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2021年8月28日 (土)

PICでFFT (XC16でFFTにトライ)

<バンドスコープ、自作,PIC>

デジタルオシロスコープが基本動作としては、可能になり、ADCでデータを取り込む方法、そのデータをTFT LCD上に表示する方法が可能になりましたので、次はいよいよFFTにトライします。 WEB上で色々検索した結果、FFTのいろはも良く判っていない輩にとっては、どれも思考がついていかない為、PICで実行が可能かも知れない大浦先生のC言語によるパッケージを検討する事にしました。 このパッケージは、標準的なC言語で作成されており、該当する変換関数を1回実行すれば、回転因子の作成や、ビットリバースなど全部関数の内部でやってしまい、処理完了したら、入力した同名の配列にFFT結果を返すというもので、中身をよく知らない私には打ってつけのソースです。

さっそく、先生のホームページから、zipファイルをダウンロードし、解凍すると、沢山のファイルとテスト用のサンプルまで同梱されていました。

fftsgと言われる、大浦先生のソースは、XC16でも問題なくコンパイルできます。 動作テスト以前の問題として、全ソースがXC16でコンパイルできるか試したところ、すべてOKでした。

今回、これらのソースをインストールするのは、PIC24FJ64GA002です。 プログラムメモリーは64Kありますが、RAMが8Kしかなく、PICKit3経由でターゲットPICを決め、いざ、コンパイルすると、データメモリー不足で即エラーになります。 トライしたのは、沢山のプログラムの中で、一番高速だと言われるfftsg.cでした。 浮動小数点がdoubleで表現されているので、これをすべてfloatに置換してトライしましたが、やはりダメでした。 そこで、プログラムをfft4g.cに代えてトライすると、メモリー使用量88%でやっとコンパイル成功しました。 大浦先生の解説では、このプログラムが有名なCooley-Tukey 型 FFTで基数型とも言われるものらしく、コンパイルに失敗したソフトはこれより高速なSplit-Radix型と言うものらしい。

高速に越した事はありませんが、コンパイル出来なければ話になりませんので、今回はfft4g.cで進める事にします。

先に、FFTが成功し、例の320x240TFT LCDに表示できたところを紹介し、そこまでの工程を以下説明します。

2ksqw_with_windowfunc

Wg_2k_sqw

左上が、2KHzの矩形波をFFTして、そのスペクトルを表示したものです。 源信号は矩形波ですので、奇数次の高調波がきれいに並んでいます。 右上が、ウェブジェネレーター(WG)で発生させた2KHzの源信号です。 左上の画像で、水平方向は、2KHzスパンでメモリを合わせましたが、垂直方向は校正されていません。単位はdBです。

このc言語のパッケージは、オリジナルがdoubleの浮動小数点形式で作成されており、小規模なマイコン用ではなく、windows95が出たころのPC用に作られていると思われ、メモリーはかなりセーブしているように見えますが、16bitのPICには、まだ無理があります。 そこで、浮動小数点をfloatに代えて、メモリーの量とスピードをなんとかカバーしなければなりません。

FFTを実行する場合、サンプリング数が最小分解能を決めますが、この数は2のn乗でなければなりません。 今回は、LCDの横のピクセルサイズが320しかありませんので、これ以上多くしても表示は同じになります。 そして、320以内に収まる2のn乗の最大値は256ですので、FFTも256個のサンプル数で進めます。 また、サンプリング周波数ですが、バンドスコープで表示しようとしているIF帯域のキャリア周波数が約9.8KHzですから、最高で20KHzまで表示出来たらよいので、サンプリング周波数はその2倍の40KHzくらいで良い事になります。

従い、PICのADCはタイマー3から40KHzの周期で割り込みをかけ、そのたびにADCから10bitのデータを取り出し、これを256個だけメモリーに格納し、割り込みを中止した後、このデータをFFT関数に渡してFFT処理してもらいます。

FFT関数はa[]という配列変数に、「実数」「虚数」「実数」「虚数」・・・の順にサンプル数の2倍の配列数となっており、今回はa[512]の配列となります。 今回のFFTでは、虚数は使いませんので、ADCで得られたfloatのデータを実数部分に、0.0のデータを虚数部分に代入したあと、FFT関数に渡してやれば良いわけです。 下のfor文がそれを実行しているところです。 ADCの出力は符号付きintで取得し、これを512で割って、floatに変換し、a[]に代入しています。 途中のadfloatの変数は、CASTの不安定さを取り除くために、挿入したダミー変数です。これを中継して行わないと、時々プログラムがおかしくなります。

for (k=0;k <256;k++) {
adfloat=(float)ADdata[k]/512;
adfloat = adfloat * hanning256[k];
a[k*2]=adfloat;
a[k*2+1]=0.0;
}

2ksqw_no_windowfunc

 hanning256[k]はハニング窓関数で、この処理をしていないと、左の画像のごとく、低い周波数のすそ野が広がってしまいますので、必ず実行します。

このハニング関数は、エクセルで計算し、それをhanning256.hというファイルに編集してあります。

エクセルファイルの実物は、後で、ダウンロードできるようにしておきます。

このパッケージの中には、FFTの関数として、以下の2つの関数が紹介されています。

cdft: 複素離散フーリエ変換
rdft: 実離散フーリエ変換

両方とも実験したところ、スペクトルが細くなるのがcdftの方で、rdftの場合、窓関数を掛けても左上の窓関数なしのcdftくらいにしかなりませんでした。 また、両方ともメモリーの使用量は同じくらいでしたが、rdftの方が、処理速度が速いようです。 しかし、この実験ではcdftで進行します。

FFTを実行すると、a[]の中に結果が格納されて終了しますが、このデータの中で周波数スペクトルを表す実数はプラスとマイナスが有り、256ポイントの0から127ポイントまでが正の周波数を表し、128から255ポイントまでが負の周波数を表します。 今回の目的は0から20KHzまでの周波数スペクトルを256ピクセルのグラフで表す事ですので、負の周波数のデータが必要ありません。 従いa[]の0番目から127番目までの実数データだけを二乗平方根して、これを256ピクセルに棒グラフで表せれば良いのですが、グラフ画面のチラツキが激しく、安定したスペクトルを見る事が出来ません。 ちなにみ、実数の隣にある虚数を含めて二乗和の平方根とすると、かなり安定した、グラフが得られます。 バンドスコープとしては、この安定した状態のほうが見やすいので、この方法でグラフ表示する事にします。

用意したLCDの表示ピクセルは256ですから、結果的にふたつのピクセル列に同じデータを書き込む事になります。256のピクセルを有効活用しようとすれば、ADCのサンプリング数を512にすれば良いのですが、それを実行すると、即メモリー不足でエラーになりますので、このPICでは出来ません。

この、グラフの縦の目盛は対数としますので、二乗和は行いますが、平方根は実行しません。 この結果対数計算値は平方根を実行した場合の2倍になりますので、この結果に10を掛け算すると電圧レベルのdB値になります。

for (k = 0;k <= 127;k++) {//FFT結果の負の周波数は無視する。
j0=a[k*2];j1=a[k*2+1];
lvl=(int)4*(10*log10f(j0*j0+j1*j1));

lvl = Goffset - lvl;
if (lvl > DSdata[k]) {
      write_HVline(m,DSdata[k],m+1,lvl,backcolor);//xs<=xe ys<=yeの事
     }
     write_HVline(m,lvl,m+1,208,linecolor2);//xs<=xe ys<=yeの事
     DSdata[k] = lvl;
     m=m+2;
    }

 
この辺の計算式は1行で済ませるより、一度変数に格納してから、処理させると、実行時間が早くなるようです。

また、X方向に2ピクセルだけグラフデータを棒グラフで書き込む前に、前回書き込んだデータを消しますが、消す範囲は、今回のレベルより前回のレベルが高い場合のみで、かつ今回分から高かった表示のみ消していますので、グラフ画面全体のチラツキも最小限になっています。

ここまでやって先に紹介したようなスペクトルグラフが得られるわけですが、その処理時間は、実用レベルとはかけ離れていました。

FFTの計算時間は約78msecかかりました。

FFTの計算を含んだLCD描画時間は約120mescでした。

この時間では、実用は無理です。少なくと、現在の120msecを30msec以下にしないとダメでしょう。

結局、Tcyが16MHzの16bitマイコンでは、無理と判りましたので、もっと早く実行できるPIC用のソフトをさがすか、32bitマイコンに乗せ換えるか考えねばなりません。

今回の配線図です。

Fft_test_schema

2ksqw_final

上は、表示レベルを拡大したもので、縦方向のメモリが10dB/divくらいになっています。

この実験に使ったすべてのソースファイルです。 MPLAB Xのプロジェクトは左のようなファイル構成になっています。

Mplab_x0

bandscorp_float.cをダウンロード

fft4g_float.cをダウンロード

FFTexec_float.cをダウンロード

Hanning256.hをダウンロード

Font5.hをダウンロード

Font6.hをダウンロード

ハニング窓関数を作成するエクセル Hanning_coef.xlsxをダウンロード

 

 

 

 

  

 

7mhzband_scrp_0

完成ではありませんが、20KHzまでのスペアナができましたので、自作のSSBトランシーバーの2nd IFの出力につないでみたのが左の画像です。 使ったプログラムは上のソースファイルとは異なる実験用なので、上のソースファイルで左の画像が得られるわけでは有りません。

キャリア周波数が9.766KHzですから、その周波数を中心に+/-4KHzくらいは、反応があるはずと見てみると、LSBとUSBが反転しています。 これは、その通りで7MHzのLSB信号は、2nd IFでは反転し、USBになっていますので、この場合、負の周波数を表示しないと、グラフの周波数が逆になってしまう事を納得。

また、真ん中より少し上に淡い水平一直線のオビが見えますが、これは、ウォーターフォールのディスプレイを実験的に行ったものです。 たった5行のウォーターフォールですので、何がなんだかわかりませんが、このPICの残り少ないRAMを使って作りましたので、これが限界です。 それと、ウォーターホールを含めた、MAINルーチンの1周時間は140msecくらいになってしまい、スペクトルが見慣れたPCのバンドスコープのようには見えません。 この第2IF信号を使ったバンドスコープをしばらく見ていましたが、表示される範囲は、ルーフィングフィルターとなる24MHzのクリスタルフィルターの帯域内のみで、+/-3KHzが表示されるだけです。 HDSDRを経験した身としては、面白くありません。 せっかく作るなら、せめて+/-50KHzくらいはカバーしたい。

 

これらの課題を抱えて、実用的なバンドスコープをどうやって作るか再検討する事にします。

 

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2021年8月22日 (日)

PICでオシロスコープ 2

このプロジェクトを始めたのは、自作のトランシーバーにバンドスコープを追加する目的でしたが、その途中のオシロスコープが中途半端に出来上がると、せめてオーディオ信号くらいは、表示できるオシロに仕上げられないかと、開発を継続する事にしました。

前回、PIC24FV32KA302というマイコンで、オシロスコープの基本動作を確認し、LCDに描画された波形を静止する検討を行いましたが、RAMが2Kバイトしかなく、静止する事はできましたが、その頻度が少なく、画面のチラつきが目立つ状態でした。 そこで、RAMが8Kバイトある、PIC24FJ64GA002に変更して、再挑戦です。

Oscv2_schema

 

上が、今回の回路図です。PICは変更してあります。 そして、描画された波形を静止させるためのトリガレベルの調整機能を半固定抵抗で追加してあります。 このレベルはLCD画面の左側に赤色のラインで位置を示し、かつ左下に、ADCの出力レベルをそのまま数値で表示してあります。 この数値はソフトを変更する事により電圧値の表示に変更は可能です。

Osc2_1khzsin

Osc2_10khzsin_2

左上が、Seep時間 500usec/divでの1KHz、右上が100usec/divの10KHzの波形です。

このマイコンのADCは最高500KHzspsのスピードまで可能ですが、右上の時は、457KHzspsくらいでスイープしており、10KHzの波形もなんとか見れる状態になりました。 まだ、スイープタイムの可変機能が有りませんので、プログラムを書き換えて取ったデータです。

この改良型オシロは、デジタルデータを1024ポイント分取り込み、その中で、予め設定したトリガレベルを10番目から712番目までの中から探し、そのメモリー位置から255メモリー分のみLCDへ表示します。 前回のオシロの実験中にも、この機能を入れて検討を行いましたが、検索できるメモリーの範囲が先頭から69番目くらいしか出来ず、たまに、描画できる波形を検出して、LCDに表示しますが、その頻度が1秒間に数回程度でした。 今回は712番目まで検索範囲を拡大しましたので、前回より10倍の頻度で静止波形を描画できるのですが、実際は5倍くらいにしかなりませんでした。 原因を調べるも、良くわからず、不明のまま、完成度を上げていく事にします。(原因が判りました。後述します。) それでも、トリガレベルを起点にきれいに静止した波形を見る事が出来ます。 このソフトは立ち上がりのトリガレベルしか検出していませんが、ソフトをスィッチで選択できるようにし、立ち上がりも、立下りのエッジも検出可能にする事は可能です。

このテストボードには、スイープタイムや入力レベルの設定回路は、付いていませんが、ソフト的には、未使用i/oを使用して取り込み可能です。

また、前回のソフトでは、格子メモリを描画する為に、かなりの時間を必要としていましたので、以前、アンテナアナライザー開発時に得たいくつかの高速描画手法を取り込みました。 斜めのラインは従来のままですが、水平、垂直のラインに限っては、前回のソフトより4倍以上速くなっています。 その上で、波形を3回書き換える毎に格子目盛を再描画して、全体の描画速度を上げてあります。 また、LCDへの書き込みもLCDのWindow機能を最大限に生かすべく、手直ししてあります。

デバッグの為、ADCが出力したデータを数値でLCD上に表示させてみると、同じ数値が二つならんで表示されています。1024ポイントのデータを取得したつもりでしたが、実際は512しか取得していない事が判りました。 原因はADCをスキャンして、入力信号とトリガーレベルを同時に取得した為に発生したようです。 トリガーレベルの取得をやめると、データの取得数は1024になります。 トリガがかかる頻度が予想の半分くらいしかないのはこれが原因でした、

Osc3_1khzsin


そこで、タイマー3による割り込み時は、入力信号のみ取得し、トリガーレベルは、タイマー3による割り込みがかからない時間に、単独で取得する事にしました。 データの更新がほんの少し長くなりますが、LCDに表示される波形が滑らかになりました。 

左の画像は、対策後の波形で、以前の波形より滑らかになっているのが判ります。

 

トリガーレベルの検出頻度が上がって、描画回数は増えたのですが、旧波形をバックグラウンド色で再描画する事により一旦全部消して、新しい波形を再描画するプログラムでは、波形のチラツキは解消されませんでした。 そこで、以前、アンテナアナライザのアナログメーターの指針描画の手法を取り入れ、旧波形のひとつの直線を消したら、同じ列に新たな直線を即書き込むようにプログラム変更しました。 すると、うそのようにチラツキはぴたりと止まり、きれいな静止波形が描画され続けます。 

斜めの線の描画速度を高める為に、線の太さを1ピクセルに限定した高速関数をふたつ作り、従来の関数との描画時間の比較を行いました。

斜め線は開始点がx=20,y=50 終点がx=250,y=150で、左うえから右下へ斜めに走る線です。

① write_Line(m,j0,m+1,j1,0,linecolor);//開始x,y 終了x,y 線幅(0or1) 色
② write_HSLine(m,j0,m+1,j1,linecolor);//開始x,y 終了x,y 色
③ Bresenhamline(m,j0,m+1,j1,linecolor);//開始x,y 終了x,y 色

従来の線幅を変えられる①の関数の場合、描画時間は6.5msec

高速描画の②の関数では、 2.8msec

ブレゼンハムの③の関数では、2.3msec

でした。ただし、③はまだ完成度が低く、線が連続せず、破線としか描画出来ていません。

下の画像は左が①の関数、右が②の関数です。、

 

Normalspeed2khz

Highspeed2khz_2

右側の正弦波はピーク付近で、うまく描写出来ていない波形となっております。 また、チラツキはほとんど無く、差はありません。 結局、オシロスコープの波形表示としては、描画速度より、線の太さを変えられる①の方がメリットがありそうです。 ちなみに、線幅を2ピクセルとした時の先の斜め線の描画時間は8msecで2倍になることはなく、波形がきれいに見えます。

従来の①のみのソース oscillo_64GA_1.cをダウンロード

②と③を選択できるソース oscillo_64GA_hs1.cをダウンロード

Font5_6.hをダウンロード

 

斜め直線では、上記のような描画時間となりましたが、実際の正弦波を描画させた時の時間を検討してみました。

検討に使ったソース oscillo_64GA_hs2.cをダウンロード

この中で、次の6つの関数を計測しました。 いずれも2KHzの正弦波を1画面描画する条件です。

① write_Line(m,j0,m+1,j1,1,linecolor);//開始x,y 終了x,y 線幅(0or1) 色// 
② write_HSLine(m,j0,m+1,j1,linecolor);//開始x,y 終了x,y 色
③   write_HS2Line(m,j0,m+1,j1,linecolor);//開始x,y 終了x,y 色
④   Bresenhamline(m,j0,m+1,j1,linecolor);//開始x,y 終了x,y 色
⑤   write_oscline(m,j0,j1,linecolor);
⑥   write_osc2line(m,j0,j1,linecolor);

①はLCDの全画面に、かつ斜め線の角度の制限なしで線幅を指定できる関数で線幅1ピクセル時の時間は49msec、X及びY方向に各2ピクセル、計4ピクセル描画時63msec。1ピクセルの場合、他の1ピクセル描画の関数と変わりませんが、2ピクセルの場合、X,Y各方向へ2ピクセルなので、水平、垂直いずれの線幅も2ピクセル分となり、特に水平が含まれる矩形波の描画は一番きれいです。

② LCDの全画面に角度の制限なしで描画する線幅1ピクセル専用の関数です。描画時間は22msec。

③ ②の線幅2ピクセル版です。 描画時間は31msec。 2ピクセルはY方向だけで、斜め線や水平直線は2ピクセルで描画しますが、垂直線は1ピクセルの線となります。

④ ブレゼンハムの関数で、線幅1ピクセルのみです。描画時間は10msec。 ただし、破線にしかなりません。 多分、ソースの詰めがまだ甘いのでしょうが、破線を実線に改善すると、当然時間も増えますので、単純見積もりで②と同じくらいにしかならないと思われます。

⑤ オシロスコープの描画ではX方向は常に1ピクセルしか増えないので、その理屈を利用して、掛け算と割り算を無くした関数で、線幅1ピクセル専用です。 時間は12msec。 

⑥ は⑤のアルゴリズムのままで、2ピクセルの線幅にしたものです。描画時間は23msec。2ピクセルはX方向のみで、水平線は1ピクセルにしか描画されません。

Originalline

Original2line

左の画像の内、左側が①の関数による線幅1ピクセルの2KHzです。 右側は、同じく①の関数で線幅2ピクセルです。

この①の2ピクセルが一番きれいに波形を描画出来ています。

Hsline

Hs2line

 この列の左側が②の関数、右側が③の関数になります。③の関数は2ピクセルの線幅なので、斜め線はきれいですが、水平線は1ピクセル時と同じとなります。

 

 

Oscline

Osc2line

この列の左側は⑤の関数による線幅1ピクセルの波形です。1ピクセルの波形では一番きれいに見えます。

右側が⑥の線幅2ピクセルの波形です。③よりラインが滑らかですが、水平線は1ピクセルでの描画です。

 Brezenline

最後の左の1枚が④のブレゼンハムのラインで破線になっています。

結局、実用的オシロスコープの描画関数は波形のきれいさを追求したい場合、①の2ピクセルが最適。 描画の速さを追求したいときは⑤という選択がありそうです。

 

 

Osc2y_2ksq

Osc2_2ksq

気になって、⑥のX方向に2ピクセルした時の矩形波と、Y方向に2ピクセルした時の波形を確認してみました。 左がX方向、右がY方向を2ピクセルにしたものです。 クローズアップすれば、差が判りますが、遠くから見るとどっちもあまり変わりませんでした。

 

これらの検討結果は、本格的なデジタルオシロを自作するときの参考にする事にします。 

 

PICでFFT (XC16でFFTにトライ)へ続く

  

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2021年8月14日 (土)

PICでオシロスコープ

「デジタルオシロ 自作 TFT LCD」

自作のSSBトランシーバーにバンドスコープを追加する為には、デジタルオシロスコープで、タイムドメインのデータを収集し、このデータをFFTにて、周波数ドメインに変換して、TFT LCD上にそのスペクトラムを表示させる必要がありますが、前回、このTFT LCDをPICマイコンで制御できるところまでできました。 今回は、アナログ信号をADコンバーターで取り込み、デジタルデータとしてメモリーに記憶させる部分の検討を行います。

バンドスコープの構成上は信号波形をLCD上にグラフィックで表示する必要はないのですが、デジタルデータが目標通り取り込めたかどうかを確認する為に、取り込んだデータをLCD上に表示する事で目標達成とします。

使用するPICマイコンはLCDの駆動に使ったPIC24FV32KA302をそのまま使います。 このマイコンのADコンバーター(以下ADC)は12bit対応ですが、最高サンプリング周波数は100KHzとなっています。 バンドスコープの対象周波数範囲は最高で20KHzであり、100KHzのサンプリング周波数でも十分なのですが、内蔵するRAM容量が2Kバイトしかなく、本格的なデータ収集器にはなり得ません。 その為、基本機能を実現する為のテストバージョンとして、デジタルオシロスコープを作る事にします。

Oscv2_schema_2

 

上が、今回のデジタルオシロテストバージョンの回路図です。 PICの品番はPIC24FV32KA302でRAM2Kバイト品です。

デジタルオシロを安いPICとLCDでいかに実現するかは、実際にやりながら、カットアンドトライしていく事にしました。

AD変換は12bit対応のままで、最高速度で変換させるように設定すると、約75nsecで変換完了する事が判りました。ただし、この場合、AD入力に接続される側の出力インピーダンスを極力小さくして、リニアリティの確保をしなければなりません。実際は低出力インピーダンスのOPアンプで駆動必要ですが、実験では、最高レベル付近でのリニアリティが悪化する事を承知で、発振器の出力を直結です。 発振器の出力インピーダンスは、多分120Ωくらいですので、大きく悪化する事は無いと予想しています。

私は、実際のデジタルオシロがどのような構成で動作しているのか知らないので、表面上の動きから推測した以下の工程で、実現する事にしました。

① ADCはタイマー3によるトリガーで、サンプリングを開始するようにし、タイマー3の周期を変えて、サンプリング周期を設定する事にします。

② タイマー3の割り込みで得られたADCのデジタルデータは、320ワードのメモリーへ記録させます。 サンプリング周期が100KHzくらいですから、C言語で書かれたソフトでも十分間に合います。 メモリー一杯データを記録したら、一旦データの取り込みを中止します。

③ メモリーに記録されたデータをLCD上にグラフとして表示させます。 表示は各メモリーごとのデータを線で結ぶ直線補間方式としました。

④ メモリーのデータを表示し終えたら、また、①に戻りこれを繰り返します。

⑤ ただし、このままでは、先に描画したグラフデータが残っていますので、2回目のグラフデータを書く前に1回目のグラフデータを消す必要があります。 消す方法は、③の書き込み処理をバックグラウンド色で再描画する事により消します。 前のデータを消す方法として、グラフ描画エリア全体を、バックグラウンド色で塗りつぶす方法もありますが、これは結構時間がかかり、グラフィックのチラつきの元になりますので、採用しません。

⑥ オシロスコープですから、LCD画面上に格子のメモリが必要になりますが、今回使用するローコストのLCDグラフィックボードのメモリーは1面分しか有りませんので、この格子パターンも③や⑤の描画で消えてしまいます。従い、⑤のグラフ消し完了後、毎回格子模様を再描画する事にします。

⑦ このオシロスコープは、トリガーなしで、繰り返し描画をおこないますが、そのままでは、前回のグラフデータと同期がとれなく、見た目では、波形が左右に流れる現象が発生します。 この為、繰り返し描画を停止させて、その瞬間の波形のみを表示し続けられるスィッチを追加してあります。

⑧ 通常のオシロはいわゆる「シンクロスコープ」であり、例え繰り返し描画でも、そのトリガーレベルを調整する事により、波形が流れずに、静止して見える機能がありますが、このトリガポイントを検出するには、メモリーが不足し、完全に静止した画面が得られません。 記憶させるメモリーの量を増やし、全く同じ位相のデータを、メモリーの中から拾い出し、それを、続けて描画していけば、波形は静止するはずですが、2Kのメモリーでは実現できませんでした。 これは、PIC24FJ64GA002のRAM 8Kバイト品を入手してから、再検討する事にします。

これらの試行錯誤の結果から得られたLCDの画面は以下です。 ①②⑤⑥③⑦①②・・・の順序で繰り返し動作し、⑧は処理していません。

Iosctest1khz

Iosctest10khz_2

左上が1KHzの正弦波、右上が10KHzの正弦波です。 直線補間していますので、16KHzくらいまでは、それらしく描画できますが、実用的には10KHzくらいまでです。 この時の水平方向のsweep時間をグラフの格子メモリの端から端まで2msecとすると、ADCサンプリング周波数は約133KHzで、PICのスペックをオーバーしていますが、なんとか表示出来ています。

実験に使ったソースは以下です。

oscillo_0.cをダウンロード

Font5_6.hをダウンロード

下の写真は蛇の目基板に組んだテストバージョンのオシロで矩形波を表示させているところです。

Iosctestallview

RAMが2Kしかなかったので、8KのPICに変更します。 この中で、直線や斜め線を描画する、アルゴリズムも改善し、LCDのイニシャライズも修正したプログラムを「PICでオシロスコープ2」 で使っています。

PICでオシロスコープ 2  へ続く。

 

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2021年8月 1日 (日)

LCD SPC-S95417-AAAをPICでドライブ

SDRのトランシーバーが実用レベルになりましたので、現在は付いていない、バンドスコープの自作にトライしようと考えておりますが、それを実現する為には、デジタルオシロスコープを製作し、記録されたデータをFFT処理して、その結果をLCD上に表示する必要があります。

そこで、まず、この表示用LCDを入手し、そのLCD上に自由に描画できる必要がありますが、以前、アンテナアナライザに採用した、320x240のLCDはそのノウハウを得とくしているものの、値段が1900円くらいまで上昇し、かつ40pinのフラットケーブル用コネクタとこれを半田付けする基板を必要とします。コネクタは通販で入手できますが、これを実装する基板はカスタムとなり、新作するしか有りません。 1回、かつ1台だけの基板を作る訳にもいかず、このLCDはあきらめて、aitendoで扱っている基板付きの中華LCDを使う事にしますが、このLCDに対しては今までのノウハウは通じませんので、まずは、使いこなす事から始めます。

選択したLCDは★2.4インチ★TFT LCD with 基板 [LCD9325D8A]と言う品番で、1050円(税抜き)で売られていました。 動作チェックはされていましたが、PICでは無いので、ソフトは一から作る必要があります。 そこで、このLCD部分の仕様を確認しようと、リンク先をクリックすると、エラー。

インターネットで色々調べると、このLCDはSPC-S95417-AAAという品番の中華製で、携帯ゲーム機に使われていたもので有る事がわかりました。 pdf版の仕様書を入手し、ドライブIC名を探すと、ILI9325というICらしい。 そこで、このILI9325の仕様書を探し出し、ソフト製作を開始する事にしました。

Lcdtestschema0_3

上がLCD実験用のテスト回路図です。 バンドスコープに使用するPICはdsPIC33CHかPIC32MZレベルの32bit品になりますが、とりあえず、16bitのPIC24FV32KA302で、制御の仕方を勉強する事にします。

aitendoの製品は、LCDと基板は半田付けされておらず37pinのFFCを基板に自分で半田付けする必要があります。 フラックスを少々塗ったFFCを電極に張り付け、セロテープでずれないように固定してから、60Wの半田こてで半田を流しこんで、さっと半田切りを行って、目視でOKの判断をした後、通電しても、バック照明用のLEDは点灯しますが、LCD面にはなにも表示されません。 10倍の拡大鏡を使い、37pin全部の半田付け状況を確認したところ、極細の半田くずでショートしている端子が2か所。これを解消して、やっとLCD上になにか表示されるようになりましたが、これから先が悪戦苦闘の連続でした。

 

このLCDのイニシャライズプログラムをインターネット上で探し出し、とりあえず、それをそのままコピペしたのですが、縦横のスキャンやカラーが思ったように表示されません。 やむなく、ILI9325の英文仕様書の関係しそうな項目をGoogle翻訳で訳し、何度も読み直して、やっとわかった事は、このICの標準姿勢は縦長であるという事でした。 私はこれをオシロやスペアナにして使うつもりなので、横長が標準です。 それが判ると、横長に置いて、左から右へ、上から下へスキャンできるようになりましたが、カラー設定が仕様書に記載されたBGRの設定と逆になってしまいました。 結局、この設定が反転した理由が判らないままですが、動作的に異常はないので、このまま行く事にしました。

グーグル翻訳の場合、pdfの文字列の改行の部分で、文章終了と判断する為、日本語の並びに不自然さがありますが、せっかく作った翻訳仕様書ですので、公開して置きます。

ILI9325の和文翻訳仕様書(抜粋版) ili9325.docxをダウンロード

Lcdtest0

左の写真が完成したテストプログラムによるLCD表示のサンプルです。

表示している、文字は、過去PIC用に作成した自作のフォントです。 黄色のフォントは今回、このLCDに合わせて新作しましたが、コードジェネレーターのバグなのかわかりませんが、スペースのみゴミが表示されます。 その内、改善しようと思います。 写真では、LEDシリーズ抵抗として22Ωが見えていますが、この裏側に10Ωの抵抗が付いており、トータル6.8Ωの抵抗となっています。

LCD表示の速さは、使っているPICのクロックが32MHzの為、ILI9325のspecぎりぎりになっていません。 もっと早いクロックでもディレーを挿入する事なく動作するかも知れませんが、それは、実際にバンドスコープを作る時に確認する事にします。

 

黄色の文字のスペースにゴミがある原因を調べていましたら、X方向のbit数が8を超えるフォントの構造に誤りが有る事が判りました。 この構造の誤りがある状態で、LCD上に正常に文字を表示できる、表示プログラムも誤っている訳で、過去作成したすべてのプログラムが間違っている事になります。

今回、フォントコードジェネレーターを作り替え、X方向のbit数に関係なく、正常に構成出来るようにしましたので、8bit以上のフォントファイルも作り替えました。 表示プログラムもフォントのサイズごとに作っていたものを、ひとつの関数で全部処理出来るように変更しました。

テストプログラム lcds95417aaa_0.cをダウンロード

関連フォント Font5_6.hをダウンロード   Font9.hをダウンロード   Font12.hをダウンロード

RAMが2Kしかなかったので、8KのPICに変更し、直線や斜め線を描画する、アルゴリズムも改善し、LCDのイニシャライズも修正したプログラムを「PICでオシロスコープ2」 で使っています。

PICでオシロスコープへ続く

 

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