2014年9月25日 (木)

バリコン式ATUの実装

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

20mの長さのある同調フィーダーの先に、現用の18メガ用スカイドアと7メガ用垂直DPをつなぎ、シャックの中でテスト運用した自作のATUは快適に動いてくれました。 ただし、20mの同調フィーダーはノイズの受信と不要輻射の面から常用は不可ですので、プリセットMTUを置いてあるベランダにATUを移し、そこまでは同軸で給電する事にしておりました。 

このATUをプリセットMTUの所に移す為に、プリセットMTUをサイズダウンして防水BOXの中に隙間を確保し、ATUを収納できるように改造しました。ATUの動作確認以前の処理事項として、この改造したプリセットMTUが全バンド正常に動作するようになりましたので、ATUの本格稼働に向け動作テストをする段階までこぎつける事ができました。

Atu140926

右下のアルミケースで覆われた箱がATUです。左側の基板はプリセットMTU用のデコーダーで、シャック内のコントローラーからのATUコマンドを中継しています。

このATUの動作テストを行う前に、プリセットMTUの調整も行いましたが、プリセットMTU作り変え にて紹介の通り、ハイパス型Tタイプのアンテナチューナーでは整合しないバンドがかなりあります。 ATUはハイパスTタイプですので、心配しながら、チューニングテストを行うと、3.5、3.8、14,18,24メガが整合しません。 

ATUをリグの近くに置き、アンテナまで20mくらいの同調フィーダーで接続した場合は、全バンドうまくいってましたので、同調フィーダーの長さを調整すると、整合するとは思います。 しかし、現在の同調フィーダーの長さで、せっかくMTUが正常動作している状態ですので、ATUもこの同調フィーダーの長さのままで正常動作させる事にします。 

MTUの整合検討で多くのバンドが整合しない原因は、 MTUのコモンラインの浮遊容量でしたので、ATUを接続する時は、入出力にそれぞれリレーを設け、MTUからGNDを含め完全に分離する事にしました。 その結果、3.5,3.8,18メガ以外は整合するようになりました。

3.5と3.8メガのバンドが整合しない理由は、バリコンの回転が速すぎて、整合ポイントをスキップしてしまうのが原因のようです。 バリコンの回転スピードを超スローにして、数分以上の時間をかけてSWR最少ポイントに追い込んでいくと、このバンドもSWR1.5以下に整合します。 しかし、それでは使い物になりませんから、バリコンが回転中でも5m秒おきにSWRをチェックするようにしました。 これで、従来より10倍くらいの密度でSWRのチェックする事になり、収束するようになりました。

しかし、1分以上経っても整合できない事もしばしば発生します。 これは、バリコン最少容量状態から、小刻みに、VCを回し、SWRが規定以下になるポイント探す時間と、SWRがかなり下がったのに、何らかの原因でSWR20以上の状態に陥る場合です。 対策として、整合の為のサーボ動作を開始するSWRの上限を20から50に修正しました。 

その上で、SWRが10以上ある時は、モーターの駆動時間を従来の2倍にして、SWR10以下になるまでの時間を約半分にしました。 また、整合途中でSWR5以下まで収束したら、その時のVCの角度を記憶させる事にしました。 この後、なんらかの原因でSWRが50を超えても、最初からやり直すのではなく、SWR5以下になったバリコン位置から再スタートさせます。 

また、20秒以上たっても整合しない場合、SWR3以内なら一旦整合したとして停止させ、そこから再度整合をスタートさせると、ほぼ100%の確率でSWR1.5以下に収束します。  

一度整合してしまえば、その時のタップ番号やバリコンの角度を記憶しておりますので、プリセットMTUと同感覚で使用できます。

Atuswadd

ただし、18メガはなかなか整合しません。SWR3くらいまでは比較的簡単に収束しますが、それより、なかなか低くなりません。 原因を確かめる為に、ATUをマニュアルで動かす機能を追加しました。VC1もVC2もキーを押している間だけ、CW,CCW方向に回転できるようにしました。 このマニュアル機能を使い、手動で整合させようとしますが、まだうまくいきません。 このバンドだけは、後日、対策方法を考える事にします。

マニュアル動作が可能なATUの配線図 ATU-VC6.pdfをダウンロード

Mtu_cont1

また、ATUのSWR計がSWR1.4と表示しているのに、シャックの中にあるSWR計はSWR2と表示して、レベルが合いません。  通常はアンテナ直下のSWR計より、リグの近くにあるSWR計の方が良く表示されますが、これは逆の現象です。 

ATUをリグの近くに置き、短い同軸ケーブルで接続すると、このSWRの数値差は出なくなります。 コモンモード電流が悪さをするとこのような現象がでる事は判っていますが、今回も同じ理由なのかは判りません。 今後、使用しながら改善する事にします。

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18メガがなかなか整合しない原因が判りました。コイルのQが高過ぎて、バリコンが非常にクリチカルになり、モータードライブのバリコンでは合わせきれないのが原因のようです。 ギアのバックラッシュを完全に無くすると、この問題は発生しないのでしょうが、それは、無理ですから、別の方法を考える事にします。 

NT-636がクリチカルながらも整合する理由はコイルをショート状態で使っているのが影響しているのかも知れません。ショート状態とは、タップ番号0のタップはいつもGNDに接続してあるという意味です。このような使い方では、コイルのQが下がり、チューナー内のロスが増えます。 NT-636も一度、この0番タップのGNDを外した事がありましたが、高圧が発生し、スパークが起こりますので、また元に戻した経緯があります。 

試に、このATUのコイルの0番タップを常時GNDに接続してみました。すると、18メガがちゃんと整合するのに加え、他のバンドも使用可能な帯域幅が広がりました。 

また、2種類のSWR計の読みが一致しない、もうひとつの原因は、SWR計の調整の仕方そのものに有る事もわかりました。 SWR計はリアクタンスが含まれたとたん誤差が大きくなる事は、SWR計とリアクタンスの記事で紹介しましたが、SWR計の調整のとき、純抵抗のダミーロードだけで、VREFやVFWDのキャンセル調整を行うと、CM結合器のトリーマーの位置がどうしてもブロードになります。 このトリーマーの調整を実際に共振している50Ωのアンテナで行い、2機種ともSWR最良になるようにトリーマーを調整してやると、共振周波数以外では、SWRの表示に差異がでますが、SWR最少となる共振周波数はかなり一致するようになりました。 

しかし、21MHz以上のバンドでは、一致したとはまだ言えません。 そこで、ATUの直近にあるコモンモードチョークをFT240#43のコアの物に交換し、いままで使っていたFT140#43 2個によるチョークはリグの近くにあるSWR計の出力側に移しました。 この結果、SWR最少周波数が完全に一致しないまでも、ふたつのSWR計の指示はかなり近くなりました。 

Mtu141030d

チューナー内のロスはコイルのQが少し下がった関係で、増加したと思われますが、一応全バンド使えるようになりました。 

ところで、このATUはなかなか整合しないような印象を受けたかもしれませんが、それは、このATUを最初に使う時だけで、一度整合してしまえば、以降は2秒以内で実用SWR域にプリセットされます。 ソフトの開発中は、プログラムを書き換える度に、プリセット用のVC角度がイニシャライズされますので、なかなか収束しないように見えるものです。

このマルチバンドアンテナシステムは10MHz以下のローバンドは7MHz用垂直ダイポールに整合させ、14MHz以上のハイバンドは18MHz用スカイドアに整合させますが、間違って垂直ダイポールに14MHz以上のハイバンドを整合させたり、スカイドアに10MHzや7MHzが整合させてしまいます。

当然、このような想定以外の整合では、アンテナの性能は著しく悪くなります。ATUの場合、この間違った状態でも、整合が成功すると、タップ番号やバリコン角度を書き換えてしまいます。 間違いに気づいて、正しいアンテナで整合させようとすると、以前の正しい整合情報が書き換えられており、また一から整合ポイントを探す事になってしまいます。 

そこで、どのアンテナエレメントを選択しているかをATU側でチェックし、測定した周波数と比較して、エレメントが間違っている場合、エラー警告を出し、整合動作を開始しないようにしました。 この措置で、アンテナ切り替えミスにより、せっかくのATUプリセット情報が書き換えられる事がなくなりました。  しかし、時々、このプロテクタープログラムを入れた事を忘れてしまい、エラーになる理由が判らず、悩む事もあります。 慣れるまで大変です。

このATUが真価を発揮するのは雨の日です。 その効果はすでに実証済みです。 しかし、まだまだ、使い勝手はMTUの方が高い状態です。当面はMTUのサブとして使う事になりそうです。

ATUのPICマイコンによるSWR計の指示とシャックの中にある自作のSWR計の指示に差がある事はすでに触れましたが、この本当の原因が判りました。当初、プリセットMTUのBOXまで同軸ケーブルで接続された後、160mバンド用の延長ケーブルに接続できるように、リレーで回路の切り替えをやっていましたが、このリレー回路は普通のワイヤーで立体配線されたインピーダンスは完全無視の回路でした。 

このリレー回路がハイバンドでSWRを悪化させ、その結果、ATU内のSWR計が21MHzで1.02を指示しても、手元のSWR計は1.2と表示してしまう事が判りました。 このリレー回路を廃止し、ATUに同軸ケーブルを直結すると、ふたつのSWR計の指示差は無くなりました。 

同じベランダで長年使っていた2m用のJポールを廃止しましたので、このアンテナ用の同軸ケーブルが余りました。 これを160mに専用で使用する事にすることで、問題は解決です。 

ATUの整合条件はかなり変わり、今度は21MHzが整合しなくなりました。 原因は、回路のQが高くて、真の整合ポイントを通り越し、VC1もVC2も最大容量に収束してしまうものです。 マニュアルモードで真の整合ポイント付近でSWRが1.5くらいに持っていき、そこから自動整合を開始すると、SWR1.1以下に整合します。 

このテストを何度も繰り返している内に、バリコンの最大容量250PFは大きすぎるという結論になりました。ギアのバックラッシュをもっと少なくするか、バリコンの容量を最大150PFくらいまで落とすなどの対応が必要なようです。

たちまちは、これらの対応を実現できませんので、当面は、ソフトを書き換えたら、また最初の整合ポイント探しはマニュアルで行うしかないみたいです。

ATUの接続方法を変更した配線図ATU-VC9.pdfをダウンロード  (LCDの変更も含まれています。)

ATUの自作 : LCD交換 に続く。

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2014年9月21日 (日)

プリセットMTU作り変え

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

自作ATUの製作が進行中なので、このATUを防水BOXに収納する為、個々のMTUのサイズダウンを行い、ほぼ同サイズの新しいコンテナBOXを用意し、全バンドのMTUを作り変える事にしました。

 

Mtu140926

Mtu2_c

コンテナBOXはアステージのNTボックス#22で、従来より横幅が10mmくらい広くなりました。この中に、幅を約8mm切り詰めたMTUを16台収納可能なように配置し、右側の一番下にバリコン式ATUを収納しました。 このATUについては、バリコン式ATUの実装 を参照下さい。

新作したプリセットMTUは従来のMTUをサイズダウンして収納するだけのもので、目新しい細工は考慮しませんでしたが、いざ実装の段階になると、技術的な問題が続出し、従来のMTUを大改造する羽目になってしまいました。

このアンテナシステムをMMANAでシュミレーションした結果は、インピーダンス値は低めに出るものの、共振周波数はかなり合致していました。 しかし、TLWによるアンテナチューナーのシュミレーションと実際のMTUの設定定数はローバンドはともかく、ハイバンドは全く一致していない状況でした。 そこで、このBOXを新作したのを機会にBOX内の電気定数を調べてみる事にしました。 その結果、各MTUをリレーに接続するコモンラインの容量が50PFもある事が判りました。この50PFはTLWのシュミレーション定数のひとつである「Output Stray Capacitance」に相当します。通常デフォルトで10PFと設定されますが、実は10PFではなく50PFであったという事です。そして、この容量を50PFにすると、ハイパスTタイプのチューナーでも整合する定数が得られますが、実際は整合しないというバンドが続出します。 その原因はMTUの入力側の浮遊容50PFの存在です。 この入力側の浮遊容量はTLWでもシュミレーションの対象ではなく、計算上は常に0PFとして扱われます。 従来は、これが原因で整合しないチューナーを同調フィーダーの長さを変えてごまかしてあったという事が判った次第です。 このごまかした長さは2m分でしたが、これが、天候で整合状態をころころ変化させる原因のひとつにもなっていました。 MTUを作り替えたついでに、この不安定となる2mの追加フィーダーを廃止し、アンテナから垂直に引き降ろした約4.5mのみで整合させることにトライしました。

このアンテナの給電点付近にはフロートバランが挿入され、実測したインダクタンスと浮遊容量と前述の50PFを加味してMMANAでシュミレーションしても、共振周波数はほぼ一致しますが、MMANAから算出したインピーダンスを元にシュミレーションしたチューナーの回路では、全く整合できません。従い、シュミレーションを当てにせずに整合回路を模索する事になります。 14メガから28メガまで全バンド、ハイパスTタイプでは、いくらやってもSWR2以下になりません。これらのバンドについては、ハイパスTにこだわらず、整合可能な回路方式を含めて検討する事にしました。

Mtu2_b大きなコイルは使えませんので、インダクタンスが4μH以下のコイル1個、最大容量150PFのバリコン2個で変形したチューナーを空中配線で作り、うまくいきそうになったら、改造したコイルと、手作りポリバリコンに置き換えるという試行錯誤を行った結果、全バンド整合可能になりました。

左は各バンド毎のチューナーの基本回路です。コイルはカット&トライですが14MHz以上のバンドでは、最大でも直径18mmのボビンに21ターンとなっています。

80m,75mバンドは従来通り、ローパス型、パイマッチタイプです。このバンドは容量性リアクタンスがかなり大きいので、ハイパス型を使うと内部ロスが増大します。 このパイマッチ式チューナーのロスは50%くらいです。  送信機側のバリコンは2000PFを超えますので、大半は固定コンデンサで、ポリバリコンは微調整するだけとなります。雨が降ると、この微調整の範囲を超えてしまいます。

40m及び30mバンドは、ハイパス型Tタイプです。これらのバンドでのチューナーロスは5%から15%くらいです。リアクタンスは30mで+300Ωくらいになっています。 調整はかなりクリチカルです。天候により大きく整合状態が変わります。

20mバンドは50Ω以下の抵抗成分と、+200Ωくらいの誘導性リアクタンス成分になります。基本形はローパス型Lタイプですが、出力側でVCによる調整を行っています。 この回路ズバリの挿入ロスのデータはありませんが、5~10%くらいのロスになると思われます。

17m及び15mバンドと10mバンドはキャパシタンスインプット、インダクタンスアウトプットの変形回路です。 抵抗成分が50Ωよりかなり低く、アンテナのリアクタンスが容量性を持っている場合、この回路がバンド幅も広くなり使いやすくなっています。

12mバンドはハイパスTタイプのコイルをVCで可変しています。 200Ω以上の抵抗成分と+600Ωくらいのリアクタンス成分となっておりますが、調整は以外とブロードです。

これらの検討を行う途中で、このMTUを接続する場所にクラニシのNT-636を持って来て、調整すると、どういう訳か、全バンド整合できます。NT-636はハイパス型Tタイプオンリーですが、整合してしまいます。NT-636は整合出来るのに、私の自作のハイパス型TタイプMTUはなぜ整合できないのか調べた結果、その最大の原因は、MTUの入力側に存在する50PFの浮遊容量の有無でした。 NT-636を接続した場合、出力側の50PFは同じように存在しますが、入力側の50PFは存在しません。 この事は、後日、同じハイパスTタイプのATUを実装する時、役立つ事になりました。

現在の最新配線図 MTU-PIC3.pdfをダウンロード

(エンコーダー側のPICkit3接続コネクタの配線に誤りがありました。)

 

製作してから10年以上経った2023年1月、家のメンテの為、ベランダに設置したこのアンテナシステムは全て撤去しました。 撤去は3時間で完了。 

このアンテナを再開する為の検討を始めました。

マルチバンドアンテナシステム2へ続く。

 

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2014年9月17日 (水)

半田鏝(ハンダゴテ)のアース

同じ回路を同じプリント基板上に組み立て、色々と問題点の検討をしているとき、ある特定の人がショッチュウ半導体を壊していました。電源を入れたまま部品交換するな!と言ってあったのですが、それでもFETが壊れた、ICが壊れたとトラブルは発生し続けていました。

Solderiron

原因は、ハンダゴテの先端の半田を溶かす部分を接地した為でした。  感電の危険を防止する為に、日本でも接地端子のある3ピンのコンセントを用意した環境が存在します。そして、ハンダゴテのコテ先もこの接地端子に接続できるようにした、安全性100%とうたわれたハンダゴテも存在します。

しかしながら、3ピンの独立したアース端子が付いたコンセントやテーブルタップを用意しているのは、工場や、プロフェッショナルな作業を行う場所で、一般の家庭や、事務所などでは、2ピンのコンセントがほとんどです。 このような環境では、この手の接地したハンダゴテや機器はかえって感電を招く事になります。 感電には至らないけど、数十ボルトのAC電圧が加わり、トランジスターやICを壊してしまいます。 なぜそうなるのか以下説明します。

世の中にある機器や試作検討中の電子回路を含めて、そのGND側がすべて大地に接地されているのなら、全く問題ありませんが、日本の電気器具は接地を強制しません。 代わりに、商用電源の2本の電線のうち、片方のみが大地に接地されています。 この接地された端子はコンセントの受け口の横幅が少し広くなっていますが、機器についているプラグは極性が有りません。 よって、機器の内部では、ホット側、GND側と言った識別はありません。一般的に、絶縁トランスで絶縁された機器はこのホット、GNDの区別は不要で、2次側と1次側の間は数十メグオームの絶縁抵抗で隔てられており、感電の危険は有りません。

ところが、雷対策や、ノイズ対策で、この1次側と機器のシャーシの間にコンデンサを接続したり、数メグΩの抵抗を入れたりしています。コンデンサは高周波用ですので、50Hzや60Hzの商用電源では無視できるほどのおおきなインピーダンスであり、また抵抗も感電を感じるような電流は流せませんので、無害です。

しかし、高いインピーダンスであるにせよ、そこには大きな電位差が発生します。仮に、ホット側とGND側からシャーシに0.01μFのコンデンサがつながっている場合、シャーシは大地に対して50VのAC電圧を持っている事になります。

実際にどのくらいの電位差があるかは、2台の品種の異なる機器のケース間の電位差をテスターで測ればすぐに判ります。 ごく普通の機器では10Vから20Vくらいの交流電圧が存在します。ところが、工業用の計測器や電源装置は、ほとんどの機器が3線式の電源コードを使い、シャーシは必ず大地に接地するように設計されておりますが、一般家庭や簡易の作業台の場合、アース端子はどこにも接続せずに使っているのが現状です。これらの機器は前述の1次側とシャーシ間に結構小さいインピーダンスをもつコンデンサが接続されている事が多く、例えばDC電源とオシロスコープのGNDどうしを手で触ったら感電したという事もよく発生します。

DC電源のGNDを接地していない場合、GNDの電位は宙に浮いている状態になります。しかし、大抵の電源はそのノイズ対策の為、1次側とシャーシの間にのノイズフィルターという名でコンデンサが接続されています。そこへ、接地されたこて先をもつハンダゴテを当てると、前述の電圧分の電位差が回路素子に加わり、例え通電してなくても、回路素子を壊してしまうという事態になる訳です。 最近のスイッチング電源などは要注意です。

電子回路を検討する場合、ハンダゴテのこて先は完全に絶縁状態にして、回路素子にこて先を当てても電位差が生じないようにします。 ハンダゴテも電源も接地したらいいではないかと言われるかも知れませんが、それは貴方が管理している機器だけの事で、「ちょっとハンダゴテ貸して」と借りた途端、大事な試作回路を壊してしまうのです。

電源プラグが3ピンで機器をGNDへ接続する事が義務付けられている国では、測定器、DC電源を含め、ハンダゴテのGND線(緑と黄色のらせん模様)をニッパで切っていました。 感電のリスクより、検討する回路が壊れるのが怖かったのです。 また、このGNDラインがつながったままの場合、測定系にループが出来て、正確にデータが取れないという問題の対策としてもGNDラインのカットは必要でした。 この国の中にある工場で、問題のあるプリント基板を検討しようとして、ハンダゴテを借り、64ピンのマイコンの足を再ハンダしようとした途端スパークが起こりマイコンが壊れたのは言うまでもありません。結局、ほとんど設備のない場所で64QFPのマイコン交換は丸1日かかってしまいました。

ちゃんと設計された工業用DC電源はGND端子をケースにつなぐか宙に浮かすか選択できるようになっています。実は、宙に浮かして安心していても前述のフィルター名目のコンデンサはつながっています。 また、PCはほとんどスイチング電源ですから、PCのGNDは大抵20Vくらいの電位差がありますので、例え微弱電流しか流れないにしても、耐圧以上の電圧が一瞬加わる事により、半導体を壊してしまうのです。 トランジスターやICを壊して、ロスを発生させる前に、アナログテスターでハンダゴテやDC電源やその他の機器のGND間のAC電圧を測定して置くことですね。そして、AC電圧が小さくなるように各機器のプラグの極性を変える事です。  最近のデジタルテスターは入力インピーダンスが高くて、のきなみ高電圧を表示します。 20KΩ/Vようなアナログテスターの方がこの判定はより正確です。

ハンダごてのこて先への電圧リークは論外です。こて先と接地間で電位差が生じるようなハンダごては、こて先を接地する前に、即廃棄する事をお勧めします。

最近の事例としては、GNDラインが接地されていないPCを、USBケーブルでVNAにつなぎ、VNAのテスト端子をアンテナにつないだら、高価なVNAが壊れたという悲劇が有りました。

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2014年9月 1日 (月)

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

マイコンの開発がほぼ終わり、評価ボードを実用サイズに作り直すところまで来ました。この実用サイズは、現用中のプリセットMTUを含めて収納できる防水ケースに収める事が条件ですから、MTUの作り替えを前提としたサイズにしました。

最終的なサイズは  156x102x118mm となりました。

構造は、二つのL字型シャーシに内部パーツを分割してマウントし、これを四角のBOX状に組み立てるもので、オリジナルのTS-930S用ATUと似たようなサイズになりました。

Atu_comp5

Atu_comp4

上の画像は、バリコン部とCM結合器及びマイコン基板が実装された状態です。 軸の穴径拡大時に失敗し、傾いてしまったギアも、作り直し、傾きが無いものと交換しました。

Atu_comp3_2

Atu_comp6

上はコイルとこのコイルのタップを切り替えるリレーを10個並べたもので、リレーはアルミのLアングルで動かないように固定して有ります。

このふたつのアングルを合体すると以下のようになりました。

Atu_comp2

Atu_comp1

この状態で、動作テストを行い、問題なく動作しましたので、側面のカバーをかぶせて出来上がりです。

JW-CADで組み立て図を書き、その組み立て図から部品図面をおこしますが、組み立て図をコピーして作った部品図面は、間違いはないのですが、寸法のみ拾い、別に図面を書いたものは、穴位置が反対だったり、位置ずれがあったりで、かなりステ穴が増えました。また、板金の曲げ加工はバイスと木の当て板だけで行い、曲げ部分のRを小さくする為、ハンマーでたたくものですから、平面であるべきところが凸凹です。厚さ1mmのアルミ板ですが、この曲げ加工により強度がアップしましたので、みてくれは悪いですが、安心して使えそうです。

Atu_comp0_2

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マイコン基板はむき出し状態ですが、不安定になるようなら、薄いアルミ板で上からカバーするつもりです。 一番最後の段階で実装する事になるでしょう。

一応、ATUはできました。 これを、現用中のプリセットMTUと平行してテスト運用していますが、どうしても従来のMTUを使う頻度が高くなります。 原因を考察すると、ATUはバンド切り替えの度に、例えTUNE動作は必要なくても、送信というアクションが必要です。バンドの状態はどうかな?とちょっとの間、他のバンドを聞きたくても、チューナーが整合していませんので、7MHzの国内交信は聞こえても、ハイバンドのDX信号は聞こえません。 

一方、プリセットMTUは受信機のバンド切り替えと同時にハンドでカチカチと切り替えるだけですぐに受信できます。このような問題を解決する手段として、最近のモデルは、現在の受信周波数やモードなどを外部へ出力しており、このデータを利用して、ATUも予め決めた調整状態に設定する事ができます。  しかし、残念ながら、私のリグは30年くらい前のリグですから、そんな便利な機能はありません。

そこで、現用のプリセットMTUのバンド切り替え情報のみでATUをプリセット出来るようにしました。もちろん、このプリセット時の送信は一切ありません。プリセットMTUは3.5MHzから28.7MHz(28.7MHz以上は使用していません)までを14バンドに分割しています。ATUの28バンド分割の半分しかなく、バンド全域はダメですが、私が良く使う範囲はSWR1.5以下に収まります。このプログラムを実装しましたので、従来のMTUと同感覚でATUを使用できます。

遠隔操作システムが完成したら、従来のプリセットMTUは不要になるかも知れません。ただし、それを確認できるのは、かなり先の事になりそうです。

バリコン式ATUの実装 に続く。

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2014年8月27日 (水)

バリコン式ATUの自作 7 (遠隔操作)

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUとしての基本機能が完成しましたので、これをベランダに設置し、そこから約20mのケーブルをシャックの中まで引きこみ、シャックの中からこのATUを操作する事になります。 この遠隔操作システムの検討と試作を行いました。

現在の遠隔操作システムは、ベランダに置かれた、17台のプリセットMTUをバンドや使用するアンテナに応じ8本のケーブルで操作していました。すべて、パラレル制御です。

Mtucont0

今回ATUを設置するに当たり、MTUの操作を残したまま、ATUの操作を追加しますので、従来通りパラレル制御を行うなら、さらに6本のケーブルが必要になります。 そこで、RS232Cより長い距離でも通信が行えるようにラインドライバーを設計した上で、制御は1本のシリアルラインで行い、電源を含めて3本のラインで構築する事にします。

また、ATUからの戻り信号として、ATUの状態を示す2個のLED出力をそのままパラレルでコントローラーへ返すことにします。 それでも3本のラインが余りますので、将来、ATU側からSWRなどのデータをシャックに戻す為に、ハード設計だけして予約して置くことにしました。

新規に作成するコントローラー(エンコーダー)も、プリセットMTU制御回路(デコーダー)もATUと同一シリーズでピン数のみ28ピンとなるPIC16F1933で作る事にしました。

Mtuenc0_2

Mtudec0_2

左上がエンコーダー、右がデコーダーです。現在のプリセットMTUのコントロール機能はすべて含まれますが、MTUの数は最大で20台までとしました。また、今まで、ベランダ側で操作できなかった、ローバンド、ハイバンドの切り替えと外部アンテナへの切り替えを可能にしました。また、テストモードをOFFし忘れて、シャックに戻ると、手元のコントローラーから操作不能になり、またベランダまで出なければならないという不便を解消する為、例えテストモード状態でも、シャックから操作があると、自動的にテストモードをOFFにする機能も追加しました。

ATUの制御は4つのスイッチだけで行い、その状態は2個のLEDで確認できますので、このLED出力のみパラレルでシャックにもどします。もちろんATU on/offもベランダ側でも操作できるようにしました。

これらの制御は16pitのシリアル信号で行いますが、現在使用されているのは10bitのみで残りの6bitは将来の予約です。

UARTを使用したシリアル通信は初めてのトライで、理解できるまで何日もトラブリました。最大の問題は多重割込みによりメインループが止まってしまうという問題でした。とりあえず、割込み処理ルーチンの処理時間を極力短くして多重割込みが発生するチャンスを減らすくらいの対策しかできませんでした。 なお、このシステムを操作するのは一人の人間で、通常はATU側とエンコーダー側を同時に操作できません。現在のデバッグはエンコーダーもATUも同じ机の上に有り、多重割込みが発生する操作ができるものです。 実際には問題の発生は無いと考えられます。

また、スタックオーバーフローも発生し、これを回避する為に、関数のネストを減らしたり、ローカル変数をグローバル変数に変えるなど何日もロスする事になってしまいました。

UARTの通信速度は1200ボーに設定しましたが、距離が20mもありますので、通常のラインドライバーではなく、1AクラスのP-MOS FETによる電源ラインの直接スイッチング方式としました。とりあえず、10mAくらいの信号電流でトライしますが、誤動作があるようなら、最大で数100mAも流せる回路にしてあります。 20mのケーブルを使った実験では、問題なく動きました。

Mtu_uart_in

Atupcbback

左上の波形は、20mのケーブルに接続されたデコーダーマイコンのRX入力端子の波形です。波形の角が少し丸みを帯びていますが、大きく崩れることなく、伝送出来ています。

右上の基板はATU回路の裏側です。チップ部品より配線のリード線の方が目立ちます。最初から、全ての回路が決まっていたら、配線経路が最少になるように部品の配置を決めますが、今回のように、ソフトを開発しながら、必要に応じてハードを追加したり、変更したりすると、このようにジャングルになってしまいます。 実用するATUに作り替えるとき、この基板は、このまま使いますので、シールドケースがいるかも知れません。 後日、100W出力による動作テストを行いましたが、MTUもATUも誤動作なく動きました。

Atulinedriver

実使用状態にするには、まず、このATUのサイズ縮小と防水設計をする必要があります。また、現在使用中のMTUコントローラーも改造が必要となり、かなり長い期間QRTせねばなりません。 次のステップは秋のDXシーズンが終わってからになりそうです。 それまでは、机の上に置き、時々デバッグをする事にします。

MTUのエンコーダー、デコーダー及び遠隔操作機能を追加したATUの配線図は以下からダウンロードできます。

シリアルコントロールのプリセットコントローラー配線図MTU-PIC3.pdfをダウンロード

遠隔操作機能付ATUの配線図をダウンロード

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成) に続く

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2014年8月16日 (土)

TS-930 メインダイヤル誤動作(アップしない)

<カテゴリ:TS-930>

突然、メインダイヤルで周波数がアップしなくなりました。どっちに回してもダウンばかり。時々アップしますが、不規則に変化し、全体的にはダウン方向です。 KEMのトランシーバーでも似たような現象がありましたので、メインダイヤルのエンコーダー出力をチェックしました。

Ts930mewave1

デジタル基板に4ピンのコネクター(④のマーキング)で接続されていますので、デジタルオシロをつなぐと、ME1には信号がありますが、ME2はHのままで、パルスが有りません。セットを逆さまにしてこのメインエンコーダーと呼ばれる基板の端子をモニターすると、今度はME2にもパルスが出ていますが、そのパルス幅が非常に狭い状態でした。高速でダイヤルを回転すると、パルスが細くなりさらに高速にするとパルスが出なくなります。

左の画像の上の波形がME1、下の波形がME2です。最初チェックした時は、ME2のパルス波形は有りませんでした。

Ts930nainencorder

このメインエンコーダーの回路図が見つかりませんが、左に基板図を示します。半固定抵抗でフォトトランジスターのしきい値を調整しているようですので、とりあえず、半固定抵抗VR2を回してみました。すると、ME1と同等のパルス幅になり、半固定抵抗を元の角度まで戻してもパルス幅は少しは狭くなりますが、ME1と同等です。 どうやら、この半固定抵抗が接触不良を起こしていたみたいです。ドライバーでグリグリと何度か回転させ、ME1とME2のパルス幅が同じようになるポイントに固定しました。

Ts930mewave2

以上の作業でダイヤル動作は正常状態に戻りました。 左の画像は修正後のME1とME2のパルス波形です。

最初コネクター部分でパルス波形が見えない状態の時は、完全に接触不良を起こしていたようです。その後、セットを分解するとき振動を与えましたので、わずかに接触して不完全ながらパルスは出力するようになったと思われます。

私の場合は、デジタルオシロがありましたので、簡単に原因が判りましたが、同じような現象に遭遇され、オシロが無い場合、この基板についている半固定の元の位置が判るようにマジックなどで印をつけた上でグリグリ回してみて下さい。正常にもどりましたら、半固定の位置を元の位置にもどしておきます。

Ts930mepcb

左の画像はセットを裏返し、フロントパネルが手前にあるように置いた時のメインエンコーダー基板ですが左側の半固定がME1を、右側の半固定がME2のパルス幅を調整します。

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2014年8月10日 (日)

バリコン式ATUの自作 6 (角度センサー対応アルゴリズム)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

TS-930S用ATUのギアBOXにバリコンの回転に連動した可変抵抗器を追加し、バリコンの角度を電圧の変化に変換する角度センサーを使ったATUのSWR収束のアルゴリズムを試行錯誤しています。

1.   フラッシュマイコンにプログラムを書き込むとき、VC1,VC2の最大容量時、最少容量時の可変抵抗器出力データをプログラム上で初期設定し、50Ωのダミー抵抗に整合する時のコイルのTAP番号と、VC1,VC2の角度データを予めEEPROMに書き込んで置きます。  バリコンと可変抵抗器がギアで直結されていますので、いかなる事が有っても、バリコンは180度以上は回転しないという条件を設けます。

2.  TUNE状態になったら、キャリアレベルを検出し、規定値以内のレベルなら周波数を測定し、得られた周波数からコイルのTAP番号と、VC1,VC2の初期設定用角度データをEEPROMから読み込みます。

3.  SWRが20以上ある場合、VC1,VC2を初期設定用角度まで回転させ止めます。TAP番号に変更が有ったらタップの切り替えを行います。 バンド内で周波数を変えたときSWRが20を超えるような場合、収束に時間がかかりますので、当初、バンド幅が100KHzを超えるバンドは100KHz~350KHzくらいごとにバンドを分割し、全体を18のバンドに分割していました。 

何度もチューニングを繰り返す内に、前回SWRが規定値以下に収束したバンドはVC1とVC2を前回の角度にプリセットするだけで、かなりの確率でSWRが実用レベルに収まる事がわかりました。これを利用すべく、周波数をチェックしただけで、バリコンの角度とTAP位置のみを設定し、チューニングはしないモードを作る事にしました。このモード対応の為、最終的には、3.5MHzから29.7MHzまでを28バンドに分割しています。

4.  SWRのチェックを行いSWRが20以上ある場合は、VC1,VC2とも最少容量まで回転させ、そこから、VC1を小刻みに容量最大方向へ送りながら、VC2を180度づつ交互に回転させ、SWR20以下を探ります。 最小容量からスタートする事で、VC1,VC2とも最大容量でSWR最少に収束する現象を回避しました。この小刻みに送る角度は周波数により変化させ、ハイバンドは1回の送り角度を2度くらいにしますが、ローバンドは5度くらいの角度で送り、SWR20以下の検出時間を短くします。1回に送る角度が多ければ早く検出出来ますが、検出漏れが発生しやすくなりますので、これらの角度は実験で決めます。

5.  SWR20以下が見つかりましたら、

・ VC2を短時間CW方向に回転させ、SWRが変わらないか下がる場合、SWRが上がるまで繰り返します。(SWR最少ポイントを少し過ぎたところで停止) 停止コマンドを送ってから、実際に停止するまでの時間は非常に重要です。SWRのチェックは、実際に停止してから行わないと判定を誤ります。停止までの待ち時間を長くとると、SWRのチェックは確実ですが、収束時間が長くなります。何回も動作テストを行い最適値を決めます。

・ SWRが上がる場合、VC2を反転しCCW方向に回転させ、SWRの変化を見ます。SWRが変わらないか下がる場合、SWRが上がるまで繰り返します。SWRが上がる場合、VC2を反転させますが、この動作中に回転の反転を2回やったら、この動作は終了。

 

・ VC1を同じように繰り返します。  VC2もVC1も一度SWRが下がった場合、そのときの回転方向を記憶しておき、メインループを1周して、このルーチンに戻ったとき、前回の回転方向でスタートする事により、スムースにSWR最小ポイントを探す事ができます。 この動きはMTUの調整方法と同じです。

・ VC1、VC2いずれも1回に送る時間は周波数で変化させます。24MHz以上の場合、30mSec、5MHz以下の場合、60mSec、その他の周波数では40mSecとしておき、使用しながら最適値に決めます。また、SWRが2以下まで収束しましたら、この送り時間を半分にして微調整モードとします。

6.  5項をSWRが規定値以下になるまで繰り返します。 規定値は時間経過により、次第に緩くしていきます。最初の5秒間はSWR1.10以下への収束としますが、5秒以上経過したら、SWR1.25以下、10秒経過したら、SWR1.50以下、20秒経過したらSWR3.0でもチューニング完了とします。SWR3付近で完了した場合でも再度チューニングをかけると、SWR1.10まで収束しますので、周波数を可変して、SWRが高くなってきたら、再チューニングしています。

7.  VCが最大容量や最少容量を超えたらとりあえずエラー警告して停止させます。 その上で、バリコンが最大容量で停止したら、TAPをひとつ下げます。最少容量で停止したらTAPをひとつ上げます。 エラー状態を示す赤色のLEDが点滅して停止していますので、再度チューニングスタートボタンを押すと、変更されたTAP状態で再調整にトライします。 私のアンテナはこの処置で全バンド整合できます。 これでもエラーが続くようなアンテナの場合、諦めることにしました。(アンテナ自身を調整する事になります)  なお、2回目からは新しいタップ位置でプリセットされていますので、エラーになる事は有りません。

8.  SWRが規定値に収束したら、TAP番号とふたつのバリコン角度データをEEPROMに記憶します。この機能により、一度チューニングが成功したバンドは、ほぼ5秒程度でチューニング完了です。 バリコンがプリセット位置に移動しただけでSWR1.10以下という状態もかなりの頻度で発生します。この時は2秒以内で収束します。

9.  チューニングする時のモードを二通り選択できるようにしました。  キャリアを出した後、スタートボタンを押すと、SWR最少になるよう本来の動作を行います。 キャリアを出さない状態でスタートボタンを押すと、キャリアが無いという表示であるグリーンLEDがスローで点滅します。この状態で、キャリアーを出すと、TAPの切り替えと、VCのプリセットのみ行い、SWRはチェックせずに終了させます。このプリセットのみの場合の所要時間は2秒以下です。 特にSWRのチェックをしませんので、SSBモードでもノイズだけで周波数を読み、プリセットしてしまいます。 

バンドを28に分割しましたので、天気が同じなら全バンドSWR1.5以下になります。 雨が降って状態が変わってしまったら、このモード終了後に再度チューニングをかけると、SWR最少状態に短時間で収束します。 ATUはバンドを変えたら出力を絞ったキャリアーを出してチューニングするのが一般的ですから、その面倒さゆえバンド切り替えがおっくうになりがちですが、このモードでかなり楽になりそうです。

アンテナをつないで、最初にチューニング動作を行わせた時とか、アンテナを変更したためにバリコンをプリセット角度に移動させてもSWRが20以下にならない時だけ、4項の動作を行いますが、それ以外の場合、3項から4項をスキップして、5項に入ります。また、3項の動作は概ね2秒以下ですが、バンド切り替えが無かったら3項の動作時間は1秒以内ですから、チューニング開始してから5秒くらいでSWR1.10以下に収束します。 

 

Atusens2_2

Atu2

3.8MHz帯の整合がクリチカルな状態でしたので、追加コイルを復活させました。ただし今回は5μH分だけです。

 

バリコンの角度は可変抵抗器のセンター端子から得られるDC電圧をADコンバーターで読んでいますが、このデジタルデータは10bitです。EEPROMの記憶エリアは8bit単位ですので、ADのデータも10bitで取得した後、右へ2bitシフトし、8bitデータとして処理しています。  ギアのかみ合わせ調整時、最大容量で10くらいにセットすると、最少容量で205くらいになります。差は195ですから、バリコンの回転角180度を1度弱の分解能で表示している事になります。

  このバリコンの角度データもLCDに表示できるようにしました。左上の写真にあるLCD表示は1行目左3文字がVC1の角度データ、4番目がTAP番号、5番目からSWR値を表示。2行目の左3文字がVC2の角度データ、4番目以降は周波数です。この例では、14.020MHzでSWR1.04に収束した時のTAP番号は4、VC1の角度は163, VC2の角度は169を示しています。このLCD表示は、プログラムのどの部分を検討しているかによって、随時表示を変えていますので、一定ではありません。

角度センサー付の配線図は以下からダウンロードできます。

ATU-VC4.pdfをダウンロード

整合可能範囲が広いという事は、疑似SWRディップポイントへの収束やバリコン最大容量状態への収束にはまりやすいという事と裏腹のようです。 この対策とバグ取りを行っていましたら、XC8というコンパイラーの癖が見えてきました。

関数の戻り値がマイナスになると無視されます。比較演算の中で、マイナス数値を扱うとWarningがでます。単にWarningが出るだけと思っていましたが、比較の対象が負の数の場合、予期しない動作をします。 比較演算式の中に負の数値が表現されないようにすると、Warningも出ずに、結果も常に正しく判定します。データの型をunsigned charで無く、単に「char」にしても同じでした。 この現象の為、バリコンの回転角を180度以内に抑えるプロテクターが働かず、ギアを外して、設定し直した回数は、数えきれません。 

何回か書き込みしていたマイコンがIDを返さなくなりました。従い、書き込みもできません。どうやら壊れたみたいです。壊れた原因が判りませんが、予備のマイコンに交換して継続しています。 ATUの電源を接続したまま書き込むと、書き込みエラーになります。もちろん、書き込み治具側からの電源供給のチェックを外していますが。 これが原因でしょうか?

一度ごみ箱に捨てたマイコンを拾ってきて、PICkit3から供給する電圧を5Vではなく4.6VにするとIDが返ってきました。 そして、書き込みができ、動作も問題なしでした。

アンテナに接続して、最初にチューニングした場合、ハイバンドで10秒くらい、ローバンドで40秒くらいでSWR最少状態に収束します。2回目からは全バンド5秒くらいで収束します。また、バリコンの角度だけプリセットしてSWR収束処理を行わない時は2秒以下で完了します。 実際の運用は、雨が降らない限り、このSWR収束なしで問題なく交信できます。

一応、完成しましたので、遠隔操作機能を追加しますが、現在使用中のMTUを使用したマルチバンドアンテナシステムの制御回路を含めて変更が必要になりますので、しばらくお預けとする事にしました。 

バリコン式ATUの自作 7 (遠隔操作) へ続く。

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2014年8月 9日 (土)

バリコン式ATUの自作 5 (角度センサー)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUのソフト開発中ですが、バリコンの角度センサーはマストのようです。 今回は、TS-930S内蔵用ATUに追加したバリコンの角度センサーを紹介します。

部品集めです。

Atugiar

Atugiar4

直径16mmの平ギアで3mmのシャフトに止められる物、16φで軸径が3.2mmの可変抵抗器、25mm長のM3小ネジ、内径4mm長さ15mmのスペーサー、それに可変抵抗器を保持するアルミフレーム。

平ギアと可変抵抗器は千石電商から通販で購入。小ネジとスペーサーは近くのホームセンターで購入。アルミのフレームはJW-CADでギアBOXの組み立て図を作図し、図面を作成した上で、糸ノコと電動ドリルで自作しました。

フレームの図面です。  ギアのかみ合わせの調整を何度もした結果、13.5mmの寸法は13.2mmくらいにした方がいいみたいでした。

Atugiar9

Atugiar5左は、加工済みアルミフレームと、可変抵抗器の軸に装着した平ギアです。 

この平ギアは軸径3mm用であり、可変抵抗器の軸径3.2mmと合いません。よって、3.2mmのドリルで穴を拡大するのですが、購入した4個のギアの内、1個のみ軸径2mm用が混入していました。 ちょうどこの日、台風11号が接近中で大雨となっており、屋外作業となるボール盤が使えません。やむなくハンドの電動ドリルで穴拡大の作業をおこないました。

軸径3mmのギアの穴を3.2mmに拡大するのは問題ないのですが、軸径2mmを3.2mmに拡大すると、穴の軸がほんの少し傾いてしまいました。 ギアが薄いので、かみ合わせがきわどくなってしまいましたが、とりあえず使えます。

この軸径の間違ったギアは後日、注文通りの軸径3mmの物が無償で送られてきました。(TKS)

Atugiar1

Atugiar2

バリコン駆動シャフトにも平ギアを装着しますが、シャフトがサビていて、ギアが挿入できません。ヤスリでシャフトを磨いたり、ギア側のアルミボスの穴をヤスリで削ったりして現物合わせで挿入しました。 ギアBOXはそれぞれ4個のビスでアングルに固定されますが、上側のビスを25mm長のビスに変更し、飛び出したビスに15mm長のスペーサーを差し込みます。 このスペーサーの内径は4mmで、ギアBOX固定用アングルの絞りタップを包み込んでしまいます。

アルミフレームに可変抵抗器を取り付け、ギアを仮止めした状態で、アルミフレームを25mm長のビス4本で固定します。そのままでは、可変抵抗器の本体がアングルに当たり挿入できませんので、一度、25mm長のビスを緩め、アルミフレームを差し込んだら、また元通りに締め直します。

Atugiar7

Atugiar8

バリコンは最大容量位置から半時計方向に10度くらい回した位置にしておき、可変抵抗器は半時計方向に回しきって置き、ふたつの平ギアがかみ合うように固定します。

ここまでできたら、モーターにDC電源をつなぎ、問題なく動作する事を確認します。 ギアのボスの穴径を拡大するとき、穴の軸が傾きましたので、回転すると、ふたつのギアのかみ合い部分がずれます。ずれても、かみ合いが外れない位置にギアを固定しました。

ギアがプラスチックですから、可変抵抗器のストッパーに当たると、ギアの歯が欠けてしまう可能性があります。マイコンソフト作成時十分注意が必要です。最後の保護手段として、ギアがロックされたら、モーターコントロール用ICの電源ラインにシリーズに入れた10Ωの抵抗が断線してギアを保護する事を期待したいと思います。

後日、可変抵抗器のストッパーに当たる事故が何回も発生しましたが、10Ωは断線しない代わりに、電圧降下が起こり、モーターのトルクを弱めますので、ギアも無傷で済みました。

Atugiarlist

この角度センサーに使用した部品リストを左に示します。  軸径が3mmの可変抵抗器を使えば、平ギアが傾く問題は無くなると思います。 

アルミフレームを寸法通り作るこつは、JW-CADで一度作図し、これを実寸大(拡大率100%)でインクジェットプリンターで紙に印刷します。 プリンターはキャノンでもエプソンでもOKです。 この印刷した紙をアルミ板に糊で張り付け、穴の中心にポンチで印をつけると、ハンドドリルでも大きく寸法が狂う事はありません。穴のセンターずれを押さえる為に、一度2φくらいの穴をあけ、その後で目標の穴径に拡大します。  寸法がずれている場合、4個の3.6φの穴径を3.8φとか4φに広げて調整します。 アルミ板は柔らかいので、その他の寸法誤差も吸収してくれます。         紙をアルミ板に張り付ける時は、決して両面テープは使いません。 穴あけ加工後、両面テープをはぎ取るのに苦労しましたから。 糊なら加工後に水洗いすれば、きれいに取れます。

とりあえず、角度センサーができましたので、これに対応するSWR収束のアルゴリズムを検討する事にします。

バリコン式ATUの自作 6 (角度センサー対応アルゴリズム) に続く

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2014年8月 5日 (火)

バリコン式ATUの自作 4

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

Atutb

VC1とVC2が容量最大状態に収束し、真のSWR最少ポイントを見つけない問題を解決する為、仮に、バリコンの角度センサーが有った場合どうなるかシュミレーションしていきますと、コイルのTAPを適宜選択する事により収束しやすくなる事が判ってきました。 さらに、前回までの実験はダミー抵抗による収束検討でしたが、実際のアンテナの場合、周波数を変えると、リアクタンスも抵抗も変化するという違いがあり、VC1,VC2ともに最大容量へ収束する確率はかなり低くなる事も判りました。

バリコンの角度センサーをどうするかは、先送りして、角度センサーなしでどこまで改善できるかトライしました。

サーボ機能はその応答特性が重要で、状態の変化に対して、応答が速すぎても、遅すぎても収束に必要な時間は長くかかります。 モーターの駆動時間やブレーキをかけてから完全停止するまでの待ち時間などを変えてやると、SWR最少ポイントへの収束時間は大きく変わります。早い時は1秒くらいで収束し、遅い時は30秒近くかかる場合もあります。 また、バリコンの最大容量もしくは最少容量の付近で行ったり来たりして、永久に収束しない事も出てきます。そこで、収束させる条件を前回より以下のごとく変更しました。

  • サーボ動作に入る為のSWR条件をSWR5からSWR10に変更しました。 例えば、21.05でSWR1.05に収束した状態で周波数を21.40に変えると、私のアンテナでは、SWRが5を超えてしまいます。従来のままなら、SWR5を超えた時点で、メクラ状態でVC1とVC2を回し、SWR5以下を探す事になってしまいます。SWR10以下に変更すると、この値以下のSWRの時は、即サーボ動作を開始しますので、収束が速くなります。

  • SWRの収束目標を3段階にします。 従来はSWR1.15を目標にしていましたが、最初の目標をSWR1.05以下とし、10秒以上経過しても、収束しない場合、SWR1.20まで緩めることにします。 さらに20秒経過しても収束しない場合、SWR1.40で緩めます。 収束しないよりはましです。 1.40くらいで収束した状態で再度チューニングをかけると、1.05以下に収まります。

  • それでも収束しない場合、コイルのタップ位置を手動で切り替えてみる事にしました。 コイルのタップ位置は7メガのダイポールに18メガを整合させる場合と、17メガくらいに共振周波数のあるスカイドアアンテナを18メガに整合させる場合、違ってくる事が判りましたので、バンドとタップの関係は固定しない事にします。 バンドとタップの関係はEEPROMに記憶させ、次回からは成功したタップ位置を呼び出す方式です。

  • チューニング動作を開始する送信機の出力範囲を広げました。 前回までは、5Wから40Wくらいの範囲にしてありましたが、SWRの計算にエラーが発生しない事を確かめて、1Wから40Wまでの範囲でチューニングできるようにしました。 出力が上ると、コイルの切り替え時、リレーへの負担が大きくなるので、実際にチューニングする時は、10W以下の必要最小限に抑える事にしています。 

  • モーターの回転数は12V駆動の高速と4.5V駆動の低速にしていましたが、4.5Vでは加速が遅く、短時間駆動では、ギアのバックラッシュすら吸収できない事がわかりました。この低速状態は機械的に非常に不安定で、温度や湿度でサーボの応答特性が変わってしまいそうです。 色々実験しましたが、低速は6V駆動として、最低限の起動トルクを確保した上で、動作時間を細かく調整する事にしました。 6Vの場合、最初のメクラ状態でSWRのディップポイントを探す時粗くなりますので、ディップポイントを見逃して、結果的に探す時間が長くなりますが、やむなしです。

 

Atutap3_2

以上の改善を行うと、実際のアンテナの場合、角度センサー無しでも、全バンドSWR1.40以下に収束できるようになりました。 左の画像は、現在のタップ位置4をLCDに表示した状態です。またこのタップ番号を手動でアップしたりダウン出来るスィッチを追加しました。 チューニングを開始し、いつまで経っても、終わらない場合、手元でタップ位置を上げたり下げたりして確認する事ができます。 

この為もあり、一定の時間チューニングしてダメなら、そこでチューニング動作を中止するという機能は廃止しました。チューニングを止めたい時はSTOPボタンをおします。 しかし、まだ、収束時間は長く、最適状態にするには、かなりの試行錯誤が必要なようです。 多分、最終的には、バリコンの角度センサーが必要になるとおもわれますが、それまでは、現状でトライしてみます。

今回、PICのTimer4を使い、0.2mSecごとに割込みが発生するようにソフト変更し、この割込みを使い、時限設定機能を使えるよにしましたが、C コンパイラーの中にある関数

__delay_ms(20) ; // (括弧内の数値を変えて任意の遅延が可能。ただし数値は実数のみ)

の実際の遅延時間が設定した時間より8%ほど長くなる事が判りました。Timer4以外に未使用のタイマーとして、Timer2とTimer6がありますが、どれを使っても8%長くなります。この既成の関数もこれらのタイマーを使っている為でしょう。 このATUの場合、周波数カウンター動作時は全割込み禁止で影響なし。その他の遅延設定でも8%くらいの誤差は無視できますので問題なしです。

設定したアルゴリズム通りに動作しないバグを取り除き、モーターの駆動時間や、ブレーキ後の待ち時間の調整をした結果、14MHz以上のバンドでは、サーボ動作開始後からSWR収束までの時間は最短で1秒、長くても5秒くらいになりました。 しかし、10MHz以下のバンドは20秒を超える事がしばしばです。バンドによってサーボ定数を変更しなければならないかも知れません。

検討の為、このATUは、トランシーバーと同じ場所に置いてあり、アンテナからここまで約20mの長さの同調フィーダーでつないでいます。18MHzでラオスが聞こえますので、このATUでチューニングしてコールしてみました。一応交信は成立しましたが、アンテナ直下のプリセットMTUに比べて、受信信号強度はS半分ほど悪く、ノイズはMTUがS2でATUがS5でした。 ATUはアンテナ直下に限りますね。

現在まで発生したハードの変更を網羅した配線図は以下からダウンロード出来ます。

ATU-VC2.pdfをダウンロード

バリコン式ATUの自作 5 (角度センサー) に続く。

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2014年8月 2日 (土)

バリコン式ATUの自作 3

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

コイルを1個にして、再度バンド毎のTAP位置を確認する事にしました。前回に比べて大幅にずれました。コイル2個のときは、シャーシとの静電容量の影響もありましたので、今回のTAP位置が素直に見えます。 

Atutap2_2

Atuband0_2

このバンド毎のTAPを切り替える時は、切り替え時に高電圧が発生してスパークするのを防ぐ為、ショーティング切り替えを行います。右上にTAP3からTAP5を切り替えるタイミング例を示します。リレーが動作完了するまでの時間を仕様書で調べたら15mSecとなっていました。これは電極が磁石で引き寄せられる時間と一度接触した接点が反動でバウンズし、それが収まるまでの時間です。 今回は余裕を見て20mSecとしました。

このATUは2個のADコンバーターを使いVFWDとVREFの電圧を読んでいますが、マイコンの中のADコンバーターは、1個のサンプルホールド回路しかなく、指定されたi/oピンに接続し、AD変換が完了したら、レジスターにデータをストアーする構造ですから、VFWDとVREFは同時にAD変換できません。かつ、VFWDの変換を行った後、i/oピンの切り替えを行い、VREFの変換を開始するまでウェイト時間が必要です。

PICの仕様書ではこの待ち時間は数マイクロ秒となっており、今回は余裕を見て5マイクロ秒に設定していました。SWR5以下が見つかり、そこからSWR1.0に向けて収束プログラムが動作するのですが、ときどき、AD変換の結果が異常値を示します。原因が判らず、2日間もロスしましたが、どうも連続1000回くらいのAD変換では、待ち期間5マイクロ秒では不足のようです。これを10マイクロ秒まで増やすと、正常に動作するようになりました。 

このバリコン式ATUの整合アルゴリズムは以下のようにしました。

  1. キャリアの周波数を測定し、そのハムバンドに予め決めたコイルのTAP位置を設定。
  2. VC1を低速、VC2を高速でそれぞれCW(時計方向)方向に回転させ、SWRが5以下を検出したらVC1,VC2とも停止させる。
  3. VC2を短時間CW方向に回転させ、SWRが下がる場合、SWRが上がるまで繰り返す。(SWR最少ポイントを少し過ぎたところで停止)
  4. SWRが上がる場合、VC2を反転しCCW方向に回転させ、SWRの変化を見る。SWRが下がる場合、SWRが上がるまで繰り返す。SWRが上がる場合、VC2を反転させるが、3,4項の動作中に回転の反転を2回やったら、この動作は終了。
  5. VC1を3,4項と同じように繰り返す。
  6. 2-5項をSWRが規定値以下になるまで繰り返す。規定値はとりあえず1.15としました。

一応このアルゴリズムでSWR1.15以下に収束するようになりました。 短時間VCを回転させるときの時間や、回転スピードなど詰めなければならない事項もありますが、「出来た」と喜んでいると、問題点が発覚しました。

Atuswr1

左の画像は、3.532MHzでSWR1.08に収束した時のLCD表示です。 3.5MHzから10MHzまではOKなのですが、14MHz以上はVC1とVC2が最大容量になるように収束し、本当の整合ポイントにはなかなか収束しません。原因を調べる為、NT-636にダミー抵抗をつなぎ、マイコンの動作を手動でシュミレーションしてみました。 

すると、NT-636でも同様に真の整合ポイント以外にVC1,VC2最大容量の位置でSWR最少となります。ただし、SWR1.5くらいまでは収束しますが、それ以上小さくはなりませんから、いつまで経ってもモーターは停止しない事になります。 しかも、真の整合ポイントより、はるかにブロードで、この間違った収束ポイントに向かう範囲もかなり広くなっています。

この問題をTS-930Sはどのように対策したのか調べてみました。3.5-14MHzはT型、18MHz以上はパイ型で動作させ、かつ整合可能な範囲をかなり狭くしていました。 目標はNT-636並みの整合範囲を有するATUですから、TS-930Sのノウハウは使えません。

色々と手動で調べていくと、ハイバンドになると、大きな容量のバリコンはかえって邪魔になるようです。現在の最大容量は250PFですが、NT-636は150PFです。 また、周波数を高くするに従い、この最大容量を小さくしていくと、VC1,VC2最大位置でSWRのディップが現れにくくなる事が判りました。 これを実現するには、周波数に応じて、バリコンの角度を管理するか、バリコンにシリーズキャパシターを追加するか等の対策が必要になります。 KENWOODはこのモデルの後のチューナーはバリコンの角度センサー(可変抵抗器)付で商品化しています。

他の対策方法を含めて検討する必要がありますが、問題の大きさから、やる気が半減してしまいました。趣味でやっていますので、気が向くまで、とりあえずお蔵入です。 

バリコン式ATUの自作 4 に続く

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2014年7月31日 (木)

バリコン式ATUの自作 2

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

TS-930Sに内臓されていた時のATUの動きは、バンド切り替えに応じ、コイルが選択された後、キャリアーを送信しながら、VC1とVC2を同時に回転させ、SWRが設定された値以下になったら、そのVCの位置からサーボが働き、SWR最少状態に収束させるものでした。 VC1とVC2が同じ回転速度で回転したのでは、いつまで経っても、VC1とVC2の比は変わりませんから、VC1側をVC2より遅く回転させ、時間によって、VC1とVC2の比が変わるようにしていました。  今回製作するATUも同じようなアルゴリズムでSWR最少状態を実現させますが、サーボが開始されるSWR値を高くして、整合可能範囲の拡大を行います。 TS-930Sの場合、SWR2以下を検出しないと、サーボは動作しなかったような。

ATUの出力に50Ωのダミー抵抗を接続し検討します。一応、アンテナのバラツキの中心は50Ωの純抵抗ですから、ダミー抵抗を整合させられるVCの容量とコイルのインダクタンスが、その整合状態の中心となり、これを、どれだけ可変できるかで整合可能インピーダンスの範囲が決まります。

まずは、VC1とVC2の回転速度差をどのように選んだら最短でサーボが動作開始するかを実験してみました。  VC2を12Vで回転させ、VC1を10Vくらいから3Vくらいまで連続可変し、最適な回転速度比を見つける事にしました。 結論はVC1を遅くするほど確実にSWRのディップポイントが発生する事が判りましたが、遅くなるほど、ディップポイントが発生する時間間隔は長くなります。この時間が長いと言う事は、整合状態になるまでの時間が長いという事に他なりません。 また、VC1の回転を速くすると、ディップポイントの出現間隔も短くなりますが、トレースが粗くなりますので、デイップポイントを見逃す頻度も高くなります。  

TS-930Sの場合、VC2よりVC1は半分くらいの回転速度だったような記憶ですが、もう動作しませんので確認のしようが有りません。 とりあえず、実験ではVC1駆動モーターの電圧を4.5Vとして、以後の検討をする事にします。現在は夏なので、冬の屋外で、モーターが起動するか?という不安もありますが、その問題は冬場に対策する事にします。

モーターの回転比を決めたところで、各ハムバンドにおける最適コイルタップ位置を選択する事にしました。 下の画像は、3.5MHzと29.5MHzの時の、Vref電圧の変化をデジタルオシロで記録したものです。時間軸は5秒/DEVです。またSWR=1,3,5の位置を赤線で示しました。29.5MHz時、高周波が重畳しているのはオシロのプローグが送信出力をピックアップしているもので、Vref自身はきれいな直流です。 

Atutap1 同じようにして、3.5MHzから29MHzまでの全バンドを測定した結果は次のようになりました。

Atutap0_3

SWR5以下の検出時間間隔というのは、SWR5以上になった後、次にSWR5以下になるまでの時間の事であり、チューニング動作を開始したら、最低この時間はモーターを回し続けなければならないと言う事になります。 3.5MHzのとき、この時間は13秒になりました。逆に言えば、13秒経っても、SWR5以下が得られない場合、そのアンテナは整合不可と言う事になります。

この13秒は最悪値ですから、実際はこの半分くらいの時間で、サーボ動作に移れると考えています。

Atucoild

コイルのタップ番号は当初の予想とは大きくずれました。 3.5MHzから29MHzまでをカバーするつもりですから、コイルは1個でよく、かつタップの数も9個で良いと言う事になりました。最終的に小さいサイズに収める為には、リレーも9個で済む事はメリットとなります。 評価ボードのコイルも1個に変更しました。リレーは実装されていますが、配線は削除しました。

改造などをやっている内に、LCDが壊れてしまいました。間違って、LCDのGNDに+12Vを接続してしまい、LCD内部のDC/DCが壊れ昇圧しなくなりました。

交換の為に手配したLCDが入手できたので、今度はSMT用ユニバーサル基板に実装する事にしました。ところが、このNEW LCDも表示しません。 調べたら、1-2番pinと3-4番pinがそれぞれショートしていました。ここのショート箇所を直しましたが、時すでに遅し。またもや内部のDC/DCが壊れてしまいました。 

Atulcd2

気を取り直して、予備で手配しておいたLCDに交換です。今度は、ハンダ付けする度にテスターで導通テストを行い、祈りながら通電しましたら、ちゃんと動作するようになりました。 もし、このLCDをお使いになりたい時は、秋月に変換基板がありますので、それを利用されることを強く推奨します。LCD本体より変換基板の方が高いのですが、いまやっと、その価値を理解しました。写真は壊れた2個のLCDとなんとか動いた3個目のLCDです。

また、トラブルが発生しました。このLCDは、ベランダに設置したATUの基板に貼り付けてあったのですが、表示が出なくなりました。結局、ATUの自作 : LCD交換 で紹介のごとく使用を中止しました。

バリコン式ATUの自作 3 に続く。

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2014年7月26日 (土)

バリコン式ATUの自作 1

LDGや東京ハイパワーのATUを使ってみましたが、その整合可能範囲はMTUのNT-636と比較した場合、比較にならない程狭いものでした。 この為、現在はバンド専用にプリセットされたMTUを使用していますが、雨で整合状態がずれた時など、手元のNT-636に切り替えていました。  しかし、手元のMTUは長い同調フィーダーを使用する関係で、打ち上げ角が高くなったり、外来ノイズを目いっぱい拾ったりで、どうしてもと言う時以外は使用していませんでした。

最近時間が取れるようになりましたので、NT-636並みの整合能力があるATUを目指して、ATUを試作する事にしました。 (ATUの自作ではなくバリコンの自作の場合、こちらを参照下さい)

Atu_ts930

アンテナチューナーの方式をNT-636と同じとすると、バリコン2個、コイル1個を使用したハイパスT型となりますが、ちょうど、物置に、TS-930Sから取り外したATUが有り、このATUの中に、モータードライブのMax250PFのバリコンが2個ついています。このATUからバリコンのみ抜き取り、コイル切り替えをリレーで行えば、NT-636とほぼ同等のATUができそうです。 ただし、バリコンの角度を電気的に知る方法は有りません。バリコンの回転角をギアを使い、可変抵抗器へ連結し、その分電圧を読むことで、バリコンの角度を得る事ができます。 バリコン駆動のシャフト径は3mmで、これに合うギアや可変抵抗器が通販されている事が判り、ギアボックスを自作したら実現しそうですが、かなり難易度の高い工作が必要です。 よって、もともと、TS-930Sはバリコンの角度センサーなしで動作していましたので、まず最初は可変抵抗器なしで実験する事にしました。

ATUはCM結合器、周波数カウンター、モータードライブのバリコン、コイルのタップ切り替え回路を持ったT型アンテナチューナーで構成されますが、これらを制御する回路はマイコンに頼る必要があります。 マイコンの開発は、開発用のボードを作り、これが構想通りうまく動作するように、まずソフトを開発する事になります。 ソフトが完成したらハードを実用サイズに作り直します。

Atupcb

そこで、蛇の目基板にマイコンを実装し、基本動作に必要なソフトを開発する事にしました。

使うマイコンはPIC16F1939です。 ATUとしては測定した周波数や、SWR値をユーザーが知る必要はないのですが、マイコン開発となると、話は別で、測定した周波数やSWRが見えるようにLCDディスプレーを追加します。

LCDはAQM0802Aという品名で秋月で320円で売っている8文字2行表示のものです。必要に応じて、内部データをLCDに表示させデバッグに使います。 このLCDのピンピッチが1.5mmと特殊で実装に難儀しました。後で判ったのですが、このLCD用のピッチ変換基板が同時に売られているようです。

Atulcd_2

I2Cシリアルラインを使った、このLCD用のPICソフトはインターネット上に公開されています。 このソフトを16F1939用に書き換えて使いますが、なかなか表示がでません。  LCDへ渡すデータがコマンドかデータかの識別コードを最初に送りますが、この識別コードが間違っていると判るまで数日かかりました。   コマンドの時は0x00、データの時は0x40を送ると正しく表示します。

 左の画像は周波数カウンターの結果を表示させたものです。カウンター精度は+/-10KHzくらいでも実用になるのですが、このマイコンは30MHzくらいの外部入力でもカウントしてくれるので、プリスケーラーなしで1mSecのゲート時間にすれば、1KHz単位のカウンターが簡単に実現できます。

TIMER1の16bitでカウント動作をさせ、TIMER0で1mSecのゲート時間を作ります。FOSCが10MHzですから、内部の動作クロックはFOSCの1/4となり、ゲート時間の最少分解能は0.4uSecとなります。 30MHzの入力の場合、カウントは12KHzごとになりますので、全割込み禁止にした上でNOP命令を使いゲート時間を正確に1mSecにしようとしますが、  +/-4KHzまでが限度でした。 これ以上は、10MHzの水晶発振器の発振周波数をトリーマーで微調整し、29MHzで誤差+/-1KHz以下に追い込みます。 ただし、そこまでやるのにまた数日要しました。

Ldgcmc

CM結合器はメーターが壊れて使えなくなったSWR計に使われていたCM結合器を改造して使う事にしました。ATUの中に内臓されたCM結合器はかなりいい加減なものが多く、基板に寝かしたトロイダルコアの中心に1本の裸線を通し、これでSWRの監視を行っているのが普通です。左の画像はLDGのATUの中に内臓されているCM結合器です。 

SWR計に使うようなりっぱなCM結合器をATUで使うことはもったいないのですが、ほかに使い道が無いので、これを利用する事にしました。 ちなみに、この壊れたSWRメーターのメーター部分はすでにCメーターに流用しましたので、SWR計としての再利用はあり得ません。

SWRは1.05などのように小数点以下2桁くらいまでを読む必要がありますので、マイコンのデータ様式をfloat(浮動小数点数型)にし、プログラムをそのように書きましたが、コンパイルエラーになります。よくよく調べるとマイクロチップが無償で提供している HI-TECH C のコンパイラーの中には、floatデータをASCII文字に変換する機能は同梱されていない事がわかりました。 

また、PICでfloatデータを使うと、大量のメモリーを消費し、RAM領域の不足が心配されるし、スピードもかなり遅くなるようです。 SWRの計算はCM結合器で検出したDC電圧をADコンバーターでデジタル化した後、下記のように計算されますが、

Atuswr0

分母で割る前に分子を100倍しておけば、SWR1.05はSWR105として表せますので、すべて整数計算で小数点以下2桁までの計算ができます。 (後日、プロの方にお伺いしましたら、当たり前の処置でその方はすでに1000倍したデータで記述していました。) ただし、long int型のデータを使っていても、大きなSWR値になるとオーバーフローしますので、計算する前にVfwdとVrefをチェックし、SWR値が90を超えるようなら計算せずに一律SWR=90と定義してしまうなどの小細工は必要です。

Atucmc 壊れたSWR計から取り外したCM結合器。 アンテナへつながるストリップラインをカッターでカットし、その間にT型チューナーをつなぎました。

TS-930S用ATUからバリコンとギアボックスのみを取り出し、実装しました。

Atuvc1

コイルはメーカー製アンテナチューナーについていたもので、外径30mmのボビンに1mmの銅線を1mmピッチで25ターン巻いて有ります。これを2個直列接続し、10個のタップをそれぞれ5000V耐圧のリレーに接続します。リレーの接点も2回路を直列に接続し、耐圧を確保します。 開発完了し、小型のケースに収納する場合は、VU40くらいの塩ビパイプに1mmの銅線を巻いて1個のコイルで済ませる予定ですが、開発ボードは、自作の手間を省きました。

Atucoil

Atupcb1

マイコン基板の銅箔面には、全部のチップ部品が実装されています。 CM結合器からのDC電圧を直接マイコンに加えると、誘導雷があった時、マイコンのi/oが壊れる可能性が高い為、ゲイン0dBのOP-AMPによるバッファーを介して、マイコンのAD入力に加えます。

このOP-AMPはグランドセンスタイプになりますが、一般に使われるLM358相当品の場合、出力電圧の最大値は電源電圧より1.5Vくらい低くなります。VCCが5Vですから、マイコンのAD入力には最大で3.5Vしか加わらなく、Dレンジが狭くなってしまいます。これを防ぐ為に、OP-AMPだけVCCを 6.5Vで動作させた事が過去ありましたが、今回は、ちょうど手元に、最大出力電圧がVCCより20mVくらいしかダウンしないというOP-AMP MCP6402が有りましたので、これを実装する事にしました。しかし、このOP-AMPのピンピッチは1.27mmで蛇の目基板と合いません。やむなく、廃棄予定の基板から1.27mmピッチのICパターンを切り取り、その部分にOP-AMPの回路を実装しました。  

モータードライブは秋月で見つけた東芝のTA7291PというICを使用します。このICはメカコン用に必要なすべての動作モードに対応していて、外付け部品が非常に少なくなっています。ディスクリートで作るよりかなり安くできます。マイコンのi/oをon/offして動作テストだけはOKです。

ソフト開発が進むにつれ、ハードの変更は付き物ですから、基板にもかなりの空き領域を確保しました。

全体構造は以下のようになりました。 これは評価ボードですので、完成したあかつきには、もう少し小さく作る必要がありそうです。

Atutestbord

見た目は出来上がったように見えますが、マイコンはLCD表示ができるくらいで何もアクションしません。 本来必要なマイコン動作仕様書は無く、整合状態に追い込む為のアルゴリズムも存在しません。全部、いちから試しては、やり直しの繰り返しになりそうです。 

一応全体の回路図を添付しておきます。VC式ATU配線図をダウンロード

いつ完成することやら。

バリコン式ATUの自作 2 に続く

 

2024年7月

Mark2の開発を始めました。

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2014年7月14日 (月)

クリエートデザインRC5A-3の修理

<カテゴリ:ローテーター>

東広島も7月は落雷が多く、今年もプリセットMTUの制御回路が誘導雷により被害を受けました。 

Rc5a3front

同じ時期に誘導雷でローテーターが壊れたと、修理を頼まれました。単純な修理なら、ブログで紹介するまでも無いのですが、今回のクリエートデザイン製RC5A-3の配線図に誤りがあり、修理に時間がかかってしまいましたので、同じテツを踏まない為、紹介する事にしました。

このローテーターの配線図は取説の中に印刷されています。これは簡単だと思ったのは最初だけで、プリント基板にシルク印刷が無く、配線図と現物の対比が難しくなっています。 壊れた部品を特定し、手持ちがなければ、それを通販で発注する事になりますので、まず最初は壊れた部品探しになります。

U1の4558はプラスチックカバーが吹き飛んで、中のICチップがむき出しですので、これは間違いなく壊れています。U2の4558はスピード制御に使われいますが、電圧をチェックしても配線図に記入された参考値の電圧とはかけ離れています。このOP-AMPも壊れたのだろうと、ICを取り外すし再度電圧チェックをしても、配線図を追いかけて得られる推定電圧にはなりません。 回路図と実際が違うのではと、基板をカメラで撮影し、それに実装部品を並べて確認していく事にしました。

Rc5a3pcb

実体配線図を途中まで作成した時点で、配線図の間違いが判りました。 ダイオードCR6とCR7の交点とU2Bの7番ピンは接続されていました。配線図上で交点を示す黒丸が抜けていたものです。ここがつながっているとすると、U2Bを取り外した後のDC電圧はすべて計算通りの電圧になります。 要はU2Bが壊れている事に他ならないのですが。

それ以外に壊れていた部品はQ2の2SA1015、Q4の2SC1815でしたので、手持ちの部品でまかなうとして、4558のみが通販手配となりました。

このローテーターの動力回路のコモンラインは商用電源と直結しています。修理の最中にうっかり1次側をさわり感電しました。背面の1番~3番端子に触れたら感電します。ローテーターまでこのコモンラインはつながっていますので、要注意です。 多分電安法は不合格と思います。 PSEマークの有無の確認を忘れました。 例え電安法対象外製品でも感電は無いですよね。 安全規格をどう思っているんでしょうかね。 

RC5A-3の配線図をダウンロード

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2014年7月 5日 (土)

50MHz用 L型アンテナチューナー

<カテゴリアンテナチューナー

今までの50MHzアンテナは、ヘンテナと同調フィーダー及びインピーダンス変換トランスによる整合システムで運用していました。 6m & ダウンコンテストが今晩から始まるという事で、久しぶりにこの整合トランスをチェックしてみました。 すると、設置してからすでに5年経過している事もあり、ケースのタッパーはぼろぼろ、内部の絶縁テープははげかかっています。 タッパーを交換する為に、トランス部分を取り出しましたので、ついでにトランスのSWRと内部ロスを測って見る事にしました。

アンテナの代わりに75Ωのダミー抵抗を接続すると、案の定、3.5MHzではSWR1.05くらいですが、50MHzではSWR5を超えます。トランスが誘導性リアクタンスを持っていますので、バリコンを直列に接続し、このリアクタンスをキャンセルさせた場合、ちょうど20PFでSWR1.0になります。  実際の整合は同調フィーダーの長さを調整して、このリアクタンスをキャンセルさせていますので、特に問題は有りません。

次に内部ロスを実測しました。すると、47%のロスがある事が判りました。使っているコアの素成が不明な為、多分、コアによるロスと思われます。  100W送信しても、アンテナには半分しか供給されないという事が判り、 コンテストの始まる前になんとかせねばなりません。

50MHzでもロスの少ないコアに交換するしかありませんが、手持ちは有りません。 時間が無いのでアンテナチューナーを緊急で作る事にしました。

6mmtuschema_2

固定局で使うアンテナである事と、チューナーの設置場所が、いつでも再調整可能なベランダという事で、コイル1個、バリコン1個によるローパスL型チューナーで作る事にします。L型チューナーの場合、コイルも可変できないと、チューニングがうまくいきませんが、6m用コイルの場合、空芯自立コイルですので、コイルのピッチを調整することで可変できます。

ジャンク箱の中からMAX 50PFのバリコンを探しだし、1mmの銅線を指に巻きつけてコイルを作り、空中配線でアンテナチューナーを作って、アンテナアナライザーで確認すると、SWR1.2くらいまで簡単に調整できます。 なんとかなりそうなので、これまたジャンク箱の中から出てきた、プラスチックケースを加工し、1時間でアンテナチューナーが完成しました。 コイルを伸ばしたり、縮めたりして、都度バリコンでSWR最少にする事を繰り返えす事により、50.3MHzでのSWRを1.05まで追い込む事ができました。

6mmtu1_2

6mmtu2_2

 

左上がローパスL型アンテナチューナーの内部、右上がコカコーラのペットボトルをかぶせた防水状態です。

このアンテナチューナーに接続される同軸ケーブルには、チューナーのすぐそばに3.5MHzから144MHzまで十分効果のあるコモンモードチョークが挿入されていますので、専用のバランは挿入していません。  このL型チューナーの内部ロスは2%くらいです。 このバンドの場合、EスポによるQSOは、あまりパワーによる依存性はありませんが、グランドウウェーブの場合、聞こえるけど届かないという場面で効果が期待できそうです。

HFのアンテナチューナーやバリコンの自作はこちらに製作例が有ります。

HFのATU(オートアンテナチューナー)の自作例はこちらに有ります。

2016年9月追記

6mhentena160913

HFのスカイドアアンテナと6mのヘンテナの下部水平エレメントがグラスファイバーロッドに一緒に束ねられ、これがエレメント間の干渉をおこし、パワーでHFの同調周波数がずれるという問題がありましたので、左の写真のように、ヘンテナの下部水平エレメントをスカイドアエレメントより10cmほど離す改造を行いました。

この状態で、L型アンテナチューナーを使い整合させていましたが、使用しているトリカルネットの同調フィーダーがボロボロになってしまいましたので、これを作り替えました。 その結果、L型チューナーでカバーできる整合範囲を超えてしまいましたので、L型チューナーも改造する事にしました。

しかし、この変更したヘンテナと作り直した同調フィーダーの根本に直接アンテナアナライザーを接続し調べてみたら、51.5MHzくらいでSWR1.2くらいを示します。 従来75Ωくらいだったヘンテナのインピーダンスが、改造で60Ω以下まで下がったようです。

という事は、コイルもバリコンも不要で、同調フィーダーの長さを変えて、共振周波数のみ50.4MHz付近に合わせこめば、チューナーは不要になります。

6mmtu160913_2

6mfeeder160913_2

6mnomtu

左上は、コイルとバリコンを取り去り、実験的に長さを決めた2本のワイヤーを BOXの中に押し込んだ状態です。この後、BOXにアルミのカバーをビス止めしましたら、共振周波数が49.7MHzくらいになってしまいましたので、同調フィーダーを一部折り返し、見かけ上短くしたのが真ん中です。 そして、この状態でのSWR特性は右上のごとく、50.39MHz付近でSWR最低の1.17くらいになりました。 LCを使わないので、その分だけSWR1.5以下の帯域幅が広くなっています。

 

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2014年6月20日 (金)

エレキー回路の自作(PIC12F675)

 

<カテゴリ: PICマイコン >

再開局したころから、オートアンテナチューナー(ATU)を模索し、これを自作しようともくろみましたが、挫折が多くて今だに手づかずの状態です。 ここにきて、再度ATUの自作に挑戦しようと思いますが、ATUはそのコントローラーをマイクロコンピューター(マイコン)で作る必要が有り、マイコン開発は避けて通れない状況です。 現役時代はマイコン屋に仕様書を出して、バグを見つけては、ソフト屋をいじめるのが仕事でしたので、自らマイコンソフトを開発した事はありませんでした。 そこで、インターネットでも情報の多いPICマイコンの勉強を始める事にしました。

ハムがマイコンのソフト開発を勉強しようと思えば、最初の教材は、「エレキー」と相場が決まっています。 以下見よう見まねで作ったエレキー回路を紹介します。 なお、ソースファイルは、あまりにも恥ずかしくて公開する自信はありませんでしたが、かなりの方がこの記事にアクセスいただいておりますので、未熟ながら記事の最後の行でダウンロードできるようにしました。

Pickit3_2

使用するマイコンは、開発事例の多い「PIC12F675」とします。秋月で80円で売っていました。 開発環境はMPLAB IDEとHI-TECH Cそれに書き込みアダプターPICkit3です。 書き込みアダプター以外は無償アプリです。

まず、この開発環境構築でトラブリました。メインで使用しているPCはWindows7 64bitバージョンですが、アプリをインストールしてPICkit3を接続してもPICkit3がコネクト状態になりません。USBドライバーがうまくインストールされないようです。Helpをたよりにインターネットで調べていくと、Windows7の64bit版はトラブルらしく、わざわざ解決方法が絵入りで説明されていましたが、私のPCの表示とは一致しません。1日、ああでもないこうでも無いといじったあげく、64bit版を諦めて、Windows XP 32bit版に開発環境を構築する事にしました。インストールが完了し、PICkit3をつなぐと、簡単に認識され、かつファームウェーアーのアップデートを行うということで「OK」をクリックすると、アップデートされ、かつこのPICkit3が正常につながったとコメントがでました。 試に、このファームウェーアーをアップデートしたPICkit3を64bit版のPCにつないでみましたら、こちらも正常に動作するようになりました。  結局、マイクロチップが公式に言っている64bit PCによる不具合ではなく、自社のファームウェーアーにバグが有ったようですね。

やっとPICの開発の勉強ができる環境が整いましたので、PIC12F675の英文データシートとグーグル翻訳を駆使して、ハードの設計を行いました。グーグル翻訳の日本語はほとんど意味が判りません。翻訳された日本語文の中から、判らない単語のみピックアップして、後は英語の原文で理解するのが早いですね。

Elekey675

 上が、このエレキーの全回路図です。 ドットとダッシュの入力端子はマイコンの中の約20KΩの抵抗でプルアップしてあります。送信機に接続されるキー出力はN-MOS FETのオープンドレインとして可能な限り消費電流を減らしました。 また、キーイングのスピード調整は10KΩの可変抵抗で分圧された電圧をマイコンのA/Dコンバーターで読み込み連続可変できるようにし、かつこの可変抵抗器に加える電圧もマーク信号の時だけ加える事により電流を押さえます。 A/Dコンバーターへの信号源出力インピーダンスは10KΩ以下が推奨されていますので、可変抵抗器は20KΩでもOKですが、手持ちが無かったので10KΩとなっています。また、方形波ですが760Hzのサイドトーン信号も出力しています。このサイドトーン信号を実際に使う時は、この端子の後に2段くらいのCRフィルターを設けて高調波を少なくすると聞きやすい音になります。 電源は乾電池3本の4.5Vを想定しています。 CNP1のコネクターはPICkit3を接続する端子で、開発が終われば不要になります。

省電力の配慮をしたのに、SLEEPモード時の消費電流は360μAもあります。乾電池につなぎっぱなしで液漏れせずに使用できる消費電流は、過去の経験から140μAまではOKでしたが、メーカーの判らない100円ショップの電池でも安心していられるのは50μAくらいまでです。SLEEPモードにはいる手順が悪いのか、初期設定が悪いのかと、変更、コンパイル、確認を10数回も繰り返しましたが、一向に改善しません。 もしかしたら、ICが不良品?と予備のマイコンと交換したら、あっさりと直ってしまいました。 動作はすべて正常なのに、SLEEP状態の電流が多いという現象に遭遇しましたら、まず最初にマイコンチップを疑った方が早く解決できそうです。 ICは最初からの不良品ではなく、私が壊したと思われます。なぜなら、一度ラッチアップさせ、マイコンがアッチッチになった事がありましたので。

Elekey675b

最終的な消費電流は以下のようになりました。

マーク出力状態  1.4mA

スタンバイ状態   0.78mA

スリープ状態       1μA以下

マーク信号の出力が終わってから、約3秒後にスリープ状態へ移行します。

左の画像はスタンバイ状態での消費電流を測定したものですが、スリープ状態では、テスターの針はほとんどゼロを指します。 開発ボードにはLEDも見えますが、実際は使っていません。

一応完成したので、キーイングすると、今までのCK-100Aに比べて非常に打ちにくく、さらに時々スリープモードから復帰しません。 CWの短点はコンテストの時など40m秒くらいの長さしかなく、時には35m秒くらいの速さになる事もありますので、通常のチャタリング吸収手法は使えず、とりあえずチャタリング対策なしで設計していました。 キーを自作のキーに変えると、さほど気にならないのですが、GHDのキーにすると、打ちにくさが目立ちます。 そこでGHDキーのチャタリング波形をチェックしてみました。

Elekey675c

左の画像はGHDキーでキーダウンしたときのマイコンのGP4端子の波形です。一応1KΩと0.01μFのフィルターは入っていますがノイズを押さえる効果があっても、チャタリングの吸収は出来ておりません。  チャタリング吸収の為に、通常20~30m秒かけて、入力変化があったと判定させますが、この期間は次の入力を受け付けない訳で、短点、長点メモリーというエレキーには欠かせない機能が制限を受けます。 従い、このキーを受け付けない期間は出来るだけ短くする必要があります。 この為、タイマー0を使ったKey入力の状態チェックは約4m秒くらいで行っていました。 GHDキーのチャタリングを、デジタルストレージオシロで十数回測定した結果、上の画像が一番ひどいチャタリングで幅は5m秒くらいあります。 その為、チャタリング発生中に次のキー状態をチェックする事になり、多重割り込みが発生したり、キー入力を誤判定していたものでした。

キーのチャタリングで5m秒はかなり優秀な方で、手入れが悪いと、10m秒くらいになる事もあります。 よって余裕をみて、タイマー0で割込みが発生してから、約15m秒は次の割込みを禁止し、短点、長点メモリーも機能している事を確かめて、とりあえず逃げました。

ソフト屋からみると、かなり低レベルの部分でトラブりましたが、とりあえず勉強になりました。

しばらく使っていましたが、どうもしっくりいかないので、キー入力のチェック間隔を約16m秒にした上で、割り込み処理中にあった15m秒の割り込み禁止期間は廃止し、かつ長点の長さを従来の3短点から3.3短点に変更しました。 これで、28ワード/分のコンテストスピードでも違和感なく打電できるようになりました。

エレキー用HEXファイルをダウンロード

HEXファイルは説明なしで更新しております。気になる方は最新のファイルをご利用ください。

Eleky675d_2

Elekey675case_2

出来上がったエレーキーは、小さな透明ケースに収納し、FT-450を使った移動運用時に持っていくことにしました。 50MHz 50W運用で時々誤動作がおこりますので、キー出力ラインにLCのフィルターを追加してあります。 LもCもジャンク箱から最初に掴んだものを取り付けましたので、定数は吟味しておりません。

ワンチップマイコンでは無く、プログラムの不要なICによるエレキーの製作はエレキー回路の追加 で紹介しております。

とりあえず、PICマイコンの開発ができるようになりましたので、本来の目的である、ATUの開発に着手しました。 バリコン式ATUの自作 1 を参照下さい。

スリープモードへの入り方、復帰の仕方のみ、ソースファイルを抜粋しました。

void interrupt TimerSleep( void ) {
     if (T0IF == 1) {             // タイマー0の割込み?
          TMR0 = 0x00 ;         // タイマー0の初期化
           if ((GP5 == 0) && (dashfg == 1)) {  
                dotmemofg = 1;
                dashmemofg = 0;
                }
      if ((GP4 == 0) && (dotfg == 1)) {  
             dashmemofg = 1;
             dotmemofg = 0;
             }
       slpcount++;//スリープカウンター
       T0IF = 0;
       }
 if (GPIF == 1) {//sleep modeからの割り込みチェック
       cnt0 = 0;
       GPIF = 0;
       GPIE = 0;
       } 
}

以下main()の中のループの一部です。

if (slpcount > 200) {//スリープカウントが200を超えたら
  GPIF = 0;
  GPIE = 1;
  asm ("sleep");//スリープモードへ
  asm ("nop");//スリープモードから復帰した時のダミー命令
  GPIE = 0;
  }

...

全ソースファイル elekey12f675.cをダウンロード (バグ修正済み)

2017年2月追記

このエレキーの電池は100円ショップの単4アルカリ乾電池3本でしたが、2年8か月でとうとう力尽き、2017年2月に新品と交換しました。

 

2020年11月

プログラムにバグが発見されましたので、XC8用に書き換えて修正しました。

elekey_XC8_version.cをダウンロード

2024年4月

エレキーのWPM速度を表示出来る新エレキーを作り始めました。

 

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