2014年4月21日 (月)

パワーでSWRが変わる (出力を上げるとSWRも上がる)

<カテゴリ:アンテナ>

その1

今までの160m用のアンテナは、HF用スカイドアループをエレメントとした、つぎはぎエレメントを使用し、このつぎはぎの部分にはギボシ端子を多用していました。

アンテナアナライザーでSWR1.1以下に調整した後、実際の送信機とSWR計で確認すると、共振周波数が大きくずれます。また、出力を1W、10W、40Wと変化させても、SWR値が変わります。 アンテナアナライザーとの差は良くあることなのですが、出力10WでSWR1.1に調整した後、出力を60Wまで上げると、SWRが2くらいまで跳ね上がります。出力を10Wまで下げると、またSWR1.1に戻ります。 この原因は最初、マッチングトランスのフェライトコアの問題かも知れないと、SWRが悪化するのは我慢して、トランスを外してみました。少しは改善しますが、ほとんど同じという状況でした。

ギボシ端子は電流により接触抵抗が変わりやすいという情報を以前聞いていた事もあり、試しにギボシ端子を2~3回抜き差しして、再度SWRをチェックすると、SWR値と最低SWRになる周波数が変化します。単純な抜き差しで状態が変わるような不安定な接続状態になっている事は事実のようです。

そこで、このギボシ端子を全て廃止し、つぎはぎすべき場所が2か所のみになるよう、その他の接続部分はハンダ付けに変えてやりました。 そして、2か所の接続部分は丸端子とY端子をハンダ付けし、これをステンレスのビス、ナットで締め上げる構造にすると、アンテナアナライザーと10W出力の時のSWR差はかなり改善しましたが、10W時、SWRが1.1になるように再調整した後、60W出力で確認すると、依然としてSWRは2くらいです。

Giboshi

Nutt

左上は切り取ったギボシ端子。右上はビスナットに変更した接続部分。 なお、ギボシ端子の影響を確認できたのは、160mバンドのみで、80mバンド以上では影響なしでした。

10Wでは依然、SWR1.1ですから、まだ、高周波電圧の大きさで、共振周波数やSWRが変化する要因が隠れているようです。 整合回路のアース接続や、コイルのタップ切り替えにミノムシクリップを使っていますので、これが原因かも知れません。そこで、ミノムシクリップをハンダやナットによる締め付けなどの接続に変えてみましたが、あまり改善効果はありません。

この接続状態で、使っていない、7メガ用垂直エレメントの共振周波数をMTUで可変してやると、160mのアンテナの共振周波数が変わります。  普通、近接している他のバンドのエレメントとの干渉は有ります。しかし、干渉が送信出力で変化するのはあまり聞いた事がありません。そこで、160mのアンテナエレメントとして使っているHF用スカイドアのループを切り離し、短くなったエレメントが1.8MHzに同調するようローディングコイルを調整してやると、出力によって変化するSWRがかなり改善しました。60Wでも1.2以下です。 スカイドア用の同調フィーダーと7MHz用エレメントとの距離は5mmくらいで、この間の絶縁はポリ塩化ビニール(PVC)です。一応、専門書を読んでもPVCは10MHz以下なら使用可能となっていますが、この判定はPVCのtanδの変化からのみの判断であり、高周波の高電圧が加わると、誘電率が変わるのかも知れません。 そこで、LCRの共振回路を作り、このCの絶縁材料をPVCにして、出力で共振周波数が変わるかテストしてみました。出力を大きくするに従い、共振周波数は下がりますが、その差は1.8MHzで5KHzくらいで、内訳は1mWと1Wの差が4KHzで1Wと60Wの差は1KHzでした。1mWはアンテナアナライザーによるドライブですから、浮遊容量などが影響している可能性が大きいので、1Wと60Wの差だけが事実かもしれません。しかし、実際は1Wと60Wで10KHz以上のずれが発生していますので、これだけでは説明できません。

結局、原因は判らず、160m用ロングワイヤー(LW) 2に紹介の様に160m用の専用エレメントを6メーターくらい離して設置する事で解決しました。

後日、この真の原因が判りました。 その2の例でも説明していますが、絶縁ワイヤーの耐電圧の問題でした。 ビニール被覆の耐電圧以上の高周波電圧が加わると、そこでリークが発生し、電気定数が変わってしまうのが原因です。 しかも、この高周波耐電圧値は通常公表されていなく、かつ、継時変化により劣化する速度がかなり早く、屋外では1年もしない内にパワーでSWRが変化するような現象が発生するようです。

その2

1本のグラスファイバーポールにHF用スカイドアと6m用ヘンテナを架設し、それぞれ、約4mの長さの平行フィーダーで垂直に降ろし、別々のアンテナチューナーに接続していました。 この平行フィーダーの途中は束ねられ、風でフラフラしないようマストにしばりつけてありました。 建設してから2年が過ぎたころから、21MHzでパワーによりSWRが変わるという現象が出始めました。 

Multifeeder

具体的には、アンテナの4m下に置いてあるMTUのTX端子側で、アンテナアナライザーを使い、SWR1.1以下になるよう調整した後、実際に10Wの出力を出し、SWR計で測るとSWRが2付近になってしまいます。 そこで、10WのときSWRが1.1以下になるように再調整した後、アンテナアナライザ-で測るとSWRが2を超えます。 数か月悩んでいましたが、別件で6mの平行フィーダーを外したところ、このパワーでSWRが変わるという現象が起こらなくなりました。 HFと6mの平行フィーダーの結合状態がパワーで変わるという160m用アンテナのときと同じ原因でした。 建設当初からこの平行フィーダーの架設状態はあまり変化はないので、原因はワイヤーの塩化ビニールの被覆が劣化して、耐電圧が極端に劣化し、高周波電圧がこの限界を超えると絶縁破壊を起こすのが原因のようです。

対策は、左の写真のように、ふたつの平行フィーダーをマストを挟んで、MTUまで引き降ろす事にしました。 この対策で、完璧ではありませんが、10W出力でもアンテナアナライザ-でもSWR1.2以下に収まります。  恒久的には、他の方法を考えねばなりません。

送信機のパワーでSWRが大きく変わるような現象が発見されましたら、普通は最初にフェライトコアを疑いますが、ギボシ端子もかなり悪さするようです。さらに他のエレメントと極小間隔で接近している場合も互いに影響を与えるようです。同じような問題でお困りの時、参考にしていただけたら幸いです。

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2014年2月20日 (木)

80mバンド用アンテナ整合器

<カテゴリ:アンテナチューナー>

現在の80mバンドは7MHz用垂直ダイポールをローパス型π(パイ)マッチのアンテナチューナーで強制整合させていますが、7MHzのダイポールを3.5MHzで使う事だけで約3dBのロスを発生させ、さらにアンテナチューナーで約3dBのロスを発生させていることから、例え100Wでドライブしても、25W分しか放射に寄与しないという状況でした。

アンテナのサイズは変えられないので、せめてチューナーのロスだけでも改善できないものかと、ローディングコイルとマッチングトランスで整合器を作り、ロスの発生を少しでも改善する事にトライしました。

80mtrans1_2

80mtrans2

まず、マッチングトランスを作ります。 アンテナの給電インピーダンスが過去の実測結果より25Ωから30Ωくらいと予想されますが、実際の所は不明なので、FT-140#43というコアに6本のAWG24の線を束ねた状態で12ターン巻き、これをシリーズに接続し、実装状態でタップ位置を調整する事にしました。

80mtrans

ローディングコイルはVU40の塩ビパイプに1mmの銅線を1mmスペースで22ターン巻いたもので、3.5MHzのハムバンド内で共振するようタップを取ることにしました。

アンテナ実装状態でコイルは18ターンの時、共振周波数が3520KHz付近に収まりました。

また、トランスは同軸出力を4番目のタップへ。アンテナへの出力は3番目のタップから接続することで、共振周波数でのSWRは1.05以下になりました。 バンド内でのSWRは3.501MHzで1.2、3.574MHzで1.5となり、パイマッチのアンテナチューナーより広帯域です。

肝心な整合回路のロスですが、パイマッチのMTUを含め実測する事にしました。

Paitranslos 左上が実測回路です。同軸ケーブル側にアンテナアナライザーを接続し、MTUには実際のアンテナに接続します。 この状態で3.520MHzでSWRが1.0になるようMTUを調整しておきます。 次にアンテナを取り去り、代わりにエアーバリコンと可変抵抗をつなぎ、アンテナアナライザーのSWR表示が1.0になるようにバリコンと可変抵抗を調整します。その状態でMTUへ入力されるRF電圧VTと、可変抵抗の両端のRF電圧VAをオシロで読みます。 アンテナアナライザーをOFFにして、可変抵抗の抵抗値をテスターで測れば、入力側とアンテナ側の電力を計算できます。  この測定方法で実測した結果が右上の表です。 51.6%の損失とは、100W入力したとき、MTU内部で51.6Wロスするという意味です。 パイマッチのロスはシュミレーション値にかなり近いです。(パイマッチチューナーのシュミレーション値はπ型チューナーの内部ロス改善 を参照) トランス式の場合のロスは、トランスそのもののロスとローディングコイル内でのロスになりますので、実測値は妥当な数値でしょう。 パイマッチが約3dBのロスに対してトランス式は約1.2dBのロスにおさまりましたが、Sメーターが変化するほどのものではありませんね。 ただし、このトランス式整合器は、雨の日でも、SWRの悪化が少なく、再調整なしで使えることでした。 これが最大の利点かも知れません。

しかし、従来のパイマッチチューナーと比較すると、受信感度にムラが有ります。パイマッチに比べてSで最大2くらいダウンする事があります。 また送信でもトランス式よりパイマッチの方が、応答率が高い状態です。 この現象が有るため、前述の内部ロス実測までしたのですが、実測結果は理屈通り、トランス式の方が良い結果を示しています。 チューナーで打ち上げ角が変わるというのは聞いたことはありませんが、W6の局をふたつのチューナーで聞き比べても、パイマッチのチューナーの方が良く聞こえました。

この原因を調べるつもりでしたが、この整合器を使用するマルチバンドアンテナシステムはメンテナンスや台風のとき、そのマストを伸縮する事ができます。一度縮めて、また、最大長まで伸ばしたとき、アンテナの張力が変化し、共振周波数が変わります。パイマッチのチューナーの場合、簡単に再調整ができましたが、このコイル+トランス式の整合器の場合、伸縮の度に、ハンダゴテを持ち込んで、コイルのタップ位置を1/3ターン程度修正しなければならないという面倒がありました。 そのうち、プリセットMTUの防水BOXの中にATUの収納スペースを確保する必要が生じましたので、優先順位最下位のこの整合器は撤去されてしまいました。

2015年1月追記

原因が判ってきました。 ベースとなるアンテナは7MHz用の垂直ダイポールですが、上下のエレメントは不完全な平衡状態でした。 このアンテナに上部エレメント側だけ延長コイルを挿入し、強制的に同調させた為、実装されているフロートバランの能力不足もあり、上下のエレメントで電流分布がかなりアンバランスとなって、打ち上げ角が変化したものでした。 再度、この整合システムを使うつもりはありませんが、原因が判ったのでレポートしておきます。

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2014年2月11日 (火)

FT-450 送信不能

<カテゴリ:FT-450>

中古で購入して、すでに4年経過していますが、先日、突然、送信できなくなりました。全バンド、全モードともアンテナ端子から出力が出ません。受信は全バンド、全モードOKです。マイコンやDSPがからんでいないようなので、自分で修理する事にしました。

ファイナルユニットへ送信信号を入力する同軸ケーブルのコネクターを引き抜き、オシロを当てても信号は見えません。IFユニットが怪しそうですので、配線図と、サービスマニュアルを頼りに、RF信号がどこで途切れているか、オシロのプローグを出力側から順に、当てていくと、Q2002のコレクタにはRF信号が有りませんが、ベース側にはRF信号が出ています。

テスターでこのQ2002の導通テストをすると、なんと全端子間がオープン状態。 完全に死んでいました。このトランジスタの品番は2SC5415EでUHF増幅用、SANYO製です。インターネットで探すと、すでに廃番で、2SC5415Aに変わったとの事。ここまでは、検索できましたが、通販情報が見つかりません。SANYOはONセミコンに吸収されたので、ONセミコン関連の情報を探すと、NE85634とコンパチである主旨の記事が見つかりました。 聞きなれない品番ですが、「NE85634」で検索をかけると、ルネサスの2SC3357と互換性があるという情報が出てきました。 この2SC3357というトランジスタはFT-450の他の場所で使っています。Q2020がそうでして、Q2020の出力をBPFを通した後、Q2002に送り、Q2002で増幅した後、ファイナルユニットへ送るという構成です。

Ft450_rfif_2 

この2SC3357なら沢山の販売店が通販しており、簡単に入手できます。 SPECを調べると、2SC5415のfTが6.7GHzなのに対して、2SC3357のfTは、6.5GHz。その他はほとんど一緒です。 まず間違いなく代替え可能なようです。

通販で手配した2SC3357が入手出来ましたので、壊れた2SC5415と交換しました。 結果、FT-450の送信機能はすべて正常に復帰しました。

Ft450q2002互換性があるのなら、わざわざ品番の違う物を使うより、統一した方がよさそうですが、量産設計の場合、1万台作っても全部良品で無くてはならず、修理のように1台限りが良品になったら良いと言う訳にはいきません。 多分、何かの理由により、品番を分けて量産したのでしょう。 そして、最終的に、同じトランジスタでも良かったとなったとしても、開発過程において、膨大な時間と人員をかけて、確認した品質評価をやり直す必要がある事から、2種類の品番を使い分ける状態になってしまったと推測します。

多分、メーカーは代替えをOKしないと思いますが、私が使うこのリグの場合、この現物だけがOKになれば良いですから、勝手に変える事にします。

壊れた原因ですが、以前、このトランジスターの近くにある+Bラインのタンタルコンデンサがリークするという故障がありました。その時の原因は雷の誘導雷でした。多分、この時の後遺症が出たのでしょう。

3か月もたたない内に、また送信不能になりました。こんどは、Q2002のベースに信号が有りません。 配線図と、サービスマニュアルから、信号を追いかけていくと、第1局発とのバランスミキサーまでは信号が出ていますが、その後のQ2022のベースに信号が見えません。

この間はコイルと抵抗コンデンサだけで半導体は無いのにと、オシロのプローブを各接続ポイントに当てていくと、信号が見えるところがありました。シメシメとその前後を再チェックすると、先ほどまで信号が見えなかったポイントでも信号が見えます。おかしいなあと思いながら、後段へチェックポイントを移していくと、今まで信号が無かったポイントにもちゃんと信号が出ています。結局、Q2002のベースまでは正常に信号が出ているでは有りませんか。

ただし、Q2002のコレクタには信号は有りません。トランジスタをテスターでチェックするとコレクタ、エミッタ間がショートしていました。 また、このトランジスタが壊れています。仕方なく、このトランジスタを交換しましたが、まだ出力は出ません。テスターで送信状態のDC電圧をチェックするとQ2002のエミッター電圧が異常に高い状態です。詳細を調べたところ、エミッター抵抗のR2009 10Ωが断線していました。この抵抗を良品に取り替えたら、故障は直ってしまいました。

今回の故障の原因は、まず、ひとつがチップ部品のハンダ付け不良が考えられます。オシロのプローブで抵抗の電極を押さえていくといつのまにか直ってしまったというのはこれくらいしか考えられません。 倍率10倍のルーペでチップ部品のハンダ付け部分をチェックし、怪しいと思われる所を再ハンダしました。 次にQ2002がショートし、R2009が断線した原因ですが、回路図や実装状態を見ても、C2006かC2010がショートして、また元に戻ったくらいしか思いつきません。 とりあえず、このふたつのコンデンサを手持ちの1608タイプのコンデンサに交換しました。 

これで、当分様子をみようと思っていましたら、今度は50メガのAMモードで送信出力がなかなか規定値に上昇しないという問題に遭遇しました。

モードをAMにしておき、スタンバイスイッチを送信にすると、送信モードにはなりますが、出力が5Wも有りません。そのまま送信状態を維持すると、約20秒かかって、規定の25Wになります。この現象は7メガでもありますが、7メガの場合、約7秒で規定出力になります。 ただし、7メガの場合、一度規定出力になった後、受信に戻し、再び送信すると、いきなり規定出力になりますが、50メガの場合、受信に戻し、再度送信状態にしても、また20秒くらいかかって出力が徐々に上昇するという症状です。 販売店経由でメーカーに修理依頼しましたが、DSP当たりがおかしいとのことで、基板ごと交換することになりました。 

この基板交換で、送信不能も再発しない事を願う事にします。

その後トラブルもなく長年6mバンド100W機として使ってきましたが、FTDX-101D導入に伴い、2023年6月に売却しました。

 

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2014年1月23日 (木)

160m用ロングワイヤー(LW) 1

<カテゴリ:アンテナ>

ペットボトルにコイルを巻いた6m高の超短縮ホイップアンテナは、国内QSOに限れば、そのサイズ以上の成果を出してくれましたが、DX交信には無理があるようです。  MMANAによるシュミレーションでは-15.6dBiくらいのゲインでしたので、100Wの送信でも、実際は3W分くらいしか輻射されていなかったのが最大の原因のようです。

せめて6000Kmくらいの距離まで交信できるようなアンテナをMMANAを使い検討していましたら、現用の7MHz用垂直ダイポールを接地型垂直アンテナにすれば、まだマイナスゲインですが、そこそこのゲインが得られる事が判りました。 ただ、現在の垂直ダイポールをそのまま使うと全長18mくらいしかない事と、ワイヤーの張り替えがかなり面倒です。そこで、7MHz用垂直ダイポールの上部エレメントをベランダの位置で切り離し、これに新たにワイヤーを継ぎ足し、例の金網のところまで、引き降ろし、この接地部分にローディングコイルとマッチングトランスを挿入した、ロングワイヤーなのかホイップなのか判らないようなアンテナで実験する事にしました。

160mboxロングワイヤーの全長は25mくらいになり、ローディングコイルは1.9MHzで約22uHくらいになりました。この状態での給電インピーダンスをアンテナアナライザーで測定したところ、35Ωくらいでしたので、トランスで整合させることにしました。

トランスは、FT-240#43のコアに、ふた束の10本のより線を12回巻き、このふた束のコイルをパラ接続した上で、10組になったコイルをすべてシリーズに接続したもので、1.9MHzで計算通りのインピーダンス変換ができる事を確かめてあります。  巻線のサイズがAWG28でしたので、導体抵抗を小さくする目的でふた束のより線を使いましたが、 後日、インピーダンス変換トランスの実験をしましたら、コイルをパラレルで接続したトランスは広帯域性が改善される事が判りました。1組のコイルより2組のコイルを並列接続したトランスが、より正確なインピーダンス変換比を確保できるようなので、ひとり悦に入っていました。

このトランスの7個目のタップに同軸ケーブルを接続し、アンテナを6個目のタップに接続してやると、約37Ωへ変換出来ます。実際にSWRを測定すると、アンテナ共振周波数で、SWR1.05くらいになっていました。   

ローディングコイルは、以前、アンテナチューナー検討用に作成したものを流用しました。 VU40の塩ビパイプに1mmの銅線を約0.8mmのスペースで45回巻いたもので、約45uHのインダクタンスとなっていました。 7MHzでのQは230、3.5MHzで137有りましたので、1.9MHzでも74以上は有ると思われます。 もし、Q=120のコイルならゲインが1dBくらい改善しますが、とりあえずの実験はこのQで我慢する事にしました。 このコイルのセンター付近に1ターンごとにタップを出し、ミノムシクリップでタップを選ぶ事により1.8MHzへの切り替えも行えるようにしてあります。

160mbox_1160mbox_2_2 
DX交信の前に、1.9MHzに調整して、国内QSOにトライです。 受信のS/Nは6m高の短縮ホイップより悪い感じですが、送信すると、相手の受信状態は、かなり良いようなレポートでした。 残念ながら、今回のLWと前回のホイップをスイッチで切り替えるという事はできず、簡単比較ができていませんが、飛びはかなり改善されたようです。     交信できた局は8エリアから6エリアまでカバーしました。  MMANAでのシュミレーションでは、-2.6dBiとなっていますので、6m高ホイップより13dBもゲインがアップした事になっているようです。

2014年CQ WW 160mコンテストに参加してみました。結果は、期待通りにはいきませんでした。コンディションにもよると思われますが、交信できた最長距離はサイパンとマニラの約2500Kmでした。ベトナムが599で入感していましたが、呼んでも全く反応なし。1KWの局もかなり手こずっていましたので、コンディションは良くなかったのでしょう。

6m高ホイップでは+20dB以上で入感する局と交信成立していましたが、このLWでは+10dB以上で入感する局とは交信できても、それ以下のSの場合、かすりもしないというのが実態でした。

この160m用アンテナを使用すると、40m用の垂直ダイポールが使えなくなり、夜、80mや40m、30mバンドで交信する事ができません。コンテストの時など、困りますので、上部エレメントを40m用垂直ダイポールの上部エレメントから17mバンド用のスカイドアループに変更しました。スカイドアループが同調フィーダー経由でMTUにつながっていますので、MTUから切り離し、この同調フィーダーの根本をショートした上で、160m用下部エレメントにつなぐ事にしました。 MMANAによるシュミレーションでは、ゲインが約1dB改善します。 実際に整合させると、給電インピーダンスは50Ωちょうどとなり、帯域幅も少し向上しました。

まだ、実践回数は少ないですが、2014年の広島WASコンテストで試したところ、国内QSOながら、CQを出して呼ばれる側を経験できました。また、これにより、80mバンドで垂直アンテナが使えるようになり、80mではカリフォルニアから呼ばれるというラッキーもありました。

垂直面指向性は一応DX向きの形をしているようです。

160mskdmmana

その後、このアンテナを数回使いましたが、送信機の出力でアンテナの共振周波数がずれるという問題に遭遇しました。スカイドア用ループを使った場合、1mW時の共振周波数と60W時の共振周波数の差が約30KHzくらいあります。7メガ用垂直ダイポールのエレメントを使った場合でも20KHzくらになります。 パワーでSWRが変わるで紹介の通り接近したエレメントどうしの干渉具合が出力で変わるようです。アンテナアナライザーで調整しても、実際の送信状態では、共振周波数がずれてしまう訳ですから、その内、調整作業が面倒になり、この方式のアンテナは使わなくなりました。 代わりに、独立したLWを臨時に展開して使う方法に変更しました。

 160m用ロングワイヤー(LW) 2 に続く。

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2013年11月10日 (日)

バランによるロス

<カテゴリ:アンテナチューナー>

MMANAのシュミレーションによる給電部のインピーダンスや共振周波数が、アンテナアナライザで測定した給電部のインピーダンスや共振周波数と、かなり差がありましたが、MMANAの癖やアンテナの周囲の影響だろうと、諦めていました。 しかし、最近、3.5MHzの効率の改善を行うべく、トランスだけの整合回路を実験したところ、使われているバランが、期待している状態になっていない事に気付きました。

今まで使用していたバランは、コアのギャップに紙を挟み、コアの磁気飽和を防止するようにしたクランプコアを使っていました。 そして、ハイバンドでノイズカット能力が確認できるなど、それなりに機能していました。平衡線をコアに巻いたフロートバランの場合、片側のラインだけを見ると、大きなインダクタンスにより不平衡電流を阻止しますが、バランの中を流れる平衡電流に対しては、インダクタンスは往復でキャンセルされ、実質ゼロになるのが理想です。 しかし、実際はこの平衡電流に対しても、インダクタンスを有し、実測で0.56uHくらいになっていました。      給電線に0.56uHのインダクタンスが存在しても、ローディングコイルが挿入されたのと同じ効果ですから、MTUを使う整合システムでは、これを含めて整合させますので、問題になる事は、ほとんどありません。 

しかし、3.5MHzで、バランのインダクタンスを加味したシュミレーション結果は、共振周波数もインピーダンスも全く一致しないのに、バラン無しの時の共振周波数のMMANAシュミレーション結果と実測結果はかなり一致している事が判りました。    原因は平衡線間の静電容量かも知れないと、この容量を測ってみました。Balan2_3

すると、58PFの容量が検出されました。そして、左上の回路のごとく、バランとアンテナとの間に、この58PFを挿入して、MMANAでシュミレーションすると、一致とはいかないまでも、かなり近い共振周波数を得る事ができました。 なお、インピーダンスはMMANAに注釈がある通り、シュミレーション値よりかなり高い実測値でした。 また、この静電容量有り無しによるゲイン差から、静電容量がある方が約16%もロスしている事が判りました。 

線間容量が増えた原因は、バランスを重視する為、平衡するワイヤーを互いによじった事が一番影響しているようです。

バランの線間容量が増えると、低い周波数での影響は小さいですが、高い周波数になると、これが、Qの低いローパス型のアンテナチューナーを形成し、みかけのインピーダンスを小さくしてしまいます。インピーダンスが小さくなると、これに整合するように調整されたアンテナチューナーのロスが増え、バランによるロス以上にアンテナチューナーのロスが増えてしまいます。また、バランの自己共振周波数を下げてしまいますので、共振周波数より高い周波数では、バランの効果は期待できません。今までのバランの共振周波数は約28MHzでしたので、28MHzの調整がシュミレーション通りにいかない原因にもなっていました。

通常のバランでは、ワイヤーを互いによじった方が良いと解説されていますが、純抵抗になった共振状態のアンテナに使う場合、広帯域性を確保するために必要でも、今回のような同調フィーダーを使用したアンテナチューナーに使う時は、弊害が大きいようです。

実際に困るのは、ロスが増加する事以上にシュミレーションと実際の共振周波数やインピーダンスが大幅にずれてしまい、調整の方向性を時々見失う事です。

Newbln

線間容量を減らすには、線どうしをよじらないことと、線間の距離を大きくする必要から、絶縁材の厚い電線を使いますので、クランプコアには巻く事が出来ず、フェライトバーに巻くことにしました。    フェライトバーは入手の都合で100mmの長さのものにし、電線はUHF用メガネフィーダーの外皮を裂いて、中の芯線を取り出し、利用しました。

このバランの往復線路上のインダクタンスは約0.9uHで、クランプコアよりバランスは悪くなっていますが、線間容量は約28.5PFまで改善しました。これを3.5MHzで使った時のロスは8%くらいですので、クランプコアより8%は改善できた事になります。 このバランの自己共振周波数は31MHz付近になりましたので、とりあえず、10mバンドまでは使えるでしょう。

3.5MHzで8%くらいのロスなら、28MHzではもっと大きいのでは?とMMANAとTLWでシュミレーションしてみました。所が、以外と影響は少ない結果がでました。

Balanloss10m 「チューナー出力」で示す数値は100%の入力に対してチューナーから出力される割合です。92%とある場合、100W入力した時、チューナー出力は92Wしかなく、8Wロスしたという意味になります。

「バラン無しを100%とした時」の数値はチューナー出力にゲインの差を加味した数値です。

ロスの値はチューナーに使われているコイルのQで大きく変わります。私のチューナーで使われているコイルのQは100くらいですから、バランの有り無しで約6%くらいしか変わりません。 実際にバラン有り無しで、28MHzをワッチすると、Sの差はほとんどありませんが、ノイズはSふたつほど、バラン無しの方が多くなります。

同調フィーダーにバランを使ったとき、共振周波数が大きくずれたり、パワーがロスしているような気配を感じたら、一度バランの線間容量を疑ってみる価値はありそうです。

先輩諸氏が、フェライトバーに平行線を巻いて、バランを作成していますが、磁気飽和だけの問題ではなく、線間容量の増大という問題も同時に解決する手段でもあるんですね。 今回は、メガネフィーダーの芯線を取り出して、巻線しましたが、色々とアドバイスをして頂いたOMから、メガネフィーダーの黒色の外被ごと巻き込んで好結果を得たという話を伺った事を思い出しました。

この問題の提起となった、トランスにより整合させた3.5MHz用アンテナは、どういう訳か、パイマッチのMTUより受信時のSが落ちてしまいました。 その後の調査で、アンテナ整合回路によって、アンテナの打ち上げ角が変わるという問題である事が判りました。 

 

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2013年10月21日 (月)

アンテナシステム立て替え

 <カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

T26_hason四国沖の太平洋を北東に進む台風26号を甘くみていました。夜中の3時ごろ、アンテナが折れて倒れてしまいました。10段つなぎの下から2段目の部分で折れており、アンテナは3階のベランダから逆さまにぶら下がっていましたので、明るくなるのを待って、早々に壊れたアンテナを撤去しました。

アンテナがなければ何もできませんので、立て替える事にしましたが、構造は従来通りとし、スカイドアの横幅を小さくし、見てくれを少しだけ改善することにしました。ポールは10m EXTRAというドイツ製のポールをインターネットで見つけて、その日の内に注文。

 

Sk1310s_2ポールが届くまでの間に、MMANAでシュミレーションです。 横幅を3mから2.6mに縮小した代わりに、従来のループ長を変えない為に、ループの高さを5.4mから5.9mに変更しました。 各バンドの特性を確認すると、14MHzと28MHzで0.2dBくらいゲインがダウンし、21MHzでは逆に0.2dBくらいゲインがアップします。インピーダンスの変化もわずかで、MTUで調整範囲と見込まれます。

次の日、ポールが届いて、プラスアルファの長さを得る為に、余っている釣竿を継ぎ足しますと、なんと12.8mにもなってしまいました。 従来のポールは釣竿を継ぎ足しても11mでしたので、これでは長すぎます。 継ぎ足す釣竿の段数を減らし、ポールの高さは11.5mに留めることにしました。これで、7MHzの垂直ダイポールは上部エレメントのみ50cm長くなったオフセット給電になりますが、MTUのカバー範囲ですので、これもOKとします。

横幅を縮小した為、見た目は、スリムになりました。 また、6mのヘンテナの給電部分が垂れ下がって、アンテナを上げ下げする度に、共振周波数がずれるという問題がありましたので、今回、グラスファイバーの支柱を追加して安定させました。 

ポールの直径が一回り大きくなり、ステーを固定するマストベアリングが、マストの根本から挿入できない事をアンテナが完成してから気づき、アンテナを分解して、マストの先端からマストベアリングを挿入するという、面倒事もありましたが、また、元の位置に立てる事ができました。 色が黒からグレーになった関係で、少し目立ちます。

前回のアンテナは1年半の寿命でしたが、今回はせめて3年はもたせたいですね。

Mtu131207

ベランダに置かれたMTUも若干増加しました。右側の列の上から2番目に有った、3.7MHz用MTUを3.8MHz用に変更し、3番目のMTUは3.5MHzの臨時逆V用のT型MTUに変更しました。  また、一番下に7MHzの臨時逆V用チューナーが追加されました。 

左側の一番下には、3.5MHz用整合回路が追加されました。 この3.5MHz用整合回路は、ローディングコイルとインピーダンス変換用トランスで構成され、チューナーとは呼びませんが、パイ型チューナーより広帯域ですので、最近の国内交信はもっぱらこの整合器を使っています。  ただ、この整合器を使うと、パイマッチのMTUより受信のSが低くなる傾向があり、原因を調査中です。
 

160m用アンテナ追加に続く

 

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2013年10月 6日 (日)

160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナ 2

<カテゴリ:アンテナ>

ペットボトルが内側へ凹み、線間ショートが発生して使えなくなった短縮ホイップアンテナを再度作り直す事にしました。  今回のペットボトルは、特売していたキリンレモン用にしましたが、中身を飲み干して、ボトルのボディ強度をチェックすると、三ツ矢サイダーより弱い感じ。 

160mwp1_2 導線は、線間ショートが発生しにくい、1.5φのマグネットワイヤー(PEW線)を1Kg手配して、これを、ゆるみが出ない程度に軽く巻く事にしました。全巻き数は112ターンとし、下側から10ターンの所にタップを作っておきます。

160mwp3160mwp2 
これに上部エレメントとして、2mの1.25SQの銅線をつなぎますが、調整が簡単にできる様に、ミノムシクリップ付とし、クリップの移動で+/-20KHzくらいの可変が出来るようにしました。

このコイルを6.3mの釣竿にくくりつけて、竿を持ち上げると、結構竿がしなります。前回はアルミ線で、重さ200gでしたので、さほど感じませんでしたが、今回は600gと、かなり重くなってしまいました。 風のある日は要注意です。

下側のエレメントのクリップで、タップの部分をつかんでおき、アンテナアナライザーをつなぎ、1.910MHzで50Ωのインピーダンスになるようにコイルの巻き数と、上部エレメントをカット&トライします。  コイルの上端から30cmのヒゲを出し、これを長さ152cmまでカットした上部エレメントのクリップでつかみ、共振周波数を微調整します。 

この状態で。下側のエレメントをタップからコイルの端部へ移すと1.817MHzに同調するようにタップから下側のコイルの巻き数を調整しました。

調整完了した時点で、1.9MHz時のコイルの巻き数は99.7ターン。1.8MHz用に巻き足した部分は9.4ターンとなり、この状態でのSWRは1.910MHzで1.0、 1.817MHzで1.1くらいに収まっています。いずれの場合でもSWR1.5の幅は+/-2.5KHz程度でかなり狭いです。

 160mwp4_2アンテナアナライザーで調整完了したので、実際の送信機で確認してみました。 10W出力では、OKなのですが、出力を40Wまで上げると、SWRが2くらいまで跳ね上がります。 出力を20Wくらいまで下げると、SWRは次第に下がり、10Wのときと同等まで変化します。

このような変化は温度に関係します。しかも、パワーを上げたら、SWRが悪化し、下げれば良くなるというのは、どこかでパワーロスしている証拠です。 しかし、アンテナを倒し、コイルを握っても温度差は感じられません。 良く見ると、上部エレメントの先端部分より上の約10cmくらいの長さの釣竿が燃えてしまい短くなっていました。 ワイヤーの塩ビ被覆のこげ具合から、スパークが起こったと思われます。  対策案もすぐには出てこないので、とりあえず、ワイヤーの先端から5cmくらいのところで折り曲げ、先端と釣竿の間に隙間を確保しました。 この状態で再度送信テストを行うと、60W連続送信では、SWRが変化しなくなりました。

夜になるのを待って、まず受信性能の比較。 ちょうど7エリアの局がCQを出していましたので、7MHz用垂直ダイポールと比較しました。 垂直ダイポールではS7でしたが、この短縮ホイップではS9です。前回のアルミ線では、これほどの差は無かったような気がします。 他のエリアの局を聞き比べても、Sひとつ以上の差がある事は確かです。 先端が、シャックより低い位置にある短縮ホイップが、7MHz垂直ダイポール+NT-636の組み合わせより、良い事だけははっきりしました。

CQ局を呼んだり、CQを出したりして、 すでに3局とQSOでき、喜んでいると、通りがかりのドライバーが、わざわざ車を止めて、短縮ホイップを見ているという話が飛び込んできました。 まさか?と思い、CQを出しながら、窓を開け、アンテナを見ると、キーイングに同期してアンテナの先端に紫色の光が見え、時々火花が散っていました。 コロナ放電です。  出力が60Wくらいでは起こりませんが、100Wにすると発生します。 SWRは1.5以下ですが、フラフラしています。 昼間は、明るくて見えませんでしたが、40Wの出力で、この現象がより激しく起こっていたのでしょう。

160hpcorona2 

JA1AEA鈴木OM著「キュービカル・クワッド」の中に出てくる、キトーの4エレ八木が火花を散らすシーンを思い出してしまいました。 ここは、標高230m。 コイルのQが上がったのか? アースが良すぎるのか? とにかく、火花は散りますが、交信はできます。 さあ、どうしようか?    対策が必要です。

とりあえず、その晩は出力を絞って、交信する事にしました。  交信できたのは全部で7局。コロナ放電以外は、好結果でした。

160hpcorona3次の日の朝、この垂直ホイップを撤収し、まず、コロナ放電対策です。上部エレメントの先端に丸型端子をカシメ、先端に丸みを持たせました。市販のホイップアンテナの先端には飾りを兼ねて、キャップが付けられていますが、あれも、コロナ放電対策ですね。

このコロナ放電対策は有効に機能し、100WのCW送信でもSWRは安定しています。  やっと、フルパワーで運用出来るようになりました。

また、上部エレメントをミノムシクリップでくわえて長さを調整できるようにしていましたが、釣竿を立てたり、倒したりしている内に、外れる事が多く、ワイヤークリップタイプに変更しました。 ワイヤークリップのビスをプラスチックのノブ付に変えましたので、簡単にワイヤーの長さの変更が可能になりました。 この部分を1cmスライドさせると、周波数は約5KHz変わります。

160mhp10_2160mhp11_2 

暗くなってから、再度コロナ放電を確認しましたが、OKのようです。 この日の晩に交信できた局は8エリアから6エリアまで全9局。途中、従来の7MHz用垂直ダイポールに切り替えたりして比較しましたが、受信時の信号強度差がそのまま送信でも現れているようでした。 

後日、実際のアンテナとMMANAのシュミレーション状態を比較してみました。 残念ながら、一致しているとは言えませんでした。多分、コイルのインダクタンスとQがシュミレーションより大きいのではないかと思われます。また、ポールの高さを8m品に変えると、共振周波数やインピーダンスがずれますが、シュミレーション値との差が大きくなる事もわかりました。 多分、地上高が高くなった分、地面の影響より周囲の影響を強く受けるようになったと思われます。 MMANAでのシュミレーションはあくまでも、傾向を知る程度にしておくべきでしょう。


このアンテナの性能を確認するために、2013年のCQ WWコンテストに参加してみました。受信はモスクワ、北京、北米などがS9くらいで聞こえますが、応答しても、QRZすら返ってきませんでした。+20dBで入感していた、ソウルとサハリンと交信でき一応ポイントは計上できましたが、このホイップアンテナは1600Kmくらいが限界かも知れません。ちなみに、このバンドでCQを出しているJA局は、のきなみ+20~+40dBで入感していました。

送信能力を上げるには、QROするか、アンテナの効率アップしか方法はありません。QROは街の真ん中ですのであきらめ、効率アップが期待できるロングワイヤーアンテナを検討する事にします。

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2013年9月28日 (土)

160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナ 1

<カテゴリ:アンテナ>

160mバンドで、S9のCQに応答しても、全く無視される事が多い、7MHz用垂直ダイポール+T型アンテナチューナーより、少しは応答率が上がるかも知れないという、移動用の超短縮型Whip(ホイップ)アンテナを実験しました。

160hoip6原型は、CQ誌で紹介されたり、インターネット上でも製作例が多い、大型コイルを使った全長6.3mのホイップアンテナです。 なぜ、アースが重要になるWhipを選んだかと言うと、家の敷地の隣に約40m四方の調整池があり、その周りを金網の塀でしっかり取り囲んでいます。この金網の接地抵抗を以前ブリッジ法で測った事があり、正確では有りませんが、40Ω以下でした。 直流抵抗が40Ωでも全長130mの金網は大地に対して、大きな静電容量が期待できます。 この金網をアースとして使えば、FBなアンテナが出来そうですが、北側や西側には土手が有り、東側には我が家があり、唯一、南側だけが開けているという立地条件で、適当なアンテナの構想が無く利用していませんでした。

今回、移動用160mアンテナを実験するに際し、この金網をアースとして使えるかを含め実験する事にしました。

実験するのは、全長6.3mの釣竿に、ペットボトルに巻いたコイルを吊り下げた超短縮型ホイップアンテナです。  竿の先端は、7MHz用垂直ダイポールの給電点より低いというこのアンテナを、MMANAでシュミレーションし、そこそこの特性が得られましたので、実際に製作にかかりました。

コイルの導線は園芸用に安く売られているコーティングされた1.5φのアルミ線を使います。 また、ボビンは定番の三ツ矢サイダー用ペットボトルとしました。

160hoip1160hoip2 

コイルは、シュミレーションでは100ターンで検討しましたが、後でほどいて調整できるように巻けるだけ巻いた結果、117ターンになりました。

160hoip3

160hoip9_2このアンテナの特性はMMANAでのシュミレーションで以下のような要領で調整してゆけば良い事が判りました。

・ コイルのインダクタンスと上部エレメントの長さを調整し、希望の周波数に共振させますが、最初は、仮に巻いたコイルのままで、1.25SQのKIV線で2mくらいの長さのワイヤーを取り付け、希望周波数近くになるよう、少しづつカットします。この仮のコイルのままで、周波数を合わせ込むと、カットし過ぎになりますので、要領が判るまで、上部エレメントは何回か作り替える覚悟が必要です。

・ 小さいインダクタンスと長いワイヤーでも、大きいインダクタンスと短いワイヤーでも同じ共振周波数を得る事が出来ますが、上部エレメントを長くすると、共振時のインピーダンスが下がってきます。 共振状態でのインピーダンスをアンテナアナライザーでチェックする事により、コイルとワイヤーをどうすれば良いかすぐに判断が出来ます。 シュミレーション状態より多くの巻き数で作ってある場合、インピーダンスは50Ωより高めに出ますので、せっせと、コイルをほどく事になります。

・ 上部エレメントの直径を太くすると、共振周波数が下がります。コイルをほどきすぎた場合、共振時のインピーダンスをあまり変化させる事無く、周波数を下げる事ができます。 具体的には、1.25SQのワイヤーを3C2Vの芯線と外被をショートした同軸に変えると、ほどきすぎたコイルをそのまま使う事ができます。 長さと共振周波数の関係はかなりクリチカルで、ニッパで切断する場合、5mm間隔くらいで慎重に切断していきます。

・ コイルのQを上げると、インピーダンスが下がり、ゲインはアップします。高いQのコイルを使用できる場合、上部エレメントを短くして、コイルのインダクタンスを上げれば、整合できます。 もっと高さのあるポールを使える場合、下部エレメントを長くするだけで、ゲインは上がります。 しかし、よりゲインを上げたければ、コイルの位置を下の方へ下げ、最大ゲインにした状態で、20~30Ωになったインピーダンスに整合するトランスを使った方が良いみたいです。

・ コイルから下のエレメントはかなりブロードで、下側のエレメントを変更して、特性を調整するような事は無理です。 たるんだ、ワイヤーを地面に這わせてもあまり変化しませんでした。

・ コイルのインダクタンスを微調整する為に、良く使われる、アルミのショートリングを近づけると、共振周波数の変化以上にインピーダンスの変化が大きく、調整不能になりますので、コイルは面倒でも、ほどいたり、巻き足す方法でカットアンドトライします。

 初日は、SWR 1.0で、とりあえず1.817MHzに同調しておりましたので、次の日、1.910MHzに同調するよう、タップを設け、タップを切り替えながら、ふたつの周波数が使えるように、完成度を上げる事にしました。

ところが、いざ、確認すると、昨日まで、1.817MHzで50Ωであったのに、共振周波数が上へずれて、かつ、インピーダンスが、200Ωくらいになっており、当然SWRも4くらいを示します。半日かけて判った原因はコイルの線間ショートでした。使っている、アルミ線は表面がコーティングされ、一応テスターで当たる限り絶縁されていますが、UEW線みたいに絶縁強度のスペックがある訳もなく、ちょっとした擦り傷で絶縁が壊れ、ショートしてしまいます。

電線をUEWかPEWに変える事を考えましたが、うまくいくかどうかも判らないアンテナに数千円のマグネットワイヤーは無理と、100円ショップで入手した9号サイズのテグスを、線と線の間に巻き込むことにしました。

 

160hoip5160hoip4 

左は手芸用品売り場で見つけた100円のテグス。9号サイズ30mと書いてありましたが、実際は38mくらいありました。 右は、そのテグスをアルミ線の隙間に巻き込んだ状態。もともと、完全な密巻きではなかったので、横幅の広がりもなく線間距離を確保できるようになりました。

このアンテナの アースは2個のミノムシクリップで金網を挟む事にし、設置や撤去がすぐにできるようにしています。 また、1.8MHzと1.9MHzの切り替えは、コイルのタップをミノムシクリップでくわえる方法です。 1.910で約55Ωくらい、1.817で約45Ωくらいのインピーダンスになりました。  コイルの巻き数は1.9のとき100Tくらい、1.8のとき110Tくらいになりましたが、最後はカット&トライしましたので、正確には数えていません。 防水は考慮してませんので、雨が降ったら、多分使用できないでしょう。

160hoip7160hoip8 

夜になるのを待って、ワッチしてみました。3エリアからのCQが聞こえます。受信能力は7MHz用垂直ダイポールより少しS/Nが良いというレベルですが、送信すると、垂直ダイポールではQRZすら返ってこないのに、この短縮ホイップでは、コールバックがあり交信成立。 この日のコンディションはあまり良く有りませんでしたが、とりあえず、CQを出してみました。さらに2局ほどとQSOできました。

飛びという面では、7MHz用垂直ダイポールよりはるかに優秀です。

気を良くしてCQを出していると、突然、SWRが無限大になりました。外に出て、アンテナ直下のSWRを確認しましたが、同じく、無限大。アナライザーで確認すると、共振周波数が2.2MHzくらいまで上昇し、インピーダンスも200Ω以上になっています。線間ショートが起こった時の症状です。

160hoip10_2翌朝、釣竿を縮めて、コイルに手が届く位置にして、SWRを確認してみると、コイルがバラバラになりかけており、コイルにちょっと触れただけで、あっちこっちで線間ショートが起こっていました。この原因は、コイルとテグスをきつく締めすぎた為、ペットボトルが内側につぶれてしまったものでした。たぶん、巻線の途中で一部凹みが出来てしまい、それが、長時間の間に耐えられなくなり全体に広がり、つぶれてしまったのでしょう。

10分足らずの交信テストでしたが、国内交信なら、7MHz用垂直ダイポール+アンテナチューナーより可能性が大きい事が判りました。

これは、作り直しの価値があります。 また、三ツ矢サイダーを買いに行く事にします。

160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナ 2 に続く。

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2013年9月27日 (金)

コイルのQとショーティングスイッチ

<カテゴリ:アンテナチューナー>

160m用の短縮Whip(ホイップ)を検討中に判ったことです。 コイルの線間ショートが起こると、当然インダクタンスは減少する訳で、共振周波数が高い方へずれます。しかし、正常時、50Ωくらいの給電点インピーダンスが、200Ωくらいに跳ね上がりました。このインピーダンスの変化は、コイルのQに関係しているかも知れないと、別のコイルを使い、Qを実測する事にしました。

Qtest1左のコイルはメーカー製アンテナチューナーに内臓されていたステアタイト製のコイルです。

7MHzで、このコイルのQを測ってみる事にしました。

Q測定用エクセルファイルをダウンロード

まずは、①-③間のQを測り、このコイルの基本性能を把握します。

次に、①-②間のQを測ります。②と③の間は2ターン分となっていますので、この②-③間をオープンのままの時、及びショートした時のQをそれぞれ測ります。

また、コイルのショート位置が影響するか調べる為、①から電力を加え②にバリコンを接続した時と、②から電力を加え、①にバリコンを接続した時のQも比較しました。

②-③間オープンとショートでインダクタンスが変わりますので、アンテナアナライザーにて測定した共振周波数の変化から推定したインダクタンスと、このインピーダンスの変化から逆算したQ値を一緒に示します。

 Qtest4_2

 

上の表がその結果です。

このコイルの①-③間のQは7MHzで189ありました。かなり優秀なコイルと思われます。

次に、①-②間のQを②-③間をオープンにしたりショートしたり、また、コイルの向きを入れ替えたりして測定しました。コイルの向きを変えた時のQの差を確認したのは、いわゆる、コールド側でのショートと、ホット側でのショートに差が出るかを見たものですが、結果は測定誤差と考えられ、基本的には、変化無しと見てよさそうです。

Qtest3

しかし、②-③間のショートとオープンでは、明らかに差が生じており、インダクタンスもわずかに変化しますが、それ以上にQが変化し、ショートの時、逆算値以上に悪化しています。

この現象は、インダクタンスを形成する磁路の中に、ショート回路を挿入した事により生じるもので、線間ショートだけでなく、インダクタンスを可変する目的で、磁路に挿入するショートリングにも当てはまります。コイルの中に、または外側に、円筒形のアルミや銅板を挿入してインダクタンスを可変するバリアブルインダクターも同様です。

アンテナチューナーや、送信機のコイルのタップを切り替えるとき、選択しないタップどうしをショートする切り替え回路をたまに見ます。これは、オープンにした場合、タップの位置や使用周波数によって、高電圧が発生し、スパークするのを防止するのが目的ですが、当然、このようなショーティング方式のコイル切り替えもQの低下を招く事になります。

メーカー設計の場合、このQの低下を見越して、その他の回路が設計されているでしょうから、問題は有りませんが、自作のアンテナチューナーや送信機のタンク回路の場合、気にする必要がありそうです。

また、インダクタンスをショートリングで可変するような可変インダクターは、インダクタンスを小さくすると、リアクタンスの減少する割合以上にQが減少すると考えられます。

なお、ATUなどでは、使用しないコイルをリレーでショート していますが、これらのコイルはトロイダルコアなどを使い、それぞれのコイルの磁路が影響しないようになっていますので、問題はありません。

 

最初に疑問を提起した、160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナはMMANAでも、きれいにシュミレーションする事ができます。

コイルのQを100として、共振時のインピーダンスを50Ωに設計しておき、このアンテナのインピーダンスが200Ωくらいまで跳ね上がる時の、コイルのQを逆算すると、約Q=25で、実験結果と同じような数値が得られます。

160mに使われる短縮コイルが1ターンショートしただけで、Qは1/4までダウンするという事は、致命的な問題です。インダクタンスの調整の為、コイルをショートするとか、アルミ板や銅板でインダクタンスをキャンセルさせるような手段は、あまりお勧めできませんね。

その後の実験で、コイルのQが高すぎて、調整がしずらいアンテナチューナーに出くわしました。 また、100W送信時、オープン状態のコイルの端からスパークするという現象も経験しました。 Qが高ければ高いほど良いとは言えませんが。

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2013年8月17日 (土)

エレキー用パドルの製作

<カテゴリー:キーパドル>

移動運用に使う為に、軽い小型のパドルを手作りしました。

パドルを手作りしようと思い立ったら、まず、最初に、どんな材料が手にはいるか?とホームセンターや100円ショップ廻りをする事になります。まだ、図面化できていませんが、構想だけは持って、部品を物色する訳ですが、同じような事をしている様子は、良くホームセンターで見られる光景ですね。

約1週間くらいかけて、入手可能な材料と構造が固まりましたので、集めた材料を元に詳細設計を開始しました。

集めてきた材料です。

Pdlalknob_2

左のアルミ棒はキーアームに、右のプラスチックは、ライオン事務機の番号札と言われるもので5色各2枚組で売られていたものですが、パドルのツマミになります。

Pdlitabis

左のまな板は切り出して、パドルのベースに使います。右のビスは装飾を兼ねた取り付けビスとリード線を止める為の手ネジ端子に利用します。

Img_0885s_4Img_0893t_3

接点用の小ネジ、キーアームの支点を構成する為の寸法精度の良いスリーブ、接点間隔調整用手ネジなどを集めました。これ以外に、固定用の汎用ビスやコイルスプリングなどを確保して、具体的な設計製図をJW-CADを使って行います。

私の工具は、卓上ボール盤と卓上丸鋸だけですから、精度はあまり期待できません。寸法が重要な部分は既成パーツで間に合わせるのが一番です。

また、アルミ材に開ける穴の垂直度はかなり重要になりますので、ボール盤用のバイスとマスキーブロックと言われる、マグネット式のアダプターを使いました。

JW-CADで作成した組み立て図です。

Pdl1
Pdl2_2パドルとして一番重要な可動支点は、キーアームが軽いタッチで左右に回転し、かつ、上下方向にはガタが無く、シーソー運動も無いという構造を実現する為、タッピングビス2本で上下より支え、ビスの締め具合で調整するという構造にしました。

実際に作ると、左右の回転も上下のガタも、当初の構想通り出来るのですが、アームが水平になりません。

最初、支点になる穴は貫通穴としましたが、アルミ材に対して垂直度が出なく、裏表で穴位置が異なります。この為、アーム先端で3mm以上の段差が出てしまいました。アームが2本平行していますので、この2本分がそろわない事もあって、余計に目立つという事になります。2回目の加工品は、支点の穴を貫通させず、裏表それぞれ同じ位置に個別に穴をあけたところ、アーム先端で1mmくらいの段差になりましたので、一応、これで我慢する事にしました。

Pdlup1Img_0892s


キーアームの接点部分には1.6mmのビスをねじ込みました。(左上) また、この接点間隔を調整する為、手ネジを用意し、振動で間隔が変わらないようにスプリングで荷重をかけました。  アームのストッパー部分は消音の意味もあり、3mmのビスに赤色のビニールテープを巻きつけ、ストップ位置はテープの巻きつけ回数で調整しました。

接点を常にオープン状態に保持する為、つまみの固定ビスの部分にコイルスプリングを入れてあります。(右上)

コイルスプリングの強さはキー操作時のフィーリングに影響するので、最初、長めのスプリングを入れておき、実際にキーイングしながら、最適になるようスプリングを切り詰めていきました。

Img_0281


Img_0877s組み立て完了後の裏側です。

キーアームの支点となる2本のビスは裏側からもその高さが調整できるようにプラスチックベースをくりぬいてあります。

予定通り軽くなるように作りましたので、実際に使う時は、クッション材と両面テープを用意し、適当な台の上に張り付けて使用します。

クッションのサイズが前後で異なってしまったのは失敗でした。 2台目を作る時は、改良することにしますが、この1号機はこのままです。

下の画像は、完成したパドルをQRPトランシーバーのTOPパネルに張り付けた状態。

実際の移動運用時、このようにして交信しています。  エレキー回路はC-MOS ICによる自作回路で、このトランシーバーの中に内臓しています。 また、PICマイコンによるエレキー回路自作例は、トランシーバー内臓ではありませんが、エレキー回路の自作(PIC12F675) に有ります。

Pdlrig

2017年9月

Padolmk2

また移動運用を再開しましたが、パドルの底に付けた両面テープは粘着力がほとんどなくなり、キーイングの操作ミスが多発するようになりました。 やむなく左手でキーを押さえて右手でキーイングするという状態でした。 

そこで、ホームセンターで見つけた建築材用の大型角型ワッシャを重しとして追加しました。 ただし、そのままではテーブルの上で滑りますので、底にスポンジを張り付けてあります。

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2013年7月13日 (土)

430MHz用垂直ダイポールアンテナ

<カテゴリ:アンテナ>

6m & Downコンテストに毎年参加していますが、過去430MHzバンドはON AIRした事はなく、6mと2mのみにON AIRしていました。理由は430のリグは有りますが、アンテナが無いので諦めていた訳です。

このコンテストが始まる当日の朝、なんとか簡単なものでも出来ないものかと、物置を物色すると、昔、衛星通信用のクロス八木に使ったNとBNCコネクターが加工された同軸ケーブルが見つかりました。ケーブルはごつい8D2Vタイプでしたので、これに2mくらいの3D2Vを継ぎ足してケーブルを確保。 一番簡単なアンテナはダイポールということで、MMANAでシュミレーションしながら、実現可能なアンテナサイズを検討することにしました。

最初は単純な1/2λの長さで最適寸法を求めましたが、少しゲインがあるかも知れないという、片方の長さが5/8λになるダイポールとマッチング用スタブの付いたものを検討しましたら、ゲインが10dBiを超えるものができる事がわかりました。

430vdp1_2 430vdp2_2

全体の長さを5/4λにしておき、スタブを22cmのオープンタイプとすると、スタブのほぼ中央から給電したとき、SWRが1.1以下に収まりそうです。MMANAでシュミレーションした通りの寸法でアンテナを組み立ててみました。

430vdp4_3 材料は、物置に有り余っているグラスファイバー釣竿の未使用ロッドです。細くて使いにくいとかの理由でかなり残っていましたので、これに直径1.2mmの銅線を添わせ、ビニールテープで固定します。ビニールテープは高周波特性が悪くロスが出るといいますが、それは高周波絶縁に使った時の話。空中に持ち上げたら、絶縁は空気がになう事になりますので、無関係になります。ただし、雨が降ると、ビニールテープも絶縁の一部をになうので良くないみたいですが。

430cdp3 MMANAのシュミレーションで得られた寸法通り作成した上で、スタブの部分は後で同軸ケーブルのハンダつけ箇所を移動させる必要から、かなりの部分にハンダメッキを施し、修正が簡単にできるようにしておきます。

プラスチックのまな板から切り出したクロスマウントを2個作成し、ロックタイでくくりつけると簡単にアンテナができあがりました。これを長さ3mの釣竿の先にくくりつけベランダに立てました。アンテナはかろうじて屋根から顔を出している状態です。

さっそく、アンテナアナライザーをつなぎ、調整です。ところが、なんと433MHzでSWR1.0付近になっていました。周波数を可変すると430MHzから436MHz付近までSWR1.3以下。

過去いくつもアンテナを作ってきましたが、シュミレーション通りの寸法で一発でOKになった事は一度もなく、今回は、もうラッキーという以前に驚いてしまいました。 実際の送信機と外付けSWR計でみてもSWRは1.0です。たまにはこういう事もあるのですね。

こうやって、朝8時過ぎくらいから始めたにわかアンテナ作りは約3時間で完了。

コンテストは夜9時からですから、誰か電波を出しているだろうかとワッチしますが、全く信号なし。最近はこのバンドは誰も出ていないみたい。次の日、日曜日、やっと3局とQSOでき、ナンバー交換も終わりました。 何も聞こえないのはアンテナの性ではと心配しましたが、一安心です。 一番遠い局は、5W出力で約100Km離れた坂出市でしたので、一応ちゃんと電波は飛んでいるようです。

当地はコンテスト時以外、ほとんどON AIRする局がなく、このアンテナもコンテスト終了と同時に物置へ。

430MHzのハンディ機を持って、ベランダからQSOを楽しみたい時など、使える簡単アンテナです。かなりいいかげんに作ってもすぐに使えます。

430ではなく7MHz用垂直ダイポール関連情報はこちらにあります。

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2013年6月 6日 (木)

トロイダルコイルとチューナーの内部ロス

<カテゴリ:アンテナチューナー>

カテゴリ KEM-TRX7-LITE のQRP CW トランシーバー 2で紹介の通り、QRP CWトランシーバーの中にL型アンテナチューナーを内蔵させ、移動先で架設した釣竿アンテナに簡単に整合できるため、重宝していました。 このQRPトランシーバーを、HOMEの7メガ垂直ダイポールで運用した時と、移動先の釣竿アンテナで運用した時の飛びの感覚に、大きな差があり、これはアンテナの差なのだろうと、諦めていました。 しかし、HOMEで使う時は、内臓のチューナーはスルー状態ですが、移動運用の時には内臓チューナーのコイルが目いっぱい使われるという差がある事に気付きました。

ロスの少ないアンテナチューナーを目指して、コイルのQを測る治具と、結果を自動計算するエクセルファイルを作ったついでに、このQRPトランシーバーに内臓しているコイルのQを測って見る事にしました。

Kemantc0_4 Kemantc1_3

左がQRPトランシバー内臓のコイル。右はメーカー製アンテナチューナーに内臓されていたコイル。

トランシーバーからコイルを取り出し、測定治具につなぐと、測定用に用意したTS-930の周波数カバー範囲を超えてしまい、-3dBになる周波数が測れません。治具がおかしいのではと、メーカー製チューナーに内臓されていたステアタイトボビンのコイルを測定してみると、ちゃんと200くらいのQが得られます。送信機の代わりに、アンテナアナライザーをつなぎ、周波数を広範囲に可変してみたところ、Qは約2くらいという結果が得られました。アナライザーの出力が小さいので、誤差が大きいですが、何度測りなおしても、Q=3以下しかない事は確かです。 コアの色が青色でしたので、てっきり10MHzくらいまで使えるカーボニルコアと思ったのですが、違ったようです。

短縮型の釣竿アンテナで、思っていた以上に電波が飛ばないのは、どうも、このトロイダルコアに巻いたコイルのQが原因みたいです。 TLWと言うアンテナチューナーシュミレーターはQの設定を自由に変えられますので、いままでの状態でのチューナー内ロスを計算させてみました。すると、Q=15以上でないと計算できない、とコメントがでて、計算できません。アンテナチューナーに使われるコイルのQが3以下なんてことは、想定外なんですね。

TLWの紹介資料 tlw.pdfをダウンロード

移動で良く使う釣竿アンテナのインピーダンスはMMANAのシュミレーションで11.36-J91.41Ωとなっていましたので、TLWでQ=15で計算してみると、内部損失が41.8%と表示されました。実際のQは3以下ですから、推定すると、90%以上がロスしている事になります。

QRPの5Wで送信したのに、実はQRPPの0.5Wでしたという笑い話です。そして、アンテナチューナーを内蔵させてから、0.5W出力で一度も交信できていないという事も判りました。

Kemantc3 ここまで判ると、もう、このトロイダルコアタイプのコイルなど使えません。空芯コイルに作り替えることにしました。何回か試作してQ=114のコイルが出来上がりましたので、これにタップを設けて、ビルトインさせました。このコイルの場合、釣竿アンテナの時のロスは8.6%となりますが、電池のヘタリなどを考えると誤差内になりました。

写真の空芯コイルは直径0.6mmのUEW線を直径25mmのPPシートで作ったボビンに26回巻いたもので、10個のタップを出してあります。最大インダクタンスは約15uHです。ボビンや巻線がばらけないように、セロテープで固めました。

また、移動用アンテナの形態がほぼ固定され、インピーダンスに必ずプラスのリアクタンスが含まれるようにしましたので、チューナーの回路も一部変更し、使いやすくしました。 バリコンを回した時のSWR計の動きが、かなりクリチカルになりましたので、Qが向上した事が実感できます。

Kemanttuner1

外付けチューナーならQ=200のコイルも使用できるでしょうが、それに変更してもロスの改善は5%以下ですから、持ち運びがすっきりするビルトインタイプに軍配は上がります。

この改良型チューナーをテストする為に近くの「仁賀ダム LA20」の駐車場に移動してCQを出してみました。南北に400mくらいの山があり、かなり狭いくぼ地ですが、結構沢山の局からコールをいただきました。トロイダルコイルの状態で同じ場所に2回も移動し、交信局数0であったときより大幅改善です。

一般的にアンテナチューナーに使われるコイルのQは100以上あり、そのうえで、ロスが多いの少ないのと論じているわけですから、Q=3以下など論外でした。トロイダルコアを使ったコイルを採用する時は、真っ先にコイルのQを確認する事から始めることをお勧めします。

Q測定治具の回路図と自動計算式の付いたエクセルファイルを用意しましたので、気になる方はダウンロードして試してください。 なお、7メガでQ=60くらい以下を測定しようとすると、ハムバンドを超える周波数可変が必要です。最近のハムバンド以外は送信禁止のトランシーバーでは、測定できません。 逆に言えば、最近のトランシーバーで、測定できないようなコイルは使ったらダメという事でしょう。

Q測定用エクセルファイルをダウンロード

RF電圧計やオシロが使える場合、送信機の出力は測定できる範囲で小さくした方が誤差が少なくなります。 倍電圧整流回路の場合、送信機の出力を大きくした方が誤差は少なくなります。 コイルや送信機、オシロなどの位置を変えるだけで測定値が変わります。この測定回路の場合、一番大きな数値が実際のQに近いと考えられます。


アンテナチューナーのコイル切り替え時、ショーティングタイプのコイルはQの低下が起こる事が判りましたので、このQRP用アンテナチューナーもオープンタイプに変更しました。変更は簡単で、コイルの一方のワイヤーをニッパでカットするだけです。 この変更の後、599 FBのレポートが多くなりました。

以下に変更後のチューナー回路図を示します。

Kemanttuner2 

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2013年5月30日 (木)

π型チューナーの内部ロス改善

<カテゴリ:アンテナチューナー>

プリセットチューナーに使われているチューナーの中で、唯一80mバンド用のみπ型アンテナチューナーを使っています。 チューナーの中で、一番ロスが少ないのは、L型チューナーですが、コイルの可変が大変なので、π型で我慢している状態です。   この状態で少しでもロスを小さくするため、π型の一方のコンデンサ容量を、調整できる範囲で小さくし、L型に近づけることにしました。 雨が降ると、共振周波数が低い方へずれますので、最低この補正が可能な可変範囲は確保しなければなりません。

Mtuloss2  

プリセット式MTUの最初の検討時、T型で実験し、絶縁破壊で採用しませんでしたが、この時のチューナー内部ロスはシュミレーションで73.0%程度であったと思われます。 π型に変更した今までの状態はC2が100PFくらいでしたので、67.5%くらいの内部ロスになっていた模様です。

今回、このC2を調整可能なぎりぎりまで小さくしました。結果、内部ロスが54.1%くらいまで改善したようです。このチューナーをLタイプに変更した場合、C2の値は10PF程度になります。この10PFはストレー容量で、配線図上では、C2は存在しません。この状態でも内部ロスは52.7%くらいですから、C2が25PF(ストレー容量との合計容量)の時と1.4%の差しかありませんので、ほぼLタイプ同等のロスに収まったと思われます。

Img_0621s Img_0625s

左上の画像はC2の容量を減らし、インダクタンスを大きくした改造MTUです。 左側の黄色のポリバリコンはC2に相当し、ローターの羽を2枚として、最大70PFくらいにしました。右側の赤色のポリバリコンはC1に相当しますが、ローターは羽を7枚として、最大250PFくらいを確保し、不足分は固定コンデンサをパラつけしました。この状態のMTUを右上の画像の一番上の部分に実装しました。上から3番目のMTUは改造前のものですから、左側のポリバリコンの厚みが違うことと、コイルの巻き数が違う事がわかります。

ロス改善を行ったとは言え、その差はわずか13%くらいですから、Sメーターに差が出る訳もなく、ただ、気分だけの問題ですね。今回のコイルのQは100でシュミレーションしましたが、ほぼ現物と合っていると思われます。仮に、このQを200まで上げたとしても、ロスが6%くらいしか改善しませんし、それでも約半分のパワーがロスしてしまいます。 80mバンドで成果の上がらない原因は50%短縮のアンテナそのものなのでしょう。

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2013年5月15日 (水)

エレキー回路の追加

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

このQRPキットのPICマイコンの中には、CW用のエレキーソフトが内臓され、縦振電鍵用とエレキーパドル用とに切り替えられるようになっています。ただし、エレキー用を選択したときのキーイングスピードの調整は、とてもQSO中に変更できるようなアクションになっていません。 そのため、今までは外付けのエレーキーユニットを使用していました。

移動運用するには、このQRPトランシーバーとハイモンドのシングルレバーパドル、エレキーユニット、乾電池、アンテナワイヤー、アンテナポール用の6.3m釣竿など、かなりの荷物でした。これらの荷物を少しでも減らそうと、まず、ハイモンドのパドルを自作の軽いパドルに変更しました。この自作パドルの詳細は、エレキー用パドルの製作を参照してください。 

Onkey

次に、外付けのエレキーユニットをビルトインにすることにしました。

メイン機がTS-930Sであることから、最近のモデルには当然内臓されているエレキー回路がありません。よって、外付けの回路を使っています。 この回路はサーキットハウスがキットで発売していたもので、CK-100AというN9BQタイプのC-MOS ICによる回路です。現在はマイコンタイプが一般的ですが、006Pタイプのアルカリ電池につなぎっぱなしで2年半も使用できるという、超ロングライフな消費電流の為、QRPトランシーバーに内臓するエレキー回路もこの回路をそのままコピーして使おうと考えました。

ジャンク箱をひっくり返すと、この回路に使うC-MOS ICが出てきました。HitachiブランドでHD14001のような品番です。30年くらい前のICです。これを、ユニバーサル基板に並べて、CRはチップタイプで作りました。基板の表側にはICだけしかみえませんが、1608タイプのCRは、裏側の2.5mmピッチのランドに結構うまく乗ります。 オリジナルの回路はモニター用のサイドトーン発振器もついていますが、KEMのトランシーバー側にその機能がありますので、エレーキー基板には実装しません。

Elekypwb

配線が完了して、いざ、実働テスト。 残念ながら動きません。まず、クロックジュネレーターが動作しません。 速度調整用可変抵抗を可変すると、時々発振はするけど、まともな波形ではありません。 発振回路に使う0.1uFのコンデンサは1608のセラミックでしたので、これをCK-100Aと同じようにマイラータイプに変更したら、一応発振は継続するようになりましたが、周波数の可変がうまくいきません。 電源ラインには、ごく当たり前に、47uFの電解コンデンサと0.1uFのセラミックコンデンサを挿入してありました。しかし、オリジナルの回路では、電源ラインに電解コンデンサは使用していませんので、これを廃止しましたら、連続して、きれいに発振するようになりました。 それでもまだキーイングする出力は出ません。

配線図の写し間違いが無いか再三にわたりチェックしましたが、間違いはありません。しかし、おかしな部分に気付きました。ICの各端子をオシロで当たっていくと、H/Lの動作をしていますが、9Vと7Vくらいの間を変動している端子があります。C-MOS ICの出力どうしが、つながっているようです。 少なくともキットで組み立てた回路は正しく動作していますので、CK-100Aに付属の回路図が間違っているのでしょう。 出力どうしがつながっている箇所はすぐに判りましたが、正しい接続方法は判りません。 現物の基板を何度も裏表をひっくり返しながら、やっと正しい配線方法を見つけました。 正しい配線に修正すると、正常に動作するようになりました。

基板単体でOKとなりましたので、これをQRPトランシーバーに組み込みました。しかし、今度は、クロック発振が起動しません。基板単体のとき電解コンデンサを廃止したら正常になりましたが、トランシーバーの電源ラインには電解コンデンサがいっぱい入っています。どうも、この4001によるクロック発振器は電源のインピーダンスが低いと起動しないようです。ためしに、エレーキー回路の電源ラインに直列に抵抗を入れてみました。15Ωの抵抗で発振が起動しました。さらに抵抗を大きくしていくと1KΩでも発振起動します。いくらの抵抗が最適か探りましたが良く判らず、とりあえず、電圧降下が0.1V以内に収まる47Ωとしました。

トランシーバーに組み込んで、電源SWをONにすると、ONした直後に送信状態になります。電源投入のタイミングにより、短点、または長点が発生しているものでした。電源ONするたびに、勝手に送信状態になる訳ですから、これは対策が必要です。 今までの外付け回路は電池に接続したままでしたので、この現象は2年半に1回起こるだけですから、問題になりませんでした。

対策としては、電源ON直後はキーイング出力にミューティングをかけることにしました。トランジスタ1石追加です。これで、エレキーのスピードを最低にしても電源ONで勝手に送信になる事はありません。

トランシーバーのキーイング回路をON/OFFする出力回路は、トランジスタ2石のダーリントン接続になっていますが、このベース抵抗とコレクタ抵抗の値が、通常より逆になっています。 この逆の状態でも、私が使用しているリグすべてキーイング操作は可能ですが、回路的におかしいので、定数を入れ替えました。通常はベース抵抗よりコレクタ抵抗が小さく、わずかなベース電流で大きなコレクタ電流を制御します。現在のままなら、ダーリントン接続は不要です。

5年使用したGHDキーのパドルの接点がチャタリングを起こすようになり、このチャタリングによるノイズがキークリックとして耳障りになってきましたので、ダッシュとドットの端子に3.3KΩ(R9,10)を追加しました。たったこれだけでノイズは皆無になりました。

修正済み配線図をダウンロード

配線図の中にR8 360Kというのがありますが、これはチップタイプの330Kが手持ちになかった為の代用です。AXIタイプの330Kで動作確認し、OKでしたが、実装時、サイズが大きくなりますので、あえてチップ抵抗にしました。

Img_0842t  QRPトランシーバーは12V仕様ですから、このエレキーも12Vラインへ直接つないでいます。 電池の電圧が下がるとスピードはダウンしますが、12Vから、いきなり6Vに変更して、スピードが落ちたと気付く程度の差しかありません。通常の電池交換時(約8Vくらい)までなら、スピードの変化は気が付かないかも知れません。

エレキー回路内蔵のトランシーバーが出来上がりました。最初、5Wの出力時、アンテナ回路からこのC-MOS回路へのRF回り込みを気にしましたが、写真のように実装しても誤動作はありません。

トランシーバーの改造が完了しましたので、手作りパドルを入れるケースを100円ショップで調達し、いつでも移動にでかけられるよう準備万端整いました。

Img_0573

サイドトーン回路追加に続く。

マイコン開発の勉強をする為に、このエレキーと全く同一機能のエレキーをPICマイコンで作りました。

詳細はエレキー回路の自作(PIC12F675)を参照して下さい。

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2013年5月12日 (日)

TS-930 ノイズブランカー動作せず

<カテゴリ:TS-930>

修理して使い始めてすでに4年経過していますが、最近、ノイズブランカーSWをON/OFFしてもノイズに変化が無い事に気づきました。

サブ機のTS-850では、ちゃんとノイズに差がでますので、ノイズブランカーで低減できるノイズは存在しているようです。サービスマニュアルを頼りに修理する事にしました。

SWをON/OFFしても全く変化が無いことから、フロントパネル裏のSW基板を疑いましたが、おかしな部分はありません。サービスマニュアルにある、ノイズブランカーの動作原理の説明を読みながら、オシロスコープで各トランジスターのDC電圧とノイズ波形をチェックしていきますが、ここでも、おかしいと思われる症状はみつかりません。ただし、マニュアルでは70dBのゲインがあると書かれているノイズアンプの出力波形がいやに綺麗です。70dBも増幅した後の波形は、例え入力が無くても、それなりのノイズがあるものなのですが、それが見えません。たぶんゲインが70dB無いのでしょう。一番最初に疑ったのは、ふたつの同調回路です。経時変化で同調がずれている可能性があります。

930nb1 ノイズアンプの出力になるD51のカソードにオシロのプローグを接続し、波形を見てみると、この日一番ノイズの大きかった24MHzを受信しても1Vpp以下です。そこで、同調コイルL80とL81を回して見る事にしました。D51のノイズ出力レベルが最大となるように、ふたつのコアを交互に調整しました。

調整完了した結果、D51のノイズレベルは2Vppまで上昇しました。

NB1もNB2も動作するようになりました。原因は単純に同調回路の同調ずれで、ゲインが8dBくらいダウンしたため、ノイズをブランクする、しきいち電圧までノイズレベルが達していなかったと言うものでした。

930nb2

ノイズブランカーの効きが悪いとか、効かなくなった場合、NB1をONして、NB LEVELを最大にした状態で、Sメーターがノイズで振れるバンドを選び、Sメーターの振れが最少になるよう、L80とL81を回してみて下さい。この方法ならオシロは必要ありません。

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