50MHz AMトランシーバー(組み立て)
カテゴリー<6m AM >
一応、各ブロックが完成しましたので、これを、事前に用意したケースに収納する事にします。 ケースはドイツ製のアンテナが収納されていたものですが、そのアンテナが廃棄処分になりましたので、ケースだけもらって来たものです。 外形は大きいのですが、いざAMトランシーバーを収納しようとすると、これがかなり窮屈です。SSB用のリニアアンプ仕様のトランシーバーなら、大きなサイズになるのはファイナルだけですが、AMでPWM変調なら、D級の変調器、この変調器用のトロイダルコアによるLPF、AM変調を受ける終段のゲインが確保できない為、終段と同じくらいのサイズになるドライバーなど、思った以上にサイズが大きくなりました。 ケースサイズが先に決まっていますので、すでに出来上がったユニットをさらに小さくするなど、かなり苦労しました。
いつものようにJW CADにて、組み立て図を作成し、なんとか収納できました。 この図面をベースにシャーシやアングルの加工を行い、仮実装したのが下の写真です。
とりあえず、各ユニットを指定位置に固定したもので、配線はされておりません。 右半分のAM送信機の部分はカバーがかぶせられていません。 配線完了し、調整や実働テストが終了してから考える事にします。
AM送信機部分の配線図 6mamtrx_txmodunit1.pdfをダウンロード
まずは、受信部から調整です。RF段、IF段の各同調トランスのコアを調整し、50.500MHz±300KHzの範囲で感度差が少なくなるように調整しました。 この場合、調整が少しずれるだけで、発振をおこしますので、T2の出力端に100Ωの負荷抵抗を挿入したQダンプ対策は、継続する事にしました。 これによりAM部分は従来の受信機と同等となっています。
上の写真は受信ブロックのみを配線完了した状態です。 この状態でSSBの復調問題について、若干の改善を検討しました。 やはり気合いだけでは何も解決しませんでした。 SSB受信時にBFOの信号を一定レベルにしておくと、強入力時、キャリア不足の為、モガモガ音がひどくなる問題の対策として、信号レベルに応じて、BFOの出力レベルを変化させてみました。
DSPの出力として得られるSメーター用のデジタルデータを元に、PICの中でPWMによるD/Aコンバーターを作り、得られたDC出力でBFOのバッファとして追加したデュアルゲートFETのG2を制御し、SSB信号のレベルが大きくなったら、BFOレベルも大きくする回路を追加しました。
SSBの疑似信号で確認すると、ある程度の制御効果が確認できます。 S1のときとS9のときのビート音量はあまり変わりません。 実際のS9くらいのSSB信号を聞いた感じは、音量に不足がありますが、復調はOKでした。 逆に微弱信号の場合、復調しにくいかもしれませんが、まだ確認は出来ていません。
ただし大きな問題があります。 このBFOレベル制御システムは、正帰還で動作していますので、一度、自分のBFO信号を検知すると、BFO出力を大きくするように働きます。 そして、S9くらいまで大きくなったら、AGCによりそれ以上BFOレベルが大きくならないレベルで安定し、結果的に音量を小さくしてしまいます。
実際にS9程度のSSB信号を受けた後、チューニングダイアルを回し、他の周波数を受信しようとすると、このBFOの信号を受信したままAGCがかかりぱなしになり、弱い信号を受信できなくなります。 やむなく、AGC信号から自動レベル調整を止め、手動でBFOレベルを可変する事にしました。 SSBを受信する場合、音量とこのBFOレベル両方を調整必要ですが、確実に復調出来るようになりました。 通常のSSB受信機と比較すると、かなり見劣りしますが、今回はメインがAMであり、もし相手がAMの送信が出来ない場合でも、なんとか交信が成立出来る手段として設けた機能ですので、この程度で良しとします。
PLL VFO配線図 6mTRX_DDS_PLL-VFO1.pdfをダウンロード
RX BFO配線図 6mAMTRX_BFO1.pdfをダウンロード
TX MOD配線図 6mamtrx_txmodunit1.pdfをダウンロード
受信部、電源、送信部、変調部の配線結合が終わりました。 このセットのDDSやDSP及び送受信制御のマイコンもほぼ完成しましたので、ソースコードを公開します。
DSP受信機のIF周波数は約2KHz高い方へずれていましたので、DSP受信機の周波数は24MHzから2KHz低い周波数を指定しました。 その上で、USBとLSB受信の時だけ、IF周波数を2KHzほど上下にずらし、BFOのキャリアをまともに受けないようにしてあります。
これから、変調回路、送信部の確認に入ります。
2019年4月6日
送信部まで配線完了し、確認した変調波形とスプリアスです。
左上の波形は1KHz 95%変調時のダミー負荷でのもので、一応まともな波形をしていますが、キャリア出力が7Wしかありません。 RF段の各ステージ単体のデータはゲインが有りあっており、余裕で10Wを出力するはずでしたが、実際は前作の出力にも満たない状態です。 さらに右上のスプリアスに至っては、全く実用不可能な状態である事が判りました。
このスプリアス測定時、6次LPFも装着してあったのですが、150MHzでかなり大きなスプリアスとなっています。 また、基本波である25MHzの漏れも大きく、完全にアウトです。 25MHzの漏れは受信状態でも同じレベルで、VCOの出力がそのままアンテナ端子へ漏れてくるという60年くらい前の5級スーパーと同じくらいのレベルです。 もちろんノイズフロアも大きく上昇して、全ての周波数でNGというありさまです。
パワーアンプ単体の検討時、スペアナを接続してなかった事を悔やみながら、改めて、各ステージのスプリアスを確認する事にしました。 この終段に入力を加えず、DC電源だけ加えたところ、フロアノイズが写真と同じくらいのレベルで現れます。 原因は終段の発振です。 アイドル電流がゼロの場合、問題ありませんが、アイドル電流を流し始めた途端、フロアノイズが増加します。 前回の送信機の状態から、入力トランスの位置をドレイン側に移動し、入出力が結合しやくなったのが災いし、発振にいたる寸前のレベルで正帰還が起こり、結果としてノイズフロアと高調波を増大させている事がわかりました。 対策は、ドレインからゲートにCRの負帰還回路を追加する事で、解決しました。追加したCRは1Kと390PFっです。
同様にドライバー段をチェックすると、同じように発振寸前の状態でした。 ここには元々500Ω+1000Pの負帰還回路を実装してありましたが、不足のようですから、500Ωを330Ωに変更して、OKとなりました。
プリドライバー部分の異常はありませんでしたが、VCO+2逓倍回路をつなぐと、また。同じようなノイズフロアと高調波になります。
この原因は25MHzを50MHに2逓倍すると同時にプリドライバーをドライブできるだけの出力を得る為にゲイン最大で使った事のようです。 発振しないようにゲインを落とすと、終段の出力は2Wくらいしかなく、7W以上の出力が得られるようにゲインアップすると発振してしまいます。 また、発振しないようにコイルをQダンプすると高調波や低調波が除去できません。
このトランシーバーの最大の問題点はシールドなしの同調トランスを使用した事である事がわかりました。 また、基板に機械的衝撃を加えると、周波数が3MHzくらい飛んでしまい、元に戻らないという問題も発生しました。 結局、受信機のミキサー用のレベルに合わせたPLL-VCOのレベルは送信機をドライブするには低すぎる為、キャリア増幅段でゲインを高く取らざるを得ず、それが発振の原因であった事。 さらに、VCO回路を独立したブロックにした事で、そこまでの配線が長くなり、機械的振動で浮遊容量が変化する事がVCOを不安定にしていました。
対策は、まずVCOをPLL VFO基板の中に取り込み、最短配線処理する事。 送信キャリア増幅段はゲインを欲張らず、この出力とプリドライバーの間に独立したシールドされたアンプを追加する事にします。
左上の赤枠で囲まれたエリアがVCOを組み込んだ部分。 右上の赤枠の部分が増幅段を1段にした送信用キャリアアンプです。
左のサイン波はこのキャリアアンプの出力波形ですが、高調波の多い歪んだ波形です。 しかし、この高調波は送信機の各ステージで丸められ、最後に終段のLPFで除去されますので、問題にはなりません。 VCOをPLL回路基板に同居させたことで、マイコンや、その他の回路からのノイズ誘導が心配でしたが、下のスペアナ表示の通り、心配は有りませんでした。
左上が200MHzスパン、右上が10MHzスパンです。 25MHzや75MHzがかなりのレベルで残っていますが、これは後段のタンク回路で除去できます。 右の50MHz周辺のノイズも-70dBくらいで収まりました。
これまでの検討で、送信出力のVCOへの回り込みが認められましたので、シャーシ構想を変更し、PLL-VCO段は完全シールド形式に作り替えることにします。 同時に受信機ブロックも独立させ、電源ブロックを送信機側に結合できるように変更した後、このブロックにキャリアアンプとプリドライバーの間に追加するバッファーアンプを入れる事にします。
この辺の作業は5月連休にやる事にします。