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2017年7月 9日 (日)

7MHz D級アンプQRO計画 8 (200Wつづき)

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

STP17NF25を手配できましたので、同時に手配した2W 1Ωを含め改造しました。

Stp17_1ohm

ドレインがむき出しですので、シリコンシートを敷き、プラスチックビスで止めてあります。

この状態で100Wのテストを行ったのですが、パワーが依然のモールドパックほど出ません。30V電源で以前は最大140W出ていましたが、このFETでは100Wしか出ません。

何が原因なのか調べている内に、突然出力なしに。 

突然死んだ理由は6石のFETの内の1石がゲート、ソース間ショートでした。 その原因はまたしても熱破壊。 壊れたFETを止めてあったプラスチックネジが伸びて、グラグラしています。 FETの熱でプラスチックネジが伸びてしまい、FETが放熱板から浮いて、熱破壊したものです。

対策としては、絶縁ワッシャを追加し、金属ネジに交換するしかありません。 手持ちの絶縁ワッシャの外形は4mm、FETの穴径は3.8mm。 そこで、ボール盤を使い、FETの穴径拡大を行い、下の写真のように、ビス止めしました。

Stp17_biss

今度こそ、大丈夫と40Vの電源電圧で150Wのエージングを開始したら、数分で、またも出力なしに。 今度も熱破壊です。この原因は絶縁ワッシャの高さがFETのドレインの板厚より高いものが有り、力いっぱいビス締めしたのに、FETは放熱板に全く密着しなかったものでした。 このワッシャの高さの問題は、6石中4石も該当しましたが、壊れたのは、幸い1石だけでした。

Add_fan

絶縁ワッシャの高さ問題を解決したのに、まだ、30分エージングでFETが破壊するという問題が継続しています。 やはり、ファイナルステージの放熱板の強制空冷は必要な気配です。 後方へ移動したファンは厚さ25mmの8cmサイズでしたが、手持ちのファンは厚さ15mmの7cmサイズしかありません。 風量は半分以下ですが、無いよりはマシと、このファンを当初のファン取り付け位置に追加しました。

この対策で、とりあえず30分以上は動き始めましたので、電源電圧40Vで200Wのエージングを開始しました。 しかし、数分もすると180Wまで下がってしまいます。 やはり、前回のモールドパックのFETより、ドレイン、ソース間飽和抵抗が大きくなっているようです。 FETは同一品種ですので、単純にロットのバラツキと思われます。 

下は200W送信時の高調波、及びPWMの250KHzの漏れです。

200w_2ndhrmo_2

200w_lpfreak

FETを交換したら、プッシュプルのバランスが良くなったようで、内臓のLPFのみで第2次高調波レベルを-54dBまで下げる事ができました。 ここは、外付けの6次LPFを追加する事により完璧にする事が出来ます。 また、PWMの250KHz漏れは、-52dBです。一応、スペック内ですが、さらに改善できないか後日検討する事にします。

 

エージングが1時間40分を過ぎました。 部屋の中は、サラダオイルが半煮え状態の匂いが漂っています。 

Amtx200wasing

その中で、エポキシの焼ける匂いがし始め、またまた終段のFETが壊れてしまいました。 もうSTPタイプのFETは有りませんので、壊れた2石をSTFタイプに交換し、かつ7cmのファンは、新に手配した8cm品に交換しました。 また、PWMのLPFへの配線が長くなり、250KHzの漏れにも影響しますので、4700uFの電解コンデンサ2個は廃止し、厚みが厚くなったLPFを変調アンプの近くまで移動しました。  下は、その変更後のシャーシーです。 ファイナルの放熱板を強制空冷したおかげで、エージングしてもパワーが下がるという問題が出なくなりました。

Iamtx200_0722

PWMの250KHzキャリア漏れが以前の50W機に比べかなり大きいので、ここの検討を行いました。 

改めてRFアンプのインピーダンスを実測したところ、1.6Ωとでました。 今まで1.8Ωで計算していましたので、若干減衰不足がありそうです。 オーディオの周波数特性を無視して暫定的にコイルを追加したり、高周波1点アース(アンテナ端子のみでシャーシのGNDに接続し、電源部からファイナルステージまでのGNDを全てシャーシから直流的に浮かす)を試した結果、改善できそうです。 やはりここは手持ちのコンデンサに合わせるような妥協レベルのLPFではなく、しっかり計算通りのLCで作ってやらないと、思惑通りにはいかないと、フィルムコンデンサの手配をする事にしました。 (これは間違いでした。後述のごとく計算通りにはいきません)

200w_lpf 上は、インピーダンス1.6Ωで再計算したLPF定数です。 そして下は巻きなおしたコイルです。 コアは2重に積み上げてあります。  写真では、巻はじめと巻き終わりのワイヤーをロックタイで縛ってありますが、この状態では、-60dBのアイソレーションは確保できませんので、実装段階では、巻はじめと、巻き終わりの間に空間ギャップを設け、入力と出力の結合が多くならないようにまき直してあります。

250lpfnew

このLPFを実装して変調をかけると、音声がかなり歪みます。また、オーディオの周波数特性もかなりハイカットになってしまいました。 原因を調べる為、電源電圧を12Vまで下げたり、コンデンサやコイルの変更を行った結果、PWMアンプの出力に直につながるL1 13.5uHが小さすぎるのが原因のようです。 ここは、以前の検討で、容量性リアクタンスや抵抗成分でGNDへパスすると、変調波形が歪んだり、変調度が浅くなる傾向がありました。 そこで、試しにL1とL9を入れ替えてみました。もちろん、Lの後にくるコンデンサも一緒に入れ替えました。 結果、歪もオーディオの周波数特性も改善しました。  海外のWEB情報によると、PWMアンプに直接接続するインダクタの値は非常に重要で、小さすぎるとオーディオに歪を発生させるので、歪が発生しないインダクタを選択しなければならないと書かれていますが、いったいいくらのインダクタがベターなのかは記述はありませんでした。 今回はオシロで波形をモニターしながら、歪が起こらないインダクタになってはいますが、最適なのかどうかは解りません。 ちなみにこのインダクタを50uHくらいまで大きくしてみたところ、聴感で明らかに歪が増えましたので、また元の33uHに戻しました。 そして、このインダクタを最初に決めてから、PWMのキャリアレベルが60dB以上減衰するように後段の定数を決めるのだそうで、バターワースLPF回路を最適計算した定数では駄目なようです。

Lpf_01

このようにして作り直したLPFによる250KHzキャリア漏れが心配でしたが、左のように-58dBくらいまで改善できました。

 

そして、再度エージングにトライし、2時間の目標も達成できました。 部屋中がサラダ油の半煮えの匂いが立ち込めています。

このエージングの中で、男性ボーカルが変調されると歪が増加する現象がみられました。 原因を調べてみると、出力が大きくなった分だけRFがオーディオ回路に回り込んで、それが低域での歪となっているものでした。 対策は、オーディオの差動入力にまだRFバイパス用のパスコンが入っていない所がありましたので、リミッターIC TA2011の2-3pin間、及びPWMアンプの3-4pin間に1000PFのコンデンサを追加しました。 TA2011の入力部にはIC内部で20PFのコンデンサがもともと入っていたのですが、さすがに200Wの出力では対策不十分だったようです。 結果、TS-930Sによる受信モニターでは歪を感じ取る事が出来ないくらい改善しました。

配線図AMTX_200W_2.pdfをダウンロード

左下は200W出力時、630Hzにて最大変調状態、右下はリミッターアンプが動作している状態での音楽最大変調時の波形です。音楽信号ではほぼ100%変調されており、かつ最大パワーは800Wをキープしています。

200w95mod

Music100

ところで、見落としたもうひとつの大きな問題がありました。 使用しているアンテナシステムは耐圧問題で苦労したシロモノで100Wピークをかろうじて維持出来ているものですから、800Wピークはとてもカバーしきれないと思われます。 7MHzに限って言えば、前回の50W(ピークで200W)に持ちこたえていますが、実際のところ、100W(ピーク400W)に持ちこたえられるかも確認出来ていません。 これは、総通の許可が下りてからになります。

ハード的に800WピークのAM送信機は出来ても、実際はON AIRできないというジレンマに落ち込みそうです。

2017年12月

このAM送信機の保障認定をTSSに申請してからすでに5か月を過ぎました。途中で問い合わせがあり返信したのですが、その後のアクションが有りません。 そこで、TSSへ直接電話したところ、2日後には保証が完了した通知が来ました。 遅いと感じたら電話するのが一番のようです。

総通に追加申請して10日経過した時点で審査終了となり、追加の許可が下りました。 さっそくQSOと、従来のMTUを使用しない、逆Vを臨時に架設し、100W出力でCQを出しましたが、QSO出来ず。やっと夕方、1局と交信できました。 とりあえずピーク400WはOKのようです。 また、従来のMTU使用のアンテナに切り替えて送信しても、OKでした。 当分は100Wで運用していきます。

休日にやる事がなくなりましたので、50MHz用AM PWM変調の可能性について遊び始めました。

2021年7月

40V 15Aくらいの電源が確保できるようになりましたので、久しぶりに200W運用をすべくテストすると、180Wくらいしか出ません。 電圧を44Vまで上げると、200W出ましたので、気を良くしてQSOに使うと、5分くらいの送信の間に、ヒューズが飛んで壊れてしまいました。 壊れたのはSTF17NF25というモールドパックのドレイン電力損失が35WしかないFETでした。 取り外すと、シリコングリスが乾ききっており、持ちこたえる事が出来なかったようです。 本来はSTP17NF25という品番でなくてはならないのに、手持ちがモールドパックしか無かったので、代用したものでした。 正規品をRSに発注しようとチェックすると、もうこのFETの取り扱いは止めてしまっていました。 仕方なく、同等品となるSTF19NF20をモノタロで見つけましたので、これに交換する事にしました。 3パラ、プッシュプル 6石全部を交換です。 出力は40Vの時、190Wくらいです。 

この状態での配線図です。 ドライバー段の9V 3端子レギュレーターはスルーして、TC4426のVCCは12Vを直接かけています。

AMTX_200W_3.pdfをダウンロード

2022年2月

電源をONしたら、VXOが即動作しますが、この信号が受信機で聞こえるようになりました。 原因は、常設のベントダイポールが、電線より一番遠い所に設置された事により、外来ノイズが減少し、微弱な電波も受信できるようになった為、微弱なVXOの信号も聞こえてしまうと言う現象です。 そこで、周波数カウンタの校正をやった事もありますので、スタンバイ状態でのVXOはOFFにする事にしました。 送信開始の1分くらいは約50Hzのドリフトがありますが、そこはAMだからと割り切る事にします。

SDR用200Wリニアアンプの電源として、ACDCコンバーター式の72V 8.9Aの電源が出来上がりましたので、この電源の36Vタップを使うと、36V 20AというDC電源が実現できます。 SDRのリニアアンプとPWMのAM送信機を同時に使う事はありませんので、以後、36Vの電源で160Wの出力が出るようにして使います。

 

配線図 AMTX_200W_4.pdfをダウンロード

 

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