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2017年6月25日 (日)

7MHz D級アンプ QRO計画 7(200W)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

薄膜高周波抵抗を使った250Wのダミー抵抗が断線し、エージングは頓挫していましたが、ヤクオクで同等スペックの抵抗が売りに出ていましたので、さっそくこれをゲット。

205nb_dummy

Rf_250w_swr_gr_4

 

左上が入手した250W薄膜高周波抵抗を放熱板に貼り付けた状態。右上はこのダミーをCAA-500mk2でSWRを測定した結果です。HFはSWR1.0、435MHzでもSWR1.3になっています。 とりあえず、100Wで10分程度慣らし運転して異常ありませんでしたので、当ダミーは今後AM送信機のエージング試験には使わない事にします。

エージング用はもう少し乱暴に扱っても壊れにくい、オイル冷却のダミーロードを作る事にしました。

ダミーロードができたので、送信機本体も200W対応に向け改造しました。

Amtx200wv2 

上はその改造後のシャーシです。 まず、シャーシの真ん中で空気を掻き混ぜていたファンをバックパネルに移動し、内部の熱された空気を外へ吸い出すようにしました。 その関係で変調回路のLPFは元ファンの有った場所へ移動です。

TDKのLINEフィルターは効果的に動作していましたが、定格電流が5Aでしたので、140Wでのエージングで、かなり熱くなっていました。 そこで、このフィルターを10Aタイプに変更しました。サイズが大きくなったので、電解コンデンサは移動してあります。 このフィルターは、接続したDC電流計が正しく動作するかどうかでその効果は確認できます。もし、挿入した電流計が異常値を示すようなら、決まって高周波が漏えいし、色々な障害を生じさせる事になります。

電源として使っているTS-930Sには44000uFの電解コンデンサが使われており、これに9400uFのコンデンサをパラに追加していましたが、変調のピークをカバーするほどの効果は有りませんでした。 そこで、今回30000uFのコンデンサを追加しました。 ピーク電力の増加を期待したいところです。

ケースの底板に穴を明け、ここから外気を吸い込み、後方のファンへ抜けるようにしました。

Amtx200wv3

Amtx140wasing

そして、上は、強制空冷状態で140W連続30分のエージング風景です。ケースの天板は手の平をずうと押し付けていられるほど温度が下がり、この後、2時間続けても問題なしのレベルまで改善しました。

Amtx200wpower

30Vの電源を40Vにアップする為、12V 30Aのスイッチング電源を手配しました。 これをTS-930Sの電源にシリーズに接続して使います。 現状のままでは42Vになってしまい、12Vを作るDC/DCの最高電圧40Vをオーバーしますので、TS-930Sの電源の電圧調整部分を改造し、26Vから30Vまでを可変できるようにしました。 またAC/DC自身も10Vから14Vまで可変できますので、両方の電圧を調整して最大40Vに設定しています。 

まず、30V+10Vで確かに200Wでるのか確認しました。 

Acdc12vpower

200woutput

左上が臨時に追加した12V AC/DCです。 これで40Vの電圧を確保して200Wの出力を得たのが右上のメーターです。 このAC/DCは、アマゾンで2300円くらいで販売されていました。 取説なし、電源コードなし、その上、初期不良で電源ONせずというシロモノでしたが、110/220Vの切り替えSWをカチカチやったら、時々動きます。

Acdcsw

原因は左の写真のように。スイッチが傾いて挿入されており、左側の端子が基板とつながっておらず、かろうじて裏の半田の上に乗っているだけという状態でした。 中を開け一度、ハンダを吸い上げ、スイッチが自由に動く状態にして、きっちりと基板に密着させハンダ付けしました。 また、2か所でアルミ板を放熱板に使っていますが、FETとアルミ板の間はシリコンラバーが挟んでありましたが、アルミ板と外側のアルミケースとの間にはなにもなく、熱伝導が心配になりましたので、シリコングリスを塗り込んでおきました。 動き出せば、コスパは最高です。

 AC/DCの右端に写っているのは、定格5AのAC LINEフィルターです。 これを付けていると、少なくとも7195KHzでのノイズは気になりません。

200w_dc40v_2

200wout630hz_2

 左上が200W送信時の電流値と変調度、右上は630Hz信号による最大変調度の波形です。 電流が常に9Aを超えるようなら、このメーターの目盛をMAX15Aに作る変えるつもりです。

配線図 AMTX_200W_0.pdfをダウンロード

電源から最大パワーを得るには26V+14V=40Vが良さそうですので、この電圧配分でエージングテストをする事にします。

200w9a

実際にテストしたのは、26V+12V=38Vで行いました。 スタンバイ状態で38Vですが、200W送信時には37.2Vまで下がります。

200W出力時の電流は8.8Aくらいです。

ドライバー段の電流を差し引いた状態でのPWM変調回路込みの終段能率は75%くらいです。 特に良い訳ではありませんが、200Wで20分のエージングテストもクリアーしましたので、これから、ダミーロードを心配しながら2時間エージングにトライしてみます。

心配していました、ピーク電力ですが以下のようになりました。

200wcw_2

200w95mod_2

 

左上は200W無変調キャリアだけです。右上は、630Hzのピークがクリップするまで変調度を上げた状態です。オシロの目盛からピーク値は2倍ではなく1.8倍くらいですので、ピーク電力は650Wくらいです。

次に、音楽ソースで確認しました。

Carir200wMusic200w

同じように左が無変調、右がボーカルの入った音楽ですが、ピークは2倍になっております。オーディオのミュージックパワーと同じように、正弦波でない、音声信号では、ピークで800Wは出ているようです。

このミュージックパワーを確認しながらエージングを継続し、約30分経過した時点で、はじける音がして、出力が無くなり、電流も1A以下になってしまいました。 オシロで各波形をチェックすると、終段のゲートドライブ電圧が極端に小さくなっています。また、終段のゲートもドレインと同電位まで上昇しているFETもあります。 各素子を回路から切り離し、それぞれチェックしたところ、

Q2のドレインソース間がショート状態。

Q4,Q5,Q9,Q10,Q11,Q12の内、4本がゲートソース間ショート。

ゲートの1Ω抵抗も6本中4本断線。

断線した1Ωは黒焦げになっていました。 この抵抗に流れる電流はゲート容量をチャージする電流で、ピーク12Vくらいの電圧がかかりますので、単純計算でピーク12Aとなります。実際は回路のインピーダンスなどの影響で、数Aと考えられます、それでもピークで数Wもかかっている事になります。 そこに1/10Wのチップ抵抗を使ったのが原因のようです。 この6本のゲート抵抗が少しずつ断線し、残ったFETに負荷が集中した結果、終段のFET6個中4個が壊れた様です。 また、ゲートとソースがショートした事で、ドライバー段のQ2も壊れたと推察されます。

ここで、インターネットで海外の情報を調べると、皆さん2Wくらいの抵抗を使っているようです。あいにく、2W1Ωの抵抗は持ち合わせしていませんので、とりあえず1/10W 2.4Ωを4個パラにしてしのぐ事にしました。 終段FETの在庫も無くなりましたので、この抵抗も一緒に手配だけはしておこうと思います。

200wtest

修理完了して、200Wのエージングを再開しました。 左は、1リットルのダミーロードを3リットル缶に水を入れ、熱容量を大きくした上で、扇風機で仰ぎながらエージングしている風景です。

そして、約30分で、またも、出力が出なくなりました。 直接の原因は終段のSTF17NF25の1石が全端子ショート状態となり、これにより、他の5石のFETのゲートドライブが停止し、電流が流れなくなったものでした。 どうやら熱破壊です。 ファイナルステージの放熱板は、指を当てていられないほど熱くなっていました。 ファンを放熱板から離し、後方へ移動させたのがいけなかったようです。 そして、この熱で一番弱いFETが死んだのでしょう。

対策はファンを追加するか、STF17NF25モールド品からドレインむき出しのSTP17NF25に変えるかです。 ファン追加は構造の大変更を伴いますので、FETを変更する事にしました。 そして部品手配が出来るまではお預けとなりました。

 

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