DC48V リニア安定化電源の制作
<カテゴリ 電源>
7MHz用、100Wリニアアンプの制作途中で、壊したFETは8個。 FET破壊の原因を突き止め、安定に動作するリニアアンプを完成させるには、電圧を自由に変えられるDC電源が、どうしても必要です。 そこで、このDC電源を試行錯誤しながら作る事にしました。
今回の目標仕様は、DC48V5Aの出力が確保できる電源で、出力100Wのリニアアンプに使えるものとします。 出力電圧は48V固定ではなく、5Vから48Vまで最大電流5Aを目標とします。
この電源を作る為に、半年くらい前に、AC400VをAC200Vにダウンする1KWクラスの絶縁型トランスをローカルのOMより、いただいていました。 このトランスを, 100VAC電源に接続すると、AC48Vくらいが出力されます。 これを、ブリッジダイオードで整流し、10mAくらいの負荷電流を流すと、67Vの直流電圧が得られます。 これを安定化電源回路で5Vから48Vまで可変できるようにします。 トランス容量は1KWですが、その時の2次側定格電流は、5Aです。 従い、100VのAC電源に接続した場合、2次側の電流はMax 5Aですから、250W相当のトランスとなります。
回路が簡単で、そこそこの特性が得られる安定化電源として、MOS-FETによる回路が候補にあがります。 MOS-FETによる安定化電源はAM送信機のサブ電源として試作した事がありましたが、この時は、AM送信機の内部に実装した為、7MHzのRF信号がレギュレーター回路に回り込み、送信した途端、煙を噴いて終わった経過があります。 今回は、送信機とは別の筐体であること。 RFフィルターを、これでもかと言うくらい挿入し、なんとか実用化しようと言うものです。
上の回路が標準的なFETを利用した安定化電源になります。 最初D7とC12は有りませんでした。 その状態で、可変抵抗を回すと、4.8Vから66Vまで出力電圧を可変できます。 次にC12を追加しました。 C12は負荷回路に対して電源側の低周波インピーダンスを小さくすることが目的で、SSBのように音声信号の強弱により負荷電流が変化する場合、電源として必要条件になります。 そして、このC12を実装した状態で電源ONすると、一応安定化された電圧が出力されます。 次に、この電圧を可変すべく、出力電圧を小さくした途端、パチと音がして、FETから煙がでます。 そして、出力は67Vに。
FETがDSショートで壊れ、ついでにD4もショートモードで壊れてしまいました。 原因は、急激に出力電圧を下げようと可変抵抗を回した結果、Q1のコレクタ電圧は下がったものの、Q2のソース電圧は、C12の残留電荷により、電圧はほとんど落ちず、VGSmax -20Vを超えてしまい、Q2の破壊に至ります。 また、出力電圧と入力電圧差が20Vを超えた状態から、出力電圧を急に上げると、FETのVGS最大電圧を一瞬超えますので、FETが破壊します。 一方D4は電圧を最小にする為に、VRを回すと、出力電圧がシリーズ抵抗なしでQ1のベースに加わり、この時の過大電流により壊れてしまいます。 Q1が小信号用なら、Q1も同時に壊れる事になります。
インターネットで保護対策を検索すると、FETのVGS対策として、D7を追加する事が判りました。 D4の対策は、出力電圧を最小にした場合でも、Q1のベースにシリーズに電流制限抵抗を入れる事と、C12が早く放電するように、放電抵抗R7を可能な限り小さくする事のようです。
以上の対策を実施した回路が下になります。書き換えた為、REF No.が異なります。
FETは秋月で2石で300円というPd 100W品を、D7は3.3V 0.5W品を使います。 D7の許容電流は150mAくらいですので、問題ないと思います。 D5,D6に1WクラスのZDを使おうとしましたが、FETのゲート、ソース間に保護ダイオードを内蔵している事が判りましたので、このダイオードは不要になります。 また、C12の放電抵抗は、500Ω 25W品にします。48V時、常時96mA流れますが、放電は早くなるはずです。
レギュレーター出力部に、10Aコモンモードタイプのラインフィルターを、また、レギュレーターの入力部にも、6Aクラスのコモンモードフィルターを入れます。
これらの部品を秋月やモノタロウへ発注しましたので、届き次第組み立てる事にします。
部品が届きましたので、左の写真のごとく、旧50MHz AM送信機のシャーシへ組み込みました。 検討の途中なので、あっちこっちで空中配線がありますが、問題点がすべて解決した暁には、きれいに配線し直します。
まず、FETが発振しました。 セオリー通りFETソースからQ1のベースに1000PFを追加してあったのですが、効果なしでした。 そこで、FETのソースから、ゲートの1KΩのコモン部分に最短経路で103Zを追加したら、発振は収まりました。 しかし、まだ、出力の電圧計がフラフラと揺れます。 オシロでチェックすると、左下のようなノイズが出力端子へ出ます。このノイズは負荷が軽くても、重くても関係なしに出ます。
対策として、Q1のベースとGND間に33uFの電解コンデンサを追加してみました。 するとギザギザのノイズはなくなりましたが、大きなリップルが乗ります。 そこで、このコンデンサを次第に小さくしていくと、0.1uFの容量のとき、リップルもギザギザノイズも目立たなくなりました。 しかし、時間をおいて、しばらくエージングすると、また、再発します。 追加したコンデンサの為、高い周波数の成分は少なくなりましたが、レベルは時々2倍以上になります。 困り果て、部品をかたっぱしから交換していき、やっと判った原因は電圧調整用の可変抵抗器の接触不良でした。 オーディオの世界で言う、ガリオームの事で、これがノイズ発生源でした。 対策は、新品の巻線型可変抵抗器に交換して、完了です。 ただ、この検討の段階で、Q1の2SD1408を壊してしまい、VCEOの高い石で不動在庫になっていましたSTマイクロのMJD31Cに交換してあります。 右上がその対策後の波形です。 検討の途中で追加したC13は本来不要になったのですが、他に弊害がないので、追加したままにしてあります。
とりあえず、実用可能な状態となりました。 実際に使っていくと、また、新たな問題が発生するかもしれませんが、その時は、その時、対策を考える事にします。 左は、完成状態の安定化電源です。 ケースが有りませんので、RFの回り込みが心配ですが、必要によりカバーを考える事にします。
この安定化電源は、4.6Vから50Vまで可変できますが、最大電流は5Aとし、保護はヒューズのみです。
問題点を対策した配線図 DC_POWER_SUPPLY2.pdfをダウンロード
ファンは5V品なので、別にトランスを追加し、DC6Vを作り、抵抗で4Vまでダウンしてドライブしています。
左は、49Vにて、3A負荷を接続した時のテスト風景です。 ノイズもなく、安定して動作しています。
心配したファンの騒音もなんとか無視できる状態で、一安心です。
これで、リニアアンプの検討へ復帰できます。
リニアアンプ検討に復帰したのですが、また、この記事に戻ってきました。 一応予想はしていたのですが、出力2.5Wの7MHzの信号がFET回路に回り込み、あっけなく、壊れてしまいました。 電源だけでなく、リニアアンプのファイナルFETも壊してしまい、がっくりです。
やはり、FET式の安定化電源は、送信機と一緒に使う事は無理でした。 その送信機の中に、48Vから12Vを作る安定化電源をトランジスターで作ってありますが、こちらは、なんら問題は有りません。 従い、この電源もトランジスターで作り直すことにしました。
手元に使えそうな石として、2SC5198 1石しかなく、本来は2石パラで作らないとコレクタ損失の許容値オーバーになりますが、追加手配できるまでは、1石で行く事にします。
トランジスターによる安定化電源 PWR-AMP100W_3.pdfをダウンロード
2SC5198のhfeはIc 5A のとき、最小35しかなく、ベース電流は最大で142mAは必要になりますので、ダーリントン接続のドライブTRも電力用の2SD2012としました。 ただ、このTRのVCEOは最大で60Vであり、出力を5Vまで絞ると、最大値を超えてしまいますので、代わりのTRを手配して置きます。
一応、48Vで3Aのテストは合格しましたので、とりあえず、この状態で、リニアアンプの検討を始めましたが、出力が3Wになった時、ダーリントン接続のトランジスターを含めてショートモードで壊れてしまいました。 どうも、回路が発振したような形跡がありました。 結局、また一からやり直しです。
電源の修理は、原因を究明してから、後でやる事にし、壊れたリニアアンプの終段のFETを交換して、再度、リニアアンプの検討へ復帰します。
電源に使うトランジスターを全部壊し、仕方なく、従来の電源でリニアアンプの検討を行い、電源電圧18Vで安定動作が得られましたので、やめとけば良いのに、また30Vの電源に接続した為、アンプのFETを壊してしまいました。 結局、また、電圧を自由に変えられる電源が必要ということを悟りましたので、三度(みたび)、電源の改善検討です。
前回のトランジスターによる電源が壊れた原因を突き止めた訳ではありませんが、トランジスターでもRFが混入してTRがショートモードで壊れるということは、よっぽど、RFを拾いやすい回路になっているようです。 一番、拾いやすいのは、安定化電源の制御回路と、制御用TRの距離が遠いという事かもしれません。制御用TRと制御回路を結んでいるワイヤーの長さは、おおかた20cmはあります。 多分、これが一番の問題だろうと判断し、回路のレイアウトを大幅に変えます。 ただ、100WクラスのTRは全部壊れてしまいましたので、手元に残っている100WクラスのMOS-FETで再制作する事にしました。
下の写真が、基板の位置を大幅に変更した全体の部品配置です。
配置を大幅変更した以外に取った改善策は、制御回路の入出力に70uHのチョークコイルを追加した事。 および、放熱板に固定された2石のFETのドレイン、ソースから、放熱板に0.01uFのコンデンサでいきなりGNDへ落した事です。 放熱板そのものは、GNDにビス止めされていますので、GNDとして動作しますので、そこへ最短でパスさせる事にしました。
上の写真は、制御回路と制御FETのアップですが、FETとの接続は最短で行いました。
動作テストは済みましたので、後は、実際にリニアアンプに繋いでみるだけとなりました。
修正した配線図 DC_POWER_SUPPLY3.pdfをダウンロード
そして、リニアアンプへつなぎ、18Vの電圧で、パワーを上げてみました。 残念ながら、5Wの出力になった時、煙が出て、電源電圧は65Vに。 電源のFETはショート状態で壊れ、ついでにリニアアンプのFETもショートモードが壊れてしまいました。
今回の壊れ方は、入力を上げた訳ではなく、1Wの出力が、数秒間の間に勝手に5Wまで上昇したもので、明らかに、リニアアンプの熱暴走です。 今まで、電源が壊れるのは、電源回路にRFが回り込み、異常状態となり、電源が壊れて、次にアンプが壊れると考えていましたが、どうも、この順序は逆で、アンプが熱暴走した場合、電源は際限なく電流を供給しようと動作した結果、両方が壊れるのではないかと、考える事にしました。 なぜなら、送信機に内蔵した12Vの安定化電源は、熱暴走しない負荷であり、かつ、なんらかの原因で負荷電流が増えても、レギュレーターの内部抵抗の為、いくらかは不明にしろ電流制限がかかります。 壊れた電源は、その帰還ループを使い、負荷が0Ωになっても出力電圧を維持しようと動作しますので、最後は壊れるしかないという事です。
そこで、電流検出を行い、設定された電流を超えそうになったら、出力電圧を下げる、保護回路を追加する事にしました。 使用する電流センサーは秋月で扱っている、NECトーキンのTHS63Fにします。 その上で、シリーズレギュレーターはダーリントン接続の2SD2390 2石にします。
この電流センサーTHS63Fを入手し、予備検討したところ、データシートにあるアナログ出力が全く変化しません。アナログ出力端子(4番ピン)に10KΩを付けようが、openにしようが、センサー部分に電流を流そうが、ゼロにしようが、アナログ出力は1.98V一定でピクッともしません。 データシートには、センサーの電流に比例した電圧が出力されるとありますが、アナログ端子の事ではないのか?
ただ、OUT1はセンサーが感知する電流になると、HからLに変わります。 やむなく、このOUT1の電圧を使い、全体の電流制限回路をデザインする事にしました。
電流制限回路付きの安定化電源 DC_POWER_SUPPLY4.pdfをダウンロード
そして、このセンサーICとファンを動作させる5Vの電源を、シリーズレギュレーターで作り、今まで有った、5V電源用のトランスは廃止しました。
左上が、あたらしく基板を作り直したシャーシ全体、右上が、電流センサーを実装した基板です。
この回路で、制限する電流値は12接点のロータリーSWで行います。このロータリーSWでセンサー部分に直列に接続した抵抗値を可変する事により、連続ではありませんが、0.5Aくらいから5.5Aくらいまで可変できます。
リニアアンプを接続した時の、最大電流は8Aくらいが予測されますが、その時は、R1,10の0.1Ω2本パラを3本パラにすれば最大で8Aくらいを確保できます。
ただし、この電流値は、私が今回使ったTHS63Fの固有の特性であり、このハイブリッドICのロットのバラツキによっては、この制限電流値が±50%くらいはバラツクものと思われます。
この電源で、再度リニアアンプを検討する事にします。
リニアアンプへつないでみました。 20Vの電圧で、出力10Wくらいで、またも電源が壊れました。 シリーズトランジスターが全端子ショート状態で壊れてましたので、当然リニアアンプも壊れてしまいました。 電流制限は5Aに設定してあったのですが、間に合わなかったようです。
2020年4月末
ゴールデンウィーク前ですが、世の中は、新コロナウイルスで外出自粛の真っ最中。 せっかく追加した電流制限回路は、その応答速度の為、リニアアンプの熱暴走のスピードに間に合わず、電源が壊れた状態でした。 そんな中、OP-AMPを使ったバイアス回路がうまく動作して、26Vの電源で、安定動作するところまで、改善できましたので、電源電圧を26V以上に小刻みに上げられる安定化電源が、どうしても必要となりました。 前回、壊した為、シリーズトランジスターは1石しか残っていませんが、この1石を使い、電流制限を2重にかけた回路で、再検討する事にしました。
トランジスターの追加手配ができるまでは、1石で頑張ってもらいます。 電流検出用0.1Ω2本パラは1本に変更し、この両端にNPNトランジスターのベース、エミッタを接続し、BE間の電圧が0.6Vを超えると、このトランジスターがONし、電流が一定になるように電圧を下げるQ2を追加しました。 まだ、テストしていませんが、たぶん6A流れた時点で、電流は一定になるはずです。 前回追加した電流センサーによる電流制限回路も検出電流値を変更して、そのまま実装しました。 この回路で、センサーによる3Aの電流制限までは、ダミー抵抗でテスト出来ていますが、それ以上の電流では、まだ確認が出来ていません。 また、ロータリーSWの構造から、接点を切り替える途中で一瞬回路がopenになりますので、通電中の電流制限値の切り替えは厳禁です。
この電源回路を間違って出力ショートモードで電源ONしてしまいました。 4Aくらいで電流制限がかかったのですが、数秒後に、電源のLEDインジケーターが消えました。 調べてみると、トランスとブリッジダイオード間に挿入した10Aのヒューズが切れていました。 ヒューズを交換して、電源の負荷をオープンにして、再度電源をONすると、パンと音がして、出力電圧は60V以上に。
負荷がつながっていなかった為、電源以外の被害は有りませんでしたが、結局、電源は追加した電流制限回路が機能したのですが、その時のショート電流に耐え切れず、シリーズトランジスターが壊れてしまいました。 シリーズトランジスターが1石では不足だったみたいです。 2石でも不足かもしれません。 このトラブルは、リニアアンプがつながっていませんので、純然たる電源の問題です。 ショートした為、電流制限回路が機能して、電流は4Aで制限されましたが、この時の出力電圧は0Vです。しかし、安定化電源の入力DC電圧は下がったもののまだ48Vもあります。 この結果シリーズトランジスターには48V x 4Aの電力、192Wがかかってしまいました。 このFETのPdは100Wですが、それは無限大放熱板を付けた時の話で、実際の放熱板で、ファンを目いっぱい回したとしても50Wくらいが限界のはずです。 数秒でも、もったということは、「えらい」。 そして、私はそれに気づくのが遅い!
2020年のゴールデンウィークに突入しました。 ただし、今年は、新型コロナウィルスで、いつもの年とは大きく異なります。 外出自粛により、検討が進みそうです。
リニアアンプの熱暴走が起こった場合、この出力端子ショートに近い状態です。 いくら、電流制限を設けても、リニアアンプが正常動作する範囲の電流制限では、電源は壊れて当たり前ということが理解できました。
ここまで、悟るのに2週間かかりましたが、負荷がショートした時は、出力電圧をゼロにする、イワユル フの字特性の電源が必要なのです。
20V 1Aという容量で、フの字特性を有する安定化電源を常用しております。 左がその電源ですが、この電源は、昭和46年くらいに作ったものです。 すでに50年程経過しておりますが、壊れる事無く、いろいろな実験に重宝しております。 今、要求されるているのはこのような電源だろうと、フの字特性の電源に作り変える事にしました。
フの字特性付きの電源 DC_POWER_SUPPLY6.pdfをダウンロード
この電源ではPNPの大電力トランジスターを使います。 採用したのは、2SB554というPc150WのCANタイプトランジスターで、それを3石パラにします。 最大450Wの許容損失ですが、実際の回路では、雲母の絶縁にシリコングリス塗布、さらにファンで強制空冷した上で、200W位いがMAXとなります。 この回路で、負荷ショート時、フの字特性が威力を発揮し、出力電圧、電流ともに0となります。 ただし、この特性がアダとなり、コンデンサ負荷(特に電解コンデンサ)時に、負荷ショート状態でスタートしますので、電源が立ち上がらないと言う問題に遭遇します。 この解決方法として、負荷がゼロΩでもいくばかの電流が流れるようにする事。及び、無負荷状態を作らず、邪魔にならない程度に常時電流を流しておくことが重要です。
この対策として、シリーズトランジスターのベースから、かなり高い抵抗で、コレクターに接続し、常時負荷へ電流が流れるようにする回路が例示されますが、この場合、トランジスターのhFEの関係で、一律に抵抗値が決められません。 特に、ダーリントントランジスターの場合、hFEが10,000を超える場合があり、挿入する抵抗は2MΩで小さすぎ、10MΩ以上が必要だったりしますので、シリーズトランジスタのエミッタ-コレクタ間に、kΩオーダーの抵抗を付け、負荷ゼロでも起動する最大の値を探る方が確実です。
この回路でも、最初、R2を10KΩとして、問題なく動作していましたが、ダミーとして、R7の500Ωを繋いだら、起動しなくなり、5.6kΩまで小さくした経緯があります。 そして、電源ONと出力ONは、必ず独立したSWにします。 特定のリグの専用電源なら、その負荷で常時起動する回路定数にすれば良いのですが、汎用電源の場合、負荷状態が不定ですので、出力ON/OFFスイッチはマストです。
電源の耐性を上げる方策は、入力となる直流電圧をぎりぎり下げることです。 30V 6Aの負荷に対して、60VのDC入力は、それだけで180Wの損失が安定化電源にかかる事になります。 30V 6Aの安定化電源を得るには、6Aで32V以上の電圧があれば良いわけで、もし、この時の入力電圧が32Vなら、12Wの損失を安定化電源が背負えばよい訳です。しかし、そのような都合の良いAC電源を用意するには、スライダックスがマストです。 残念ながらスライダックスが有りませんので、無負荷時67Vのトランスを使用せざるを得ません。
ちなみに、電圧を半分にした時の最大出力可能な条件は25V 5Aでした。 30V 6Aにトライしたところ、フの字特性が働いて出力ゼロとなりました。 このフの字特性が働くのは、入力DC電圧と出力電圧の差が2Vくらいになった場合のようです。
上のグラフは今回の安定化電源(AVR)に5Ωの負荷を接続した時の電圧と、AVR自身が請け負う許容電力をシュミレーションしたものです。 5Aまでは実測データを使っています。
負荷抵抗が5Ωの場合、最大39V、7A負荷でフの字特性が現れることを示しています。 この状態でリニアアンプをドライブしてみる事にします。
リニアアンプの動作試験を行い、120Wの出力でも、RFの回り込みはなく、リニアアンプのFETがショートモードで壊れた時も、フの字のプロテクターが機能し、電源は無傷でした。
この安定化電源のフの字保護回路が動作する負荷条件は、出力電圧でことなりますが、トランスのレギュレーションから推定した負荷電流は左の通りです。
2020年8月
出力電圧を12Vにして、出力ONすると、時々、出力ONのLEDがポカポカしたり消えたりします。 夏になって温度が上昇した為、Q7のゲート電圧が上がらず、Q7をON仕切らない事が原因でした。 対策として、R13を120Kから22Kに変更しました。
2020年11月
リニアアンプをパワーアップしようにも、現在の電源のトランス容量は250Wです。 100Wのリニアは持ちこたえても、200Wのリニアアンプは不可能です。 そこで、トランスを再検討する事にしました。
今まで使っていたトランスは左上の大きなトランスです。容量的には1KVAですが、400V/200Vのトランスで2次側の定格電流は5Aです。これを1次側100Vで使う関係で、出力は5Aが優先され、約250Wしか無かったものでした。 一方、右上のトランスは、左のトランスを提供いただいたOMから、さらに頂いた、ステレオアンプ用のトランスです。
オーディオアンプは、定格出力が100Wx2ch=200Wで有っても、連続で出力を保証しているのは、1/3の66W以下です。200Wはせいぜい5分くらい出せたら良いというスペックですから、SSB送信機のように定格出力の70%を連続出力する能力は有りません。 しかし、それは、トランスの温度上昇からくる限界で、内部の温度が110度くらいの時です。 一方、トランスの内部に設けられた温度ヒューズは150度くらいの物が多く使われており、実際は、定格出力の30%以上でも、使う事が出来ます。 大体の目安ですが定格出力100Wx2chのアンプを100Wx2chでエージングすると、早いもので15分、遅くとも30分で温度ヒューズが飛びます。 これらの事から、SSB 200Wのリニアアンプに使った場合、70%の出力で30分間くらいは耐えるかも知れないと、淡い期待もありますので、このステレオアンプ用のとトランスへ乗せ換える事にしました。
上のグラフはこの二つのトランスのレギュレーションを示します。 赤のラインが1KWの従来のトランス、青のラインがステレオ用のトランスです。 レギュレーションは明らかにステレオ用が良く、40Vの電圧を維持できる負荷電流は、1KWのトランスの場合、7.2Aくらいで、288Wですが、ステレオ用は約10Aで、400Wです。 リニアアンプの効率が50%なら、200W出力できる事を意味します。
これらの事から、すでに出来上がったリニア電源にトランスを内蔵させ、かつ、電力容量をアップした安定化電源に作り替える事にしました。 トランスの巻線がセンタータップタイプでしたので、ブリッジダイオードの半分は使わない事にしました。
このステレオアンプ用トランスはパワーアンプ用の主巻線とは別に、12V電源用のサブ巻線を持っていますので、5Vのファン用電源は、このサブ巻線からシリーズレギュレーターを通して作る事にします。
左上がトランスを収納し、レイアウトを変更した内部です。右上は、このシャーシに木製のカバーをかぶせ、強度的に補強を行ったものです。左右の側面に換気用の穴を開けてあります。 35V5Aくらいでは、ほんのりと温まるだけで、問題は有りません。 また、5V定格のファンも2.5Vでドライブしていますので、騒音はほとんど感じません。
左の表は、トランス交換後のフの字特性動作開始推定電流です。
電力的には、30V出力の時、450Wの供給能力があります。
次は、200Wリニアアンプへトライしますが、電源電圧35Vのままで、200Wを出せるような回路構成にする必要がありそうです。 ただし、上の表は、基板内や配線経路中にロスが無いとした時の数値で、実際は無負荷電圧35Vであっても、10A負荷電流で3V以上の電圧降下があります。
最終状態の回路図:DC_POWER_SUPPLY8.pdfをダウンロード
2020年11月
200Wリニアアンプ対応の為、電流計のレンジをmax10Aからmax15Aに変更しました。
この電源を使って200Wリニアアンプの検討を始めましたが、上の表の電流でプロテクタがかかり、最大出力は140W止まりでした。 200Wリニアアンプの記事はこちら。
200Wリニアアンプを検討中にファイナルのFETのドレアイン、ソース間がショート状態になり、かつ、電源の2SB554がショート状態で壊れてしまいました。
壊れたのは東芝の純正ではなく、台湾製の2ndソースでした。 ベース抵抗を4.7Ωまで小さくした事により、フノ字のプロテクタが働く電流値が上昇し、耐えられなくなって、弱いトランジスタが壊れたようです。 ベース抵抗を、2倍の10Ωに代えてトライする事にしました。 ところが、出力電圧50V、リニアアンプの電源OFFの状態で、何回か出力SWをON/OFFを繰り返すと、また2SB554がショートモードで壊れてしまいました。 何が原因か判らず、再度修理し、慎重に見守ると、リニアアンプの電源SWより電源入力端子側にある50V18000uFの電解コンデンサへのラッシュ電流で壊れる事が判りました。 壊れるのは、決まって、秋月で手配したMOSPEC製の2SB554です。 Specを調べてみました。 東芝純正の2SB554の最大ピーク電流は30Aですが、MOSPECのそれは、18Aです。 最後にリニアアンプのFETが壊れたのは、このMOSPECの2SB554がショートモードで壊れ、57VくらいのDC電圧が急に加わり熱破壊した事の様です。
このMOSPECの2SB554は予備を含めて後2石残っていますが、もう使えません。 やむなく、東芝の2SA1943(2SB554と同等Spec)に変更する事にします。
トランジスターと放熱板を絶縁する為にシリコンラバーを使いますが、このシリコンラバーだけで絶縁したものと、シリコングリスを塗ったマイカ板で絶縁したものを併用した場合、決まって、シリコンラバーで絶縁したトランジスタが先に壊れるという経験は私だけでしょうかね。 色々な解説では、シリコンラバーの熱伝導率はマイカよりはるかに良いと言われていますが?
2021年2月
この電源を弄り回してすでに1年くらい経ちますが、その間に壊して交換した部品代はユウに5000円を超えました。 結局400Wくらいの電源を用意しようと思ったら、360Wくらいの中華製ACDCスィッチング電源と300Wくらいの連続可変可能な自作電源をシリーズにして使うのが一番良いみたいです。 そんな訳で、当電源は最大40V10Aとし、40Vでショートテストをしてもフの字特性が動作するのを確認した上で、24V20Aのスィッチング電源とシリーズにして実験に使う事にしました。 もっと電圧が必要な時は、36V10Aのスィッチング電源を買い足す事にします。
その対応の為、この電源がOFF状態の時、出力端子へ負の電圧がかからないようにマイナス側からプラス方向へ電流がバイパスするようにダイオードを追加しました。追加したダイオードは1S1652Rという品番のナット止め仕様のダイオードです。 定格は150V 12A。 左がその写真です。
この状態での最新配線図です。
2023年2月
デジタル方式AM送信機の開発中に12V 8Aの負荷を1分以上継続したら、制御用のトランジスタがショート状態で壊れてしまい、出力電圧が38Vまで上昇し、開発中の送信機の電源回路やLCD、マイコン、DDS ICなどを壊してしまい、約1週間のロスと余計な労力とお金が発生しました。
原因を確かめると、制御用のトランジスタで、2SB554がコレクタ、エミッタショートで壊れていました。 この制御用TRは3石で構成されていましたが、残りの2石は2SA1943という品番でした。 2SB554は、Vbe 0.5VでIcが10Aくらいになりますが、2SA1943はVbe 0.8Vで IC 3.5Aくらいしかなく、実質的に、2SB554 一石で全電流を処理していたことになっていました。 これは完全な構成ミスでした。 部品箱をひっくり返して探すと、未使用の2SA1943が一石見つかりましたので、壊れた2SB554と交換し、かつ、それぞれのVbeのバラツキを吸収する為に、エミッタにシリーズに0.33Ωの抵抗を入れました。
ついでに、電源ON時のラッシュ電流対策の為にリレーを追加しました。
対策後の配線図 48v_dc_power_supply9.pdfをダウンロード