサの容量確認時に威力を発揮しています。

C-METER配線図をダウンロード

5Vのレギュレーターは1Aクラス品ですが、ここは0.1Aの78L05でも問題ありません。   使用している抵抗に75KΩという特殊な値を使っている所がありますが、使用するZDの品種でこの抵抗値は変わります。100KΩの半固定にして、調整可能にした方がいいかも知れません。

容量だけでなくインダクタンスも測れるデジタル式LCメーターの自作はこちらにあります。

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2014年5月19日 (月)

インピーダンス変換トランス

<カテゴリ:アンテナチューナー>

以前、マッチングトランスによるアンテナチューナーを紹介しましたが、その時使用したインピーダンス変換トランス、いわゆるUN-UNですが、実際のインピーダンス変換能力は7MHz程度までが限度で、それ以上の周波数では、急激にSWRが悪化していました。これは周波数が高くなるにつれ、トランスのリアクタンス分が増加しているのが原因でした。 ただ、このチューナーは、リアクタンスのキャンセル機構がついていましたので、トランスにリアクタンスが有っても、アンテナのリアクタンスを含めてキャンセルできる為、28MHzまで使う事が出来るものでした。

今回、すでに共振しているけど、その時のインピーダンスが50Ωではないというアンテナの整合を目的に、21MHzで使えるステップダウントランスの試作を行いました。 ところが、なかなかうまくいきません。 以下、途中で投げ出してしまいましたが、現状を紹介します。

使用するコアはFT-140#43です。  目標とするアンテナのインピーダンスは28Ω。できたら28Ω近辺でインピーダンスを選択できること。

トランスの巻き数比の2乗がインピーダンス変換比になりますので、28Ωが欲しい時は1次:2次の巻き数比を4:3にしてやれば実現できます。 また、5:4の場合32Ωが、3:2の場合22Ωが実現できますので、5個のコイルをシリーズに接続し、できたタップ位置に入力や出力を接続すれば、SWR1.2以下が実現できそうです。

理屈は判りましたので、コイルをコアに巻き込んでみました。 コイルは8ターンで5個シリーズに接続しました。アンテナアナライザーとダミー抵抗で測定すると、1.8MHzではほぼ理屈通りのSWR値がえられますが、7MHzでSWR1.5を超えます。14MHzではSWR2.5を超え、21MHzでは3以上です。

コアや線材、巻き方がダメなのか?試しに、1:4のステップアップトランスを作ってみました。

8ターンのコイルを2個用意し、これをシリーズに接続し、GNDとセンターにアンテナアナライザーを、GNDと2個目の端に200Ωをつなぎ、SWRを測ると、14MHzでSWR1.5くらいになり、21MHzでは2を超えます。 8ターンのコイルが多すぎるのかと、いきなり4ターンまで落としてみました。すると、1.8MHzから50MHzまでSWR1.3以下です。このとき2本のワイヤーは平行して巻かれておりましたので、これを互いによじってみました。すると、なんと1.8MHzから150MHzまでSWR1.2以内に収まります。 

SWRが悪かったのは巻き数が多すぎた事と、線をよじってなかった事が原因のようです。 この150MHzまでうまくいったUN-UNに12Ωの負荷抵抗を付け、ステップダウントランスとしたときのデータを取ることにしました。アンテナアナライザーをGNDと2個目のコイルの端につなぎ、GNDとセンタータップの間に12Ωをつなぎます。 1.8MHzではSWR1.05くらいですが14MHzでSWR1.5を超えます。21MHzでは2を超えてしまいます。 ステップアップはうまくいったのに、ステップダウンは全く使い物になりません。 インターネットで調べていくと、コイルを複数パラに接続する方法が見つかりました。ただ、どれもインピーダンス変換比は固定で、複数の変換比を得るものはあまりありませんでした。あっても、その変換特性は公表されていませんでした。

コイルを複数個パラに接続してつくるUN-UNは広帯域性が改善されるようなので、5個のコイルをシリーズに接続したものを4組つくり、これを全てパラレル接続したUN-UNを試作し、その特性を実測してみる事にしました。

Ztrans1

Ztrans3

左上がコイル結線図。イラストは2組パラレル接続ですが、実際は4組パラレル接続です。右上は実際にコアに巻いた状態です。

Ztrans4_3

  上の表が、実際の測定データです。

ダミー抵抗にカーボンタイプの可変抵抗を使っている関係で可変抵抗単体のSWRは28MHzで1.2くらいあります。従い、「3-2」の28MHzでのSWR1.1はトランスのリアクタンスと可変抵抗のリアクタンスが互いにキャンセルしあい、良い数値を示しているもので、その他のすべての28MHzデータも本当の値ではない事、とコメントしておきます。

また、R実測値は1.8MHz時の抵抗値ですが、周波数を変えると、変換される抵抗値も変化します。各実測SWR値はその周波数で最良となる抵抗値に調整した時の値です。

この結果から、21MHzでは22Ωから139Ωの範囲内なら使えると思われます。

とりあえずここまでは出来ましたので、次は21MHzに同調したアンテナを用意する事にしました。 現用のスカイドアループがMTU位置で21MHzに共振するようポリバリコンを直列に入れ調整すると、21.2MHzで共振するようにできました。ところが、この状態のままでインピーダンスが50Ωくらいになっており、SWRは1.0に限りなく近いです。 従い、トランスを挿入する意味がありません。 ちなみに1対1のトランスを挿入すると、トランスの残留リアクタンスで共振周波数がずれてしまい、かつインピーダンスもずれ、SWR1.5以下に調整できません。 結局、インピーダンス変換トランスは不要になりました。 

今回の実験は、T型アンテナチューナーより帯域幅を広げる目的で行ったのですが、SWR1.5以内の帯域幅がT型の場合、230KHzであったのに対して、今回のバリコンだけの整合器は240KHzとなっただけでした。帯域幅が狭いのはスカイドアの特性そのものの様です。

この21MHz用バリコンのみの整合器は天候により、共振周波数とインピーダンスが大幅に変動し、雨が降ると使い物にならない事がわかりましたので、 結局、またT型アンテナチューナーに戻ってしまいました。

出ているタップを全て使い、HF帯をフルカバーできるUN-UNの実現に取り組みましたが、完成させる必要が無くなり、途中で投げ出す事になりました。 また、気が向いたら検討しようと思います。

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2014年5月 5日 (月)

サイドトーン回路追加(ウィーンブリッジ発振回路)

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

このトランシーバーのPICマイコンの中に、CWモニター用のサイドトーン発振器が内臓されており、CWのキーイングに同期してモニター音が出力されるのですが、約10秒に1回このサイドトーンが途切れます。 たまたま、キー操作のマーク信号の時、これが発生すると、キー操作をしばしば誤ります。 原因は、10秒に1回、現在の設定状態をフラッシュメモリーに退避させていますが、これに同期して出るバグです。 この現象は、モニター用のサイドトーンのみで、送信されるキャリアーは正常に出ていますので、時々キー操作を間違いながらも使ってきました。

最近、このトランシーバーの使用頻度が高まるにつれ、サイドトーンの途切れが気になり出しました。対策は、送信モードの時のみ、メモリーへの退避動作を禁止したらいいのですが、PICマイコンの中をいじれないので、PICから出力されるサイドトーン信号は使わずに、独立したハードによるCR発振器を設け、これを、内臓したエレーキー回路でON/OFFしてやる事にしました。

Croscpcb

約850Hzの正弦波発振回路は、OP-AMPによるウィーンブリッジ式のCR発振器です。    CR発振器できれいな正弦波を出力させるには、発振回路の出力安定が重要です。 この為、OP-AMPの負帰還量を自動的に制御する必要がありますが、今回、この制御の為にバイアス回路内蔵のデュアルゲートMOS FETを使いました。 UHF帯の増幅用FETを製造しているメーカーなら大抵製品ラインの中にあります。 簡単な回路配置で、DCから430MHzまで10dB以上の増幅が出来るので、私は好んで使っています。 しかし、かなり特殊なFETなので、バラ売りはあまり有りません。   今回は、ばら売りされているNXP製のBF1211WRというFETを使いました。 (ルネサスの場合BB504が相当しますが、生産中止予告品。バイアス回路無しなら3SK318)  このFETはG2の電圧を可変すると、40dB以上のATTをかけられる為、本来のUHF用LNAとしての使い方以外に、AGCやATTとしても利用しています。 今回はG2の電圧でドレインソース間のインピーダンスが変化するのを利用して、OP-AMPの帰還量制御に使いました。   最初バラックで組んで、基礎検討を行い、実用になるように各定数を詰めていきます。検討は片面の2.54ピッチの蛇の目基板に1608タイプのチップ部品を並べて行います。 離れた位置にある部品の接続は裸銅線を使い基板の裏側でつなぎます。 部品装着面でのワイヤーが少なくなり、部品交換がかなり楽になります。 しかし、チップ部品ですから、拡大鏡を併用しながらかなり根気のいる作業です。

Croscwave

Crosckey_3

左上が、850Hz連続発振時の出力波形、右がキーイングによる波形です。

正弦波は負帰還と制御回路のCR定数をもう少し詰めると、さらにきれいになるようですが、CWモニター用としてはこれで十分ですから、ここらへんで妥協しました。 また、キーイングはソフトスタートになるよう、いつもは発振停止していて、キーダウンが有ったら、初めて発振開始し、キーアップで発信停止するようにしましたので、連続波をスイッチ回路で断続する時に比べ、はるかにキークリックが少なくなっています。

Croscbin

こうやってできた小さな基板を、QRPトランシーバーのシャーシに両面テープで張り付け、配線してやると、出来上がりです。

実際に送信すると、OP-AMPに送信出力が回り込み、モニター音がとぎれとぎれになります。OP-AMPの+と-の入力の足に1005タイプの1000Pのコンデンサを直付けしてやると、異常が無くなりました。 安心の為、この基板をアースされた銅板でカバーしています。

これで、移動運用も楽しくなりそうです。

今回、作成したCR発振器の配線図は以下からダウンロードできます。R9は最初22KΩにしましたが、小さすぎた為シリーズに18KΩを足して実験し、うまくいきましたので、そのままになっています。39Kでも良いかも知れませんが、確認しておりません。 また、コンデンサは実装した時点で容量がいくらか判らなくなりましたので、間違っているかも知れません。

ウィーンブリッジ発振回路の回路図をダウンロード

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2014年4月28日 (月)

144MHz用Jポールアンテナ

<カテゴリ:アンテナ>

アースのいらないベランダ用の垂直アンテナ、通称「Jポール」を紹介します。 普通のGPはラジアル部分が横にはみ出し、ベランダでは、これが以外と邪魔になりますが、釣竿か、物干し竿を垂直に立てた1本の竿にしか見えず、アースが不要で、設置が非常に簡単で、かつ、2段GPくらいの性能が得られるものです。

アルミパイプを使った本格的なアンテナではなく、グラスファイバー製の釣竿に導体となる1mmの銅線を添わせ、ビニールテープで巻いて固定したかなりいい加減なアンテナです。 

2mjp2

2mjp_2 

 左上が構造図、右上がMMANAによるシュミレーションデータです。

グラスファイバー釣竿を2段つないで2mのポールにした後、直径1mmの裸銅線を図のようにポールに添わせ、適当な間隔でビニールテープを巻き、固定します。給電は同軸ケーブルを直接ハンダ付けしますが、このハンダ付けの位置でインピーダンスが変わりますので、最初に、シュミレーションした寸法のままでハンダ付けし、SWR計かアンテナアナライザーを見ながら、145MHz、50Ωに合わせこみます。

149.2cmの長さを2cm長くすると約500KHz周波数が下がり、インピーダンスは約10%ダウンします。また給電部の3.3cmの所を5mm高くすると、インピーダンスが30%アップし、かつ約250KHz周波数が高くなります。 このふたつのパラメーターを頭に入れて調整するわけですが、電卓とメモ用紙を持っていても結構疲れます。 エレメントの調整はニッパでカットする方が簡単ですから、最初は少し長めにエレメントを作りますが、5cmも長くすると、もうどうなっているのかさっぱり分からなくなってしまいますので、シュミレーションで得た長さのままで作り、周波数が高すぎた場合、銅線ですから簡単にハンダ付けで延長した方が楽です。

2mjp3_3

最初は、少し長めで作った為、結局調整の方向性が判らず、3回くらい銅線の交換を行いました。次回作る時は以下の手順で行うときっとうまくいくと思います。

・MMANAのシュミレーション通りの寸法で作る。

・アンテナアナライザーで共振周波数と、共振状態のインピーダンスを知る。 インピーダンスは50Ωより高いか低いかだけをメモする。

・前述の法則をベースに145MHzでSWR1.0に追い込む。 ただし、インピーダンスは同軸ケーブルの長さにより増減が逆転する事もあるので、もし、前述の法則と逆に変化する場合、それに従う事。

今回は980円の4.5m釣竿で作りましたが、直径の異なる竿の場合、給電部分の2本の垂直銅線の幅1.2cmの部分が多分異なってくるはずです。この異なった寸法の場合、再度MMANAでシュミレーションする必要がありそうですが、どうせシュミレーションしても、現物とは合致しませんので、似たような寸法で作って、共振周波数とインピーダンスを先に把握する方が手っ取りばやいと思われます。 

このクリチカルな調整をやっても、アンテナにポールを継ぎ足し持ち上げると、SWRも共振周波数もずれてしまいますので、ずれの程度をあらかじめ確認しておき、その分だけずらして調整する事がコツです。共振周波数がバンド内にあるならSWR計だけでも判りますが、SWR最低周波数がバンド外に有る場合はアンテナアナライザーが有ると便利です。

自作してから、すでに5年経過していますので、銅線は真っ黒、ハンダは真っ白、テープははげかかっていますが、台風時も倒れずに初期の性能を維持しています。 銅線の固定の為に、1巻33円のビニールテープを使ったので、雨の時、SWRが悪化するのを心配しましたが、変化はあるものの、気になるレベルでは有りませんでした。

このアンテナは、ローカル交信が主目的ですが、10Wの出力で半径100KmくらいはOKなので、コンテスト時、マルチ獲得の為、重宝しています。このアンテナ作成のとき未使用になった先の細い竿は430MHz用の垂直ダイポールに流用されました。

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2014年10月

Jp1410_2

この2m用アンテナの同軸ケーブルに3.5MHzのコモンモード電流が流れ、時々火災報知器が誤動作するという問題がありましたので、同軸ケーブルの途中に3.5MHzでも十分効果のあるコモンモードフィルターをいれました。 火災報知器の誤動作は無くなりましたが、2mで、ある特定の方向にヌルポイントが生じ、その方向がちょうどいつも交信するローカル局と重なり、今までS9であった信号がS1以下になってしましました。

この2m用Jポールから2.5m離れたところにHF用のスカイドアアンテナが有り、このスカイドアの一方のエレメントが、2m用Jポールに最接近したときこのヌルポイントが発生するようです。 最接近した時の距離は1.2mしかありません。 数か月間、2mで交信する際、スカイドアのエレメントを、Jポールから一番遠くなるように回転させていましたが、そのうち面倒になり、現在と反対側にあるベランダに、2m用Jポールを新設する事にしました。 この新しいJポールとHFのスカイドアアンテナは、8mくらい離れましたので、ヌルポイントは解消されました。 新旧ふたつのJポールを1週間くらい併用し、新Jポールが旧Jポールより受信感度が良いという事が判りましたので、旧Jポールは撤去されました。

なお、この新Jポールを作るに当たり、ポールは4.5m長の釣竿をそのまま使いました。 ポールの直径が小さくなりましたが、当初のシュミレーション通りの寸法のままで作ったら142MHz付近で共振していましたので、50.7cmの部分の上部を約8mmカットしたら、ちょうど145MHzに共振するようになりました。共振状態でのSWRは1.1くらいでしたので、これ以上トリミングする事はやめました。

このアンテナは防水していないので、雨が降るとSWR3くらいまで悪化しますが、トランシーバーにプロテクトがかからないので、そのまま使っています。

2020年春

いまだに使い続けているJポールですが、最近、雨が降ると、トランシーバーにプロテクトがかかるほど、SWRが悪化していました。 新コロナウィルスで外出自粛の折、暇ですので、この原因を確かめ、改善できないか、検討しました。 アイロンかけに使う霧吹きを、持ち出し、アンテナのエレメントに場所を選びながら、霧を吹きつけていると、正常時SWR1.1しかないのに、一気にSWRが3以上に上がる部分がありました。 それは、Jの字に折り返した部分の先端付近です。

構造図で50.7cmとある先端部分です。 それ以外は多少の変動はありますが、SWR2を超える事はありません。 そこで、この先端部分を含め、Jの折り返しの部分全てをビーニールテープで巻き、雨が直接銅線に当たらないようにしました。すると、共振周波数が143MHzまで、落ちてしまいましたので、また、このJ字の先端部分をカットして、145MHzに合わせました。

2m_j_rain

これで、SWRは144から146まで1.5以下です。 ただし、まだ雨が降っていません。 雨が降ったら、またレポートします。

雨が降りましたが、SWRは2.5くらいで頑張っていました。 ところが、梅雨に入り、連日雨が降って、その合間に晴れても、SWRが5を超え、トランシーバーにプロテクトがかかるようになりました。 そして、とうとう、晴天が2日以上続いても、このSWR悪化は解消しません。

原因は、テープでぐるぐる巻きにして、雨が入り込まないときは問題ないのですが、一度、雨がテープの内側に入り込むと、これが、晴れても蒸発しなくなり、共振周波数が110MHzくらいまで落ちてしまうようです。

対策として、テープをやめ、左の写真のごとく、J 部分の短い銅線を、ロックタイを使って、釣り竿から2cmくらい浮かしました。 この変更で、共振周波数が150MHzを超えてしまいましたが、そこは、銅線ですから、約10cmくらいの銅線を半田付けして延長し、145MHzでSWR1.1くらいまで調整しました。

Jpole_swr_2

 

バンド全体で、SWR1.3以下です。 そして、雨が降っている場合、SWR2くらいまで上がりますが、晴れると元に戻ります。 雨の影響を大きく受けるところは、2本の銅線が平行する部分の内、短い方の先端から下へ30cmくらいですので、対策としては、同軸を半田付けしたところから、上の方は、可能な限り、支柱からも浮かす事のようです。

 

2023年10月

Blacktay_2

突然SWRが5以上となり、送信も受信もNGになりました。 何が起こったのかと、次の休日にアンテナを倒して見ると。給電部分の絶縁材に使ったロックタイが折れてバラバラになっていました。 この為、マッチング機構が完全に壊れてしまったものでした。 使ったロックタイは白色の耐候性無し品。 製作してから2年半で寿命が尽きました。

やむなく、近くのホームセンターで黒色の耐候性ロックタイを買ってきて、修理です。 雑に修理したので、145MHzでSWRは1.4くらいにしかなりませんでしたが、これで又当分使っていきます。

 

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2014年4月26日 (土)

160m用アンテナ追加

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

常設ではありませんが、160mバンド用としてマルチバンドアンテナシステムの中に加える事にします。 

<2017年2月書き換え>

160mvertical201702

ペットボトルに巻いたローディングコイルを使ったホイップアンテナから長さが40mもあるロングワイヤーまで、色々と実験しましたが、展開できる環境のなかで、一番良かった、現用スカイドアループや垂直ダイポールのエレメントを共用した垂直アンテナに落ち着く事になりました。 ただし、このアンテナは160m用ロングワイヤー(LW) 1 にて紹介の通り、出力によりアンテナの共振周波数が変わるという問題を抱えていましたが、その後、160m垂直アンテナ にて紹介の通り、この問題も解決しました。

左のSWRカーブは2017年2月に広島WASコンテストに向け再セットアップしたときのSWR特性です。結構広帯域です。

160mにQRVする時は、アンテナワイヤーの大がかりな接続変更を伴いますので、手軽にQSYは出来ませんが、160mバンドのコンテストの時は期待ができそうです。

アンテナの整合BOXを置いた場所は、猫のいい遊び場です。 時々、このBOXの上に乗っている事もあります。(画像は2014年1月のものです)

160m_box_cat

2008年10月から同調フィーダーによる給電方式で使い始め、2011年5月にプリセット式MTU方式に変更し、台風で壊れたりした、このアンテナシステムで、2017年11月時点に於いて交信出来たDXCCエンティティーは、全バンドで238。 各バンド毎では、

160m 80m 40m 30m 20m  17m 15m  12m 10m  6m

   8      34    94   108  141  181  195   149  124   19

 

このアンテナシステムを降ろすまでは交信記録を更新していきます。   最近はコンディションの悪化とON AIR回数の減少でなかなかエンティティーが増えません。

2017年12月16日  久々に 40m Bnd New(OJ9X)をゲット。

現在のマルチバンドアンテナシステムの全容は以下の通りです。

2017年1月末にスカイドア部分のアルミ線が金属疲労で断線しましたので、スカイドアのループのワイヤーは全て入れ替えました。

Mutiantsys2_2  

プリセットMTU作り変え へ続く

7MHz用垂直ダイポールと最高高さ7mの逆Vとの比較はこちらにあります。

Skydoor180120

2018年1月、風圧面積を少しでも少なくする為、HFスカイドアの横幅を2.6mから2mに変更しました。 これで、初期の回転半径1mのHFループアンテナに戻りました。

このアンテナを上げてしまってから、6m用のヘンテナの向きが傾いている事に気が着きましたが、ポールの各ジョイントの部分にパイプストッパーの仕掛けをしてありますので、これを分解しないと下げる事が出来ません。 面倒なので、次の上げ下げの機会までこのままです。 

2018年9月

ハイバンドのコンディションも悪化し、色々な事情でアクティビティも下がってきましたので、台風シーズン中であった事もあり、18MHz用スカイドアを撤去し、身軽にしました。 2022年を過ぎたころ、可能なら再度アップするまで、垂直ダイポールと6mヘンテナのみとなりました。

 

2023年1月~3月

家のメンテの為に、足場を組んで、幌で家を囲む事になり、とうとう、全てのアンテナを撤去しました。 ただし、無線を止めてしまうのではなく、常設の1.8MHzを含めたHFアンテナを再構築します。まずは、構想からです。

 

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2014年4月25日 (金)

160m用ロングワイヤー(LW) 2

<カテゴリ:アンテナ>

既存の7メガ用垂直ダイポールやスカイドアのエレメントを共用した160m用LWは、出力により共振周波数が変化すると言うトラブルに遭遇し、解決策が見いだせませんでした。(パワーでSWRが変わる 参照) 仕方なく、これらの既存アンテナから数メーター離した所に独立したLWを臨時に設置し、コンテストの時だけ使う方法に変更しました。

LWの形態は8mの釣竿に電線を添わせ、そのてっぺんから18mのビニール線を2mの高さまで引き降ろしたもので、全長は26mになります。このエレメントが1.910で共振するように、ローディングコイルを調整した結果、給電点のインピーダンスは前回のアンテナよりかなり下がり12.5Ω付近になってしまいました。 整合トランスは10個目のタップに同軸を繋ぎ、5個目のタップからローディングコイルを経由してアンテナに接続されます。

160mlwtrans

160mlwbox

160mlwpole_2

8mの釣竿に沿った垂直部分のワイヤーは1.25SQのKIV線ですが、水平方向のワイヤーはUL1007タイプのAWG24サイズです。 この水平部分のワイヤーは自重の為、直線に引っ張る事ができず、10mくらいの部分で地上高3mくらいまで落ちています。 ただ、このワイヤーの下は即地面ではなく、深さ5mの水の無い池となっている事から、ワイヤーから実際の地面までは8mくらいはあります。これがどのように影響するのかは、やってみないと判らない状態です。 このアンテナを仮設してある場所は、全長40mのLWも実験できる広さがありますが、支柱が釣竿であることから、ワイヤーの重さに制限があり、軽量ワイヤーが手に入るまでは、この長さで実験する事にします。

アンテナアナライザーで、このアンテナの共振周波数を1.910MHz、SWR1.05に調整した後、実際に60W出力してSWRをチェックしても、SWR最少周波数は1.910MHzぴったりで、SWRも1.05以下となり、ずれは有りません。また、シュミレーション上のゲインも-2dBiくらいになっており、前回のLWと同等です。  ただし、前回のアンテナの打ち上げ角は30度くらいで、曲りなりにもDXは狙える状態でしたが、今回のアンテナは、高さが低くなり、かつ水平部分が増えた為、MMANAでのシュミレーションでは真上方向のヌルポイントがなくなり、かなり輻射するようになってしまいました。 多分、国内QSOしかできないと思われますが、やむなしです。

とりあえず、仮設した晩に2局と交信できましたが、2,3エリアでした。 また、従来S7くらいであったノイズがS9まで上がってしまいました。 そうこうしている内に、夏になり160mバンドの出番はなくなってしまいました。 そして、かなり時間がたった2014年CQ WWコンテストで使ってみました。最長距離はハバロスクの約2500Kmでした。 サハリンが+40dBで聞こえます。 また、CQを出しているJA局はのきなみ+40dBで聞こえます。 このコンテストでのJA局同士の交信は無得点ですから、交信しておりませんが、多分国内交信は問題ないと思われます。

MMANAでシュミレーションした結果は、水平面の指向性はいびつですが、垂直面は真上ではなく、多少打ち上げ角が下がっているようです。これが2500Kmをカバーした理由かもしれません。 ちなみにハバロスクの方向は下の水平面指向性のマイナスY(下向き)方向でした。 

160m25mmana

もう少し改善したく、全長40mのLWにトライしました。

160m用ロングワイヤー3に続く。

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2014年4月21日 (月)

パワーでSWRが変わる (出力を上げるとSWRも上がる)

<カテゴリ:アンテナ>

その1

今までの160m用のアンテナは、HF用スカイドアループをエレメントとした、つぎはぎエレメントを使用し、このつぎはぎの部分にはギボシ端子を多用していました。

アンテナアナライザーでSWR1.1以下に調整した後、実際の送信機とSWR計で確認すると、共振周波数が大きくずれます。また、出力を1W、10W、40Wと変化させても、SWR値が変わります。 アンテナアナライザーとの差は良くあることなのですが、出力10WでSWR1.1に調整した後、出力を60Wまで上げると、SWRが2くらいまで跳ね上がります。出力を10Wまで下げると、またSWR1.1に戻ります。 この原因は最初、マッチングトランスのフェライトコアの問題かも知れないと、SWRが悪化するのは我慢して、トランスを外してみました。少しは改善しますが、ほとんど同じという状況でした。

ギボシ端子は電流により接触抵抗が変わりやすいという情報を以前聞いていた事もあり、試しにギボシ端子を2~3回抜き差しして、再度SWRをチェックすると、SWR値と最低SWRになる周波数が変化します。単純な抜き差しで状態が変わるような不安定な接続状態になっている事は事実のようです。

そこで、このギボシ端子を全て廃止し、つぎはぎすべき場所が2か所のみになるよう、その他の接続部分はハンダ付けに変えてやりました。 そして、2か所の接続部分は丸端子とY端子をハンダ付けし、これをステンレスのビス、ナットで締め上げる構造にすると、アンテナアナライザーと10W出力の時のSWR差はかなり改善しましたが、10W時、SWRが1.1になるように再調整した後、60W出力で確認すると、依然としてSWRは2くらいです。

Giboshi

Nutt

左上は切り取ったギボシ端子。右上はビスナットに変更した接続部分。 なお、ギボシ端子の影響を確認できたのは、160mバンドのみで、80mバンド以上では影響なしでした。

10Wでは依然、SWR1.1ですから、まだ、高周波電圧の大きさで、共振周波数やSWRが変化する要因が隠れているようです。 整合回路のアース接続や、コイルのタップ切り替えにミノムシクリップを使っていますので、これが原因かも知れません。そこで、ミノムシクリップをハンダやナットによる締め付けなどの接続に変えてみましたが、あまり改善効果はありません。

この接続状態で、使っていない、7メガ用垂直エレメントの共振周波数をMTUで可変してやると、160mのアンテナの共振周波数が変わります。  普通、近接している他のバンドのエレメントとの干渉は有ります。しかし、干渉が送信出力で変化するのはあまり聞いた事がありません。そこで、160mのアンテナエレメントとして使っているHF用スカイドアのループを切り離し、短くなったエレメントが1.8MHzに同調するようローディングコイルを調整してやると、出力によって変化するSWRがかなり改善しました。60Wでも1.2以下です。 スカイドア用の同調フィーダーと7MHz用エレメントとの距離は5mmくらいで、この間の絶縁はポリ塩化ビニール(PVC)です。一応、専門書を読んでもPVCは10MHz以下なら使用可能となっていますが、この判定はPVCのtanδの変化からのみの判断であり、高周波の高電圧が加わると、誘電率が変わるのかも知れません。 そこで、LCRの共振回路を作り、このCの絶縁材料をPVCにして、出力で共振周波数が変わるかテストしてみました。出力を大きくするに従い、共振周波数は下がりますが、その差は1.8MHzで5KHzくらいで、内訳は1mWと1Wの差が4KHzで1Wと60Wの差は1KHzでした。1mWはアンテナアナライザーによるドライブですから、浮遊容量などが影響している可能性が大きいので、1Wと60Wの差だけが事実かもしれません。しかし、実際は1Wと60Wで10KHz以上のずれが発生していますので、これだけでは説明できません。

結局、原因は判らず、160m用ロングワイヤー(LW) 2に紹介の様に160m用の専用エレメントを6メーターくらい離して設置する事で解決しました。

後日、この真の原因が判りました。 その2の例でも説明していますが、絶縁ワイヤーの耐電圧の問題でした。 ビニール被覆の耐電圧以上の高周波電圧が加わると、そこでリークが発生し、電気定数が変わってしまうのが原因です。 しかも、この高周波耐電圧値は通常公表されていなく、かつ、継時変化により劣化する速度がかなり早く、屋外では1年もしない内にパワーでSWRが変化するような現象が発生するようです。

その2

1本のグラスファイバーポールにHF用スカイドアと6m用ヘンテナを架設し、それぞれ、約4mの長さの平行フィーダーで垂直に降ろし、別々のアンテナチューナーに接続していました。 この平行フィーダーの途中は束ねられ、風でフラフラしないようマストにしばりつけてありました。 建設してから2年が過ぎたころから、21MHzでパワーによりSWRが変わるという現象が出始めました。 

Multifeeder

具体的には、アンテナの4m下に置いてあるMTUのTX端子側で、アンテナアナライザーを使い、SWR1.1以下になるよう調整した後、実際に10Wの出力を出し、SWR計で測るとSWRが2付近になってしまいます。 そこで、10WのときSWRが1.1以下になるように再調整した後、アンテナアナライザ-で測るとSWRが2を超えます。 数か月悩んでいましたが、別件で6mの平行フィーダーを外したところ、このパワーでSWRが変わるという現象が起こらなくなりました。 HFと6mの平行フィーダーの結合状態がパワーで変わるという160m用アンテナのときと同じ原因でした。 建設当初からこの平行フィーダーの架設状態はあまり変化はないので、原因はワイヤーの塩化ビニールの被覆が劣化して、耐電圧が極端に劣化し、高周波電圧がこの限界を超えると絶縁破壊を起こすのが原因のようです。

対策は、左の写真のように、ふたつの平行フィーダーをマストを挟んで、MTUまで引き降ろす事にしました。 この対策で、完璧ではありませんが、10W出力でもアンテナアナライザ-でもSWR1.2以下に収まります。  恒久的には、他の方法を考えねばなりません。

送信機のパワーでSWRが大きく変わるような現象が発見されましたら、普通は最初にフェライトコアを疑いますが、ギボシ端子もかなり悪さするようです。さらに他のエレメントと極小間隔で接近している場合も互いに影響を与えるようです。同じような問題でお困りの時、参考にしていただけたら幸いです。

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2014年2月20日 (木)

80mバンド用アンテナ整合器

<カテゴリ:アンテナチューナー>

現在の80mバンドは7MHz用垂直ダイポールをローパス型π(パイ)マッチのアンテナチューナーで強制整合させていますが、7MHzのダイポールを3.5MHzで使う事だけで約3dBのロスを発生させ、さらにアンテナチューナーで約3dBのロスを発生させていることから、例え100Wでドライブしても、25W分しか放射に寄与しないという状況でした。

アンテナのサイズは変えられないので、せめてチューナーのロスだけでも改善できないものかと、ローディングコイルとマッチングトランスで整合器を作り、ロスの発生を少しでも改善する事にトライしました。

80mtrans1_2

80mtrans2

まず、マッチングトランスを作ります。 アンテナの給電インピーダンスが過去の実測結果より25Ωから30Ωくらいと予想されますが、実際の所は不明なので、FT-140#43というコアに6本のAWG24の線を束ねた状態で12ターン巻き、これをシリーズに接続し、実装状態でタップ位置を調整する事にしました。

80mtrans

ローディングコイルはVU40の塩ビパイプに1mmの銅線を1mmスペースで22ターン巻いたもので、3.5MHzのハムバンド内で共振するようタップを取ることにしました。

アンテナ実装状態でコイルは18ターンの時、共振周波数が3520KHz付近に収まりました。

また、トランスは同軸出力を4番目のタップへ。アンテナへの出力は3番目のタップから接続することで、共振周波数でのSWRは1.05以下になりました。 バンド内でのSWRは3.501MHzで1.2、3.574MHzで1.5となり、パイマッチのアンテナチューナーより広帯域です。

肝心な整合回路のロスですが、パイマッチのMTUを含め実測する事にしました。

Paitranslos 左上が実測回路です。同軸ケーブル側にアンテナアナライザーを接続し、MTUには実際のアンテナに接続します。 この状態で3.520MHzでSWRが1.0になるようMTUを調整しておきます。 次にアンテナを取り去り、代わりにエアーバリコンと可変抵抗をつなぎ、アンテナアナライザーのSWR表示が1.0になるようにバリコンと可変抵抗を調整します。その状態でMTUへ入力されるRF電圧VTと、可変抵抗の両端のRF電圧VAをオシロで読みます。 アンテナアナライザーをOFFにして、可変抵抗の抵抗値をテスターで測れば、入力側とアンテナ側の電力を計算できます。  この測定方法で実測した結果が右上の表です。 51.6%の損失とは、100W入力したとき、MTU内部で51.6Wロスするという意味です。 パイマッチのロスはシュミレーション値にかなり近いです。(パイマッチチューナーのシュミレーション値はπ型チューナーの内部ロス改善 を参照) トランス式の場合のロスは、トランスそのもののロスとローディングコイル内でのロスになりますので、実測値は妥当な数値でしょう。 パイマッチが約3dBのロスに対してトランス式は約1.2dBのロスにおさまりましたが、Sメーターが変化するほどのものではありませんね。 ただし、このトランス式整合器は、雨の日でも、SWRの悪化が少なく、再調整なしで使えることでした。 これが最大の利点かも知れません。

しかし、従来のパイマッチチューナーと比較すると、受信感度にムラが有ります。パイマッチに比べてSで最大2くらいダウンする事があります。 また送信でもトランス式よりパイマッチの方が、応答率が高い状態です。 この現象が有るため、前述の内部ロス実測までしたのですが、実測結果は理屈通り、トランス式の方が良い結果を示しています。 チューナーで打ち上げ角が変わるというのは聞いたことはありませんが、W6の局をふたつのチューナーで聞き比べても、パイマッチのチューナーの方が良く聞こえました。

この原因を調べるつもりでしたが、この整合器を使用するマルチバンドアンテナシステムはメンテナンスや台風のとき、そのマストを伸縮する事ができます。一度縮めて、また、最大長まで伸ばしたとき、アンテナの張力が変化し、共振周波数が変わります。パイマッチのチューナーの場合、簡単に再調整ができましたが、このコイル+トランス式の整合器の場合、伸縮の度に、ハンダゴテを持ち込んで、コイルのタップ位置を1/3ターン程度修正しなければならないという面倒がありました。 そのうち、プリセットMTUの防水BOXの中にATUの収納スペースを確保する必要が生じましたので、優先順位最下位のこの整合器は撤去されてしまいました。

2015年1月追記

原因が判ってきました。 ベースとなるアンテナは7MHz用の垂直ダイポールですが、上下のエレメントは不完全な平衡状態でした。 このアンテナに上部エレメント側だけ延長コイルを挿入し、強制的に同調させた為、実装されているフロートバランの能力不足もあり、上下のエレメントで電流分布がかなりアンバランスとなって、打ち上げ角が変化したものでした。 再度、この整合システムを使うつもりはありませんが、原因が判ったのでレポートしておきます。

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2014年2月11日 (火)

FT-450 送信不能

<カテゴリ:FT-450>

中古で購入して、すでに4年経過していますが、先日、突然、送信できなくなりました。全バンド、全モードともアンテナ端子から出力が出ません。受信は全バンド、全モードOKです。マイコンやDSPがからんでいないようなので、自分で修理する事にしました。

ファイナルユニットへ送信信号を入力する同軸ケーブルのコネクターを引き抜き、オシロを当てても信号は見えません。IFユニットが怪しそうですので、配線図と、サービスマニュアルを頼りに、RF信号がどこで途切れているか、オシロのプローグを出力側から順に、当てていくと、Q2002のコレクタにはRF信号が有りませんが、ベース側にはRF信号が出ています。

テスターでこのQ2002の導通テストをすると、なんと全端子間がオープン状態。 完全に死んでいました。このトランジスタの品番は2SC5415EでUHF増幅用、SANYO製です。インターネットで探すと、すでに廃番で、2SC5415Aに変わったとの事。ここまでは、検索できましたが、通販情報が見つかりません。SANYOはONセミコンに吸収されたので、ONセミコン関連の情報を探すと、NE85634とコンパチである主旨の記事が見つかりました。 聞きなれない品番ですが、「NE85634」で検索をかけると、ルネサスの2SC3357と互換性があるという情報が出てきました。 この2SC3357というトランジスタはFT-450の他の場所で使っています。Q2020がそうでして、Q2020の出力をBPFを通した後、Q2002に送り、Q2002で増幅した後、ファイナルユニットへ送るという構成です。

Ft450_rfif_2 

この2SC3357なら沢山の販売店が通販しており、簡単に入手できます。 SPECを調べると、2SC5415のfTが6.7GHzなのに対して、2SC3357のfTは、6.5GHz。その他はほとんど一緒です。 まず間違いなく代替え可能なようです。

通販で手配した2SC3357が入手出来ましたので、壊れた2SC5415と交換しました。 結果、FT-450の送信機能はすべて正常に復帰しました。

Ft450q2002互換性があるのなら、わざわざ品番の違う物を使うより、統一した方がよさそうですが、量産設計の場合、1万台作っても全部良品で無くてはならず、修理のように1台限りが良品になったら良いと言う訳にはいきません。 多分、何かの理由により、品番を分けて量産したのでしょう。 そして、最終的に、同じトランジスタでも良かったとなったとしても、開発過程において、膨大な時間と人員をかけて、確認した品質評価をやり直す必要がある事から、2種類の品番を使い分ける状態になってしまったと推測します。

多分、メーカーは代替えをOKしないと思いますが、私が使うこのリグの場合、この現物だけがOKになれば良いですから、勝手に変える事にします。

壊れた原因ですが、以前、このトランジスターの近くにある+Bラインのタンタルコンデンサがリークするという故障がありました。その時の原因は雷の誘導雷でした。多分、この時の後遺症が出たのでしょう。

3か月もたたない内に、また送信不能になりました。こんどは、Q2002のベースに信号が有りません。 配線図と、サービスマニュアルから、信号を追いかけていくと、第1局発とのバランスミキサーまでは信号が出ていますが、その後のQ2022のベースに信号が見えません。

この間はコイルと抵抗コンデンサだけで半導体は無いのにと、オシロのプローブを各接続ポイントに当てていくと、信号が見えるところがありました。シメシメとその前後を再チェックすると、先ほどまで信号が見えなかったポイントでも信号が見えます。おかしいなあと思いながら、後段へチェックポイントを移していくと、今まで信号が無かったポイントにもちゃんと信号が出ています。結局、Q2002のベースまでは正常に信号が出ているでは有りませんか。

ただし、Q2002のコレクタには信号は有りません。トランジスタをテスターでチェックするとコレクタ、エミッタ間がショートしていました。 また、このトランジスタが壊れています。仕方なく、このトランジスタを交換しましたが、まだ出力は出ません。テスターで送信状態のDC電圧をチェックするとQ2002のエミッター電圧が異常に高い状態です。詳細を調べたところ、エミッター抵抗のR2009 10Ωが断線していました。この抵抗を良品に取り替えたら、故障は直ってしまいました。

今回の故障の原因は、まず、ひとつがチップ部品のハンダ付け不良が考えられます。オシロのプローブで抵抗の電極を押さえていくといつのまにか直ってしまったというのはこれくらいしか考えられません。 倍率10倍のルーペでチップ部品のハンダ付け部分をチェックし、怪しいと思われる所を再ハンダしました。 次にQ2002がショートし、R2009が断線した原因ですが、回路図や実装状態を見ても、C2006かC2010がショートして、また元に戻ったくらいしか思いつきません。 とりあえず、このふたつのコンデンサを手持ちの1608タイプのコンデンサに交換しました。 

これで、当分様子をみようと思っていましたら、今度は50メガのAMモードで送信出力がなかなか規定値に上昇しないという問題に遭遇しました。

モードをAMにしておき、スタンバイスイッチを送信にすると、送信モードにはなりますが、出力が5Wも有りません。そのまま送信状態を維持すると、約20秒かかって、規定の25Wになります。この現象は7メガでもありますが、7メガの場合、約7秒で規定出力になります。 ただし、7メガの場合、一度規定出力になった後、受信に戻し、再び送信すると、いきなり規定出力になりますが、50メガの場合、受信に戻し、再度送信状態にしても、また20秒くらいかかって出力が徐々に上昇するという症状です。 販売店経由でメーカーに修理依頼しましたが、DSP当たりがおかしいとのことで、基板ごと交換することになりました。 

この基板交換で、送信不能も再発しない事を願う事にします。

その後トラブルもなく長年6mバンド100W機として使ってきましたが、FTDX-101D導入に伴い、2023年6月に売却しました。

 

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2014年1月23日 (木)

160m用ロングワイヤー(LW) 1

<カテゴリ:アンテナ>

ペットボトルにコイルを巻いた6m高の超短縮ホイップアンテナは、国内QSOに限れば、そのサイズ以上の成果を出してくれましたが、DX交信には無理があるようです。  MMANAによるシュミレーションでは-15.6dBiくらいのゲインでしたので、100Wの送信でも、実際は3W分くらいしか輻射されていなかったのが最大の原因のようです。

せめて6000Kmくらいの距離まで交信できるようなアンテナをMMANAを使い検討していましたら、現用の7MHz用垂直ダイポールを接地型垂直アンテナにすれば、まだマイナスゲインですが、そこそこのゲインが得られる事が判りました。 ただ、現在の垂直ダイポールをそのまま使うと全長18mくらいしかない事と、ワイヤーの張り替えがかなり面倒です。そこで、7MHz用垂直ダイポールの上部エレメントをベランダの位置で切り離し、これに新たにワイヤーを継ぎ足し、例の金網のところまで、引き降ろし、この接地部分にローディングコイルとマッチングトランスを挿入した、ロングワイヤーなのかホイップなのか判らないようなアンテナで実験する事にしました。

160mboxロングワイヤーの全長は25mくらいになり、ローディングコイルは1.9MHzで約22uHくらいになりました。この状態での給電インピーダンスをアンテナアナライザーで測定したところ、35Ωくらいでしたので、トランスで整合させることにしました。

トランスは、FT-240#43のコアに、ふた束の10本のより線を12回巻き、このふた束のコイルをパラ接続した上で、10組になったコイルをすべてシリーズに接続したもので、1.9MHzで計算通りのインピーダンス変換ができる事を確かめてあります。  巻線のサイズがAWG28でしたので、導体抵抗を小さくする目的でふた束のより線を使いましたが、 後日、インピーダンス変換トランスの実験をしましたら、コイルをパラレルで接続したトランスは広帯域性が改善される事が判りました。1組のコイルより2組のコイルを並列接続したトランスが、より正確なインピーダンス変換比を確保できるようなので、ひとり悦に入っていました。

このトランスの7個目のタップに同軸ケーブルを接続し、アンテナを6個目のタップに接続してやると、約37Ωへ変換出来ます。実際にSWRを測定すると、アンテナ共振周波数で、SWR1.05くらいになっていました。   

ローディングコイルは、以前、アンテナチューナー検討用に作成したものを流用しました。 VU40の塩ビパイプに1mmの銅線を約0.8mmのスペースで45回巻いたもので、約45uHのインダクタンスとなっていました。 7MHzでのQは230、3.5MHzで137有りましたので、1.9MHzでも74以上は有ると思われます。 もし、Q=120のコイルならゲインが1dBくらい改善しますが、とりあえずの実験はこのQで我慢する事にしました。 このコイルのセンター付近に1ターンごとにタップを出し、ミノムシクリップでタップを選ぶ事により1.8MHzへの切り替えも行えるようにしてあります。

160mbox_1160mbox_2_2 
DX交信の前に、1.9MHzに調整して、国内QSOにトライです。 受信のS/Nは6m高の短縮ホイップより悪い感じですが、送信すると、相手の受信状態は、かなり良いようなレポートでした。 残念ながら、今回のLWと前回のホイップをスイッチで切り替えるという事はできず、簡単比較ができていませんが、飛びはかなり改善されたようです。     交信できた局は8エリアから6エリアまでカバーしました。  MMANAでのシュミレーションでは、-2.6dBiとなっていますので、6m高ホイップより13dBもゲインがアップした事になっているようです。

2014年CQ WW 160mコンテストに参加してみました。結果は、期待通りにはいきませんでした。コンディションにもよると思われますが、交信できた最長距離はサイパンとマニラの約2500Kmでした。ベトナムが599で入感していましたが、呼んでも全く反応なし。1KWの局もかなり手こずっていましたので、コンディションは良くなかったのでしょう。

6m高ホイップでは+20dB以上で入感する局と交信成立していましたが、このLWでは+10dB以上で入感する局とは交信できても、それ以下のSの場合、かすりもしないというのが実態でした。

この160m用アンテナを使用すると、40m用の垂直ダイポールが使えなくなり、夜、80mや40m、30mバンドで交信する事ができません。コンテストの時など、困りますので、上部エレメントを40m用垂直ダイポールの上部エレメントから17mバンド用のスカイドアループに変更しました。スカイドアループが同調フィーダー経由でMTUにつながっていますので、MTUから切り離し、この同調フィーダーの根本をショートした上で、160m用下部エレメントにつなぐ事にしました。 MMANAによるシュミレーションでは、ゲインが約1dB改善します。 実際に整合させると、給電インピーダンスは50Ωちょうどとなり、帯域幅も少し向上しました。

まだ、実践回数は少ないですが、2014年の広島WASコンテストで試したところ、国内QSOながら、CQを出して呼ばれる側を経験できました。また、これにより、80mバンドで垂直アンテナが使えるようになり、80mではカリフォルニアから呼ばれるというラッキーもありました。

垂直面指向性は一応DX向きの形をしているようです。

160mskdmmana

その後、このアンテナを数回使いましたが、送信機の出力でアンテナの共振周波数がずれるという問題に遭遇しました。スカイドア用ループを使った場合、1mW時の共振周波数と60W時の共振周波数の差が約30KHzくらいあります。7メガ用垂直ダイポールのエレメントを使った場合でも20KHzくらになります。 パワーでSWRが変わるで紹介の通り接近したエレメントどうしの干渉具合が出力で変わるようです。アンテナアナライザーで調整しても、実際の送信状態では、共振周波数がずれてしまう訳ですから、その内、調整作業が面倒になり、この方式のアンテナは使わなくなりました。 代わりに、独立したLWを臨時に展開して使う方法に変更しました。

 160m用ロングワイヤー(LW) 2 に続く。

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