2015年5月30日 (土)

TFT LCDによるアナログメーター 3

<カテゴリー:PICマイコン

Aameter2_2

PC上で動作するコードジェネレーターのバグと、C言語のポインターの使い方でかなり苦労しましたが、左のような、アンテナアナライザーの表示画面ができました。 

なぜLCD上の疑似アナログメーターの表示にこだわるかと言えば、それは、マルチファンクション画面が得られるからです。 画面はこれで完成ではなく、アナログメーター部分を消して、周波数対SWRのグラフを描かせる事により、LCD表示のアナログメーターも生きてくる訳です。 しかし、ここまでの表示で、const用に使えるROMエリアを含めて85%くらい使っており、これ以上のグラフィックを仕込むとエラーになります。 SWRのグラフ表示は、実際にハードと結合した時の様子を見ながら考える事にします。

通常、プログラムの効率化の為、共通の関数を条件判断しながら、使い回ししますが、これをやると、条件判定の為、動作が少しだけ遅くなります。今回のプログラムでも、メーター指示や、数値の表示の中で、IF文が多くなると、目に見えてメーターの動きはおそくなりました。

対策としては、条件判定を必要最小限に抑える代わりに、関数をいくつも設けることにしました。ROMの容量アップになりますが、プログラム用の容量より、グラフィック用のROM容量がはるかに大きく、全体的にはあまり影響はありません。

残り15%のROM容量でどこまで出来るかは、これからの作業になりますが、ROM容量128Kバイトのマイコンは64pinのQFPですので、出来ることなら、この44pinの64Kに収めたいところです。 また、クロックも現在20MHzですが、これを32MHzまで上げる事にします。

このLCDの表示状態で、SWRやZ,R,Xをリアルタイムにデジタル表示すると、アナログメーターの指針の動作速度は、どんどん遅くなっていきますが、 その上で、周波数カウンターを動かすと、周波数カウンターの基本ゲート時間が10ミリ秒必要であり、メーターの指針の動きはもっと遅いものになりそうです。 改善策としては、周波数カウンターは、外付けPICマイコンで処理し、カウントした結果だけをもらうという案になりそうです。

また、RやXを表示させるためには、10000倍した整数計算では、その精度が不十分で、32bit浮動小数点による計算はマストですから、これもLCD表示マイコンから切り離した方がよさそうです。

これら、周波数カウンターやR、Xのベクトル計算も、LCD上でのグラフィック表示がなければ、8bitマイコンでも十分処理可能なものです。

これからハードの設計を始めますが、基本設計はほとんど出来ていますので、蛇の目基板を使い、いかにして手作りするかが、本当の課題です。 完成はいつの事やら。

アンテナアナライザーの製作(センサー回路) に続く。

2015年6月30日追記

ハードウエーアーが基板状態ですがほぼ完成し、LCDアナログメーターの改善を行う事が出来る時期になりました。 当初、メーターの振れ分解能は1度きざみでしたが、動きが粗く、とてもアナログメーターの動きをまねる事ができませんでしたので、LCDの1ピクセル単位の変化となる、0.25度きざみでドライブする事にしました。 しかし、0.25度きざみでそのまま駆動すると、ゼロから無限大までの移動時間は10秒を超えてしまいます。 動きはスムースですが、実用的では有りません。

Aa50meter3_2

そこで、目標の角度と、現在位置の差を計算し、T/Gに対して数度しか離れていない場合、0.25度きざみで送り、その倍の差が有る場合、0.5度きざみで送り、同様に差が倍になるごとに送る角度も2倍にし、最大で2度きざみで送るようにしました。 この細工により、T/G角度近くになると、指針の動きにブレーキがかかりますので、本物のメーターの動きに、より近くなりました。

結果は非常に良好で、7MHzのアンテナをつないで、実際にSWR最少周波数を探す操作をすると、かなりスムースに指針が追従し、なんなく共振点に周波数を合わせる事が出来るようになりました。 本物のアナログメーターには及びませんが、さほど違和感なしに操作できます。 これから完成度を上げていきますが、ROM容量が、目いっぱいの状態ですので、マイコンを変更するまでは、とりあえず、お預けとなりそうです。

左のLCD画像は最新の表示画像で、50Ωのダミー抵抗を装着した時の表示です。

アンテナアナライザーの製作(センサー回路) に続く。

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2015年5月12日 (火)

TFT LCDによるアナログメーター 2

<カテゴリー:PICマイコン

 8bitのPICマイコンでは容量不足で、まともにLCDの表示が出来なかった為、マイコンを16bitに替え、かつLCDも一回り大きな2.4インチサイズにして、実用サイズのLCDアナログメーターを実験中です。

16bitpic_pwb_4

16bitpic_lcd

マイコンはi/oに不足がありますが、とりあえず簡単に実験できそうな、PIC24FJ64GA004という16bit品と、前回と同じメーカーDisplaytechの、DT024CTFTという、320x240ピクセル2.4インチサイズで作ることにしました。 マイコンが16bit品になったので、コンパイラもXC16に変更必要です。そこで、開発環境も、MPLAB Xに変更する事にしました。 しかし、これが、くせもので、従来のやり方では、全く動きません。 すでに通り過ぎた方は、問題ないにしても、これから、XC16やMPLAB Xの環境でPIC24xxxの開発を始めようと思っている方に多少なりとも、役にたつならと、失敗と対応方法を紹介します。

まず、MPLAB Xですが、エジターの日本語が文字化けして読めません。 WEBで調べていくと、プロジェクトを作るときにEncodingの指定をやるのだそうですが、それを見落としてプロジェクトを作ってしまっているので、後から、Encodingを変更する方法を探す必要がありました。 

プロジェクトをオープンして、プロジェクト名の周りが青色になっている状態で、マウスを当て、右クリックすると、一番下にPropertiesがありますので、これをクリックします。出てきたダイアログの一番上にるGeneralの文字をクリックすると、中央下にEncodingの設定ランがあります。その中から、Shift_JISを選択すると、文字化けは直ります。

初期段階として、PICのソースファイルにConfig事項を書き並べて、チップの初期設定をおこないますが、HI-TECH CとXC8やXC16では全く書式が異なります。

HI-TECH Cによる16F1939のConfig記述例

 __CONFIG ( FOSC_INTOSC & WDTE_OFF & PWRTE_ON
 & MCLRE_OFF & CP_OFF & CPD_OFF & BOREN_OFF & CLKOUTEN_OFF & IESO_OFF
& FCMEN_OFF);
 __CONFIG ( WRT_OFF & VCAPEN_OFF & PLLEN_OFF & STVREN_OFF & BORV_LO
& LVP_OFF );

これに対して、XC16で24FJ64のconfig記述例

// コンフィギュレーション設定 Fosc=20MHz Xtal
#pragma config POSCMOD = HS, I2C1SEL = PRI, IOL1WAY = ON
#pragma config FCKSM = CSDCMD, FNOSC = PRI
#pragma config WUTSEL = LEG, IESO = OFF, WDTPS = PS1
#pragma config FWDTEN = OFF, ICS = PGx1, COE = OFF, BKBUG = OFF
#pragma config GWRP = OFF, GCP = OFF, JTAGEN = OFF

XC16をデフォルトでインストールすると、以下のホルダーの中に、各PICの品種ごとに、どのように設定するか説明があるのですが、書いてある単語が何を意味するのか判らず、結局、該当チップの英文データシートを読む必要が生じます。それも大変な作業で、今回のPIC24FJ64の設定がなんとなく判るまで2日間もかかりました。 それでも上の設定が正しいのかは?です。とりあえず動いいていますので、良しとします。

C:\Program Files (x86)\Microchip\xc16\v1.24\docs\config_docs

最近のPICマイコンは、i/oピンの多重化がすさまじく、何もしなければパラレルポートを使う事が出来ません。このマイコンも、端子機能はピン配置図に書かれている名称の左から順に優先度が高いと説明されていますが、一番右側に書かれたパラレルi/oをそのまま使う方法が判りません。

ほとんどのi/oで一番左側に書かれている機能はADです。 ADを使うか使わないかを最初に設定しないと、i/oをHに設定したのに、いつのまにかLになっているとかの異常動作に遭遇します。 HI-TECH CでもADは最初に設定する事が必要でしたが、16bitになって、ほとんど全てのi/oがAD対応になっていますので、面倒がらずに、全部設定が必要でした。 ADの設定を行うと、各ピンの一番右側に書かれた端子機能をそのまま使う事ができました。 

次にHI-TECH CではLATB1などのようにi/oのビット指定が出来るのですが、この単語ではエラーになります。これらの定義はincludeファイルの中にあるはずですが、そのファイルを見つける事ができませんでした。結局、WEBで調べてLATBbits.LATB1のように記述したら良いと判るまで、またまた2日間もかかってしまいました。 16bitをパラレルで一挙に書き込む場合はLATB = 0xFFFFでOKでした。

とりあえず、マイコンはソフトで書かれた通りi/oのH,Lの設定が出来るようになりましたが、今度は、LCDがまともに動作しません。 このメーカーのホームページにサンプルコードがありますが、このクラスのLCDは8bit RGBドライブオンリーで、マイコンからのパラレルドライブやシリアルドライブの実働例はありません。FAQなどを調べていくと、世界中のユーザーが困っているようです。 私の実験では、マイコンからのパラレル8bitドライブはなんとかなっても、シリアルドライブは全く不可というのが実態のように思えます。多分、自社でもテストした事がないのでしょう。

このような環境で、案の定、16bitドライブにしてもまともにカラーが出ません。悪戦苦闘の末判った事はRGBモード時設定するように説明されたカラーコードフォーマットの指定をマイコンからのパラレル接続でも行わないとダメという事でした。

このLCDは以下の初期設定で16bitパラレルドライブの基本的な動作は可能となります。

IM0をHとして、IM1-IM3はL(GND)にしておき、ハードリセットをかけた後のイニシャル処理です。

void init_LCD() {
 lcd_CMD(0x01);//ソフトリセット
 __delay_ms(120) ;
 lcd_CMD(0x11);//Sleep Out
 __delay_ms(120) ;
 lcd_CMD(0x13);
 lcd_CMD(0x0036);//Memoryアクセス(画面のスイープ方向設定)
 lcd_DATA(0x0048);//画面は縦置きOnly
 lcd_CMD(0x3a);//カラーモード書式設定
 lcd_DATA(0x55);//16bit(5-6-5)        この設定が必要でした。
 lcd_CMD(0x002A);//カラムアドレスセット
 lcd_DATA(0x0000);//SC[15-8] 0から
 lcd_DATA(0x0000);//SC[7-0]
 lcd_DATA(0x0000);//EC[15-8] 319まで
 lcd_DATA(0x00EF);//EC[7-0]
 lcd_CMD(0x002B);//ローアドレスセット
 lcd_DATA(0x0000);//SP[15-8] 0から
 lcd_DATA(0x0000);//SP[7-0]
 lcd_DATA(0x0001);//EP[15-8] 239まで
 lcd_DATA(0x003F);//EP[7-0]
  lcd_CMD(0x0029);//Display ON 検討中はこのタイミングで。
 lcd_CMD(0x002C);
 __delay_ms(200) ;
 
}

今回の配線図を下記からダウンロードできます。

マイコンとLCDは専用ラインでつながっていますので、CE端子は常時Lで良く、またLCDの内部情報の読み出しも行いませんので、RD端子も常時Hとしております。

LCDMeter0.pdfをダウンロード

Lcd320meter1

開発開始してから約1週間経過した時点で左のようなアナログメーターの表示に成功しました。

前回のドット数は160x128でしたが、今回は320x240でそれなりに分解能も向上しておりますが、単純に約4倍の面積に拡大しただけでは、このような綺麗なグラフィックにはなりません。 

まず、JW CADを使い、正確な目盛板を作成します。 JW CADのフォントは限られていますので、グラフィックの部分のみを作画して、これをスクリーンショットでGIF画像に変換します。 この時のサイズは面積比で16倍以上あります。 この画像をWindows標準のペイントで読み込み、文字を入れます。フォントも色も豊富にありますので、デザインは簡単です。

デザインが終わったら、実際のLCDに表示するピクセルサイズまでペイントで縮小します。 この状態での各ピクセルのカラーデータをそのまま取り込むという手法で実現できます。

PCでの画像処理は、その豊富なアプリのおかげで、簡単に実現できますので、これをマイコンが扱えるデータに変換する為に、変換プログラムを作る必要が生じます。 PICのマイコンとLCDをにらみながら、ちまちまソフト開発をやるはずでしたが、 このSWRメーターの目盛が表示できたのを境に、マイコンプログラムの開発ではなく、PCのアプリ開発がメインになってしまいました。

そして、さらに、1週間くらい過ぎた時点で、PCアプリが完成しました。

下の画像は、PCの画面上に表示された、LCD表示用カラーコードジェネレーターです。  LCDと同じピクセルサイズに縮小したグラフィックデータを読み込むと、C言語で扱えるLCDへ表示する為のデータファイルを出力します。 出力されたファイルを#include命令で読み込み使う事ができるようになります。  バグだらけのアプリでしたが、なんとか動作するようになりました。

Ccg0

 このアプリはTcl/TKと呼ばれるインタープリンターで作られておりますので、動作は遅いですが、コードジェネレーターですから、たとえ1分かかろうが問題ありません。  実際のところは数秒で出力されます。

バグだらけですが、ソースをダウンロードできます。Ccord_Generator4.tclをダウンロード

defaultcolor.txt を同じディレクトリーに置いてRUNさせて下さい。defaultcolor.txtをダウンロード

グラフィックデータをC言語で出力するのはOKですが、フォントデータを出力させる場合、都度ソースを微調整していましたので、このままでは機能しません。 取説が無いので作った本人も、もう忘れてしまいました。

このアプリはTcl/Tkというインタプリンターをインストールする必要があります。インストールの詳細は「Tcl/Tk」で検索してください。 ダウンロード元は全部英文で、個人情報の登録が必要です。

メーターの振れ角を66度として、0.5度きざみで指針データを作り、これをROM上に配置して指針の動きを表現するもので、PC上でのシュミレーションではうまくいってましたが、いざPIC24Fのマイコンに書き込む作業をしたところ、ROM不足でエラーとなってしまいました。

なぜなら、この指針用データが90Kバイトくらいあり、完全なメモリー不足でした。 本来は、もっと早く気付くべきところですが、アプリが完成して、コードを出力したら、そのファイル容量が170Kバイトくらいを示しましたので、やっと判った次第です。 データのスパンを1度ごとにして、容量を半分にしてみましたが、指針データ以外で24Kくらい使っていますので、やはり足りません。

現在のROM容量64Kに収まる範囲で可能な方式として、指針データは常に計算で出し、指針より少しだけ広い四角い範囲のグラフデータに、指針データを重ねると、ちょうどドット数の多いフォントと同じようなデータが作れますので、これをグラフ画面上に上書きすることにしました。

Lcdswrmeter2

左の画像は、そのようにしてメーター目盛の上に、指針とその周囲の目盛画像を上書きしたものです。最初の案より指針データを計算する分だけ動作が遅くなっています。

この目盛のSWR1.0から無限大までの指針移動時間は実測で、約3.3秒ありました。指針位置の計算はsin()と平方根で出していました。

Y座標は、半径やXの値を2乗してから、平方根ですから、かなり時間がかかりそうです。 そこで、平方根を止め、Xはsin()で、Yはcos()で計算させると、指針の速さは約2.7秒まで改善しました。

三角関数は時間がかかると思われますので、sin()の0度から90度までを予め、PCで計算し、その結果を10000倍した数値を整数として、配列に記憶させ、sin(deg)はそのまま取り出し、cos(deg)はsin(90-deg)で取り出す事にしました。   結果は約1.3秒まで改善しました。

関数のなかを見渡して、繰り返しループの中で、初期設定など、結果が変化しない処理事項を取り出し、ループの外に置くとか、見やすくするために置いた変数を固定値に変えるとかの作業を行った結果SWR1.0から無限大までの指針移動時間は約1秒まで改善出来ました。

Lcdswrmeter3

次に、一部、浮動小数点(double)を使用していた計算式を10000倍の整数計算した後、四捨五入した整数に直す方法で、全ての計算を整数で行った結果、ゼロからフルスケールまでの時間は約0.65秒となりました。

左の画像はその速さで指針が動いている時のショットです。動きが速いので、指針もボケて写っていますが、見た目のチラツキは少ないです。

アナログメーターの指針移動時間で違和感が無いのはゼロからフルスケールまで0.3秒くらいの移動時間ですから、あと半分くらいは短縮必要です。

しかし、 現在はメータードライブだけしかやっていませんので、例えば、SWRメーター以外にインピーダンスメーターも同時に表示したり、周波数カウンターの周波数表示など、負担が増えるばかりで、指針の移動スピードもどんどん遅くなってしまいます。

また、この方式の場合、チラツキは最少に抑えられますが、指針の移動スパンは1度以内に限られます。VUメーターではないので、かなり遅い追従時間でも問題は無いと思われますが、実際に作ってみないと、何とも言えません。

次回は、LCDの全画面表示にトライします。

TFT LCDによるアナログメーター 3 に続く。

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2015年5月 4日 (月)

TFT LCDによるアナログメーター1

<カテゴリー:PICマイコン

AadigitaltestPICのマイコンを使用して、アンテナチューナーのコントローラーやATUの製作を行ってきましたが、この過程で、SWR計も作ってきました。 PICマイコンに少し、慣れたころ、このマイコンのAD入力にCAA-500のインピーダンス検出DC信号や、SWR検出DC信号を加え、アンテナアナライザーによるインピーダンスやSWRのデジタル表示にトライし、RやXの表示も行えるところまで実験ができましたので、次の目標は、オール自作のアンテナアナライザーと決めました。 左の画像は、CAA500のセンサー基板に、PIC16F1939を使用した自作のマイコンボードとLCDディスプレーを接続し、マイコンで周波数や、SWR、インピーダンス、R、Xを表示させている実験風景です。

アンテナアナライザーのセンサー部分や、広帯域発振回路など、なんとかなりそうですが、これをメカニカルアナログメーターや、キャラクタ表示の液晶で実現してもMFJやコメットと同じなので、面白く有りません。  そこで、マイコンでは、無理と言われる、液晶表示の疑似アナログメーターの実験を始める事にしました。 最近の車のインパネは高精細度の液晶によるスピードメーターやタコメーターがすばらしいデザインの元で実装されております。またKENWOODの最新モデルにも、液晶表示のアナログメーターが実装され、デジタル駆動にもかかわらず、非常にわかりやすいアナログメーターとなっています。 これらの最新技術のLCDアナログメーターに及ばないにしても、安いマイコンと、安い液晶でどこまで、液晶表示のアナログメーターが実現できるかの実験記です。

使うマイコンは、少し役不足ですが、ATUに使ったPIC16F1939。 これで160x128ドットのTFT液晶をドライブします。 液晶は262K色対応で、普通の写真を表示させても、遜色のないカラー画像が表示できるという中国製です。

とりあえずは、TFT LCDを初期設定し、画像や、文字を表示できるところまでトライします。

この実験ボードの配線図です。TFT-LCD.pdfをダウンロード

実験に使うマイコンはROMもRAMもグラフィックLCDをドライブするには小さすぎますので、今回は、基本動作を得とくする事が目的となり、実践版は次の試作までお預けとします。

試用するLCDはDisplaytechのDT018ATFTという品番で、液晶ドライブIC ILI9163Cが内臓されています。 このILI9163Cという台湾製のICはインターネット上でも良くみかけるST7735とコンパチで、ST7735用のイニシャルルーチンでちゃんと初期設定されてしまいます。初期設定が成功したら、後は、ILI9163Cのデータシートを読みながら、ああでもない、こうでも無いと試行錯誤する事になりますが、いつのまにか、文字表示や自作したイメージデータの表示が出来るようになりました。

Pic_lcd_demo

左の画像は、なんとか表示できるようになったので、SWR計の目盛をLCD上に表示させたものです。SWR検出信号をADにつなげば、赤色の指針がSWRを指します。

メーターの目盛は3角関数とピタゴラスの定理を駆使して、描かれており、ブリッジの不平衡電圧を角度に変えて、目盛と同じ式で指針を表示していますので、指示誤差は有りません。

150x50ピクセルくらいの範囲で描画していますので、あまりきれいではありませんが、実験機としては十分です。

ただし、大きな問題があります。

動作がおそろしく遅いのです。

指針が移動するのに、0.5秒くらいかかります。1度移動しようが、60度移動しようが0.5秒です。 これでは、全く使いものにはなりません。  これは、指針も3角関数と、ピタゴラスの定理でXYドットをいちいち計算して表示していたのが最大の原因です。  

これを、指針のドットのみ1度ごとのXYデータの配列として記憶させて置き、測定された指針角度から、このイメージデータを呼び出し、表示させる事にしました。 角度データは80度分必要ですが、とりあえず10度分だけ作って振らせてみました。 指針は赤色で描画した後、一度白色で再描画し、指針を一度消し、次に新しい位置に、赤で描画するという事を繰り返します。 このドット単位での書き換え動作は、目盛と指針が重なった場所の目盛表示を復帰させるのも、ドット単位で行えますので、復帰させるドット情報も簡単に計算できます。 しかし結果は、かなり早くなりましたが、指針のチラツキが目立つようになりました。 まだまだ、改善が必要です。

次に、文字フォントと同じように8x16の書き換え可能なドットパターンを用意し、この範囲に含まれる目盛のドットに加えて、指針のドットも書き込み、これを指針角度に応じて、画面上に再描画させる動作を実験しました。この場合、指針の移動に伴い、旧指針を消すという動作と消えた目盛の復帰動作が不要になりますので、面を書き換える時間増より、コマンド切り替えの回数減少から、LCD側の動作速度がかなり早くなります。 また、ちらつきもほとんど無くなる事も判りました。 ただし、LCDにカラードットを書き込む前のドットパターン作成作業は複雑になりますので、マイコンのクロックを上げたり、16bit RISCタイプに変えるなど、対応が必要になると思われます。

次は、マイコンを16bit品に変え、かつLCDも320x240ドット品に変えて、動作速度の改善に取り組みます。

同じようなLCDをお使いになりたい時の為に、このLCD用の初期設定ルーチンだけですが、以下に示します。

void lcd_CMD(unsigned char CM) {//1-byteコマンド
      RS = 0;
      WR = 0;
      LATD =CM;
      WR = 1;
      RS = 1;
     }
void lcd_DATA(unsigned char DA) {
      WR = 0;
      LATD = DA;
      WR = 1;
     }

void init_LCD() {
      lcd_CMD(0x01);//ソフトリセット
       __delay_ms(120) ;
      lcd_CMD(0x11);//Sleep Out
      __delay_ms(120) ;
      lcd_CMD(0x36);
      lcd_DATA(0xC8);
      lcd_CMD(0x2A);
      lcd_DATA(0x00);
      lcd_DATA(0x00);
      lcd_DATA(0x00);
      lcd_DATA(0x9F);
      lcd_CMD(0x2B);
      lcd_DATA(0x00);
      lcd_DATA(0x00);
      lcd_DATA(0x00);
      lcd_DATA(0x7F);
      lcd_CMD(0x36);
      lcd_DATA(0xAC);
// lcd_CMD(0x29);//Display ON このコマンドは画面クリアーの後が良い。
      lcd_CMD(0x2C);
      __delay_ms(200) ;
 }

TFT LCDによるアナログメーター 2 に続く。

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2015年3月 2日 (月)

160m垂直アンテナ

<カテゴリ:アンテナ>

設置可能な環境の中で、色々と160m用アンテナの実験を行いましたが、やはり、アンテナは屋根より高くないといけないようです。 そこで、前回挑戦して挫折した、7MHz用垂直ダイポールとスカイドアエレメントを利用した垂直アンテナに再トライする事にしました。

160mv5_2

前回の失敗原因は送信出力でアンテナの共振周波数が変わるとい問題でした。  この原因は、近接平行する他のバンドのエレメントとの干渉が高周波電圧で変化し、共振周波数がずれてしまうものでしたので、逆に、近接するすべてのエレメントをショートして、垂直アンテナの頂冠としてしまえば、この問題は解決しそうです。  前回、これを実行しなかったのは、160mから他のバンドへQSYするとき、アンテナワイヤーの接続替えをやらねばならず、それが面倒な事でした。  その為、実験もせずに諦めていた訳です。

ちょうど、今晩から広島WASコンテストが始まるという日の午後、急きょ、この全アンテナエレメントショートの垂直アンテナをでっち上げて、使って見る事にしました。

 

7MHz用垂直ダイポールの下側エレメントを切り離し、上部エレメントを下の方へ延長し、例の金網のところまで降ろします。 18MHz用スカイドアのエレメントは、ベランダに置かれたプリセットMTUから外し、この7MHz垂直ダイポールの上部エレメントに接続します。 さらに6m用のヘンテナもアンテナチューナーから切り離し、これも垂直ダイポールの上部エレメントに接続しました。

160mv5box

この状態でマッチングBOX内のローディングコイルは約2μHで1.910MHzに共振します。 インピーダンス変換トランスは10:6のタップですので18Ωくらいのインピーダンスになっているようです。  アンテナアナライザーで1.910KHz付近に共振周波数がある事を確認し、実際に10Wの出力でSWR最少周波数を確認してみました。1.909KHzでSWR最少1.05となっていました。60W送信してもSWRの悪化や共振周波数のずれは有りません。

一応、使用可能になりましたので、これを2015年広島WASコンテストで使ってみました。 3時間の国内コンテストですが、20局しか交信できませんでした。 昨年のコンテストでは31局と交信していました。 アンテナの形態は昨年と同じですから、多分コンディションが良くなかったのでしょう。 

下に、MMANAによる指向性データを示します。

160mv5data

既存のDPやスカイドア、ヘンテナのワイヤーを一度MTUから切り離し、これを互いにショートした上で、地面まで引き降ろすという作業はかなり面倒です。 次の日の朝、ハイバンドのコンテストが朝8時から始まりますので、雨の中、この切り替えを元に戻す作業をしましたが、かなり手こずりました。 暖かくなったら、このワイヤーの切り替えをスイッチで行えるように切り替え器を設置する事にします。 

その後、アクティビティも下がり、このアンテナの改良は頓挫していましたが、2022年になり、1.8MHzのSSBで国内ラグチューをやる目的で、再度160mバンドアンテナにトライです。

160m用 8m高のスローパー へつづく。

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2015年1月26日 (月)

160m用ロングワイヤー4

<カテゴリ:アンテナ>

全長40mのロングワイヤーは、その絶対利得が+1.47dBiと実験したアンテナの中では唯一プラスのゲインになりましたが、垂直面内の指向性がほとんど真上に集中し、近隣の局のSは強烈に上昇しましたが、DXの信号はほとんど聞こえない状態でした。 2015年CQWW 160mコンテストの2日目、ゲインはかなりダウンしますが、打ち合上げ角が31度くらいになるT型ロングワイヤーに変えて、再度トライする事にしました。

160m13t9drw

マッチングBOXの中のローディングコイルのタップ位置を選択して1.817MHzに共振させ、トランスの巻き数比を9:5とした時、 最少SWRは1.05くらいでバンド内は1.4以下に収まっています。 アンテナの推定インピーダンスは15Ωくらいです。

ゲインは-6.14dBiとかなり落ちましたが、打ち上げ角は31度となり一応DXも可能な状態になりました。  夕方になるのを待って、ワッチすると、ハワイがQSBを伴いながら599で聞こえます。QSBのピークを見計らって、コールすると「PDP?」と返ってきましたので、数回コールしましたが、結局交信不成立。 その後ワッチを続けると、アリゾナが+10dBくらいで入感します。 ただし、コールしてもQSOは出来ません。 

結果的に、2日目の晩もサハリンと交信できただけでしたが、少なくとも前日のフルサイズLWよりDX向きである事は判りました。 先端がシャックと同じ高さで、我が家の屋根より低いというアンテナでは、DXは無理と諦めることにしました。 このコンテストはJA同志のQSOも得点になりますので、CQ TESTを出すと、ちゃんと呼ばれます。 国内にはそこそこ飛んでいるようです。

160m13t9mmana

垂直面の指向性は良さそうですが、地上高が低いのがやはり致命傷ですかね。

次の日の月曜日、雨の中、アンテナの撤去を行いましたが、再度使用する事はないでしょう。

次に160mバンドにQRVする時は、160m用ロングワイヤー(LW) 1で紹介したスカイドアエレメントを使用した屋根より高いアンテナに再挑戦します。 前回は出力で共振周波数が変わるという問題で投げ出しましたが、対策を考えて再トライです。

160m垂直アンテナ へ続く。

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2015年1月24日 (土)

160m用ロングワイヤー3

<カテゴリ:アンテナ>

全長が26mのロングワイヤー(実際はショートワイヤーの呼び名に等しい)は、その高さの割にしては良く飛んでくれました。  しかし、臨時に仮設する条件であれば、最長50mのロングワイヤーを展開できる場所が有りながら、電線の重さの為、張る事が出来ず、26mで妥協していた状態でした。  最近、直径1mmのステンレスワイヤーを市場価格の半額近くで入手できましたので、1.8MHz用フルサイズロングワイヤーにトライしました。

160mlw3

相変わらず、高さは最高8mくらいしか取れませんが、全長50mのワイヤーを用意して、とりあえず張ってみましたら、アンテナの共振周波数は1.6MHz以下となっていましたので、そこからせっせと、ワイヤーをカットし、10mくらいカットしたところで1,817MHzに共振させる事に成功しました。実際のワイヤーの長さは測っていませんので、約40mくらいとしか言いようが有りません。 アンテナアナライザーで確認すると、共振周波数でのインピーダンスは48Ωくらいです。 インピーダンスが高いのはステンレスワイヤーの直流抵抗成分の性かも知れません。なぜなら、40m長のステンレスワイヤーのDC抵抗は60Ωくらいありましたので。 このDC抵抗が原因していると思いますが、アンテナの帯域が従来のアンテナに比べ大幅に広くなっています。アンテナのQがかなり小さくなった為と思われます。 

160mtrns

この状態で直列に1800PFのコンデンサを挿入すると、1.910Mhz付近で同調します。この短縮コンデンサはMMANAで計算しても1800PFと算出されていました。 調整の為、1700PFくらいのセラミックコンデンサに150PFのバリコンをパラ付けして微調整できるようにしてあります。

Qが下がっても、従来のアンテナ以上に飛ぶなら、成功と思いますので、さっそく、アンテナを仮設した晩に1.9MHzでCQを出してみました。 とりあえず5局と交信できましたが双方とも受信状態はあまり良くなかった様でした。

やはり、全長のDC抵抗が60Ωというのは、ダミー抵抗をドライブしているのに等しいと思われます。 

160madj

せっかく入手したステンレスワイヤーでしたが、アンテナワイヤーとしては無理と判りましたので、LANケーブルから取り出した、AWG24のワイヤーに取り替える事にしました。 約7mのLANケーブルがジャンク箱の中にありましたので、この外被をさき、かつツイストされた4組のワイヤーを気長にほどき、全部継ぎ足すと56m近くになりました。 このワイヤーを30mにカットし、12mの1.25SQ KIV線を継ぎ足すと、DC抵抗は3Ωになりした。  このワイヤーを池の上に展開し、1.817MHzに同調するように長さを調整した結果、インピーダンスは、アンテナアナライザーで18Ωと測定されましたので、送信機からの同軸ケーブルを10番タップに接続し、6番タップからアンテナへ接続しました。 SWRは1.05以下です。 1.8MHz帯のバンド全体でSWR1.2以下とかなり広帯域です。  LANケーブル用のワイヤーはその被覆が非常に薄く、同じAWG24でもUL1007タイプよりはるかに軽量です。被覆材料はPE(ポリエチレン)ですから高周波特性も良好です。

このアンテナはコンテストの時だけ臨時に仮設して使用するものですから、架設する度に、共振周波数がすこしアップ、ダウンします。 この微調整用として、整合BOXのすぐ近くでワイヤーを約70cmくらい折り返して束ねて置きます。 共振周波数がずれたとき、この束ねた部分を長くしたり短くしたりして、調整し、いちいちワイヤーをカットしなくて済むようにしてあります。

下に、MMANAでシュミレーションした、水平面、垂直面の指向特性を示します。 シュミレーションでは深さ5mの池の地形は想定されていませんので、これより打ち上げ角が低い事を期待したのですが、実際は期待外れでした。

このアンテナを2015年CQWW 160mコンテストで試してみました。 5エリアの局が+70dBくらいで入感します。韓国も+30dBくらいで入感しますが、いつも+40dBで聞こえるサハリンの局は+20dBくらいです。 +20dBで入感する局とは交信できましたが、それ以下のSの局を呼んでも、CQのコールが一瞬とぎれるだけで、QRZすら返ってきません。 まあ、これが普通ですから、送信能力は諦められますが、HLの局と交信している7や8エリアの局すらあまり良く聞こえません。 どうやら、打ち上げ角がシュミレーション以上に真上へ出てしまったようです。

160mmmana

結局、このアンテナは1晩で不合格の判定を行い、どう改善するか思案しておりましたら、飼い猫が走り回り、マッチングBOXを引きずった為、ワイヤーが切れてしまいました。 猫の遊び場に設置したのがいけなかったと反省しながら、午前中に撤去しました。 

160m用ロングワイヤー4 に続く

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2014年12月29日 (月)

アンテナアナライザーとインピーダンス

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

アンテナアナライザーは、アンテナのSWRやインピーダンスなどを、送信機無しで簡単に測定できる為、アンテナ自作派にとって手放せないアイテムであります。 最近のアンテナアナライザーは、SWRやインピーダンスを表示した上で、リアクタンスの表示もできるのが多くなりました。  しかしながら、アンテナアナライザーは、決してアンテナのインピーダンスやリアクタンスを表示しているものでは無いという話です。

アンテナアナライザーを使用している方から質問がありました。 周波数を145MHz にしておき、100Ω のダミー抵抗をつないだのにインピーダンス表示が100Ω にならない。 リアクタンスはゼロのはずなのに、ゼロを表示しないというものでした。

Dammy50

この問題は、このブログの「同軸ケーブルの切り出し」でも触れましたが、インピーダンス検出位置 (専門的には基準面と言うそうです) と実際に接続されたダミー抵抗との距離に関係します。 インピーダンス検出位置に100Ω のダミー抵抗が置かれている場合、検出値は正しく100+j 0Ω となりますが、距離が有る場合、その距離と測定周波数の波長の関係で異なってきます。 アンテナアナライザーにダミー抵抗を装着する場合、検出部とダミー抵抗の位置は、おおかた5cm 近く離れており、これが大きく影響するものです。

下に、ダミー抵抗、測定位置、測定位置から見たダミー抵抗の電気定数を計算する式を示します。 ダミー抵抗はMコネクターの同軸ケーブル接続側の先端に、チップ抵抗がハンダ付けされた一般的な校正用ダミー抵抗です。 測定位置はアナライザー内部のブリッジ回路が存在する機械的な位置です。 それらの間にd[m] の距離があり、かつ、その間の伝送路の特性インピーダンスZoを50Ωとします。 今回のダミー抵抗はd=56.5mm のものを使いました。 また、この伝送路の短縮率は0.67 であったと仮定します。

Aaz1

 赤枠で囲まれた計算式が測定位置から見たダミー抵抗のインピーダンス計算式で、複素数扱いとなります。

下の表は、この計算式をエクセルの中に埋め込み、計算した結果です。

ダミー抵抗は純抵抗の100Ω でしたが、計算結果は83.9Ω しかありません。 また、ダミー抵抗には、リアクタンス(Xx) は含まれないのに、計算結果には30.8Ω の容量性リアクタンスが含まれています。 そして、抵抗とリアクタンスを合成したインピーダンスも90Ω 以下となっています。

周波数に関係なく、d=0 なら計算したインピーダンスはダミー抵抗に一致します。 また、周波数が低くなると、計算値はダミー抵抗の値に近づいていきます。 さらにダミー抵抗が50+j0 の場合、周波数やd に関係なく計算値は常に50+j0 となります。 そして、50+j0以外の場合、dを色々変えていくと、リアクタンスの極性も反転します。 もちろん、実際の測定結果も数値がぴったり一致しないまでも、同じ傾向を示します。

これらを実感していただく為に、計算式を埋め込んだエクセルファイルを用意しましたので試してみて下さい。

インピーダンス計算エクセルファイルをダウンロード

ところで、今回は測定位置からダミー抵抗までの短縮率(速度係数)を仮に0.67と置きましたが、 実際のところポリエチレンを完全充填している訳ではなく、半分以上が中空となっていますので、短縮率は0.67より大きな数値と考えられます。 しかし、使われているコネクターがインピーダンス無管理のMコネクターですから、基準面からダミー抵抗までの線路の特性インピーダンスは30Ωより低いと予想され、実際は計算値以上に誤差が大きくなるようです。

今までの話は、アナライザーのブリッジ回路の位置とダミーの抵抗との距離の話でしたが、これが、同軸ケーブルで接続されたアンテナであった場合、同軸ケーブルの長さは最低でも、コネクターを含めて10cm 以上はあるでしょうから、アナライザーが表示した数値は決してアンテナのインピーダンスではないという事がお判りでしょう。  アナライザーは常にブリッジ部分のインピーダンスを計測しているだけなのです。

同軸ケーブル越しに測定した抵抗やリアクタンスを含むインピーダンスが50+j0 で無かった場合、アンテナのインピーダンスは50+j0 では無いとはいえますが、いったいいくらなのかは不明なのです。 仮に156+j0 と表示されても、Rの部分が50では有りませんので、j0 だからこの周波数で共振しているという事も言えないのです。 この事は、アナライザーがリアクタンスゼロを検出しても、アンテナが共振状態であるとは限らないという事ですから、アナライザーのリアクタンス表示のみで共振周波数を判断してはいけないという事にほかなりません。 

アンテナ直下で、同軸ケーブルの長さが50cm 以下などのように、極力短い状態で測定した場合、HFの比較的低い周波数に於いては、かなり近い値を知る事はできますが、VHFやUHFでは、実態とは全く異なる数値を表示している事になります。 ちなみに、50cm の長さの同軸ケーブルでアンテナに接続した場合、前述の145MHzで生じた計測誤差が14MHzでも起こります。

同軸ケーブルの長さを正確に測定周波数のλ/2の整数倍に設定してやると、アンテナアナライザーはアンテナのインピーダンスを表示しますが、それは、波長がぴったりλ/2の整数倍のときだけです。 アンテナアナライザーの周波数を少し変化させたとたん、実際値よりずれてしまいます。 これは、同軸ケーブルの長さをこまめに変えられないというアナライザーとは関係ない事情によります。

このような説明をすると、アンテナアナライザーなど、全く役に立たない道具にしか見えないようですが、実はSWRだけは、同軸ケーブル越しでも、ちゃんと、読み取る事ができます。

SWRを表示する際に、アナライザーが測定したインピーダンスや、Sパラメーターから反射係数を求めて、求めた反射係数からSWRを算出して表示している場合、同軸ケーブルの長さに関係なく、アンテナのSWRを表示します。 実際は接続する同軸ケーブルにロスがありますので、表示されるSWR値は実際値より小さく、すなわち良く表示されます。 しかし、長さが50cm くらいの同軸ケーブルの場合なら、435MHzでも大きな誤差なくSWRを知る事ができるわけです。 

そして、反射係数を直接求めず、ブリッジの不平衡電圧に比例した数値からSWRを表示するほとんどのアンテナアナライザーも、SWRが大きい場合、多少の誤差はありますが、SWRが1.0 に近づくほど誤差が少なくなり、ちゃんとアンテナのSWRを表示します。 

この理屈を確かめるには、この記事の中でダウンロードしたインピーダンス計算エクセルファイルのZx とZi のR+jX を、インピーダンスからSWRを計算できるエクセルファイルに代入すると、Zx もZi も、同じSWRになる事から理解できます。 (スミスチャートならもっと簡単に理解出来ます。)

Aaswr1

上の表は、145MHzで100Ωのダミー抵抗をアナライザーが測定した時のR=83.9とX=-30.8をSWR計算シートに代入したものですが、計算結果はVSWR=2.00となっています。 もともとのダミー抵抗のSWRは100/Zoで2.0ですから、同軸ケーブル越しに測定したSWRでもダミー抵抗、すなわちアンテナのSWRを正しく測定している事になります。

いくら同軸ケーブルを短くせよと言っても、高さ10mに張ったダイポールアンテナの給電点にアンテナアナライザーを持っていくのは至難の業です。 ここは現実的に10数m以上あるかも知れない同軸ケーブル越しに、シャック内でSWR最少周波数を確認しても、共振周波数を知るという条件だけなら全く問題無い訳です。

時々、同軸ケーブルの長さを変えると、SWRが変わるという話を聞きますが、それはSWR計のインピーダンスや同軸ケーブルやコネクターが50Ω でなかったり、SWR計とアンテナの途中にあるコネクタの接触不良や、大きなコモンモード電流が同軸ケーブルに流れて正確にSWR計が動作しない場合や、リアクタンスが含まれたとたん、まともにSWRを計測できないSWR計のせいです。 これらの解説はインターネット上に沢山存在します。 もし、同軸ケーブルの長さを変えたときSWRが大きく変わったら、アンテナを調整する前にこれらの対策が必要ですが、コモンモードチョークを追加する以外手の打ちようがありません。その時は、一番悪いSWR値がアンテナのSWRであると考えた方が気が楽になります。

また、同軸ケーブル越しに表示されたアナライザーのインピーダンスはRやXを含めて当てにしないことですね。 すでにお判りのように、同軸ケーブルの長さが1電気波長の1/100を超えると、ZやRに無視しにくい誤差が含まれますが、Xに至っては、1電気波長の1/1000を超えた当たりから無視しにくい誤差が含まれるようになります。

市販されているアンテナアナライザーに付いているRやXの表示は、コイルやコンデンサをMコネクターに直接接続し、せいぜい10MHz以下の周波数で利用したり、3.5MHz以下の周波数のアンテナの給電部に、短い同軸で直接接続して利用するくらいが、ベターと思われます。 また、例え10MHz以下の周波数でも抵抗とコイルを直列に接続した回路では、周波数を上げていくと、Xは当然上昇しますが、RもXの変化より小さいですが、上昇します。 これは、アナライザーがコイルの高周波抵抗(表皮効果による抵抗)を検出して、本来の抵抗と合計した値を表示している為です。

ブリッジ部分と校正用抵抗またはアンテナまでの距離と、その間の速度係数や特性インピーダンスは機種によってマチマチです。複数のアナライザを使い、同じダミー抵抗やアンテナを測定した場合、ダミー抵抗やアンテナが純抵抗の50Ω以外であった場合、表示されるインピーダンスやR、Xは全て異なってきます。 一致するのは、周波数とSWRだけでしょう。

あるメーカーが「アンテナアナライザー」ではなく、    「SWRアナライザー」とか、「スタンディングウェーブアナライザー」と呼んでいましたが、もしかしたら本質を突いた呼び名かもしれませんね。

補足です。

プロが使うVNA(ベクトル・ネットワーク・アナライザー)などの測定器の場合、同軸ケーブルの長さをキャンセルして被測定回路の正しいインピーダンスを表示できるような機能が付いたのが当たり前です。専門的には基準面の移動を行うと言うそうです。 アマチュア用のアンテナアナライザーでも、この接続ケーブルの影響をキャンセルできる機能が付いたモデルもあります。  ただし、このキャンセル機能を有効にする為に、タワーや屋根の上で、アナライザーの校正を行うというのは、かなり面倒です。 

プロ用、アマチュア用を問わず、同軸ケーブルの片方にアナライザーをつなぎ、アンテナに接続されている方の同軸コネクターを外した後、アンテナの代わりに、50Ωのダミー抵抗、0Ωのダミー抵抗を接続した状態、及びオープン状態で校正動作を行わせます。 校正動作は自動で行なわれますが、アンテナから同軸ケーブルを外して、ダミー抵抗を付けたり外したりは、自分でやらねばなりません。 もし、アンテナの給電部を手の届かないところまで上げてしまっていたら、アンテナを一度降ろすか、高所作業車を借りてくるか考えねばなりません。

この記事の中でダウンロードしたインピーダンス計算エクセルファイルの中に「校正原理」というシートがあります。 このシートには、アナライザーが検出したRiとXiからアンテナのRxとXxを逆算で求める計算式が埋め込まれています。 接続用の同軸ケーブルの長さをキャンセルさせる場合は、この計算で求めたRxやXxをベースに、同軸ケーブルのロスを加味した値をグラフ表示している訳です。  グラフで表示する理由は、Xiのリアクタンスの極性を判定するにはグラフデータが必要だからです。   

例題ではd=0.0565という短い距離が設定されていますが、実際は0.5m以上が必要な場合が一般的です。 また、そこそこの精度を得たいならSF106タイプの同軸ケーブルで長さは3波長くらいが限度です。 5mの長さの3D2Wで校正した場合、300MHzくらいから周波数に対してSWR値が波打ちどこがSWR最少周波数か判りにくくなります。

なお、キャンセル機能が無いモデルでも、この記事に取り上げた技術情報は取説の中で何回も説明されています。  もちろん、OM諸氏により翻訳された日本語バージョンでも説明されています。

理屈は難解ですが、使い始めると手放せないアンテナアナライザの自作はこちら

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2014年11月12日 (水)

アンテナアナライザーと外来電波(夜になるとSWRが上がる)

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

アンテナアナライザーという便利な道具を常用していると、思わぬトラブルを経験します。 7MHzのダイポールを昼間、7050KHzでSWR1.1に調整しておき、夜、再度確認するとSWR1.8くらいまで悪化していました。しかも、かなり指針が揺れます。 暗いのでアンテナの再調整は翌朝行うこととし、翌朝、再度SWRを確認すると1.1になっており問題なしです。 アンテナの状態が晴れと雨では違っても、昼と夜で変化するという話は聞いた事は有りません。

原因は、またも「北京放送」でした。

アンテナアナライザーをアンテナに接続した状態は、回路的に見ると、同調回路のない鉱石ラジオそのものです。強力な電波がアンテナから侵入すると、アナライザーの発振出力と同じくらいかそれよりも大きな信号がインピーダンスやSWR検出用ダイオードに加わります。 この為、SWRやインピーダンスが大きく表示されてしまいます。 特に7MHz帯の北京放送はハムバンドに近いだけでなく、鉱石ラジオがガンガンなるほど強力です。 7MHzに同調したダイポールですから、其処らへんに張ったロングワイヤーなどに比べたら、はるかに大きな信号で受信できるのでしょう。

また、なにも7MHzの北京放送だけではなく、中波放送が1.8MHzのアンテナ調整に邪魔になるとか、FM放送局が144MHzのアンテナに混入し測定不能になるとか、すぐ近くで誰かが電波を送信したとか、アンテナアナライザーの使用を困難にしている現象が世界中で起きているようです。

この問題は、ブリッジ方式のアンテナアナライザーにとって宿命的であり、妨害を与える電波を止めるしか有りません。 しかし、放送局の電波は止められませんので、アナライザー内部の発振器の出力を上げ、検波回路の感度を悪くし、外来電波の影響を少しでも緩和する手段と、妨害電波用のトラップ回路をアナライザーとアンテナの間に入れるくらいの対策案しか有りません。

トラップの場合、FM放送がHFアンテナの調整時邪魔をする場合、効果が有っても、7MHzの北京放送や、1.8MHzの中波放送はトラップを入れただけで、測定不能なほどSWRは異なってしまいます。

一方、発振出力を上げる案は、電波法という法律が前に立ちはだかります。 アンテナアナライザーを送信機として申請し許可をとればいくらでも出力をアップできますが、使用可能な周波数範囲はハムバンドに限定されます。 アンテナアナライザーの最大の強みはハムバンド以外も測定できるという事ですから、発射される電波は許可を要しない著しく微弱な電波の範囲でなければなりません。

日本の電波法では、この許可を要しない電波の電界強度を以下のように定めています。

電波の発射点から3mの距離において

322MHz以下 500μV/m以下

322MHz - 10GHz 35μV/m以下

この限度値はサービスエリアが半径20~30mくらいの無線局を想定して設定されている模様で、例えば、半径1500mくらいの地点でも、明瞭に受信できるような送信設備の場合、あきらかに法令違反になる訳です。 ただしこの規定にかかわらず、測定器としての発振器に定義される装置には後述のごとく出力の規定が有りません。

Aapowertest

そこで、代表的なアンテナアナライザーの出力レベルを調べてみました。調べたのは私ではなくQSTの執筆者です。また、各アナライザーの取説には、その出力レベルを明記してありますが、発振器の出力レベルだったり、アンテナコネクター端子の解放電圧だったり、50Ωで終端した場合だったりしますので、左の等価回路に示すようにスペアナによる50Ω終端時のレベルとして測定されていました。

Aapowerlist

電波法施行規則の第6条で、免許を要しない無線局として、「標準電界発生器、ヘテロダイン周波数計その他の測定用小型発信器」と定義され、この小型発信器の出力についての制限は有りません。 無線局は送信機とアンテナで構成されますので、アンテナアナライザでアンテナの測定をする事自体は違法ではありませんが、すでに行われている無線業務に妨害を与えてはいけません。 空中に放射される電波は、アンテナの形態で大きく変わります。 QRPPを実践されている方なら10mWもあればかなり遠方と交信できる事は当たり前ですから、パワーの大きいアナライザーの場合、テストするアンテナや周波数は十分注意が必要でしょうね。

しかも、アナライザの出力を大きくしたとしても、CAA-500とFG-01の電界強度換算値は18dB程度しかありません。 短波帯のQSBの山谷の差、平均40dBなどに比べたら、ほとんど効果は期待できない状態です。

外来電波によりSWRを正確に測れない場合、許可を受けた送信機とSWR計で測定するのが一番のようです。周波数は許可を受けた範囲に限られますが、出力は北京放送や中波放送に絶対に負けないレベルまで上げる事ができます。

アナライザーの機種が変わったらSWR値が変わったとか、時間や季節でSWRが変わるなどの症状が確認されましたら、外来電波の影響を最初に疑ったほうが解決が速くなることでしょう。

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2014年10月28日 (火)

ATUの自作:LCD交換

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUのエバレーションを実使用状態で継続していますが、デバッグに使っているLCDでトラブルが発生しました。

Atulcd4

このLCDはAQM0802Aという品番で、ベランダに設置したATUの基板に貼り付けてあったのですが、4週間くらいしたら、LCDが表示しなくなりました。I2Cの回路はまともに動いていますが表示が出ません。 DC/DCの出力をチェックすると、6V以上ある電圧が3Vしか有りません。 発振は停止はしていませんが、昇圧しきれないようです。

ベランダから部屋に持ち帰り、テストすると、ちゃんと表示します。電圧が違うのか?コンデンサの容量が違うのか? 色々検討しましたが、原因は判りません。 部屋のなかで正常動作している状態のままで、ベランダに出てみました。すると、数秒もしない内にLCDの表示が消えます。一度消えたLCDを部屋に戻しても表示は復帰しませんが、電源OFF/ONを行うと、表示は戻ります。  

この、部屋でOK、屋外でNGは何度も再現されますので、原因は光しか有りません。ちなみに、ATUを収納した緑色のコンテナBOXに蓋をして、蓋の隙間から暗くなったLCDを見ると、正常に表示しますが、蓋を取り去ると消えてしまいます。 もともと不安定なDC/DCでしたが、LCD表面に光が照射されると、内部状態が変わるのでしょう。

結局、このLCDは取り外し、別のLCDに交換する事になりました。

交換したLCDはI2CインターフェースのACM1602N1という秋月で取り扱っているLCDです。表示が8桁2行から16桁2行に増加しましたので、かねてより気にしていましたCM結合器のDC出力をADで読んだ値も表示させる事にしました。

Atulcdn1_2

左の3ケタ数字がVCの角度データ、上がVC1、下がVC2です。 次の「7」はタップ番号。真ん中の4ケタ数字がCM結合器のDC出力をADで読んだ値です。上がVfwd,下がVref。 右側の上4ケタがSWRを100倍した数値。 下が周波数で単位はKHzです。

  いままでは、出力を大きくするとSWRが悪化していました。 CM結合器のDC電圧をデジタルテスターで測り、これをベースに計算したSWRは1W出力より10W出力が悪くなりますが、10W出力時と40W出力時のSWR値は変わりません。 しかし、ADが変換した数値から計算したSWR値は0.2くらい悪化します。 

原因は、AD変換回路のサンプルホールド回路の初期充電時間かも知れません。 この充電時間を確保する為、ADのチャンネルを選択してから、10マイクロ秒間のウェイトをかけていましたが、試しに、このウェイトを50マイクロ秒に変えてみました。すると、10W出力時と40W出力時のSWRの差は0.07くらいに収まりました。  

また、大きなアナログ信号をAD変換した後、小さなアナログ信号を変換する場合、前回の計測時の電荷が残っている可能性もあります。  そこで、今まで、Vfwdを測定した後にVrefを測定していましたが、Vrefを先に測定し、Vfwdを後に測定するように変更したところ、10Wと40WのSWR値の差はゼロになりました。

1W時と10W時のSWR差は検波に使っている1N60の非直線性によるもので、気にする必要は有りません。

当面は、不具合が発見されるたびに、LCDの表示を変更しながらエバレーションが続きそうです。

このマイコンのソフト開発はマイクロチップが無償で提供しているMPLAB IDEという開発環境と、PICkit3と呼ばれる書き込みアダプターを使い行っていますが、今回使用しているマイコン「16F1939」の場合、最初のイニシャライズ時、マイコンIDの検出を失敗し、かなりの頻度でエラーになります。 

原因が判らないまま、PCを立ち上げ直したり、アプリの立ち上げタイミングとUSB認識のタイミングなどを取って、かろうじて開発環境を維持していました。 最近、このエラー頻度が高くなり困っていましたら、インターネット上で同じような問題で困っていた記事を見つけました。 記事によると、PICkit3から供給する電圧を5Vではなく、少し下げてやればエラーになる確率が減るという情報です。  さっそく、5Vの電圧を4.6Vまで下げてみました。  すると、全くエラーが発生しなくなりました。

その後のATU動作改善はこちらへ続きます。

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2014年9月25日 (木)

バリコン式ATUの実装

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

20mの長さのある同調フィーダーの先に、現用の18メガ用スカイドアと7メガ用垂直DPをつなぎ、シャックの中でテスト運用した自作のATUは快適に動いてくれました。 ただし、20mの同調フィーダーはノイズの受信と不要輻射の面から常用は不可ですので、プリセットMTUを置いてあるベランダにATUを移し、そこまでは同軸で給電する事にしておりました。 

このATUをプリセットMTUの所に移す為に、プリセットMTUをサイズダウンして防水BOXの中に隙間を確保し、ATUを収納できるように改造しました。ATUの動作確認以前の処理事項として、この改造したプリセットMTUが全バンド正常に動作するようになりましたので、ATUの本格稼働に向け動作テストをする段階までこぎつける事ができました。

Atu140926

右下のアルミケースで覆われた箱がATUです。左側の基板はプリセットMTU用のデコーダーで、シャック内のコントローラーからのATUコマンドを中継しています。

このATUの動作テストを行う前に、プリセットMTUの調整も行いましたが、プリセットMTU作り変え にて紹介の通り、ハイパス型Tタイプのアンテナチューナーでは整合しないバンドがかなりあります。 ATUはハイパスTタイプですので、心配しながら、チューニングテストを行うと、3.5、3.8、14,18,24メガが整合しません。 

ATUをリグの近くに置き、アンテナまで20mくらいの同調フィーダーで接続した場合は、全バンドうまくいってましたので、同調フィーダーの長さを調整すると、整合するとは思います。 しかし、現在の同調フィーダーの長さで、せっかくMTUが正常動作している状態ですので、ATUもこの同調フィーダーの長さのままで正常動作させる事にします。 

MTUの整合検討で多くのバンドが整合しない原因は、 MTUのコモンラインの浮遊容量でしたので、ATUを接続する時は、入出力にそれぞれリレーを設け、MTUからGNDを含め完全に分離する事にしました。 その結果、3.5,3.8,18メガ以外は整合するようになりました。

3.5と3.8メガのバンドが整合しない理由は、バリコンの回転が速すぎて、整合ポイントをスキップしてしまうのが原因のようです。 バリコンの回転スピードを超スローにして、数分以上の時間をかけてSWR最少ポイントに追い込んでいくと、このバンドもSWR1.5以下に整合します。 しかし、それでは使い物になりませんから、バリコンが回転中でも5m秒おきにSWRをチェックするようにしました。 これで、従来より10倍くらいの密度でSWRのチェックする事になり、収束するようになりました。

しかし、1分以上経っても整合できない事もしばしば発生します。 これは、バリコン最少容量状態から、小刻みに、VCを回し、SWRが規定以下になるポイント探す時間と、SWRがかなり下がったのに、何らかの原因でSWR20以上の状態に陥る場合です。 対策として、整合の為のサーボ動作を開始するSWRの上限を20から50に修正しました。 

その上で、SWRが10以上ある時は、モーターの駆動時間を従来の2倍にして、SWR10以下になるまでの時間を約半分にしました。 また、整合途中でSWR5以下まで収束したら、その時のVCの角度を記憶させる事にしました。 この後、なんらかの原因でSWRが50を超えても、最初からやり直すのではなく、SWR5以下になったバリコン位置から再スタートさせます。 

また、20秒以上たっても整合しない場合、SWR3以内なら一旦整合したとして停止させ、そこから再度整合をスタートさせると、ほぼ100%の確率でSWR1.5以下に収束します。  

一度整合してしまえば、その時のタップ番号やバリコンの角度を記憶しておりますので、プリセットMTUと同感覚で使用できます。

Atuswadd

ただし、18メガはなかなか整合しません。SWR3くらいまでは比較的簡単に収束しますが、それより、なかなか低くなりません。 原因を確かめる為に、ATUをマニュアルで動かす機能を追加しました。VC1もVC2もキーを押している間だけ、CW,CCW方向に回転できるようにしました。 このマニュアル機能を使い、手動で整合させようとしますが、まだうまくいきません。 このバンドだけは、後日、対策方法を考える事にします。

マニュアル動作が可能なATUの配線図 ATU-VC6.pdfをダウンロード

Mtu_cont1

また、ATUのSWR計がSWR1.4と表示しているのに、シャックの中にあるSWR計はSWR2と表示して、レベルが合いません。  通常はアンテナ直下のSWR計より、リグの近くにあるSWR計の方が良く表示されますが、これは逆の現象です。 

ATUをリグの近くに置き、短い同軸ケーブルで接続すると、このSWRの数値差は出なくなります。 コモンモード電流が悪さをするとこのような現象がでる事は判っていますが、今回も同じ理由なのかは判りません。 今後、使用しながら改善する事にします。

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18メガがなかなか整合しない原因が判りました。コイルのQが高過ぎて、バリコンが非常にクリチカルになり、モータードライブのバリコンでは合わせきれないのが原因のようです。 ギアのバックラッシュを完全に無くすると、この問題は発生しないのでしょうが、それは、無理ですから、別の方法を考える事にします。 

NT-636がクリチカルながらも整合する理由はコイルをショート状態で使っているのが影響しているのかも知れません。ショート状態とは、タップ番号0のタップはいつもGNDに接続してあるという意味です。このような使い方では、コイルのQが下がり、チューナー内のロスが増えます。 NT-636も一度、この0番タップのGNDを外した事がありましたが、高圧が発生し、スパークが起こりますので、また元に戻した経緯があります。 

試に、このATUのコイルの0番タップを常時GNDに接続してみました。すると、18メガがちゃんと整合するのに加え、他のバンドも使用可能な帯域幅が広がりました。 

また、2種類のSWR計の読みが一致しない、もうひとつの原因は、SWR計の調整の仕方そのものに有る事もわかりました。 SWR計はリアクタンスが含まれたとたん誤差が大きくなる事は、SWR計とリアクタンスの記事で紹介しましたが、SWR計の調整のとき、純抵抗のダミーロードだけで、VREFやVFWDのキャンセル調整を行うと、CM結合器のトリーマーの位置がどうしてもブロードになります。 このトリーマーの調整を実際に共振している50Ωのアンテナで行い、2機種ともSWR最良になるようにトリーマーを調整してやると、共振周波数以外では、SWRの表示に差異がでますが、SWR最少となる共振周波数はかなり一致するようになりました。 

しかし、21MHz以上のバンドでは、一致したとはまだ言えません。 そこで、ATUの直近にあるコモンモードチョークをFT240#43のコアの物に交換し、いままで使っていたFT140#43 2個によるチョークはリグの近くにあるSWR計の出力側に移しました。 この結果、SWR最少周波数が完全に一致しないまでも、ふたつのSWR計の指示はかなり近くなりました。 

Mtu141030d

チューナー内のロスはコイルのQが少し下がった関係で、増加したと思われますが、一応全バンド使えるようになりました。 

ところで、このATUはなかなか整合しないような印象を受けたかもしれませんが、それは、このATUを最初に使う時だけで、一度整合してしまえば、以降は2秒以内で実用SWR域にプリセットされます。 ソフトの開発中は、プログラムを書き換える度に、プリセット用のVC角度がイニシャライズされますので、なかなか収束しないように見えるものです。

このマルチバンドアンテナシステムは10MHz以下のローバンドは7MHz用垂直ダイポールに整合させ、14MHz以上のハイバンドは18MHz用スカイドアに整合させますが、間違って垂直ダイポールに14MHz以上のハイバンドを整合させたり、スカイドアに10MHzや7MHzが整合させてしまいます。

当然、このような想定以外の整合では、アンテナの性能は著しく悪くなります。ATUの場合、この間違った状態でも、整合が成功すると、タップ番号やバリコン角度を書き換えてしまいます。 間違いに気づいて、正しいアンテナで整合させようとすると、以前の正しい整合情報が書き換えられており、また一から整合ポイントを探す事になってしまいます。 

そこで、どのアンテナエレメントを選択しているかをATU側でチェックし、測定した周波数と比較して、エレメントが間違っている場合、エラー警告を出し、整合動作を開始しないようにしました。 この措置で、アンテナ切り替えミスにより、せっかくのATUプリセット情報が書き換えられる事がなくなりました。  しかし、時々、このプロテクタープログラムを入れた事を忘れてしまい、エラーになる理由が判らず、悩む事もあります。 慣れるまで大変です。

このATUが真価を発揮するのは雨の日です。 その効果はすでに実証済みです。 しかし、まだまだ、使い勝手はMTUの方が高い状態です。当面はMTUのサブとして使う事になりそうです。

ATUのPICマイコンによるSWR計の指示とシャックの中にある自作のSWR計の指示に差がある事はすでに触れましたが、この本当の原因が判りました。当初、プリセットMTUのBOXまで同軸ケーブルで接続された後、160mバンド用の延長ケーブルに接続できるように、リレーで回路の切り替えをやっていましたが、このリレー回路は普通のワイヤーで立体配線されたインピーダンスは完全無視の回路でした。 

このリレー回路がハイバンドでSWRを悪化させ、その結果、ATU内のSWR計が21MHzで1.02を指示しても、手元のSWR計は1.2と表示してしまう事が判りました。 このリレー回路を廃止し、ATUに同軸ケーブルを直結すると、ふたつのSWR計の指示差は無くなりました。 

同じベランダで長年使っていた2m用のJポールを廃止しましたので、このアンテナ用の同軸ケーブルが余りました。 これを160mに専用で使用する事にすることで、問題は解決です。 

ATUの整合条件はかなり変わり、今度は21MHzが整合しなくなりました。 原因は、回路のQが高くて、真の整合ポイントを通り越し、VC1もVC2も最大容量に収束してしまうものです。 マニュアルモードで真の整合ポイント付近でSWRが1.5くらいに持っていき、そこから自動整合を開始すると、SWR1.1以下に整合します。 

このテストを何度も繰り返している内に、バリコンの最大容量250PFは大きすぎるという結論になりました。ギアのバックラッシュをもっと少なくするか、バリコンの容量を最大150PFくらいまで落とすなどの対応が必要なようです。

たちまちは、これらの対応を実現できませんので、当面は、ソフトを書き換えたら、また最初の整合ポイント探しはマニュアルで行うしかないみたいです。

ATUの接続方法を変更した配線図ATU-VC9.pdfをダウンロード  (LCDの変更も含まれています。)

ATUの自作 : LCD交換 に続く。

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2014年9月21日 (日)

プリセットMTU作り変え

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

自作ATUの製作が進行中なので、このATUを防水BOXに収納する為、個々のMTUのサイズダウンを行い、ほぼ同サイズの新しいコンテナBOXを用意し、全バンドのMTUを作り変える事にしました。

 

Mtu140926

Mtu2_c

コンテナBOXはアステージのNTボックス#22で、従来より横幅が10mmくらい広くなりました。この中に、幅を約8mm切り詰めたMTUを16台収納可能なように配置し、右側の一番下にバリコン式ATUを収納しました。 このATUについては、バリコン式ATUの実装 を参照下さい。

新作したプリセットMTUは従来のMTUをサイズダウンして収納するだけのもので、目新しい細工は考慮しませんでしたが、いざ実装の段階になると、技術的な問題が続出し、従来のMTUを大改造する羽目になってしまいました。

このアンテナシステムをMMANAでシュミレーションした結果は、インピーダンス値は低めに出るものの、共振周波数はかなり合致していました。 しかし、TLWによるアンテナチューナーのシュミレーションと実際のMTUの設定定数はローバンドはともかく、ハイバンドは全く一致していない状況でした。 そこで、このBOXを新作したのを機会にBOX内の電気定数を調べてみる事にしました。 その結果、各MTUをリレーに接続するコモンラインの容量が50PFもある事が判りました。この50PFはTLWのシュミレーション定数のひとつである「Output Stray Capacitance」に相当します。通常デフォルトで10PFと設定されますが、実は10PFではなく50PFであったという事です。そして、この容量を50PFにすると、ハイパスTタイプのチューナーでも整合する定数が得られますが、実際は整合しないというバンドが続出します。 その原因はMTUの入力側の浮遊容50PFの存在です。 この入力側の浮遊容量はTLWでもシュミレーションの対象ではなく、計算上は常に0PFとして扱われます。 従来は、これが原因で整合しないチューナーを同調フィーダーの長さを変えてごまかしてあったという事が判った次第です。 このごまかした長さは2m分でしたが、これが、天候で整合状態をころころ変化させる原因のひとつにもなっていました。 MTUを作り替えたついでに、この不安定となる2mの追加フィーダーを廃止し、アンテナから垂直に引き降ろした約4.5mのみで整合させることにトライしました。

このアンテナの給電点付近にはフロートバランが挿入され、実測したインダクタンスと浮遊容量と前述の50PFを加味してMMANAでシュミレーションしても、共振周波数はほぼ一致しますが、MMANAから算出したインピーダンスを元にシュミレーションしたチューナーの回路では、全く整合できません。従い、シュミレーションを当てにせずに整合回路を模索する事になります。 14メガから28メガまで全バンド、ハイパスTタイプでは、いくらやってもSWR2以下になりません。これらのバンドについては、ハイパスTにこだわらず、整合可能な回路方式を含めて検討する事にしました。

Mtu2_b大きなコイルは使えませんので、インダクタンスが4μH以下のコイル1個、最大容量150PFのバリコン2個で変形したチューナーを空中配線で作り、うまくいきそうになったら、改造したコイルと、手作りポリバリコンに置き換えるという試行錯誤を行った結果、全バンド整合可能になりました。

左は各バンド毎のチューナーの基本回路です。コイルはカット&トライですが14MHz以上のバンドでは、最大でも直径18mmのボビンに21ターンとなっています。

80m,75mバンドは従来通り、ローパス型、パイマッチタイプです。このバンドは容量性リアクタンスがかなり大きいので、ハイパス型を使うと内部ロスが増大します。 このパイマッチ式チューナーのロスは50%くらいです。  送信機側のバリコンは2000PFを超えますので、大半は固定コンデンサで、ポリバリコンは微調整するだけとなります。雨が降ると、この微調整の範囲を超えてしまいます。

40m及び30mバンドは、ハイパス型Tタイプです。これらのバンドでのチューナーロスは5%から15%くらいです。リアクタンスは30mで+300Ωくらいになっています。 調整はかなりクリチカルです。天候により大きく整合状態が変わります。

20mバンドは50Ω以下の抵抗成分と、+200Ωくらいの誘導性リアクタンス成分になります。基本形はローパス型Lタイプですが、出力側でVCによる調整を行っています。 この回路ズバリの挿入ロスのデータはありませんが、5~10%くらいのロスになると思われます。

17m及び15mバンドと10mバンドはキャパシタンスインプット、インダクタンスアウトプットの変形回路です。 抵抗成分が50Ωよりかなり低く、アンテナのリアクタンスが容量性を持っている場合、この回路がバンド幅も広くなり使いやすくなっています。

12mバンドはハイパスTタイプのコイルをVCで可変しています。 200Ω以上の抵抗成分と+600Ωくらいのリアクタンス成分となっておりますが、調整は以外とブロードです。

これらの検討を行う途中で、このMTUを接続する場所にクラニシのNT-636を持って来て、調整すると、どういう訳か、全バンド整合できます。NT-636はハイパス型Tタイプオンリーですが、整合してしまいます。NT-636は整合出来るのに、私の自作のハイパス型TタイプMTUはなぜ整合できないのか調べた結果、その最大の原因は、MTUの入力側に存在する50PFの浮遊容量の有無でした。 NT-636を接続した場合、出力側の50PFは同じように存在しますが、入力側の50PFは存在しません。 この事は、後日、同じハイパスTタイプのATUを実装する時、役立つ事になりました。

現在の最新配線図 MTU-PIC3.pdfをダウンロード

(エンコーダー側のPICkit3接続コネクタの配線に誤りがありました。)

 

製作してから10年以上経った2023年1月、家のメンテの為、ベランダに設置したこのアンテナシステムは全て撤去しました。 撤去は3時間で完了。 

このアンテナを再開する為の検討を始めました。

マルチバンドアンテナシステム2へ続く。

 

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2014年9月17日 (水)

半田鏝(ハンダゴテ)のアース

同じ回路を同じプリント基板上に組み立て、色々と問題点の検討をしているとき、ある特定の人がショッチュウ半導体を壊していました。電源を入れたまま部品交換するな!と言ってあったのですが、それでもFETが壊れた、ICが壊れたとトラブルは発生し続けていました。

Solderiron

原因は、ハンダゴテの先端の半田を溶かす部分を接地した為でした。  感電の危険を防止する為に、日本でも接地端子のある3ピンのコンセントを用意した環境が存在します。そして、ハンダゴテのコテ先もこの接地端子に接続できるようにした、安全性100%とうたわれたハンダゴテも存在します。

しかしながら、3ピンの独立したアース端子が付いたコンセントやテーブルタップを用意しているのは、工場や、プロフェッショナルな作業を行う場所で、一般の家庭や、事務所などでは、2ピンのコンセントがほとんどです。 このような環境では、この手の接地したハンダゴテや機器はかえって感電を招く事になります。 感電には至らないけど、数十ボルトのAC電圧が加わり、トランジスターやICを壊してしまいます。 なぜそうなるのか以下説明します。

世の中にある機器や試作検討中の電子回路を含めて、そのGND側がすべて大地に接地されているのなら、全く問題ありませんが、日本の電気器具は接地を強制しません。 代わりに、商用電源の2本の電線のうち、片方のみが大地に接地されています。 この接地された端子はコンセントの受け口の横幅が少し広くなっていますが、機器についているプラグは極性が有りません。 よって、機器の内部では、ホット側、GND側と言った識別はありません。一般的に、絶縁トランスで絶縁された機器はこのホット、GNDの区別は不要で、2次側と1次側の間は数十メグオームの絶縁抵抗で隔てられており、感電の危険は有りません。

ところが、雷対策や、ノイズ対策で、この1次側と機器のシャーシの間にコンデンサを接続したり、数メグΩの抵抗を入れたりしています。コンデンサは高周波用ですので、50Hzや60Hzの商用電源では無視できるほどのおおきなインピーダンスであり、また抵抗も感電を感じるような電流は流せませんので、無害です。

しかし、高いインピーダンスであるにせよ、そこには大きな電位差が発生します。仮に、ホット側とGND側からシャーシに0.01μFのコンデンサがつながっている場合、シャーシは大地に対して50VのAC電圧を持っている事になります。

実際にどのくらいの電位差があるかは、2台の品種の異なる機器のケース間の電位差をテスターで測ればすぐに判ります。 ごく普通の機器では10Vから20Vくらいの交流電圧が存在します。ところが、工業用の計測器や電源装置は、ほとんどの機器が3線式の電源コードを使い、シャーシは必ず大地に接地するように設計されておりますが、一般家庭や簡易の作業台の場合、アース端子はどこにも接続せずに使っているのが現状です。これらの機器は前述の1次側とシャーシ間に結構小さいインピーダンスをもつコンデンサが接続されている事が多く、例えばDC電源とオシロスコープのGNDどうしを手で触ったら感電したという事もよく発生します。

DC電源のGNDを接地していない場合、GNDの電位は宙に浮いている状態になります。しかし、大抵の電源はそのノイズ対策の為、1次側とシャーシの間にのノイズフィルターという名でコンデンサが接続されています。そこへ、接地されたこて先をもつハンダゴテを当てると、前述の電圧分の電位差が回路素子に加わり、例え通電してなくても、回路素子を壊してしまうという事態になる訳です。 最近のスイッチング電源などは要注意です。

電子回路を検討する場合、ハンダゴテのこて先は完全に絶縁状態にして、回路素子にこて先を当てても電位差が生じないようにします。 ハンダゴテも電源も接地したらいいではないかと言われるかも知れませんが、それは貴方が管理している機器だけの事で、「ちょっとハンダゴテ貸して」と借りた途端、大事な試作回路を壊してしまうのです。

電源プラグが3ピンで機器をGNDへ接続する事が義務付けられている国では、測定器、DC電源を含め、ハンダゴテのGND線(緑と黄色のらせん模様)をニッパで切っていました。 感電のリスクより、検討する回路が壊れるのが怖かったのです。 また、このGNDラインがつながったままの場合、測定系にループが出来て、正確にデータが取れないという問題の対策としてもGNDラインのカットは必要でした。 この国の中にある工場で、問題のあるプリント基板を検討しようとして、ハンダゴテを借り、64ピンのマイコンの足を再ハンダしようとした途端スパークが起こりマイコンが壊れたのは言うまでもありません。結局、ほとんど設備のない場所で64QFPのマイコン交換は丸1日かかってしまいました。

ちゃんと設計された工業用DC電源はGND端子をケースにつなぐか宙に浮かすか選択できるようになっています。実は、宙に浮かして安心していても前述のフィルター名目のコンデンサはつながっています。 また、PCはほとんどスイチング電源ですから、PCのGNDは大抵20Vくらいの電位差がありますので、例え微弱電流しか流れないにしても、耐圧以上の電圧が一瞬加わる事により、半導体を壊してしまうのです。 トランジスターやICを壊して、ロスを発生させる前に、アナログテスターでハンダゴテやDC電源やその他の機器のGND間のAC電圧を測定して置くことですね。そして、AC電圧が小さくなるように各機器のプラグの極性を変える事です。  最近のデジタルテスターは入力インピーダンスが高くて、のきなみ高電圧を表示します。 20KΩ/Vようなアナログテスターの方がこの判定はより正確です。

ハンダごてのこて先への電圧リークは論外です。こて先と接地間で電位差が生じるようなハンダごては、こて先を接地する前に、即廃棄する事をお勧めします。

最近の事例としては、GNDラインが接地されていないPCを、USBケーブルでVNAにつなぎ、VNAのテスト端子をアンテナにつないだら、高価なVNAが壊れたという悲劇が有りました。

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2014年9月 1日 (月)

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

マイコンの開発がほぼ終わり、評価ボードを実用サイズに作り直すところまで来ました。この実用サイズは、現用中のプリセットMTUを含めて収納できる防水ケースに収める事が条件ですから、MTUの作り替えを前提としたサイズにしました。

最終的なサイズは  156x102x118mm となりました。

構造は、二つのL字型シャーシに内部パーツを分割してマウントし、これを四角のBOX状に組み立てるもので、オリジナルのTS-930S用ATUと似たようなサイズになりました。

Atu_comp5

Atu_comp4

上の画像は、バリコン部とCM結合器及びマイコン基板が実装された状態です。 軸の穴径拡大時に失敗し、傾いてしまったギアも、作り直し、傾きが無いものと交換しました。

Atu_comp3_2

Atu_comp6

上はコイルとこのコイルのタップを切り替えるリレーを10個並べたもので、リレーはアルミのLアングルで動かないように固定して有ります。

このふたつのアングルを合体すると以下のようになりました。

Atu_comp2

Atu_comp1

この状態で、動作テストを行い、問題なく動作しましたので、側面のカバーをかぶせて出来上がりです。

JW-CADで組み立て図を書き、その組み立て図から部品図面をおこしますが、組み立て図をコピーして作った部品図面は、間違いはないのですが、寸法のみ拾い、別に図面を書いたものは、穴位置が反対だったり、位置ずれがあったりで、かなりステ穴が増えました。また、板金の曲げ加工はバイスと木の当て板だけで行い、曲げ部分のRを小さくする為、ハンマーでたたくものですから、平面であるべきところが凸凹です。厚さ1mmのアルミ板ですが、この曲げ加工により強度がアップしましたので、みてくれは悪いですが、安心して使えそうです。

Atu_comp0_2

Atu_comp7

マイコン基板はむき出し状態ですが、不安定になるようなら、薄いアルミ板で上からカバーするつもりです。 一番最後の段階で実装する事になるでしょう。

一応、ATUはできました。 これを、現用中のプリセットMTUと平行してテスト運用していますが、どうしても従来のMTUを使う頻度が高くなります。 原因を考察すると、ATUはバンド切り替えの度に、例えTUNE動作は必要なくても、送信というアクションが必要です。バンドの状態はどうかな?とちょっとの間、他のバンドを聞きたくても、チューナーが整合していませんので、7MHzの国内交信は聞こえても、ハイバンドのDX信号は聞こえません。 

一方、プリセットMTUは受信機のバンド切り替えと同時にハンドでカチカチと切り替えるだけですぐに受信できます。このような問題を解決する手段として、最近のモデルは、現在の受信周波数やモードなどを外部へ出力しており、このデータを利用して、ATUも予め決めた調整状態に設定する事ができます。  しかし、残念ながら、私のリグは30年くらい前のリグですから、そんな便利な機能はありません。

そこで、現用のプリセットMTUのバンド切り替え情報のみでATUをプリセット出来るようにしました。もちろん、このプリセット時の送信は一切ありません。プリセットMTUは3.5MHzから28.7MHz(28.7MHz以上は使用していません)までを14バンドに分割しています。ATUの28バンド分割の半分しかなく、バンド全域はダメですが、私が良く使う範囲はSWR1.5以下に収まります。このプログラムを実装しましたので、従来のMTUと同感覚でATUを使用できます。

遠隔操作システムが完成したら、従来のプリセットMTUは不要になるかも知れません。ただし、それを確認できるのは、かなり先の事になりそうです。

バリコン式ATUの実装 に続く。

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2014年8月27日 (水)

バリコン式ATUの自作 7 (遠隔操作)

 <カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

ATUとしての基本機能が完成しましたので、これをベランダに設置し、そこから約20mのケーブルをシャックの中まで引きこみ、シャックの中からこのATUを操作する事になります。 この遠隔操作システムの検討と試作を行いました。

現在の遠隔操作システムは、ベランダに置かれた、17台のプリセットMTUをバンドや使用するアンテナに応じ8本のケーブルで操作していました。すべて、パラレル制御です。

Mtucont0

今回ATUを設置するに当たり、MTUの操作を残したまま、ATUの操作を追加しますので、従来通りパラレル制御を行うなら、さらに6本のケーブルが必要になります。 そこで、RS232Cより長い距離でも通信が行えるようにラインドライバーを設計した上で、制御は1本のシリアルラインで行い、電源を含めて3本のラインで構築する事にします。

また、ATUからの戻り信号として、ATUの状態を示す2個のLED出力をそのままパラレルでコントローラーへ返すことにします。 それでも3本のラインが余りますので、将来、ATU側からSWRなどのデータをシャックに戻す為に、ハード設計だけして予約して置くことにしました。

新規に作成するコントローラー(エンコーダー)も、プリセットMTU制御回路(デコーダー)もATUと同一シリーズでピン数のみ28ピンとなるPIC16F1933で作る事にしました。

Mtuenc0_2

Mtudec0_2

左上がエンコーダー、右がデコーダーです。現在のプリセットMTUのコントロール機能はすべて含まれますが、MTUの数は最大で20台までとしました。また、今まで、ベランダ側で操作できなかった、ローバンド、ハイバンドの切り替えと外部アンテナへの切り替えを可能にしました。また、テストモードをOFFし忘れて、シャックに戻ると、手元のコントローラーから操作不能になり、またベランダまで出なければならないという不便を解消する為、例えテストモード状態でも、シャックから操作があると、自動的にテストモードをOFFにする機能も追加しました。

ATUの制御は4つのスイッチだけで行い、その状態は2個のLEDで確認できますので、このLED出力のみパラレルでシャックにもどします。もちろんATU on/offもベランダ側でも操作できるようにしました。

これらの制御は16pitのシリアル信号で行いますが、現在使用されているのは10bitのみで残りの6bitは将来の予約です。

UARTを使用したシリアル通信は初めてのトライで、理解できるまで何日もトラブリました。最大の問題は多重割込みによりメインループが止まってしまうという問題でした。とりあえず、割込み処理ルーチンの処理時間を極力短くして多重割込みが発生するチャンスを減らすくらいの対策しかできませんでした。 なお、このシステムを操作するのは一人の人間で、通常はATU側とエンコーダー側を同時に操作できません。現在のデバッグはエンコーダーもATUも同じ机の上に有り、多重割込みが発生する操作ができるものです。 実際には問題の発生は無いと考えられます。

また、スタックオーバーフローも発生し、これを回避する為に、関数のネストを減らしたり、ローカル変数をグローバル変数に変えるなど何日もロスする事になってしまいました。

UARTの通信速度は1200ボーに設定しましたが、距離が20mもありますので、通常のラインドライバーではなく、1AクラスのP-MOS FETによる電源ラインの直接スイッチング方式としました。とりあえず、10mAくらいの信号電流でトライしますが、誤動作があるようなら、最大で数100mAも流せる回路にしてあります。 20mのケーブルを使った実験では、問題なく動きました。

Mtu_uart_in

Atupcbback

左上の波形は、20mのケーブルに接続されたデコーダーマイコンのRX入力端子の波形です。波形の角が少し丸みを帯びていますが、大きく崩れることなく、伝送出来ています。

右上の基板はATU回路の裏側です。チップ部品より配線のリード線の方が目立ちます。最初から、全ての回路が決まっていたら、配線経路が最少になるように部品の配置を決めますが、今回のように、ソフトを開発しながら、必要に応じてハードを追加したり、変更したりすると、このようにジャングルになってしまいます。 実用するATUに作り替えるとき、この基板は、このまま使いますので、シールドケースがいるかも知れません。 後日、100W出力による動作テストを行いましたが、MTUもATUも誤動作なく動きました。

Atulinedriver

実使用状態にするには、まず、このATUのサイズ縮小と防水設計をする必要があります。また、現在使用中のMTUコントローラーも改造が必要となり、かなり長い期間QRTせねばなりません。 次のステップは秋のDXシーズンが終わってからになりそうです。 それまでは、机の上に置き、時々デバッグをする事にします。

MTUのエンコーダー、デコーダー及び遠隔操作機能を追加したATUの配線図は以下からダウンロードできます。

シリアルコントロールのプリセットコントローラー配線図MTU-PIC3.pdfをダウンロード

遠隔操作機能付ATUの配線図をダウンロード

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成) に続く

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2014年8月16日 (土)

TS-930 メインダイヤル誤動作(アップしない)

<カテゴリ:TS-930>

突然、メインダイヤルで周波数がアップしなくなりました。どっちに回してもダウンばかり。時々アップしますが、不規則に変化し、全体的にはダウン方向です。 KEMのトランシーバーでも似たような現象がありましたので、メインダイヤルのエンコーダー出力をチェックしました。

Ts930mewave1

デジタル基板に4ピンのコネクター(④のマーキング)で接続されていますので、デジタルオシロをつなぐと、ME1には信号がありますが、ME2はHのままで、パルスが有りません。セットを逆さまにしてこのメインエンコーダーと呼ばれる基板の端子をモニターすると、今度はME2にもパルスが出ていますが、そのパルス幅が非常に狭い状態でした。高速でダイヤルを回転すると、パルスが細くなりさらに高速にするとパルスが出なくなります。

左の画像の上の波形がME1、下の波形がME2です。最初チェックした時は、ME2のパルス波形は有りませんでした。

Ts930nainencorder

このメインエンコーダーの回路図が見つかりませんが、左に基板図を示します。半固定抵抗でフォトトランジスターのしきい値を調整しているようですので、とりあえず、半固定抵抗VR2を回してみました。すると、ME1と同等のパルス幅になり、半固定抵抗を元の角度まで戻してもパルス幅は少しは狭くなりますが、ME1と同等です。 どうやら、この半固定抵抗が接触不良を起こしていたみたいです。ドライバーでグリグリと何度か回転させ、ME1とME2のパルス幅が同じようになるポイントに固定しました。

Ts930mewave2

以上の作業でダイヤル動作は正常状態に戻りました。 左の画像は修正後のME1とME2のパルス波形です。

最初コネクター部分でパルス波形が見えない状態の時は、完全に接触不良を起こしていたようです。その後、セットを分解するとき振動を与えましたので、わずかに接触して不完全ながらパルスは出力するようになったと思われます。

私の場合は、デジタルオシロがありましたので、簡単に原因が判りましたが、同じような現象に遭遇され、オシロが無い場合、この基板についている半固定の元の位置が判るようにマジックなどで印をつけた上でグリグリ回してみて下さい。正常にもどりましたら、半固定の位置を元の位置にもどしておきます。

Ts930mepcb

左の画像はセットを裏返し、フロントパネルが手前にあるように置いた時のメインエンコーダー基板ですが左側の半固定がME1を、右側の半固定がME2のパルス幅を調整します。

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