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2017年6月25日 (日)

7MHz D級アンプ QRO計画 7(200W)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

薄膜高周波抵抗を使った250Wのダミー抵抗が断線し、エージングは頓挫していましたが、ヤクオクで同等スペックの抵抗が売りに出ていましたので、さっそくこれをゲット。

205nb_dummy

Rf_250w_swr_gr_4

 

左上が入手した250W薄膜高周波抵抗を放熱板に貼り付けた状態。右上はこのダミーをCAA-500mk2でSWRを測定した結果です。HFはSWR1.0、435MHzでもSWR1.3になっています。 とりあえず、100Wで10分程度慣らし運転して異常ありませんでしたので、当ダミーは今後AM送信機のエージング試験には使わない事にします。

エージング用はもう少し乱暴に扱っても壊れにくい、オイル冷却のダミーロードを作る事にしました。

ダミーロードができたので、送信機本体も200W対応に向け改造しました。

Amtx200wv2 

上はその改造後のシャーシです。 まず、シャーシの真ん中で空気を掻き混ぜていたファンをバックパネルに移動し、内部の熱された空気を外へ吸い出すようにしました。 その関係で変調回路のLPFは元ファンの有った場所へ移動です。

TDKのLINEフィルターは効果的に動作していましたが、定格電流が5Aでしたので、140Wでのエージングで、かなり熱くなっていました。 そこで、このフィルターを10Aタイプに変更しました。サイズが大きくなったので、電解コンデンサは移動してあります。 このフィルターは、接続したDC電流計が正しく動作するかどうかでその効果は確認できます。もし、挿入した電流計が異常値を示すようなら、決まって高周波が漏えいし、色々な障害を生じさせる事になります。

電源として使っているTS-930Sには44000uFの電解コンデンサが使われており、これに9400uFのコンデンサをパラに追加していましたが、変調のピークをカバーするほどの効果は有りませんでした。 そこで、今回30000uFのコンデンサを追加しました。 ピーク電力の増加を期待したいところです。

ケースの底板に穴を明け、ここから外気を吸い込み、後方のファンへ抜けるようにしました。

Amtx200wv3

Amtx140wasing

そして、上は、強制空冷状態で140W連続30分のエージング風景です。ケースの天板は手の平をずうと押し付けていられるほど温度が下がり、この後、2時間続けても問題なしのレベルまで改善しました。

Amtx200wpower

30Vの電源を40Vにアップする為、12V 30Aのスイッチング電源を手配しました。 これをTS-930Sの電源にシリーズに接続して使います。 現状のままでは42Vになってしまい、12Vを作るDC/DCの最高電圧40Vをオーバーしますので、TS-930Sの電源の電圧調整部分を改造し、26Vから30Vまでを可変できるようにしました。 またAC/DC自身も10Vから14Vまで可変できますので、両方の電圧を調整して最大40Vに設定しています。 

まず、30V+10Vで確かに200Wでるのか確認しました。 

Acdc12vpower

200woutput

左上が臨時に追加した12V AC/DCです。 これで40Vの電圧を確保して200Wの出力を得たのが右上のメーターです。 このAC/DCは、アマゾンで2300円くらいで販売されていました。 取説なし、電源コードなし、その上、初期不良で電源ONせずというシロモノでしたが、110/220Vの切り替えSWをカチカチやったら、時々動きます。

Acdcsw

原因は左の写真のように。スイッチが傾いて挿入されており、左側の端子が基板とつながっておらず、かろうじて裏の半田の上に乗っているだけという状態でした。 中を開け一度、ハンダを吸い上げ、スイッチが自由に動く状態にして、きっちりと基板に密着させハンダ付けしました。 また、2か所でアルミ板を放熱板に使っていますが、FETとアルミ板の間はシリコンラバーが挟んでありましたが、アルミ板と外側のアルミケースとの間にはなにもなく、熱伝導が心配になりましたので、シリコングリスを塗り込んでおきました。 動き出せば、コスパは最高です。

 AC/DCの右端に写っているのは、定格5AのAC LINEフィルターです。 これを付けていると、少なくとも7195KHzでのノイズは気になりません。

200w_dc40v_2

200wout630hz_2

 左上が200W送信時の電流値と変調度、右上は630Hz信号による最大変調度の波形です。 電流が常に9Aを超えるようなら、このメーターの目盛をMAX15Aに作る変えるつもりです。

配線図 AMTX_200W_0.pdfをダウンロード

電源から最大パワーを得るには26V+14V=40Vが良さそうですので、この電圧配分でエージングテストをする事にします。

200w9a

実際にテストしたのは、26V+12V=38Vで行いました。 スタンバイ状態で38Vですが、200W送信時には37.2Vまで下がります。

200W出力時の電流は8.8Aくらいです。

ドライバー段の電流を差し引いた状態でのPWM変調回路込みの終段能率は75%くらいです。 特に良い訳ではありませんが、200Wで20分のエージングテストもクリアーしましたので、これから、ダミーロードを心配しながら2時間エージングにトライしてみます。

心配していました、ピーク電力ですが以下のようになりました。

200wcw_2

200w95mod_2

 

左上は200W無変調キャリアだけです。右上は、630Hzのピークがクリップするまで変調度を上げた状態です。オシロの目盛からピーク値は2倍ではなく1.8倍くらいですので、ピーク電力は650Wくらいです。

次に、音楽ソースで確認しました。

Carir200wMusic200w

同じように左が無変調、右がボーカルの入った音楽ですが、ピークは2倍になっております。オーディオのミュージックパワーと同じように、正弦波でない、音声信号では、ピークで800Wは出ているようです。

このミュージックパワーを確認しながらエージングを継続し、約30分経過した時点で、はじける音がして、出力が無くなり、電流も1A以下になってしまいました。 オシロで各波形をチェックすると、終段のゲートドライブ電圧が極端に小さくなっています。また、終段のゲートもドレインと同電位まで上昇しているFETもあります。 各素子を回路から切り離し、それぞれチェックしたところ、

Q2のドレインソース間がショート状態。

Q4,Q5,Q9,Q10,Q11,Q12の内、4本がゲートソース間ショート。

ゲートの1Ω抵抗も6本中4本断線。

断線した1Ωは黒焦げになっていました。 この抵抗に流れる電流はゲート容量をチャージする電流で、ピーク12Vくらいの電圧がかかりますので、単純計算でピーク12Aとなります。実際は回路のインピーダンスなどの影響で、数Aと考えられます、それでもピークで数Wもかかっている事になります。 そこに1/10Wのチップ抵抗を使ったのが原因のようです。 この6本のゲート抵抗が少しずつ断線し、残ったFETに負荷が集中した結果、終段のFET6個中4個が壊れた様です。 また、ゲートとソースがショートした事で、ドライバー段のQ2も壊れたと推察されます。

ここで、インターネットで海外の情報を調べると、皆さん2Wくらいの抵抗を使っているようです。あいにく、2W1Ωの抵抗は持ち合わせしていませんので、とりあえず1/10W 2.4Ωを4個パラにしてしのぐ事にしました。 終段FETの在庫も無くなりましたので、この抵抗も一緒に手配だけはしておこうと思います。

200wtest

修理完了して、200Wのエージングを再開しました。 左は、1リットルのダミーロードを3リットル缶に水を入れ、熱容量を大きくした上で、扇風機で仰ぎながらエージングしている風景です。

そして、約30分で、またも、出力が出なくなりました。 直接の原因は終段のSTF17NF25の1石が全端子ショート状態となり、これにより、他の5石のFETのゲートドライブが停止し、電流が流れなくなったものでした。 どうやら熱破壊です。 ファイナルステージの放熱板は、指を当てていられないほど熱くなっていました。 ファンを放熱板から離し、後方へ移動させたのがいけなかったようです。 そして、この熱で一番弱いFETが死んだのでしょう。

対策はファンを追加するか、STF17NF25モールド品からドレインむき出しのSTP17NF25に変えるかです。 ファン追加は構造の大変更を伴いますので、FETを変更する事にしました。 そして部品手配が出来るまではお預けとなりました。

 

7MHz D級アンプ QRO計画 8 (200Wつづき)へ続く

 

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2017年6月24日 (土)

オイル冷却ダミーロードの製作

200WのAM送信機の製作を行っていますが、200W連続印加可能なダミー抵抗が無く、エージングができていません。 そこで、金属皮膜抵抗を使ったオイル冷却のダミー抵抗を作る事にしました。

材料は200Ω 5Wの金属皮膜抵抗16本、厚さ0.3mmの銅板、ペンキ用の1リットル空き缶、Mコネクタ、BNCコネクタなどです。

80wdummydraw

いつものようにJW-CADで抵抗を円筒状に並べる為、寸法を決めながら作図し、その図面を銅板の上に糊で貼り付けます。

右上の板は丸めて、コネクターと抵抗の接続に使います。

円板は3枚で、コネクターより一番遠い板は中心に3mmの穴を明け、同軸コネクターの中心導体を直径3mmの銅パイプで延長し、この穴に接続します。 それ以外の円板は2枚ともセンター穴を16φとして銅パイプと距離を確保します。

抵抗は8本をパラに接続し、25Ωにした後、これを2段シリーズにつないで50Ωの抵抗にします。 また、オイルに浸すのはこの50Ωの抵抗のみで、スペアナモニーター用のATTやBNCコネクターはオイル外になるよう、Mコネクタと50Ωの抵抗の間に距離を確保するようにしました。

80wdummy1

80wdummy2

上の写真が組み立て完了したダミー抵抗です。5Wの抵抗を16本使っていますので、この状態で80Wの容量があります。 この裸の状態で予備テストしたところ、80Wの出力で、抵抗の塗装が焼け、煙がでます。 裸のままで約10分間80W連続テストをしたところ、初期の煙も収まりました。

これをペンキ用1リットル缶の蓋に取り付けます。

80wdummy3

80wdummy4

左上がダミー抵抗を缶の蓋の裏に取り付けたところです。 モニター用BNC端子へのATTは、2KΩ 2Wを2本シリーズに入れました。 右上は蓋をかぶせて完成した状態です。

アンテナアナライザで測定したSWR特性は以下のようになりました。 1.7MHzから50MHzまでは、SWRを小数点以下2桁まで表示する自作のアンテナアナライザで測定し、145MHzと435MHzはコメットのCAA-500mk2で測定したものです。

Rf_80w_swr_da

Rf_80w_swr_gr

缶の中に何も入れない状態(空気のみ)でのSWR特性は145MHzまでなんとか使える範囲です。 試に水を入れてSWRを測ってみました。50MHz付近にSWR最大ポイントがありますが、3.5MHzや7MHzなら我慢して使えると思われます。

オイルを缶の7部目くらいまで入れ、抵抗本体だけがオイルの中に浸るようにした状態で測定した結果、145MHzまでは空気だけのときより良好です。

使ったオイルは日清キャノーラ油、近くのスーパーで、お一人様1本限り、1kg 108円でした。

下はオイル充填状態で、140Wの出力を加えダミーロードのエージングをしているところです。 約10分経過して、缶の上面はアッチッチですが、缶の底辺は指で触っていられます。

Dummy140wtest

140Wで30分のエージングが終わりました。 さすがに缶の底辺も指を触れ続けられないほど熱くなっています。 1時間半、間をおいて、今度は1時間のエージングにトライしました。 50分過ぎくらいにモニター出力が出なくなりました。エージングを中止し、缶の中を覗くと、 2KΩの抵抗2本が缶の底に沈んでいました。 ハンダが解けて、オイルの中に落ちてしまったようです。

Dummyatt

80Wの金属皮膜抵抗16本には異常がありませんので、このATTの部分だけがNGのようです。缶が冷えるのを待って、左の写真のような対策を行いました。ATTの抵抗を6本に増やし、すべてカシメで結合しました。 先端の同軸芯線への接続はハンダ付けです。 これで再度1時間のエージングにトライし、問題なしでした。 BNCコネクタの反対側に見えている小さな円筒は換気孔です。 熱膨張した空気の逃げ場を作る為、設けました。 中のオイルが揺れて跳ねても、簡単にこぼれないように筒状のダクトにしてあります。ダクトの内径は3mmです。

 

この実験から、安心して200Wのエージングが出来る為には、缶の容量を2リットルくらいまでアップすべきと考え、ホームセンターに探しに行きましたが、あいにく2リットル缶は無く、代わりに3リットル缶がありましたので、これを購入して来ました。サイズ的に、1リットル缶がすっぽり収まり、取っ手の部分で宙吊りになりますので、とりあえずは3リットル缶に水をいれて、オイルの入った1リットル缶沈めて見る事にします。

このダミーロードを実際に使っている状態はこちらです。

Dummy3l

その後、1リットル缶では熱容量が不足するのを実感しましたので、3リットル缶に変更する事にしました。

特用1.3Kgのキャノーラ油を継ぎ足すと、ちょうど抵抗全体がオイルの中に浸すレベルとなりました。 元の1リットル缶は粗大ゴミ用のごみ箱行となりました。

 

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2017年6月17日 (土)

7MHz D級アンプ QRO計画 6 (140W)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

100Wエージングで、ダミーロードがアッチッチになり、途絶えていた200W出力に向けたテストをやっと再開できるようになりました。 しかし、現在の電源は最大で140Wのキャリア出力しか出せませんので、まずは、140Wでのエージングとしました。

Amtx200w0

シャーシも200W対応に改造しました。

200W対応配線図 AMTX_100W_5.pdfをダウンロード

Dummy2501_2

Dummy2502

6年前に自作したダミーロードはDC-2GHzで250WというRF抵抗を使用していました。 作りが雑なので、145MHzでSWR1.5くらいの性能しか有りませんでしたが、HFで使う分には十分です。 今回これに通風孔を開け、スペアナでモニターできるように出力端子を追加しました。 そして、臨時にファンも付けられるようにし改造しました。

このダミーロードで200Wの連続運転が出来るかは、これからです。 このRF抵抗はすでに生産中止になっており、焼けたらおしまいです。

さっそく100Wでエージング開始です。 音楽を変調し、最大90%くらいの変調度にした途端、抵抗の焼ける匂いです。 送信機本体ではなく、ダミー抵抗のほうから煙が出ています。放熱穴からのぞくと、モニター端子へ設けた2.2KΩの抵抗が焼けて黒くなっています。 この抵抗は1/4Wタイプ。 改めてこの抵抗の電力を計算すると、100W時約2.2Wの電力になり、焼けて当然。 ジャンク箱をひっくり返して、2KΩ 2Wという抵抗を見つけ交換しました。

100Wでエージング中に煙を出したクラニシの電力計を開けてみましたら、まさしく焼けたのは、このモニター端子用ATT抵抗でした。しかも、誰かが追加した1/4Wの抵抗でしたので、これを同じように2KΩ 2Wに変更して、また使う事にします。

Amtx140wmaxmod

Amtx140wout

左上は140W出力時の最大変調度波形、右上はその時の電力計の指示です。

しばらくエージングを続けていると、突然出力が100Wくらいに落ちました。さらに続けると、変調のピークでジーという音と共にどこかが明るくなります。しばらく観察していると、最終段のバリコンVC1の羽根から青白い光が出て放電しているのが見えました。 電源をOFFして放電したところを観察すると、ステーターの羽根が変形し、ギャップが狭くなっている所でした。これを、正常の位置に修正し、全てのギャップが約0.5mmになるようにし、再度トライです。

しかし、今度は、正常なギャップで放電します。放電は変調のピークで発生し、一度発生すると、かなりの時間継続します。 この直列共振回路は思った以上に高電圧を発生させるようです。 対策は、コイルのインダクタを小さくし、バリコンの容量を増やしQを下げるか、もっと耐圧のあるバリコンに変えるか。 

Q3coil

高耐圧のバリコンに変える案は、実現性がありませんので、コイルのインダクタを下げ、Qを下げて発生する電圧の波高値を押さえる案でトライしました。

現在のQは計算で5.9くらい。これを3.4まで下げました。 バリコンは当初75PFくらいでしたが、これを130PFくらいまでアップすると、バリコン両端の電圧は約58%に下がった事になりました。 この状態で140W連続出力でエージングしていますが、異常なしです。

Amtx100wonly1lpf

約1時間くらいクラニシの電力計でエージングしていると、今度はクラニシの内部から塗装の焼ける匂いがしてきます。 200W 3分の仕様では140W1時間はやはりきついみたいです。 ダイアモンドの電力計は、50Wのときクラニシとほぼ指示値は合いますが、クラニシで140Wのときダイアモンドは180Wと指示します。 (ダイアモンドのSX-200は一度ダイオードをオリジナル品から別の物に交換しており、多分これがオリジナルと同じリニアリティを確保できない原因と思われ、私の持っているSX-200だけの問題です) 物置に有ったコメットのCMX-200を持ってきてつなぎかえると、クラニシと指示値は一致しましたので、今後はコメットのCMX-200と自作のダミーでエージングを続けます。

上は100W出力時のスプリアス特性です。 内臓の7次LPFだけの状態で、第2高調波が-50dBギリギリです。 実際に使う時は、外付けの6次LPFを通す予定です。

Amtx140wcur

現在の電源電圧は30V。さすがにTS-930S用の電源は350WくらいがMAXのようで、140Wキャリア出力時のピーク電力520Wは出ません。 オシロをモニターしていても約350Wが最大値となっています。 これから、200Wにパワーアップするには計算上36Vの電圧が必要ですが、合わせて800Wの容量が必要となります。 

とりあえず、この段階では、ここまでです。

TSSには余裕をみて40Vで200Wとして保障認定を申請しました。

ブロックダイアグラム 5.pdfをダウンロード

下は、140Wにて音楽ソースを変調しながら連続エージング風景です。昔からエージングテストは何十回もやってました。 開始してから30分で温度はほぼ飽和状態になり、その後1時間で温度カーブは横一直線となります。この間に、問題が起こらなければ、規定の4時間は達成できます。 現在は趣味の範疇ですので、目標2時間。 2時間OKなら良しとします。

Amtx140wasing_2

2時間のエージングが終了しました。ケース天板は触っていられないほど熱くなっています。 強制空冷の方法を再検討必要です。

幸い、2時間経過した時点でのRF出力は130Wで、140W一定が理想ですが、130Wまで下がったという事は、熱暴走は問題ないという結論です。

次の日、再度エージングテストをすべく、100Wの出力を自作のダミー抵抗へ加えたところ、スパークが起こり、煙を出して、抵抗が断線してしまいました。 いくら定格250Wとは言え、その条件は無限大放熱板の場合ですから、140W連続動作はきつかったのでしょう。 もうこの抵抗は有りませんので、ダミー抵抗も手配しなければならなくなりました。

200Wのエージングに向け、200W連続負荷に耐えるダミー抵抗、強制空冷そして800Wの電源をどうするかが課題となりました。

7MHz D級アンプ QRO計画 7 (200W) へ続く

 

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2017年6月 4日 (日)

7MHz D級アンプ QRO計画 5(100W)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

放熱対策も部品のショート対策も完了した、100W AM送信機をテストしながら性能確認を行える状態になりました。

PLL VFOからドライバーへ14MHzの信号を入れ、ドライバー段のPP回路に12Vの電源をつなぎ、ファイナルの3パラPP回路に5Vの電源をつないでドライバー出力の共振コンデンサをバリコンに変えて、最大出力が出るように調整した状態で、3パラPPの電源電圧を可変してみました。

26w_85mod

左は、26W出力時の変調度最大付近です。これより、オーディオゲインを上げていくと、歪が生じ、100%変調の波形になりません。 前回の50W送信機でもその傾向がありましたが、この100W機はそれよりも悪化しています。 原因追及と対策は全体の確認が済んでからとします。

最初、この変調波形が出てこず、あせりましたが、変調回路保護の為に挿入したR6 1.5KΩが悪さをしていました。このR6が有る時は最大変調度50%くらいでした。 これを廃止したところ、写真のような85%くらいに変調度になりました。 この変調回路保護の抵抗はもう一本あります。R21 2.2KΩがそうです。 後日、この抵抗の値を吟味してみる事にします。

ドライバー段の出力にある直列共振コンデンサC32は、かなりクリチカルで固定コンデンサの置き換えだけでは、最良点に追い込む事が難しいようです。 よってここは耐圧100Vの80PFのトリーマーと56Pの固定コンデンサに変え、今後、色々検討していく中で調整出来るようにしました。

このドライバー信号を受け止めるトランスT2は当初3:1の巻き数比でしたが、ドライバー段の消費電流が1.7Aを超えるので、4:1に変更しました。しかし、電流は1.5Aまでしか下がっていません。 バラック状態で1.2Aでしたので、ここも検討必要事項となりました。

26w_pp

ファイナルの3パラPP回路のドレイン側とGND間に330Pのコンデンサを入れてありましたが、この容量では不足のようで、最終段のバリコンの調整もかなりクリチカルになっていました。 そこでこのコンデンサC4,C67を330Pから1000Pに変更しました。

左がそのときのドレイン電圧波形です。 気持ち、左側へ倒れていますので、まだ最適な状態ではないかも知れません。 今後100Wエージングテストなどを行いながら最適容量をつめていくつもりです。

ここまでの変更対応を行った上で確認出来た最大出力状態は以下のようになりました。

Amtxtest1

この出力は最大値ですので、実際に使用する場合、この状態より少し下げたVdd=14Vで100W出力になるようにファイナルのバリコンを調整するつもりです。

この12V 111Wで1分くらい出力すると、なにか焦げ臭いにおいがし始めました。 まだ壊すわけにはいきませんので、とりあえず、電源電圧を13.8Vにして、変調器をつなぎ、RFアンプには6.9Vしかかからないようにして各部のチェックを続ける事にしました。

100W送信機の回路図 AMTX_100W_2.pdfをダウンロード

今回も激しいハム音が受信機としているTS-850Sからでて、変調された音楽も良く聞こえません。 50W機のとき、DC電源を1本化して対策しましたが、同じようにやっても、全く小さくなりません。 試に隣に置いてあるTS-930Sで受信してみました。 すると、ハム音はぴたりと止まりました。 受信時のハム音はTS-850Sの変調ハムだったようです。 真空管式ラジオの場合、ヒーターの交流信号がDCラインに誘導して、変調ハムという形でスピーカーから聞こえますが、オール半導体のTS-850Sがどういうメカニズムで変調ハムを生じるのか、後日調査する事にします。 このTS-850Sのプリント基板は、新入社員が設計したような基板で、他のKEWOODモデルよりRFフィードバック受けやすくなってましたが、変調ハムが発生するような基板配置やパターン形状があるのかも知れません。

と、論評してる場合ではなさそうです。 電源電圧をいきなり30Vに上げたら、ブロッキング発振のような周波数シフトが発生し、周波数が安定しません。 ファイナルからの信号がPLL回路に誘導し、PLLがアンロックを繰り返しています。 どうも14MHzに周波数を変更した結果、PLLロック状態になるまで1秒くらいかかっています。 この間にファイナルからのRF漏れがPLLループ内に入り込み、周波数とは関係なく、PLLが不安定になっているようです。 これは、もう周波数の関係ではなく、機械的なシールドがどれだけ出来ているかの問題のようです。 残念ながら、メーカー製トランシーバーのようなシールド構造はいまさら実現できませんので、またもPLLは諦めざるを得なくなりました。

(7MHz用は諦めましたが、このPLL VFOは50MHz用として復活しました。)2018年8月

出力は絞り気味ですが、30Vの電源で普通に100W出ていますので、この目標は取りあえず完了しました。 残りはPLLの対策であり、対抗策としてはVXOしかなく、14MHzのVXOをどうやって作るかに方向チェンジです。

前作の50W機のVXOをベースに出力を2逓倍する回路を作ります。 方法はダブラーと言われているトランスとダイオードだけで実現する回路です。

ダブラー付VXO回路の配線図 AMTX_VXO14MHz.pdfをダウンロード

2017年12月追記

時期が冬場になり、室温が下がった事と、継時変化によりVXOの最高周波数が7195.0KHzギリギリになってきました。このままでは、いつか7195.0KHzをカバーできなくなりますので、クリスタルの数を1個削減し、スーパーVXOをやめ、通常の発振回路にした上で、C56を2.7Pから3.9Pに変更しました。 この状態での周波数可変範囲は7196.6KHzから7173.0KHzとなり、当初の周波数範囲から若干狭くなりましたが、高い周波数で余裕が出来ましたので、良しとします。

ダブラー回路のキモはトランスとダイオード及びその負荷抵抗になります。 回路図としては頭に入っていますが、どうやって定数を決めるのかは知りません。 そこで、自我流でやったところそこそこ実用になりましたので、紹介する事にします。

Dobuller1

Dobuller2

左上はダブラーのチップ装着面、右上は左が入力側の7MHz共振回路のトリマとトランス、右が同じく出力側の14MHz共振回路です。

Meganecorein

まず、トランスT1の設計ですが、これは、TDK製のFMラジオ用バランに使われているメガネコアをジャンク箱から探しだし、0.26mmのUEWを4ターン巻いたら約4uHのインダクタになりましたので、1次側を4ターン、2次側を8ターンとして、センタータップを出しました。 1次側のタンク回路として68Pの固定コンデンサと80Pのトリーマーで7.2MHzに共振させ、これを2次側で両波整流しますと、周波数2倍のかなり歪んだ14MHzの信号が得られます。 この負荷抵抗となるR4を10KΩの可変抵抗に変え、出力最大の抵抗を求めます。 この回路では700Ωくらいになりましたので、E12シリーズで最も近い680Ωに置き換えます。

このままでは、次段を直接ドライブできませんので、再度バッファーアンプで14MHz帯のみ取り出します。取り出すトランスT2は1次が3ターン、2次が1ターンです。

Dobuller3

左の波形は、ダブラーの初段Q1の入力部の波形が上で、下がT2の出力の波形です。

両方とも波高値はかわりませんが、出力の14MHzはきれいな正弦波となっています。

また、T2のトランスで送信機ドライバー段のGNDとVXOのGNDを直流的に分離し、GND電流による出力のVXOへの回り込みを軽減させます。

回路定数に82という値を多用しています。 本当は100Ωとか100KΩにしたかったのですが、手持ちの抵抗が残り少なくなりましたので、100とか100Kはどうしても必要な時だけ使う事にし、この回路のように、適当で良い場合はあまり使い道のない82Ωとか82kΩに変えてあります。(82を100に、82Kを100Kに変えても動作はほとんど変わりません。ただし、常に比が一定になるように変えることです。)

Img_3644

左が、PLL VFOを取り去り、半シールド状態でシャーシに取り付け、配線した14MHzのVXOです。 終段からの回り込みなどの検討の為、シールドごと移動する可能性もありますので、配線材は長めにして、束ねてあります。

一応、シールドBOXで完全に囲めるような配慮だけはして置きました。

このVXOの源発振周波数は7MHzですから、ダブラーの前段から周波数カウンターに加え、発振周波数を表示させています。 カウンターは前回の50W機と同じように、CALの時だけ、周波数をカウントし、送信や受信時はCAL時の表示をロックさせています。

周波数カウンター回路図 VXO_Counter.pdfをダウンロード

 

14MHz VXOを使用した100W送信機の回路図 AMTX_100W_3.pdfをダウンロード

Q1314drain0610

VXOが期待通り動き出しましたので、まず、ドライバー段の消費電流と最適ドレイン容量の検討です。 Q13,14の電流と最終段の出力を見ながら、ドレインコンデンサC34,35の最適値を探した結果、容量は262PF付近で最大出力が得られ、またこの時のドレイン電流は1.26Aでした。この時のドレイン電圧波形は左の状態です。 きれいな三角状の波形ではありませんが、この波形の時が一番効率がいいみたいです。 また、このドライバー段のドレイン電流は最終段の出力が最大になるようVC1を調整したとき、最少電流となります。

次は、変調段のLPFの再設計です。 30V電源で100W出ている時の終段E級アンプのインピーダンスは計算で1.8Ωくらいと出ましたので、このインピーダンスでLPFを再設計します。 

Lpf18

今回は手持ちのマイラーコンデンサが2.2uFですので、この容量を使えるようにカットオフ周波数や250KHzの減衰量をADJしました。 その結果、左の表のような定数が得られましたので、カーボニルコアによるインダクタを作り変える事にします。

最終的には30Vの電源電圧を上げて、200Wの出力を狙うつもりなので、コイルに使う銅線もサイズアップし1.25SQのKIV線にします。

しかし、例え低透磁率のカーボニルコアでも数10uH以下のインダクタの場合、目的とするインダクタにピタリと収める事は困難ですので、目標値を最初に超えた巻き数とします。 そして、コンデンサはほぼ計算通りの定数に合わせます。 こうやる事によりカットオフ周波数が低い方へずれますが、250KHzでの減衰量は大きくなります。 計算で出したカットオフ周波数は30KHzですから、これが例え半分の周波数になろうが全く問題有りません。

Newlpfcoil

左上は8.6uH、右上は19.3uHです。 これらの製作に当たり、以前製作したLCメーターが大活躍です。 コンデンサは初段が6.6uF、後段を2.2uFにしました。

この新LPFを実装した状態での無歪最大変調度は以下のようになりました。

New_lpf_mod

オーディオのエンベロープは綺麗になりましたが、最大変調度はほとんど変わりませんでした。また、R21 2.2Kを外してみましたが、最大変調度は変化なしでした。 次はD1,9ショットキーダイオードを増やしてみる事にします。

ショットキーダイオード(SS560V5)をさらに2本追加し、電源電圧も30Vに上げたところ、変調がうまくかかりません。変調段のD級アンプのソースとGND間の波形を見てみると、激しいリンギングが乗っており、+側で10V、マイナス側で-20Vのヒゲがあります。 原因を推察するに、C12のバイパス不足のようです。 その不足の原因がGND廻りの配線が細く、パスコンの役目が著しく落ちている事のようです。 

Amtx100wout

そこで、今までGND配線に使っていたAWG24のワイヤーを廃止し、幅3mm、厚さ0.3mmの銅板に変えてかつ、チップコンデンサ2個パラ付けし、追加したショットキーダイオードも同様に最短で電源ラインのGNDに接続させました。 結果、+側は6Vくらい、マイナス側は-10Vくらいまでリンギングのピークがおさまりましたので、恐る恐る、バリコンを回し出力を増加さると、出力100W時、左のような変調波形となりました。 なんとか前回の50W機と同レベルまで改善できました。

ところが、この写真撮影をしている間に、クラニシの終端電力計から煙が出始めました。 時間にして2分くらいの100W出力でしたが、許容電力を超えたみたいです。 クラニシの取説によると、200W 3分間とありましたので、100Wならかなりの時間OKと思ったのですが、実際は違ったようです。 とにかく、送信を止め、代わりに自作の250WダミーロードとダイアモンドのSX200を持ってきて、検討の続きを行う事にしました。

Amtx100woutpwr

左のアルミの箱が250WダミーBOXです。SX200は105Wくらいを指しています。この状態で、終段のバリコンをさらに容量ダウンの方向に調整していくと、最大出力180Wが得られました。(SX-200の指示は異常値でした。クラニシで確認したところ140Wが正しい値のようです。) しかし、この電源で9Aくらい流れますので、動作が不安定となります。従い、30V電源では120Wくらいを最大として、それ以上出力する時は電源電圧を上げることにします。 

さすがに強制空冷が無い自作のダミーBOXは煙こそ出しませんが、アッチッチ状態です。 とりあえず、100W状態で10分くらいのエージングを行いましたが、ダミーBOXのアルミ表面を触れないくらい熱くなりましたので、エージングを中止しました。

Amtx100wajing_2 上は100Wでエージング中のフロントパネル面です。電流計の振れが異常です。ほんとは5.5Aくらいは流れているのに。 原因は高周波のバイパス不足でした。電流検出抵抗を電源のフィルター前に移しましたら、正常になりました。

FET6石を使った終段E級アンプの放熱板は指で触っても、少し暖かを感じるだけ。変調器のD級アンプの放熱板はそれ以下の温度。この中で一番熱くなっているのは30Vから12Vを作るDC/DCの放熱器と、ドライバー段の放熱板くらいで、どちらも指をずっと当てていられる状態です。 熱設計は余裕が有り過ぎる感じですが、ダミー抵抗がもちませんでした。 これから、200Wでの長時間エージングをせねばなりませんが、その前にダミー抵抗をなんとかしなくては。

100W AMTXの配線図 AMTX_100W_4.pdfをダウンロード

 

7MHz D級アンプ QRO計画 6 (140W) へ続く

 

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