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2012年11月30日 (金)

FT-450 CWモニターのキークリック音

<カテゴリ:FT-450>

CWモニター音のキークリック音の改善の話です。

Img_0868t_2私のFT-450はもっぱら6m専用機として使用されており、ヘンテナとの組み合わせで、すでにDXCCの19エンティティーもワークしておりますが、そのほとんどはCW QSOです。 以前、ヘッドフォーン音量と音質がおかしく、モニターのキークリック音が大きいと紹介しましたが、その修復後でもCWのモニター音のクリック音は、メイン機のTS-930やサブ機のTS-850に比べて、比較できないほどのレベルでした。価格の差もあり、諦めていましたが、偶然、このキークリック音を改善するためのソフトのバージョンアップがある事を知りました。

そのページからダウンロードしたファームウェーアーをインストールすると、確かにクリック音の改善が認められます。TS-930のようにはいきませんが、十分我慢できるレベルまで改善されていると思います。

YAESUの公式WEBページから探すことは出来ませんが、YahooやGoogleの検索エンジンからなら、今でもそのページをアクセスできます。 (gooからは検索できませんでした)

「FT-450 バージョンアップ」で検索してみてください。 ”アップデート”という表題が見つかると思います。

ソフトの変更だけで改善する手段ですから、限界はありますが、バージョンアップ後、キークリックはあまり気にならなくなりました。

なお、このバージョンアップは”D”の付いていない旧モデル用ですので、くれぐれも間違いの無い様にしてください。”D”モデルの使用者に聞いたところ、すでに改善済みとのことでした。

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2012年11月29日 (木)

TS-850S ALC動作異常

<カテゴリ:TS-850>

ALCが動作しているとき、ALCレベルを示す棒グラフと、送信出力が脈打つというトラブルの対策です。

メインのTS-930Sが機構部品の破損で操作不能になり、その部品探しをしている最中なので、サブのはずのTS-850Sが現在メインで使用されております。 その中で、3.5メガのアンテナは7メガのフルサイズダイポールをMTUで強制同調させて使っている関係で、非常に帯域が狭くなっております。ベランダに置かれたMTUをいちいち調整し直すのが面倒なので、SWR1.5位いの範囲ならそのまま使っていますが、CWで送信すると、ALCレベルが周期的に揺れて、それに伴い出力も波打つというトラブルが発見されました。アンテナとの整合状態がSWR 1.2以内くらいなら異常は発生しません。

判りやすく説明すると、アンテナのマッチングがSWR1.5くらいまで悪くなっている状態で3.5メガでTUNEテストをすると、出力を上げたとき、ALCのメーターの棒グラフが最小から最大まで1秒くらいの間隔で脈打つというものです。この脈打ちの周期に同期して出力も脈打ちます。7メガでは発生しませんが、3.5メガで発生します。

故障なのか、もともとの性能なのか、不明でしたのでGoogleで「TS-850S ALC」で検索してみました。すると、いっぱい出てきました。You Tubeに動画が存在するほどの、かなり有名なトラブルみたいです。

原因はALCアンプのマイナス電源を作っているDC/DCコンバーターの不具合みたいです。新品のころは、元気良く発振していたマルチバイブレーターが、トランジスタのhFEが低下したのか、周囲の電解コンデンサが劣化したのか、なんらかの原因で発振が停止するようになったのが直接の原因のようです。

手っ取りばやく対策するには、マルチバイブレーターの正帰還量を増やしてしまえばよいことです。修理事例としてはベース抵抗を小さくする方法が多くありました。

Ts850dcdc 問題の基板の名称は「X59-1100-00」で、その中にあるR2とR3を22KΩから13KΩに変更したら直ったと有りました。この対策なら現行の22KΩにパラに抵抗を足してやれば済むことで、早速、ケースを開け、この基板を探し出し、抵抗を追加しようとしましたが、かなり奥まったところにあり、とてもそのままでは半田付けできません。やむなく、基板を引っ張りだして、コネクターを外し、基板単体にした上で、手持ちの47KΩをR2とR3にパラ付けしました。合成抵抗は15KΩとなり、13KΩにはまだ不十分ですが、基板を元通りに取り付け、3.5メガでテストしました。SWR 3でも、問題なしとなりました。

Ts850dc1_2  Ts850dc2_3

とりあえず、当面の異常現象は解決しましたが、3.5メガでSWRが悪化したときに、出力を制限するALC動作が、他のバンドのときより、きついという現象が残っています。SWRが1.5くらいのとき、最大出力は70Wくらいしか出ません。SWR1.2くらいでやっと100Wです。いくらアンテナチューナーを内蔵しているからと言っても、プロテクトのかけ過ぎです。これが正常状態なのか異常状態なのか判りませんので、暫く様子をみます。

Ts850dc3 暫く様子を見ていましたら、3.5メガでCW送信すると、時々、ALCの動きがおかしくなり始めました。どうも以前の症状が再発したようです。アンテナの負荷条件が変ったのかもしれません。ベース抵抗を小さくするという対策だけでは不完全のようです。正帰還量を増やす為ならベース・コレクタ間の2200PFを増やせばよいことですから、このコンデンサC1,C2に1000PFをパラに追加することにしました。前回の47KΩ追加と合わせれば、CR時定数はほぼ同じとなりますので、都合もよさそうです。ちょうど手元に1608サイズのチップコンデンサがありましたので、これをパラに追加しました。今度は問題なさそうです。ただし、プロテクトのかけ過ぎは直りません。

そうこうしている内に、故障中のTS-930Sが修理完了しましたので、またサブ機に逆戻りしてしまいました。プロテクトのかけ過ぎの問題は、とりあえずお蔵入りです。

プロテクトのかけ過ぎは、TS-850Sの問題では無く、アンテナ系が原因でした。詳細は、カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムの3.5MHz ALC動作異常 で紹介しています。

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2012年11月13日 (火)

クラニシ NT-636の修理

<カテゴリ:アンテナチューナー>

マニュアルのアンテナチューナーで、クラニシ製のNT-636を、クラニシが店仕舞いするとアナウンスがあってから、慌てて購入しました。約1年くらい使っていたころ、煙が出て使えなくなりました。 中を開けると、バンドスイッチのベーク板が黒ずんで焦げています。 送信中にバンドスイッチを回したために、アークが飛び、その勢いでベークが燃え出したようです。アークの飛んだ端子の部分は割れてしまい、スイッチの役目をしなくなりました。

ロータリースイッチを手配するため、インターネットで調べましたが、同じ形状のものを見つける事ができませんでしたので、寸法が明示されている「岩崎アイセック(株)」という会社のB1111Dという品番のロータリースイッチを手配しました。(すでに廃番で現在は入手不可)。 シャフトを切断して、取り付け配線をする段階になって、ロータリースイッチのストッパーの位置が変更出来ない事が判りました。 スイッチは11接点で、切り替えポジションは12ポジションです。12番目のポジションはコモン端子になっており、どの接点とも接触しない構造です。電気的には、この構造でも、NT-636に使用できますが、NT-636のオリジナルスイッチは1番目のポジションがオープン状態でどの接点にもつながりません。

Nt636

これは、オリジナルのNT-636は、1番目が、1.9MHzのAポジションに設定されいるのに対して、新規に手配したスイッチは12番目が1.9MHzのAポジションになるということです。スイッチを反時計方向に回しきったときが3.5MHzで、時計方向に回していき、50MHzを過ぎて最後のポジションが1.9MHzになります。 操作面で不自由しますが、動作はOKですので、これでやむなしです。

もし、また壊れたら、今度はこのストッパーの位置を確かめてから買うことにします。

なお、取説には、送信中にバンドスイッチを操作するときは、10Wで行うことと書いてありましたが、どのアンテナチューナーでも同じことですが、送信中にコイルのタップを切り替えるとスパークする可能性は高く、以降、タップを切り替えるときは送信しないことにしました。

NT-636の取説をダウンロード

ところで、今頃気づいたのですが、取説には「ワンタッチCAL」というつまみがあり、進行波電力と反射電力、それにSWRのキャリブレーション機能が付いたプッシュプルSW付きの可変抵抗器が説明されています。 しかし、私の現物は単純な可変抵抗器と、セパレートになったCAL切替SW式となっていました。 途中で変更した理由は判りませんが、現在のセパレート方式が直感的で判りやすいですけど。

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マッチングトランス式アンテナチューナー

<カテゴリ:アンテナチューナー>

マッチングトランスを使ったアンテナチューナーの試作記です。

フェライトコアを使った広帯域バランは主に、不平衡/平衡の変換に使われますが、インピーダンス変換用トランスとしても利用する事ができます。

これを利用してこのブログでも21MHz用短縮デルタループを紹介しています。このときのトランスは、6本の平行ワイヤーを束にして6回巻いたコイルを直列に接続したもので、そのタップ位置を選ぶ事による目標に近いインピーダンスへ変換すると同時に平衡変換しておりました。(カテゴリ:マルチバンドアンテナシステムのアマチュア無線局 再開局参照)

Trans3_2

上の表はコイルが6組のときのインピーダンス変換テーブルで、50Ω不平衡を1.4Ωから1250Ωまでの平衡に変換できることを示しています。

Hentena_2 この考えを一歩進めて、すでに共振しているアンテナエレメントに1/2波長の整数倍の長さの同調フィーダーを取り付け、この根本に、このトランスを取り付けても同じ効果が得られます。キュビカルクワッドの共振周波数を調整するのにスタブを使いますが、このスタブがλ/2になったと思えばいいんです。こうすると、マッチングトランスをマストの上に置かなくても、少なくとも手の届く位置まで降ろしてくることができます。スタブの長さは1/2波長ごとに変化しますので、任意長では駄目ですが、50MHzなら3mの整数倍ですから、処理が楽です。

Img_2980 このアイデアで6mのヘンテナを作り、ベランダの手すり付近につけたマッチングトランスで広帯域の整合を実現しております。実際のスタブの長さはマッチングトランスの誘導性リアクタンスが加味されますので、その分短くしアンテナ側に容量性リアクタンスを含むようにする事により共振させます。 トランスのタップを調整して、SWRを1.0に追い込みますが、タップを切り替えるとリアクタンス成分が変化しますので、共振周波数がずれます。共振周波数がずれたら、同調フィーダーの長さを再度調整します。 このようにかなり面倒な調整が必要ですが、何よりも、全ての作業がベランダで完結するという高所恐怖症持ちにとっては非常に有り難いメリットがあります。

2014年7月追記

整合トランスのロスを測定したら、約半分がトランスでロスしている事がわかりました。現在はコイルとバリコンによるL型アンテナチューナーに変更しています。 詳細は、50MHz用 L型アンテナチューナー を参照下さい。

今までのトランスは多重巻きのコイルの数で分母と分子を構成する分数計算でしたが、スライダックトランスのように、ひとつのコイルに、いくつものタップを出して、このタップ位置でインピーダンス比を変えるオートトランス形式の高周波トランスの可能性を検討しました。

Trans2

オートトランス式12ターン巻きのインピーダンス変換テーブルです。黄色の部分は巻き数が少ない為、ロスが多いと予想し、使わないとしても3.1Ωから800Ωまで変換できます。ただし、このスタイルでは不平衡のままです。平衡変換しようと思えば、対称型のオートトランスにするか、このトランスの後にバランを付けるかで対処できます。

(対称型トランスで作った場合、このチューナー内で発生するロスも2倍になりました。結論的には、不平衡のままでインピーダンス変換した後、フロートバランで平衡に変換する方法がロス最少となりました。)

適当なダミー抵抗とアンテナアナライザーでチェックすると、ほぼ理屈通りのタップでインピーダンス整合ができました。周波数が10MHzを越えると、トランスのインダクタンスが無視できなくなりますが、それは、アンテナチューナー化したとき、アンテナの持つリアクタンスと一緒にキャンセルさせれば問題ありません。

Img_3220 オートトランスによるインピーダンス変換のメドが出ましたので、共振していないアンテナエレメントにキャパシタンスかインダクタンスを付加し、目的周波数に共振させた後、この純抵抗になったアンテナインピーダンスにマッチするようにトランスのタップを切り替えて整合させるタイプのアンテナチューナーを作ってしまいました。

Autotrans2

使用したオートトランスは5ターンのコイルを4組、平行巻きしたもので、それをシリーズに接続し、1ターンごとにタップを出したものです。従い、1ターン目のタップのすぐ隣にあるタップは6ターン目のタップとなっています。全部で19個のタップが有りますが、使っているのは9ターン目から19ターン目までの11個だけです。

コイルは最大32uH、最小0.5uH、12個のタップがあり、これをショーティングタイプのスライドスイッチで可変します。 当初、オープンタイプのスイッチで作成していましたが、ダミーアンテナを用意して、300Wくらいを加えると、コイルのタップとスライダーの間でスパークが起こりましたので、ショーティングに変更しました。100Wくらいなら、オープンスイッチでも実際のアンテナで実用できました。

バリコンは最大1200PF、最小20PFのスライド式ポリバリコンで、計算上の耐圧はAC10KVです。

操作は簡単です。トランスは50Ωに仮設定したまま、バリコンかコイルを調整して、アンテナを共振させます。共振したかどうかはSWR値をディップさせる事で知ることができます。共振したら、トランスのタップを順次切り替えて、SWR最小のポジションを選択します。タップを切り替えると、トランスのインダクタンス分が変動するので、共振周波数がずれますから、バリコンで微調整します。トランスのインピーダンス可変ステップは階段的ですが、SWRはすんなりと1.0付近まで、いとも簡単にスコンと気持ち良く落す事ができます。このチューナーの特徴は、LCタイプのチューナーより、帯域が広いということ。LCで整合回路を構成すると、アンテナの共振以外にインピーダンス整合回路も周波数特性を持ちます。従い、アンテナ自身がもつ帯域より通常狭くなりますが、このタイプは帯域の縮小がほとんどありません。ベランダから突き出した釣竿や、現用アンテナに接続して、100W運用で全く問題なく使えました。

チューナー内部で発生するロスは、7MHz用垂直ダイポールを3.5MHzに同調させた時、πマッチのMTUと同等か、それよりいくらか良いレベルでした。 クラニシのNT-636(Tマッチ)よりはロスが少ないようです。ロスの原因は誘導性リアクタンスの連続可変にバリコンを使っている事です。連続可変のインダクターが実現できれば、Lタイプに近い効率が期待できるかも知れません。 しかし、何回か使っている内に、整合状態でのトランスのタップ位置が、予想されるインピーダンスと大きくかけ離れる場合がありました。 特に、周波数が高くなったり、アンテナが50Ωより低いインピーダンスになった場合です。 このような状態では、計算通りのインピーダンス変換をしていないようです。 このチューナーはATUを作る為の基礎検討の為試作したものでしたが、トランスの特性がネックとなり検討はストップしてしまいました。

マッチングトランスだけのその後の検討結果はインピーダンス変換トランスを参照下さい。

また、連続可変可能なATUの試作と実使用検討は、後日、T型整合回路を使用して実験する事にしました。 こちらを参照下さい。

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Z-Match(Zマッチ)アンテナチューナー

<カテゴリ:アンテナチューナー>

リレーを使わないオートアンテナチューナーを模索しておりましたら、バンド切り替えなしで1.8MHzから28MHzまでカバーできるアンテナチューナーの存在を知りました。 バンドSWが無いのなら、少なくともメカニカルSWが不要ということで、バリコンをモーターで回転させるだけで、HFを全てカバーするオートアンテナチューナーが実現できます。 「Z-Match」と呼ばれるこのチューナーについての実験記です。

「Z-Match」をGoogleで検索すると、いっぱい出てきました。

・1組のコイルで1.8MHzから28MHzまで、バンドSW無しでカバー。

・バリコンに2連タイプが必要になるけど、耐圧は半分で良い。

・構造が簡単で再現性が良い。

など、世界中のハムが実際に製作して使っているレポートが存在します。さすがに、1.8MHzはローディングコイルを追加する構造がほとんどでしたが、ここはリレーを1個追加してやれば済むことで、AH-4みたいなリレー式ATUでは実現出来ない、無段階調整が可能なATUの可能性を秘めています。 そんなに良いチューナーなら、すぐにでも作ってみようと実験を始めました。

Zmtch1 左がZマッチチューナーの基本回路です。1次コイルと2次コイルで構成される極普通の高周波コイルの1次側に500PFくらいの2連バリコンと300PFくらいのシングルバリコンを接続し、シングルバリコンから送信信号を送り2次コイルにアンテナをつなげばOKというしろものです。1次コイルの巻き数も、10数ターンと、逆に簡単すぎて驚く構造です。

本当に、ちゃんと整合するのか?作ってみることにしました。いい加減に作ったのにちゃんと1.8から28メガまで整合します。2連バリコンが曲者かもと、これをシングルバリコンに交換してみてもちゃんと動作します。2次コイルと1次コイルの結合構造が難しそうなので、2次コイルでなく、1次コイルにタップを立ててそこからアンテナに接続しても問題なし。

Z_mutch1 Z_mutch

実験中のZマッチアンテナチューナー

一応、動作確認は終えたので、かなりきつい負荷条件で、チューナー内にどれだけロスが発生するか調べてみました。送信機から1Wくらいの出力を加え、抵抗とリアクタンスを直列に接続したダミーアンテナをチューナーに接続しSWRが1.0になる様に調整します。次にチューナーの入力(50Ω)端でのRF電圧をオシロで測ります。また、ダミーアンテナの抵抗部分の両端電圧を測り、それぞれ電力計算したのち入力電力とダミー抵抗電力の差がチューナー内部でロスした電力とします。その結果を次の表(ロス比較 1)に示します。Zマッチのデータは実測値です。その他はシュミレーターによる計算値です。シュミレーターの計算と実際の数値はほぼ一致している事は別の検討で確認済みです。 Zマッチはチューナー内のロスが非常に大きい事が判りました。7MHzでもインピダンスが4.7Ωのアンテナの場合、45%がチューナーの中で消費されています。1.8MHzで4.7-j800の負荷の場合、実際の測定では、4.7Ω両端のRF電圧を見る事ができませんでした。さらにこの状態で、ダミーアンテナを取り去っても、SWRは1.0を示したままでした。これは、50Ωで捕らえた送信電力をきれいにチューナーの中で消費し、空中へは一切放射しません。反射電力も一切返しませんというダミー抵抗と同じです。 別の見かたをすれば、どのような負荷に対しても、見かけ上、整合できたように調整できると言うことですから、SWR計が1.0を指しているのに、電波は一切放射されないという事が起こりかねません。

色々と実験の結果、7MHz以上のバンドで使う場合、Tマッチ同様、使いやすさを天秤にかけたらコンパクトで簡単に使えるチューナーと思いますが、今回は160mや80mバンドがターゲットでしたので、採用は諦めました。

Zmtch2

上の表の「ロス比較 2」は私が良く使う、クラニシのNT-636を実測した時のロス値です。クラニシ以外の数値はシュミレーションした値です。NT-636はTマッチ式ですから、シュミレーションで設定したコイルのQ=100より、NT-636のコイルのQは良いみたいです。 3.5MHzで2.5-j529というアンテナは接地抵抗が良好な 全長7mの垂直ホイップに相当します。カバーするインピーダンスの広いアンテナチューナーは総じてロスが多いのですね。πマッチは整合しませんでしたが、パイマッチの一方のバリコンを取り去るとLマッチになりますので、パイマッチ回路が持つ、浮遊容量を減らす必要がありそうです。

しかしながら、このようにデータを取り始めると、アンテナチューナーは使わずに済むものならそれに越した事は無いという事が良くわかります。また、例え、使うにしても、Lマッチで使う連続可変インダクタが欲しくなります。

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プリセット式MTU 4

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

プリセット式MTUをフルに使用して1年以上経過しました。この間に行われたDX、国内コンテストに参加して、それなりの成果が得られていますので、シンプル構成のアンテナシステムにしては、上出来と思っています。

Mtu111年以上も経過すると、色々とトラブルも発生します。 24MHzに使われているポリバリコンのPPシートが熔けて、アルミ板にくっついている事があります。運用上は特に問題はないのですが、何が原因か判りません。中国製A4サイズ20枚で100円のPPシートの品質なのか?

21MHzをアナライザーでSWR1.0に調整した後、実際に100Wで送信すると、SWRが2を超える時があります。この状態で、再度アナライザーでチェックすると、SWR2を超えています。絶縁破壊が起こった時の症状です。21MHzのPVCのPPシートを見ると、ごみがついたように汚くなっています。分解して調べると、ごみではなく、表面がすりガラス状に解けているものでした。 やはり、PPシートの品質の問題みたいです。

ホームセンターからブランド名が通った赤色のPPシートを買ってきてハイバンド側全部を交換して様子を見ることにしました。  途中で赤色のPPシートを使い切りましたので、趣きを変える為、黄色のPPシートに変えてみました。絶縁性能は赤も黄色も差はありませんが、黄色のPPシートは透明度が悪く、ポリバリコンのローターの羽をそろえるのに苦労します。 黄色を使い終わったら、また赤色に戻す予定です。  最初の中国製PPシートより、20倍くらいの価格のこのPPシート(アクリサンデー PPクラフトシート PF-12、三菱レーヨン製)は、とりあえず問題なしで使えそうです。

 ポリバリコンはローターとステーターの隙間管理はラフで良いのですが、一度絶縁破壊が起こると、絶縁材を交換するしか対応方法はありません。エアバリコンのように、絶縁破壊が起こっても、パワーを少し下げればすぐに使える便利さは有りません。


3.5MHzをTタイプで作成して、耐圧問題でπに変更しましたが、この時の絶縁破壊も安物のPPシートが原因だったのかも知れません。ただし、チューナー内部ロスはT型が大ですので、π型にしたのは正解でした。

Mtu12m_2 各MTUのコイルに使われているボビンは黒色のABS製です。黒色はカーボンで着色されているから、高周波では損失が増えそうだという話を聞き、透明アクリル製のボビンに交換してみることにしました。 たちまち、気が付くような効果は見られませんが、少し時間をかけて観察することにします。

アンテナのメンテナンスの為に何度も倒したり、立てたりする内に、ループと垂直ダイポールの支柱を兼用している鉄製のパイプが弓なりに曲がってしまい、見苦しくなったことと、この曲がりの癖の為にやや強い風でアンテナの向きが変ってしまうという問題が出てきました。アンテナチューナーの課題は収束しつつありますので、唯一不満のアンテナの帯域幅を改善したく、全面的に立て替えることにしました。と言っても、垂直ダイポールとワンエレループの構造は変えません。

Newskydoor 支柱の材料を10m長のグラスファイバー製ポールに変更した上で、細での釣竿を継ぎ足して11m長に変えることと、ループの横幅を2mから3mに変更して帯域幅を現行の1.5倍以上に広げることです。 横幅を広げた結果、縦横比が1.7くらいにしかなりませんので、もうスカイドアとは言えないかも知れませんね。 また、ローバンド用の垂直ダイポールは、線材を3.5mmSQのKIV線に変更し、上部エレメントの最高部は18mまで上げ、下部エレメントは、最下部で1mを折り返しています。 

当初、ループの線材も3.5SQのKIV線で作ったのですが、重くて、釣竿がピンと支えてくれません。やむなく、ループだけは2mmのアルミ線としました。

この変更工事が完了した時点で、MTUは全部再調整となりましたが、初期の頃あった経時変化も収まっていましたので、バリコンの角度調整だけで20mバンド以外は整合できました。 20mバンドは、リアクタンスの変化が大きかった為、コイルを含めて変更となりました。

プリセット式MTUが成功する前提として、同調フィーダー(又の名をハシゴフィーダー)の存在が欠かせません。ひとつのエレメントをマルチバンドで使用するとき、同調フィーダーというのは、とても便利なものであることが判りましたが、今までの試行錯誤の経過から、同調フィーダーはあくまでもアンテナの一部であると言う事を肝に命じる事になりました。
同調フィーダーは自由空間に置かないといけない。金属材料と平行したり、鴨居をくぐったり、天井裏を走ったり、ベランダの柵に束ねたりしたら駄目なんです。

同調フィーダーのセパレーターとして使っているトリカルネットは、4年でボロボロになりました。日光が当たらない所は問題ないので、ボロボロになった部分のみ取り替えました。 黒色のネットなら寿命が長いそうですが、残念ながら、当地のホームセンターには白色しか在庫がなく、取り寄せた場合、1巻(何mは不明)全部購入になるとの事で、今後4年に一度くらいは、定期的に交換するしかないようです。


 

3.5MHz ALC動作異常(RFフィードバック)に続く。

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TS-930 腐ったスルーホール(表示トラブル)

<カテゴリ:TS-930>

TS-930の故障で、その頻度がかなり多いのが、デジタル基板です。 VFDの表示やキー操作の異常が発生したら、大抵の原因は、このデジタル基板にあります。しかも、その異常の原因は両面基板の裏表の銅箔パターンを接続するスルーホールと言われる、両面をつなぐジャンパーみたいのものですが、これが、経時変化と熱で時々断線するというものです。現在のスルーホール技術はこのような問題は解決済みですが、このモデルが発売された時代での民生機用両面基板のスルーホール技術は未熟で、10年もすると、あっちこっちで問題が多発しました。

VFD(蛍光表示管)の表示がおかしいとか、操作に同期して異常な音がするとか、全く表示しないとか、キー操作して異常が認められる様な場合、真っ先に、このデジタル基板を疑った方が、修理が早く済むというものです。しかも、個々の部品不良は一切なく、基板を再ハンダするだけで直ってしまいます。

この、スルーホールが原因による故障は、世界中の修理者の間では既知であり、KENWOODは、どこのスルーホールが非道通になったら、どんな症状が発生すると、書かれたサービス資料を配布していました。

「TS-930S Digital Unit through-plated hole defects and their symptoms」で検索すると見つかるでしょう。

Ts930digitalpcb ところが、私が修理した3件のVFD表示異常は、いずれも、このリストに記載されていない箇所のスルーホールが原因でした。特に、交信中に発生する異常は困りもので、この異常の為に、交信が中断し、尻切れQSOで終わったのも数回。

修理しようと、電源を入れたり切ったりしている内に症状が出なくなり、万事休す。

とうとう我慢できなくなり、サービスマニュアルの基板図から調べつくした、全てのスルーホールをジャンパー線でショートしてやりました。     

この対策をして、すでに2年経過してますが、表示に関する故障は皆無になりました。  このブログで、パワーアンプのスルーホール対策を紹介していますが、それより2年前の出来事です。

4年目で問題が再発しました。ただし、今回はスルーホールではなく、コネクターの接触不良でした。デジタル基板につながるコネクターを全て抜き、オス、メス両方を接点復活剤で清掃しました。 すでに半年経過しましたが安定しています。

930th2 2013年4月に、電源ONして5分もしない内に表示が出なくなるというTS-930Sが持ち込まれました。調べると、ON後、2分くらいで表示が全部消えます。36.1MHzは異常なし。ダイヤルを回すと、表示が復帰します。この症状はKENWOODのサービス資料の中に出てきます。原因はスルーホール不良です。症状から問題のスルーホールはすぐに特定でき、対策完了しましたが、このまま持ち主に返しても、また別の問題で舞い戻ってくる事は、目に見えていますので、今回も全スルーホールをショートしてやりました。多分これで、スルーホールが原因の故障は皆無になることでしょう。

デジタル基板の不良でもVFDが全く表示しないという症状が発生しますが、この一切VFD表示せずの原因で最も多いのはPLLアンロックです。さらにPLLアンロックの原因で一番多いのが36.1MHzの局発停止です。

Ts930back2 特に、長い間、放置してあったTS-930を通電したときレベルメーターのバックライトはつくけど、VFDに何も表示されない。当然受信も出来ないという症状に遭遇しましたら、まず最初にこの局発停止を疑って下さい。36.1MHzのキャリアが発振停止しているかいないかは、オシロがあったらすぐに判ります。無い場合でもセットのフロントパネルを手前にして裏返したら、左手前に配置されているL77のコアを割らないようにしてグリグリと回してみてください。表示が戻り受信できるようになる事が多いですよ。 コアを割らない為に、私は、いつもツマヨウジをマイナスドライバーの先端の形状になるようにナイフで削ってから使用しています。

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