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2015年6月12日 (金)

アンテナアナライザーの製作(広帯域発振器)

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

疑似両面基板で作ったブリッジ回路とインピーダンス、SWRセンサー回路に市販のアンテナアナライザーを接続し、インピーダンスやSWRに比例したDC電圧を取り出すことを確認できましたので、いよいよ、アナライザーの心臓部とも言える、広帯域発振器の製作にとりかかりました。

基板は、ブリッジ部分と同じように疑似両面基板として、過去検討した事のある回路をベースに、一部電源電圧の変更などの理由から抵抗やコンデンサの値を変えながら組み立て、とりあえず、18MHzから54MHzまでをカバーする発振回路の動作確認を行う事にしました。  この周波数帯がOKなら他のバンドは簡単に実現できると考えたからです。  しかし、それは甘い考えでした。

今回のアナライザーは単3アルカリ乾電池3本による4.5Vの電源をベースに、一度14Vのバリキャップ用電源をDC/DCで作った後、その14VをさらにDC/DCで5Vに変換し、アナログ回路を動作させ、5VからLDOで3.3Vを作り、これでアナライザーの計算部分を担当するPIC24FV32KA302とLCDの表示を担当するPIC24FJ64GA004とLCDそのものの電源をまかないます。 これらの電源をON/OFFするのはPIC12F675に任せます。電源OFFの時は、数秒後にSLEEPモードに入り、消費電流はナノアンペアとなります。

DC/DCからのノイズを比較的簡単に対策する方法を紹介します。 回路部品の配置や接続方法は大抵のDC/DC ICのデータシートに推奨パターンや配線方法が記載されていますので、それを踏襲しますが、その通り実現するには、チップ部品がマストです。その上で、この回路を両面基板の片面のみで構成させ、反対面にあるGNDラインに1点で接続します。 DC/DCのGNDラインのどのポイントを接続するかは、思案のしどころですが、DC/DCの入力も出力もきれいな直流電流ですので、DC/DCのパルス電流が流れていない所を選べば問題有りません。 しかし、GNDパターンは全て同一の導体ですから、どこでも同じではないかと言われるかも知れませんが、電流は常に最短距離を流れようとしますので、回路素子の接続ポイントを最短で結んでいくと、パルス電流が少ない場所を見つける事ができます。

マイコンが3.3Vで動作しますので、マイコンのADに加えることが出来るDC電圧は最大で3.5Vくらいしか許容できません。 ところが都合の良い事に、バッファアンプがLM358ですので、このアンプを5Vで動作させた場合、出力されるアナログの最大電圧が3.5Vくらいしかなく、ちょうど良い電源電圧設定となっています。

Aa50osc2

左の写真はそのようにして組み立てたOSC基板です。左上の一角は電源回路で4.5Vの電池から14V、5V、3.3Vの電圧を作っています。

右下の一角に広帯域発振回路を配置し、とりあえず18-54MHzバンドのみ実装してあります。 そして、この発振器の出力は4ピンのコネクターを経由してブリッジ回路に接続されています。 最初に電源投入したときは、発振動作せず悩みました。 原因は1608の抵抗電極がはげ落ちて抵抗の役目をしていない部分があり、正帰還がかかっていなかったものでした。

なんとか発振するようになりましたが、動作はかなり不安定です。 基板に手を近づけたり、オシロのプローグを当てるだけで、発振の振幅が大きく変わり、時にはブロッキング発振を伴ったり、停止したり、矩形波になったりです。 高周波の正帰還発振回路にDC負帰還をかけて、出力を安定させるのですが、ブロッキング発振を誘発します。 これは、負帰還回路の時定数だけでなく、RFの回り込みによる正帰還ループの変化にも関係します。 最初に実験した回路はセンサー基板とOSC基板をリード線で接続していましたので、機械的に固定されていなく、対策の立てようが無いという状況でした。

そこで、センサー基板と発振基板をピンヘッダーとソケットで固定し、3D構造が変わらないようにする事で、発振回路はかなり安定させました。 ここでの「安定」の意味は、バンド全域できれいに発振している状態ではなく、周波数や出力レベルを変えた時、正常発振やブロッキング発振や、発振停止が決まって起こるという事で、「安定」して、うまく動作しないという意味です。

Aa50osc5_2

Aa50osc6_2

ひび割れたセラミックコンデンサの交換や、ハンダがついていいない端子の修復などを行った結果、18-54MHzがなんとか正常に発振し始めましたので、5-20MHzバンド、1.6-6MHzバンド、130-500KHzバンドを追加しました。  マイコンがまだ接続されていませんので、バンド切り替えは、ロータリースイッチで行えるよう仮配線しました。 選択された各バンドの共振回路を発振回路に接続する為の高周波用PNPトランジスタの選定は重要で、今回はパナソニック製を使いましたが、コレクタ容量が1PF以下のPNPはそれほど多くないので、手配に苦労します。 フェアチャイルドのMMBTH81が最適ですが、これも入手は難しいです。 ただし、ONセミコンが同名のセカンドソースを出していますので、使えるかも知れません。

発振回路に使用しているFETはデュアルゲートである必要はありませんが、UHF帯まで比較的簡単な回路で使えるFETはデュアルゲートのものが選択子として広がります。 この回路ではNXP製のバイアス回路内蔵のFETを使いましたが、バイアス回路が無いので、外付けでバイアス回路を追加する必要がありますが、東芝の3SK293などでも代替え可能です。

周波数確認はオシロの水平目盛を読んで、おおまかな周波数を知るという仮組み立て状態にしておき、 電源ラインに電解コンデンサによるデカップリング回路を追加したり、回路ブロックごとにラインチョークを入れたり、抵抗、コンデンサの値を吟味して、1.6MHz以上はなんとか安定して発振させる事に成功しました。

次は、問題の500KHz以下の発振回路です。 過去、1MHzくらいまでは、発振実績がありましたが、今回、目標とする周波数はLW(ロングウェーブ)です。500KHz以下を発振させるのは、VHFの発振回路より難しく、ブロッキング発振が止まりません。 昔、現役のころ、ヨーロッパ向けのLWラジオを設計した事がありました。 受信周波数は145KHzからですが、局発はそれより455KHz高い、600KHz以上の周波数ですから、あまり苦労せずに出来た記憶があります。 今回はその時の周波数の1/4くらいで、LC発振器よりCR発振器の方が簡単という周波数帯です。 とりあえず、なだめすかして、やっと130KHzくらいまで発振できるようになりました。 ところが、この回路条件では、1.6-4MHz当たりが発振しなくなります。 全バンドうまく発振する為の定数選びをカット&トライする事、丸2日。 アナログ回路は、デジタル回路と違い、誰が何回作ってもうまく動作するとは限らないという所が苦労の種ですね。 このアナログ回路がLWからVHFまで安定に動作する為のカナメはR20とC17及びR23とC18の定数にかかっています。この4つの定数を最適化する事により広帯域発振回路が成功するか否かが決まります。

 

Aa5064mhz_2

Aa50500khz_2

Aa50130khz_2

 上のオシロ画面は、左から64MHz、500KHz,130KHzの発振波形です。 130KHzではかなり歪みがありますが、とりあえず安定して発振させる事ができました。 オシロの波形を見ていると、周波数が高いほど、RF信号の波高値が高くなっています。 これは、オシロのプローグの周波数特性が原因のようです。スペアナでチェックすると130KHzから64MHzまで+/-1dBくらいで収まっていました。 オシロのプローグは秋月から買った100MHz用ローコスト品ですから、こんなもんかと諦めています。  最高周波数は54MHz以上という目標にしましたが、実際には65MHzくらいまで発振します。周波数範囲が不必要に広いと、周波数調整がクリチカルになりますが、とりあえず、現状でおいておきます。 気になるようでしたら周波数調整用可変抵抗器の上下にシリーズに入れた抵抗値を調整できます。

検波に使ったダイオードはRF用ではないので気にしていましたが、50MHz付近までは問題ないようです。 以外と好結果を出すのが1N60ですが、サイズがでかすぎて、ブリッジ回路をうまく組めませんので、今回は、この汎用ダイオードでいく事にします。 

この状態で、インピーダンス検出DC電圧やSWR検出DC電圧をデジタルテスターでチェックすると、なまいきに、インピーダンスやSWRに比例した数値を表示します。 機械式アナログメーターに半固定抵抗をシリーズにつなぎ、50Ωや100Ωのダミー抵抗で校正し、目盛板に目盛を書き込めば、クラニシやコメットのアナライザーと同じくらいの精度で動作をします。 しかし、今回はここで終わりではなく、 すでに試作したLCDアナログメーターに表示させるところまでやります。

アンテナアナライザーの回路図をダウンロード

まだ、マイコンが接続されていませんが、マイコン回路込みの配線図となります。

コントロールマイコンがそこそこ動くようになると、アナログ回路も気になるようになります。 130KHz付近でレベルが変わる問題や、デジタル表示の誤差の問題から、低い周波数での発振波形歪みの改善、ダイオード検波の非直線性の改善など行い、アナログ回路はほぼ完成しました。 ダイオードはRB751SからHSC285に変更しました。

最終的な発振波形は以下の通りです。

Aa5064m_2

Aa507m

Aa50470k

Aa50130k

このアナライザーの周波数範囲は118KHzから546KHzまでと、1.4MHzから64MHzまでとなり、これらを4つのバンドに分割してカバーします。

 

アンテナアナライザーの製作(コントローラー) に続く。

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