オートアンテナチューナー(ATU)
送信不能になったトランシーバーを貰いうけ、それを修理し、現用機として使用しているTS-930Sの中にオートアンテナチューナーが内蔵されています。動作確認すると、ちゃんと動作します。 しかし、送信機の筐体の中に組み込まれたチューナーは送信機と同軸ケーブルのマッチングをとるチューナーであり、私が欲しいのは同軸ケーブルとアンテナのマッチングをとるチューナーです。 従い、これを取り外して、ベランダに設置すれば、欲しい連続可変のオートアンテナチューナーが手にいる事になります。
ただし、カバーするインピーダンスの範囲が通常の外付けチューナーより狭いからどうかな?と思いつつも、とりあえずシャックからコントロールできるように回路を改造して動作テストに臨みました。 7MHzと10MHz、21MHzと整合は出来るけど、その他のバンドは、バリコンの回転が止まらず、そのうちタイムアウトでエラーになります。
チューナーの回路構成はT型とπ型の変形。内部のコイルをいじったりしてインピーダンスの拡大を試みましたが、うまくいかず。構造的には、マニュアルチューナーのバリコンをモーターで回すという基本原理に忠実な構成ですから、巷のリレー式ATUとは一線を引けるものですが、もともとSWR2か3のアンテナを1.5以下にするくらいの能力しかありませんので、今回の目的には合致せずと納得し、もと有ったTS-930の中に戻すことなく物置行となりました。
2014年7月
このATUを物置から引っ張りだし、バリコン式ATUを作る事にしました。詳細は、バリコンを使用したATUの自作を参照下さい。
次に、インターネット上でもユーザーレポートの多いリレー式ATUを実験しました。 最初は東京ハイパワーのHC-200ATでトライ。3.5から28メガまでの8バンド全部で整合は取れるのですが、いくつかのバンドがSWR2以下には収束しません。同調フィーダーの長さを調整して1.5以下に収束するようにすると、今までOKだったバンドが2以上になり、こちらを立てればあちらが立たずの繰り返し。リレー式ATUの最大の欠点はインダクタンスやキャパシタンスの最小分解能限度が設定され、バリコンのように細かい調整が不可能な事です。HC-200ATでもSWR2で収束した整合状態をアンテナアナライザーで調べるとSWR1.5以下の周波数はバンド外にあります。取説には、アンテナ長を調整して、上手に使ってと、コーションがありますが、私のアンテナは先に形状寸法が決まり、かつ設置場所も変更不可のもの。その状態でクラニシのマニュアルアンテナチューナー(MTU)では、全バンドともきれいにSWR1.0まで整合できる為、ATUの性能限界は受け入れられません。
そこで、このリレー式ATUを改造して使えないかと、壊してもダメージの少ない、安いATUを探すと、LDGという会社でU$120くらいで販売してるATUがあります。送料を入れてもU$160くらい。おりしも1U$=80円くらいの時期でしたので、これを米国の販売店に注文。1週間で届きました。
購入したのはKT-100というモデルでTS-850に接続すれば、そのまま使えるというしろものです。さっそく、リモートコントロールできるように改造した後、実験を開始。案の定、東京ハイパワー製と同様な結果となりました。しかし、今回は、チューナーの内部を改造して最小分解能10PFのコンデンサを5PFまで小さくしてみました。もちろん、各リレーにつながる容量は順繰り変更し、最大容量は正規品の半分しかありません。 最悪3.5メガは諦めるつもりでしたが、結果は意に反してあまり改善されません。 巷で人気の高い、AH-4と回路構成を比較してみると、チューナーの基本回路に大きな差は有りません。KT-100はローパス型Lタイプと言われる整合回路を使用しています。AH-4も基本はローパス型Lタイプです。しかし、π型にも切り替えできるようになっています。それに加えて、AH-4はコイルもコンデンサもリレーの数が多く、細かく調整が出来る構造です。
MMANAのオプションの中に色々なアンテナ負荷にマッチングさせられるLタイプ整合回路の定数計算機能があります。これに色々な数値を入れて見ていると、負荷によってはローパス型Lタイプでは整合しない範囲がある事が判ります。この範囲はハイパス型Lタイプなら整合します。私のアンテナのアンテナチューナー接続部分のインピーダンスをMMANAでシュミレーションすると、9バンド中、2バンドがハイパス型Lタイプでないと整合しない結果が出てきました。同調フィーダーの長さを調整して、どこかに全バンドOKの長さがあるはずとトライしましたが、見つけることはできませんでした。
やはり、評判通り、AH-4を導入するかと傾きましたが、AH-4もローパス型オンリーです。クラニシのNT-636というマニュアルチューナーはハイパスT型チューナーで、コイルの切り替えが12通り可能です。 AH-4がこれに匹敵するほどの整合能力を持つとは考えられません。
これらの実験は約半年続きましたが、うまくいきそうも無いATUの使用を諦めて、MTUをバンドの数だけ並べる方式に方向転換することにしました。
数年後に判った事ですが、LとCの組み合わせを、例え、時間がかかろうとも、全組み合わせを試すプログラムにすると、ほとんどのアンテナをSWR1.1以下に整合出来ます。 当時のリレー式ATUは、各社がその整合速度を競っていた時代であり、高速整合を行う為に独自のプログラムを採用し、これが原因で、最適状態に追い込む事が出来なかったのではないかと思われます。
一旦、物置行きとなったLDGのKT-100を再度、引っ張り出して、改造を試みました。詳細はここで紹介しています。