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2023年1月21日 (土)

デジタル方式 AM送信機 再構築

<カテゴリ AM送信機(デジタル方式) >

変調波形は、見るも無残な状態ですが、曲がりなりにもRFDAコンバーターが機能し、一応AM変調がかけられる状態になりましたので、これの完成度を上げていく事にします。

まず、変調をかけると発生する、パルス状のノイズですが、3-8エンコーダーをマイコンで行った事により、エンコーダーの処理タイミングが遅れてしまい、LSB側のbitとのタイミングがそろわず、プラス側やマイナス側にノイズを発生させているようです。 3-8エンコーダーの動作を故意に遅延させると、このパルスノイズの幅が広くなります。 かくして、マイコンによるエンコーダーは使用できない事が判りましたので、PICによる3-8エンコーダーをやめて、下の配線図のように、6,7,8bitの信号で直接1台、2台、4台のアンプをパラドライブする事にしました。

567bit_directdrive

Predisted15w

そして、その状態での変調波形が左になります。 かなり改善されましたが、まだパルスノイズが残っています。3-8エンコーダーなしで、MSB側の時間遅れはありませんが、よくよく観察すると、4台パラのアンプを同時にON/OFFする時の電源負荷に対するショックで負のパルスノイズを含むノイズが発生しているようです。 やはり、当初考えていた、3bitの数値により1台づつアンプを増減させるエンコーダーをリアルタイムで動作させる必要がありそうです。 このリアルタイムエンコーダーは74HC08と74HC32各1石があれば実現できますので、手持ちの無い74HC32を秋月に注文して、納品待ちとなりました。

一方、12台のアンプの品質が悪く、1台づつ完成品テストを行い、これをシャーシに組み込むと、動作しなくなるアンプが続出しました。 12台の内、1台がNGとなったので、それを取り外しますが、外す時、邪魔になる関係ないアンプのコネクターも抜く事があります。 修理して、取り付け完了すると、今度は別のアンプが壊れており、また、修理するという繰り返しが3日間くらい続きました。 原因は、チップ部品のクラックです。 1608のセラミックコンデンサはルーペで見ても異常は判らないのですが、症状から怪しそうなチップコンデンサにパラに別のコンデンサを付けてやると直りますので、クラックしているのが判ります。 3216タイプの大型チップ抵抗も真っ二つに割れています。 これらの原因は、コネクターを挿入する時に基板がたわみ、そのたわみに耐え切れず、チップ部品がクラックする事が判りました。 今回、製作した基板は公称1mm厚のガラエポ基板でしたが、ノギスで測ると0.9mmくらいしか有りません。この基板の薄さが最大の原因のようです。 そして、抵抗がクラックするのは、抵抗が基板に密着せず、橋のように浮いた状態で半田付けされている事、チップコンデンサは、のきなみノーブランド品が特に弱いようです。 この修理が頻繁に起こり出してから、交換するコンデンサを全部、村田S/S製にしたら、やっとこの問題が落ち着きました。 今後、チップ部品を多用する基板は1.6mm厚に限る事にします。

送信状態からSEND SWを Stand-by にしても、消費電流が2Aを切りません。 電源ONした直後の消費電流は0.3Aくらいですので、元に戻らない事になります。 そして、ひとつの基板から、煙が上がります。 焼けているのは、ドライバーのFETです。 中には、表面に穴が開いているのも有ります。 原因は、Stand-by になったら7MHzのキャリアをOFFにする回路が動作したりしなかったりして、ドライバーに異常信号を供給しているものでした。 対策として、この付近のハンダ付けを全部やり直したら直りました。この問題の為、BS170や2N7000のFET約30石が壊れました。

今回の新しいパワーアンプは、計算上は、8bit DACの出力が255のとき84Wくらい出る事になっていますが、45Wしか出ません。 その原因はこれから、解析しますが、犯人は、電源ラインのフィルターや7MHzのBPFなどが考えられます。 これらも改善課題となりました。 とりあえず、今は無変調時のキャリア出力を12Wまで落とし実験を続ける事にします。

プリディストーション機能がうまく働きません。  前述のパルスノイズが残る変調波形は、一応プリディストーションを掛けたものですが、プリディストーションを掛けないときより、波形が歪んでいます。 これも改善課題です。

  

最大出力が45Wしかない原因が判りました。 出力レベルで電力合成トランスの残留リアクタンスが変化するようです。 初期のころは、アンプが破壊するのを恐れて、DACのデータが127くらいの時、出力最大になるようにリアクタンスキャンセル回路のバリコンを調整していましたが、これを255レベルのとき最大出力になるように調整すると、60Wまで出ることが判りました。 この時の単体アンプの平均出力は12Wくらいで7台がロス無しで合成された場合、最大84Wくらいになりますが、終段のBPFで約7%、電源ラインのフィルターで約9%ロスが有りました。しかし、計算上は71Wくらいは出る事になりますが、実態は60Wですので、この差が電力合成トランス内でのロスだろうと考えられます。 出力配分の小さなアンプは出力配分の大きなアンプから見たら負荷と同じように働き、トランスを経由して、小さい出力のパワーアンプ側へ逆流していますので、これがロスとなるようです。

Predisted10w

自動キャリブレーションのソフトバグを修正し、最大出力が60W出る状態でプリディストーションの校正を行います。 まず、テストモードにして、DACの出力値が128になるようにしておき、その時のRF出力レベルによりADC値が128付近になるようにVR8を調整しておきます。 次に自動キャリブレーションモードにして、結果がOKになるのを待ちます。 左は、このプリディストーションをかけた状態での630Hzで変調した波形になります。無変調時のキャリア出力はVR1を調整して15Wにして有ります。

正弦波の歪がかなり改善しました。 ただし、パルス状のノイズはまだ残っています。 この状態で実際に音楽を変調し、TS-850でモニターすると、音楽自身にはほとんど歪感は有りませんが、パルス状のノイズがザラザラと言った感じで耳に付きます。

次は、このノイズの対策です。

 

New38encoder

New38encoder_2

手配していた74HC32が到着しましたので、上の回路図の通り、改造しました。 しかし、聴感上のノイズは若干減少したものの、オシロ上では、ほとんど変化なしで、左の画像のように相変わらず出ております。

改造前より、波形的には、こちらの方が多いですが、聴感上は改造前より小さく聞こえます。 原因を調べて対策するのに時間がかかりそうです。  

 

 

Img_7773

左は、630Hzによる変調波形をデジタルオシロで見たもので、アナログオシロより、リアルに波形を表示しています。 白いラインは無変調時のキャリアラインで、DAC出力が約127に相当します。 一番大きなノイズはレベルから判定して、DACが64くらいで、レベルが上昇している時に出ている事になります。 レベル下降中は、大きなパルスノイズが有りません。 しかし、このデータをシュミレーションしようとして、同じようなDAC出力レベルで手動によるレベル変化をさせても、下降中はそれなりにノイズを確認できますが、上昇中はほとんどノイズらしきものは確認できません。 3-8エンコーダーで32と96と128のとき、ゲートを2回路通過するので、このDACデータのとき、一番遅延が大きいと思われますが、その遅延の大きさと、ノイズの大きさは相関がないようにも見れます。 

Wave_mod630hz_2

振幅立ち上がりの最中に出ているパルス性ノイズはアンプの特性かもしれないと考え、該当する6番目のアンプと5番目のアンプを入れ替えたのが左の波形です。 この推理は的中し、2番目のノイズ②の部分で前回のような大きなパルスは出ていなく、現れたノイズはDACデータ63-64間の切り替えノイズにほぼ等しくなりました。 但し、改造前にはあまり目立たなかった31-32切り替えノイズが①のように増えました。  波形で②のノイズが63-64の、③が223-224の切り替えノイズではないかと思われます。  ただ、なぜ5番と6番のアンプを入れ替えたら、ノイズが出なくなったのかは、不明なので、心配は残ります。

とりあえずは、3-8エンコーダーをふたつのゲートで実現している部分をひとつのゲートで行い、MSB側の遅延をそろえる。 もし、この対策でもダメならLSB側の5bitとMSB側の3bitのエンコード出力を完全に揃えることで、解決しそうです。

まずは、MSB側、2段のゲートを全Bit1段にしてみます。

38encoder8

Wave_mod630hz_3

上の配線図が3-8エンコーダーの中の2ゲートを1ゲートにした回路です。 今まで有ったゲートはADC/DACマイコンdsPIC33FJ32GP202のB8とB9のポートにその機能をもたせ、LSB側からMSB側の遅れは、ワンゲート分のみとしたものです。 2ゲート回路より若干の改善は見られますが、完全では有りません。 特に、低変調レベルの時、歪が目立ちます。

かくなる上は、LSBとMSBのタイミングを完全に揃えるしかないようです。 この方策として、またマイコンを使います。 8bit入力を12bit出力にエンコード出来るマイコンを使い、LSBもMSBも同時に遅らす事により時間差を無くします。 実装の関係で、DIP 28pin のマイコンを何種類か調査し、かつ、通販で入手できる品番として、モノタロウにてPIC24F32KA302というマイコンが見つかりましたので、これを発注したら、納期を確定出来ないので、受注をキャンセルするメールが届きました。 ほとんどの通販会社が在庫なしで、注文を受け付けない状態になっているところ、モノタロウだけが注文OKになっていたのですが、単純にホームページの更新忘れらしい。

他の方法を考える必要が出てきました。

MSBの5-7bitが1ゲート分遅れるなら、LSBの0-4bitも1ゲート分遅らせれば、なんとかなるのでは? 早速実験してみました。

この回路変更は、DACの出力をモニターする為に設けた74LCX245Dの出力から、0-4bitを取り出し、これを8-12エンオーダーへ渡し、今までノーゲートだった7bitラインにダミーの1ゲートを追加したもので、回路図は以下のようになりました。

Dacoutchange230203

312encoder230203

630hzpdon230203

630hzpdoff230203

左上がプリディストーションをON状態、右上がOFF状態です。波形はOFFの方がきれいですが、聴感上はどちらもあまり変わりません。 今までの波形より、かなり良くなりましたが、まだ小信号の変調のときノイズは有ります。 さらにか改善を行うには、8-12エンコーダーしかなく、アイデアを探す事にします。

気にしていました、スプリアスです。

Rfdactx50mspan

Rfdactx500kspan

左上が50MHzスパンです。第7次高調波まで見たものですが、ぎりぎりセーフでした。 右上は500KHzスパンです。ひと目盛が50KHzスパンとなります。 キャリアのすぐ隣に、帯域内ノイズ(リミット-40dB)がありますが、RFDAコンバーターのクロック周波数100KHzは全く出ていません。クロック周波数は100KHzに残ったままで、出力段のフィルターはLPFではダメでBPFが必要という事に納得。

3種類のゲートを使い、全12bitのタイミングを合わせるのは、無理があるのだろうと言うことから、現在使っているdsPICに接続しているラダータイプのDACを廃止し、かつ、クリスタルのOSCをマイコン内蔵のFRCに変えて、12bit全部がタイミングずれの無い回路に変更し、実験してみました。

Adcaudio10

Rfdac10

Rfdacpdoff230205

Rfdacpdon230205 

ラダーDACと水晶発振を廃止したら、dsPIC33FJのみで、8-12エンコーダーが実現できました。 そして、左上が、プリディストーションOFF、右上がONの時の波形となります。 レベルが32上がる都度出ていましたパルス状のノイズは少なくなりましたが、高レベルの時、アンプの出力差をプリディストーションでも吸収する事が出来ず、プリディストーションON/OFFで波形は変わりません。 ハードで詰められるのはここまでで、 ソフトでどの位い改善するかは、検討を継続し、改善が有ったら紹介する事にします。

 

自動キャリブレーションのソフトをいじっていましたら、出力を変更してから、その出力データを取り込むタイミングを速くすると、かなり正確に校正が出来ることに気が付きました。 そこで、今まで出力設定してからADCでデータを取り込み開始まで10mS待機していたのですが、それを0.5mSまで早くするとかなり正確な校正が出来るようです。 ただし、プリディストーションONよりOFFの方がパルスノイズは少なく見えますが、この変調波形をTS-850でモニターすると、どちらもあまり変わりません。 

Predistoff230207

Prediston230207

左上がプリディストーションOFF、右上がプリディストーションONです。 エンベロープに現れた、正弦波は右側が綺麗に見えます。

 

日を変えて、前回と同じプリディストーション状態で、変調波形を確認してみました。

Predistoff230210_2

Prediston230210_3

左上がプリディストーションON、右上がOFFです。どちらもあまり変わりません。 この波形を撮った時の室温は14度。 聴感上はONもOFFもほとんど変わらず、歪感がありましたが、室温が19度まで上がると、歪感がかなり少なくなり、音声だけなら、気にならない程となります。 結局、個々のアンプの性能を揃える事が難しく、室温も季節任せのハムの場合、全くメリットの無い変調方式で有る事を悟った次第です。 この送信機システムは半導体の性能限界に挑戦するような放送機なら、そのアンプ室の空調機器を入れてもペイするシステムでしょうが、無銭家にとっては、金食い虫以外なにものでもないと言う結論でこのプロジェクトを終了します。

 


メリットを見出しませんでしたが、例え数局でも良いから交信記録を残す為に、TSSに4000円も払って、自作機の認定を受け、総通で運用許可を取る事にします。



 

ここまでの最新全データを公開して置きます。

RFADC_AMTX_audio-10.pdfをダウンロード

RFADC_AMPx12-10.pdfをダウンロード

7MHz_Si5351_VFO-1.pdfをダウンロード

AMTX-Si5351-VFO_7MHz.cをダウンロード

AMTX-ADC-DAC_decorder_10.cをダウンロード

Font5.hをダウンロード

Font6.hをダウンロード

Font12.hをダウンロード

Font5G.hをダウンロード

 

デジタル方式 AM送信機 (完成)へ続く

  

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