2014年6月 9日 (月)

C メーターの製作

カテゴリ<道具

最近、チップ部品を多用していますが、一度実装したチップコンデンサは、いくらの容量であったか判らず、疑義を生じた時は、判っているコンデンサに取り替えるという手間をしいれられていました。 在庫が沢山ある場合、問題ありませんが、手持ちが1個や2個になると、外したコンデンサをまた実装する事になりますが、机の上は外したコンデンサだらけで、どれがいくらの容量だったか忘れてしまう事が度々です。 また、運悪く、テーピングからこぼれたコンデンサは、その容量は?で結局ごみ箱行になります。 何かいい手だてはないかと思案していましたら、「JH1HTK方式Cメータ」なるものがある事が判りました。 1PFの容量も測定できるとインターネット上で紹介されていました。

ちょうど、手元に、壊れたクロスメーター式のSWR計と使い道が決まっていなかった広帯域発振器が有りましたので、ジャンク箱をかき回して、手持ちの部品を使いながら作る事にしました。

まず、アナログメーターですが、メーター感度はフルスケール100μAという高感度品ですので、Cメーターには最適です。 しかし、FWD側のメーターは内部で断線しているようで、全く振れません。REF側は生きていますので、FWD側のメーターユニットを取り去り、新たに0から10PFまでの目盛をJW-CADで作成し、これを光沢フォト印刷用紙に実寸大で印刷すると、メーカー品並みの仕上がりで目盛板ができました。

広帯域発振器は、秋月で販売していたLTC1799という品番の方形波発振ユニットです。 以前、FT-450の修理の為、トランジスターを手配した事がありますが、部品代と送料が同じくらいの金額でしたので、何かに使えるかも知れないと一緒に購入しておいたものです。 LTC1799というLinear Technolgy社のICはRSで買っても400~600円しますので、秋月のユニットはお買い得ですね。

このCメーターはCMOS ICの消費電流が負荷となるコンデンサの容量や、ドライブする周波数により変化する事を利用したもので、アナログメーター式ではありますが、かなり正確に測れるらしい。 そのCMOS ICはインバーター1回路を使用するとのことでしたので、ジャンク箱から40年くらい前のモトローラー製の4069UBといインバーターを見つけ出しこれを使用する事にしました。

また、暗電流キャンセルの為に定電流回路が必要で、ジャンクションFETを使った回路が良く使われているようです。残念ながら、手元にJ-FETが有りませんので、ここはジャンク箱にゴロゴロしている3端子レギュレーター2個で、常に一定の電位差を作り、抵抗値を選ぶ事により常に一定の電流を得る事にしました。 5V用と3.3V用のレギュレーターをシリーズに接続し、CMOS ICや広帯域発振器は3.3Vで動作させ、5Vと3.3Vの電位差1.7Vの間に半固定抵抗を入れば、任意の定電流を作れます。 

2.54mmピッチの蛇の目基板にCMOS ICや発振ユニット、3端子レギュレーターを実装し、動作テストすると、100PFや1000PFはいとも簡単にフルスケールが得られ0PFの暗電流キャンセルも簡単に調整できますが、10PFレンジのテストを行うと、うまくいきません。 うまくいかない最大の原因は、周波数を上げていくと、消費電流も比例して増えていくのが正常ですが、15MHz以上になると、逆に電流が減少していきます。 最近の高速CMOSではないからかもと、データシートを確かめると、昔の4069は電源電圧が5V以下になると急激に動作可能周波数が下がってくる事がわかりました。 原因はJ-FETが手元に無かった為、3.3VでCMOS ICを動作させたことのようです。 3.3Vの電源を外部DC電源に変更し、30MHzくらいまでリニアに電流が増える電圧を探すと、3.7V以上あればOKである事がわかりました。 3端子レギュレーターの出力電圧をかさ上げする場合、GND側にダイオードをシリーズに入れ、本来の出力3.3VにダイオードのVf 0.6Vを加えて3.9Vを作る事ができます。  ところが、ダイオードを1個入れたのに3.5Vにしかなりません。 3.3VのレギュレーターはLDOと呼ばれる安定化電源で、消費電流が少なく、シリコンダイオードのVfが0.2Vくらいしかならないような電流しか流れません。ダイオードを3個シリーズにいれると、3.9Vの電圧を実現できますが、微小電流によるかさ上げは、温度変化に敏感になる可能性が強く却下。 インジケーターとして使用しているLEDの電流をダイオードに流し込み0.6VのVfを確保することにしました。 4069を74AHCシリーズのICに変更し、3.3VのLDOのままで動作するようにする案もありましたが、LTC1799も3.3Vのままでは、周波数が20MHzを超えると方形波出力が難しく正弦波にちかくなり、これがまた周波数対消費電流の変化を狂わせてしまいます。

J-FETが入手でき回路を5Vで動作させるのが一番のようですが、とりあえず、以上の対策で使う事が出来るようになりました。

Cmeter1

Cmeterbk1

一応、基本動作はOKとなりましたので、レンジ切り替え用ロータリースイッチやつまみ、半固定抵抗、ケース、電池用ケースとコネクター、それに電池を加えると、3000円近くかかってしまいました。 全体の消費電流は4mAくらいですので、レンジ切り替え表示のLEDにバッテリーインジケーター機能を持たせ、電池電圧が6.5Vを下回ると、LEDが次第に暗くなり6V以下ではほとんど点灯しなくなるようにしました。

Cmeter2

実際の使用では、取り付けられたターミナルに無接続の状態で0PFのキャンセル回路が調整されています。 コンデンサを掴みやすくするためにミノムシクリップを接続すると、この赤色のリード線を取り付けただけで1.2PFくらいを示します。しかも、リード線を動かすとコロコロと数値が変わりますので、ミノムシクリップを使って10PF以下を測定する時は、この浮遊容量を気にする必要があります。

このCメーターは、容量不明のチップコンデンサの容量確認を目的に作ったものでしたが、いざ、使い始めると、自作のポリバリコンや2本のビニール線を互いによじって作ったアンテナチューナー用のコンデンサの容量確認時に威力を発揮しています。

C-METER配線図をダウンロード

5Vのレギュレーターは1Aクラス品ですが、ここは0.1Aの78L05でも問題ありません。   使用している抵抗に75KΩという特殊な値を使っている所がありますが、使用するZDの品種でこの抵抗値は変わります。100KΩの半固定にして、調整可能にした方がいいかも知れません。

容量だけでなくインダクタンスも測れるデジタル式LCメーターの自作はこちらにあります。

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2014年5月19日 (月)

インピーダンス変換トランス

<カテゴリ:アンテナチューナー>

以前、マッチングトランスによるアンテナチューナーを紹介しましたが、その時使用したインピーダンス変換トランス、いわゆるUN-UNですが、実際のインピーダンス変換能力は7MHz程度までが限度で、それ以上の周波数では、急激にSWRが悪化していました。これは周波数が高くなるにつれ、トランスのリアクタンス分が増加しているのが原因でした。 ただ、このチューナーは、リアクタンスのキャンセル機構がついていましたので、トランスにリアクタンスが有っても、アンテナのリアクタンスを含めてキャンセルできる為、28MHzまで使う事が出来るものでした。

今回、すでに共振しているけど、その時のインピーダンスが50Ωではないというアンテナの整合を目的に、21MHzで使えるステップダウントランスの試作を行いました。 ところが、なかなかうまくいきません。 以下、途中で投げ出してしまいましたが、現状を紹介します。

使用するコアはFT-140#43です。  目標とするアンテナのインピーダンスは28Ω。できたら28Ω近辺でインピーダンスを選択できること。

トランスの巻き数比の2乗がインピーダンス変換比になりますので、28Ωが欲しい時は1次:2次の巻き数比を4:3にしてやれば実現できます。 また、5:4の場合32Ωが、3:2の場合22Ωが実現できますので、5個のコイルをシリーズに接続し、できたタップ位置に入力や出力を接続すれば、SWR1.2以下が実現できそうです。

理屈は判りましたので、コイルをコアに巻き込んでみました。 コイルは8ターンで5個シリーズに接続しました。アンテナアナライザーとダミー抵抗で測定すると、1.8MHzではほぼ理屈通りのSWR値がえられますが、7MHzでSWR1.5を超えます。14MHzではSWR2.5を超え、21MHzでは3以上です。

コアや線材、巻き方がダメなのか?試しに、1:4のステップアップトランスを作ってみました。

8ターンのコイルを2個用意し、これをシリーズに接続し、GNDとセンターにアンテナアナライザーを、GNDと2個目の端に200Ωをつなぎ、SWRを測ると、14MHzでSWR1.5くらいになり、21MHzでは2を超えます。 8ターンのコイルが多すぎるのかと、いきなり4ターンまで落としてみました。すると、1.8MHzから50MHzまでSWR1.3以下です。このとき2本のワイヤーは平行して巻かれておりましたので、これを互いによじってみました。すると、なんと1.8MHzから150MHzまでSWR1.2以内に収まります。 

SWRが悪かったのは巻き数が多すぎた事と、線をよじってなかった事が原因のようです。 この150MHzまでうまくいったUN-UNに12Ωの負荷抵抗を付け、ステップダウントランスとしたときのデータを取ることにしました。アンテナアナライザーをGNDと2個目のコイルの端につなぎ、GNDとセンタータップの間に12Ωをつなぎます。 1.8MHzではSWR1.05くらいですが14MHzでSWR1.5を超えます。21MHzでは2を超えてしまいます。 ステップアップはうまくいったのに、ステップダウンは全く使い物になりません。 インターネットで調べていくと、コイルを複数パラに接続する方法が見つかりました。ただ、どれもインピーダンス変換比は固定で、複数の変換比を得るものはあまりありませんでした。あっても、その変換特性は公表されていませんでした。

コイルを複数個パラに接続してつくるUN-UNは広帯域性が改善されるようなので、5個のコイルをシリーズに接続したものを4組つくり、これを全てパラレル接続したUN-UNを試作し、その特性を実測してみる事にしました。

Ztrans1

Ztrans3

左上がコイル結線図。イラストは2組パラレル接続ですが、実際は4組パラレル接続です。右上は実際にコアに巻いた状態です。

Ztrans4_3

  上の表が、実際の測定データです。

ダミー抵抗にカーボンタイプの可変抵抗を使っている関係で可変抵抗単体のSWRは28MHzで1.2くらいあります。従い、「3-2」の28MHzでのSWR1.1はトランスのリアクタンスと可変抵抗のリアクタンスが互いにキャンセルしあい、良い数値を示しているもので、その他のすべての28MHzデータも本当の値ではない事、とコメントしておきます。

また、R実測値は1.8MHz時の抵抗値ですが、周波数を変えると、変換される抵抗値も変化します。各実測SWR値はその周波数で最良となる抵抗値に調整した時の値です。

この結果から、21MHzでは22Ωから139Ωの範囲内なら使えると思われます。

とりあえずここまでは出来ましたので、次は21MHzに同調したアンテナを用意する事にしました。 現用のスカイドアループがMTU位置で21MHzに共振するようポリバリコンを直列に入れ調整すると、21.2MHzで共振するようにできました。ところが、この状態のままでインピーダンスが50Ωくらいになっており、SWRは1.0に限りなく近いです。 従い、トランスを挿入する意味がありません。 ちなみに1対1のトランスを挿入すると、トランスの残留リアクタンスで共振周波数がずれてしまい、かつインピーダンスもずれ、SWR1.5以下に調整できません。 結局、インピーダンス変換トランスは不要になりました。 

今回の実験は、T型アンテナチューナーより帯域幅を広げる目的で行ったのですが、SWR1.5以内の帯域幅がT型の場合、230KHzであったのに対して、今回のバリコンだけの整合器は240KHzとなっただけでした。帯域幅が狭いのはスカイドアの特性そのものの様です。

この21MHz用バリコンのみの整合器は天候により、共振周波数とインピーダンスが大幅に変動し、雨が降ると使い物にならない事がわかりましたので、 結局、またT型アンテナチューナーに戻ってしまいました。

出ているタップを全て使い、HF帯をフルカバーできるUN-UNの実現に取り組みましたが、完成させる必要が無くなり、途中で投げ出す事になりました。 また、気が向いたら検討しようと思います。

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2014年5月 5日 (月)

サイドトーン回路追加(ウィーンブリッジ発振回路)

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

このトランシーバーのPICマイコンの中に、CWモニター用のサイドトーン発振器が内臓されており、CWのキーイングに同期してモニター音が出力されるのですが、約10秒に1回このサイドトーンが途切れます。 たまたま、キー操作のマーク信号の時、これが発生すると、キー操作をしばしば誤ります。 原因は、10秒に1回、現在の設定状態をフラッシュメモリーに退避させていますが、これに同期して出るバグです。 この現象は、モニター用のサイドトーンのみで、送信されるキャリアーは正常に出ていますので、時々キー操作を間違いながらも使ってきました。

最近、このトランシーバーの使用頻度が高まるにつれ、サイドトーンの途切れが気になり出しました。対策は、送信モードの時のみ、メモリーへの退避動作を禁止したらいいのですが、PICマイコンの中をいじれないので、PICから出力されるサイドトーン信号は使わずに、独立したハードによるCR発振器を設け、これを、内臓したエレーキー回路でON/OFFしてやる事にしました。

Croscpcb

約850Hzの正弦波発振回路は、OP-AMPによるウィーンブリッジ式のCR発振器です。    CR発振器できれいな正弦波を出力させるには、発振回路の出力安定が重要です。 この為、OP-AMPの負帰還量を自動的に制御する必要がありますが、今回、この制御の為にバイアス回路内蔵のデュアルゲートMOS FETを使いました。 UHF帯の増幅用FETを製造しているメーカーなら大抵製品ラインの中にあります。 簡単な回路配置で、DCから430MHzまで10dB以上の増幅が出来るので、私は好んで使っています。 しかし、かなり特殊なFETなので、バラ売りはあまり有りません。   今回は、ばら売りされているNXP製のBF1211WRというFETを使いました。 (ルネサスの場合BB504が相当しますが、生産中止予告品。バイアス回路無しなら3SK318)  このFETはG2の電圧を可変すると、40dB以上のATTをかけられる為、本来のUHF用LNAとしての使い方以外に、AGCやATTとしても利用しています。 今回はG2の電圧でドレインソース間のインピーダンスが変化するのを利用して、OP-AMPの帰還量制御に使いました。   最初バラックで組んで、基礎検討を行い、実用になるように各定数を詰めていきます。検討は片面の2.54ピッチの蛇の目基板に1608タイプのチップ部品を並べて行います。 離れた位置にある部品の接続は裸銅線を使い基板の裏側でつなぎます。 部品装着面でのワイヤーが少なくなり、部品交換がかなり楽になります。 しかし、チップ部品ですから、拡大鏡を併用しながらかなり根気のいる作業です。

Croscwave

Crosckey_3

左上が、850Hz連続発振時の出力波形、右がキーイングによる波形です。

正弦波は負帰還と制御回路のCR定数をもう少し詰めると、さらにきれいになるようですが、CWモニター用としてはこれで十分ですから、ここらへんで妥協しました。 また、キーイングはソフトスタートになるよう、いつもは発振停止していて、キーダウンが有ったら、初めて発振開始し、キーアップで発信停止するようにしましたので、連続波をスイッチ回路で断続する時に比べ、はるかにキークリックが少なくなっています。

Croscbin

こうやってできた小さな基板を、QRPトランシーバーのシャーシに両面テープで張り付け、配線してやると、出来上がりです。

実際に送信すると、OP-AMPに送信出力が回り込み、モニター音がとぎれとぎれになります。OP-AMPの+と-の入力の足に1005タイプの1000Pのコンデンサを直付けしてやると、異常が無くなりました。 安心の為、この基板をアースされた銅板でカバーしています。

これで、移動運用も楽しくなりそうです。

今回、作成したCR発振器の配線図は以下からダウンロードできます。R9は最初22KΩにしましたが、小さすぎた為シリーズに18KΩを足して実験し、うまくいきましたので、そのままになっています。39Kでも良いかも知れませんが、確認しておりません。 また、コンデンサは実装した時点で容量がいくらか判らなくなりましたので、間違っているかも知れません。

ウィーンブリッジ発振回路の回路図をダウンロード

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2014年4月28日 (月)

144MHz用Jポールアンテナ

<カテゴリ:アンテナ>

アースのいらないベランダ用の垂直アンテナ、通称「Jポール」を紹介します。 普通のGPはラジアル部分が横にはみ出し、ベランダでは、これが以外と邪魔になりますが、釣竿か、物干し竿を垂直に立てた1本の竿にしか見えず、アースが不要で、設置が非常に簡単で、かつ、2段GPくらいの性能が得られるものです。

アルミパイプを使った本格的なアンテナではなく、グラスファイバー製の釣竿に導体となる1mmの銅線を添わせ、ビニールテープで巻いて固定したかなりいい加減なアンテナです。 

2mjp2

2mjp_2 

 左上が構造図、右上がMMANAによるシュミレーションデータです。

グラスファイバー釣竿を2段つないで2mのポールにした後、直径1mmの裸銅線を図のようにポールに添わせ、適当な間隔でビニールテープを巻き、固定します。給電は同軸ケーブルを直接ハンダ付けしますが、このハンダ付けの位置でインピーダンスが変わりますので、最初に、シュミレーションした寸法のままでハンダ付けし、SWR計かアンテナアナライザーを見ながら、145MHz、50Ωに合わせこみます。

149.2cmの長さを2cm長くすると約500KHz周波数が下がり、インピーダンスは約10%ダウンします。また給電部の3.3cmの所を5mm高くすると、インピーダンスが30%アップし、かつ約250KHz周波数が高くなります。 このふたつのパラメーターを頭に入れて調整するわけですが、電卓とメモ用紙を持っていても結構疲れます。 エレメントの調整はニッパでカットする方が簡単ですから、最初は少し長めにエレメントを作りますが、5cmも長くすると、もうどうなっているのかさっぱり分からなくなってしまいますので、シュミレーションで得た長さのままで作り、周波数が高すぎた場合、銅線ですから簡単にハンダ付けで延長した方が楽です。

2mjp3_3

最初は、少し長めで作った為、結局調整の方向性が判らず、3回くらい銅線の交換を行いました。次回作る時は以下の手順で行うときっとうまくいくと思います。

・MMANAのシュミレーション通りの寸法で作る。

・アンテナアナライザーで共振周波数と、共振状態のインピーダンスを知る。 インピーダンスは50Ωより高いか低いかだけをメモする。

・前述の法則をベースに145MHzでSWR1.0に追い込む。 ただし、インピーダンスは同軸ケーブルの長さにより増減が逆転する事もあるので、もし、前述の法則と逆に変化する場合、それに従う事。

今回は980円の4.5m釣竿で作りましたが、直径の異なる竿の場合、給電部分の2本の垂直銅線の幅1.2cmの部分が多分異なってくるはずです。この異なった寸法の場合、再度MMANAでシュミレーションする必要がありそうですが、どうせシュミレーションしても、現物とは合致しませんので、似たような寸法で作って、共振周波数とインピーダンスを先に把握する方が手っ取りばやいと思われます。 

このクリチカルな調整をやっても、アンテナにポールを継ぎ足し持ち上げると、SWRも共振周波数もずれてしまいますので、ずれの程度をあらかじめ確認しておき、その分だけずらして調整する事がコツです。共振周波数がバンド内にあるならSWR計だけでも判りますが、SWR最低周波数がバンド外に有る場合はアンテナアナライザーが有ると便利です。

自作してから、すでに5年経過していますので、銅線は真っ黒、ハンダは真っ白、テープははげかかっていますが、台風時も倒れずに初期の性能を維持しています。 銅線の固定の為に、1巻33円のビニールテープを使ったので、雨の時、SWRが悪化するのを心配しましたが、変化はあるものの、気になるレベルでは有りませんでした。

このアンテナは、ローカル交信が主目的ですが、10Wの出力で半径100KmくらいはOKなので、コンテスト時、マルチ獲得の為、重宝しています。このアンテナ作成のとき未使用になった先の細い竿は430MHz用の垂直ダイポールに流用されました。

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2014年10月

Jp1410_2

この2m用アンテナの同軸ケーブルに3.5MHzのコモンモード電流が流れ、時々火災報知器が誤動作するという問題がありましたので、同軸ケーブルの途中に3.5MHzでも十分効果のあるコモンモードフィルターをいれました。 火災報知器の誤動作は無くなりましたが、2mで、ある特定の方向にヌルポイントが生じ、その方向がちょうどいつも交信するローカル局と重なり、今までS9であった信号がS1以下になってしましました。

この2m用Jポールから2.5m離れたところにHF用のスカイドアアンテナが有り、このスカイドアの一方のエレメントが、2m用Jポールに最接近したときこのヌルポイントが発生するようです。 最接近した時の距離は1.2mしかありません。 数か月間、2mで交信する際、スカイドアのエレメントを、Jポールから一番遠くなるように回転させていましたが、そのうち面倒になり、現在と反対側にあるベランダに、2m用Jポールを新設する事にしました。 この新しいJポールとHFのスカイドアアンテナは、8mくらい離れましたので、ヌルポイントは解消されました。 新旧ふたつのJポールを1週間くらい併用し、新Jポールが旧Jポールより受信感度が良いという事が判りましたので、旧Jポールは撤去されました。

なお、この新Jポールを作るに当たり、ポールは4.5m長の釣竿をそのまま使いました。 ポールの直径が小さくなりましたが、当初のシュミレーション通りの寸法のままで作ったら142MHz付近で共振していましたので、50.7cmの部分の上部を約8mmカットしたら、ちょうど145MHzに共振するようになりました。共振状態でのSWRは1.1くらいでしたので、これ以上トリミングする事はやめました。

このアンテナは防水していないので、雨が降るとSWR3くらいまで悪化しますが、トランシーバーにプロテクトがかからないので、そのまま使っています。

2020年春

いまだに使い続けているJポールですが、最近、雨が降ると、トランシーバーにプロテクトがかかるほど、SWRが悪化していました。 新コロナウィルスで外出自粛の折、暇ですので、この原因を確かめ、改善できないか、検討しました。 アイロンかけに使う霧吹きを、持ち出し、アンテナのエレメントに場所を選びながら、霧を吹きつけていると、正常時SWR1.1しかないのに、一気にSWRが3以上に上がる部分がありました。 それは、Jの字に折り返した部分の先端付近です。

構造図で50.7cmとある先端部分です。 それ以外は多少の変動はありますが、SWR2を超える事はありません。 そこで、この先端部分を含め、Jの折り返しの部分全てをビーニールテープで巻き、雨が直接銅線に当たらないようにしました。すると、共振周波数が143MHzまで、落ちてしまいましたので、また、このJ字の先端部分をカットして、145MHzに合わせました。

2m_j_rain

これで、SWRは144から146まで1.5以下です。 ただし、まだ雨が降っていません。 雨が降ったら、またレポートします。

雨が降りましたが、SWRは2.5くらいで頑張っていました。 ところが、梅雨に入り、連日雨が降って、その合間に晴れても、SWRが5を超え、トランシーバーにプロテクトがかかるようになりました。 そして、とうとう、晴天が2日以上続いても、このSWR悪化は解消しません。

原因は、テープでぐるぐる巻きにして、雨が入り込まないときは問題ないのですが、一度、雨がテープの内側に入り込むと、これが、晴れても蒸発しなくなり、共振周波数が110MHzくらいまで落ちてしまうようです。

対策として、テープをやめ、左の写真のごとく、J 部分の短い銅線を、ロックタイを使って、釣り竿から2cmくらい浮かしました。 この変更で、共振周波数が150MHzを超えてしまいましたが、そこは、銅線ですから、約10cmくらいの銅線を半田付けして延長し、145MHzでSWR1.1くらいまで調整しました。

Jpole_swr_2

 

バンド全体で、SWR1.3以下です。 そして、雨が降っている場合、SWR2くらいまで上がりますが、晴れると元に戻ります。 雨の影響を大きく受けるところは、2本の銅線が平行する部分の内、短い方の先端から下へ30cmくらいですので、対策としては、同軸を半田付けしたところから、上の方は、可能な限り、支柱からも浮かす事のようです。

 

2023年10月

Blacktay_2

突然SWRが5以上となり、送信も受信もNGになりました。 何が起こったのかと、次の休日にアンテナを倒して見ると。給電部分の絶縁材に使ったロックタイが折れてバラバラになっていました。 この為、マッチング機構が完全に壊れてしまったものでした。 使ったロックタイは白色の耐候性無し品。 製作してから2年半で寿命が尽きました。

やむなく、近くのホームセンターで黒色の耐候性ロックタイを買ってきて、修理です。 雑に修理したので、145MHzでSWRは1.4くらいにしかなりませんでしたが、これで又当分使っていきます。

 

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2014年4月26日 (土)

160m用アンテナ追加

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

常設ではありませんが、160mバンド用としてマルチバンドアンテナシステムの中に加える事にします。 

<2017年2月書き換え>

160mvertical201702

ペットボトルに巻いたローディングコイルを使ったホイップアンテナから長さが40mもあるロングワイヤーまで、色々と実験しましたが、展開できる環境のなかで、一番良かった、現用スカイドアループや垂直ダイポールのエレメントを共用した垂直アンテナに落ち着く事になりました。 ただし、このアンテナは160m用ロングワイヤー(LW) 1 にて紹介の通り、出力によりアンテナの共振周波数が変わるという問題を抱えていましたが、その後、160m垂直アンテナ にて紹介の通り、この問題も解決しました。

左のSWRカーブは2017年2月に広島WASコンテストに向け再セットアップしたときのSWR特性です。結構広帯域です。

160mにQRVする時は、アンテナワイヤーの大がかりな接続変更を伴いますので、手軽にQSYは出来ませんが、160mバンドのコンテストの時は期待ができそうです。

アンテナの整合BOXを置いた場所は、猫のいい遊び場です。 時々、このBOXの上に乗っている事もあります。(画像は2014年1月のものです)

160m_box_cat

2008年10月から同調フィーダーによる給電方式で使い始め、2011年5月にプリセット式MTU方式に変更し、台風で壊れたりした、このアンテナシステムで、2017年11月時点に於いて交信出来たDXCCエンティティーは、全バンドで238。 各バンド毎では、

160m 80m 40m 30m 20m  17m 15m  12m 10m  6m

   8      34    94   108  141  181  195   149  124   19

 

このアンテナシステムを降ろすまでは交信記録を更新していきます。   最近はコンディションの悪化とON AIR回数の減少でなかなかエンティティーが増えません。

2017年12月16日  久々に 40m Bnd New(OJ9X)をゲット。

現在のマルチバンドアンテナシステムの全容は以下の通りです。

2017年1月末にスカイドア部分のアルミ線が金属疲労で断線しましたので、スカイドアのループのワイヤーは全て入れ替えました。

Mutiantsys2_2  

プリセットMTU作り変え へ続く

7MHz用垂直ダイポールと最高高さ7mの逆Vとの比較はこちらにあります。

Skydoor180120

2018年1月、風圧面積を少しでも少なくする為、HFスカイドアの横幅を2.6mから2mに変更しました。 これで、初期の回転半径1mのHFループアンテナに戻りました。

このアンテナを上げてしまってから、6m用のヘンテナの向きが傾いている事に気が着きましたが、ポールの各ジョイントの部分にパイプストッパーの仕掛けをしてありますので、これを分解しないと下げる事が出来ません。 面倒なので、次の上げ下げの機会までこのままです。 

2018年9月

ハイバンドのコンディションも悪化し、色々な事情でアクティビティも下がってきましたので、台風シーズン中であった事もあり、18MHz用スカイドアを撤去し、身軽にしました。 2022年を過ぎたころ、可能なら再度アップするまで、垂直ダイポールと6mヘンテナのみとなりました。

 

2023年1月~3月

家のメンテの為に、足場を組んで、幌で家を囲む事になり、とうとう、全てのアンテナを撤去しました。 ただし、無線を止めてしまうのではなく、常設の1.8MHzを含めたHFアンテナを再構築します。まずは、構想からです。

 

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2014年4月25日 (金)

160m用ロングワイヤー(LW) 2

<カテゴリ:アンテナ>

既存の7メガ用垂直ダイポールやスカイドアのエレメントを共用した160m用LWは、出力により共振周波数が変化すると言うトラブルに遭遇し、解決策が見いだせませんでした。(パワーでSWRが変わる 参照) 仕方なく、これらの既存アンテナから数メーター離した所に独立したLWを臨時に設置し、コンテストの時だけ使う方法に変更しました。

LWの形態は8mの釣竿に電線を添わせ、そのてっぺんから18mのビニール線を2mの高さまで引き降ろしたもので、全長は26mになります。このエレメントが1.910で共振するように、ローディングコイルを調整した結果、給電点のインピーダンスは前回のアンテナよりかなり下がり12.5Ω付近になってしまいました。 整合トランスは10個目のタップに同軸を繋ぎ、5個目のタップからローディングコイルを経由してアンテナに接続されます。

160mlwtrans

160mlwbox

160mlwpole_2

8mの釣竿に沿った垂直部分のワイヤーは1.25SQのKIV線ですが、水平方向のワイヤーはUL1007タイプのAWG24サイズです。 この水平部分のワイヤーは自重の為、直線に引っ張る事ができず、10mくらいの部分で地上高3mくらいまで落ちています。 ただ、このワイヤーの下は即地面ではなく、深さ5mの水の無い池となっている事から、ワイヤーから実際の地面までは8mくらいはあります。これがどのように影響するのかは、やってみないと判らない状態です。 このアンテナを仮設してある場所は、全長40mのLWも実験できる広さがありますが、支柱が釣竿であることから、ワイヤーの重さに制限があり、軽量ワイヤーが手に入るまでは、この長さで実験する事にします。

アンテナアナライザーで、このアンテナの共振周波数を1.910MHz、SWR1.05に調整した後、実際に60W出力してSWRをチェックしても、SWR最少周波数は1.910MHzぴったりで、SWRも1.05以下となり、ずれは有りません。また、シュミレーション上のゲインも-2dBiくらいになっており、前回のLWと同等です。  ただし、前回のアンテナの打ち上げ角は30度くらいで、曲りなりにもDXは狙える状態でしたが、今回のアンテナは、高さが低くなり、かつ水平部分が増えた為、MMANAでのシュミレーションでは真上方向のヌルポイントがなくなり、かなり輻射するようになってしまいました。 多分、国内QSOしかできないと思われますが、やむなしです。

とりあえず、仮設した晩に2局と交信できましたが、2,3エリアでした。 また、従来S7くらいであったノイズがS9まで上がってしまいました。 そうこうしている内に、夏になり160mバンドの出番はなくなってしまいました。 そして、かなり時間がたった2014年CQ WWコンテストで使ってみました。最長距離はハバロスクの約2500Kmでした。 サハリンが+40dBで聞こえます。 また、CQを出しているJA局はのきなみ+40dBで聞こえます。 このコンテストでのJA局同士の交信は無得点ですから、交信しておりませんが、多分国内交信は問題ないと思われます。

MMANAでシュミレーションした結果は、水平面の指向性はいびつですが、垂直面は真上ではなく、多少打ち上げ角が下がっているようです。これが2500Kmをカバーした理由かもしれません。 ちなみにハバロスクの方向は下の水平面指向性のマイナスY(下向き)方向でした。 

160m25mmana

もう少し改善したく、全長40mのLWにトライしました。

160m用ロングワイヤー3に続く。

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2014年4月21日 (月)

パワーでSWRが変わる (出力を上げるとSWRも上がる)

<カテゴリ:アンテナ>

その1

今までの160m用のアンテナは、HF用スカイドアループをエレメントとした、つぎはぎエレメントを使用し、このつぎはぎの部分にはギボシ端子を多用していました。

アンテナアナライザーでSWR1.1以下に調整した後、実際の送信機とSWR計で確認すると、共振周波数が大きくずれます。また、出力を1W、10W、40Wと変化させても、SWR値が変わります。 アンテナアナライザーとの差は良くあることなのですが、出力10WでSWR1.1に調整した後、出力を60Wまで上げると、SWRが2くらいまで跳ね上がります。出力を10Wまで下げると、またSWR1.1に戻ります。 この原因は最初、マッチングトランスのフェライトコアの問題かも知れないと、SWRが悪化するのは我慢して、トランスを外してみました。少しは改善しますが、ほとんど同じという状況でした。

ギボシ端子は電流により接触抵抗が変わりやすいという情報を以前聞いていた事もあり、試しにギボシ端子を2~3回抜き差しして、再度SWRをチェックすると、SWR値と最低SWRになる周波数が変化します。単純な抜き差しで状態が変わるような不安定な接続状態になっている事は事実のようです。

そこで、このギボシ端子を全て廃止し、つぎはぎすべき場所が2か所のみになるよう、その他の接続部分はハンダ付けに変えてやりました。 そして、2か所の接続部分は丸端子とY端子をハンダ付けし、これをステンレスのビス、ナットで締め上げる構造にすると、アンテナアナライザーと10W出力の時のSWR差はかなり改善しましたが、10W時、SWRが1.1になるように再調整した後、60W出力で確認すると、依然としてSWRは2くらいです。

Giboshi

Nutt

左上は切り取ったギボシ端子。右上はビスナットに変更した接続部分。 なお、ギボシ端子の影響を確認できたのは、160mバンドのみで、80mバンド以上では影響なしでした。

10Wでは依然、SWR1.1ですから、まだ、高周波電圧の大きさで、共振周波数やSWRが変化する要因が隠れているようです。 整合回路のアース接続や、コイルのタップ切り替えにミノムシクリップを使っていますので、これが原因かも知れません。そこで、ミノムシクリップをハンダやナットによる締め付けなどの接続に変えてみましたが、あまり改善効果はありません。

この接続状態で、使っていない、7メガ用垂直エレメントの共振周波数をMTUで可変してやると、160mのアンテナの共振周波数が変わります。  普通、近接している他のバンドのエレメントとの干渉は有ります。しかし、干渉が送信出力で変化するのはあまり聞いた事がありません。そこで、160mのアンテナエレメントとして使っているHF用スカイドアのループを切り離し、短くなったエレメントが1.8MHzに同調するようローディングコイルを調整してやると、出力によって変化するSWRがかなり改善しました。60Wでも1.2以下です。 スカイドア用の同調フィーダーと7MHz用エレメントとの距離は5mmくらいで、この間の絶縁はポリ塩化ビニール(PVC)です。一応、専門書を読んでもPVCは10MHz以下なら使用可能となっていますが、この判定はPVCのtanδの変化からのみの判断であり、高周波の高電圧が加わると、誘電率が変わるのかも知れません。 そこで、LCRの共振回路を作り、このCの絶縁材料をPVCにして、出力で共振周波数が変わるかテストしてみました。出力を大きくするに従い、共振周波数は下がりますが、その差は1.8MHzで5KHzくらいで、内訳は1mWと1Wの差が4KHzで1Wと60Wの差は1KHzでした。1mWはアンテナアナライザーによるドライブですから、浮遊容量などが影響している可能性が大きいので、1Wと60Wの差だけが事実かもしれません。しかし、実際は1Wと60Wで10KHz以上のずれが発生していますので、これだけでは説明できません。

結局、原因は判らず、160m用ロングワイヤー(LW) 2に紹介の様に160m用の専用エレメントを6メーターくらい離して設置する事で解決しました。

後日、この真の原因が判りました。 その2の例でも説明していますが、絶縁ワイヤーの耐電圧の問題でした。 ビニール被覆の耐電圧以上の高周波電圧が加わると、そこでリークが発生し、電気定数が変わってしまうのが原因です。 しかも、この高周波耐電圧値は通常公表されていなく、かつ、継時変化により劣化する速度がかなり早く、屋外では1年もしない内にパワーでSWRが変化するような現象が発生するようです。

その2

1本のグラスファイバーポールにHF用スカイドアと6m用ヘンテナを架設し、それぞれ、約4mの長さの平行フィーダーで垂直に降ろし、別々のアンテナチューナーに接続していました。 この平行フィーダーの途中は束ねられ、風でフラフラしないようマストにしばりつけてありました。 建設してから2年が過ぎたころから、21MHzでパワーによりSWRが変わるという現象が出始めました。 

Multifeeder

具体的には、アンテナの4m下に置いてあるMTUのTX端子側で、アンテナアナライザーを使い、SWR1.1以下になるよう調整した後、実際に10Wの出力を出し、SWR計で測るとSWRが2付近になってしまいます。 そこで、10WのときSWRが1.1以下になるように再調整した後、アンテナアナライザ-で測るとSWRが2を超えます。 数か月悩んでいましたが、別件で6mの平行フィーダーを外したところ、このパワーでSWRが変わるという現象が起こらなくなりました。 HFと6mの平行フィーダーの結合状態がパワーで変わるという160m用アンテナのときと同じ原因でした。 建設当初からこの平行フィーダーの架設状態はあまり変化はないので、原因はワイヤーの塩化ビニールの被覆が劣化して、耐電圧が極端に劣化し、高周波電圧がこの限界を超えると絶縁破壊を起こすのが原因のようです。

対策は、左の写真のように、ふたつの平行フィーダーをマストを挟んで、MTUまで引き降ろす事にしました。 この対策で、完璧ではありませんが、10W出力でもアンテナアナライザ-でもSWR1.2以下に収まります。  恒久的には、他の方法を考えねばなりません。

送信機のパワーでSWRが大きく変わるような現象が発見されましたら、普通は最初にフェライトコアを疑いますが、ギボシ端子もかなり悪さするようです。さらに他のエレメントと極小間隔で接近している場合も互いに影響を与えるようです。同じような問題でお困りの時、参考にしていただけたら幸いです。

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2014年2月20日 (木)

80mバンド用アンテナ整合器

<カテゴリ:アンテナチューナー>

現在の80mバンドは7MHz用垂直ダイポールをローパス型π(パイ)マッチのアンテナチューナーで強制整合させていますが、7MHzのダイポールを3.5MHzで使う事だけで約3dBのロスを発生させ、さらにアンテナチューナーで約3dBのロスを発生させていることから、例え100Wでドライブしても、25W分しか放射に寄与しないという状況でした。

アンテナのサイズは変えられないので、せめてチューナーのロスだけでも改善できないものかと、ローディングコイルとマッチングトランスで整合器を作り、ロスの発生を少しでも改善する事にトライしました。

80mtrans1_2

80mtrans2

まず、マッチングトランスを作ります。 アンテナの給電インピーダンスが過去の実測結果より25Ωから30Ωくらいと予想されますが、実際の所は不明なので、FT-140#43というコアに6本のAWG24の線を束ねた状態で12ターン巻き、これをシリーズに接続し、実装状態でタップ位置を調整する事にしました。

80mtrans

ローディングコイルはVU40の塩ビパイプに1mmの銅線を1mmスペースで22ターン巻いたもので、3.5MHzのハムバンド内で共振するようタップを取ることにしました。

アンテナ実装状態でコイルは18ターンの時、共振周波数が3520KHz付近に収まりました。

また、トランスは同軸出力を4番目のタップへ。アンテナへの出力は3番目のタップから接続することで、共振周波数でのSWRは1.05以下になりました。 バンド内でのSWRは3.501MHzで1.2、3.574MHzで1.5となり、パイマッチのアンテナチューナーより広帯域です。

肝心な整合回路のロスですが、パイマッチのMTUを含め実測する事にしました。

Paitranslos 左上が実測回路です。同軸ケーブル側にアンテナアナライザーを接続し、MTUには実際のアンテナに接続します。 この状態で3.520MHzでSWRが1.0になるようMTUを調整しておきます。 次にアンテナを取り去り、代わりにエアーバリコンと可変抵抗をつなぎ、アンテナアナライザーのSWR表示が1.0になるようにバリコンと可変抵抗を調整します。その状態でMTUへ入力されるRF電圧VTと、可変抵抗の両端のRF電圧VAをオシロで読みます。 アンテナアナライザーをOFFにして、可変抵抗の抵抗値をテスターで測れば、入力側とアンテナ側の電力を計算できます。  この測定方法で実測した結果が右上の表です。 51.6%の損失とは、100W入力したとき、MTU内部で51.6Wロスするという意味です。 パイマッチのロスはシュミレーション値にかなり近いです。(パイマッチチューナーのシュミレーション値はπ型チューナーの内部ロス改善 を参照) トランス式の場合のロスは、トランスそのもののロスとローディングコイル内でのロスになりますので、実測値は妥当な数値でしょう。 パイマッチが約3dBのロスに対してトランス式は約1.2dBのロスにおさまりましたが、Sメーターが変化するほどのものではありませんね。 ただし、このトランス式整合器は、雨の日でも、SWRの悪化が少なく、再調整なしで使えることでした。 これが最大の利点かも知れません。

しかし、従来のパイマッチチューナーと比較すると、受信感度にムラが有ります。パイマッチに比べてSで最大2くらいダウンする事があります。 また送信でもトランス式よりパイマッチの方が、応答率が高い状態です。 この現象が有るため、前述の内部ロス実測までしたのですが、実測結果は理屈通り、トランス式の方が良い結果を示しています。 チューナーで打ち上げ角が変わるというのは聞いたことはありませんが、W6の局をふたつのチューナーで聞き比べても、パイマッチのチューナーの方が良く聞こえました。

この原因を調べるつもりでしたが、この整合器を使用するマルチバンドアンテナシステムはメンテナンスや台風のとき、そのマストを伸縮する事ができます。一度縮めて、また、最大長まで伸ばしたとき、アンテナの張力が変化し、共振周波数が変わります。パイマッチのチューナーの場合、簡単に再調整ができましたが、このコイル+トランス式の整合器の場合、伸縮の度に、ハンダゴテを持ち込んで、コイルのタップ位置を1/3ターン程度修正しなければならないという面倒がありました。 そのうち、プリセットMTUの防水BOXの中にATUの収納スペースを確保する必要が生じましたので、優先順位最下位のこの整合器は撤去されてしまいました。

2015年1月追記

原因が判ってきました。 ベースとなるアンテナは7MHz用の垂直ダイポールですが、上下のエレメントは不完全な平衡状態でした。 このアンテナに上部エレメント側だけ延長コイルを挿入し、強制的に同調させた為、実装されているフロートバランの能力不足もあり、上下のエレメントで電流分布がかなりアンバランスとなって、打ち上げ角が変化したものでした。 再度、この整合システムを使うつもりはありませんが、原因が判ったのでレポートしておきます。

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2014年2月11日 (火)

FT-450 送信不能

<カテゴリ:FT-450>

中古で購入して、すでに4年経過していますが、先日、突然、送信できなくなりました。全バンド、全モードともアンテナ端子から出力が出ません。受信は全バンド、全モードOKです。マイコンやDSPがからんでいないようなので、自分で修理する事にしました。

ファイナルユニットへ送信信号を入力する同軸ケーブルのコネクターを引き抜き、オシロを当てても信号は見えません。IFユニットが怪しそうですので、配線図と、サービスマニュアルを頼りに、RF信号がどこで途切れているか、オシロのプローグを出力側から順に、当てていくと、Q2002のコレクタにはRF信号が有りませんが、ベース側にはRF信号が出ています。

テスターでこのQ2002の導通テストをすると、なんと全端子間がオープン状態。 完全に死んでいました。このトランジスタの品番は2SC5415EでUHF増幅用、SANYO製です。インターネットで探すと、すでに廃番で、2SC5415Aに変わったとの事。ここまでは、検索できましたが、通販情報が見つかりません。SANYOはONセミコンに吸収されたので、ONセミコン関連の情報を探すと、NE85634とコンパチである主旨の記事が見つかりました。 聞きなれない品番ですが、「NE85634」で検索をかけると、ルネサスの2SC3357と互換性があるという情報が出てきました。 この2SC3357というトランジスタはFT-450の他の場所で使っています。Q2020がそうでして、Q2020の出力をBPFを通した後、Q2002に送り、Q2002で増幅した後、ファイナルユニットへ送るという構成です。

Ft450_rfif_2 

この2SC3357なら沢山の販売店が通販しており、簡単に入手できます。 SPECを調べると、2SC5415のfTが6.7GHzなのに対して、2SC3357のfTは、6.5GHz。その他はほとんど一緒です。 まず間違いなく代替え可能なようです。

通販で手配した2SC3357が入手出来ましたので、壊れた2SC5415と交換しました。 結果、FT-450の送信機能はすべて正常に復帰しました。

Ft450q2002互換性があるのなら、わざわざ品番の違う物を使うより、統一した方がよさそうですが、量産設計の場合、1万台作っても全部良品で無くてはならず、修理のように1台限りが良品になったら良いと言う訳にはいきません。 多分、何かの理由により、品番を分けて量産したのでしょう。 そして、最終的に、同じトランジスタでも良かったとなったとしても、開発過程において、膨大な時間と人員をかけて、確認した品質評価をやり直す必要がある事から、2種類の品番を使い分ける状態になってしまったと推測します。

多分、メーカーは代替えをOKしないと思いますが、私が使うこのリグの場合、この現物だけがOKになれば良いですから、勝手に変える事にします。

壊れた原因ですが、以前、このトランジスターの近くにある+Bラインのタンタルコンデンサがリークするという故障がありました。その時の原因は雷の誘導雷でした。多分、この時の後遺症が出たのでしょう。

3か月もたたない内に、また送信不能になりました。こんどは、Q2002のベースに信号が有りません。 配線図と、サービスマニュアルから、信号を追いかけていくと、第1局発とのバランスミキサーまでは信号が出ていますが、その後のQ2022のベースに信号が見えません。

この間はコイルと抵抗コンデンサだけで半導体は無いのにと、オシロのプローブを各接続ポイントに当てていくと、信号が見えるところがありました。シメシメとその前後を再チェックすると、先ほどまで信号が見えなかったポイントでも信号が見えます。おかしいなあと思いながら、後段へチェックポイントを移していくと、今まで信号が無かったポイントにもちゃんと信号が出ています。結局、Q2002のベースまでは正常に信号が出ているでは有りませんか。

ただし、Q2002のコレクタには信号は有りません。トランジスタをテスターでチェックするとコレクタ、エミッタ間がショートしていました。 また、このトランジスタが壊れています。仕方なく、このトランジスタを交換しましたが、まだ出力は出ません。テスターで送信状態のDC電圧をチェックするとQ2002のエミッター電圧が異常に高い状態です。詳細を調べたところ、エミッター抵抗のR2009 10Ωが断線していました。この抵抗を良品に取り替えたら、故障は直ってしまいました。

今回の故障の原因は、まず、ひとつがチップ部品のハンダ付け不良が考えられます。オシロのプローブで抵抗の電極を押さえていくといつのまにか直ってしまったというのはこれくらいしか考えられません。 倍率10倍のルーペでチップ部品のハンダ付け部分をチェックし、怪しいと思われる所を再ハンダしました。 次にQ2002がショートし、R2009が断線した原因ですが、回路図や実装状態を見ても、C2006かC2010がショートして、また元に戻ったくらいしか思いつきません。 とりあえず、このふたつのコンデンサを手持ちの1608タイプのコンデンサに交換しました。 

これで、当分様子をみようと思っていましたら、今度は50メガのAMモードで送信出力がなかなか規定値に上昇しないという問題に遭遇しました。

モードをAMにしておき、スタンバイスイッチを送信にすると、送信モードにはなりますが、出力が5Wも有りません。そのまま送信状態を維持すると、約20秒かかって、規定の25Wになります。この現象は7メガでもありますが、7メガの場合、約7秒で規定出力になります。 ただし、7メガの場合、一度規定出力になった後、受信に戻し、再び送信すると、いきなり規定出力になりますが、50メガの場合、受信に戻し、再度送信状態にしても、また20秒くらいかかって出力が徐々に上昇するという症状です。 販売店経由でメーカーに修理依頼しましたが、DSP当たりがおかしいとのことで、基板ごと交換することになりました。 

この基板交換で、送信不能も再発しない事を願う事にします。

その後トラブルもなく長年6mバンド100W機として使ってきましたが、FTDX-101D導入に伴い、2023年6月に売却しました。

 

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2014年1月23日 (木)

160m用ロングワイヤー(LW) 1

<カテゴリ:アンテナ>

ペットボトルにコイルを巻いた6m高の超短縮ホイップアンテナは、国内QSOに限れば、そのサイズ以上の成果を出してくれましたが、DX交信には無理があるようです。  MMANAによるシュミレーションでは-15.6dBiくらいのゲインでしたので、100Wの送信でも、実際は3W分くらいしか輻射されていなかったのが最大の原因のようです。

せめて6000Kmくらいの距離まで交信できるようなアンテナをMMANAを使い検討していましたら、現用の7MHz用垂直ダイポールを接地型垂直アンテナにすれば、まだマイナスゲインですが、そこそこのゲインが得られる事が判りました。 ただ、現在の垂直ダイポールをそのまま使うと全長18mくらいしかない事と、ワイヤーの張り替えがかなり面倒です。そこで、7MHz用垂直ダイポールの上部エレメントをベランダの位置で切り離し、これに新たにワイヤーを継ぎ足し、例の金網のところまで、引き降ろし、この接地部分にローディングコイルとマッチングトランスを挿入した、ロングワイヤーなのかホイップなのか判らないようなアンテナで実験する事にしました。

160mboxロングワイヤーの全長は25mくらいになり、ローディングコイルは1.9MHzで約22uHくらいになりました。この状態での給電インピーダンスをアンテナアナライザーで測定したところ、35Ωくらいでしたので、トランスで整合させることにしました。

トランスは、FT-240#43のコアに、ふた束の10本のより線を12回巻き、このふた束のコイルをパラ接続した上で、10組になったコイルをすべてシリーズに接続したもので、1.9MHzで計算通りのインピーダンス変換ができる事を確かめてあります。  巻線のサイズがAWG28でしたので、導体抵抗を小さくする目的でふた束のより線を使いましたが、 後日、インピーダンス変換トランスの実験をしましたら、コイルをパラレルで接続したトランスは広帯域性が改善される事が判りました。1組のコイルより2組のコイルを並列接続したトランスが、より正確なインピーダンス変換比を確保できるようなので、ひとり悦に入っていました。

このトランスの7個目のタップに同軸ケーブルを接続し、アンテナを6個目のタップに接続してやると、約37Ωへ変換出来ます。実際にSWRを測定すると、アンテナ共振周波数で、SWR1.05くらいになっていました。   

ローディングコイルは、以前、アンテナチューナー検討用に作成したものを流用しました。 VU40の塩ビパイプに1mmの銅線を約0.8mmのスペースで45回巻いたもので、約45uHのインダクタンスとなっていました。 7MHzでのQは230、3.5MHzで137有りましたので、1.9MHzでも74以上は有ると思われます。 もし、Q=120のコイルならゲインが1dBくらい改善しますが、とりあえずの実験はこのQで我慢する事にしました。 このコイルのセンター付近に1ターンごとにタップを出し、ミノムシクリップでタップを選ぶ事により1.8MHzへの切り替えも行えるようにしてあります。

160mbox_1160mbox_2_2 
DX交信の前に、1.9MHzに調整して、国内QSOにトライです。 受信のS/Nは6m高の短縮ホイップより悪い感じですが、送信すると、相手の受信状態は、かなり良いようなレポートでした。 残念ながら、今回のLWと前回のホイップをスイッチで切り替えるという事はできず、簡単比較ができていませんが、飛びはかなり改善されたようです。     交信できた局は8エリアから6エリアまでカバーしました。  MMANAでのシュミレーションでは、-2.6dBiとなっていますので、6m高ホイップより13dBもゲインがアップした事になっているようです。

2014年CQ WW 160mコンテストに参加してみました。結果は、期待通りにはいきませんでした。コンディションにもよると思われますが、交信できた最長距離はサイパンとマニラの約2500Kmでした。ベトナムが599で入感していましたが、呼んでも全く反応なし。1KWの局もかなり手こずっていましたので、コンディションは良くなかったのでしょう。

6m高ホイップでは+20dB以上で入感する局と交信成立していましたが、このLWでは+10dB以上で入感する局とは交信できても、それ以下のSの場合、かすりもしないというのが実態でした。

この160m用アンテナを使用すると、40m用の垂直ダイポールが使えなくなり、夜、80mや40m、30mバンドで交信する事ができません。コンテストの時など、困りますので、上部エレメントを40m用垂直ダイポールの上部エレメントから17mバンド用のスカイドアループに変更しました。スカイドアループが同調フィーダー経由でMTUにつながっていますので、MTUから切り離し、この同調フィーダーの根本をショートした上で、160m用下部エレメントにつなぐ事にしました。 MMANAによるシュミレーションでは、ゲインが約1dB改善します。 実際に整合させると、給電インピーダンスは50Ωちょうどとなり、帯域幅も少し向上しました。

まだ、実践回数は少ないですが、2014年の広島WASコンテストで試したところ、国内QSOながら、CQを出して呼ばれる側を経験できました。また、これにより、80mバンドで垂直アンテナが使えるようになり、80mではカリフォルニアから呼ばれるというラッキーもありました。

垂直面指向性は一応DX向きの形をしているようです。

160mskdmmana

その後、このアンテナを数回使いましたが、送信機の出力でアンテナの共振周波数がずれるという問題に遭遇しました。スカイドア用ループを使った場合、1mW時の共振周波数と60W時の共振周波数の差が約30KHzくらいあります。7メガ用垂直ダイポールのエレメントを使った場合でも20KHzくらになります。 パワーでSWRが変わるで紹介の通り接近したエレメントどうしの干渉具合が出力で変わるようです。アンテナアナライザーで調整しても、実際の送信状態では、共振周波数がずれてしまう訳ですから、その内、調整作業が面倒になり、この方式のアンテナは使わなくなりました。 代わりに、独立したLWを臨時に展開して使う方法に変更しました。

 160m用ロングワイヤー(LW) 2 に続く。

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2013年11月10日 (日)

バランによるロス

<カテゴリ:アンテナチューナー>

MMANAのシュミレーションによる給電部のインピーダンスや共振周波数が、アンテナアナライザで測定した給電部のインピーダンスや共振周波数と、かなり差がありましたが、MMANAの癖やアンテナの周囲の影響だろうと、諦めていました。 しかし、最近、3.5MHzの効率の改善を行うべく、トランスだけの整合回路を実験したところ、使われているバランが、期待している状態になっていない事に気付きました。

今まで使用していたバランは、コアのギャップに紙を挟み、コアの磁気飽和を防止するようにしたクランプコアを使っていました。 そして、ハイバンドでノイズカット能力が確認できるなど、それなりに機能していました。平衡線をコアに巻いたフロートバランの場合、片側のラインだけを見ると、大きなインダクタンスにより不平衡電流を阻止しますが、バランの中を流れる平衡電流に対しては、インダクタンスは往復でキャンセルされ、実質ゼロになるのが理想です。 しかし、実際はこの平衡電流に対しても、インダクタンスを有し、実測で0.56uHくらいになっていました。      給電線に0.56uHのインダクタンスが存在しても、ローディングコイルが挿入されたのと同じ効果ですから、MTUを使う整合システムでは、これを含めて整合させますので、問題になる事は、ほとんどありません。 

しかし、3.5MHzで、バランのインダクタンスを加味したシュミレーション結果は、共振周波数もインピーダンスも全く一致しないのに、バラン無しの時の共振周波数のMMANAシュミレーション結果と実測結果はかなり一致している事が判りました。    原因は平衡線間の静電容量かも知れないと、この容量を測ってみました。Balan2_3

すると、58PFの容量が検出されました。そして、左上の回路のごとく、バランとアンテナとの間に、この58PFを挿入して、MMANAでシュミレーションすると、一致とはいかないまでも、かなり近い共振周波数を得る事ができました。 なお、インピーダンスはMMANAに注釈がある通り、シュミレーション値よりかなり高い実測値でした。 また、この静電容量有り無しによるゲイン差から、静電容量がある方が約16%もロスしている事が判りました。 

線間容量が増えた原因は、バランスを重視する為、平衡するワイヤーを互いによじった事が一番影響しているようです。

バランの線間容量が増えると、低い周波数での影響は小さいですが、高い周波数になると、これが、Qの低いローパス型のアンテナチューナーを形成し、みかけのインピーダンスを小さくしてしまいます。インピーダンスが小さくなると、これに整合するように調整されたアンテナチューナーのロスが増え、バランによるロス以上にアンテナチューナーのロスが増えてしまいます。また、バランの自己共振周波数を下げてしまいますので、共振周波数より高い周波数では、バランの効果は期待できません。今までのバランの共振周波数は約28MHzでしたので、28MHzの調整がシュミレーション通りにいかない原因にもなっていました。

通常のバランでは、ワイヤーを互いによじった方が良いと解説されていますが、純抵抗になった共振状態のアンテナに使う場合、広帯域性を確保するために必要でも、今回のような同調フィーダーを使用したアンテナチューナーに使う時は、弊害が大きいようです。

実際に困るのは、ロスが増加する事以上にシュミレーションと実際の共振周波数やインピーダンスが大幅にずれてしまい、調整の方向性を時々見失う事です。

Newbln

線間容量を減らすには、線どうしをよじらないことと、線間の距離を大きくする必要から、絶縁材の厚い電線を使いますので、クランプコアには巻く事が出来ず、フェライトバーに巻くことにしました。    フェライトバーは入手の都合で100mmの長さのものにし、電線はUHF用メガネフィーダーの外皮を裂いて、中の芯線を取り出し、利用しました。

このバランの往復線路上のインダクタンスは約0.9uHで、クランプコアよりバランスは悪くなっていますが、線間容量は約28.5PFまで改善しました。これを3.5MHzで使った時のロスは8%くらいですので、クランプコアより8%は改善できた事になります。 このバランの自己共振周波数は31MHz付近になりましたので、とりあえず、10mバンドまでは使えるでしょう。

3.5MHzで8%くらいのロスなら、28MHzではもっと大きいのでは?とMMANAとTLWでシュミレーションしてみました。所が、以外と影響は少ない結果がでました。

Balanloss10m 「チューナー出力」で示す数値は100%の入力に対してチューナーから出力される割合です。92%とある場合、100W入力した時、チューナー出力は92Wしかなく、8Wロスしたという意味になります。

「バラン無しを100%とした時」の数値はチューナー出力にゲインの差を加味した数値です。

ロスの値はチューナーに使われているコイルのQで大きく変わります。私のチューナーで使われているコイルのQは100くらいですから、バランの有り無しで約6%くらいしか変わりません。 実際にバラン有り無しで、28MHzをワッチすると、Sの差はほとんどありませんが、ノイズはSふたつほど、バラン無しの方が多くなります。

同調フィーダーにバランを使ったとき、共振周波数が大きくずれたり、パワーがロスしているような気配を感じたら、一度バランの線間容量を疑ってみる価値はありそうです。

先輩諸氏が、フェライトバーに平行線を巻いて、バランを作成していますが、磁気飽和だけの問題ではなく、線間容量の増大という問題も同時に解決する手段でもあるんですね。 今回は、メガネフィーダーの芯線を取り出して、巻線しましたが、色々とアドバイスをして頂いたOMから、メガネフィーダーの黒色の外被ごと巻き込んで好結果を得たという話を伺った事を思い出しました。

この問題の提起となった、トランスにより整合させた3.5MHz用アンテナは、どういう訳か、パイマッチのMTUより受信時のSが落ちてしまいました。 その後の調査で、アンテナ整合回路によって、アンテナの打ち上げ角が変わるという問題である事が判りました。 

 

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2013年10月21日 (月)

アンテナシステム立て替え

 <カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

T26_hason四国沖の太平洋を北東に進む台風26号を甘くみていました。夜中の3時ごろ、アンテナが折れて倒れてしまいました。10段つなぎの下から2段目の部分で折れており、アンテナは3階のベランダから逆さまにぶら下がっていましたので、明るくなるのを待って、早々に壊れたアンテナを撤去しました。

アンテナがなければ何もできませんので、立て替える事にしましたが、構造は従来通りとし、スカイドアの横幅を小さくし、見てくれを少しだけ改善することにしました。ポールは10m EXTRAというドイツ製のポールをインターネットで見つけて、その日の内に注文。

 

Sk1310s_2ポールが届くまでの間に、MMANAでシュミレーションです。 横幅を3mから2.6mに縮小した代わりに、従来のループ長を変えない為に、ループの高さを5.4mから5.9mに変更しました。 各バンドの特性を確認すると、14MHzと28MHzで0.2dBくらいゲインがダウンし、21MHzでは逆に0.2dBくらいゲインがアップします。インピーダンスの変化もわずかで、MTUで調整範囲と見込まれます。

次の日、ポールが届いて、プラスアルファの長さを得る為に、余っている釣竿を継ぎ足しますと、なんと12.8mにもなってしまいました。 従来のポールは釣竿を継ぎ足しても11mでしたので、これでは長すぎます。 継ぎ足す釣竿の段数を減らし、ポールの高さは11.5mに留めることにしました。これで、7MHzの垂直ダイポールは上部エレメントのみ50cm長くなったオフセット給電になりますが、MTUのカバー範囲ですので、これもOKとします。

横幅を縮小した為、見た目は、スリムになりました。 また、6mのヘンテナの給電部分が垂れ下がって、アンテナを上げ下げする度に、共振周波数がずれるという問題がありましたので、今回、グラスファイバーの支柱を追加して安定させました。 

ポールの直径が一回り大きくなり、ステーを固定するマストベアリングが、マストの根本から挿入できない事をアンテナが完成してから気づき、アンテナを分解して、マストの先端からマストベアリングを挿入するという、面倒事もありましたが、また、元の位置に立てる事ができました。 色が黒からグレーになった関係で、少し目立ちます。

前回のアンテナは1年半の寿命でしたが、今回はせめて3年はもたせたいですね。

Mtu131207

ベランダに置かれたMTUも若干増加しました。右側の列の上から2番目に有った、3.7MHz用MTUを3.8MHz用に変更し、3番目のMTUは3.5MHzの臨時逆V用のT型MTUに変更しました。  また、一番下に7MHzの臨時逆V用チューナーが追加されました。 

左側の一番下には、3.5MHz用整合回路が追加されました。 この3.5MHz用整合回路は、ローディングコイルとインピーダンス変換用トランスで構成され、チューナーとは呼びませんが、パイ型チューナーより広帯域ですので、最近の国内交信はもっぱらこの整合器を使っています。  ただ、この整合器を使うと、パイマッチのMTUより受信のSが低くなる傾向があり、原因を調査中です。
 

160m用アンテナ追加に続く

 

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2013年10月 6日 (日)

160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナ 2

<カテゴリ:アンテナ>

ペットボトルが内側へ凹み、線間ショートが発生して使えなくなった短縮ホイップアンテナを再度作り直す事にしました。  今回のペットボトルは、特売していたキリンレモン用にしましたが、中身を飲み干して、ボトルのボディ強度をチェックすると、三ツ矢サイダーより弱い感じ。 

160mwp1_2 導線は、線間ショートが発生しにくい、1.5φのマグネットワイヤー(PEW線)を1Kg手配して、これを、ゆるみが出ない程度に軽く巻く事にしました。全巻き数は112ターンとし、下側から10ターンの所にタップを作っておきます。

160mwp3160mwp2 
これに上部エレメントとして、2mの1.25SQの銅線をつなぎますが、調整が簡単にできる様に、ミノムシクリップ付とし、クリップの移動で+/-20KHzくらいの可変が出来るようにしました。

このコイルを6.3mの釣竿にくくりつけて、竿を持ち上げると、結構竿がしなります。前回はアルミ線で、重さ200gでしたので、さほど感じませんでしたが、今回は600gと、かなり重くなってしまいました。 風のある日は要注意です。

下側のエレメントのクリップで、タップの部分をつかんでおき、アンテナアナライザーをつなぎ、1.910MHzで50Ωのインピーダンスになるようにコイルの巻き数と、上部エレメントをカット&トライします。  コイルの上端から30cmのヒゲを出し、これを長さ152cmまでカットした上部エレメントのクリップでつかみ、共振周波数を微調整します。 

この状態で。下側のエレメントをタップからコイルの端部へ移すと1.817MHzに同調するようにタップから下側のコイルの巻き数を調整しました。

調整完了した時点で、1.9MHz時のコイルの巻き数は99.7ターン。1.8MHz用に巻き足した部分は9.4ターンとなり、この状態でのSWRは1.910MHzで1.0、 1.817MHzで1.1くらいに収まっています。いずれの場合でもSWR1.5の幅は+/-2.5KHz程度でかなり狭いです。

 160mwp4_2アンテナアナライザーで調整完了したので、実際の送信機で確認してみました。 10W出力では、OKなのですが、出力を40Wまで上げると、SWRが2くらいまで跳ね上がります。 出力を20Wくらいまで下げると、SWRは次第に下がり、10Wのときと同等まで変化します。

このような変化は温度に関係します。しかも、パワーを上げたら、SWRが悪化し、下げれば良くなるというのは、どこかでパワーロスしている証拠です。 しかし、アンテナを倒し、コイルを握っても温度差は感じられません。 良く見ると、上部エレメントの先端部分より上の約10cmくらいの長さの釣竿が燃えてしまい短くなっていました。 ワイヤーの塩ビ被覆のこげ具合から、スパークが起こったと思われます。  対策案もすぐには出てこないので、とりあえず、ワイヤーの先端から5cmくらいのところで折り曲げ、先端と釣竿の間に隙間を確保しました。 この状態で再度送信テストを行うと、60W連続送信では、SWRが変化しなくなりました。

夜になるのを待って、まず受信性能の比較。 ちょうど7エリアの局がCQを出していましたので、7MHz用垂直ダイポールと比較しました。 垂直ダイポールではS7でしたが、この短縮ホイップではS9です。前回のアルミ線では、これほどの差は無かったような気がします。 他のエリアの局を聞き比べても、Sひとつ以上の差がある事は確かです。 先端が、シャックより低い位置にある短縮ホイップが、7MHz垂直ダイポール+NT-636の組み合わせより、良い事だけははっきりしました。

CQ局を呼んだり、CQを出したりして、 すでに3局とQSOでき、喜んでいると、通りがかりのドライバーが、わざわざ車を止めて、短縮ホイップを見ているという話が飛び込んできました。 まさか?と思い、CQを出しながら、窓を開け、アンテナを見ると、キーイングに同期してアンテナの先端に紫色の光が見え、時々火花が散っていました。 コロナ放電です。  出力が60Wくらいでは起こりませんが、100Wにすると発生します。 SWRは1.5以下ですが、フラフラしています。 昼間は、明るくて見えませんでしたが、40Wの出力で、この現象がより激しく起こっていたのでしょう。

160hpcorona2 

JA1AEA鈴木OM著「キュービカル・クワッド」の中に出てくる、キトーの4エレ八木が火花を散らすシーンを思い出してしまいました。 ここは、標高230m。 コイルのQが上がったのか? アースが良すぎるのか? とにかく、火花は散りますが、交信はできます。 さあ、どうしようか?    対策が必要です。

とりあえず、その晩は出力を絞って、交信する事にしました。  交信できたのは全部で7局。コロナ放電以外は、好結果でした。

160hpcorona3次の日の朝、この垂直ホイップを撤収し、まず、コロナ放電対策です。上部エレメントの先端に丸型端子をカシメ、先端に丸みを持たせました。市販のホイップアンテナの先端には飾りを兼ねて、キャップが付けられていますが、あれも、コロナ放電対策ですね。

このコロナ放電対策は有効に機能し、100WのCW送信でもSWRは安定しています。  やっと、フルパワーで運用出来るようになりました。

また、上部エレメントをミノムシクリップでくわえて長さを調整できるようにしていましたが、釣竿を立てたり、倒したりしている内に、外れる事が多く、ワイヤークリップタイプに変更しました。 ワイヤークリップのビスをプラスチックのノブ付に変えましたので、簡単にワイヤーの長さの変更が可能になりました。 この部分を1cmスライドさせると、周波数は約5KHz変わります。

160mhp10_2160mhp11_2 

暗くなってから、再度コロナ放電を確認しましたが、OKのようです。 この日の晩に交信できた局は8エリアから6エリアまで全9局。途中、従来の7MHz用垂直ダイポールに切り替えたりして比較しましたが、受信時の信号強度差がそのまま送信でも現れているようでした。 

後日、実際のアンテナとMMANAのシュミレーション状態を比較してみました。 残念ながら、一致しているとは言えませんでした。多分、コイルのインダクタンスとQがシュミレーションより大きいのではないかと思われます。また、ポールの高さを8m品に変えると、共振周波数やインピーダンスがずれますが、シュミレーション値との差が大きくなる事もわかりました。 多分、地上高が高くなった分、地面の影響より周囲の影響を強く受けるようになったと思われます。 MMANAでのシュミレーションはあくまでも、傾向を知る程度にしておくべきでしょう。


このアンテナの性能を確認するために、2013年のCQ WWコンテストに参加してみました。受信はモスクワ、北京、北米などがS9くらいで聞こえますが、応答しても、QRZすら返ってきませんでした。+20dBで入感していた、ソウルとサハリンと交信でき一応ポイントは計上できましたが、このホイップアンテナは1600Kmくらいが限界かも知れません。ちなみに、このバンドでCQを出しているJA局は、のきなみ+20~+40dBで入感していました。

送信能力を上げるには、QROするか、アンテナの効率アップしか方法はありません。QROは街の真ん中ですのであきらめ、効率アップが期待できるロングワイヤーアンテナを検討する事にします。

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2013年9月28日 (土)

160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナ 1

<カテゴリ:アンテナ>

160mバンドで、S9のCQに応答しても、全く無視される事が多い、7MHz用垂直ダイポール+T型アンテナチューナーより、少しは応答率が上がるかも知れないという、移動用の超短縮型Whip(ホイップ)アンテナを実験しました。

160hoip6原型は、CQ誌で紹介されたり、インターネット上でも製作例が多い、大型コイルを使った全長6.3mのホイップアンテナです。 なぜ、アースが重要になるWhipを選んだかと言うと、家の敷地の隣に約40m四方の調整池があり、その周りを金網の塀でしっかり取り囲んでいます。この金網の接地抵抗を以前ブリッジ法で測った事があり、正確では有りませんが、40Ω以下でした。 直流抵抗が40Ωでも全長130mの金網は大地に対して、大きな静電容量が期待できます。 この金網をアースとして使えば、FBなアンテナが出来そうですが、北側や西側には土手が有り、東側には我が家があり、唯一、南側だけが開けているという立地条件で、適当なアンテナの構想が無く利用していませんでした。

今回、移動用160mアンテナを実験するに際し、この金網をアースとして使えるかを含め実験する事にしました。

実験するのは、全長6.3mの釣竿に、ペットボトルに巻いたコイルを吊り下げた超短縮型ホイップアンテナです。  竿の先端は、7MHz用垂直ダイポールの給電点より低いというこのアンテナを、MMANAでシュミレーションし、そこそこの特性が得られましたので、実際に製作にかかりました。

コイルの導線は園芸用に安く売られているコーティングされた1.5φのアルミ線を使います。 また、ボビンは定番の三ツ矢サイダー用ペットボトルとしました。

160hoip1160hoip2 

コイルは、シュミレーションでは100ターンで検討しましたが、後でほどいて調整できるように巻けるだけ巻いた結果、117ターンになりました。

160hoip3

160hoip9_2このアンテナの特性はMMANAでのシュミレーションで以下のような要領で調整してゆけば良い事が判りました。

・ コイルのインダクタンスと上部エレメントの長さを調整し、希望の周波数に共振させますが、最初は、仮に巻いたコイルのままで、1.25SQのKIV線で2mくらいの長さのワイヤーを取り付け、希望周波数近くになるよう、少しづつカットします。この仮のコイルのままで、周波数を合わせ込むと、カットし過ぎになりますので、要領が判るまで、上部エレメントは何回か作り替える覚悟が必要です。

・ 小さいインダクタンスと長いワイヤーでも、大きいインダクタンスと短いワイヤーでも同じ共振周波数を得る事が出来ますが、上部エレメントを長くすると、共振時のインピーダンスが下がってきます。 共振状態でのインピーダンスをアンテナアナライザーでチェックする事により、コイルとワイヤーをどうすれば良いかすぐに判断が出来ます。 シュミレーション状態より多くの巻き数で作ってある場合、インピーダンスは50Ωより高めに出ますので、せっせと、コイルをほどく事になります。

・ 上部エレメントの直径を太くすると、共振周波数が下がります。コイルをほどきすぎた場合、共振時のインピーダンスをあまり変化させる事無く、周波数を下げる事ができます。 具体的には、1.25SQのワイヤーを3C2Vの芯線と外被をショートした同軸に変えると、ほどきすぎたコイルをそのまま使う事ができます。 長さと共振周波数の関係はかなりクリチカルで、ニッパで切断する場合、5mm間隔くらいで慎重に切断していきます。

・ コイルのQを上げると、インピーダンスが下がり、ゲインはアップします。高いQのコイルを使用できる場合、上部エレメントを短くして、コイルのインダクタンスを上げれば、整合できます。 もっと高さのあるポールを使える場合、下部エレメントを長くするだけで、ゲインは上がります。 しかし、よりゲインを上げたければ、コイルの位置を下の方へ下げ、最大ゲインにした状態で、20~30Ωになったインピーダンスに整合するトランスを使った方が良いみたいです。

・ コイルから下のエレメントはかなりブロードで、下側のエレメントを変更して、特性を調整するような事は無理です。 たるんだ、ワイヤーを地面に這わせてもあまり変化しませんでした。

・ コイルのインダクタンスを微調整する為に、良く使われる、アルミのショートリングを近づけると、共振周波数の変化以上にインピーダンスの変化が大きく、調整不能になりますので、コイルは面倒でも、ほどいたり、巻き足す方法でカットアンドトライします。

 初日は、SWR 1.0で、とりあえず1.817MHzに同調しておりましたので、次の日、1.910MHzに同調するよう、タップを設け、タップを切り替えながら、ふたつの周波数が使えるように、完成度を上げる事にしました。

ところが、いざ、確認すると、昨日まで、1.817MHzで50Ωであったのに、共振周波数が上へずれて、かつ、インピーダンスが、200Ωくらいになっており、当然SWRも4くらいを示します。半日かけて判った原因はコイルの線間ショートでした。使っている、アルミ線は表面がコーティングされ、一応テスターで当たる限り絶縁されていますが、UEW線みたいに絶縁強度のスペックがある訳もなく、ちょっとした擦り傷で絶縁が壊れ、ショートしてしまいます。

電線をUEWかPEWに変える事を考えましたが、うまくいくかどうかも判らないアンテナに数千円のマグネットワイヤーは無理と、100円ショップで入手した9号サイズのテグスを、線と線の間に巻き込むことにしました。

 

160hoip5160hoip4 

左は手芸用品売り場で見つけた100円のテグス。9号サイズ30mと書いてありましたが、実際は38mくらいありました。 右は、そのテグスをアルミ線の隙間に巻き込んだ状態。もともと、完全な密巻きではなかったので、横幅の広がりもなく線間距離を確保できるようになりました。

このアンテナの アースは2個のミノムシクリップで金網を挟む事にし、設置や撤去がすぐにできるようにしています。 また、1.8MHzと1.9MHzの切り替えは、コイルのタップをミノムシクリップでくわえる方法です。 1.910で約55Ωくらい、1.817で約45Ωくらいのインピーダンスになりました。  コイルの巻き数は1.9のとき100Tくらい、1.8のとき110Tくらいになりましたが、最後はカット&トライしましたので、正確には数えていません。 防水は考慮してませんので、雨が降ったら、多分使用できないでしょう。

160hoip7160hoip8 

夜になるのを待って、ワッチしてみました。3エリアからのCQが聞こえます。受信能力は7MHz用垂直ダイポールより少しS/Nが良いというレベルですが、送信すると、垂直ダイポールではQRZすら返ってこないのに、この短縮ホイップでは、コールバックがあり交信成立。 この日のコンディションはあまり良く有りませんでしたが、とりあえず、CQを出してみました。さらに2局ほどとQSOできました。

飛びという面では、7MHz用垂直ダイポールよりはるかに優秀です。

気を良くしてCQを出していると、突然、SWRが無限大になりました。外に出て、アンテナ直下のSWRを確認しましたが、同じく、無限大。アナライザーで確認すると、共振周波数が2.2MHzくらいまで上昇し、インピーダンスも200Ω以上になっています。線間ショートが起こった時の症状です。

160hoip10_2翌朝、釣竿を縮めて、コイルに手が届く位置にして、SWRを確認してみると、コイルがバラバラになりかけており、コイルにちょっと触れただけで、あっちこっちで線間ショートが起こっていました。この原因は、コイルとテグスをきつく締めすぎた為、ペットボトルが内側につぶれてしまったものでした。たぶん、巻線の途中で一部凹みが出来てしまい、それが、長時間の間に耐えられなくなり全体に広がり、つぶれてしまったのでしょう。

10分足らずの交信テストでしたが、国内交信なら、7MHz用垂直ダイポール+アンテナチューナーより可能性が大きい事が判りました。

これは、作り直しの価値があります。 また、三ツ矢サイダーを買いに行く事にします。

160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナ 2 に続く。

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2013年9月27日 (金)

コイルのQとショーティングスイッチ

<カテゴリ:アンテナチューナー>

160m用の短縮Whip(ホイップ)を検討中に判ったことです。 コイルの線間ショートが起こると、当然インダクタンスは減少する訳で、共振周波数が高い方へずれます。しかし、正常時、50Ωくらいの給電点インピーダンスが、200Ωくらいに跳ね上がりました。このインピーダンスの変化は、コイルのQに関係しているかも知れないと、別のコイルを使い、Qを実測する事にしました。

Qtest1左のコイルはメーカー製アンテナチューナーに内臓されていたステアタイト製のコイルです。

7MHzで、このコイルのQを測ってみる事にしました。

Q測定用エクセルファイルをダウンロード

まずは、①-③間のQを測り、このコイルの基本性能を把握します。

次に、①-②間のQを測ります。②と③の間は2ターン分となっていますので、この②-③間をオープンのままの時、及びショートした時のQをそれぞれ測ります。

また、コイルのショート位置が影響するか調べる為、①から電力を加え②にバリコンを接続した時と、②から電力を加え、①にバリコンを接続した時のQも比較しました。

②-③間オープンとショートでインダクタンスが変わりますので、アンテナアナライザーにて測定した共振周波数の変化から推定したインダクタンスと、このインピーダンスの変化から逆算したQ値を一緒に示します。

 Qtest4_2

 

上の表がその結果です。

このコイルの①-③間のQは7MHzで189ありました。かなり優秀なコイルと思われます。

次に、①-②間のQを②-③間をオープンにしたりショートしたり、また、コイルの向きを入れ替えたりして測定しました。コイルの向きを変えた時のQの差を確認したのは、いわゆる、コールド側でのショートと、ホット側でのショートに差が出るかを見たものですが、結果は測定誤差と考えられ、基本的には、変化無しと見てよさそうです。

Qtest3

しかし、②-③間のショートとオープンでは、明らかに差が生じており、インダクタンスもわずかに変化しますが、それ以上にQが変化し、ショートの時、逆算値以上に悪化しています。

この現象は、インダクタンスを形成する磁路の中に、ショート回路を挿入した事により生じるもので、線間ショートだけでなく、インダクタンスを可変する目的で、磁路に挿入するショートリングにも当てはまります。コイルの中に、または外側に、円筒形のアルミや銅板を挿入してインダクタンスを可変するバリアブルインダクターも同様です。

アンテナチューナーや、送信機のコイルのタップを切り替えるとき、選択しないタップどうしをショートする切り替え回路をたまに見ます。これは、オープンにした場合、タップの位置や使用周波数によって、高電圧が発生し、スパークするのを防止するのが目的ですが、当然、このようなショーティング方式のコイル切り替えもQの低下を招く事になります。

メーカー設計の場合、このQの低下を見越して、その他の回路が設計されているでしょうから、問題は有りませんが、自作のアンテナチューナーや送信機のタンク回路の場合、気にする必要がありそうです。

また、インダクタンスをショートリングで可変するような可変インダクターは、インダクタンスを小さくすると、リアクタンスの減少する割合以上にQが減少すると考えられます。

なお、ATUなどでは、使用しないコイルをリレーでショート していますが、これらのコイルはトロイダルコアなどを使い、それぞれのコイルの磁路が影響しないようになっていますので、問題はありません。

 

最初に疑問を提起した、160m用短縮Whip(ホイップ)アンテナはMMANAでも、きれいにシュミレーションする事ができます。

コイルのQを100として、共振時のインピーダンスを50Ωに設計しておき、このアンテナのインピーダンスが200Ωくらいまで跳ね上がる時の、コイルのQを逆算すると、約Q=25で、実験結果と同じような数値が得られます。

160mに使われる短縮コイルが1ターンショートしただけで、Qは1/4までダウンするという事は、致命的な問題です。インダクタンスの調整の為、コイルをショートするとか、アルミ板や銅板でインダクタンスをキャンセルさせるような手段は、あまりお勧めできませんね。

その後の実験で、コイルのQが高すぎて、調整がしずらいアンテナチューナーに出くわしました。 また、100W送信時、オープン状態のコイルの端からスパークするという現象も経験しました。 Qが高ければ高いほど良いとは言えませんが。

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