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2020年7月26日 (日)

dsPICでSSBトランシーバー(CW,AMモード追加)

カテゴリ<SDR>

dsPICを使い、SSBジェネレーターと、周辺の回路を検討し、リニアアンプ以外、目標の機能が動作するようになりました。 動作確認できたのは、LSBとUSBの送受信機能だけで、当初の構想である、CWとAMのモードはまだ実装されていませんでした。(前回の記事

次は、CWとAMモードをdsPICの中に追加します。

Modelist_2

上の表は、dsPICの中に組み込まれた、Pre BPF、MIXER、Post BPFがモードにより、どのような動作をするかまとめたものです。 例えば、LSB送信モードの時は、200-2800HzのBPFを通った後、サブキャリアとのミキサーを経て、第2IFのUSBバンドのみを通過させ、LO2(24MHz)との第2ミキサーへ供給されます。 LSB受信モードの場合、PreとPostのBPFが逆になって音声信号を復調します。

CW受信時は、SSBのときと全く同じ動作ですが、Pre及びPostのBPFがCW用の狭帯域となります。 そして、受信の時だけ、LO2の周波数を950Hz低い方へシフトします。 CW送信時は、ADCの出力は使用しませんので、Pre BPFをスキップした後、サブキャリアと直流を掛け算して、約9.8KHzのキャリアのみをミキサーで作り、Keyでon/off出来るようにした後、これをAM用のPost BPFを通して、第2ミキサーへ供給します。 CWのトーン周波数は、当初、750Hzに設定していましたが、ちょうど、スピーカーの周波数特性のディップポイントにはまり、音量が伸びません。 そこで、低周波を手でスイープさせて調べたところ、950Hz付近が一番音量が大きくなる事がわかりましたので、950Hzに変更しました。 このスピーカーの特性も一種のフィルターですから、有効活用です。

Dsp110pctmod

AMの場合、ADCの出力にDC成分を加算して、サブキャリアとミックスすれば、AM信号が得られますので、ADCのレベルとDC加算レベルを調整して、ピークがSSBのピークを越えないAM信号を作り、AM用のBPF(LSB.USB全帯域をカバーするBPF)を通した後、第2ミキサーへ供給します。 この様にしてDSPの中で計算により作られたAM信号は、後段のリニアアンプが飽和しない範囲ならオーバー変調しても帯域幅が広がらない(スプラッタが発生しない)というメリットが有り、例え包絡線検波による復調でも、歪感が少ないという特徴があります。 左上の波形は約110%の変調波形です。 オーバー変調したAM波を聞いても、モガモガ音が少しづつ増えるだけです。  一方、AM受信は、Pre BPFのAM BPFを通した後、その出力のマイナス信号をゼロにします。 ダイオードによるAM検波と同じ理屈で、キャリアの正電圧のみを取り出し、この後にあるミキサーはスキップさせます。 当然、この信号には、キャリアのエンベロープ以外に多くの高調波を含みますが、これらは、Post BPFで除去され、音声信号のみが取り出せます。 この検波方式は、理屈では判っていましたが、はたして、ダイオードによる半波整流をソフトウェアで実行して、ほんとに音声信号が得られるのか不安でした。しかし、dsPICにその仕掛けをすると、ちゃんと音声信号を復調できました。 dsPICに入力された信号の1/2の振幅しか使いませんので、SSB復調時より音量が約半分になります。 よって、AMの時だけ、DACの前でデジタル信号の振幅を2倍にしています。


各モードの送信時のdsPIC出力のスペクトルは以下のようになりました。 上から順に、LSB、USB,CW,AMです。 出力レベルは、dsPICのDACが飽和しない安全なピークレベルに合わせてあります。 これらの確認をする上で、Wave Spectraは大変有効です。

Lsb_tx1

Usb_tx1

Cw_tx1

Am_tx1

CW以外、すべて1KHzでの変調ですが、1KHzのレベルはマイクアンプのリミッターレベルより1dBくらい低いところに設定してあります。 リミッターが動作するレベルでは、歪が3%くらいになりますので、その影響が出ないようにして測定しました。 リミッターIC SA2011の歪特性は、あまり良くなく、これよりさらにレベルを下げても、1%以下にはなりません。 このリミッターICが無い時は、0.3%以下の歪になります。

 

LSBとUSBのデータから、逆サイドバンドの減衰量は-70dB以上ありますので、問題なしです。 また、サブキャリアの漏れは、USBよりLSBの方が悪いですが、それでも-70dBくらいはありますので、これも問題なしです。 最初、このSSBのPost BPFはPre BPFと同じ251タップで設定していましたが、 モードを切り替える時、dsPICをresetする事にしましたので、PreとPost BPFのTAP数を合わせる必要がなくなりました。 よって、音声帯域の BPFを201TAP、サブキャリア帯域の BPFを301TAPに変更しました。

CWは、余計な信号が全くないきれいなスペクトルです。

AMは、100%変調した時のピークレベルがSSBのピークと一致するように、キャリアレベルと変調信号のレベルを調整しました。 この状態は、SSBの最大出力が10Wの場合、AM時のキャリア出力は2.5Wになる事を意味します。

Txout_lsb

Txout_usb

Txout_am

上の波形は、7MHz RF出力で、左からLSB、USB、AMです。振幅は、オシロスコープの入力ATT値が異なりますので、無視してください。

Image_lsb左は、7MHz LSB出力時の24MHz第2ミキサーで生じた24MHz LO2のキャリア漏れと、約20KHz離れたイメージ信号です。クリスタルフィルターのDipポイントに合わせこんだイメージ信号は、約-58dBくらいのレベルになっています。 一方、LO2漏れと表示してあるスプリアスは、第2IFを作る為に加えた約24MHzのキャリアLO2の漏れです。 このミキサーは、アナログ回路によるダブルバランスドミキサーとして、動作しますが、アナログ式によるバラツキの為、-48dBくらいしか減衰していません。 クリスタルフィルターにより、LO2の減衰は-30dBくらい確保していますので、ミキサーのバランス効果は-18dBくらいしかないという事です。 これは、必ず-50dB以下にしないと新スプリアス規制に合致しませんので、対策が必要です。 対策案と実施が出来たら、追記します。

 

対策出来ました。 下は、対策したクリスタルフィルター周りの配線図です。

Counterloreak_schema

Loreaklsb

クリスタルが3個つながる回路のGNDを全体のGNDから浮かし、33PでGNDへ接続。 配線図には有りませんが、T4とT5の間にシールドの仕切りをいれました。 そして、T4とT5のバランス巻線の中点は、10Kの抵抗を介して完全独立としました。 さらに、T5のアンバランスを補正する為に100Pを追加した結果、左のスペアナのごとく、LSB(逆サイド)は-62dB程度まで、24MHzのLO漏れは-57dBくらいまで改善し、新スプリアス規制をクリアしました。  この問題は、アナログSWの2G66周りの配線が、SDR-3で使っていいるアナログSW 1G3157と違うのが原因かもしれないと、昨日、アマゾンで10個311円のこのICを発注したばかりでしたが、不要となりました。

 

当初、dsPIC33FJで不足なら、dsPIC33CHに乗り換えるつもりでしたが、その心配は全くなくなりました。

次は、この回路の中に、エレキーを追加します。 昔作った、PIC12F675をそのまま基板上に載せますが、モニタートーンの周波数は、950Hzに変更します。

Pic12f675add

モニター周波数を変更する事と、Hi-tech CのソースをXC8に置き換える為、新規にプロジェクトを作って、コンパイル、プログラム書き込みをやったのですが、ベリファイの結果、0番地のデータが違うというコメントが付いてエラーになります。 2時間くらい悩んで、判った事は、電源電圧でした。 今回のトランシーバーのメイン電圧は3.3Vです。PIC12F675も3.3Vで動作しますので、PICkit3から3.275Vを供給して書き込みをしたのがいけなかったようです。 プログラム時は5Vの電圧で行い、実際の動作は3.3Vでやれば問題なしでした。 このプログラム書き込み中に他の回路へ5Vが逆流しないように、逆流防止のダイオードを追加しました。 なにせ、前回のエレキー製作は6年前の事であり、すっかり忘れていました。  そして、このドサクサの間に、バグも発見され、それを修復しました。 しかし、バグが有りながら、どうしてまともに動いていたのか不思議です。 このオリジナルソフトはスリープモードが有りましたが、トランシーバー内蔵という事で、少しでも応答を早くする為に削除しました。 この弊害か判りませんが、電源をONした時、一瞬、トーンが聞こえます。 対策として、電源やi/o条件が安定するまで、1秒間のディレーを入れ割り込み開始を遅らせました。 また、950Hzのトーン信号がダッシュとドットで少し違うというバグも修正しました。

CWのセミブレークインを検討する為、dsPICにresetをかけた後、ADCの割り込みが発生するまでの時間を調べてみたところ、約8mSでした。従い、キーdownしてから送信状態になるまで、最低8mSはかかる為、CWの信号は、余裕を見て、11mS遅らせます。 これは、送信信号が11mS遅れるのみで、モニター音や受信音にはミリセックレベルの遅れは有りません。

Cw50ps

Cw150ps_o

Cw150ps_4

上の波形は、CWによるセミブレークイン時の最初の信号の頭切れを観測したものです。 一番上のラインがPIC12F675からのキーイング波形です。 上から3番目が、キーイング開始に伴い、モードを即送信状態にしています。 そして、上から2番目のラインが、ディレーさせたキーイング信号です。 一番下が、実際に送信される7MHzのCW信号になります。 左が、約50字/分の送信時の単点で始まる符号です。 真ん中の波形は150文字/分のコンテストスピードで長点で始まる符号、一番右は、同じく150文字/分の短点で開始した符号です。波形で見る限り、先頭の符号で頭切れを起こしている形跡は有りません。

 

送信時のミキサー出力は、Q6バッファーアンプの出力にて、3Vppあります。ここは、電源電圧11Vで動作していますので、8Vppくらいまでは、アップできますが、そこまで上げるかどうかは、後段のリニアアンプ次第です。 このアンプの動作確認を夜やっていましたら、SSBの入力信号がゼロなのに、この出力が8Vppくらいあります。 

7mhzbpf_1k

しかも、かなり変動しています。 原因を調べると、7200KHz以上にあるAM放送局のキャリアがQSBを伴いながら、漏れてきているものでした。 クリスタルフィルター前のアナログSWの受信出力が、送信側へ漏れています。 対策として、RF段のFETのAGC制御電圧をゼロにすると、トータル100dB以上の減衰が得られますので、送信時、このAGC制御電圧をFETでGNDへ落す事にしました。 

左は、このRFアンプの前にあるBPFの特性です。 配線図の中で、コイルのインダクタンスが1uHとなっていますが、1.5uHの間違いです。 この状態で、夜になると、7200KHz以上のAM放送局のQRMを受けます。 これを少しでも改善する為に、共振回路のQをもう少し上げる事にしました。 コイルインダクタンスは4.7uHか5.6uH当たりがよさそうなのですが、あいにく、Qを管理したチップインダクタは2.7uHか12uHしか手持ちしていません。 帯域が狭くなり過ぎるかもしれませんが、12uHで作り直す事にしました。

Frontend_1

7mhz_bpf BPF部分の各定数は上の回路図のようになりました。 そして、このBPFの通過特性を自作のSGとオシロで実測した結果が上のグラフです。BPFのセンター周波数が7120KH付近で、-3dBの周波数が約7000KHzと7300KHzとなっています。あと50KHzくらい低い方へシフトしたかったのですが、ここでコン尽きて諦めました。

MODEセレクタのボタンを何回か押すと、受信音が聞こえなくなるトラブルが発生し続けていました。 dsPICのソフトの問題か?、コントローラーのタイミングの問題か? と丸1日検討した結果、原因はMODEスィッチのチャタリングでした。 このチャタリングの状況をデジタルオシロでモニターすると、4個あるプッシュSWの内、MODE SWだけが、極端にチャタリングがひどい状態でした。 原因が判ると、対策は簡単で、スィッチの両端に0.47uFのコンデンサを入れ、振動を抑制して解決しました。

前回の記事で、AGCの状況は確認していたのですが、何時間も7MHzをワッチしていると、局により、最初の言葉が歪んだり、音量が急に下がり、無音になるような現象が生じます。 さらに、最大感度が低い為、音量の強弱の差が大きく、特にS7くらいの信号はS/Nは良好なのに、ボリュームを一ぱいに上げても、聞き取れないという問題もありました。 そこで、2nd IF段に約20dBのゲインのあるAGC付きアンプを追加し、弱入力時の音量をアップさせる対策を行いました。 また、AGCのアタックタイムを調整する為に半固定抵抗VR7を追加しました。

2ndif_agcamp

Addvr_agcamp

左上が2nd IFに追加したAGC付きアンプ、右上が、アタックタイム調整用のVR7を追加した回路図です。 このハード変更をした上で、デュアルゲートFETのG2の電圧を変化させた時のATT量を調べ、AGC制御電圧が最適になるようにソフトで、加工しました。

Bf1211_agc

Agcv_curve

 

左上が、FETのG2の電圧を可変した時のデータで、G2電圧をリニアに変化させると、ATT量は対数で変化する事を示しています。 このため、急に信号が大きくなると、必要以上のATTをかける為、音量が消えるという現象が現れる事が判りました。 (これは、間違いで、本当の原因はFIRフィルターによる遅延時間の為、リアルタイムでAGCがかからないのが原因でした。) 言葉の頭が歪むのは、マイコンで処理する遅延時間が影響しているようで、実際に信号が大きくなってからAGCが効き始めるまで20mSくらいの遅れが有る事によるようです。アタックタイムの改善は、現状では無理ですので、せめてATTの効き過ぎによる過渡応答を改善する為に、検出した2nd IFのレベルを圧縮する事にしました。 

S4to30dbin

右上のグラフが2nd IFのレベルをAGCアンプへ出力する間に、レベル変換するカーブです。 このカーブはソフトで、補間して作ってありますが、実際にSSB信号を聞きながら、実験的に合わせこみました。 この対策で、+30dBくらいまでの信号は自然に聞けるようになりました。 左のデータは、S4のノイズ状態から、いきなり+30dB程度の信号が入ったときのデータですが、一番上の2nd IFの信号は、クリップなしです。 しかし、+30dBを超えるような信号の場合、頭で歪ますので、その対策として、アンテナ入力に20dBのATTを追加し、これを必要によりON/OFFする事にしました。

このAGCの問題は、トランシーバーとして完成度が上がるに従い、最大の問題点となって行きました。 そして、AGCの補間処理や、追加したFETへのAGCは廃止されました。 詳細は後述します。

ここまでで、気が付いた問題点は、対策完了しました。 このトランシーバーの受信時の消費電流は、12V電源で180mAです。 これは、移動運用を電池で行う時、役立ちます。 今まで、車で行けない、山頂や電波の飛びそうな場所へ、持っていけるSSBトランシーバーが有りませんでしたので、期待が持てそうです。

ここまでできますと、次は、リニアアンプです。 すでにHDSDR用のダイレクトコンバーショントランシーバーで10Wのアンプは作っていますが、これとは別に新たに作ります。 もちろん、すでに自作した100Wリニアアンプも使えるようにします。

SSBジェネレーター回路図 SSB_generator5.pdfをダウンロード

アナログ回路図 DSP-TRX5.pdfをダウンロード

ここまでのソフトです。 以下のファイルは全て開発途中のものであり、必要により更新されます。

SSB_generator_5.cをダウンロード

float_Tap950_BPF.hをダウンロード

float_TapAUDIO201_BPF_BL.hをダウンロード

float_TapAM301_BPF_BL.hをダウンロード

float_TapCW301_BPF_HM.hをダウンロード

float_TapLSB301_BPF_BL.hをダウンロード

float_TapUSB301_BPF_BL.hをダウンロード

7MHz_dspSSB_TRX_5.cをダウンロード

elekey_950HzMonitor.cをダウンロード  

 

dsPICでSSBトランシーバー(10Wリニアアンプ)へ続く 

 

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2020年7月18日 (土)

dsPICでSSBトランシーバー(製作開始)

カテゴリ<SDR>

dsPICの、基本機能が完成しましたので、トランシーバー全体の構成を、システムコントローラーとDSPがメインのデジタルブロックと、アナログブロックのふたつに分割した回路基板として製作を開始する事にします。

システムコントローラーの役目は、送受信周波数の選択とモード設定、送受信切り替え、その他付属機能をマイコンで実現するものです。

この回路の範囲は、dsPICによるSSBジェネレーターを中心に、システムコントロールマイコン、LCD表示部、受信時のオーディオ増幅部及びAGC制御回路から構成され、トランシーバーとしてのすべてのコントロール機能を受け持ちます。対応するのはPIC16F1938 8bitマイコンです。

HDSDR用のダイレクトコンバージョントランシーバーに使った同じLCDを使いますが、このLCDに使用されているICのスペックを詳細に調べたところ、LCDは5V電源でないと動きませんが、これを制御するマイコンは3.3Vでも、正常にH/Lの制御ができる事が判りました。ただし、条件があり、LCD側へマイコンからの一方通行の制御に限られますが、LCDからの読出しは行わないので、問題なしです。

dsPIC33Fのi/oをPIC16Fメインマイコンで制御する訳ですが、片方のPICへPICKit3を接続しただけのとき、及び、メインマイコンからdsPICへResetをかけたときなど、二つのマイコンのI/Oの状態が不明の為、Lの出力端子にHの電圧が接続され過大電流が流れるのを防止する目的で、必要な端子には、通常動作で邪魔にならない程度のシリーズ抵抗を挿入し、保護してあります。 最初、この保護なしで接続した為、配線ミスも加わり、RC1の入力回路を壊してしまい、その反省からです。 従い、当初RC1に設定してあった、PTT入力は、RC5に移しました。

dsPICの出力は、DACLが受信時のオーディオ出力で、ボリュームを経由してスピーカーを鳴らします。 DACRは送信時の出力で、9.8KHzのサブキャリアで変調された信号を、次段の24MHzミキサーへ出力します。 こうする事により、アナログSWを1回路省略できます。

一方、アナログ回路は、RF回路、クリスタルフィルターを挟んだ、ふたつのミキサー回路、およびマイクアンプ、送信用バッファアンプ等で構成し、下の回路図のようにまとめました。

7mhz_dsp_trx4

Filterkit

この回路を構成するフィルター部分はブロックとして作成し、簡単な特性のチェックも行っています。

24MHzのクリスタルフィルターは前回の記事で取り上げたように、スペアナで実測したものを、左の写真のように組み替えました。 使った4個のフェライトコアはTDK HF70BB 6.4X5X3.2で、巻き数は4:4:8ですが、バイファイラの巻き線仕様はSDR-3と同じです。

受信のRFアンプの先頭に置く7MHzのBPFもブロック化し、あらかじめ、特性を確認してあります。 7MHz LPFはミキサーの前に置くものです。  

Micampf

青いコイルは40mHのインダクタですが、マイクアンプの出力に置き、3KHzのLPFを構成させます。このLPFは、この後、ADコンバーターへつながる事になりますが、ADコンバターで発生するエイリアシングを防止する為、エイリアシングが発生始める19.5KHz以上で、-50dB以上の減衰を確保します。 このフィルターとマイクアンプ全体の周波数特性は、左のグラフの青色の線になります。 そして、SSBジェネレーター内のBPFにより、実際に送信される周波数特性は、赤色のグラフになります。 700Hzより1800Hzのレベルを2dBアップさせ、少しでも了解度が向上するように細工しています。

約24MHzのLO2と約17MHzのLO1はdds IC Si5351Aで作ります。 このプログラムは、以前HDSDR用のダイレクトコンバージョントランシーバー用として作った事がありましたので、それをアレンジして、可変のLO1と固定のLO2を同時に発生させています。 この出力をそれぞれ、位相反転させ、高速アナログSW 2G66をスィッチングし、ダブルバランスドミキサーを構成しました。

ここまでの回路図には、まだリニアアンプは含まれていません。

そして、この回路図状態で、配線完了した2枚の基板が以下です。

Dsp_trx_pcb_top

Dsp_trx_pcb_back

まだ、配線が完了しただけで、配線チェックも、通電テストもやっていませんが、まず、システムマイコンを動作状態にし、DSP部分、LO、ミキサー部と、順にチェックとカット&トライを繰り返しながら仕上げていく事にします。

 

そのシステムマイコンの動作確認を行いました。 かなりの配線ミスや、配線図自身の間違いがありましたが、とりあえず、動き出しました。

Idspictop0左は、LCDとロータリーエンコーダーを接続して、動作チェック中のシステムマイコンです。 周波数表示とモード表示、RIT表示、Sメーターの数値による表示など、機能しております。 

今後、DSP部分、Si5351AによるLO回路、ミキサー回路、MICアンプなどの動作確認を少しずつ進めていく事にします。 すべての回路機能を確認できるまでは、仮のシャーシとパネルを用意し、回路の改修が簡単にできるようにしておき、完成した時点で、どのようなケースに収めるか考える事にします。

7mhz_ssb_trx1

木製の板の側面にアルミ板をねじ止めし、仮組の回路ができましたので、dsPICとSi5351Aが正常に動作できるまで確認できました。 回路図の間違いもありますが、それ以上にコネクタの1番ピンの位置が間違っているのが多いです。 幸い、基板から煙が出るほどではありませんでしたが、この間違いを修正するのは、一度挿入したコネクタのリード線を引っこ抜き、正しい順序に挿入しなおすだけなので、手間はかかりませんでした。

DDSのSi5351Aの発振周波数を周波数カウンターで確認したところ、第2LOの周波数は、24006766Hzでないとダメなところが、24006416Hzとなっていました。 そこで、ソフトの中で定義した SI5351_XTAL_FREQを 24999633Hzに修正し、ぴったり一致させました。 この校正で、第1LOの周波数も校正されますので、+/-0.1ppmの周波数誤差で、運用できます。

アナログSWの2G66の半田付けのトラブルや、1番ピンと8番ピンの逆付けなどのトラブルがありましたが、自作のSGを使い、アンテナからスピーカーまでの受信回路に信号を通す事ができました。 日を改めて、7MHzのアンテナに接続して、受信テストです。

Agc_amp

最大感度が市販のトランシーバーより悪いですから、雑音の大きさは、断然小さいのですが、とにかく聞きにくいのなんの。

原因はAGCの調整がうまくいっていないようです。 当初、AGCのアタックタイムとリカバリタイム、AGCレベルなど、すべてソフトで対応しようと意気込みましたが、半日でギブアップ。 昔ながらのアナログ回路で作ると、これが、いとも簡単に、TS930レベルの聞きやすさになりました。 左が、そのAGCアンプですが、教科書に出てくる回路と少し違います。通常は、高速に充電して、ゆっくり放電させますが、この回路は逆です。高速に放電して、ゆっくる充電させます。 ICはグランドセンスタイプのLM358ですが、レールtoレールタイプのOP-AMPではないので、出力レベルを5V確保しようとすると、電源電圧は、最低6.5V必要になります。 そこで、78L05の3端子レギュレーターのGND端子にLEDをシリーズに入れ、約1.8V電圧をかさ上げし、6.8Vの電源を作って解決しました。 

Agcv_output

しばらく、受信テストを行っていると、+40dBくらいの強い局を受信すると、音声のピークで歪ます。 原因を調べると、時定数セット用に導入したダイオード両端の0.6VのVfの為、OP-AMPがフルスイングせず、AGC電圧が2.5V以下にならない事でした。 対策として、OP-AMPにオフセット電圧を加えるようにオフセット調整用の半固定抵抗を追加しました。 

左のデータは、上から順に、dsPICの入力となる第2IFのレベル、その下がdsPICのDA出力、その下が、コントロールマイコンのDA出力です。 dsPICの出力と、コントロールマイコンの出力は、同じアナログ信号ですが、極性が180度ことなります。 そして、一番下が、デュアルゲートFETのG2をコントロールするAGC電圧となります。 このAGC電圧は0Vから5.5Vくらいまでフルスイングできるようになりましたので、実際にSSB信号を聞きながら、一番聞きやすい状態になるよう、オフセット電圧調整用のVR4を調整する事にしました。  このオフセット最適状態で、電源ONすると、音声が出始めるまで5秒以上かかります。 原因は、OP-AMPの電源がONされてから、出力が5Vになるまで、ゆっくりと上昇する事によります。 対策すると大げさな回路追加が必要ですので、そのままです。

Uew_short

トラブル発生です。電源ラインがショートして、5V 3端子レギュレーターがあっちっちです。 最初どこがショートしたのか判らず、焦りましたが、原因はRFアンプのトランスにまかれた、UEW線の被覆が破れ、これが基板に張り付けた銅箔にタッチしたものでした。 このUEW線はルーターで強力によりを入れた為、ウレタン被服に傷がついていたようで、コイルが銅箔に密着したとき、ショートしたみたいです。 対策として、トランスと銅箔の間に絶縁テープを挟み込みました。 これで、強く押し付けてもショートしなくなりました。 最初から、この部分のみ、銅箔をカットしておけば良かったと、後悔しています。

1日中、7MHzのSSBをワッチしてみましたが、HDSDRの時の了解度と、この回路の了解度は、比較にならないほど、この回路が良い事が判りました。 ただ、トータルゲインが不足しますので、ノイズと同等レベルの信号は、音量ボリュームを一ぱいに上げないと良く聞き取れません。しかし、聞こえたら、ちゃんと了解できます。

とりあえず、受信はこれくらいにして、送信の確認に入ります。

Lsb_txout

マイクアンプのベースバイアス抵抗を決定し、次の、リミッターアンプの動作確認を行い、LCRの3KHz LPFの実測による定数見直しを行った結果、リミッターが動作した時の最大値は2Vppとなり、これがそのままdsPICのADCへ印加されます。 そして、DSP内部でサブキャリアとMIXされ、第2IF、第1IFを経て、取り出された7MHzのLSB信号が左のスペアナデータです。 外部に20dBのATTが入っていますが、それでも-22dBmくらいの出力レベルが得られました。  この信号をTS930で受信してみると、きれいなSSB信号として復調されます。

送信モードに於いて、dsPICの出力をチェックすると、dsPICの入力の1/4しか有りません。 せめて、入力と出力レベルが同じにする為、DACに入力する前に、データを左シフトを1回行い、データを2倍にして、出力させ、dsPICのDAC出力につながっているOP-AMPで2倍し、元のレベルに戻す事にしました。 これは、受信時でも効果がありますので、受信時の音量不足対策にもなります。

 

このように、送信ブロックは意外とあっさりと完成してしまいました。

これから、使用頻度を上げていくと、改良事項も出てくると考えますので、出てきたら、アップデートする事にします。

以下の配線図は、いままでの対策を盛り込んだ最新バージョンです。

システムコントローラーとDSPブロック回路図 SSB_generator4.pdfをダウンロード

アナログ部分の配線図 DSP-TRX4.pdfをダウンロード

 クリスタルフィルター前後のトランスT4,T5の巻き数が間違っています。 正しくは8:4:4及び4:4:8です。

 

dsPICのソースファイルです。

SSB_generator_4.cをダウンロード

float_Tap10kAM_BPF.hをダウンロード

float_Tap10kLSB_BPF.hをダウンロード

float_Tap10kUSB_BPF.hをダウンロード

float_Tap2800BPF.hをダウンロード

コントローラーのソースファイルです。

7MHz_dspSSB_TRX_4.cをダウンロード

これらのソースは開発始めたばかりの状態ですから、完成度は低いです。

 

dsPICでSSBトランシーバー(CW,AMモード追加)へ続く

  

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