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2012年9月23日 (日)

TS-930 受信感度小

<カテゴリ:TS-930>

長い時間放置していたTS-930に久しぶりに電源を入れると受信感度が大幅に低下している場合があります。過去の修理事例をまとめて紹介します。

1.アンテナなし時のノイズも受信信号も非常に小さい。Sメーターもほとんど振れない。

電解コンデンサが劣化し、各回路が正常に動作していないもの。 通電を3時間くらい続けると自然に治ってきます。20年以上通電しなかったら、この症状がまず発生します。

2.アンテナを接続していない時のノイズは正常のようだけど、受信感度が悪い。Sメーターの振れも正常時の半分以下。

メカニカルスイッチの接点接触不良。

930rx1 アンテナ端子から入力された信号はふたつのメカニカルSWを通った後、BPF回路に接続されます。ひとつは受信用アンテナの切り替えSW。もうひとつはトランスバーターなどを接続したとき、アンテナ系の切り替えの為に設けられたSWです。いずれもスライドSWですが、このSWの接触不良が結構多く発生していました。SWの端子をピンセットなどでショートすると、受信感度が大幅に改善しますので、すぐに判断できます。SWをカチカチと何度も切り替えると良くなる事もありますが、完全ではありません。接点復活剤を注入して何度かSWを切り替えると直ります。  このようにして修理して3年以上経過していますが、問題の再発はありません。

Kure_splay_3

接点復活剤として、最近、あるOMさんから紹介していただいたスプレーを紹介します。 左の「KURE」印のスプレーです。 従来品よりベトツキが無く、他の部品への悪影響もかなり少ないようです。 基板の清掃にも使えると言うことから、64QFPのマイコンをはぎ取り、フラックスだらけの基板に吹きかけて、布でふき取るとフラックスを含めて除去でき、簡単に基板がきれいになります。 新しいマイコンをハンダ付けする時など、重宝しております。 サイズも2種類あり、価格もリーズナブルです。 多分、近くのホームセンターで手に入る事でしょう。

(2015年9月追記)

BPF回路のスイッチングダイオードの劣化。

各BPFをバンドSWにより切り替えますが、この切り替えはBPFの入力と出力に設けられたダイオードスイッチで行っています。このダイオードが劣化すると、感度ダウンやイメージ妨害排除能力のダウンが起こります。感度のダウンは聞いていたら判りますが、イメージ妨害排除能力のダウンは、単純に聞いていても判りません。受信感度をチェックしようと思い立ったときは、このスイッチングダイオードのチェックをお勧めします。私のチェックでは4台の修理品のうち2台に劣化したダイオードが有りました。海外の修理情報では、かなり頻繁に発生しているみたいです。

930rx2 感度がダウンしている場合、全バンドだったり、特定のバンドだったりします。感度が足りないと思われるときは、RFプリアンプ入力に、アンテナ信号を直接加えてみると判ります。左の写真に示すようにアンテナ入力線のコネクターとRFプリアンプの入力線のコネクターを基板から抜き取り、このふたつをお互いに接続すると、受信感度が大幅に改善する場合、ダイオードが劣化している可能性があります。 ただし、このテストの場合、BPFを通りませんのでダイオードが正常でも感度が少し良くなります。ほんとうに原因がダイオードであるかは、ダイオードをチェックしなければ判りません。

電源OFF状態で、すべてのダイオードの導通テストをします。BPFの周囲にあるダイオード全てを当たれば安心です。順方向の抵抗分が大きくなっている場合、そのバンドで感度小が発生します。逆方向の抵抗分が小さくなっていたり、ショートしている場合、イメージ妨害排除能力が著しく低下していると思われます。対象となるダイオードはD15からD35までです。

ダイオードの不良を発見したら、交換することになりますが、正規のダイオードは多分入手できないでしょうから、代替品としてロームの1SS133をお勧めします。このダイオードは名前はショットキーダイオードですが、VFが一般のシリコンダイオードとほぼ同じ0.6Vくらです。ロームのデータシートでは汎用品で高周波用とは書いてありませんが、構造がショットキーダイオードであることから、実際の接合容量値は0.8PFくらいしかありません。 値段も安いですから、大量に買い込んで色々なところで使用しています。日立の1S2076Aか東芝の1S1555Vかで市場が2分されていた時代にロームが殴りこみをかけてきたダイオードですねェ。

(参考:表面実装の場合1SS400がお勧め。)

ダイオードのチェックや交換が終わりましたら、次は全局発の周波数を正確に合わせなおします。 周波数の詳細はサービスマニュアルに記載されています。日本語のサービスマニュアルはWEB上で見つける事はできませんでした。英語版なら見つける事ができます。

「Welcome to the Kenwood Hybrid File page of N6WK」で検索すると、色々な資料をダウンロードできるページを見つけられるでしょう。 

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2014年5月追記

メイン機として使用中のTS930Sの受信感度がかなり低下しているようで、先日のWPXコンテストでも、SメーターがS9以上振れるのは野呂山山頂からの信号のみで、全てのDX局がS7以下でした。サイクル24も下り坂だからと諦めていましたが、どうもリグの故障みたいです。サブ機のTS850SでS5で聞こえる信号が930ではS1以下です。

ダイオードが壊れたのかとチェックすると、案の定、D22の逆方向インピーダンスが300Ωくらいしかありません。D22は14-18MHz用のダイオードですから、21メガ受信時、イメージ妨害排除能力はかなりダウンしていた模様ですが、これを1SS133に交換した後も、受信感度は、Sひとつくらいは改善したものの、TS850Sにはまだ及びません。 BPFとIF回路のトランスの同調ポイントがずれている可能性もありましたので、サービスマニュアルを頼りにこれらのコイルを再調整することにしました。

SSGが有りませんので、14MHz付近の周波数にセットしたアンテナアナライザーと急きょこの為に手作りしたATTをアンテナ端子との間に入れ、かつ930のATTを30dBに設定すると、SメーターがS7くらい振れています。この状態で、IFトランスのT3,T4,T5,L125,L126,L127のコアを回してSメーターが最大に振れるように調整した結果、SメーターはS9+10dBくらいまで振れるようになりました。

930rx1

930rf_2

次に、周波数を29MHz付近にして、Sメーター最大になるようL43を調整。周波数を21MHz付近にしてL45を調整、最後に周波数を25MHz付近にしてL44を調整しSメーターが最大に振れるようにしました。この状態でSメーターはS9+20dBまで振れるようになりました。  BPF回路の調整はスィープジュネレーターを使い、バンド全体がフラットになるように調整するのが正しいやり方ですが、私の場合、21MHz、24MHz、28MHzの各ハムバンドで感度最高になれば、ハムバンド以外はどうでも良いので、スィープジュネレーターが無くても問題ありません。

なお、プリント基板に印刷されているシルクプリントの間違いが結構あります。D32とD33は逆ですね。

この再調整で、比較したTS850Sより感度は良くなりました。 結局、オリジナル状態より30dBくらい感度ダウンが起きていたようです。  

今回、コメットのアンテナアナライザーCAA-500をSSG代わりに使いましたが、周波数はかなり安定しており、通電後30分以上たつと、受信時のビート音の変化は感じられなくなりました。受信機の調整は、この周波数安定度と、いかにして弱い振幅一定の信号を作るかにかかっております。 CAA-500のアンテナコネクター部分の出力レベルは全バンドでほぼ一定で約-2dBmくらいです。 これとATTがあればSSGの代用ができます。このTS-930Sは受信感度の劣化が定期的におこりますので、-20dBから-90dBくらいを連続可変できるATTを作ってしまいました。ジャンク箱の中にあった部品だけで作りましたので、ATTの絶対値は判りませんせんが、受信機能の調整道具としては、28MHz帯まで十分実用になります。

930att

 

930attschema_2

 

 

 

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2012年9月11日 (火)

TS-850S 28MHz 100WのTSS保障認定

<カテゴリ:TS-850>

古いTS-850Sを頂きましたので、修理して、使えるようになった事からこれを現行モデルとして工事設計書に追加申請することにしました。TSSに申請したところ、「28MHz帯は50W出力のはず。100Wにする為の具体的改造内容を説明しなさい」とコメントが付きました。

Img_0873tところが、私のTS-850Sはメーカー出荷時点ですでに100W出力に設定されており、改造したところはありません。メーカー出荷時点より100Wであるという証拠は付属している取説の中にあります。

取説の最後の方に、製品の仕様や、当時JARLの保障認定で局免許を受ける為の事項書と工事設計書の書き方見本があり、これらの記述はすべて28MHz帯は最大出力100Wと記載されています。

TSSには、メーカー出荷時点より100Wに設定されていた旨の説明と、この取説の抜粋をpdfファイルにコピーし添付しました。

結果、申請通り、TSSの保障認定を得る事ができました。

28MHzの最大出力が100Wで許可されるようになったのは1992年1月6日よりで、私のトランシーバーは1992年12月に製造されたもののようです。推定ですが、KENWOODは法律が施行された日以降の生産出荷分から最大出力を100Wに変更したみたいです。しかし、それ以前の生産品は50W仕様だったことから、TSSから前述のごとくコメントが付いたものと思われます。

貴方のTS-850Sの28MHzがすでに100W出力になっている場合、取説のコピーを添付するだけで、TSSは承認してくれるでしょう。

TS850S 28MHz 100W出力に関連する抜粋取説をダウンロード

もし、28MHzが50Wのままでしたら、周波数を29MHzにして、CWモードでCARをmaxにしておき、RFユニットのVR4を回して、100Wになるよう調整します。 (取説に記載済み)

100W機を移動に使うために50Wにしたい場合、裏側のスイッチを切り替える方法が取説の中で説明されています。  回路図を追いかけると、50W設定の時もVR4が機能するようになっていますので、28MHzを100Wに調整した後の場合、VR4で50Wに再調整する必要があるようです。   50W機として、TSSの保障認定を受ける場合、多分スイッチを50Wに設定したと説明するだけで、承認されるかも知れません。 以前、同じような設定ができるモデルで50Wの承認を取った事がありました。 (ただし、申請人の資格が2アマ以上でないと、却下されるという情報もあります。)  なお、この場合、すでに固定局で免許を得ているTS-850Sを50Wに改造して、移動局の免許を得る事はできません。移動局用にもう1台のTS-850Sを用意するか、固定局で免許を受けていたTS-850Sを撤去してから申請するしかありません。

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2012年9月 5日 (水)

CAA-500 検波ダイオード修理交換

<カテゴリ:アンテナアナライザー>

プリセット式アンテナチューナーの調整の為、アンテナアナライザーを多用しています。この為、故障も何回も経験しました。

私のアナライザーはコメットのCAA-500ですが、ブリッジ部分に配置された検波ダイオードの破壊が何回か発生しました。破壊が発生すると、その再現テストをして原因を突き止め、2度と同じ環境では使用しないことにしましたので、すでに2年以上経過していますが、以降、故障はありません。

コメットのアナライザーに限らず、全メーカーのアナライザーに共通する事ですので、参考になれば幸いです。

故障の症状:

アンテナ端子に、アンテナを接続していない時インピーダンスもSWRも無限大を指しますが、特にインピーダンスの指示が無限大(スケールオーバー)を指さなくなったり、50Ωのダミー抵抗をつないでSWRは1を示しますが、インピーダンスは、40数Ωしか指さないとか、ひどい時は、ほとんどゼロ付近しか指示しない。

このような症状になった場合、それは調整不良ではなく、検波ダイオードの劣化もしくは破壊です。 (SWRが1.0ではなく1.1以上を示している場合はダミー抵抗が原因の場合が多い。)

修理の仕方:

Caa500sensor 内部を開け、検波ダイオードを見つけて、テスターで導通テストします。検波ダイオードは通常3個ないし4個付いていますので、それら全てをチェックすると、逆方向での抵抗が異常に低いとか、両方向で導通がないとかなどの異常ダイオードを発見できます。

不良のダイオードが特定できて、かつ、その製品に使われている検波ダイオードと全く同じ品番のダイオードが入手できるなら、異常のあるダイオードだけ交換すればOKです。しかし、このモデルの検波ダイオードの品番は公開されていませんので、コメットに聞かない限り判りません。

とりあえずHFだけでも使えるようにと考えるなら1N60で代用できました。しかし、この場合、異常のあるダイオードだけでなく、問題のないダイオードも一緒に交換する事が必要でした。ただし、サイズが大きいのでハンダ付けに苦労します。あまりお勧めしません。

代替を探すときは、「高周波ショットキーダイオード」で検索をかけると見つかります。順方向電圧と端子間容量がなるべく小さいUHF帯以上で使用可能な物を選べば代用可能です。 私は手持ちのHSC285で代用しましたが、個別販売しているところが無く入手に苦労します。

HSC285の代替え品の情報はこちらにあります。

代替品の場合、VHFもUHFも高い周波数でインピーダンス表示が不正確になったり、3.5MHzなのに50Ω以外のインピーダンス指示が不正確になったりします。我慢できない人は正規品のダイオードに交換するしかありません。 

HSC285の場合、不良のダイオードのみ交換すれば、再調整は不要でした。

検波ダイオードが破壊する原因:(実際に発生した事例です)

  • 雷はまだ鳴らないけど、雷雨が始まる直前まで調整作業をしていた。受信機から時々放電時のノイズらしきものが出ていました。

  • アンテナ調整作業中に雪が降り出したとき、インピーダンスメーターの指示がどんどん下がっていくのを目撃した。そして約2分後にメーターは完全に振れなくなりました。ダイオードが完全に死んだみたいです。雪が降り続いている時より、降り始めのときが壊れ安い。

  • 黄砂がまっている日にアンテナ調整をした。信じられないかもしれませんが、この日、ダイポールから引き込んだオープン状態の同軸ケーブルのコネクター付近でパチ、パチという音が10数秒置きに発生し、アンテナをつながない受信機からその音に合わせて小さなノイズが出ていました。

壊れるのは、決まって、インピーダンス検出用のダイオードです。ダイオードを交換して、50Ωのダミー抵抗で確認すると、全バンド50Ωを指しますので、再調整はやっていません。

これらの事故は、ダイポールの調整を行っている時発生しました。ループアンテナの調整時は問題なしでした。 ダイポールの場合、 アンテナが帯電始めると、受信機から周期的に放電ノイズが聞こえます。このノイズが聞こえ始めたら、アンテナアナライザーをアンテナにつながないことです。

<後日談です>

受信機のTS-930のスピーカーから、いかにも放電ノイズらしき音が聞こえます。TS-930の電源をOFFしてもその放電ノイズは継続しています。 そして同じ机の上に置いてあるPC VAIOのUSB認識音が継続して聞こえます。アンテナチューナーコントローラーのSWノブに触ったら、静電気による感電を起こしました。急いで窓のカーテンを開けると、雪が降り出していました。雪による帯電は雷より怖いですね。

せっかくの便利グッズです。上手に使って長持ちさせましょう。

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