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2020年3月21日 (土)

DC48V リニア安定化電源の制作

 <カテゴリ 電源>

7MHz用、100Wリニアアンプの制作途中で、壊したFETは8個。 FET破壊の原因を突き止め、安定に動作するリニアアンプを完成させるには、電圧を自由に変えられるDC電源が、どうしても必要です。 そこで、このDC電源を試行錯誤しながら作る事にしました。

今回の目標仕様は、DC48V5Aの出力が確保できる電源で、出力100Wのリニアアンプに使えるものとします。 出力電圧は48V固定ではなく、5Vから48Vまで最大電流5Aを目標とします。

この電源を作る為に、半年くらい前に、AC400VをAC200Vにダウンする1KWクラスの絶縁型トランスをローカルのOMより、いただいていました。 このトランスを, 100VAC電源に接続すると、AC48Vくらいが出力されます。 これを、ブリッジダイオードで整流し、10mAくらいの負荷電流を流すと、67Vの直流電圧が得られます。 これを安定化電源回路で5Vから48Vまで可変できるようにします。 トランス容量は1KWですが、その時の2次側定格電流は、5Aです。 従い、100VのAC電源に接続した場合、2次側の電流はMax 5Aですから、250W相当のトランスとなります。

回路が簡単で、そこそこの特性が得られる安定化電源として、MOS-FETによる回路が候補にあがります。 MOS-FETによる安定化電源はAM送信機のサブ電源として試作した事がありましたが、この時は、AM送信機の内部に実装した為、7MHzのRF信号がレギュレーター回路に回り込み、送信した途端、煙を噴いて終わった経過があります。 今回は、送信機とは別の筐体であること。 RFフィルターを、これでもかと言うくらい挿入し、なんとか実用化しようと言うものです。

Dcpower0_2 上の回路が標準的なFETを利用した安定化電源になります。 最初D7とC12は有りませんでした。 その状態で、可変抵抗を回すと、4.8Vから66Vまで出力電圧を可変できます。 次にC12を追加しました。 C12は負荷回路に対して電源側の低周波インピーダンスを小さくすることが目的で、SSBのように音声信号の強弱により負荷電流が変化する場合、電源として必要条件になります。 そして、このC12を実装した状態で電源ONすると、一応安定化された電圧が出力されます。 次に、この電圧を可変すべく、出力電圧を小さくした途端、パチと音がして、FETから煙がでます。 そして、出力は67Vに。

FETがDSショートで壊れ、ついでにD4もショートモードで壊れてしまいました。 原因は、急激に出力電圧を下げようと可変抵抗を回した結果、Q1のコレクタ電圧は下がったものの、Q2のソース電圧は、C12の残留電荷により、電圧はほとんど落ちず、VGSmax -20Vを超えてしまい、Q2の破壊に至ります。 また、出力電圧と入力電圧差が20Vを超えた状態から、出力電圧を急に上げると、FETのVGS最大電圧を一瞬超えますので、FETが破壊します。 一方D4は電圧を最小にする為に、VRを回すと、出力電圧がシリーズ抵抗なしでQ1のベースに加わり、この時の過大電流により壊れてしまいます。 Q1が小信号用なら、Q1も同時に壊れる事になります。

インターネットで保護対策を検索すると、FETのVGS対策として、D7を追加する事が判りました。 D4の対策は、出力電圧を最小にした場合でも、Q1のベースにシリーズに電流制限抵抗を入れる事と、C12が早く放電するように、放電抵抗R7を可能な限り小さくする事のようです。 

以上の対策を実施した回路が下になります。書き換えた為、REF No.が異なります。

Dcpower1 FETは秋月で2石で300円というPd 100W品を、D7は3.3V 0.5W品を使います。 D7の許容電流は150mAくらいですので、問題ないと思います。 D5,D6に1WクラスのZDを使おうとしましたが、FETのゲート、ソース間に保護ダイオードを内蔵している事が判りましたので、このダイオードは不要になります。 また、C12の放電抵抗は、500Ω 25W品にします。48V時、常時96mA流れますが、放電は早くなるはずです。

レギュレーター出力部に、10Aコモンモードタイプのラインフィルターを、また、レギュレーターの入力部にも、6Aクラスのコモンモードフィルターを入れます。

これらの部品を秋月やモノタロウへ発注しましたので、届き次第組み立てる事にします。

Avr48_0

部品が届きましたので、左の写真のごとく、旧50MHz AM送信機のシャーシへ組み込みました。 検討の途中なので、あっちこっちで空中配線がありますが、問題点がすべて解決した暁には、きれいに配線し直します。

まず、FETが発振しました。 セオリー通りFETソースからQ1のベースに1000PFを追加してあったのですが、効果なしでした。 そこで、FETのソースから、ゲートの1KΩのコモン部分に最短経路で103Zを追加したら、発振は収まりました。 しかし、まだ、出力の電圧計がフラフラと揺れます。 オシロでチェックすると、左下のようなノイズが出力端子へ出ます。このノイズは負荷が軽くても、重くても関係なしに出ます。

Avr_noise0

Avr_noise1

対策として、Q1のベースとGND間に33uFの電解コンデンサを追加してみました。 するとギザギザのノイズはなくなりましたが、大きなリップルが乗ります。 そこで、このコンデンサを次第に小さくしていくと、0.1uFの容量のとき、リップルもギザギザノイズも目立たなくなりました。 しかし、時間をおいて、しばらくエージングすると、また、再発します。 追加したコンデンサの為、高い周波数の成分は少なくなりましたが、レベルは時々2倍以上になります。 困り果て、部品をかたっぱしから交換していき、やっと判った原因は電圧調整用の可変抵抗器の接触不良でした。 オーディオの世界で言う、ガリオームの事で、これがノイズ発生源でした。 対策は、新品の巻線型可変抵抗器に交換して、完了です。 ただ、この検討の段階で、Q1の2SD1408を壊してしまい、VCEOの高い石で不動在庫になっていましたSTマイクロのMJD31Cに交換してあります。 右上がその対策後の波形です。 検討の途中で追加したC13は本来不要になったのですが、他に弊害がないので、追加したままにしてあります。

 

Avr_overview

とりあえず、実用可能な状態となりました。 実際に使っていくと、また、新たな問題が発生するかもしれませんが、その時は、その時、対策を考える事にします。 左は、完成状態の安定化電源です。 ケースが有りませんので、RFの回り込みが心配ですが、必要によりカバーを考える事にします。

この安定化電源は、4.6Vから50Vまで可変できますが、最大電流は5Aとし、保護はヒューズのみです。 

問題点を対策した配線図 DC_POWER_SUPPLY2.pdfをダウンロード

ファンは5V品なので、別にトランスを追加し、DC6Vを作り、抵抗で4Vまでダウンしてドライブしています。

Avr_3a49v

左は、49Vにて、3A負荷を接続した時のテスト風景です。 ノイズもなく、安定して動作しています。

心配したファンの騒音もなんとか無視できる状態で、一安心です。

これで、リニアアンプの検討へ復帰できます。

 

 

リニアアンプ検討に復帰したのですが、また、この記事に戻ってきました。 一応予想はしていたのですが、出力2.5Wの7MHzの信号がFET回路に回り込み、あっけなく、壊れてしまいました。 電源だけでなく、リニアアンプのファイナルFETも壊してしまい、がっくりです。

やはり、FET式の安定化電源は、送信機と一緒に使う事は無理でした。 その送信機の中に、48Vから12Vを作る安定化電源をトランジスターで作ってありますが、こちらは、なんら問題は有りません。 従い、この電源もトランジスターで作り直すことにしました。

手元に使えそうな石として、2SC5198 1石しかなく、本来は2石パラで作らないとコレクタ損失の許容値オーバーになりますが、追加手配できるまでは、1石で行く事にします。

トランジスターによる安定化電源 PWR-AMP100W_3.pdfをダウンロード

2SC5198のhfeはIc 5A のとき、最小35しかなく、ベース電流は最大で142mAは必要になりますので、ダーリントン接続のドライブTRも電力用の2SD2012としました。 ただ、このTRのVCEOは最大で60Vであり、出力を5Vまで絞ると、最大値を超えてしまいますので、代わりのTRを手配して置きます。

一応、48Vで3Aのテストは合格しましたので、とりあえず、この状態で、リニアアンプの検討を始めましたが、出力が3Wになった時、ダーリントン接続のトランジスターを含めてショートモードで壊れてしまいました。 どうも、回路が発振したような形跡がありました。 結局、また一からやり直しです。

電源の修理は、原因を究明してから、後でやる事にし、壊れたリニアアンプの終段のFETを交換して、再度、リニアアンプの検討へ復帰します。

  

電源に使うトランジスターを全部壊し、仕方なく、従来の電源でリニアアンプの検討を行い、電源電圧18Vで安定動作が得られましたので、やめとけば良いのに、また30Vの電源に接続した為、アンプのFETを壊してしまいました。 結局、また、電圧を自由に変えられる電源が必要ということを悟りましたので、三度(みたび)、電源の改善検討です。

前回のトランジスターによる電源が壊れた原因を突き止めた訳ではありませんが、トランジスターでもRFが混入してTRがショートモードで壊れるということは、よっぽど、RFを拾いやすい回路になっているようです。 一番、拾いやすいのは、安定化電源の制御回路と、制御用TRの距離が遠いという事かもしれません。制御用TRと制御回路を結んでいるワイヤーの長さは、おおかた20cmはあります。 多分、これが一番の問題だろうと判断し、回路のレイアウトを大幅に変えます。 ただ、100WクラスのTRは全部壊れてしまいましたので、手元に残っている100WクラスのMOS-FETで再制作する事にしました。

下の写真が、基板の位置を大幅に変更した全体の部品配置です。

Fet_powersupply2all

配置を大幅変更した以外に取った改善策は、制御回路の入出力に70uHのチョークコイルを追加した事。 および、放熱板に固定された2石のFETのドレイン、ソースから、放熱板に0.01uFのコンデンサでいきなりGNDへ落した事です。 放熱板そのものは、GNDにビス止めされていますので、GNDとして動作しますので、そこへ最短でパスさせる事にしました。

Fet_powersupply2

上の写真は、制御回路と制御FETのアップですが、FETとの接続は最短で行いました。

動作テストは済みましたので、後は、実際にリニアアンプに繋いでみるだけとなりました。

修正した配線図 DC_POWER_SUPPLY3.pdfをダウンロード

そして、リニアアンプへつなぎ、18Vの電圧で、パワーを上げてみました。 残念ながら、5Wの出力になった時、煙が出て、電源電圧は65Vに。 電源のFETはショート状態で壊れ、ついでにリニアアンプのFETもショートモードが壊れてしまいました。

今回の壊れ方は、入力を上げた訳ではなく、1Wの出力が、数秒間の間に勝手に5Wまで上昇したもので、明らかに、リニアアンプの熱暴走です。 今まで、電源が壊れるのは、電源回路にRFが回り込み、異常状態となり、電源が壊れて、次にアンプが壊れると考えていましたが、どうも、この順序は逆で、アンプが熱暴走した場合、電源は際限なく電流を供給しようと動作した結果、両方が壊れるのではないかと、考える事にしました。 なぜなら、送信機に内蔵した12Vの安定化電源は、熱暴走しない負荷であり、かつ、なんらかの原因で負荷電流が増えても、レギュレーターの内部抵抗の為、いくらかは不明にしろ電流制限がかかります。 壊れた電源は、その帰還ループを使い、負荷が0Ωになっても出力電圧を維持しようと動作しますので、最後は壊れるしかないという事です。

そこで、電流検出を行い、設定された電流を超えそうになったら、出力電圧を下げる、保護回路を追加する事にしました。 使用する電流センサーは秋月で扱っている、NECトーキンのTHS63Fにします。 その上で、シリーズレギュレーターはダーリントン接続の2SD2390 2石にします。

この電流センサーTHS63Fを入手し、予備検討したところ、データシートにあるアナログ出力が全く変化しません。アナログ出力端子(4番ピン)に10KΩを付けようが、openにしようが、センサー部分に電流を流そうが、ゼロにしようが、アナログ出力は1.98V一定でピクッともしません。 データシートには、センサーの電流に比例した電圧が出力されるとありますが、アナログ端子の事ではないのか?

ただ、OUT1はセンサーが感知する電流になると、HからLに変わります。 やむなく、このOUT1の電圧を使い、全体の電流制限回路をデザインする事にしました。

電流制限回路付きの安定化電源 DC_POWER_SUPPLY4.pdfをダウンロード

そして、このセンサーICとファンを動作させる5Vの電源を、シリーズレギュレーターで作り、今まで有った、5V電源用のトランスは廃止しました。

Tr_powersupply4a

Tr_powersupply4b

左上が、あたらしく基板を作り直したシャーシ全体、右上が、電流センサーを実装した基板です。

この回路で、制限する電流値は12接点のロータリーSWで行います。このロータリーSWでセンサー部分に直列に接続した抵抗値を可変する事により、連続ではありませんが、0.5Aくらいから5.5Aくらいまで可変できます。

リニアアンプを接続した時の、最大電流は8Aくらいが予測されますが、その時は、R1,10の0.1Ω2本パラを3本パラにすれば最大で8Aくらいを確保できます。

ただし、この電流値は、私が今回使ったTHS63Fの固有の特性であり、このハイブリッドICのロットのバラツキによっては、この制限電流値が±50%くらいはバラツクものと思われます。

この電源で、再度リニアアンプを検討する事にします。

リニアアンプへつないでみました。  20Vの電圧で、出力10Wくらいで、またも電源が壊れました。 シリーズトランジスターが全端子ショート状態で壊れてましたので、当然リニアアンプも壊れてしまいました。 電流制限は5Aに設定してあったのですが、間に合わなかったようです。

 

2020年4月末

ゴールデンウィーク前ですが、世の中は、新コロナウイルスで外出自粛の真っ最中。 せっかく追加した電流制限回路は、その応答速度の為、リニアアンプの熱暴走のスピードに間に合わず、電源が壊れた状態でした。 そんな中、OP-AMPを使ったバイアス回路がうまく動作して、26Vの電源で、安定動作するところまで、改善できましたので、電源電圧を26V以上に小刻みに上げられる安定化電源が、どうしても必要となりました。 前回、壊した為、シリーズトランジスターは1石しか残っていませんが、この1石を使い、電流制限を2重にかけた回路で、再検討する事にしました。

Psupply5 トランジスターの追加手配ができるまでは、1石で頑張ってもらいます。 電流検出用0.1Ω2本パラは1本に変更し、この両端にNPNトランジスターのベース、エミッタを接続し、BE間の電圧が0.6Vを超えると、このトランジスターがONし、電流が一定になるように電圧を下げるQ2を追加しました。 まだ、テストしていませんが、たぶん6A流れた時点で、電流は一定になるはずです。 前回追加した電流センサーによる電流制限回路も検出電流値を変更して、そのまま実装しました。 この回路で、センサーによる3Aの電流制限までは、ダミー抵抗でテスト出来ていますが、それ以上の電流では、まだ確認が出来ていません。 また、ロータリーSWの構造から、接点を切り替える途中で一瞬回路がopenになりますので、通電中の電流制限値の切り替えは厳禁です。

この電源回路を間違って出力ショートモードで電源ONしてしまいました。 4Aくらいで電流制限がかかったのですが、数秒後に、電源のLEDインジケーターが消えました。 調べてみると、トランスとブリッジダイオード間に挿入した10Aのヒューズが切れていました。 ヒューズを交換して、電源の負荷をオープンにして、再度電源をONすると、パンと音がして、出力電圧は60V以上に。

負荷がつながっていなかった為、電源以外の被害は有りませんでしたが、結局、電源は追加した電流制限回路が機能したのですが、その時のショート電流に耐え切れず、シリーズトランジスターが壊れてしまいました。 シリーズトランジスターが1石では不足だったみたいです。 2石でも不足かもしれません。 このトラブルは、リニアアンプがつながっていませんので、純然たる電源の問題です。 ショートした為、電流制限回路が機能して、電流は4Aで制限されましたが、この時の出力電圧は0Vです。しかし、安定化電源の入力DC電圧は下がったもののまだ48Vもあります。 この結果シリーズトランジスターには48V x 4Aの電力、192Wがかかってしまいました。 このFETのPdは100Wですが、それは無限大放熱板を付けた時の話で、実際の放熱板で、ファンを目いっぱい回したとしても50Wくらいが限界のはずです。 数秒でも、もったということは、「えらい」。 そして、私はそれに気づくのが遅い!

 

2020年のゴールデンウィークに突入しました。 ただし、今年は、新型コロナウィルスで、いつもの年とは大きく異なります。 外出自粛により、検討が進みそうです。

リニアアンプの熱暴走が起こった場合、この出力端子ショートに近い状態です。 いくら、電流制限を設けても、リニアアンプが正常動作する範囲の電流制限では、電源は壊れて当たり前ということが理解できました。

ここまで、悟るのに2週間かかりましたが、負荷がショートした時は、出力電圧をゼロにする、イワユル フの字特性の電源が必要なのです。

Avr12v1a

20V 1Aという容量で、フの字特性を有する安定化電源を常用しております。 左がその電源ですが、この電源は、昭和46年くらいに作ったものです。 すでに50年程経過しておりますが、壊れる事無く、いろいろな実験に重宝しております。 今、要求されるているのはこのような電源だろうと、フの字特性の電源に作り変える事にしました。

フの字特性付きの電源 DC_POWER_SUPPLY6.pdfをダウンロード

Pnp3tr

Ipwrspl6

この電源ではPNPの大電力トランジスターを使います。 採用したのは、2SB554というPc150WのCANタイプトランジスターで、それを3石パラにします。 最大450Wの許容損失ですが、実際の回路では、雲母の絶縁にシリコングリス塗布、さらにファンで強制空冷した上で、200W位いがMAXとなります。 この回路で、負荷ショート時、フの字特性が威力を発揮し、出力電圧、電流ともに0となります。 ただし、この特性がアダとなり、コンデンサ負荷(特に電解コンデンサ)時に、負荷ショート状態でスタートしますので、電源が立ち上がらないと言う問題に遭遇します。 この解決方法として、負荷がゼロΩでもいくばかの電流が流れるようにする事。及び、無負荷状態を作らず、邪魔にならない程度に常時電流を流しておくことが重要です。

この対策として、シリーズトランジスターのベースから、かなり高い抵抗で、コレクターに接続し、常時負荷へ電流が流れるようにする回路が例示されますが、この場合、トランジスターのhFEの関係で、一律に抵抗値が決められません。 特に、ダーリントントランジスターの場合、hFEが10,000を超える場合があり、挿入する抵抗は2MΩで小さすぎ、10MΩ以上が必要だったりしますので、シリーズトランジスタのエミッタ-コレクタ間に、kΩオーダーの抵抗を付け、負荷ゼロでも起動する最大の値を探る方が確実です。

この回路でも、最初、R2を10KΩとして、問題なく動作していましたが、ダミーとして、R7の500Ωを繋いだら、起動しなくなり、5.6kΩまで小さくした経緯があります。 そして、電源ONと出力ONは、必ず独立したSWにします。 特定のリグの専用電源なら、その負荷で常時起動する回路定数にすれば良いのですが、汎用電源の場合、負荷状態が不定ですので、出力ON/OFFスイッチはマストです。 

電源の耐性を上げる方策は、入力となる直流電圧をぎりぎり下げることです。 30V 6Aの負荷に対して、60VのDC入力は、それだけで180Wの損失が安定化電源にかかる事になります。 30V 6Aの安定化電源を得るには、6Aで32V以上の電圧があれば良いわけで、もし、この時の入力電圧が32Vなら、12Wの損失を安定化電源が背負えばよい訳です。しかし、そのような都合の良いAC電源を用意するには、スライダックスがマストです。 残念ながらスライダックスが有りませんので、無負荷時67Vのトランスを使用せざるを得ません。

ちなみに、電圧を半分にした時の最大出力可能な条件は25V 5Aでした。 30V 6Aにトライしたところ、フの字特性が働いて出力ゼロとなりました。 このフの字特性が働くのは、入力DC電圧と出力電圧の差が2Vくらいになった場合のようです。

Avr40v7a

上のグラフは今回の安定化電源(AVR)に5Ωの負荷を接続した時の電圧と、AVR自身が請け負う許容電力をシュミレーションしたものです。 5Aまでは実測データを使っています。

負荷抵抗が5Ωの場合、最大39V、7A負荷でフの字特性が現れることを示しています。 この状態でリニアアンプをドライブしてみる事にします。

リニアアンプの動作試験を行い、120Wの出力でも、RFの回り込みはなく、リニアアンプのFETがショートモードで壊れた時も、フの字のプロテクターが機能し、電源は無傷でした。

Avr_protecotorstart

この安定化電源のフの字保護回路が動作する負荷条件は、出力電圧でことなりますが、トランスのレギュレーションから推定した負荷電流は左の通りです。

2020年8月

出力電圧を12Vにして、出力ONすると、時々、出力ONのLEDがポカポカしたり消えたりします。 夏になって温度が上昇した為、Q7のゲート電圧が上がらず、Q7をON仕切らない事が原因でした。 対策として、R13を120Kから22Kに変更しました。

 

2020年11月

リニアアンプをパワーアップしようにも、現在の電源のトランス容量は250Wです。 100Wのリニアは持ちこたえても、200Wのリニアアンプは不可能です。 そこで、トランスを再検討する事にしました。

Trans2

今まで使っていたトランスは左上の大きなトランスです。容量的には1KVAですが、400V/200Vのトランスで2次側の定格電流は5Aです。これを1次側100Vで使う関係で、出力は5Aが優先され、約250Wしか無かったものでした。 一方、右上のトランスは、左のトランスを提供いただいたOMから、さらに頂いた、ステレオアンプ用のトランスです。

オーディオアンプは、定格出力が100Wx2ch=200Wで有っても、連続で出力を保証しているのは、1/3の66W以下です。200Wはせいぜい5分くらい出せたら良いというスペックですから、SSB送信機のように定格出力の70%を連続出力する能力は有りません。 しかし、それは、トランスの温度上昇からくる限界で、内部の温度が110度くらいの時です。 一方、トランスの内部に設けられた温度ヒューズは150度くらいの物が多く使われており、実際は、定格出力の30%以上でも、使う事が出来ます。 大体の目安ですが定格出力100Wx2chのアンプを100Wx2chでエージングすると、早いもので15分、遅くとも30分で温度ヒューズが飛びます。 これらの事から、SSB 200Wのリニアアンプに使った場合、70%の出力で30分間くらいは耐えるかも知れないと、淡い期待もありますので、このステレオアンプ用のとトランスへ乗せ換える事にしました。

Transreguration

上のグラフはこの二つのトランスのレギュレーションを示します。 赤のラインが1KWの従来のトランス、青のラインがステレオ用のトランスです。 レギュレーションは明らかにステレオ用が良く、40Vの電圧を維持できる負荷電流は、1KWのトランスの場合、7.2Aくらいで、288Wですが、ステレオ用は約10Aで、400Wです。 リニアアンプの効率が50%なら、200W出力できる事を意味します。

これらの事から、すでに出来上がったリニア電源にトランスを内蔵させ、かつ、電力容量をアップした安定化電源に作り替える事にしました。 トランスの巻線がセンタータップタイプでしたので、ブリッジダイオードの半分は使わない事にしました。

このステレオアンプ用トランスはパワーアンプ用の主巻線とは別に、12V電源用のサブ巻線を持っていますので、5Vのファン用電源は、このサブ巻線からシリーズレギュレーターを通して作る事にします。

400wdcpowrsupply1

400wdcpowrsupply2

左上がトランスを収納し、レイアウトを変更した内部です。右上は、このシャーシに木製のカバーをかぶせ、強度的に補強を行ったものです。左右の側面に換気用の穴を開けてあります。 35V5Aくらいでは、ほんのりと温まるだけで、問題は有りません。 また、5V定格のファンも2.5Vでドライブしていますので、騒音はほとんど感じません。

Newavr_protect

左の表は、トランス交換後のフの字特性動作開始推定電流です。

電力的には、30V出力の時、450Wの供給能力があります。 

次は、200Wリニアアンプへトライしますが、電源電圧35Vのままで、200Wを出せるような回路構成にする必要がありそうです。 ただし、上の表は、基板内や配線経路中にロスが無いとした時の数値で、実際は無負荷電圧35Vであっても、10A負荷電流で3V以上の電圧降下があります。 

最終状態の回路図:DC_POWER_SUPPLY8.pdfをダウンロード

2020年11月

200Wリニアアンプ対応の為、電流計のレンジをmax10Aからmax15Aに変更しました。

この電源を使って200Wリニアアンプの検討を始めましたが、上の表の電流でプロテクタがかかり、最大出力は140W止まりでした。  200Wリニアアンプの記事はこちら

200Wリニアアンプを検討中にファイナルのFETのドレアイン、ソース間がショート状態になり、かつ、電源の2SB554がショート状態で壊れてしまいました。

壊れたのは東芝の純正ではなく、台湾製の2ndソースでした。 ベース抵抗を4.7Ωまで小さくした事により、フノ字のプロテクタが働く電流値が上昇し、耐えられなくなって、弱いトランジスタが壊れたようです。 ベース抵抗を、2倍の10Ωに代えてトライする事にしました。 ところが、出力電圧50V、リニアアンプの電源OFFの状態で、何回か出力SWをON/OFFを繰り返すと、また2SB554がショートモードで壊れてしまいました。 何が原因か判らず、再度修理し、慎重に見守ると、リニアアンプの電源SWより電源入力端子側にある50V18000uFの電解コンデンサへのラッシュ電流で壊れる事が判りました。 壊れるのは、決まって、秋月で手配したMOSPEC製の2SB554です。 Specを調べてみました。 東芝純正の2SB554の最大ピーク電流は30Aですが、MOSPECのそれは、18Aです。 最後にリニアアンプのFETが壊れたのは、このMOSPECの2SB554がショートモードで壊れ、57VくらいのDC電圧が急に加わり熱破壊した事の様です。

このMOSPECの2SB554は予備を含めて後2石残っていますが、もう使えません。 やむなく、東芝の2SA1943(2SB554と同等Spec)に変更する事にします。

トランジスターと放熱板を絶縁する為にシリコンラバーを使いますが、このシリコンラバーだけで絶縁したものと、シリコングリスを塗ったマイカ板で絶縁したものを併用した場合、決まって、シリコンラバーで絶縁したトランジスタが先に壊れるという経験は私だけでしょうかね。 色々な解説では、シリコンラバーの熱伝導率はマイカよりはるかに良いと言われていますが?

 2021年2月

この電源を弄り回してすでに1年くらい経ちますが、その間に壊して交換した部品代はユウに5000円を超えました。 結局400Wくらいの電源を用意しようと思ったら、360Wくらいの中華製ACDCスィッチング電源と300Wくらいの連続可変可能な自作電源をシリーズにして使うのが一番良いみたいです。 そんな訳で、当電源は最大40V10Aとし、40Vでショートテストをしてもフの字特性が動作するのを確認した上で、24V20Aのスィッチング電源とシリーズにして実験に使う事にしました。 もっと電圧が必要な時は、36V10Aのスィッチング電源を買い足す事にします。

1s1652r

その対応の為、この電源がOFF状態の時、出力端子へ負の電圧がかからないようにマイナス側からプラス方向へ電流がバイパスするようにダイオードを追加しました。追加したダイオードは1S1652Rという品番のナット止め仕様のダイオードです。 定格は150V 12A。 左がその写真です。 

この状態での最新配線図です。

48v_dc_power_supply9.pdfをダウンロード

 

 

2023年2月

デジタル方式AM送信機の開発中に12V 8Aの負荷を1分以上継続したら、制御用のトランジスタがショート状態で壊れてしまい、出力電圧が38Vまで上昇し、開発中の送信機の電源回路やLCD、マイコン、DDS ICなどを壊してしまい、約1週間のロスと余計な労力とお金が発生しました。 

原因を確かめると、制御用のトランジスタで、2SB554がコレクタ、エミッタショートで壊れていました。 この制御用TRは3石で構成されていましたが、残りの2石は2SA1943という品番でした。 2SB554は、Vbe 0.5VでIcが10Aくらいになりますが、2SA1943はVbe 0.8Vで IC 3.5Aくらいしかなく、実質的に、2SB554 一石で全電流を処理していたことになっていました。 これは完全な構成ミスでした。 部品箱をひっくり返して探すと、未使用の2SA1943が一石見つかりましたので、壊れた2SB554と交換し、かつ、それぞれのVbeのバラツキを吸収する為に、エミッタにシリーズに0.33Ωの抵抗を入れました。

ついでに、電源ON時のラッシュ電流対策の為にリレーを追加しました。

対策後の配線図 DC_POWER_SUPPL8.pdfをダウンロード

 

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2020年3月 7日 (土)

SDR用 7MHz 100Wリニアアンプ

カテゴリ<SDR>

ダイレクトコンバージョン式SDRトランシーバーが完成しましたが、このトランシーバーに内蔵されているRFパワーアンプは10W出力です。 昨今のコンディションでは、QSOのチャンスもかなり低くなりますので、ストレスが生じない、100W出力まで増幅するリニアアンプを作る事にします。 条件として、電源電圧は48V以下としますが、まだ有りません。 有るのは30V10Aと12V30Aの固定電圧電源だけです。

まずは、予備検討です。

100wpaunit

上の写真は以前50WのAM送信機を作った時のPCのCPU用放熱板にマウントしたリニアアンプです。 AM50W出力アンプのピーク出力は200W有り、今回はSSBでピーク出力100Wですから、余裕で行けるだろうと踏んでトライします。 まだ強制空冷ができていませんので、1mW入力で60mW出力が得られる事を確認しただけですが、ちゃんとAB級で動作していることは確認済みです。

使用したファイナルはサンケンのN-MOS FET、FKI10531のプッシュプルで、将来200Wに対応できるように、基板は2パラ-プッシュプルに設計していますが、現在はシングルプッシュプルとなっています。 このサンケンのFETは、秋月にて、1石40円で売っている電源用で、入力容量が1530PFくらいあるにも関わらず、30MHzくらいまでスイッチング可能、Rdsが35mオーム位と、定電圧、高出力を狙うには、都合の良いスペックをもっています。

7MHz_100W_PA.pdfをダウンロード

回路図では、電源やバイアス回路、ファンドライブ回路の方が複雑になっていますが、リニアアンプ部は、簡単そのものです。 このRF入力端子から見たSWRは1.5以下です。

ファンを回しながら、検討する必要から、今回もジャンク測定器を入手し、ちゃんとケースに収めます。 用意したケースは、KEYENCEのマイクロスコープコントローラーです。 さすがに医療機器だけあって、シャーシがステンレスでできており、そのため、ステンレス用ドリルまで購入して工作する必要がありました。

100wrfamp2

真ん中で白く光っているのは、ブリキで作成した7MHzのLPFです。 すべてのユニットを並べたら隙間だらけです。 この隙間は将来200WまでQROするためにとっておきます。

電源電圧を24Vにして、終段FETのゲートバイアスを調整し、アイドル電流を100mAに合わせようとすると、いきなりドレイン電流が流れ、FETがショートモードで壊れてしまいます。 FETを交換して、慎重にゲート電圧を上げていっても、途中で電流が3A以上になり、また壊れました。 バイアス電圧を2Vに固定し、ドレイン電流が流れない状態で、キャリアのレベルを上げていくと、C級動作になります。 この場合、一応出力が得られますが、歪だらけです。 この状態から、歪がでないように少しづつバイアス電圧を上げていくと、歪は改善されますが、歪がなくなった途端、暴走が始まり、FETが壊れます。

Sdr2_fki10531_idle

手配したFKI10531はすでに3石壊してしまい、残りは2石のみです。 ここで、改めてこのFETのデータシートを見直してみました。 その中で、左のグラフデータを見つけ、今回のトラブルの原因が判りました。

このグラフデータは、VGSを変化させた時のIdの変化を示しています。

Tc25度の時に、0.1Aにアイドル電流を設定すると、すぐにジャンクション温度は上昇し始め、あっという間に75度を過ぎてしまい、Idは数Aレベルまで増加する事をを示しています。 このFETはC級やE級で使うときは問題ありませんが、AB級ではまったく使用できないFETで有る事が判った次第です。

結局、上辺のデータだけで選んだFETではAB級増幅は不可と判りましたので、FETの選定をやり直す事になりました。

5wout手持ちのMOS FETで2SK3234が有りましたので、これを実装して、終段のトランスの2次側を3ターンとして、テストしてみました。 Rdsが0.65Ωというスペックですが、アイドル電流を初期値で1石当たり、200mAに調整し、RFパワーを加えると、SSBの信号が左の波形のごとく、飽和しかかりの状態で5Wの出力となりました。この時の電源電圧は12.1V、電流は3.3A。 数秒間入力最大にすると、出力が20W を超えますが、リニアリティはあまり良くないようです。 リニアリティを改善する為に、電源電圧を30Vに変えてテストする事にしました。

30Vの電源でアイドル電流を1石当たり100mAに調整し、SDRを送信状態にした途端、電源が壊れてしまいました。 FETはドレイン ソース間ショート状態で壊れています。

SDRをSENDにした時のショックノイズでFETが壊れたみたいです。

この原因を調べないと先へ進めなくなりましたので、しばらく休止します。 この原因を確かめるには、電源電圧を12Vから徐々に上げていけるDC電源が必要ですが、手元にあるのはMax18V、Max3AのKenwood の電源か、自作のMax20V、Max1Aの電源、6Vから14Vまで可変できる30AのFT991用電源と、30V、12V固定電圧の電源しかありません。 今回は12V電源でうまく動作していたアンプをいきなり30Vに繋いだら、あっけなく壊れてしまったものでしたので、12Vから30Vまで徐々に上げていける電源が必要です。

そんな訳から、リニアアンプは一時休止し、リニア電源を作る事にします。

 

リニア電源が出来ましたので、終段のFET選定からやり直しです。

 

すでに3月の最終weekになってしまいましたが、本日、IRFP250Nを6石入手しました。 アマゾンで販売されている、中華リニアアンプに使用されているFETです。 今回はRSから1石261円+送料450円で入手しました。6石注文しましたので、336円/石になりました。

New_bias1

前回の熱暴走の反省から、バイアス回路の熱安定化回路を再検討する為、先にバイアス回路の再設計を行います。

今まで、温度検出ダイオードは1個で、全体の温度補償を行っていましたが、今までにFETが壊れた状況を思い出すと、この検出ダイオードの取り付けられていないFETが壊れる確率が高い事に気づきました。 そこで、今回は、それぞれのFETにダイオードを取り付け、それぞれのバイアス電圧が、独立して温度補償と調整ができるように変更します。 左上が、その回路図です。 また、新しいFETのゲートON電圧が高い方へ、少しずれましたので、5Vの3端子レギュレーターはダイオード2本でかさ上げを行い、6V出力としました。 このかさ上げのダイオードも周囲の温度補償としても動作します。

修正した全体の回路図 PWR-AMP100W_2.pdfをダウンロード

FETの入力容量が2000PFを超えましたので、周波数特性の補正を行う為、入力トランスの出力側に設けた22Ωの抵抗は2本パラにして、11Ωにしてあります。 下の写真は、FETを乗せ換えて、バイアス回路の変更が完了したパワーアンプ基板です。

100wamp_2

ファンやDCバイアス電源用の3端子レギュレーターは、電源電圧がMax48Vになった事より、耐圧オーバーで使えませんので、12Vの電源をディスクリート回路で作り、バイアス用6Vの電源は、この12V電源から供給するように変更しました。

 

電源電圧を20Vにしておき、アイドリング電流を片チャンネル当たり200mA(トータル400mA)として、入力にアンテナアナライザを接続すると、SWRは1.3くらいです。 出力は18mW出ています。 この時の入力は0.8mWでした。 前回はこのテストまでは良かったのですが、次に実際のSDRトランシーバーを接続したら、FETが壊れてしまいましたので、この調整状態から一度、電源電圧を10V以下まで下げて、入力レベルを上げてみる事にします。

10V電源で1Wの出力がでました。そこから、次第に電源電圧を上げていき、15Vまで上げたとき、2.5Wとなり、さらに18Vにした時、電源がパチと音がして、電圧が50V以上に。 すぐに、またパチと音がして、出力なしに。 RFが電源に回り込み、電源のFETが壊れ、その為、アンプの2石のFETも壊れてしまいました。 リニア電源をやり直しです

1weging2

リニア電源用のトランジスターは全て使い果たし、手配待ちの状態ですので、その間に、従来の電源で実験です。電圧を18Vに固定して、出力が1W になるように入力レベルも固定して、電流と出力の変化を見てみました。

 温度補償用ダイオードが従来の1N4148の場合、アイドル電流は2石合計で、100mAです。このデータを見る限り、明らかに熱暴走し始めています。 そこで、温度対Vfの変化が2倍くらいある1SS133に変えてみました。 1SS133のアイドル電流はより暴走が起こりやすい、2石合計で200mAです。 結果は、3分経過した時点で電流も出力も増加が止まりました。 

電源電圧18Vのままで、2石のプッシュプル回路のドレイン間に1000PFを追加したり、出力トランスの後に、LC共振回路を挿入したりして、18W連続出力が得られる状態になりました。 この状態での入力は0.8Wで、以前アンテナアナライザーでテストした時と同じゲインが得られています。

電源の電流制限が3Aでかかる為、この電源での最大出力は25Wでした。 そこで、30V 10Aの容量のある電源に、接続し、アイドル電流を2石合計で200mAにしておき、出力を上げていくと、30W出力になったとき、熱暴走が起こり、ファイナルのFETがまたしてもショートしてしまいました。 バイアス回路はまだ不十分でした。

しばらく、放熱板ではなく、頭を冷やす事にします。

WEB検索をしていると、電源用のFETを使ってリニアアンプを制作しているJE3PRM OMのノウハウ紹介の記事が見つかりました。OMの製作アンプと、私のアンプの構成は異なりますが、かなりのノウハウを生かす事ができそうです。 そこで、電源電圧を20V(12V20Aの電源と8V30Aの電源を直列に使った)の電源を使い、下の回路図で、5W入力時、40Wの出力を得る事ができました。(Very TKS OM)

Pa_20v_40w

この回路は、バラックに近い状態で仮組したものでした。 20Vの電源で、5.2Aの電流が流れ、40Wでしたので、約38%の効率です。100Wの目標には、まだ遠いですが、足がかりが出来た感じです。 この回路を実験する途中で、またFETが破損し、今度は楽天にて1石135円で売りが出ていたIRFP250Nを10石購入し、1石だけ交換したのですが、バイアス電圧の差が2V近くあり、PP回路がうまく動作しません。 どうやらロットのバラツキみたいです。 電源用のFETでアナログ動作をさせる場合、この問題はついて回るようです。 誰かの製作例を見ながら、そっくり同じものを作っても、性能が出ないのは、このロットのバラツキによる影響が一番かもしれません。 今回、2石とも楽天から購入したFETに交換したら、アンバランスの問題は解決しました。 

今後、さらに電源電圧を上げられるようにバイアス回路を検討する事にします。

Pwramp36w_bias

左が変更したバイアス回路です。

変更内容は、温度検出用のダイオードを2個直列に接続し、温度変化による、電圧変化が2倍になるようにしました。

そして、このバイアス供給回路を実装した上で、電源電圧を26Vまで上げて、36Wの出力が得られたのが、下の回路です。

この回路では、入力4Wのとき、4.2A流れ、36Wが連続で得られていました。 ただし、この出力が、限界で、いくら入力を増やしても、出力は増えませんでした。

Pwramp36w_tx この回路で、アイドリング電流は、両方合わせて、80mAくらい。 入力側のSWRは1.3以下。

電源電圧は22Vで出力は35Wくらいで、以降、電圧を上げても入力を上げてもほぼ飽和状態でした。

出力が飽和する原因を確かめようと通電を続けていると、3分も経過しないうちに、5Aのヒューズが切れてしまいました。 そして、AMPの片方のFETが全端子ショート状態で破壊していました。 この原因は、またしてもFETの熱暴走です。アイドリング状態では、問題ないのですが、パワーを大きくすると、例え、ソースに0.1Ωの抵抗を挿入していても、熱暴走を起こしてしまいます。 バイアス回路の再検討が必要です。

現在の1SS133を直列に接続した、バイアス回路で、1SS133がそれぞれ0.1V、2個直列で0.2V変化した時の、FETゲート電圧の変化を計算してみました。 結果は、なんと0.08Vくらいしか変化しない事が判りました。 ここは、少なくとも、1SS133が0.1V変化したら、FETゲート電圧も0.1V変化してほしいので、バイアス回路を以下のOP-AMPを使った回路に変更する事にしました。

Pa100w_bias5

 

Pa100w_bias5up

この回路のOP-AMPのゲインは6dBあり、1SS133が0.1V変化すると、出力は0.2V変化します。 多少効き過ぎかもしれませんが、この回路を実装してみました。

左が実装したときの写真です。 パワーアンプと同じ基板の上に配置されますので、高周波の回り込み対策はこれでもかというレベルで実施しました。 18Vの電源で実際に動作させた場合、問題は有りませんでした。

最初、この新バイアス回路に変更し、ソースにあった0.1Ωの抵抗はショート状態で、電源電圧26Vでトライしました。 アイドル電流は各FET50mA、合計100mAに調整しました。 残念ながら、出力トランスの2次側を2ターンの時、12Wしか出ません。 3ターンにしたら、5W出しか出ず、熱暴走が起こり、FETが壊れました。 熱暴走する前に2次側を1ターンしてみましたが、5Wしか出ませんでした。

Pa100w_amp5

そこで、ソース抵抗の0.1Ωは元に戻し、AMP部分の回路を上の回路図に変更したうえで、出力が飽和する原因を探す事にしました。 オシロで各FETのゲートやドレインの電圧波形を確認すると、PP回路のゲートやドレインの波形がかなり異なります。 どうも、同じアイドル電流では、B級動作の最適状態にならず、出力波形を見ながら、アイドル電流を決め、かつ、ドレインとGND間に挿入するコンデンサの値をアンバランスにすると、まともなプッシュプル動作に近づける事が判りました。この最良状態で、電源電圧18Vにしておき、出力が飽和する直前まで、入力を上げると、0.3W入力で16Wの出力となりました。

ドレインの電圧波形は、ピークは24Vくらいですが、min.は4Vです。この4Vはソースの0.1Ωの両端の電圧と一致します。 すなわち、プッシュプルの片方の振幅は20Vしかなく、これを出力トランスで2倍しますので、出力のピークは40Vです。これを実効値に直し、50Ωの負荷で計算すると、16Wの出力になります。 要するに、この回路では、電源電圧で、出力が決まり、少なくとも、コンベンショナルトランスの巻き数は最良状態であることが判りました。

Transdata2004

そのコンベンショナルトランスのコアについて、特性を取ってみました。

左のグラフでロスが多いとコメントしているコアが今まで使用していました、NECトーキンのコアで、赤色のテープで巻いていました。

最適候補とコメントしているコアは、北川工業のGTFC-25-15-12を6個使ったもので、全体のインピーダンスが少し低めですが、このコアに変更する事にします。

このコアは黄色のテープで巻いてあります。

100wpa_gtfccore  

出力を上げるには、電源電圧を上げて、かつ、その電圧でも熱暴走が起こらない回路を作るしかありません。 

入力のSWRが3くらいあるので、トランスの1次巻線を2ターンとして、かつ、トランスの出力抵抗を22Ωにした状態で、SWRが2くらいになりましたので、電源電圧を少しづつ上げてみました。

Amp5_vccadj25v

左の表は、その時のデータです。電源電圧は最大で26Vまで上げられますが、電源から送信機入り口までの電線による電圧降下で、最大25.1Vしか上げる事が出来ません。 それでも、40Wの出力が得られました。そして、この40W出力中でも、電流は次第に減少し、1分で10mA近くのペースで少なくなります。 熱暴走が起こっていない証拠です。ただし、3分もすると、出力は38Wくらいまで落ちます。 

2020年ゴールデンウィークに突入しました、今年は新型コロナウィルスでどこえも行けません。

ここから、フの字タイプの保護回路付きの安定化電源を使えるようになりました。

 

Fet_data

少し気になる問題があります。 上の表を作成するとき、回路が最大出力を出す為には、片方のFETのドレイン-GND間に1390PFのコンデンサを接続し、もう一方のFETのドレイン-GND間にはコンデンサは有りませんでした。 そこで、この二つのFETのゲート電圧対ドレイン電流のデータを取ってみました。No.1のFETにはコンデンサは接続されず、No.2のFETのみ1390PFが接続されています。 見ての通り、ふたつのFETの特性は大幅に異なります。 また、ゲインと表示してある数値はドレイン電流が10mAから1Aまで変化する場合のゲート電圧の差を見たものですが、No.1と2では2倍以上の差があります。

これらのFETは一括して楽天から購入したものでしたが、スィッチング用FETとしては、全く管理されていない項目ですので、この種のFETをリニアアンプに使う場合、このデータを確認して、そろったもの同士を使わないと、期待する出力は出ないという事のようです。 買ったのは全部で10石でしたが、すでに3石壊してしまいました。 残りは7石ですが、1石は不良品で、ゲート電圧を7Vまで上げても、ドレイン電流は流れませんでした。

リニア電源が出来ましたので、アンプの検討を再開しますが、まず、No.1のFETを取り外し、No.2のFETに一番近い、No.4のFETに交換する事にします。

電源電圧18Vにて、最大出力が出るように、回路定数をいじった結果、入力1Wで18W出ました。 以後、すこしづつ電源電圧を上げ、32Vでアイドル電流各0.1Aとして、入力3Wを加えた結果、32Wしか出ません。流れている電流は3.91A。 1分くらい通電すると、電源の保護回路が働き、電圧がダウン。 調べてみると、No.4のFETがドレイン、ソース間ショート状態で壊れていました。 電流は、減少方向にドリフトしている最中で、死んでしまったものです。 原因が判らないまま、No.5のFETに交換しました。

フの字特性の電源は高周波の回り込みもなく大丈夫でした。

前回、25Vの電源で40W出ていました。 今回、電源電圧を33Vまで上げましたが、30W以上出ません。 やる度に、最大パワーが下がっています。 ソースに挿入されている0.1Ωの性かもと、この抵抗をショートしてみましたが、ゲインは少し上がりましたが、最大パワーは変わりません。 考えられる原因は後ひとつ、コアです。 コアを変更してみる事にします。

Avr40v7a_2

そこで、TS-930Sに使用されていたメガネコアのインピーダンス特性を、先に測定した各コアのデータに重ねてみました。 左のグラフに示しますが、今まで検討してきたコアとは、全く異なるデータを示します。

このTS-930S用のコアは昨年作った、6m用AM送信機のパワーアンプに使っていたものですが、6mリグには戻さずに、この7MHz用リニアアンプで使ってみる事にします。

 

 

Powe_v_ts930score

左のデータは、コンベンショナルトランスのコアをTS930S用に変更し、トランスとLPFの間に、整合用のLC回路を挿入し、ソースの0.1Ωも廃止して、最大出力が得られるようにした状態で、各電源電圧ごとに、アイドル電流が各100mAになるように再調整した時の出力と効率です。 少なくとも、コアによるロスは最小となっているはずであり、かつこのコアは7MHzで180Wくらいを出力する実力があります。 従い、電源電圧を上げても、出力が上がらない原因は、FETしか考えられません。

このFETは18V前後の電源で使ったとき、最大効率が出せるけど、それ以上の電圧では、どんどん効率が落ちるのではないかと推測します。 

このリニアアンプを検討を始めて、すでに4か月以上経過しましたが、この場に及んで、FETの選択からやり直す事にします。

JE3PRM OMが紹介している、FETは、スーパージャンクションと言われるMOS FETで、従来のFETより、高耐圧で、ON抵抗が低く、Cissもかなり小さい、最新のFETのようです。 国産のFETで、同様なFETを探すと、東芝がDTMOS構造のFETとして、かなり前から製品化し、一部は秋月でも取り扱っています。 そこで、TK8Q60Wという品番のFET(1石 60円)を10石入手し、これでリニアアンプを作ってみる事にしました。

Tk8q60wdata

IRFP250Nの事も有りましたので、購入した10石のVgs対Idのデータを取ってみる事にしました。

左が、その10石のデータです。 さすがに東芝製ですね。バラツキのレベルがIRとは全く違います。 これだと、どの組み合わせでも、PP増幅のペアを作る事ができます。 ただし、Pd=80Wにしては、かなり小さなパッケージで、このデータを取る為に、0.5AのIdを流すと、あっと言う間に、触れないくらい熱くなります。 放熱板にしっかりと密着させる方法を考えなければなりません。

100wpa6_2

Itk8q60wmount

最初は、シングルのプッシュプルとして、50W出力を狙い、うまくいったら、2パラプッシュプルで、100Wを狙います。 ただし、目標とした電源電圧が48V確保できない事が判りましたので、40V以下の電源で100W出力に目標を変更します。

左の写真は、IRFP250Nを取り去り、基板と放熱板に加工を施し、このFETを取り付けた状態です。 FETは4個取り付けましたが、配線は2個だけ行い、もし、壊れたら、予備のFETに配線し直し、FETの交換の煩わしさを軽減します。

ただ、FETの足が短く、配線には難儀しそうです。

100wpaunit6

なんとか、配線完了です。 

電源電圧を落として、恐る恐る動作テストを行う事にします。

18Vの電源電圧で、テストしました。 アイドリング電流は、各100mAです。 入力3Wで13.5Wしか出ません。 1分くらい通電した後、入力をゼロにしたら、電源電圧が0.5Vくらい上昇し、電流はアイドル電流に戻る事無く、熱暴走を開始してしまいました。 バイアスの温度補償機能の応答速度が遅くて、熱暴走を阻止する事が不可能になっているようです。 結局、熱暴走を止められず、安定化電源が保護動作したのは、アンプのFETがバリバリと言った後でした。 温度センサーの位置や構造を一から見直す必要がありそうです。

100wpa_1ss133

対策として、1SS133をシリコンラバーごと銅板で丸め込み、これを、FETのドレインとシリコンラバーの間に挟み、止めた状態で、再テストしてみました。

電源電圧が16.4V、2W入力で、12W出て、入力をゼロにすると、ドレイン電流は、2秒くらいで、アイドル電流の状態に戻ります。

次に、電源電圧を22Vにして、3Wの出力まで、入力を加えたところ、熱暴走が始まり、またしても、FETはショートモードで破壊しました。 FETがショートモードで破壊しても、安定化電源のプロテクタが働き、電源は無傷です。

スーパージャンクションタイプのFETは、構造的に、ジャンクション部分から、ドレインの外側金属面までの熱抵抗が小さく、小さなドレイン面積でも、無限大サイズの放熱板を付けたら、仕様書に出てくる80WのPdを確保できますが、有限サイズの放熱板と、いくら、マイカより、熱抵抗が小さいという、シリコンラバーを介した放熱では、無理があるようです。 ここは、OMが採用しているように銅板をドレインに半田付けして、ドレインの面積を増やさないとダメなのかも知れません。

 

近くのホームセンターに1mm厚の銅板を買いに行き、現在の放熱板に取り付けられる、放熱フィンを作る事にしました。 結果は、大成功です。 52Wの出力を安定して得る事ができ、電源電圧40Vで70Wの最大出力を確認できました。

実施内容は全て、JE3PRM OMの記事の通りですが、具体的な工程を紹介します。

Fetmount1

まず、1mm厚の銅板を左の様に20mm x 28mm角に切り取り、放熱板に取り付ける為の、丸穴を開けます。 大きめのシリコンラバーを用意しますが、銅板の下に敷くサイズを確保できないときは、複数枚用意します。 さらに、ビスとドレインを絶縁する、絶縁ワッシャを用意します。 この時、ワッシャの内側の高さが0.8mm以下の物でなければなりません。 銅板に開けるふたつの穴はこのワッシャが入る大きさが必要です。 私のワッシャは4.5φの穴でOKでした。

Fetmount0

銅板をバイスでつかみ、60W以上の半田こてで、半田を少し盛ります。 また、FETのドレインの金属面にも半田メッキを行っておき、銅板上にFETを置き、銅板の半田を暖めると、その内、FETが簡単に銅板の上を滑りだします。 この状態で、FETが適当な位置で動か無いようにピンセットで押さえた後、半田こてを離し、半田が固まるまで待ちます。 このくらいの熱処理くらいでは、FETは壊れませんので、失敗したら、何度でもやり直します。

 

Fet_fin0

上は、そのようにして加工した放熱フィン付きのFETです。 右側は一発で半田付けが成功しましたが、左側は何度も失敗し、銅板面が半田メッキだらけになってしまいました。 ここで、注意したいことは、決して銅板の裏側に半田がつかないことです。 もし、誤って半田がついてしまったら、その銅板は廃棄するのが賢明です。

放熱板に止めるときは、間にシリコンラバーを挟み込みますが、もし、分割されたラバーの場合、互いに重ならないようにします。 上の写真では、放熱フィンを固定した後、銅板の端に沿って、ラバーをカッターで切り取りました。

次に、このFETに温度補償用のダイオードを半田付けします。

1ss133mount

まず、1SS133の両方の足に長さ10mmくらいの耐熱スリーブをかぶせます。 耐熱スリーブが無いときは、耐熱リード線(半田こてで電線に半田メッキをしても、被服が縮まないリード線)の導体を抜き取り、残った被服をかぶせておきます。 0.3mm厚の銅板で図のように丸め込みますが、ダイオードと銅板の間にシリコンラバーを詰め込み、ラジペンで、丸く成型しながら、締め付けていきます。 ダイオードが自由に回転しなくなるまで締め付けます。 あまり強く締めるとダイオードが割れてしまいますので、要注意です。 最初シリコングリスを塗った状態で、銅板を丸め込みました。 しかし、ダイオードが破損する事が多く、緩衝材と熱伝導を兼ねて、シリコンラバーを挟み込むようにしたものです。 1SS133を入手出来ない場合、1SS178でも代用できます。  ダイオードのリード線に延長用の耐熱リード線をハンダ付けし、その部分に2φの熱収縮チューブをかぶせ、しっかり固定します。

この出来上がった銅板によるダイオードホルダーをFETのドレインの金属部分に半田付けします。

Tk8q60w_mount

このようにして、加工したAMPの全体が上の写真です。 実装にあたっては、ドレインが放熱板にショートしていないか十分に確認します。 この実装状態でも、銅板のはしっことプリント基板のエッジがタッチしており、この修正の為に、基板をやすりで削る羽目になりました。

写真では、入力トランスの出力端に22Ωの負荷抵抗が見えますが、これは100Ωに変えてあります。 また、写真には有りませんが、ドレイン間に390PFのコンデンサを追加してあります。

さらに、コンベンショナルトランスの出力からLPFの間にあった470PFのコンデンサは廃止し、コイルは2.25uHに変更しました。 オリジナルは、LC直列回路でしたが、それじれの容量とインダクタンスをLCメーターで測定し、7100KHzのインピーダンスを計算すると、合計でプラスのリアクタンスとなりましたので、コイル単独で、同じリアクタンスが得られるようにしたものです。

PWR-AMP100W_6.pdfをダウンロード 

Tk8q60w_output

左の表が、恐る恐る入力レベルと電源電圧を上げたときの、出力データです。

電源電圧40V、入力5Wのとき、めでたく70Wの出力が得られました。

そして、この70W出力状態から入力をゼロにすると、いっきにアイドル電流の状態に、Idが減少します。

今までの回路では、このテストをすると、アイドル電流状態に戻るまで10秒i以上かかったり、最悪熱暴走していました。

また、効率も、まずまずの数値を示しています。 ソースに接続した抵抗が0.33Ωなので、もう少し悪くなるのではと、危惧しましたが、それほど悪さはしていないようです。 ただし、70Wを連続1分以上出力すると、Idが少しづつ上昇します。 その程度は5秒で10mA程度ですが、30mA上昇したところで、入力をゼロにしたところ、Idは初期のアイドル状態に数秒で戻りました。 多分、70Wくらいが、最大電力になりそうです。 さらに、このFETのSOAを確認すると、40Vの電圧のとき、2Aが最大となっていますので、2石に均等に電流が流れたとしても、このくらいが限界でしょう。

FETのPd maxは2石で160Wですが、それは無限大放熱板の時だけです。 現在は95mmの2個のファンで強制空冷していますが、実際問題として、許容できる最大Pdは1/2の80Wくらいと、推測します。効率が50%なら、80Wくらいの出力が限界となりそうです。 このAMPはSSB用ですので、1分間くらい100Wの出力が出来、70Wくらいを連続30分以上出力出来たらよいと考えますので、 今後この限界を詰めようと思います。

アンプとは、別問題ですが、電源電圧を40Vにした事により、12Vのシリーズレギュレーターの放熱板の温度がずっと触れないくらい熱くなります。これは、ちゃんと対策しないと、バイアスが狂って、アンプを破壊する原因になりそうです。

そこで、基板上の小さな放熱板からトランジスタを外し、ステンレスのシャーシに直付けしました。 これで、様子を見る事にします。

この、プロジェクトの目標は100Wのリニアアンプですが、今までのスーパージャンクションFETを使った回路では、FETのPdが160Wしかなく、常温で、80Wまで許容できるとし、かつ、アンプの効率が50%とすると、最大で、80Wしか出せません。 そこで、このFETを2パラ、プッシュプルとし、最大Pdを320Wにして、100Wの出力を得る事にします。

2parafetmount

2parafetcomp

2parapp_fetunit

2parapp_fetmount_2

上の段の左は、銅板に2石並べて半田付けしているところです。 2石の並びがずれないように、FETのTOPに両面テープを張り付けています。 両面テープの素材は紙ですので、半田こての熱で溶ける事は有りません。 右側は、2石のFETのゲートに1Ωの抵抗を挿入するために張り付けたプリント基板の短冊です。 この短冊の中に1Ωのチップ抵抗が付けられております。 この基板は両面基板となっており、裏側の銅箔で、2石のドレインを連結しています。

下段の左は、新たに作った、1SS133の温度センサーをドレインのフィンに半田付けしたところです。 銅板は、20mm x 28mmの先に使用した1石用を使用しましたが、FETを2石並べて半田付けするには、寸法的に、少し窮屈ですので、次回作るときは、20mm x 30mmくらいの銅板が良いのですが、放熱板側のタップ穴ピッチと合いませんので、写真のごとく、まとめました。 右上は、この放熱フィンを放熱板に取り付け、ドレイン以外の配線を完了した状態です。

2parapppa_schema

2parapp_paunit

出来上がった配線図とアンプユニットです。

2パラPPにしたので、コンベンショナルトランスの2次側巻線は3ターンにしてあります。 3ターンにしたので、今まで使っていました、2芯シールド線(黄色のワイヤー)がトランスの銅パイプの中を通らなくなりました。 そこで、少しロスが増えますが、50SQのKIV線に変更しました。多分、40V以下でも100Wが得られるだろうと、期待しています。

100woutdata

左が、電源電圧を上げながら測定した、出力や電流のデータです。

アイドリング電流は、各電源電圧の時に、プッシュプルの各片方ごとに100mAに合わせてあります。  パラ付けですので、個々のFETに50mAづつ流れる補償はありませんが、先に確認した、バラツキデータから、一方が100mAで、片方が0mAという事はなかろう、とみています。 C14は当初390PFのままで、測定しました。電源電圧34Vで、10W出力にして置き、最適値を探した結果1390PFと出ましたので、このコンデンサを1390PFに変更し、34.2Vの電源電圧の時、6Wの入力で、100Wでました。 なによりも、うれしいのは、390PFのとき、効率が39%だったのに、対して、1390pFの場合、効率が52%まで改善した事です。

データには有りませんが、電源電圧35Vにて、7W入力すると、120Wくらいでます。 それより出力を大きくすると、安定化電源のフの字プロテクタが動作し、電源がOFFになります。

100wpa_fan

いくら、温度補償回路を追求しても、放熱板の強制空冷はマストです。 アンプユニットを挟んで、2個のファンを動かしています。 右側の外側についているファンは、この医療機器にもともとついていたもので、95mm角厚さ25mmのものですが、長年使っていたのか、少々騒音が大きいです。 左側のファンは右側と同じサイズですが、最近、秋月より購入した安価なものですが、こちらは、かなり静かです。

このふたつのファンで、風を左から右へ抜けるように、CPU用の放熱板に吹きつけています。 70W出力中にファンを1個止めると、Idがすこしずつ上昇を始めますので、効果はバツグンです。 ただし、電流の増加は数十秒でとまり、こんどはゆっくり減少に向かいます。 この減少に向かうのは、温度補償が効き過ぎている為で、弊害として1分以上エージングすると、ゆっくりと出力も減少します。  10分くらいのエージングで、50Wの出力が42Wくらいまで落ちます。 この弊害は、壊れるよりはましですので、このままです。

やっと、リニアアンプが完成しましたので、TSSへ保証認定を依頼している間に、エージングテストをやることにします。

 

 

一応、まともに動き出しましたので、スプリアスや2信号特性を確認しました。

70woutsprias

100w_amp_lpf1

 

左上は70W出力時のスプリアス特性です。 100W出力にしたら、第2高調波を含め、さらに良くなります。右上は、7MHzのLPFの上部が開いていましたので、蓋をしました。 蓋の有り無しで、データは変わりませんでしたが、気休めです。

なお、これはFETのバラツキと考えられますが、各100mAのアイドル電流にした状態では、第2高調波が、-35dBくらいまでしか落ちていませんでした。 そのため、スペアナを見ながら、バイアス電圧をいじってみました。 結果は、一方はバイアス電圧を上げると、高調波が少なくなるのに、もう一方はバイアス電圧を下げた方が高調波は下がります。結局、両方とも100mAに調整した後、一方のバイアス電圧を下げる方向で調整し、-50dBはクリアーしています。

20wout_2tone

50wout_2tone

 

Inout

左上が40Wpep出力時の2信号特性です。 右上は、100W平均値出力時の特性で、100Wpepとは異なります。 ただ、この波形は70Wを30分くらい連続出力した後の波形です。

無信号送信状態にしておき、入力を5秒間加えて出力を測定し、直ちに入力OFF。次に入力ONまで10秒以上休むというやり方で、測定したデータが左のグラフです。 このデータを見る限り、90Wくらいまでは、リニアリティが確保されているのが判ります。 私のスペアナの分解能が悪く、IMD特性は見る事が出来ません。 測定専用のバンドスコープ付きSDR受信機を用意できたら、測ってみようとは思いますが、あまり良い特性ではないと、思われます。 ただし、変調音を聞いた感じでは、違和感は有りませんでしたので、当面はこのままです。

また、前回の調整から1か月以上経過したLO漏れとUSB漏れをチェックしましたが、いずれも -50dB以下を確保し、ドリフトはありませんでした。

リニアアンプのケース入れが完了しましたので、この状態で、エージングテストです。

Asing70w0

久しぶりに、コメットのSWRメーターとオイル冷却ダミーロードを物置から引っ張りだし、TS-930Sを信号源として、エージングテストをしました。

まず、最初に100W出力で、2分間、連続出力した後、70Wに出力を落とし、そこから、30分間、連続出力を行いました。 時間経過とともに、出力が減少しますが、これは、TS-930Sの出力が下がるのと、このリニアアンプのゲインが下がるのが原因で、下がってきたら、TS-930Sの出力を上げ、常に70W出力が出るようにしました。 最初、入力2.5Wで70W出ていましたが、2分くらい経過すると、出力が下がり始めるので、出力70Wをキープするように、TS-930Sの出力を調整しました。  30分のエージングが終了し、その時のTS-930Sの出力は3Wになっていました。 その状態で、入力を10Wまで上げてみましたが、アンプ最大出力は100Wでした。 

Ts930out

Asing70w1

左上は、70W出力時のTS-930S出力。 右上は、リニアアンプの出力波形です。 出力波形は、スペアナのデータでも判るように、完全な正弦波です。

エージング終了後、出力を可変すると、30W前後の時だけ、約5MHzと10MHzのスプリアスが発生します。 原因は、FETの電流がこの付近の値の時だけ発振するようです。 多分、FETのゲインがこの出力付近で最大となるのでしょう。 対策として、ドレインからゲートへ1000p+1Kのシリーズ回路で負帰還をかけることで解決しました。

100w_amp_cab

もともと、このケースのフロントパネルは紺色でしたので、このアンプも紺色で仕上げました。 メーターの左側に縦線が見えるのは、A4サイズのプリンターでは、パネル全体を印刷できず、この線の部分を境に分けて印刷した為です。

TSSの保証と、総通の許可が降りたら、ON AIRにトライします。

SDR_100W_TX_BLOCK.pdfをダウンロード  

10Wのトランシーバーでもコメントしましたが、サウンドカードの中のブロック図は理論的に考えられるブロックで、HDSDRの中が、このようになっているかは確認していません。

 

このテストの途中、送信から受信にした時のタイミングが、SDRより、リニアアンプの方が、かなり遅れます。 遅れは1秒以上です。 原因を調べたところ、SDR側のフォトカプラーのLEDにつながる電源ラインが、負荷となるリレーとデカップリングコンデンサの為、かなりゆっくり降下し、その間、LEDの消灯開始電圧まで、フォトカプラーの2次側TRがONしたままになっていました。 対策として、フォトカプラー内のLED両端に510Ωを並列に入れ、電源ラインが6V以下になると、LEDが消灯するようにしました。

LED消灯対策済み 7MHz_SDR2.pdfをダウンロード

  

70W 30分のエージングテストは終了しましたが、ON AIRの許可が出るまで2週間はかかりますので、ダミー抵抗に出力しながら、模擬運用を行っていますが、事故が2件発生しました。

まず、40Vでテスト送信を開始したら、どこかでスパークが起こり、明るくなったのですが、どこでスパークしたのか判りませんでした。 それでもアンプは正常に動作しており、正常にテストが終了しました。 後日、コンベンショナルトランスのメンテの為、これを取り外すと、電源が供給されるチョークコイルを通った後の、コモン部分に設けた4個の104Kの内、2個のチップコンデンサが黒焦げになっていました。 チップコンデンサが黒焦げになりましたが、オープン状態となった為、アンプは正常にに動いていたものです。 このコンデンサはDC50V耐圧のもので、ここに通常電源電圧以上の電圧は加わりません。 壊れたチップコンデンサはメーカー不明の秋月から買ったもので、壊れなかったコンデンサはRSで買ったTDK製でした。TDK製は全部使い果たし、秋月のものしか手持ちがありませんので、秋月のものに、とりあえず交換しました。 1週間後、このスパークが再発しました。 壊れたのは、また秋月から買ったチップコンでした。 今度は、村田SSのラジアルタイプ0.1uF2個に変更し、様子を見る事にします。 

35V 20Wくらいで、エージング中にアンプ入力をON/OFFしていたところ、突然、出力なしになりました。 調べると、FETと電源は正常、 バイアス電圧が2Vくらいまで下がり、FETがカットオフ状態になっていました。 この原因も入力トランスからの信号をFETのゲートに接続するとき、絶縁の為に挿入した50V 104Kのチップコンデンサが、絶縁不良を起こし3KΩ位の抵抗値を示していました。 ここでもDC50Vを超えるような電圧がかかるとは思えないのですが、壊れてしまいました。 修理は、同じ50V 104Kに交換です。

 

Biascarve

FETのゲートバイアスの温度補償が、効き過ぎの状態でしたので、左のグラフのように、温度変化に応じて、傾斜が変わるような回路を作り、その効果を確認してみました。

このカーブは、R37、R38の値をパラメーターとして、作成したものです。 グラフはVR4によるバイアスを3.5Vくらいに固定して作成しましたが、VR4を動かすと、飽和レベルが上下します。

VR4による固定バイアスを実際に動かしながら、実験した結果、従来の回路では、例えば、50W出力から、いきなり入力をOFFにした場合、即、元のアイドリング電流以下まで戻り、ひどい時は、一瞬0mAになります。 これは、高出力時、回路がB級ではなくC級で動作していたことを意味し、リニアリティの悪化につながります。

正常なバイアス状態は、出力レベルにかかわらず、常にB級もしくはAB級で動作する事ですから、入力OFFしたら即座にアイドリング電流値に戻らねばなりません。

従い、実際の調整方法は以下のようになります。

まず、R37,38を2.2KΩに固定しておき、さらにVR1,VR2最小の状態でVR4を最小電圧になるようにしておき、VR1とVR2を調整し、アイドリング電流が100mAになるように調整して置きます。 そのあと、出力を70Wくらいまで上げ、FETが十分熱くなったら、急に入力をOFFします。 すると、ドレインに流れる電流は即、アイドリング電流まで落ちるか、あるいはそれ以下になります。

同様にして、VR1,2を最小にした後、VR4による初期電圧を少しあげ(0.2V刻みくらい)、VR1,2でアイドリング電流を100mAに調整します。そして、また70W出力にした後、入力をOFFした時の電流を観察します。 

これを何回か繰り返していくと、あるVR4の電圧を超えると、入力を調整し、OFFしても,即アイドリング電流に戻らず、数秒から10秒以上遅れるようになります。 この遅れが発生するようになった場合、70W出力の時、アイドリング電流が増えていることを意味します。

そこで、VR4による電圧を少し下げて、入力OFF時、即、電流がアイドリング電流まで落ちるポイント選び、その状態に固定します。

これで、温度補償を考慮したバイアス電圧の設定は完了しましたが、場合によっては、出力レベルにり第2高調波が、規定の50dB以下に収まらない事が発生します。

もし、そのような現象が発生した場合、以下の調整を行います。

VR4は先に決めたポジションにしたまま、再度アイドリング電流をVR1,2を調整して、今度は120mAくらいに設定し、入力を次第に上げていくと、出力レベルにより第2高調波レベルが変動する現象がみられます。 この現象が現れたら、第2高調波レベルが一番高くなる出力にしておき、そのレベルが小さくなるようにVR1かVR2どちらか一方を調整します。 どちらを調整すのかは、VR1もしくはVR2をバイアス電圧が低くなる方向に回したとき、高調波レベルが下がるVRのみを調整します。 

このようにして調整した結果、100W出力で第2高調波を60dB以上低くする事ができます。 ただし、ある程度が限度で、VRを調整しても低くならないときは、LPFのATT量が不足とか、LPFの入力が出力と結合しているとか、ほかの要因が考えられます。

100wpa_bias7

この調整方法はスペアナが無くても可能です。 第2高調波である14MHzを受信して、7MHzの基本波より50dB以上低ければ問題なしです。

この調整状態で確認した2信号特性のリニアリティが以下の波形です。 80Wくらいまでなら、我慢できる波形をしています。30分エージング後の波形で、左から順に60Wpep、80Wpep、100Wpep出力時の2トーンの波形です。

30w_2tone

40w_2tone

50w_2tone_2

また、当初より有ったエージング中にゲインが低下する件も若干の改善がみられました。 入力2.2Wで70W出力があった状態で、30分エージング終了後、同じ70Wを出す為の入力は2.4Wくらいでした。 なお、30分エージング後の最大出力は入力を10Wにしても、100Wと変わりませんでした。

 

下の写真は、完成したリニアアンプの内部です。

 

100wpacomp

1週間で、TSSの認定がおりましたので、即日、総通へ、SDRトランシーバーとこのリニアアンプの追加申請を行いました。 そして、さらに1週間後、総通から審査終了のメールが届きました。 指定事項の変更はないので、即ON AIRできますが、その前にHFのアンテナの整備が必要なようです。

HFのアンテナを4か月くらい使っていなかったのですが、ベランダのMTUを調整して、いざ、送信機に繋ぐと、SWRが3以上になります。 色々試した所、同軸の長さでSWRが変わります。 また、新しい問題が出てきました。 1時間余り奮闘した結果、MTUにつながるMコネクタのゆるみが原因でした。 それを対策して、CQを出しました。 1エリアのOMさんとつながりましたが、了解度がさっぱりです。 RSの交換のみで終わってしまいました。 そのときのバンドスコープが以下です。

40m1stqso

コンディションが良い時は、左にある橙色の帯が画面いっぱいに広がるのですが、さすがに、カーソルが示す周波数帯の信号は、良く見えません。 相手の方には59で届いているみたいですけど、残念ながら、こちらの受信状況はR2くらいでした。 

ここで、送信と受信のアンバランスが問題として浮上してきました。 今後の課題です。

dsPICでSSBトランシーバー(SSBジェネレーター)へ続く。

 

実際に運用を開始すると、バイアス回路やファンモーター駆動用の12V電源のトランジスタがあっちっちになります。 この対策の為、電源回路に14VのDC出力を追加し、12V電源は電源から直接供給を受ける様に変更を行いました。 ところが、リップルが多くて、12V電圧では、ハム音が変調されますので、9Vの3端子レギュレーターをダイオードで0.6Vほどかさ上げし、9.6Vの安定化電源を作り、これでモーターとバイアス回路をまかなう事にしました。

最終状態の配線図 PWR-AMP100W_8.pdfをダウンロード

 

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