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2013年5月30日 (木)

π型チューナーの内部ロス改善

<カテゴリ:アンテナチューナー>

プリセットチューナーに使われているチューナーの中で、唯一80mバンド用のみπ型アンテナチューナーを使っています。 チューナーの中で、一番ロスが少ないのは、L型チューナーですが、コイルの可変が大変なので、π型で我慢している状態です。   この状態で少しでもロスを小さくするため、π型の一方のコンデンサ容量を、調整できる範囲で小さくし、L型に近づけることにしました。 雨が降ると、共振周波数が低い方へずれますので、最低この補正が可能な可変範囲は確保しなければなりません。

Mtuloss2  

プリセット式MTUの最初の検討時、T型で実験し、絶縁破壊で採用しませんでしたが、この時のチューナー内部ロスはシュミレーションで73.0%程度であったと思われます。 π型に変更した今までの状態はC2が100PFくらいでしたので、67.5%くらいの内部ロスになっていた模様です。

今回、このC2を調整可能なぎりぎりまで小さくしました。結果、内部ロスが54.1%くらいまで改善したようです。このチューナーをLタイプに変更した場合、C2の値は10PF程度になります。この10PFはストレー容量で、配線図上では、C2は存在しません。この状態でも内部ロスは52.7%くらいですから、C2が25PF(ストレー容量との合計容量)の時と1.4%の差しかありませんので、ほぼLタイプ同等のロスに収まったと思われます。

Img_0621s Img_0625s

左上の画像はC2の容量を減らし、インダクタンスを大きくした改造MTUです。 左側の黄色のポリバリコンはC2に相当し、ローターの羽を2枚として、最大70PFくらいにしました。右側の赤色のポリバリコンはC1に相当しますが、ローターは羽を7枚として、最大250PFくらいを確保し、不足分は固定コンデンサをパラつけしました。この状態のMTUを右上の画像の一番上の部分に実装しました。上から3番目のMTUは改造前のものですから、左側のポリバリコンの厚みが違うことと、コイルの巻き数が違う事がわかります。

ロス改善を行ったとは言え、その差はわずか13%くらいですから、Sメーターに差が出る訳もなく、ただ、気分だけの問題ですね。今回のコイルのQは100でシュミレーションしましたが、ほぼ現物と合っていると思われます。仮に、このQを200まで上げたとしても、ロスが6%くらいしか改善しませんし、それでも約半分のパワーがロスしてしまいます。 80mバンドで成果の上がらない原因は50%短縮のアンテナそのものなのでしょう。

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2013年5月15日 (水)

エレキー回路の追加

<カテゴリ:KEM-TRX7-LITE>

このQRPキットのPICマイコンの中には、CW用のエレキーソフトが内臓され、縦振電鍵用とエレキーパドル用とに切り替えられるようになっています。ただし、エレキー用を選択したときのキーイングスピードの調整は、とてもQSO中に変更できるようなアクションになっていません。 そのため、今までは外付けのエレーキーユニットを使用していました。

移動運用するには、このQRPトランシーバーとハイモンドのシングルレバーパドル、エレキーユニット、乾電池、アンテナワイヤー、アンテナポール用の6.3m釣竿など、かなりの荷物でした。これらの荷物を少しでも減らそうと、まず、ハイモンドのパドルを自作の軽いパドルに変更しました。この自作パドルの詳細は、エレキー用パドルの製作を参照してください。 

Onkey

次に、外付けのエレキーユニットをビルトインにすることにしました。

メイン機がTS-930Sであることから、最近のモデルには当然内臓されているエレキー回路がありません。よって、外付けの回路を使っています。 この回路はサーキットハウスがキットで発売していたもので、CK-100AというN9BQタイプのC-MOS ICによる回路です。現在はマイコンタイプが一般的ですが、006Pタイプのアルカリ電池につなぎっぱなしで2年半も使用できるという、超ロングライフな消費電流の為、QRPトランシーバーに内臓するエレキー回路もこの回路をそのままコピーして使おうと考えました。

ジャンク箱をひっくり返すと、この回路に使うC-MOS ICが出てきました。HitachiブランドでHD14001のような品番です。30年くらい前のICです。これを、ユニバーサル基板に並べて、CRはチップタイプで作りました。基板の表側にはICだけしかみえませんが、1608タイプのCRは、裏側の2.5mmピッチのランドに結構うまく乗ります。 オリジナルの回路はモニター用のサイドトーン発振器もついていますが、KEMのトランシーバー側にその機能がありますので、エレーキー基板には実装しません。

Elekypwb

配線が完了して、いざ、実働テスト。 残念ながら動きません。まず、クロックジュネレーターが動作しません。 速度調整用可変抵抗を可変すると、時々発振はするけど、まともな波形ではありません。 発振回路に使う0.1uFのコンデンサは1608のセラミックでしたので、これをCK-100Aと同じようにマイラータイプに変更したら、一応発振は継続するようになりましたが、周波数の可変がうまくいきません。 電源ラインには、ごく当たり前に、47uFの電解コンデンサと0.1uFのセラミックコンデンサを挿入してありました。しかし、オリジナルの回路では、電源ラインに電解コンデンサは使用していませんので、これを廃止しましたら、連続して、きれいに発振するようになりました。 それでもまだキーイングする出力は出ません。

配線図の写し間違いが無いか再三にわたりチェックしましたが、間違いはありません。しかし、おかしな部分に気付きました。ICの各端子をオシロで当たっていくと、H/Lの動作をしていますが、9Vと7Vくらいの間を変動している端子があります。C-MOS ICの出力どうしが、つながっているようです。 少なくともキットで組み立てた回路は正しく動作していますので、CK-100Aに付属の回路図が間違っているのでしょう。 出力どうしがつながっている箇所はすぐに判りましたが、正しい接続方法は判りません。 現物の基板を何度も裏表をひっくり返しながら、やっと正しい配線方法を見つけました。 正しい配線に修正すると、正常に動作するようになりました。

基板単体でOKとなりましたので、これをQRPトランシーバーに組み込みました。しかし、今度は、クロック発振が起動しません。基板単体のとき電解コンデンサを廃止したら正常になりましたが、トランシーバーの電源ラインには電解コンデンサがいっぱい入っています。どうも、この4001によるクロック発振器は電源のインピーダンスが低いと起動しないようです。ためしに、エレーキー回路の電源ラインに直列に抵抗を入れてみました。15Ωの抵抗で発振が起動しました。さらに抵抗を大きくしていくと1KΩでも発振起動します。いくらの抵抗が最適か探りましたが良く判らず、とりあえず、電圧降下が0.1V以内に収まる47Ωとしました。

トランシーバーに組み込んで、電源SWをONにすると、ONした直後に送信状態になります。電源投入のタイミングにより、短点、または長点が発生しているものでした。電源ONするたびに、勝手に送信状態になる訳ですから、これは対策が必要です。 今までの外付け回路は電池に接続したままでしたので、この現象は2年半に1回起こるだけですから、問題になりませんでした。

対策としては、電源ON直後はキーイング出力にミューティングをかけることにしました。トランジスタ1石追加です。これで、エレキーのスピードを最低にしても電源ONで勝手に送信になる事はありません。

トランシーバーのキーイング回路をON/OFFする出力回路は、トランジスタ2石のダーリントン接続になっていますが、このベース抵抗とコレクタ抵抗の値が、通常より逆になっています。 この逆の状態でも、私が使用しているリグすべてキーイング操作は可能ですが、回路的におかしいので、定数を入れ替えました。通常はベース抵抗よりコレクタ抵抗が小さく、わずかなベース電流で大きなコレクタ電流を制御します。現在のままなら、ダーリントン接続は不要です。

5年使用したGHDキーのパドルの接点がチャタリングを起こすようになり、このチャタリングによるノイズがキークリックとして耳障りになってきましたので、ダッシュとドットの端子に3.3KΩ(R9,10)を追加しました。たったこれだけでノイズは皆無になりました。

修正済み配線図をダウンロード

配線図の中にR8 360Kというのがありますが、これはチップタイプの330Kが手持ちになかった為の代用です。AXIタイプの330Kで動作確認し、OKでしたが、実装時、サイズが大きくなりますので、あえてチップ抵抗にしました。

Img_0842t  QRPトランシーバーは12V仕様ですから、このエレキーも12Vラインへ直接つないでいます。 電池の電圧が下がるとスピードはダウンしますが、12Vから、いきなり6Vに変更して、スピードが落ちたと気付く程度の差しかありません。通常の電池交換時(約8Vくらい)までなら、スピードの変化は気が付かないかも知れません。

エレキー回路内蔵のトランシーバーが出来上がりました。最初、5Wの出力時、アンテナ回路からこのC-MOS回路へのRF回り込みを気にしましたが、写真のように実装しても誤動作はありません。

トランシーバーの改造が完了しましたので、手作りパドルを入れるケースを100円ショップで調達し、いつでも移動にでかけられるよう準備万端整いました。

Img_0573

サイドトーン回路追加に続く。

マイコン開発の勉強をする為に、このエレキーと全く同一機能のエレキーをPICマイコンで作りました。

詳細はエレキー回路の自作(PIC12F675)を参照して下さい。

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2013年5月12日 (日)

TS-930 ノイズブランカー動作せず

<カテゴリ:TS-930>

修理して使い始めてすでに4年経過していますが、最近、ノイズブランカーSWをON/OFFしてもノイズに変化が無い事に気づきました。

サブ機のTS-850では、ちゃんとノイズに差がでますので、ノイズブランカーで低減できるノイズは存在しているようです。サービスマニュアルを頼りに修理する事にしました。

SWをON/OFFしても全く変化が無いことから、フロントパネル裏のSW基板を疑いましたが、おかしな部分はありません。サービスマニュアルにある、ノイズブランカーの動作原理の説明を読みながら、オシロスコープで各トランジスターのDC電圧とノイズ波形をチェックしていきますが、ここでも、おかしいと思われる症状はみつかりません。ただし、マニュアルでは70dBのゲインがあると書かれているノイズアンプの出力波形がいやに綺麗です。70dBも増幅した後の波形は、例え入力が無くても、それなりのノイズがあるものなのですが、それが見えません。たぶんゲインが70dB無いのでしょう。一番最初に疑ったのは、ふたつの同調回路です。経時変化で同調がずれている可能性があります。

930nb1 ノイズアンプの出力になるD51のカソードにオシロのプローグを接続し、波形を見てみると、この日一番ノイズの大きかった24MHzを受信しても1Vpp以下です。そこで、同調コイルL80とL81を回して見る事にしました。D51のノイズ出力レベルが最大となるように、ふたつのコアを交互に調整しました。

調整完了した結果、D51のノイズレベルは2Vppまで上昇しました。

NB1もNB2も動作するようになりました。原因は単純に同調回路の同調ずれで、ゲインが8dBくらいダウンしたため、ノイズをブランクする、しきいち電圧までノイズレベルが達していなかったと言うものでした。

930nb2

ノイズブランカーの効きが悪いとか、効かなくなった場合、NB1をONして、NB LEVELを最大にした状態で、Sメーターがノイズで振れるバンドを選び、Sメーターの振れが最少になるよう、L80とL81を回してみて下さい。この方法ならオシロは必要ありません。

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