2020年2月27日 (木)

HDSDR用ダイレクトコンバージョントランシーバー改訂版

カテゴリ<SDR>

LOのキャリア漏れが経時変化で3日も持たないという問題に遭遇し、一時、諦めていたダイレクトコンバージョントランシーバーでしたが、既存のICミキサーを使い構成したIQミキサーの予備検討で、うまくいきそうな感触をつかみましたので、今までのSoftrockコピー品とは異なる、HDSDR用の直交復調器、および直交変調器を作成し、実用可能なSDR SSBトランシーバーの制作に再トライです。

まず、LOの漏れで失敗したQSE回路は止め、ギルバートセル回路をIC化したダブルバランスモジュレーターNJM2594を2個用意し、これでIQミキサーを構成する事にします。 このミキサーは無調整でキャリア漏れを-40dBくらいに抑える事ができ、マニュアルのバランス調整回路を追加する事により-60dB程度まで実現出来る可能性を秘めています。 問題は、2個のICで構成したIQミキサーが、直交変調器として動作するかどうかですが、これは、回路実装が終わってから、確かめる事にします。

また、チューナーの検討の途中で、90度位相の異なるキャリアの高調波成分を抑えると、受信時のノイズが10dBほど少なくなるという現象がありましたので、SoftrockのQSD回路ではなく、高速アナログSWとフィルタリングしたLOを加える事により、受信S/Nの改善を期待する回路に変更する事にします。

Sdr2_rx

 上の回路図は、S/Nを改善する為に、IQ復調回路を2G66に戻し、キャリアの高調波を少なくする為にシリーズ抵抗によるLPFを追加した回路です。 2G66の入力端子には、数PFの容量がありますので、このCとシリーズのRによりRC LPF が出来ています。

Sdr2_rx_2

Sdr2_demod

左上は、途中までマウント完了した90度位相の異なるIQキャリア発生部分と受信回路です。 このIQ復調回路に加えるキャリア(LO)の波形が右上でかなり高域をカットしました。 そして、この状態で7MHzを受信したのが、下のスペクトルです。

Sdr2_wh

 

Sdr2_rxiqbalance

ノイズレベルが-120dB付近にあります。 この日あまりコンディションが良くなく、TS930のSメーターでも一番強い局がS9くらいでしたので、従来よりかなりS/Nが良くなったのではないかとと期待しています。 このIQ復調回路に、2G66という高速アナログSWを使いましたが、74HC4066でも問題なく動作するはずです。

左のスナップは、これらの回路条件で、HDSDRの受信IQバランスの設定状態です。 Right Delayのレベルが赤色に変わるほど、バランスレベルが狂っていました。 この原因は、ノイズを削減する為に、LO供給回路にLPFを入れ、高調波を小さくしたことにより、I及びQのキャリアのレベルや位相がかなりずれてしまい、それをHDSDRの調整機能でカバーした事によります。 USB信号のリジェクションレベルは-50dBくらいです。 アナログ回路にかなりの誤差が有っても、それをカバー出来るだけの広範囲のバランス調整機能が実装されているのは有難い事です。  このRight Delayのレベルは、その後の再調整にて、赤色が消える状態で、調整可能になっています。

以下、その後の感想です。

100Wのリニアアンプが完成し、総通の許可も降り、いざQSO出来る体制ができると、受信機の性能の悪さが大変気になります。 バンドスコープでS/Nが10dBくらいのLSBを聞いても、R3です。 同じ信号をTS-930で聞くとR5です。 ダイレクトコンバーションのRXは聴感上の了解度ははなはだ悪いというのが実感できます。これを少しでも改善する為には、HDSDRをインストールしたPCにつながったサウンドカードを最低のサンプリングレートに設定する事のようです。  

一方、送信用のIQ変調回路は、NJM2594によるかなりシンプルな回路とします。 その回路図を下に示します。

Sdr2_tx_iqmod_2 ギルバートセルで構成されたNJM2594は、SoftrockのQSE回路程ではないにしろ、通常のAMPより低インピーダンスで動作し、IQ信号の入力インピーダンスは600オームくらいしかなく、その前にあるバッファーのOPアンプは低出力インピーダンスが要求されますので、秋月で手配したAD8532ARをそのまま使います。ただし、SoftlockではIC2個使っていましたが、この回路では1個でOKです。 その代わり、変調回路のICが2個使いになります。

この変調用ICの応用例では、キャリアも信号も1MHz以上のRFとして説明していますので、今回のように、信号が低周波の場合、周辺のコンデンサの容量を低周波用に修正しておく必要があります。 また、Softrockで有った、キャリアの位相を調整する為のトリーマーは付けておりません。 それぞれのICでキャリア漏れを無視できるまで、減衰できたら、位相を合わせてキャンセルさせる必要はないというのが理由です。

このようにして組んだ回路の全体が下の写真になります。

Sdr2_trxcomp_2

Sdr2_trxcompback

この基板を組むのは2回目となりますので、先に部品配置を検討することができ、かなりすっきりした配置となり、かつ、念のため、各ブロックをシールド板で囲みました。さらに、変調回路へのキャリア注入は、LO回路から同軸で結すんでおります。

Sdr2_txiq

Sdr2_lo_leak

左上が変調ICのキャリア入力波形で300mVppくらいあります。 高調波が多いですが、変調後段にはいくつもの7MHz共振回路がありますので、問題になりません。 右上は、この回路の最終段におけるDSB信号のスペクトルです。 信号周波数は8KHzですが、まだ、IQ信号を加えていませんので、USB、LSB両方の信号が出ております。大きな信号のセンターに少し出ている信号がLO漏れです。LO漏れキャンセル回路は無調整ですが、すでに-40dBくらいのキャリア漏れに抑えられていますので、完成状態で調整することにより-50dBくらいは確保できるのではないかと期待が持てます。

ここまでの配線図 SDR2-TRX.pdfをダウンロード

受信のRFアンプにデュアルゲートのFET BF1211WRを使っていますが、この便利なFETは廃番となり、入手が難しいので、東芝の3SK293による回路例も示しておきます。 また、変調回路の+Bラインに6.3V2200uFのデカップリングコンデンサが付いていますが、これはたまたま手持ちが無かったので使っているもので、100uFもあれば十分です。

Sdr2_mount1_2

Sdr2_lo_usb

左上は、IQ変調回路基板を入れ替え完了した状態です。 右上は、NJM2594のキャリア漏れキャンセル回路を調整し、かつ、HDSDR内のIQバランスを調整した状態です。 キャリア漏れは-45dBくらい、USB漏れは-52dBくらいになっています。 この状態で、電源を切り、1日放置した後、再測定してみる事にします。

Sdr2_2w

Sdr2_2sig

左上が15時間くらい経過した、朝のテスト結果です。右上は、同じ出力条件での2信号特性です。 とりあえず、半日くらいは問題ないようです。 この後、ドライヤーで温めてみましたが、大きな変化はありませんでした。

Sdr2_after5days

Sdr2_readjjpg

左上は、5日後のキャリア漏れとUSB漏れです。前回とほとんど変化はなく、期待した通りの状態を維持しております。 右上は、LO漏れを最小にすべくNJM2594に設けた半固定抵抗を微調整したもので、キャリア漏れは-51dBくらいになりました。 このキャリア漏れを再調整した事によりUSBイメージが若干悪くなりましたが、HDSDR側のキャンセル機能でノイズ以下にする事ができます。 また、出力アップ時のスプリアスは、LOとTUNEのOFF SETをゼロにしますので、許容範囲に収まります。

今後さらに確認を継続しますが、何とか使える見込みができましたので、一旦中止した100Wリニアアンプの製作を再開することにします。

Txtrable_r22

この基板のチップコンデンサの電極断線が3か所も発生し、まともに動作させるまで半日かかってしまいました。 また、トランジスタのコレクタの半田不良により、送信ができなくなるトラブルも発生しました。 左の画像で赤丸の部分ですが、写真で見る限り、半田付けされていません。 しかし、機械的には接触しているようで、動作上は、異常はありませんでした。100Wリニアアンプ検討中に、出力が出なくなるという問題に遭遇し、困っていましたが、その原因がこれでした。 回路が熱を帯びると、膨張の為、接触しなくなり、ベースバイアス電流が狂うという症状で問題が現れました。

チップ部品の半田付けは見た目以上に難しいですね。

リニアアンプにつなぐ為、出力のリニアリティをチェックしました。

Sdrout1p5w

Sdrout2w

Sdrout2p5w

Sdrout3w

左から、出力 3Wpep  4Wpep  5Wpep  6Wpepです。4Wpepまでは、リニアリティの悪化は少ないようですが、5Wpepあたりから、見える形で飽和がが始まっており、6Wpepでは、はっきりと飽和が認められます。 100Wのリニアアンプを最適に使うためには、5Wの出力のとき、70Wくらい出るのが理想かも知れません。

100Wリニアアンプと結合したとき、送信状態から受信に切り替わる場合、リニアアンプが受信になるまで、1秒以上の遅れが有りました。 その対策として、フォトカプラーのLED側に抵抗を追加しました。

LED消灯対策済み 7MHz_SDR2.pdfをダウンロード

 

100Wリニアアンプの制作に続く。

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2019年12月14日 (土)

ダイレクトコンバージョン式SDR完成(送信部)

カテゴリ<SDR>

前回までに、各基板を組み立て、動作確認と、ソフトのデバッグも一通り完了しましたので、次はリニアアンプを含めた送信ユニットの動作確認と調整です。

送信用のDC/DCにリニアアンプをつないで、いざ送信状態にすると、電源電圧が1Vくらいまで落ちてしまいます。 無負荷の場合、13Vくらいをキープしていますが、負荷がかかったとたん、電圧が落ちます。 配線ミスかと、電源基板をひっくり返して調べてみましたが、異常は有りません。 困り果て、このDC/DCの仕様書を読み直すと、DC/DCの入力部には390uF以上、出力部には、780uF以上の電解コンデンサを付けろとあります。 今までは0.1uFしか入っていませんでしたので、まず出力端に1800uFを追加しました。 この追加で正常に動きだしましたが、まだ入力部には0.1uFしか入っていません。 手持ちの電解コンデンサでサイズの小さなコンデンサは50V47uFしかなく、やむなくこれのみを追加して様子を見る事にしました。 とりあえずは5W15分間くらいの連続送信でもOKのようです。

修正した配線図 SDR-TRX_POWER2.pdfをダウンロード  

Sdr700hzmod

電源が正常になって、最初に見たのは、キャリア漏れとUSBイメージの漏れです。

LOとTUNEのOffsetを8KHzとしてトライします。

左のスペクトルは700Hzの信号で変調した時のスプリアスです。 キャリア漏れ調整用のVRを多回転タイプに変更したのが効いて、-47dBくらいに苦労せずに落とす事ができました。 VRの調整が楽になったので、逆に60Pのトリーマーの調整がクリチカルに感じられます。

USBのイメージ信号も、-53dBくらいまで落とせました。   ここは、もう少し根気を入れて調整すると-60dBも可能かも知れません。

この状態でOffset周波数をゼロとして、音声をTS930でモニターして見ました。 音質的には、かなり低音が伸びた音ですが、歪感はほとんど有りません。 歪感が無い為、かなり柔らかい音質になっており、逆に了解度を落としているような気がします。 ここは実際にON AIRしたとき、意見を聞き、MICの周波数特性を調整する事にします。

そのoffset 0 のスプリアスデータが以下の4枚です。 測定に際し、ATTが入っていますので、絶対レベルは無視して下さい。

Sdr_200kspan

Sdr_1mspan 

Sdr_10mspan

Sdr_50mspan

左上が、スパン200KHz、右上がスパン1MHz、左下がスパン10MHz、右下がスパン50MHzです。余計なスプリアスは皆無で、第2高調波の14MHzも-58dB以下、3次以降はノイズレベルに収まっています。

電源トランスと整流回路は、2A負荷時のDC電圧が、24Vくらいありますので、ファイナルとそのドライバーの電源のみを、レギュレーションを確保できる18Vまで上げました。 さらに、ファイナルのトランスの2次側ワイヤーをAWG24からAWG18に変更しました。 その状態でも出力は7Wくらいしかでませんが、アイドル電流を1.7Aまで増やすと12Wの出力がでます。 しかし、アイドル電流1.7Aは多すぎます。 ここまでアイドル電流を上げる必要があるのは、プッシュプル用のIRFI510のゲート電圧がバラツキ、両方同じバイアス電圧では、どちらかのFETにまともにアイドル電流が流れていないことになります。

この対策の為、ゲートバイアス調整回路を独立させ、FETのバラツキに合わせて、個別に調整出来るように回路変更しました。

Sdr_pamp2

上が、その変更後のパワーアンプです。バイアス調整用半固定を2個にし、1石当たり400mA、2石で800mA流れる様にしたとき、出力10Wとなりました。

TSSへ申請し、途中、IRFI510の仕様書を送れというコメントが付きましたが、1週間で認定を受ける事が出来ました。 そして、さらに1週間後に総通での審査が終了し、この増設は承認されました。

これで、電波として発射できる様になりましたので、ON AIRにトライする事にします。 

12月の午後7時ごろ、珍しく6エリアの局が1局だけ聞こえますので、試しにコールしてみました。 1回のコールで捕っていただき、以外と簡単に1st QSOが成功しました。 ただし、問題も発覚。 7200KHz以上の放送電波が混信します。 どういう理屈で混信するのか判りませんが、LOの周波数付近だけで混信し、offsetを設けた場合、混信しません。 どういうメカニズムで混信が起こるのか今後の課題となりました。

また、チューニングの為、周波数を変更する度にミューティングがかかる問題ですが、周波数可変のステップを1KHzにして、我慢する事にしました。 最近のリグの周波数がDDS制御となり、7MHzの場合、ほとんどの局がキャリア周波数をKHz単位で設定し、交信していますので、1KHzスパンの可変でも問題ないようです。 もちろんスパンを100Hzに切り替える事ができますので、SSBの場合、ほぼ全ての周波数で運用は可能です。

ただ、ワッチだけしている時の選局操作性は良く有りませんので、この場合は、LOとTUNEのシンクロを解除して、PC側のバンドスコープを見ながら、マウスで選局する事にしています。

10Wリニアアンプ 最新配線図 SDR-TRX_RF_POWER2.pdfをダウンロード

電源供給回路に有った、FETによるスイッチング回路は廃止しました。送信ON時の電源はDC/DCを直接スタンバイ信号で制御する事にしましたので、不要になった為です。

ファイナルのFETのゲートバイアス用に追加したR1,R2の抵抗は、手持ちの関係で2.4KΩにしたもので、ここは、1kΩから10KΩくらいの適当な抵抗でもOKと思います。

ドライバー段の直流動作ポイントが最適になるように、ベース抵抗を半固定抵抗に変えてあります。

Sdr_trx_comp

TSSの認定時に提出したブロックダイアグラムを添付します。

5_sdr_trx_block.pdfをダウンロード

このブロック図の中で、サウンドカードとして囲まれたブロックは、実際にHDSDRが、このようになっているのかは確かめていません。 サウンドカードにアナログのマイク入力を加えると、サウンドカードの出力から約0.3秒遅れて、ベースバンドのI信号とQ信号が出てくる事実を元に、原理的に実現できるブロックを示したもので、ここは、入力と出力の関係が合っておれば、どんなブロック図でもOKと考え提出したものです。 TSSも総通もこれで承認していただきました。

LOとTUNEのOff set周波数がゼロになった場合の2信号特性を比較しました。

Os825

Os025

上はUSB漏れが-25dBのバランス調整不完全状態での出力波形ですが、左がOffset 8KHz、右が0KHzです。 Offset ゼロの場合、かなり歪んでいます。

Os850

Os050

上は、USB漏れが-50dB以上になるようにIQバランスを調整した状態で、左が、Offset 8KHz、右がOffset 0KHzです。 右の波形は左より歪んでいますが、USB漏れ-25dBより、かなりマシな波形をしております。

Iqreadj

Iqreadj_os0

上のスペクトルは、左が、Offset 8KHzでUSB漏れを-50dB以上に調整した場合、右は同じUSB漏れで、Offsetを0KHzとした場合です。 左側に有った-43dBくらいのスプリアスは右側では、完全に消えています。 これらの結果から、SSBの変調音に歪が生じますが、ゼロオフセットで運用した方が良いという結論です。

この様な結論になる条件として、IQバランスやキャリア漏れが重要になりますが、アナログ回路の宿命として、バンドを変えると、いずれも、調整をやり直さなければなりません。 アナログ式のダイレクトコンバージョントランシーバーに、マルチバンド対応を要求するのは、無理がありそうです。 

3rd QSOも成功しましたが、出力10Wで、昨今のコンディションでは、安定したQSOは望めませんので、このトランシーバーの後に追加するリニアアンプを作る事にします。 

リニアアンプを作り始め、1月下旬には、このSDRトランシーバーを接続して、動作テストするところまで来ました。 ところが、前回の調整から、約3週間過ぎてみると、キャリア漏れが-20dBくらいまで悪化していました。 経時変化がかなり大きく、ここで、再度、キャリア漏れを最小に調整すると、IQバランスがくずれますので、IQバランスも再調整が必要となります。 最大のドリフト要因は、DCバイアスのずれで、半固定抵抗を再調整しなければなりません。 また、トリーマーも半固定VRほどでは無いにしろ、再調整が必要です。 結局、このトランシーバーは、使う前に必ず、LO漏れとIQバランスを再調整しても、3日も経つとLO漏れが-25dB程度までドリフトしてしまい、安心しては使えないものであることがわかりました。 リニアアンプも半分はできましたが、100Wで送り出すほどのSSB信号の完成度はなく、リニアの制作は中止しました。 その代わり、継時変化の少ない直交変調器に関する情報を探す事にします。

1か月近く調査、検討した結果、LO漏れを抑えられる回路の可能性がみつかりました。 

HDSDR用ダイレクトコンバージョントランシーバー改訂版 へ続く。

 

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2019年11月17日 (日)

ダイレクトコンバージョンSDR(組み立て)

カテゴリ<SDR>

DDS VFOを含め、主要な各ブロックができましたので、これを、使用可能なトランシーバーにまとめる作業です。 ケースは、ヤフオクで落札したパナソニックの周波数カウンターで、その中身を取り去り、新にSDRのトランシーバーを組み込みます。 

まずは、ケースを採寸し、JWCADで図面化し、改造内容や、新に作る部材を検討します。

Sdrtrx_frontjw 元が周波数カウンターでしたので、周波数を表示するLEDが8個並んだ表示部がありました。 ここにLCDの窓が収まるようにデザインを決め、右端の入力端子エリアはスピーカーを取り付ける為、穴をいっぱい開け、付属していたレベルメーターは、目盛板を書き換えて、電源の電流計に変更します。

今回は電源を内臓させます。 受信用は3端子レギュレーターによる12V、送信側はDC/DCコンバーターによる14Vとして、新規に作りました。 基板はエッチングではなく、アクリルカッターで銅箔を切り出した手作りです。

Sdrtrx_power_pcb_back

Sdrtrx_power_pcb_top

結構高密度ですが、50mm x 144mmの基板に収まりました。

パワーアンプ部は、ちょうど、アルミの仕切り板がありましたので、その板をシールド板として、LPFやアンテナリレーを組み込みました。 アンプはオープン状態ですが、回り込み等が発生するようなら、シールドを考える事にします。

Sdr_trx_poweramp

一応、全部のユニットをまとめたものが下のショットで、送信用のサウンドカードやUSBハブも内臓させます。

 

Sdrtrx_top0

Sdrtrx_front

Sdr_40m_trx2

パネルも、プリンターで印刷したクラフト紙を張り付けて、なんとかサマになりました。 

各ユニットの結線を行うに際し、一部コネクターの変更を実施し、以下の回路図のごとく修正しました。

直交変調回路 SDR-TRX5.pdfをダウンロード

DDS VFO SDR-TRX_VFO1.pdfをダウンロード

電源 & スピーカーアンプ SDR-TRX_POWER1.pdfをダウンロード

この電源は、送信用DC/DCが動作せず、次の記事で回路変更を実施しました。

リニアアンプ SDR-TRX_RF_POWER1.pdfをダウンロード

Usb_c_x

とりあえず、受信部の動作確認ができました。 DDS VFO側からHDSDR側のTUNEやLO周波数を可変できるのですが、周波数を可変すると、一瞬ミューティングがかかり、今どの周波数を可変しているのか判らなくなります。 通常のトランシーバーのように、SSBの音調が連続的に変化して、ゼロインできる感覚が有りません。 慣れたらOKなのか、しばらく様子を見る事にします。  配線が入り乱れていましたので、線処理をしていたところ、FT234XにマウントされているUSBソケットが銅箔ごとはぎ取られてしまいました。 SMT部品は、こういう機械的な強度を全く考慮していなく、気を付けないと、あっと言う間に壊れてしまいます。 やっとの事で、組み立てを完して、さあ、これから、送信機能を実用レベルになるように調整しようと、考えていましたが、ガックリです。 ソケットを元の状態に戻すのは不可能でしたので、USBコネクターの各端子にUSBケーブルを直付けする事にしました。 端子間ピッチが0.5mmですので、そこにケーブルをハンダ付するのは、大変で、10倍ルーぺで何度も確認しながら約2時間の作業で、なんとか動作するようになりました。 

Trx_vr1_2

LO漏れをキャンセルする半固定抵抗はクリチカル過ぎて、なかなか最適値に調整する事が出来ませんでしたので、同じ5KΩの多回転タイプに変更しました。 これで、キャリア漏れを最少にする為の調整が楽になる事を期待したいと思います。

トランシーバー化するに当たり、追加したRIT機能や、10MHzを送信モードにして10MHz標準電波でゼロビートを取り、DDSの発振周波数を校正する機能も追加しました。 もちろん、校正したデータはEEPROMに記憶されます。 バグがあるかも知れませんが、とりあえずはソフトも完成です。

7MHz_TRX_for_HDSDR-1.cをダウンロード

Offset周波数がゼロ以外のとき、送信から受信に切り替えると、HDSDRの周波数が変わってしまうというバグが見つかり、上のファイルは修正済みです。

使っているPCが8年前のモデルで、スイッチON後、なかなかアプリが動作する状態になりません。特に、OSの更新が行われる度に遅くなるような気がします。 電源ONしてからHDSDRが動作するようになるまで5分かかっていました。 そこで、年末ぎりぎりでしたが、PCをwindows  10に変更しましたので、快適に操作できるようになりました。 ロータリーエンコーダーのチャタリングにより、周波数可変が数ステップ飛ぶというバグがありましたので、対策を実施しました。 対策と言っても、エンコーダーからの割り込みが有り、処理を完了した後、2ミリ秒間次の割り込みを禁止したものですが、問題なく動作しています。 PCをWindows 10に変えたと同時にMPLABX IDEやXC8,XC16も最新バージョンをインストールしました。おかげで、トラブルは全くなしです。

Handasuitori_ng電源基板を組み立てる時、ハンダのタッチ部分を修復する為に、ハンダ吸い取り編線を部品箱から探しだし、いざ使おうとすると、フラックスが全くしみこんでいない、ただの編線でした。 2個買ったのに、2個とも同じです。 どこから買ったのか忘れましたが、多分、何に使うか判らない業者が、コピー品を作り、安く売り込んだのでしょうが、それを、売っている販売会社も使い方をしらないのでしょうね。 仕方がないので、フラックスのビンの中に編線を押し込み、フラックスをしみこませた後、半日、日光で乾燥させて自作しました。

 

さあ、次はいよいよ、送信部の調整です。 ダイレクトコンバージョン式SDR完成(送信部)へ続く。

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2019年10月 6日 (日)

SDR用LO(ローカルオシレーター) Si5351A

カテゴリ<SDR> [Si5351A VFO]

SDR用のリニアアンプも出来ましたので、次は、このSDR専用のDDS VFOの作成です。 DDSは、Si5351Aを使います。 これを制御するマイコンは、手持ちしていたPIC18F14K50という8bit品です。 

配線図 7MHzDDSi5351-0.pdfをダウンロード

HDSDRを制御する必要から、RS232Cのインターフェース付で、CATコントロールが出来るようにハードを構成しますが、まずは、DDSの部分だけの開発になります。

Si51351_pwb 左が、主要部品を実装した基板です。 使用したLCDが5V品でしたので、DDSやマイコンのVdd 3.3Vとマッチしません。 そこで、3.3V/5Vの変換ICを入れてあります。 その為、変換基板が大きく、かなりの面積をこれが占有してしまいました。

Si5351Aは、RSから5個ほど調達して有ったので、秋月からMSOP 10Pの変換基板と25MHzのクリスタルのみ購入し、マウントにトライしましたが、クリスタルがあまりにも小さくて、ハンダ付け作業が、まともにできません。 作業中にピンセットではさみそこない、どこかへ飛んで行ったりし、最初から秋月で販売している基板マウント済みのユニットを買うべきだったと反省しています。

しかし、バラで買ってしまったものを、そのまま廃棄する訳にもいかず、以下の対策でなんとかDDSが動作するようになりました。

Muntxtal

Si51351_xtal

厚みのある両面テープを小さく切ってクリスタルを基板に貼り付け動かないようにしておき、極細の銅線で、右の写真のように配線しました。 この状態にするまで2時間くらいかかっています。 動作確認は通電状態で、クリスタルが発振しているかをオシロで確かめました。

このDDS用のソースプログラムはこちらからいただきました。 PICマイコンの品種が違いますので、レジスターの設定は異なりますが、それ以外は、無修整で動いています。 (Very TKS)

使用しています、Si5351Aのクリスタル周波数が正確に25MHzでは有りませんので、そこは、実際に発振した周波数に補正します。 周波数設定を7100000Hzにして、Si5351Aから実際に出力された周波数は7099KHz台でしたので、この7099K台の数値を7100000で割り算した係数を25MHzの数値に掛け算して、プログラムの中で定義したDDS周波数は24999395Hzとなりました。 ここでもTCXOの周波数カウターは、大いに役立ちます。

周波数カウンターが無い時のDDSの校正方法はこちらで紹介していますので、参考にしてください。 この記事の中で④のLO2の項目は無視してください。

Si51351_7mhz 右がDDSの指定周波数、左が、SDRのLO用に4倍した周波数で、5Hzの誤差となっています。 見ての通り、周波数カウンターに、白い雲が表示されるようになり、その面積が次第に拡大しています。 同時にコントラストも薄くなってきましたので、この周波数カウンター用LCDは、またも交換する羽目になりました。 aitendoで買った安いLCDは、これで2個続けてNGとなりました。

久しぶりにXC8を使う為に、最新バージョン2.1をインストールしました。 ところが、割り込みの記述でエラーが出て、1時立ち往生しましたが、インターネットで情報を探し出し、なんとか切り抜ける事はできました。

PCにターミナルソフトをインストールして、このVFOとPC間をRS232CタイプのCOMポート経由で通信するPICのソフトを、XC8を使い開発始めましたが、PIC18用の専用ライブラリは、最近のXC8では機能しなくなり、USART機能を一から構築する事になりました。 受信が出来るようになったけど、送信ができないと、1週間以上悩んだあげく判った事は、ADM3202の送信入力ピンがGNDにショートしていた事によります。 使用したSUB9pin用変換基板の配線誤りでした。

VFOとPC間の通信が出来るようになりましたので、いよいよVFOとHDSDRとの通信です。

Cattohdsdr

上の説明はHDSDRの「CAT to HDSDR」のダイアログに表示されるCAT通信に関する説明です。 CATフル対応ではないですが、VFO側から周波数と送信受信の切り替え、それにモードの変更をKENWOODのCATプロトコルで制御できるという説明です。 KENWOODのCATコマンド体系は公開されていますので、そのプロトコルで通信が出来るようにPICのソフトを組みますと、VFO側から、周波数や送受信の切り替えが出来るようになりました。 ここまで実現するのに、2週間くらいかかっています。

 

VFO側から操作して、HDSDRを使った送信機能をいじりまわした結果、LO周波数とTUNE周波数に一定のオフセット周波数を持たせたまま周波数コントロールが出来ること。 オフセット周波数をマニュアルで設定できる事もわかりました。 以下HDSDR側の設定です。

Pttcatonly

まず、左の設定で、PTTの操作をCAT onlyに設定し、CTSやDCD端子を使ったPTT操作は中止しました。 この設定により、送受信の切り替えは、VFO側からと、HDSDR側からいずれも可能になります。

Selectlooffset

Setlooffset

Optionsの中の「Misc Options」の中に「Tune fixed to "LO<->Tune Offset"」にチェックマークをつけ、「set LO<->Turn Offset」を開くと、上のようなダイアログが現れますので、そこにオフセット周波数をHz単位で書き込みます。 この数値は+/-表記ができ、上の例ではLOに対してTUNE周波数が10KHz高くなる事を意味します。

今回はDDE to HDSDRの機能は使いませんが、間違ってこの機能の設定を行った場合、後で、設定を取り消しても、取り消しが出来ません。 送信と受信を切り替える都度、DDEが設定されていない、もしくはターゲットが接続されていないなどのコーションが出て、このコーションのダイアログを削除しないと、送受信が切り替わらなくなります。 この状態に陥った場合、工場出荷状態にもどすしか方法が有りません。

Dde2hdsdr_2

Reset_hdsdr_2

工場出荷状態に戻すには、Misc Optionsの中のreset to factory settingsをクリックします。

HDSDRの説明ではLOとTUNEの周波数は、10KHzのオフセット周波数でデフォルト設定されていますが、直交変調回路の検討のなかで問題にしたように、日本国内でのスプリアス規制に合致しなくなる可能性がありますので、8KHz以下のオフセット周波数に留めるべきでしょう。

今回のトランシーバーはAMもCWもモードとして設定しないので、オフセット周波数0でも問題は起こらないと考えています。 この条件は、トランシーバーとして完成した時点で再検討する事にします。

Si53531_vfo

上が、いままでの回路全体です。 トランシーバーを構成する上で、HDSDR側だけオフセット周波数を設定しても、実用にはなりません。 受信、送信周波数はHDSDRも、VFO側も、このTUNE周波数になりますが、ローカルオシレーターLOの周波数はVFOが表示する周波数よりOffset分だけ低い周波数でなければなりませんので、VFO側の表示周波数とSi53531Aの周波数の間にもOffset周波数を加味した周波数設定が必要です。 要するに、VFOの表示周波数と実際に発生するDDSの周波数は異なるという事です。

Dispoffset

これらを網羅したPICのソフトができました。   左は、そのオフセット周波数をKHz単位で表示し、かつ、ロータリーエンコーダーで +10KHzから -10KHzまで可変できます。 もちろん、この数値はHDSDRで設定した数値とは連動しませんので、かならず、手動でVFO側とHDSDR側のオフセット周波数は合わせて置く必要があります。 このような面倒さはありますが、一応単体では、理屈通り動作しております。 これから、今までに作成した各ユニットをケースの中に収めて、SSBトランシーバーにまとめる事にします。

ここまでのPICソフト Si5351A_VFO.cをダウンロード

以上で一通りの機能は出来ましたが、これをトランシーバーとしてまとめるには、機能や使い勝ってが十分ではありません。 周波数表示もHDSDRの画面ではなく、このVFO側がメインとなりますので、8文字しか表示できないLCDでは役不足です。 LCDを16文字2行のタイプに交換します。 今秋月で扱っているブルーバックのLCDの中で、8文字2行より16文字2行の方が安く売られていますので、このLCDと、USBシリアル変換ユニットを手配し、232Cの通信回路を含めてやり代える事にしました。

変更した配線図 SDR-7MHz-TRX_VFO-0.pdfをダウンロード

従来の回路からの変更は、232Cの変換アダプタをFT234Xに変更した事、RIT及びそのクリアーキーを追加した事です。 LCDは回路図上の変更はありません。 また、RIT機能などを追加する為に、Key入力が必要になりますが、すでにi/oは満杯ですので、offsetキーと合わせて、AD変換によるキーセレクトに変更しました。

そして、これに対応するソフトは、OFFset周波数とTUNE周波数をEEPROMにセーブする機能と、校正用に10MHzを発振できるようにしました。  ただし、校正機能はまだ実装していません。

7MHz_TRX_for_HDSDR-0.cをダウンロード

7mhxtrxvfo

Sdrtrxcase

これらのユニットを一つのトランシーバーとしてまとめる為に用意したケースが左の写真です。 もともとは、Panasonicの周波数カウンターのジャンク品です。 中身は、すでに燃えない粗大ゴミで廃棄してあります。 ちゃんとまとめるには、少し時間がかかりそうです。 紹介出来る時期になりましたら、ブログを更新する事にします。

ダイレクトコンバージョンSDR(組み立て) へ続く。

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2019年9月29日 (日)

SDR用 7MHz QRPリニアアンプの製作

カテゴリ<SDR>

SDR用の直交変調回路が動き始めましたので、次は、これを1W以上に増幅するリニアアンプの作成です。 3Wくらいは狙いたいところですね。

以前、7MHz AM送信機用、E級アンプを作っていますので、これをベースにAB級アンプを作る事にします。 使っている終段のコアはCMFという型番のパッチンコアです。 この1次側は銅板を丸めてパイプ状にしてありますので、巻き数は0.5Tが2組となります。 大きなパワーは狙いませんので、2次側は1ターンのAWG24 リード線です。

出力回路はLC直列共振とし、トリーマーで最大パワーに合わせます。

5wpa 2SC2712で軽く増幅した後、マッチング用トランスを経由して、終段のIRFI510プッシュプル回路をドライブします。 T2のトランスはTS-930のドライバー入力用の#43タイプのメガネコアを流用しています。 T1とT2の間にある0.84uHのコイルはインピーダンス整合用で次段の入力SWRを1.5以下に押さえます。 構造もAM用E級アンプと同等ですが、動作がAB級なので、アイドリング電流の温度補償の為、シリコンダイオードをFETと共締めし、安定を図っています。 ただし、少し効きすぎの傾向がありますが、30分くらいの動作で異常は有りませんでしたので、そのままです。

Sdrpafinal

Sdrpacomp

左上が、FET PPの終段部分です。 FETをビス止めする時、銅板に丸めこんだシリコンダイオードを一緒に止めてあります。もちろん、シリコンダイオードと銅板の間には、シリコングリスを詰めてあります。 右上が、Q3のドライバーや電源廻りの回路を実装した完成状態です。

Sdrpa5wout_2

このリニアアンプの入力レベルは約20mWです。 出力は目標を大きく上回り5.1Wくらい出ています。 完成したあかつきには、50Wくらいのリニアアンプをつなぎたいので、ちょうど良い出力となりました。

無信号時の終段アイドリング電流は2石合計で600mAに調整してあります。 左の5.1W出力時の全電流は1.2Aくらいです。

いくらAB級プッシュプル回路と言えども、高調波対策は必要です。 このアンプの出力に接続する7MHz LPFを作ります。 回路は以前7MHzのAM送信機用に作った回路図及び構造をコピーします。

Sdr_lpf_schema

710m_lpf_2

710m_lpf_swr

上の写真が今回作成した7MHz用LPFです。 今回はブリキと銅板で作成し、ガラスエポキシ両面基板を補強用に使っています。 

自作LCメーターで測定したコイルのインダクタンスは、1.07uH, 1.32uH, 1.14uHでしたが、実装した後、コイルのピッチを調整して、7.059MHzでのSWRが、最低の1.16になる状態で、コイルに瞬間接着剤を塗布して動かないようにしてあります。

11MHzまでのSWRを自作アンテナアナライザ-で測定したのが、左のグラフで、一応10MHzまでは使える状態に調整しております。

直交復調、変調回路と、リニアアンプが出来ましたので、次は、AD9833で作っているLO(ローカルオシレーター)を、Si5351のDDSに変更し、このVFOからHDSDRの周波数と送受信切り替えをコントロールできるようにします。

SDR用LO(ローカルオシレーター) Si5351A  へ続く。

このアンプは最終的に、出力10Wになるよう回路変更を行いました。

 

SSBジェネレーターを自作したトランシーバー用の10Wリニアアンプの記事はこちらに有ります。

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2019年8月31日 (土)

ダイレクトコンバージョン式SDR(直交変調回路)

カテゴリ<SDR>

HDSDRの送信機能が動作するようになりましたので、つぎは、直交変調回路の作成です。 HDSDRで処理したI,Q信号はサウンドカードのLINE OUT端子から出力されますので、この信号と、7MHzのキャリアをMIXして、いきなり7MHz帯のLSB信号を作り出します。

と、軽く考えていましたが、調べていくほど、直交変調回路というのは、以外と難しい技術のようで、全てデジタルで処理して、早々と中間周波数を得た方が完成度は高くなるとい言う事だけは判りました。 しかし、テーマがダイレクトコンバージョンですから、先人のノウハウを学習しながら製作を進めて行く事にします。

手本にしております、Softrockは、N7VEのTayloeサンプリングミキサーをベースとしたQSEという回路構成で、この直交変調を実現していますが、その回路に使用されている抵抗は全て1%誤差のものです。 私が現在ストックしているのは、全て5%誤差の抵抗であり、1%誤差品なら、必要品種を全て新たに手配する必要があります。しかし、そのMOQ(最少オーダー数量)の為に、かなりの出費(1万円くらい)が必要です。 やむなく、私の回路は全て手持ちの5%誤差で進める事にしました。

デジタルの計算と等価になるようにアナログ回路を組むのは、かなり困難な状況なので、せめて、回路構成や使用するICは可能な限りSoftrockに合わせるということで、2G66によるスイッチング回路はオリジナルと同じく、FST3253に変更し、74LS08によるおかしな7MHzの波形は74HC74の出力波形がそのままスイッチング回路に加わるように変更します。 これは、いままでの回路を全てやり代える事を意味し、受信回路からやり直しです。

 下の回路がアナログSW 2G66をFST3253に置き換えた、チューナーです。 

Sdr_trx1_tuner_2

 チューナー部分のみ配線完了したので、受信テストをしてみました。

Fst3253qed_2

この直交復調器は、単なるスイッチングではなく、QSDと言われる回路構成で実現出来ており、HDSDR内にあるレベルと位相の補正機能をRESETした状態でも、イメージ(ミラー信号)がほとんど見えない状態です。 HDSDR内蔵の受信用IQバランス調整を根気良く行うと、USBイメージを-50dB以下に抑え込むことができます。 ここまで調整すると、サイドバンドスプラッタをまき散らしている局は簡単に判ります。 自分が送信するときは気を付けないといけません。

Sdrtrx1top

Sdrtrx1bk

左上が直交変調回路まで実装した部品挿入面、右上は、そのチップ装着面です。 74HC74は赤色の変換基板に載せていますが、載せる前に2回もICを交換しました。原因は、ICの足を折り曲げて、2.54ピッチの基板に直付けしたのですが、折り曲げのストレスで、足が折れてしまい、やや大きすぎますが、これしか変換基板が無かったので、やむなくこの状態での実装となりました。 直交変調回路はSoftrockのQSE回路を実装しています。

とりあえず、受信は快適に動いていますので、いよいよ送信モードの検討に入ります。 いくつかの配線ミスや端子間ショートがあり、7MHzのキャリアがQSEに供給されない状態を解消し、動作確認するまで、数時間かかりましたが、なんとか、LSBの信号をTS-930にて聞く事ができるようになりました。 その状態のHDSDRのショットが下です。

Sdr_tx_lsb

MICボリュームは半分よりやや下、Outputは75%くらいですが、MICに向かってしゃべると、右側のオーディオスペクトルが現れ、TS930の周波数表示が7110付近で0.3秒くらい遅れたLSBによる音声を聞く事ができました。SメーターはS9です。  ただし、ダイヤルをぐるぐる回すと、関係ない周波数でも、S9の言葉にならない信号が聞こえます。 多分イメージです。 TS930のモードをUSBにすると、はっきりと聞き取れます。 PCのサウンドカードの出力はIQ両信号とも出ていますが、QSEのICの入力にはQ信号のみが加わっています。 原因は、コンデンサの両電極間及び、IC端子間のショートでした。 また、拡大鏡を駆使してこれらの異常個所を修理し、QSE ICへI,Q信号両方が加わる事を確かめた後、再度TS930で受信すると、LSBの音声はS9までSメーターが振れますが、イメージ周波数のUSBの信号はS1しか振れません。 ただし音声は聞こえます。 ここは、完成度が上がった時点で送信時のI-Qバランス調整を行う事にします。

スペアナを多用していますが、スペアナが無くても、問題となる周波数は簡単に推測できますので、LSBの本信号を受信機で受信したとき、S9+40dBとか、+60dBをSメーターが指すようにATTや受信機のアンテナ入力への結合を調整して置けば、受信機のS メーターのみで、おおまかなレベル差を知る事ができます。 S9 から +何十dBの目盛は結構正確ですが、S ひとメモリのレベル差は言われる6dBである事は少なく4dBくらいであると思っておれば、ほぼ間違いありません。 なお、HDSDRの説明では、もう一台SDR受信機を用意して、バンドスコープを見ながら調整せよと書かれています。

Sdr_tx_1khz_lsb1

左は、7110KHzのキャリアを1KHzの正弦波で変調し、RF outにスペアナをつないだ状態でのスペクトルです。 ピークは7109KHz(スペアナの表示周波数は校正なし)のLSBで、左脇にあるのはレベルの高い方がQSEのキャリアである7100KHzの漏れ、その隣がUSBの漏れです。さらに外側に何かありますが、今の所なにが原因なのかは判りませんが、最終的にはこれもスプリアス規制以下に抑え込まないと送信は出来ません。 現在、ラフなIQバランス調整のみを行った状態ですが、回路定数を変える都度、このバランスが崩れますので、調整は最後にやらねばなりません。 キャリア漏れは、HDSDRを受信状態にしても出ていますので、これはIQ信号のバランスではなく、基板内の浮遊容量や誘導を受けるレベル差により、T3のバイファイラートランスで、キャンセル出来ていないと思われます。 現在の基板内配列はIQ信号路がシンメトリィになっていませんので、これが誘導を受ける差になっているのかも知れません。  予想したような展開になってきました。

ここまでの回路図 SDR-TRX1.pdfをダウンロード

回路図の中に出てくるT1とT3のトランス緒元です。 手持ちのコアで適当に作りました。 特にT3は7MHzに共振するようなインダクタンスにしましたが、共振用のC28はゼロピコの時が最大のレベルとなっています。 

Transdata

キャリア(7100KHz)漏れの検討です。 T3の配置がIQシンメトリィに配置されていなかった事、バッファのRF outアンプのコレクタ負荷となるコイルはオープンタイプで、外部から誘導を受けやすい事、などから、T3以降の回路を大幅に変更しました。

Qseout1 まず、QSEの出力にシリーズに挿入された56Ωの抵抗は200Ωの半固定抵抗に変更しました。T3のバッファアンプは2石構成のアンプとし、出力はエミフォロで取り出します。 (後日、エミフォロは廃止しました)

Trxqsetop

Trxqseback

今まで、QSE ICの横に有ったT3はICと同一列のセンターに配置し、IC出力からT3の各巻線にシリーズに200Ωの半固定抵抗を追加しました。この半固定抵抗はチップタイプの極小品で、過去使い道が無かったのですが、やっと日の目を見ました。マイナスの時計ドライバーで回す事が出来ます。 バッファ回路の総面積も従来の1/3くらいに縮小し、他の回路から影響を受けにくくしました。

Sdr_tx_1khz_lsb2

この状態で、キャリアもれが最少になるように、半固定を調整した場合、LSBに対して-18dBくらいしか減衰していなかったものが-28dBくらいまで改善しました。 まだ不足です。 IQキャリアの位相をいじってみる為、IC9の14番ピンとGND間にバリコンを接続し、キャリア減衰が最大となるよう調整すると、44PFの時、最大となり-42dBを確保できました。 その時のスペクトルが左の状態です。 この時、USBイメージは-42dBくらいになっていますが、これはHDSDRのバランス調整でノイズレベルまで下げられる事は確認しています。 バリコンは臨時に追加したものなので、バリコンの代わりにトリーマーを追加する事にします。 

50W以下の送信機に課せられたスプリアス規制値は、LSBの3KHz帯域の中心を基準に、1.5KHzの信号で変調した、定格出力の80%の出力を基準として、±7.5KHzの範囲が、-40dB、+/-7.5KHz以上離れた領域は-50dBです。 HDSDRの解説ページでは10KHzのオフセットをデフォルトに設定しており、米国やEUの規格は全スプリアス領域で-40dBですから、このままでも使う事ができます。 日本では、HDSDRのFOとTUNEのオフセットを8KHz以下にすれば、キャリア周波数が、±7.5KHz以内に収まりますので、ここは-40dBが適用されますが、不明と書かれたスプリアスは ±7.5KHzを超えますので、-50dB以下にしないと送信できません。 詳細を調べたところ、一番左に現れるスプリアスは、変調のレベルが高すぎて、歪が生じたものである事がわかりました。 変調信号のレベルを適正値以内に押さえれば、出なくなるようです。 しかし、同時にLSBの本信号もさがりますので、今度はキャリア漏れとのレベル差を確保できなくなります。

ここまでの回路図 SDR-TRX2.pdfをダウンロード

キャリア漏れの再検討です。 Softrockのトランス情報によれば、T3の2次側は約2.4uHのインダクタに設定し、1次側は、2次の巻数の1/2のコイルをバイファイラー巻で直列に接続してあります。  その時の2次側の巻き数は30Tです。 私の手持ちのカーボニルコアの場合、9Tのとき、2.3uHのインダクタを得る事が出来ます。 巻き数比を同等にすると、1次は5Tのバイファイラ巻となりますので、このT3を下記の緒元で作り直す事にしました。

T3mdfi9t5tx2

 このトランスを実装してテストすると、キャリア漏れは若干改善しましたが、どうも不安定です。 不安定の原因はトランス入力にシリーズに入っている半固定みたいで、この超小型半固定抵抗が接触不良を起こしているみたいですので、これを廃止しました。

Sdrtrx2qesout

Ssb3sig

その状態が上の回路です。 この回路で、44PFのトリマーを回すと最大で-30dBくらいまでキャリアが減衰し、安定しています。 そして、今まで見る事が出来なかった2信号変調時の見慣れたSSB波形を、やっと見る事が出来ました。

ただし、この波形も良く見ると上下非対称です。DSPの処理の問題か? OPアンプを含めたハードの問題か? 

このレベルからアップすると、目に見えて上側の先頭値がつぶれます。  

インターネットで調べていくと、この歪は、OPアンプの出力ドライブ能力が原因で、決まって片方向の波形からつぶれていくものらしいという事が判りました。 要は負荷インピーダンスが小さすぎて、OPアンプの出力電流制限機能が働いて、歪んでしまうのだそうです。

よくよく考えると、T3の2次側のインダクタンス2.3uHの7MHzにおけるインピーダンスは、約100Ωで、1次側はこの半分の巻き数ですから、約25Ωくらいしかありません。 これをMCP6402という最少出力インピーダンスが200ΩくらいのICでドライブしている関係から歪んで当然でした。

じゃあ、なぜSoftrockはこんな低いインピーダンスのトランスを使ったのか、不思議でなりません。 QSE ICの前段に使われているOP AMPは、TLV2462CDという、聞きなれない品番です。 これを調べてみたら、ドライブ能力が非常に高い、高電流出力用のOP AMPでした。

その後、調べてみました。 直交ミキサーと言われるIC化されたIQ変調回路は、ギルバートセル・ミキサーと呼ばれる回路を基本として、ふたつの周波数成分を乗算するのだそうですが、この時の乗算は電圧ではなく電流で実現されているのだそうです。 今回のミキサーはICで構成されている訳ではありませんが、ミキサーとしての乗算は、低インピーダンスにしてやらないと、うまくいかないみたいです。 受信時のミキサーに於いて、OPアンプを反転入力にして、低インピーダンスで受けるのも、この理由によるもののようです。

Ssb4sig

私が、今製作中の、TRXは7MHzオンリーですので、広帯域性は要求されません。 キャリア漏れやIQバランスが理由なら、NGですが、単純に共振モードを使わないトランス(広帯域トランス)の場合、歪やキャリア漏れがどのようになるのか試してみる事にします。 これは、Softrockで使っているカーボニルコアやICが日本では簡単に手に入らない事も理由のひとつです。 左の波形は、T3を、この高インピーダンストランス(コア材はFT37-43)に変更した時のSSB2トーン変調波形で、上下ともほぼ対称で、振幅も2Vppあります。

これから、キャリア漏れやスプリアスの状況を確認しながら、見ていきます。 下は、その時のT3のトランス緒元です。

T3mdfi9t5tx3_2

このトランスの場合、2次側が135uHくらいのインダクタンスとなり、7MHzでのインピーダンスは5KΩを超えます。 この状態では、トランスの後のトランジスターアンプのベース抵抗430ΩがそのままT3の1次側へ影響しますので、1次側のI,Qそれぞれの負荷インピーダンスは約300Ωです。 まだ、過負荷に近いので、ベース抵抗を5KΩくらいまで上げたいところです。  これを確かめるため、R22を430Ωから5.6KΩに変更し、R21も68KΩに設定した上で、T3の2次側に51Ωの抵抗をGND間に追加し、実質の負荷抵抗を小さくしてみました。 その時のキャリア漏れが一番左のデータです。

51z

Highz2

Highzcore

負荷インピーダンスが下がって、キャリアのピーク値は-40dBくらいに」なりましたが、同時にLSBレベルも-14dBくらいとなり、その差は26dBです。 真ん中のデータは51Ωの負荷抵抗を無しにしたものです。当然キャリア漏れは-46dBくらいまで増えましたが、LSBの信号も-10dBまで上昇し、結果として、キャリア差は36dBまで改善しました。 さらに、真ん中の状態のままで、74HC74からFST3253までのキャリア接続ラインをねじりかつ長さ20mmのフェライトコアを入れたのが一番右側です。キャリア漏れは-46dBくらいですが、LSB信号が2dBくらいアップした為38dbまで改善しています。 しかし、一応Softrockが提示する低インピーダンストランスに比べて、あきらかにスプリアスは増加しています。(最初のスペアナデータ参照) 

直交変調回路が低インピーダンスで構成されるのは、このミキサーが電流で動作している事によるものだそうです。 ICデバイスメーカーがこの直交変調回路をIC化していますが、それらのICは決まって放熱設計を重要視しています。大きな電流を必要とするみたいで、ICの消費電力が数Wというものも存在します。 上のデータで2次側の負荷抵抗を51Ωにして比較したのは、間違いで、1次側の負荷コイルに沢山の電流が流れるようにしなければなりません。 その為には、ミキサーICの出力に直接コイルをつなげば良いのですが、そうすると、負荷が余りに小さすぎてOPアンプが歪ますので、ICとコイルの間に49.9Ωを入れてあるのが、Softrockの回路となります。  当初私もSoftrockにならって56Ωのシリーズ抵抗を入れたのですが、使用しているOPアンプのドライブ能力不足(出力インピーダンス200Ω)により、歪が発生し、余計なスプリアスやキャリア漏れを招いたようです。

そんな訳で、SoftRockの回路の設計方針に戻り改善策を検討する為、部材探しを行い、まずベースバンドのバッファーアンプとしているOP AMP MCP6402をドライブ電流250mAというAD8532ARに変更しました。 さらに、T3もトロイダルコア T50-6に変更し、以下の緒元としました。

T3_190919

このトランスの2次側インダクタンスは2.4uHです。

Loztrans

そして、送信状態でのスプリアスデータが左の画像です。

センターは1KHzのLSB信号でその左がLOのキャリア漏れです。-20dBくらいしか減衰していません。 しかし、今までその左にあったUSBのイメージや、不明としてきたスプリアスもかなり小さくなり、ノイズに埋もれるまで改善しました。

やはり、OP AMPの歪がかなり影響していた模様です。 キャリア漏れを対策して、±70KHz付近のノイズをベースバンドのフィルターで対策出来れば、後は、キャリア漏れのみとなります。 誤差5%の抵抗と、蛇の目基板に組んだ回路構成では、無理が有るのは承知していますが、なにか改善アイデアを考える事にします。

  

アナデバの技術解説のなかで「笑い飛ばせないゼロIFの課題」という記事を見つけました。 この主題はIQミキサに於いて、LO(ローカルオシレター)の漏れについて解説した記事です。 この記事は、ICの中で構成されるIQ変調回路のLOの漏れを、別に設けたIQミキサーによる復調回路を使って検出し、レベルと位相の差分に相当する直流信号を、IQ変調回路のDCバイアスとして加え、自動的にLO漏れを-81dBくらい確保できるようにする技術の説明です。 LOキャンセルを自動で行う回路を蛇の目基板上にディスクリートで作る事は、まず不可能ですので、半固定抵抗で、DCバイアスを可変し、最低-40dBくらいのキャリア抑制ができないか、実験してみる事にしました。

Iqmixer1_2

 DCバイアスを可変する為に、VR1,VR2 5K-Bの半固定抵抗を追加し、そのセンター端子から10KΩの抵抗を介して、IC5の出力に相当するラインの2か所に接続します。  ふたつのVRと、44Pのトリーマー(実際は60Pのトリーマー)を交互に調整し、キャリアリークが最少となるようにします。 

10khz_offset

0khz_offset_2

左上のスペクトルは、ラフ調整ですが、LSBに対して-47dBくらいまで、キャリアを減衰できました。USBのイメージもHDSDRのキャンセル機能で、-50dB以下に抑える事ができます。 それ以外にスプリアスが見えます。 このスプリアスはHDSDRのLOとTUNEの周波数を一致させると、右上のスペクトルのように、ぴたりとなくなります。 HDSDRの解説によれば、スプリアスが無くなるのでは無く、全てのスプリアスが狭い帯域に閉じ込められるとの事。 その為、変調音に歪や周波数特性の異常が生じる可能性があるけど、スプリアス対策としては有効みたいです。 ただし、AMではセロoffsetは使えないと記述されています。

ここまでの配線図 SDR-TRX4.pdfをダウンロード

RF outのQ6エミフォロは時々発振しますので、廃止しました。

Ilol4pwb

 

直交復調と変調回路が載った基板状態です。

現在のRF出力はスペアナの表示で-8dBmくらいですが、これを3Wくらいまで増幅するリニアアンプの製作にやっと進めるようになりました。

リニアアンプが完成し、いざ、実際の交信を開始すると、キャリア漏れをアナログのキャンセル技法で対応している、QSE回路の限界が見えてきました。

SDR用 7MHz QRPリニアアンプの製作 へ続く。

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2019年8月20日 (火)

ダイレクトコンバージョン式SDR(送信機能セットアップ)

カテゴリ<SDR>

ダイレクトコンバージョンSDRチューナーが曲りなりにも動作するようになりましたので、いよいよ送信機能の検討に着手する事にします。

まず、HDSDRのホームページの中から送信に関する情報を入手します。

ここに書かれた説明は、HDSDRを完全に知り尽くした人が書いたみたいで、肝心な基本設定が良く判りません。 結局、先輩方が苦労して得た情報を元にして、なんとか構築出来たものです。 そして判った事は、ダミーでExtIO_Si570.dllは必要でしたが、PE0FKOのCFGSR.exeも、仮想COMポートも必要有りませんでした。

Bwfilter

この「送信」の説明のなかで、COMポートを使う事、サウンドカードが2台必要と書かれていますので、まず、USB接続のCOMポートを用意しました。 CTESTWINとリグを連動させる為に用意していたもので、確か秋月で1000円くらいでした。 次にサウンドカードを新規に手配しました。 AmazonでサウンドブラスターSB Play3が税込1711円で出ていましたので、これを手配。 発注した翌日には届きました。 このカードはモノラルMIC入力で、録音時のサンプリング周波数は48KHzですが、送信用に設定すれば使えるような記述がどこかにありました。 (SBはWindows95をご存じの方なら判る有名ブランドです。 しかし、このホームページではかなり悪く書かれてますね)

HDSDRのOptionsの一番下にあるTXを選び、SDR TX Supportにチェックをいれて置きます。 ライセンスがどうのこうのと出てきますが、ハムなら問題なし。

Bandwithの中にあるOutputのサンプリングレートは、左上の黄色の円で囲んだ範囲で選択します。 他のエリアの数値を選択した場合、送信時にAudio部分が動作しない事がありました。

SB Play3を、PCに接続すると、勝手にドライバーがインストールされ、デバイスマネージャーを開いて、正常にインストールされている事を確認しました。 次にHDSDRの「Soundcard」をクリックすると、下のようなダイアログが現れ、それぞれ選択しました。 この設定は、受信モードの時のみ有効で、送信状態でもダイアログは表示されますが、設定は出来ません。

Sbsection

ただし、まだTXボタンをクリックしても送信モードにはなりません。

次にTXに関する設定をおこないました。HDSDRにダミーとして、ExtIO_Si570.dllを組み込んで立ち上げた後、追加の設定を行います。

Txsetup

Optionsのボタンをクリックして、TXを開き、SDR TX SupportとEnable TX Button for CAT to HDSDR及び

mute RX audio on TXにチェックマークがつくように処理しました。

チェックがちゃんとついたかどうかは、一度ダイアログをクローズし、再度開くと判ります。

Ctssetup

CAT to HDSDRからPTT activation pinを選びCTSかDCDをチェックしておきます。

PortとBaurdrateはデバイスマネージャーでポート情報(COM10とか、9600ボーとか)を調べておき、合わせ込みます。

activatedにチェックマークを入れようとすると、最初にポートやボーレートを設定しろと怒られますので、Portを開き、COM10の先頭に黒丸があるか確認します。無い時はこのCOM10をクリックすると黒丸が現れます。 なお、COM10の10の数字はPCの状態で変わります。 USBハブを追加する前はCOM8でしたが、ハブを追加したらCOM10に変わっていました。

Hdsdr_input_set

OPTIONSの中のSelect Inputを開き、Softrock Si570に黒丸を付けておきます。

以上の設定で、PCの画面は、受信と送信モードを交互に切り替えられるようになりました。 USBサウンドカードのMIC端子にコンデンサマイクを接続し、しゃべると、右下のオーディオスペクトルのレベルが変化し、感度もMIC gainにより可変できます。

HDSDRの中には、送信時のTEST信号も内臓されています。 送信状態にして置き、CTRL+SHIFTをおしたままでGを押すと、700Hzの正弦波が送信用サウンドカードのヘッドフォーン端子から出力されます。 もう1回押すと、この700Hzの信号が約10dBアップして最大出力状態となります。 さらにもう1回押すと、700Hzと1700Hzのツートーン信号が出力されます。 この状態でさらにもう1回押すと、この2-TONE信号が最大レベルとなります。 この後、もう1回押すと3-TONEとなり同じように繰り返します。そして、最後に受信に切り替わります。

Testsig700hz

Testsig7001700hz

左上が700Hz最大出力時、右上が700+1700Hzの2-TONEでレベルの低い状態です。

送受信の切り替えは、外付けハード側から操作する必要がありますが、英文説明の通り、CTSピンをhigh(highの意味不明の為5Vを加えた)にしても送信にはなりません。 設定をDCDピンに変えて試しましたが、いずれもダメでした。 これを解決しないと、送受信の切り替え操作が、外部ハード部分とPCのマウス操作という2重操作になりますので、不便です。

Ptt_sw

3日くらい悩んでいたPTT SWが解決しました。

原因は、D-Sub9ピンを取り付ける試作用の両面基板の裏表を間違い、ピン番号のガイドが反対になっていました。 さらに、対象ピンに5Vを加えるのではなく、4番ピンと接続するかしないかでTX/RXが切り替わるのだそうです。 それが判って、最初、4番pinと8番pin(CTS)間にPTT SWを挿入したのですが、PTT ONにすると、1秒くらいの周期で送信と受信を繰り返します。 4番pinと1番pin(DCD)間にPTT SWを入れると、正常に動作するようになりました。  ただし、困った事が一つ、 HDSDRをクローズしてもwindowが閉じません。 何かを待っている感じ。 HDSDRに関連するUSBを全て引き抜くと閉じます。

何はともあれ、これでトランシーバーの検討を進める事が出来るようになりました。

先輩方のレポートの中に、HDSDRの送信信号のスプリアスはかなり厳しいような説明が有りましたので、気になります。

ダイレクトコンバージョン式SDR(直交変調回路) へ続く。

 

2020年5月追記

HDSDR V2.80がリリースされましたので、試しにインストールしてみました。送信時のIQバランス調整が機能しません。 また、このIQバランスのデフォルト状態でも、一方のサイドバンドの抑圧は10dBしかなく、完全なバグ状態です。 また、元のV2.76aに戻しました。

V2.76がリリースされ、一年後にV2.76aが出てバグフィックスされたように、しばらく待つ必要がありそうです。

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2019年8月 4日 (日)

ダイレクトコンバージョン式SDRチューナー

カテゴリ<SDR>

RTL-SDRチューナーを改造して、フリーSDRソフトであるHDSDRを使用したVHF帯の受信機は実現しました。 このチューナーでHFを聞くにはアップコンバーターを追加したり、RTL-SDRチューナーをダイレクトコンバージョンチューナーに改造する必要があります。 ただし、コンバーターの追加や改造をやっても、このチューナーは受信オンリーで送信する事が出来ません。 そこで、RTL-SDRは卒業して、送信可能なトランシーバーのベースを一から作る事にしました。

直交復調を行う上で、位相が90度ずれたIキャリアとQキャリアを作るところから始めます。

7100khziqosc

左の波形は、7100KHzのIキャリア(上)とQキャリア(下)をデジタルオシロで見た状態です。 (後日、これは逆である事がわかりました。 上がQで、下がIでした。) 

これを作り出す為には14.2MHzの方形波を用意し、この方形波をフリップフロップで1/2分周する訳ですが、14MHzの方形波の立ち上がりで、次のフリップフロップをドライブしたのが上の波形で、方形波の立下りでフリップフロップをドライブしたのが下の波形になります。 ただし、一般に使用されるFF(フリッププロップ)の74HC74は入力の立ち上がりでしか、1/2分周動作はしませんので、14MHzの位相が180度異なる信号を使い、いずれも方形波の立ち上がりでFFを動作させます。 このように考えると、7MHzで90度位相差を有する、二つのキャリアを作る為には14MHzのキャリアがあれば良い事になりますが、この場合、14MHzの方形波は完全な50%デューティである事が要求されます。波形整形で50%デューティの方形波を作るのは至難の業です。 そこで、28MHzのキャリアをFFで1/2分周した14MHzキャリアを作ってやります。 FFで1/2分周した方形波は確実に50%のデューティを確保する事ができます。 そして、FFの出力はQと/Q(Qの反転出力)が即得られます。 これが、90度位相差のI,Q信号を作る為には、欲しいキャリアの4倍の周波数が必要な理由です。

インターネットで紹介されているSDRチューナー用のキャリアはSi570などのDDSをUSBを介してPCからコントロールする例が多いのですが、今回は、以前作成したAD9833によるDDSと逓倍ICで作成した28MHzの信号を使います。

Sdr_dc_tunner_2

上のJPGの配線図がみにくい場合はSDR_DC01.pdfをダウンロード

IC11の3番ピンに28.4MHzを加えたDDSの周波数が左下。、12番ピンの出力を周波数カウンターで見たのが右下です。

Dds28400khz

7100khzcounter

このチューナーはノーマルスイッチング周波数、数MHzのMC14066BというONセミコンのアナログスイッチで直交復調を行っているだけで、入力側の高周波増幅やBPFはなく、また、復調で得られたI及びQ信号も簡単なLCによるLPFを通った後、増幅もフィルターもなしでPCのサウンドカードへ出力されます。 通常、このアナログスイッチは74HC4066など、もう少し高周波的に余裕のあるICを使いますが、ちゃんと復調しているかは不明です。

Directconvertionpcb

Directconvertionpcbback

左上がその基板のチップ装着面。右上がその裏側です。 アンテナ入力からマッチングトランスまでの間に今後BPFとRFアンプを追加するスペースを確保し、直交復調器からPCのMIC端子へ出力するコネクター間には、ポストアンプや送信モード時の直交変調回路を置くスペースを確保してあります。

マッチングトランスは手元に有った#43材のフェライトコアに0.26φのUEWを1次:3ターン、2次21ターン巻いた物です。

このチューナーから出力されたI,Q信号をデジタル処理してSSBやCWが聞けるようにするのはHDSDRのソフトを使います。 HDSDRのソフトをダイレクトコンバージョンに設定する為に、ExtIO_Si570.dllのファイルをダミーで読み込ませています。 受信周波数は0Hzにしたまま、ソフトの入力をサウンドカードのアナログ入力、すなわちMIC端子に設定する事もできます。 受信周波数は、AD9833のキャリアで、LOを決定し、TUNE周波数はHDSDRのカーソルを動かして操作ができます。  入力および出力の帯域幅を色々調整した結果、LSBの受信が出来るようになりました。下の画像が7MHzのSSB信号を受信している時のスナップです。

7mhzssb

TS930にてS9+40dBの信号ですが、HDSDRではS9+25dBくらいをSメーターは指しています。 この時のLOの周波数(AD9833の1/4の周波数)は7100KHzでした。 さすがに+40dBのLSBの復調音はちゃんと聞けるもので、当然了解度も5ですが、TS930にてS9+10dBくらいのLSBの了解度は4くらいです。 無信号時のSはTS930ではS7くらい。 このHDSDRではS9ですから、トランシーバーとして、実用するには7MHzのBPFや復調後に20-30dBくらいのポストアンプを入れる必要がありそうです。 

8月9日

そこで、復調後のI,Q信号をオシロで見てみたところ、これがホワイトノイズのみで、さっぱり信号としては認識できません。 レベルが小さすぎます。 ここは、ポストアンプが必要です。 現在のPCのサンプリング周波数は48KHz程度で、ポストアンプの帯域は20KHz程度でも良いのですが、 将来、192KHzのサウンドカードを使う事を考えるとフラットの範囲が100KHzくらいは必要です。

Mcp6402_freq_responce

Opa1678_freqresponce

ポストアンプは片電源5Vで動作するオペアンプが必要になります。 左上がft(利得帯域幅積(GB積))1MHzのMCP6402の負帰還なしゲイン周波数特性です。 100KHzまでフラットにするにはゲイン20dBが限界です。 一方右上のグラフはftが20MHzのOPA1678の特性で、同じく100KHzまでフラットに出来るゲインは42dBくらいを確保できます。 従い、ポストアンプは秋月で扱っているOPA1678にし、ゲインは40dBとする事にしました。 

また、しばらく受信を続けていると、その内、復調不能になります。 7MHzのキャリアが変動するのか?とオシロでチェックしました。 すると、DDSの周波数を変更した途端、周波数が大幅にずれます。ひどい時は50MHzくらいになる事があります。 どうもDDSが安定して信号を発生しないようです。 これはSDRとは関係ない問題ですので、DDSを再検討必要です。 

Dds_sdr

原因はDDSの後段に接続されたPLLのアンロックでした。 対策の詳細はこちらにあります。 DDSのソフト変更をしたついでにSDR用のモードを追加しました。 左が、追加したDDSのSDRモードで、実際の発振周波数は28.4MHzですが、表示はその1/4の7.1MHzを表示しています。 HDSDRのLOの周波数を7.1MHzにセットすると、受信周波数をカーソルで直接読み取る事ができます。

さらにチェックすると、アナログSWの入出力でDCレベルが違います。 5Vの1/2のDCバイアスがかかっており、これを7MHzでスイッチングしていますので、少しは電圧降下があると、思われますが、IとQでそのDC電圧が異なります。 これは、14066のアナログSWがまともにスイッチングしていないのではと、改めてデータシートを見ると、正確なスイッチング周波数の値は判りませんが、製品バラツキのセンター付近でも5MHzくらいがベストで、最悪2MHzくらいが限界ではないかと思われるようなスイッチング波形が表示されています。 海外のKITでこのICとして使われているのは高速マルチプレクサと言われるバススイッチが大半で、少なくとも4066レベルを使っている回路はありませんでした。  対策として、このアナログSWを高速タイプに変更します。 選んだ高速アナログSWはSN74LVC2G66というデータシート上でのスイッチング周波数が195MHzのTiのICですが、RSの海外在庫との事で、納期が1週間くらいかかりそうです。 MOQ=10で1個40円弱ですが、送料が450円ですから、1個85円くらいになりました。 

このICが手に入るまでの間に、ポストアンプとRFアンプを追加して様子を見る事にします。

Rf_amp_coil

Rf_amp_postamp

左上がアンテナ入力段に追加した7MHzの同調コイルです。最初、複同調回路にしたのですが、マッチングが悪く20dBも減衰しますので単同調にしてあります。右上は追加したデュアルゲートFETによるRFアンプと40dBゲインのポストアンプです。 

RFアンプとポストアンプを追加した配線図SDR_DC03.pdfをダウンロード

この配線図はアナログSWを高速タイプに変えてありますが、まだICを入手していないので、14066のままです。 また、ミラー信号が表示されます。

8月13日

HDSDRをインストールしたノートPCのサウンドカードの詳細を調べていましたら、現在の録音モードのサンプリング周波数は44.1KHzに設定されていました。 そして、96KHzに設定変更する事が出来る事が判りました。 再生時のサンプリング周波数は最大で192KHzまで設定できますが、録音と同じく96KHzに設定しました。 その結果、バンドスコープの幅が±48KHzのほぼ90KHzまで拡大したのが、下のウォーターフォールのショットです。

7mhz_mirrar

LOの周波数を7.13MHzとして、7086KHzから7174KHzくらいまで表示し、実際に受信出来ています。 しかし、この画面では7130KHzを中心としたミラー信号も同時に表示されており、ミラー信号に同調させると、LSBでは復調できませんが、USBモードなら復調できます。 直交復調がまともに働いておればミラー信号は出てこないはずですが、IとQの信号のバランスが崩れているようです。 

8月15日

高速アナログSWは到着しましたが、変換基板を間違って手配してしまい、今度は変換基板到着待ちになりました。

その間に、海外KITの回路例を調べていました。 Softrockの回路では、直交復調以降のOPアンプの回路構成が、私の回路と違う事が判りました。 私のOPアンプ動作は非反転増幅で、OPアンプは高インピーダンスで受けていますが、このKITは反転増幅回路で低インピーダンスで受けています。また、OPアンプの前にLCのフィルターも無く、OPアンプの負帰還抵抗にパラに入れたコンデンサ1個でLPFを構成しています。  何が違うのか、このKITの回路のように変更して見ました。 すると、ミラー信号がほぼ消えて7MHzの90KHzの帯域で表示されるウォーターフォールは全てUSBになりました。 クロックのIとQが逆になっているようです。 これを入れ替えたら、全てLSBになりました。

7mhz_notmirrar_2

なぜ、OPアンプが反転増幅でなければならないのかは判りませんが、ミラー表示の問題は解決してしまいました。 修正した回路図は以下です。 まだ、高速アナログSWは実装されていません。

SDR_DC04.pdfをダウンロード

8月20日

やっと、0.5mmピッチの変換基板が届きました。 さっそく、拡大鏡を駆使してICの半田付けです。

Iqmix2g66

Iqmixdemo

左上が、VSSOP(8)と言われるパッケージをDIPに変換した基板です。 右上は、その裏側です。  高速アナログSWに交換した結果は、あまり変わらなかったというのが、率直な感想ですが、SWの出力側に接続されたC4とC5がミラー信号に大きく関係している事が判りました。 14066の場合、0.01uFの容量でしたが、ICを2G66に変更した後は、そのままでは、ミラー信号が弱く出てくるので、このC4、C5いずれも廃止しています。 これから、TX回路を組み込んだりすると、ICの周囲の状況や線処理が変化しますので、回路が完成した時点で再度、最適容量を探る事にします。

 

送信モードをこのチューナーの配線図に追加しようとしたら、送信受信の切り替え回路が必要であり、その回路で、直交検波回路に供給する7MHzのクロックを送信時OFFする必要がある事に気付きました。 このクロックOFF機能は、受信時には直交変調回路のクロックもOFFする必要があります。 このON/OFF回路が必要な為、海外KITはFST3253のようなSWingが可能なバススィッチを採用しているという事を遅まきながら判った次第です。 しかし、私の回路は、すでに2G66というスイッチ無しのICで配線されていますので、74HC74と2G66の間に別のスイッチングICを挿入する必要があります。 そこで、手持ちの74LS08(ANDゲート)を追加する事にしました。

Sdr_trx0_rx

上の回路がクロックをON/OFFする為にANDゲートを追加した回路の受信部だけの抜粋です。

74ls08out

そして、ANDゲート通した後の2G66に加えられるクロックの波形が左の波形です。 74LS08の応答特性の関係で上下非対称、かつリンギングがかなり少なくなった、丸みを帯びた波形です。

この状態で7MHzを受信した場合、従来からノイズレベルが10dBくらい下がった以外、ミラー信号が強くなる訳でもなく、正常に受信出来ています。 ただし、送信時も同じ波形で変調をする事になりますので、要注意です。 受信時でも、強入力があると、ミラー信号が現れますが、 ANDゲートを追加する前も有りました。

以下は、このAND回路を追加した後の7MHzスペクトルです。

7mhz0824_2

次はいよいよ送信回路の検討です。 この送信回路の検討の過程で、アナログ回路の精度の問題(使用抵抗の誤差)に遭遇し、2G66による直交ミキサーで実用になるのか不安になり、回路構成をSoftrockに変更する事になりました。

ダイレクトコンバージョン式SDR(送信機能セットアップ) へ続く。

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2019年7月25日 (木)

SDR入門

カテゴリ<SDR>

かねてより興味が有りました、SDRについて遊び始めました。 aitendoで安いDABドングルが売られており、これを入手したのが、2週間前。 色々なホームページから、簡単に2mのワッチが出来ると思い込み手当り次第にソフトやドライバーをインストールしたのですが、うまく行きません。 悪戦苦闘の末、とりあえず、ローカルのFM放送が受信できるまでになりました。 最終目標はSDRのPCに依存するところは、フリーソフトにお任せして、直交検波と直交変調が出来る回路とそれにつながる送受信回路の自作ですが、生きている間に出来るかどうかは????です。

Fc0012dongle

左の写真はRTL-SDRチューナーと言われるaitendoから届いたドングルをさっそくオープンした状態です。 先輩方のホームページより、USBコネクタはUSBケーブルでPCに接続し、アンテナ端子はSMAやBNCに変更した方が良いというアドバイスの通り、シールドと放熱が期待できるアルミケースに改造する事にしました。 時期は梅雨の真っ最中、毎日雨で、外での工作が出来ない状態でしたが、雨が止む短い時間を狙って、工具を倉庫から出しては仕舞いを繰り返しながら作成したのが、下の写真です。 入力部分にBPFやRFアンプを追加するスペースを確保する為に少し大きめのシャーシとし、アンテナ端子も現用の2mトランシーバーに接続するMコネクターにし、まずは、2mのオールモード受信機作成がターゲットです。

Fc0012dongle1

Fc0012dongle2

左上が、配線前の部品配置検討段階、右上が、配線完了状態です。 ここまでは、問題なしですが基板は全て両面テープで張り付けた状態で、いつでもはぎ取る事が出来る状態です。

次はソフトのインストールです。 HD SDRというフリーソフトがある事をインターネットで聞きつけ、これの最新版をゲット。RUNさせると、ハムバンドと放送、業務無線とジャンル別に整理されており、多分aitendoのドングルは対応していないと思いますが、HFをフルカバーできるアプリになっています。 これによる受信をトライしたのですが、いくら頑張ってもUSBドライバーが色々なホームページが説明している名称になりません。 当然、HD SDRの起動の時点でドライバーが無いと蹴飛ばされます。

これは、簡単ではないとと悟るまで1週間。 初心に帰り、aitendoの商品説明にある通り、SDR#とそれに必要なドライバーのインストールにトライし、zadig.exeの部分で挫折しかかりましたが、zadig-2.4.exeに乗り換えて、めでたくドライバーがインストールされました。 

Sdrsharp

さっそく、3.5Km先の標高415mにある出力10WのローカルFM局にチューニングするとフルスケールで受信できるようになりました。

この延長線上で、周波数を145MHzにし、バンドスコープ幅を2MHzにすると、2mの全体のスペクトルを見る事ができます。 当地では、出ている局が少ない上、昼間である事から、実際に捉えられた局はSSBが1局、FMが1局でした。 スペクトルは期待したような結果を出してくれましたが、その復調音は、とても交信に使えるレベルでは有りません。 S/Nが非常に悪く、またAGCの効きもかなり不足で、FMでもノイズの変化があります。

原因はゲインの不足です。 ドングルの前に、BPFとRFアンプを追加してどれくらい改善するかを見る必要がありそうです。

下に2mのバンド幅2MHzと1MHzのスペクトルを示します。 1MHz幅のとき、FMが2局あります。

2mspectlebw2mhz

2mspectlebw1mhz

このSDRの操作性ですが、トランシーバーを操作するレベルには程遠く、特にチューニング操作は全く話にならないレベルです。 広帯域受信機として、特定の周波数をじっくり聞く場合に限るようです。 また、バンド内に59+60dBの局が現れると、バンド全体にスプリアスが発生し、S5くらいの信号は全く受信できなくなります。  今使っているドングルは送信機能は有りませんので、現状の組み合わせでトランシーバーは構成できません。 こんな事情から、SDRのフリーソフトを含めて再検討する事にします。 

このSDRを始めるに当たり、最初にインストールしたHD SDRは、どういう訳か周波数の設定がLoもTuneも0Hzのままで設定できませんでした。 原因が判らず、とりあえずSDR#で実験を開始したのですが、一度SDR#で動作確認した後、SDR#をクローズして、すぐにHD SDRを立ち上げると、正常に動作します。 HD SDRをクローズした後は、またNGとなります。 とりあえず原因は判りませんが、SDR#立ち上げ、クローズ、HD SDR立ち上げのシーケンスでなんとか使える事は判りました。 このHD SDRのソフトの操作方法が良く判らず、色々なパラメーターをいじっていましたら、SDR#よりS/Nの良い受信が出来るようになりました。 SDR#でどうにもならないと思っていた59+60dBの局がバンド内に現れた時でも、AGCで弱信号の抑圧は発生しますが、スプリアスの発生が少なく、入力のフィルターを調整すれば、なんとか使える受信機ができそうです。

下の写真はHD SDRで2mをワッチしている時のスナップです。周波数のキャリブレーションをまだしていませんので、周波数表示が微妙にずれていますが、145.080で59の信号を受信しているところです。

Hddsr2m

FM受信時のスケルチ動作も通常のトランシーバーと変わらない動作をします。 低周波の帯域幅も自由に設定できるという事から、今後このソフトをベースに検討していく事にします。

ダイレクトコンバーション式SDRチューナー へ続く。

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2019年6月24日 (月)

時々2mが送信できない。そろそろ寿命かな?

カテゴリ <TH77

快調に使用出来ていたTH-77ですが、今年の正月ごろから、時々送信できないというトラブルが発生していました。 今年になって何回か使用したのですが、半分くらいの確率で送信不能に陥ります。

インターネットで情報を探すと、ぴったりの症状がヒットしました。 430はOKだが144だけが送信できないという症状です。 原因は電界コンデンサの液漏れの為、付近の部品や銅箔を腐食させ、2mの送信起動回路が正常に働かないらしいのですが、修理は非常に難しいと書かれています。

時々その症状が出るので、完全腐食まではなっていないかも知れないと、インターネットで英文サービスマニュアルを探しだし、早々に分解して中を覗いてみる事にしました。

Th771

Th773上の写真の黄色で囲った当たりが臭いとにらみ、SMTの電解コンデンサを触ってみると、これがグラグラです。横からみても液漏れ臭いので、これを取り外してみたら、銅箔ごと取れてしまい、半田付けの銅箔は無くなってしまいました。 

左がその取り外した電解コンデンサですが、液漏れが始まったばかりの状態でした。 もう一個の電解コンデンサは、まだ大丈夫みたいです。 この電解コンデンサはELNAブランド。KenwoodはELNAがお気に入りみたいで、この時期のモデルは全てELNA製であり、これが決まって液漏れを起こします。 ニチコンやケミコン品は容量ダウンが有っても液漏れまで発展する事は無いのに。

Th772

どこがわるいのか特定はできていませんが、変色したトランジスタのコレクタ端子と270KΩのチップ抵抗の電極は半田付けしなおし、接点復活剤を吹き付けた状態で通電してみました。すると、270KΩの抵抗と電界コンデンサの端子の間にある腐食したようなところから煙がでます。 煙と言っても蒸気みたいな感じで焼けている気配は有りません。 

使用した接点復活剤は、接点の清掃を行うもので、いつも使う「KURE」ブランドです。 スイッチの接点復活以外に、SMT基板の清掃や、GHz帯のコネクター清掃に使っており、例え拭き残りがあっても、電子部品を腐食させたりはしないというものです。 接点復活剤を綿棒できれいにふき取り、送受信テストすると、たちまちは異常が有りません。 取り外した電解コンデンサをリード付コンデンサで代用しようとしましたが、半田付けの銅箔が折れてしまい、もう有りませんので、回路図から、最悪無くてもよいかと、勝手に判断して、電解コンデンサ無しで元の状態に組み立て直しました。

Th774

受信テストをすると、スケルチのスレッシュホールドポイントでポツポツとノイズが連続して入ります。 S9の信号を受信すると、音声が高速に断続して聞こえ、了解度が大幅にダウンします。 やはり47uFの電解コンデンサは必要なようです。 

そこで、手持ちの10V100uFを左の写真のように追加しました。 この対策で、スケルチの効きは正常になり、音声もきれいな元の状態に戻りました。

そして、今までやっていなかった送信テストを行ってみました。 SENDモードになり、そばに置いてあるFT991のSメーターがフルスケールになるのは確認済みでしたが、しゃべってもスピーカーから音声は出ません。 変調がかからないようです。

サービスマニュアルの基板図は解像度が悪く、チップ部品のREF No.はおろか、ストリップラインのつながりも良く判りません。 唯一IC1の場所が判りましたので、オシロを各端子に当てて、マイクに向かって大声で叫ぶと、IC1の3番ピンにはかろうじて信号が見えますが、1番ピンにはなにも見えません。

テスターでDC電圧を当たると、3番ピンが5V、1番ピンも5Vです。 OP-AMPですから3番も1番ピンも2.5Vでないといけないのですが、ここが5Vです。 Th776

R30 27KΩが断線もしくはGNDへ接続されていないのが原因のようです。C45の2.2uFはちゃんとGNDに接続していますので、R30だけが浮いていると思われます。

Th775

そこで、C45に1608のチップ抵抗をパラ付する事にしました。C45のサイズが大きすぎてコンデンサの背中にパラ付できませんので、コンデンサのGND側に27Kの抵抗を立てて半田付けし、反対の端子から0.18mmφの銅線でコンデンサのホット側につないでやりました。 この追加作業で、変調がかかるようになりましたが、本当の原因は不明のままです。

この状態で当分様子を見る事にします。

 

 

2022年正月

ニューイヤーパーティに参加すべく、自宅で動作テスト済みのTH-77を持って、野呂山に行きました。 駐車場に着いて、144のメインチャンネルをワッチすると、音声が歪んでいます。 この音声の歪は前回の故障時にも有り、電解コンデンサを追加したら、直ったものでした。 試しに430にバンドを変えると、綺麗に聞こえます。 そして、144に戻ろうとしたら、バンドが切り替わらなくなりました。 駐車場で、20分くらい、ジタバタしましたが、回復しません。 1局もQSOできずに諦めて下山しました。 そして、このTH-77はジャンク箱行きとなりました。

新しい、ハンディ機をさがさねば!

2022年1月に注文したVX-6が4月下旬に届きました。

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2019年6月 1日 (土)

10m D級アンプの実験

カテゴリー<6m AM >

タイトルは10m D級アンプですが、当初、6m D級アンプのつもりで実験を始めましたが、どうにも出力が出ず、やむなく10m D級アンプに修正した経緯があります。

安い半導体で50MHzのPWM変調方式のAMパワーアンプを実現すべく調べていましたら、2018年の春に、TIより60MHzのFETドライバーが発売になっていることを知りました。 この新製品であるドライバーがDigikeyにて500円台で発売されています。 残念ながら私はDigikeyのアカウントを持っていないので、60MHzでなくても30~40MHzくらいのFETドライバーをRSで取り扱っていないか探したところ、TIの製品でUCC27511というドライバーが見つかりました。 FETの入力容量が1800PFの場合、Typ24MHz付近まで動作します。 現在6mのAM送信機に使用しているファイナルはIRFI510で、このCissは180PFです。 入力容量がドライバー指定の1/10ですから、50MHzまで動作してくれないだろうかと、このUCC27511を手配し、実験する事にしました。

28m_pa0

28m_pa1

UCC27511はRSでMOQ=5の条件で、1個 187円弱です。

放熱板や基板を加工し、実験出来るボードを作り、実験を開始しましたが、残念ながら、50MHzの出力は得られませんでした。 FETドライバーの出力がFETゲートをドライブできる波形やレベルになっていません。

28m_pa4

上のjpgによる回路図が良く見えない時は28M_ClassE_AMP0.pdfをダウンロード

そこで、周波数を下げて、どの辺まで出力できるのか調べてみました。

28m_pa5freq

左のグラフはVDD 5V、入力レベル6dBmにて、周波数を可変した時の出力です。32MHzを過ぎると急激に出力が落ちています。 ドライバーとFETの実力による周波数限界が重なった事から、この回路では32MHzが使用限界と考えられます。26MHz以下で出力が下がっているのは、使用しているメガネコアがカーボニルの低μ(ミュー)コアによるもので、フェライトコアを使えば、フラットかあるいは出力が上がる傾向になるものです。

結果的に50MHzでのパワーアンプは不可能と判りました。 そこで、28MHzではどうなのかデータを取る事にしました。

 

28m_pa6 上のグラフは28.5MHz、入力3Vppにて、電源電圧を可変した時の出力データです。青色のカーブはVDD:4Vの時の出力2.5Wを基準にした理想的なデータです。 赤色のカーブが実測値です。 VDD 7Vくらいまでは、なんとか理想に近いカーブをしていますが、それ以上のVDDでは電源電圧と出力の関係は非直線になっており、PWM変調においては、きれいな歪の少ない変調がかけられない事を示しています。

この原因は終段のIRFI510の性能が影響している為であり、60MHzのFETドライバーを用意しても、この問題は解決されないと考えられます。

IRFI510の限界周波数は約21MHzでした。 そこで、限界周波数が約39MHzのFKI10531ではどうだろうかと28MHzでテストしてみました。 残念ながら、Ciss=1500pFが災いし、電流が700mAくらい流れ、30秒くらい通電したら、UCC27511が煙を出して壊れてしまいました。

電源電圧13.8Vで60MHzでもスイッチングするFETは実在しています。Gan FETと呼ばれていますが、1石9000円くらいですので、このFETを使うくらいなら、50MHzで100W出せるリニアアンプの方が安くできます。 よってこの検討は当分休止です。

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2019年5月 6日 (月)

PIC24FJ64GA004 フラッシュメモリーへの書き込み(EEPROM代用)

<カテゴリー:PICマイコン

16bitのPICマイコンの中で、24FシリーズにはEEPROMを個別に持っているものと、プログラムを格納するフラッシュROMエリアにデータも書きこんで、これを読み出す事により、EEPROMを代用できるものとに分かれます。 今回、PIC24FJ64GA004 において、EEPROM機能を必要としましたので、そのソフトをXC16のプログラムで紹介します。

Microchipやインターネットに情報公開している大先輩方による解説は沢山あるのですが、あまり考えずにコピペして使えるプログラム例がありませんでしたので、コピペだけで、済まそうという方に参考になればと思い公開します。

条件: フラッシュメモリーのアドレス0x9600から600バイトをEEPROM代用に宣言し、その中で64ワード分を読み書きできるようにします。 

このデータメモリーは起動時にフラッシュROMエリアのデータを必要分のみ読み取り、プログラム実行中に変更されるあるいは変更されないデータいずれも、全てまた同じアドレスに書きこむことを基本動作としています。 例では lastmemory[] という変数の中にメモリー必要なデータが保持されるようにしています。 また、書き込み動作は結構時間がかかりますので、64ワード全てが必要でない場合、必要なワードのみを書き込み、影響を最小限にしています。 例では0から6までの引数(7種類)のデータだけを読み書きし、時間短縮を行っています。

コピペする範囲を青色、各自でアレンジする必要あるところを緑で示します。

最初にインクルードファイルです。

#include <libpic30.h>

次にグローバル変数を定義します。

section(".Data_Memory")の記述は、MPLAB Xにてコンパイルした時、メモリーマップが表示されるようにしたもので、リストの中に.Data_memory という情報を見つける事ができます。

//////////////グローバル変数として以下定義

unsigned int lastmemory[64];//EEPROM

const __attribute__((section(".Data_Memory"), space (prog), address (0x9600) )) unsigned int _flash_datas[96*8];

以下、読み書きENDまでが読み込み、書き込み関数です。 ここは何も考えずにコピペすればOKです。

/////////////////////////////////////////////フラッシュメモリー読み書き
void Flash_Read(unsigned char LN) {
 unsigned int i=0;

    unsigned int page = __builtin_tblpage(&_flash_datas);
    unsigned int offset = __builtin_tbloffset(&_flash_datas);
      // フラッシュメモリー読み込み
    TBLPAG = page;
    for (i=0; i<=LN; i++) {
        lastmemory[i] = __builtin_tblrdl(offset + i*2);
    }
}

void Flash_Write(unsigned char LN) {
    unsigned int i=0;
    unsigned int page = __builtin_tblpage(&_flash_datas);
    unsigned int offset = __builtin_tbloffset(&_flash_datas);

    
    // ページ消去
    TBLPAG = page;
    __builtin_tblwtl(offset, 0x0000); // 
    NVMCON = 0x4042;
    asm volatile ("disi #5");
    __builtin_write_NVM();          //erase 8line = 64*8
    while(NVMCONbits.WR);
 
    // ラストメモリー書き込み
    NVMCON = 0x4003;
    TBLPAG = page;
    for (i=0; i<=LN; i++) {
        __builtin_tblwtl(offset + i*2, lastmemory[i]);  // *2 偶数
        __builtin_tblwth(offset + i*2, 0xFF);
   
    asm volatile ("disi #5");
    __builtin_write_NVM();
    while(NVMCONbits.WR);
    }
}
/////////////////////////////////////////////フラッシュメモリー読み書きEND

以下、読み出したデータ lastmemory[] の中を、プログラムで使用している変数に分解します。 フラッシュメモリーはワード単位で読み出されますので、32bitのデータや8bitのデータはそれなりに加工が必要になります。 この例では、lastmemory[0],[1] は合成して32bitのデータに変換しています。 また、例えcharの変数でも16bit全体を使い余計な処理は省いています。

void readlastmemory(){
 unsigned long int bf;
 Flash_Read(6);//引数6は最後の[6]を指定する事
    bf = lastmemory[1];
 bf = bf << 16;
 BASEFREQ = lastmemory[0] | bf;
 V_level = lastmemory[2];
 MODE = lastmemory[3];
 IWB = lastmemory[4];
 RIT = lastmemory[5];
 Ritfreq = lastmemory[6];
}

以下は、プログラムで使用中の変数を lastmemory[] に格納した上フラッシュROMへ書きこみます。

void writelastmemory() {
 lastmemory[0] = BASEFREQ & 0x0000FFFF;//BASEFREQは32bitデータなので、[0],[1]に分割する。
 lastmemory[1] = BASEFREQ >> 16;
 lastmemory[2] = V_level;
 lastmemory[3] = MODE;
 lastmemory[4] = IWB;
 lastmemory[5] = RIT;
 lastmemory[6] = Ritfreq;
 Flash_Write(6);//引数6は最後の[6]を指定する事

}

MPLAB XにてコンパイルするときMPLAB Xの設定を少し変更が必要です。

Mplabx190506

Project Propertiesの中のXC16_gccを選び、上のoption categories の中のMemory Modelを開き、添付のようにチェックマークを入れます。(通常はマークなし) ただし、この状態は私の環境によるもので、使用状態では異なる可能性があります。 エラーが出る場合、この辺のチェックを付けたり外したりしてみて下さい。

このプログラムの実施例はこちらに有ります。

PIC24FV32KAシリーズのEEPROMアクセスコード例はこちらにあります。

dsPIC33fj32GP202(ROMが32Kの16bitマイコン)のフラッシュ領域に256ワードのデータを記憶させた例はこちらに有ります。

 

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2019年4月28日 (日)

50MHz AMトランシーバー(組み立て2)

カテゴリー<6m AM >

送信機各段の発振やPLL VFOへの出力の回り込みなどの問題で、回路ブロックの再構築をやらざるを得ない状態であった、50Mhz PWM方式トランシーバーですが、PLL VFOを隔離状態にシールドし、受信部、電源部をそれぞれ独立させた構造に作り替える事にしました。 これを美しく仕上げる為に、アルミ板の折り曲げ機(ベンダー)を作るところから再スタートです。 アルミベダーは、このトランシーバーを作成始める時点で、製作したのですが、アルミを鋭角に曲げられず、どうしてもRが大きくなってしまい、前回の写真でも判るように、折り曲げ部が凸凹になっていました。 トランシーバーのブロック構造を変更するに際し、このアルミベンダーも再設計し、うまくいきましたので、やっと本来のトランシーバー製作に戻る事ができました。

6mrx0428top_2

6mrx0428back

上の写真は新しく作り直した、PLL VFO、受信機、電源の各ブロックで、特にPLL VFOは完全シールド状態にしてあります。 下の写真は、その裏側です。 完成状態では、この裏側にケースによりフタがかぶせられます。 一応この状態で、受信機は完動状態、送信機はVFO出力 OKのレベルです。 

Bafferout

Tx190430x2buffer_2

 前作の50MHz送信機用に作成したVFOから2逓倍回路を取り出し、これを単体でシールドし、バッファーアンプとしました。その出力端子のスペクトルです。 基本波の25MHzと75MHzがまだ残っていますが、終段までに-60dB以下にできそうです。 

2倍も3倍高調波もバッファアンプ終段のエミフォロの歪が原因ですので、問題は有りません。

ここまでが、受信部ブロックで、このバッファの出力を送信機ブロックに接続すれば、送信部の完成となります。

前回はこの検討の最中に異常発振が起こりましたので、 一応対策済みですが、気にしながら後段の動作確認を行います。

Tx190429bpf200m_2

Tx190429bpf2m_2

 左上が、200MHzまでにスプリアス、右上が、PWMサブキャリアの漏れをみた2MHzスパンのスプリアスです。 いずれも-60dBのスペックをクリアーしています。

Tx190429modsin

最終的な無変調時のキャリア出力は8Wでした。 事前検討のときVCC6.5Vで10W出力としましたが、いざ変調器を接続し、PWM LPFを通過した後の無変調時の終段に加わるVCCが5.7Vしかなく、8Wの出力は、ほぼ計算通りですので、目標の10Wには不足しますが、とりあえずこれで良しとします。 

また、予備検討時はきれいな正弦波による100%近くの変調が出来ていましたが、各段のゲインを発振しない状態に再調整した結果、左のようにかなり歪んだ変調波形となってしまいました。 ファイナルとドライバー段にPWMによる変調を同時に加えた場合、歪の少ない変調をかける事は非常に困難で、結果は出来高勝負という状態です。 ここは、やはりセオリー通り、終段だけに変調をかけ、入力から出力へスルーするキャリアをいかに減らすかかが、正しい、対策でしょうが、とりあえずは変調度は高いけど歪だらけという状態で一旦置く事にします。

理由はEスポのようにQSBが激しい状態では、了解度確保する上で変調度は重要です。 ただし、ローカルラグチューでは、例え変調が浅くても、歪の少ない信号が聞きやすいですから、余裕が出来たら検討する事にします。

Tx190429all

Tx190429lcd

Tx190430_anmeter_4

 

Line_filter_rx

全体を結合し、ケースの中に収めました。 ここで、問題点が発覚。 受信アンテナ端子へ、ファイナルのアンテナ切り替えリレーから、受信機用の同軸ケーブルをつないだ状態で送信テストをすると、LCDがチラチラとノイズ交じりでふらつきます。 終段の高周波がマイコンに混入し、誤動作しているようです。 ためしに、送信部と受信部の電源を分けるとこの現象が出なくなります。 結局、最初のアイデア通り、受信部にも専用の電源ラインフィルターを追加すると共に、受信部と送信部のグランドシャーシを機械的に接続する事で解決しました。 左上の写真がスピーカーのマグネットの裏に追加したLINEフィルターです。

8W出力時の消費電流は約3.2Aで、変調がかかると、プラス方向に振れます。 音楽を変調しながら、ダミー抵抗へ出力する2時間エージングも終了し、後はEスポの発生を待つだけとなりました。

PLL VFOの配線図 6mTRX_DDS_PLL-VFO3.pdfをダウンロード

受信部、BFO配線図 6mAMTRX_BFO3.pdfをダウンロード

送信部、変調部配線図 6mamtrx_txmodunit3.pdfをダウンロード

Eスポが発生しない為、このトランシーバーを持って、野呂山に行ってきました。 FT991によるSSBでのQSOは3局ほど出来ましたが、このAM機ではゼロでした。 山の上は雑音が少なく、FT991ではS1でもQRK5なのですが、このトランシーバーの受信雑音はいつもS7くらいです。 これでは、相手がコールしてきても交信成立しない可能性が大です。 

帰ってから、このノイズ対策です。 ノイズ発生源はマイコンとLCD、DDSやDSPの通信と思われますので、現在、メインループが回るごとに通信を行っている機能を、ひとつづつ止めてみました。 全て止めると、きれいにノイズがなくなり、S1の状態です。 ただし、Sメーターのデータ読み出しと、そのレベル表示は止められないので、この機能のみを動作させると、聴感で少しノイズの増加がありますが、Sメーターが振れるほどにはなりません。  よって最低このSメーター読み出しと、この駆動のみを残し、情報に変化がない場合、LCDを含めDDSともDSPとも通信をしないようにソフトを変更しました。 操作があると、そのたびにノイズが出ますが、操作しなければS1で問題なしとなりました。 このように原因解析できると、音量ボリュームと、そのレベル表示も、ひとつのノイズ源になっていますので、アナログ部分に可変抵抗器を設けてやれば、DSPとマイコンでやる必要は無くなります。 いつか、アナログの音量調整に変更し、DSPは音量固定にする事にしますが、当分はこのままです。 

完全に対策したはずですが、特定の周波数でノイズが大きくなります。 

その原因が判ってきました。 Sメーターが大きく振れるような外来ノイズと、受信感度のムラにより感度の高い周波数が一致すると、大きなノイズが発生しますが、ノイズが発生した事によりまた、Sメーターのレベルが上がり、そのノイズでさらに大きなノイズが発生し、これが極限まで行くとAGCの為、一度感度がダウンします。 感度がダウンして静かになると、すぐにゲイン最大に移行しますので、これに伴いSメーターも変化し、同じ事を繰り返すみたいです。 そこで、Sメーターの駆動を少し遅らせてみなした。 すると、この特定の周波数で雑音が増大する頻度が大幅に減少しました。 ただし、Sメーターの反応を遅らせすぎると、信号のピークにダイヤルを同調させにくいという問題がおこりますので、この遅らせる時間はさじ加減で決める事にしました。 完全対策ではありませんが、我慢できる程度までノイズを削減できました。

ノイズ対策をしたソースコード AM_TRX50MHz2.cをダウンロード

5月連休の最中、運よくEスポが発生しましたので、50.53付近でCQを出したところ、7エリアのOMよりコール頂きました。 その時、音質がこもりぎみで了解度がおちているというレポートを頂きました。 変調した波形をオシロで見ていると、音楽の場合、気にならないのですが、マイク音声の場合、中域以上の波形が目立たないので、気にしていたのですが、やはり、了解度を損ねる程の音質になっていたようです。

Modftoku_2

原因は、MICアンプの周波数特性の低域がかなり伸びており、さらに、マイクを接話状態で使った為、接話効果が加わり、低域のレベルが増大した結果、このレベルでアンチサチレーション機能が効いてしまい、中広域が大きく減衰したものでした。 左のグラフの様に、マイクアンプの200Hzの周波数特性を-10dBくらいまで落とす対策(青色)を行い、接話状態でも低域によるアンチサチレーション機能が起こりにくくして対策しました。(赤色がアンチサチレーションが動作するレベル) このアンチサチーレーション機能をOFFにする事も検討しましたが、周波数特性を調整する事で、異常はなくなりましたので、リミッター機能そのものは残しております。 アンチサチレーションON状態でも、音声信号のクリップはゼロではありませんので、変調度監視のレベルメーターの時定数をリアルに調整して、しゃべる時は常にメーターを見ることにします。

100modmtr

Mod100

Mod50

オシロの画面を見ながら、ドライバー段の出力や、アイドル電流を調整した結果、変調度メーターが100%を示したときの630Hz変調波形が真ん中の波形です。右の波形は50%時の波形で、両方とも歪は非常に少なくなっています。 この時の無変調時の出力は8Wです。 出力が8W以上にならないのは、ドライバー段の出力が電源電圧で決まってしまい、ドライバー入力を大きくしても出力は飽和状態になっている事が原因です。 

この状態でローカル局に聞いてもらったところ、こもった音はなく、変調が少し浅いと感じるが歪はあまり気にならないとの事でした。 変調が浅いと感じる理由は、歪を警戒して、変調度計が半分くらいしか振れないようにしたことが主な理由と思われます。 今年のEスポシーズン中にEスポQSOを再度トライする事にします。

見直した変調回路 6mamtrx_txmodunit4.pdfをダウンロード

トランシーバーが実用レベルになると、色々と欲が出てきます。 いままで一番不便だったのが、ラスト周波数メモリー機能が無く、電源をいれる度に周波数が50.500.0に設定される事でした。 このトランシーバーに使用しているPICマイコンはPIC24FJ64GA004という品番で、専用のEEPROMを内蔵しません。 不揮発性のメモリーがほしい場合、プログラムを格納するフラッシュメモリーエリアにデータも書きこむ必要があります。 しかし、その方法は複雑で、いままで避けてきたところですが、3日間くらい苦労した結果、ラスト周波数をメモリーする事が出来るようになりました。 詳細はこちらを参照ください。

ラスト周波数メモリー付ソフト AM_TRX50MHz3.cをダウンロード

Lcdrit98

6mamtrxcomp

50MHzのAMでは、クリスタル発振子によるスポット周波数での運用もあることから、現在設定している±9.9KHzのRIT周波数では不足する可能性があります。そこで、このRIT周波数を±98KHzまで拡大する事にしました。 マイコンのソフトを変更して拡大してみると、2.5KHzスパンのチューニングは粗すぎる事が判りましたので、現在VOL可変に使用していますロータリーエンコーダーを1KHzスパンのチューニングツマミに変更し、RITでも使えるようにしました。 VOLコントロールは可変抵抗を追加してアナログ式に変更しました。 VOL可変時のノイズも無くなり一石二鳥です。

また、過変調でキャリアがゼロになるのを少しでも軽減する為、PWM生成出力をインバーターで反転し、変調のD級アンプをドライブする事にし、今まで無変調時の終段RFアンプのDC電圧が5.7Vであったものを6.0Vに上げました。 この変更により、音声がPWM変調器でクリップするような場合でも、キャリアがゼロになる事は無くなりました。

この状態で、2回目のEスポによるQSOがJR8の局と成功し、6月には、野呂山山頂に移動し、3回目となる、9エリアと2way QSOも成功し、一応トランシーバーの完成を確認できました。 次の目標は、今年の6M&Downコンテストで何局と交信できるかになりました。

そして、6m &Downコンテスト当日、AM局を探しましたが、1局も見つかりません。 仕方なく、SSB局へゼロインしてコールすると、やっと13局とQSO出来ました。 さすがにコンテンスト中という事もあり、こちらがAMであるという事に気付いた局は1局も有りませんでした。 AMキャリア8WのUSBバンドのみをフィルターで選択すると、ピーク2Wになります。 SSBのQRP局5Wより小さくなります。 Eスポも出て北海道や沖縄の局がパイルをさばいているところで、コールしても取ってもらえる確率はほとんどなく、CQを出し始めた局がかろうじてピックアップしてい頂いた結果です。

これで6m AMはしばらくお休みとします。

最終の配線図

6mTRX_DDS_PLL-VFO4.pdfをダウンロード

6mAMTRX_BFO4.pdfをダウンロード

6mamtrx_txmodunit5.pdfをダウンロード

最終のソフト AM_TRX50MHz4.cをダウンロード

フォントファイル Font7.hをダウンロード  fontF30.hをダウンロード

番外として、28MHz用のD級アンプの検討を行いました。 こちらを参照ください。

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2019年4月20日 (土)

アルミ板ベンダーの自作

無線機を自作進行中ですが、回路が完成すると、それを無線機としてまとめる必要が生じます。 通常は、アルミシャーシの上に配置して、適当なパネルを立て、操作できるようにしたケースなしの物になりますが、 移動運用に使う目的の場合、持ち運びが簡単で、容易に壊れない事が要求されますので、ケース加工がマストになります。 いままで、アルミ板の曲げ加工をバイスと木製の当て木だけで行っていた関係で、美しく仕上げる事が出来ませんでした。 当然、寸法出しも難しく、なるべく曲げ加工が無いように作ってきましたが、50MHz用AMトランシーバーを製作する過程で、アルミ板の曲げ加工の必要が生じ、ベンダーマシンを手配する事にしました。

インターネットで調べると宝山がDIYに使えるベンダーを発売していますが、結構な値段がします。 さらに調べていくと、アルミ板くらいなら、ベンダーを自作されている人が沢山いらっしゃいます。 どうせ年に数回しか使わない工具ですので、先人にアイデアを頂きながら、私も自作する事にしました。

Bender2

インターネットにある自作ベンダーの記事を頼りに、左の蝶番と、20mm幅、厚さ2.5mmの鉄製Lアングルをホームセンターで手配し、半日で作ってみました。

ところが、Lアングルの回転半径が大きく、曲げ代が15mm以下になると、アルミ板を曲げられません。 15mm以上のものは一応曲げる事はできますが、折り曲げのRが大きく、結局、またバイスでつかんでハンマーでたたくという作業が必要になってしまい、アルミ板はボコボコです。

インターネットで紹介されている自作ベンダーのほとんどの記事で、概要はわかりますが、詳細な寸法や調整の仕方など、詳しく紹介している記事を見つける事が出来ませんでした。

Bender

そこで、欲張らずに1mm厚のアルミ板に限定したベンダーを、構造から検討し、寸法精度が出ない分は組み立て時、微調整するという事で、再製作を開始しました。

左の図面は、曲げ加工の原理図です。 黒のハッチが二つのLアングルで、赤色が1mmの板厚のアルミ板の位置を示したものです。 青色のアルミLアングルは折り曲げる板を下から挟む為のものです。

真ん中の円は蝶番の回転中心です。 今回の蝶番は先の失敗した物とは異なり、ビス止めする板の部分がフラットのまま回転軸に回り込む構造の物にしました。 また、この蝶番の板厚は1mmのものとし、この1mmが折り曲げるアルミ板の厚み上限となります。

板厚1mmの蝶番というのは、結構小さい形状で、耐荷重も大きくありません。 従い、寿命も短いとは思いますが、ガタがくるようになったら、蝶番を交換する事にします。

原理図では蝶番の回転軸にそって、右下のLアングルを起こすと、左上のLアングルの角の部分を支点として、直角にアルミが折れ曲がる事を示しています。

Bender1

原理図を元に蝶番の位置を決め3mmのビスナットで組み立てたのが上の写真です。 ビス穴は4.5mmを開けてあり、原理図のように1mmのアルミ板を挟んだ時、ぴったり隙間なしになるよう位置決めしてビスナットを締め付けました。

Bender3

実際に取り付けた蝶番が左の写真です。Lアングルを立てた場合、蝶番を止めるビス頭が一方のLアングルに緩衝しますので、8mmの穴を開け逃げてあります。

8mmの穴の近くにある3個の穴は失敗した蝶番の止め穴で、今回のベンダーには無関係です。

下の写真は曲げ代10mmで試験的に曲げたものです。Lアングルは90度までしか曲がりませんので、アルミ板の曲げ角度は88度くらいまでしか曲げられません。 この構造ではこれ以上は無理ですので、曲げ加工後、あて木で矯正する事にします。

Bender5

このベンダーで実際に板を曲げる場合、このLアングルの下に2mm厚のアルミLアングルを敷き、このアルミLアングルとベンダーのLアングルの間に曲げようとするアルミ板を差し込みます。 当初、この幅20mmのアルミLアングルだけでしたが、本来曲げる位置から約25mmの位置で2度くらいの折れ線が生じます。曲げる時の力が作用して、Lアングルのはしっこでアルミ板に余計な力が加わるようです。

対策としては、2mm厚のアルミ板を幅200mm、奥行き60mmまで両面テープで張り付け、力が集中しないようにしました。 効果は完全ではありませんが、手で矯正すれば治りますので、良しとします。

Bender8

上の写真が、2mm厚のアルミ板を敷いた状態です。 また、ベンダーアングルを固定する為にクランプを使いますが、そのクランプがつかみやすいように木製の台を作りました。 この板の下に下駄の歯のように、30mm角のサンをビス止めしてあります。

Bender6

曲げ幅が100mm以内なら指で押さえるだけでLアングルは90度回転しますが、100mmを超えると難しくなります。 その場合、上の写真のようにクランプで締め上げる事にしました。 最大折り曲げ幅は200mmです。

Bender7

左はこのベンダーで加工した、アルミシャーシで、トランシーバーのPLL VFOのケースです。最大曲げ幅は173mm、最少曲げ代7mm。 前回のボコボコのものよりかなり美しく仕上がりました。 

このケースを使ったトランシーバーはここで見る事が出来ます。 結構きれいに仕上がっています。

 

何回か使っていると、ビス止めしたLアングル同士がずれてきます。 曲げのRが大きくなってきた時は、再度Lアングルの位置関係を調整しなおしました。

また、曲げる外側のラインにカッターナイフでケガキ線を入れておくと、きれいに曲がります。 ただし、線をけがくのは1回だけです。 複数回けがくとそのラインで折れてしまう事があります。

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2019年3月23日 (土)

50MHz AMトランシーバー(組み立て)

カテゴリー<6m AM >

一応、各ブロックが完成しましたので、これを、事前に用意したケースに収納する事にします。 ケースはドイツ製のアンテナが収納されていたものですが、そのアンテナが廃棄処分になりましたので、ケースだけもらって来たものです。 外形は大きいのですが、いざAMトランシーバーを収納しようとすると、これがかなり窮屈です。SSB用のリニアアンプ仕様のトランシーバーなら、大きなサイズになるのはファイナルだけですが、AMでPWM変調なら、D級の変調器、この変調器用のトロイダルコアによるLPF、AM変調を受ける終段のゲインが確保できない為、終段と同じくらいのサイズになるドライバーなど、思った以上にサイズが大きくなりました。 ケースサイズが先に決まっていますので、すでに出来上がったユニットをさらに小さくするなど、かなり苦労しました。

6mtrx_cab_jw

いつものようにJW CADにて、組み立て図を作成し、なんとか収納できました。 この図面をベースにシャーシやアングルの加工を行い、仮実装したのが下の写真です。

6mtrx_cab0

とりあえず、各ユニットを指定位置に固定したもので、配線はされておりません。 右半分のAM送信機の部分はカバーがかぶせられていません。 配線完了し、調整や実働テストが終了してから考える事にします。

AM送信機部分の配線図 6mamtrx_txmodunit1.pdfをダウンロード

まずは、受信部から調整です。RF段、IF段の各同調トランスのコアを調整し、50.500MHz±300KHzの範囲で感度差が少なくなるように調整しました。 この場合、調整が少しずれるだけで、発振をおこしますので、T2の出力端に100Ωの負荷抵抗を挿入したQダンプ対策は、継続する事にしました。 これによりAM部分は従来の受信機と同等となっています。

Amtrx_rxunit_top_2

Amtrx_rxunit_back

上の写真は受信ブロックのみを配線完了した状態です。 この状態でSSBの復調問題について、若干の改善を検討しました。 やはり気合いだけでは何も解決しませんでした。 SSB受信時にBFOの信号を一定レベルにしておくと、強入力時、キャリア不足の為、モガモガ音がひどくなる問題の対策として、信号レベルに応じて、BFOの出力レベルを変化させてみました。 

Bfo_agc

DSPの出力として得られるSメーター用のデジタルデータを元に、PICの中でPWMによるD/Aコンバーターを作り、得られたDC出力でBFOのバッファとして追加したデュアルゲートFETのG2を制御し、SSB信号のレベルが大きくなったら、BFOレベルも大きくする回路を追加しました。

SSBの疑似信号で確認すると、ある程度の制御効果が確認できます。 S1のときとS9のときのビート音量はあまり変わりません。 実際のS9くらいのSSB信号を聞いた感じは、音量に不足がありますが、復調はOKでした。 逆に微弱信号の場合、復調しにくいかもしれませんが、まだ確認は出来ていません。 

ただし大きな問題があります。 このBFOレベル制御システムは、正帰還で動作していますので、一度、自分のBFO信号を検知すると、BFO出力を大きくするように働きます。 そして、S9くらいまで大きくなったら、AGCによりそれ以上BFOレベルが大きくならないレベルで安定し、結果的に音量を小さくしてしまいます。

実際にS9程度のSSB信号を受けた後、チューニングダイアルを回し、他の周波数を受信しようとすると、このBFOの信号を受信したままAGCがかかりぱなしになり、弱い信号を受信できなくなります。 やむなく、AGC信号から自動レベル調整を止め、手動でBFOレベルを可変する事にしました。 SSBを受信する場合、音量とこのBFOレベル両方を調整必要ですが、確実に復調出来るようになりました。 通常のSSB受信機と比較すると、かなり見劣りしますが、今回はメインがAMであり、もし相手がAMの送信が出来ない場合でも、なんとか交信が成立出来る手段として設けた機能ですので、この程度で良しとします。

PLL VFO配線図 6mTRX_DDS_PLL-VFO1.pdfをダウンロード

RX BFO配線図 6mAMTRX_BFO1.pdfをダウンロード

TX MOD配線図 6mamtrx_txmodunit1.pdfをダウンロード

6mtrx_comp1

受信部、電源、送信部、変調部の配線結合が終わりました。  このセットのDDSやDSP及び送受信制御のマイコンもほぼ完成しましたので、ソースコードを公開します。

AM_TRX50MHz1.cをダウンロード

DSP受信機のIF周波数は約2KHz高い方へずれていましたので、DSP受信機の周波数は24MHzから2KHz低い周波数を指定しました。 その上で、USBとLSB受信の時だけ、IF周波数を2KHzほど上下にずらし、BFOのキャリアをまともに受けないようにしてあります。

これから、変調回路、送信部の確認に入ります。

2019年4月6日

送信部まで配線完了し、確認した変調波形とスプリアスです。

Mod95_0406_2

Sprias0406_2

左上の波形は1KHz 95%変調時のダミー負荷でのもので、一応まともな波形をしていますが、キャリア出力が7Wしかありません。 RF段の各ステージ単体のデータはゲインが有りあっており、余裕で10Wを出力するはずでしたが、実際は前作の出力にも満たない状態です。 さらに右上のスプリアスに至っては、全く実用不可能な状態である事が判りました。

このスプリアス測定時、6次LPFも装着してあったのですが、150MHzでかなり大きなスプリアスとなっています。 また、基本波である25MHzの漏れも大きく、完全にアウトです。 25MHzの漏れは受信状態でも同じレベルで、VCOの出力がそのままアンテナ端子へ漏れてくるという60年くらい前の5級スーパーと同じくらいのレベルです。 もちろんノイズフロアも大きく上昇して、全ての周波数でNGというありさまです。

パワーアンプ単体の検討時、スペアナを接続してなかった事を悔やみながら、改めて、各ステージのスプリアスを確認する事にしました。 この終段に入力を加えず、DC電源だけ加えたところ、フロアノイズが写真と同じくらいのレベルで現れます。 原因は終段の発振です。 アイドル電流がゼロの場合、問題ありませんが、アイドル電流を流し始めた途端、フロアノイズが増加します。 前回の送信機の状態から、入力トランスの位置をドレイン側に移動し、入出力が結合しやくなったのが災いし、発振にいたる寸前のレベルで正帰還が起こり、結果としてノイズフロアと高調波を増大させている事がわかりました。 対策は、ドレインからゲートにCRの負帰還回路を追加する事で、解決しました。追加したCRは1Kと390PFっです。

同様にドライバー段をチェックすると、同じように発振寸前の状態でした。 ここには元々500Ω+1000Pの負帰還回路を実装してありましたが、不足のようですから、500Ωを330Ωに変更して、OKとなりました。

プリドライバー部分の異常はありませんでしたが、VCO+2逓倍回路をつなぐと、また。同じようなノイズフロアと高調波になります。

この原因は25MHzを50MHに2逓倍すると同時にプリドライバーをドライブできるだけの出力を得る為にゲイン最大で使った事のようです。 発振しないようにゲインを落とすと、終段の出力は2Wくらいしかなく、7W以上の出力が得られるようにゲインアップすると発振してしまいます。 また、発振しないようにコイルをQダンプすると高調波や低調波が除去できません。

このトランシーバーの最大の問題点はシールドなしの同調トランスを使用した事である事がわかりました。 また、基板に機械的衝撃を加えると、周波数が3MHzくらい飛んでしまい、元に戻らないという問題も発生しました。 結局、受信機のミキサー用のレベルに合わせたPLL-VCOのレベルは送信機をドライブするには低すぎる為、キャリア増幅段でゲインを高く取らざるを得ず、それが発振の原因であった事。 さらに、VCO回路を独立したブロックにした事で、そこまでの配線が長くなり、機械的振動で浮遊容量が変化する事がVCOを不安定にしていました。

対策は、まずVCOをPLL VFO基板の中に取り込み、最短配線処理する事。 送信キャリア増幅段はゲインを欲張らず、この出力とプリドライバーの間に独立したシールドされたアンプを追加する事にします。

Vco2

Rx2

Vco_bfesin

左上の赤枠で囲まれたエリアがVCOを組み込んだ部分。 右上の赤枠の部分が増幅段を1段にした送信用キャリアアンプです。

左のサイン波はこのキャリアアンプの出力波形ですが、高調波の多い歪んだ波形です。 しかし、この高調波は送信機の各ステージで丸められ、最後に終段のLPFで除去されますので、問題にはなりません。 VCOをPLL回路基板に同居させたことで、マイコンや、その他の回路からのノイズ誘導が心配でしたが、下のスペアナ表示の通り、心配は有りませんでした。

Vco_bfe200m

Vco_bfe10m

左上が200MHzスパン、右上が10MHzスパンです。 25MHzや75MHzがかなりのレベルで残っていますが、これは後段のタンク回路で除去できます。 右の50MHz周辺のノイズも-70dBくらいで収まりました。

これまでの検討で、送信出力のVCOへの回り込みが認められましたので、シャーシ構想を変更し、PLL-VCO段は完全シールド形式に作り替えることにします。 同時に受信機ブロックも独立させ、電源ブロックを送信機側に結合できるように変更した後、このブロックにキャリアアンプとプリドライバーの間に追加するバッファーアンプを入れる事にします。

この辺の作業は5月連休にやる事にします。

50MHz AMトランシーバー(組み立て2) へ続く。

 

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