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2020年4月29日 (水)

2mスカイドアアンテナとMTU

2mのロールコールで、1局だけ、了解度がR1か2の局が最近発生し、当然、当局の電波もR1か2くらいでしか届かなくなりました。 原因は、この局との間に高層マンションが新築され、ただでさえも見通し距離外なのに、今までかろうじて、乱反射を繰り返し、届いて電波が届かなくなってしまったものです。

そこで、アンテナの位置を以前あった場所へ移す事にしました。 以前の場所は同じ局がヌルポイントで交信しにくかった場所ですが、そのヌルポイント発生の原因だった、HF用のスカイドアは撤去されていますので、大丈夫だろうと思われます。 今回8m動かすついでに、もう少しゲインのあるアンテナにして、電波通路が改善するか、実験を行う事にしました。

アンテナのゲインを最大限追及し、構造が簡単なアンテナを探したところ、スカイドアアンテナに行きつきました。スカイドアアンテナは水平偏波が主流です。 2mの伝搬は垂直が主流で、水平偏波のアンテナは好まれません。 しかし、当地、東広島市西条で、直接波で交信できる局は限られており、ほとんどの局との交信が、なんらかの反射体(ビルや山)による跳ね返った電波で交信できている現状です。 一度なんらかの原因で反射した電波は、垂直偏波か水平偏波か不確定です。 それなら、水平偏波ですが、ゲインが一番取りやすいスカイドアアンテナにすることにしたものです。

Mmana_2m_skaydoor 

上が、MMANAでシュミレーションしたアンテナの特性です。 水平偏波ですが、ゲインはMax.11.08dBiあります。 ダイポールのゲイン6.4dBiに比べて、+4.68dBもあります。

2m_skydoor

2m_skydoorphoto

MMANAで得られたデータ通りのアンテナ構造は左上のイラストのようになり、これを実際に組み立てた状態が、右上の写真です。 スカイドアアンテナの最上部のエレメントは、直径6mmのアルミパイプを使いました。垂直に降りる線は直径2mmのアルミ線です。 給電部は、間隔3cmの自作並行フィーダーで、指定の長さの先に、今回新たに作ったMTU(マニュアルチューニングユニット)をつなぎます。

最近アンテナチューナーを自作する場合、一番困るのが、バリコンの入手です。 新品は数千円以上しますし、国産では、ついに入手不可になってしまいました。 どうしてもというときはヤフオク当たりで探す事になりますが、成功するか失敗するか判らないMTUの実験に購入するには、高価すぎます。 そこで目を付けたのが、秋月でも販売している村田SSのセラミックトリーマーです。耐圧は100V位しかなく、大電力は扱えませんが、MTUのトリーマーにかかる電圧を低く抑え、50W出力でも、実力で使えるMTUに挑戦する事にしました。

ARRLのアンテナハンドブックの中に、TLWというアンテナチューナーのシュミレーターソフトがあります。 このソフトを使えば、バリコンにかかる電圧を瞬時に教えてくれますので、これでシュミレーションしてみました。 すると、アンテナのインピーダンスが50Ωの純抵抗ではないけど、リアクタンス成分が20Ω以下の場合、バリコンに加わる電圧はかなり小さくなる事がわかります。

ARRLのTLWというソフトは、Amazonで扱っているARRL Antenna Handbookを購入すると、付録のCDの中に収録されているそうです。

今回、設定したスカイドアの寸法は、この条件を加味して決め、得られたアンテナのインピーダンスは、20+j0.5くらいの形状とし、このデータでバリコンにかかる電圧を計算してみました。

2m_skydoormtu

送信機の出力を50WとしたときのコンデンサC1に加わるピーク電圧は141Vと出ました。 もうひとつのバリコンは88Vです。

村田SSのセラミックトリーマーの定格電圧は100Vですが、200Vくらいまでなら、実力で、耐えてくれます。 アンテナのインピーダンスは50+j0に合わせる事が、基本ではありますが、それでは、最大ゲインを得ることはできませんので、最大ゲインを得られる、リアクタンスゼロのアンテナ構造を採用し、50Ωでないインピーダンスを50Ωに整合させるロスの少ないアンテナチューナー(MTU)を低電圧用の安いトリーマーで作る事が可能になります。 例え、アンテナチューナーのロスの為、50+j0のアンテナのゲインより低くなったとしても、気分的にはhappyです。

2m_mtu

2m_skydoor_swr

左上が、実際に制作した、村田SSの60PFセラミックトリーマーを使ったアンテナチューナーで、3cm幅の並行フィーダーの終端に取り付けてあります。 そして、そのMTUを調整した結果が、右上のSWRカーブです。 帯域は、広くはありませんが、144から146MHzまで使用可能です。 実際に50W FMで送信してみましたが、SWRの変化は有りませんでした。

2m_lpf_mtu

しかしながら、せっかくゲインを上げたのに、MTUで19.6Wもロスるようでは、面白くありません。 そこで、MTUの型式をハイパスT型より、ローパスパイ型に変更してみる事にしました。

左のTLW計算結果はローパスパイ型でシュミレーションした、MTUのデータです。 50Wの入力に対して、MTUの出力は49.5Wあります。 ロスしたのは、たった0.5Wです。 しかも、問題になるトリマーに加わる電圧は2個とも100V以下です。

2m_mtu_pi

2m_mtu_pswri

左が、パイ型MTUに作り替えて、かつペットボトルを逆さまにして、下からMTUを押し込んだ防水タイプのアンテナチューナーです。 そして、右上が、トリマーとコイルを調整したSWR特性です。 トリマーやコイルの調整はペットボトルの側面に縦に入れた切込みから調整ドライバーをねじ込み行いました。 切込みはふさいでいませんが、たぶん雨水は入らないと思います。 入っても、ペットボトルの内側の側面を伝って、下におちますので、無害でしょう。

このMTUの下から20mの8D2Vで、リグに繋いでいます。リグ側でみたSWRは144から146MHzまで。SWR1.3以下で145MHz付近では1.0を示します。

このアンテナの成果は。次のロールコールで確認する事にします。

ロールコール当日、いざ送信しようとすると、SWRが5以上で、リグに送信プロテクトがかかります。 当然相手への信号も弱く、交信どころではありませんでした。 外は、どうしゃぶりとは言えませんが、1日中雨です。

次の日、晴れ間がでましたので、アンテナを引き倒し、アンテナアナライザーをつないだ状態で、平行フィーダーに霧吹きで水滴を吹きかけてみました。 吹きかける前は、SWR1.1でしたが、濡らす位置により、増加のレベルは異なりますが、SWR3以上になります。 2mで平行フィーダーを使ったのは、初めてでしたが、使いものにならない事が判りました。 対策として、平行フィーダーなしのアンテナに変更する事にします。

2m_skydoor_nomtu

2m_skydoor_size

2mskdr_swr2

左が、寸法図です。この縦横比でほぼ50Ωになりますので、後は、リアクタンス部分を同軸の接続位置を調整して、145MHzが最小SWRになるようにします。 この寸法で142MHzくらいから148MHzくらいまで最小周波数を移動できます。

右上のSWRカーブはシャック内で測定したSWRです。 アンテナの調整をしてから、高く上げると、共振周波数が高い方へずれますので、少し、低めに調整したのですが、高く上げた結果、あまり周波数が上がらず、144MHz当たりで、最小SWRとなってしまいました。 ただ、見ての通り、かなり広帯域ですから、そのままです。 これで雨が降っても、SWRが大幅に大きくならないことを期待したいと思います。

2m_skydoor_mating

左は、同軸取り付け部分の拡大です。 スタブのワイヤーもアルミ線ですので、同軸を半田付けできません。

そこで、アルミ線を下方向に折り曲げた直後の部分に、アルミの圧着スリーブを入れ、このスリーブでアルミ線と銅線を一緒にカシメます。 その銅線をアルミ線に軽く巻き付けながら、下へ降ろしていき、その銅線に同軸ケーブルを半田付けします。銅線の終端は、アルミ線と一緒にビニールテープで縛っておきます。

半田付けした同軸ケーブルは写真のように、一度上へ持ち上げ、同軸の切口から雨水が入らないように処理して、ポールに縛っておきます。 使用したポールは5.6m長のクラスファイバー釣り竿ですが、上部の2段は有りません。 よって3.8mくらいの全長となっています。

同軸ケーブルは、黒色ですが、RG58/Uという53Ωのきれっぱしがありましたので、これを流用しました。

このアンテナを新設した理由が、すでに使っているJポールに生じた、ローカル局間に発生したヌルポイント現象でしたが、どういう訳か、Jポールの防水対策をしたら、それが解消されてしまい、このアンテナの使い道が無くなりました。 撤去するかどうかは、もうしばらく様子を見てから決めます。

2020年9月

自作の7MHzトランシーバーを使う為に、フルサイズツェップアンテナを張る事にしました。 そのアンテナを展開する時、このスカイドアが邪魔になりますので、撤去しました。 結局1局も交信する事なく撤去されることになってしまいました。

  

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