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2019年12月14日 (土)

ダイレクトコンバージョン式SDR完成(送信部)

カテゴリ<SDR>

前回までに、各基板を組み立て、動作確認と、ソフトのデバッグも一通り完了しましたので、次はリニアアンプを含めた送信ユニットの動作確認と調整です。

送信用のDC/DCにリニアアンプをつないで、いざ送信状態にすると、電源電圧が1Vくらいまで落ちてしまいます。 無負荷の場合、13Vくらいをキープしていますが、負荷がかかったとたん、電圧が落ちます。 配線ミスかと、電源基板をひっくり返して調べてみましたが、異常は有りません。 困り果て、このDC/DCの仕様書を読み直すと、DC/DCの入力部には390uF以上、出力部には、780uF以上の電解コンデンサを付けろとあります。 今までは0.1uFしか入っていませんでしたので、まず出力端に1800uFを追加しました。 この追加で正常に動きだしましたが、まだ入力部には0.1uFしか入っていません。 手持ちの電解コンデンサでサイズの小さなコンデンサは50V47uFしかなく、やむなくこれのみを追加して様子を見る事にしました。 とりあえずは5W15分間くらいの連続送信でもOKのようです。

修正した配線図 SDR-TRX_POWER2.pdfをダウンロード  

Sdr700hzmod

電源が正常になって、最初に見たのは、キャリア漏れとUSBイメージの漏れです。

LOとTUNEのOffsetを8KHzとしてトライします。

左のスペクトルは700Hzの信号で変調した時のスプリアスです。 キャリア漏れ調整用のVRを多回転タイプに変更したのが効いて、-47dBくらいに苦労せずに落とす事ができました。 VRの調整が楽になったので、逆に60Pのトリーマーの調整がクリチカルに感じられます。

USBのイメージ信号も、-53dBくらいまで落とせました。   ここは、もう少し根気を入れて調整すると-60dBも可能かも知れません。

この状態でOffset周波数をゼロとして、音声をTS930でモニターして見ました。 音質的には、かなり低音が伸びた音ですが、歪感はほとんど有りません。 歪感が無い為、かなり柔らかい音質になっており、逆に了解度を落としているような気がします。 ここは実際にON AIRしたとき、意見を聞き、MICの周波数特性を調整する事にします。

そのoffset 0 のスプリアスデータが以下の4枚です。 測定に際し、ATTが入っていますので、絶対レベルは無視して下さい。

Sdr_200kspan

Sdr_1mspan 

Sdr_10mspan

Sdr_50mspan

左上が、スパン200KHz、右上がスパン1MHz、左下がスパン10MHz、右下がスパン50MHzです。余計なスプリアスは皆無で、第2高調波の14MHzも-58dB以下、3次以降はノイズレベルに収まっています。

電源トランスと整流回路は、2A負荷時のDC電圧が、24Vくらいありますので、ファイナルとそのドライバーの電源のみを、レギュレーションを確保できる18Vまで上げました。 さらに、ファイナルのトランスの2次側ワイヤーをAWG24からAWG18に変更しました。 その状態でも出力は7Wくらいしかでませんが、アイドル電流を1.7Aまで増やすと12Wの出力がでます。 しかし、アイドル電流1.7Aは多すぎます。 ここまでアイドル電流を上げる必要があるのは、プッシュプル用のIRFI510のゲート電圧がバラツキ、両方同じバイアス電圧では、どちらかのFETにまともにアイドル電流が流れていないことになります。

この対策の為、ゲートバイアス調整回路を独立させ、FETのバラツキに合わせて、個別に調整出来るように回路変更しました。

Sdr_pamp2

上が、その変更後のパワーアンプです。バイアス調整用半固定を2個にし、1石当たり400mA、2石で800mA流れる様にしたとき、出力10Wとなりました。

TSSへ申請し、途中、IRFI510の仕様書を送れというコメントが付きましたが、1週間で認定を受ける事が出来ました。 そして、さらに1週間後に総通での審査が終了し、この増設は承認されました。

これで、電波として発射できる様になりましたので、ON AIRにトライする事にします。 

12月の午後7時ごろ、珍しく6エリアの局が1局だけ聞こえますので、試しにコールしてみました。 1回のコールで捕っていただき、以外と簡単に1st QSOが成功しました。 ただし、問題も発覚。 7200KHz以上の放送電波が混信します。 どういう理屈で混信するのか判りませんが、LOの周波数付近だけで混信し、offsetを設けた場合、混信しません。 どういうメカニズムで混信が起こるのか今後の課題となりました。

また、チューニングの為、周波数を変更する度にミューティングがかかる問題ですが、周波数可変のステップを1KHzにして、我慢する事にしました。 最近のリグの周波数がDDS制御となり、7MHzの場合、ほとんどの局がキャリア周波数をKHz単位で設定し、交信していますので、1KHzスパンの可変でも問題ないようです。 もちろんスパンを100Hzに切り替える事ができますので、SSBの場合、ほぼ全ての周波数で運用は可能です。

ただ、ワッチだけしている時の選局操作性は良く有りませんので、この場合は、LOとTUNEのシンクロを解除して、PC側のバンドスコープを見ながら、マウスで選局する事にしています。

10Wリニアアンプ 最新配線図 SDR-TRX_RF_POWER2.pdfをダウンロード

電源供給回路に有った、FETによるスイッチング回路は廃止しました。送信ON時の電源はDC/DCを直接スタンバイ信号で制御する事にしましたので、不要になった為です。

ファイナルのFETのゲートバイアス用に追加したR1,R2の抵抗は、手持ちの関係で2.4KΩにしたもので、ここは、1kΩから10KΩくらいの適当な抵抗でもOKと思います。

ドライバー段の直流動作ポイントが最適になるように、ベース抵抗を半固定抵抗に変えてあります。

Sdr_trx_comp

TSSの認定時に提出したブロックダイアグラムを添付します。

5_sdr_trx_block.pdfをダウンロード

このブロック図の中で、サウンドカードとして囲まれたブロックは、実際にHDSDRが、このようになっているのかは確かめていません。 サウンドカードにアナログのマイク入力を加えると、サウンドカードの出力から約0.3秒遅れて、ベースバンドのI信号とQ信号が出てくる事実を元に、原理的に実現できるブロックを示したもので、ここは、入力と出力の関係が合っておれば、どんなブロック図でもOKと考え提出したものです。 TSSも総通もこれで承認していただきました。

LOとTUNEのOff set周波数がゼロになった場合の2信号特性を比較しました。

Os825

Os025

上はUSB漏れが-25dBのバランス調整不完全状態での出力波形ですが、左がOffset 8KHz、右が0KHzです。 Offset ゼロの場合、かなり歪んでいます。

Os850

Os050

上は、USB漏れが-50dB以上になるようにIQバランスを調整した状態で、左が、Offset 8KHz、右がOffset 0KHzです。 右の波形は左より歪んでいますが、USB漏れ-25dBより、かなりマシな波形をしております。

Iqreadj

Iqreadj_os0

上のスペクトルは、左が、Offset 8KHzでUSB漏れを-50dB以上に調整した場合、右は同じUSB漏れで、Offsetを0KHzとした場合です。 左側に有った-43dBくらいのスプリアスは右側では、完全に消えています。 これらの結果から、SSBの変調音に歪が生じますが、ゼロオフセットで運用した方が良いという結論です。

この様な結論になる条件として、IQバランスやキャリア漏れが重要になりますが、アナログ回路の宿命として、バンドを変えると、いずれも、調整をやり直さなければなりません。 アナログ式のダイレクトコンバージョントランシーバーに、マルチバンド対応を要求するのは、無理がありそうです。 

3rd QSOも成功しましたが、出力10Wで、昨今のコンディションでは、安定したQSOは望めませんので、このトランシーバーの後に追加するリニアアンプを作る事にします。 

リニアアンプを作り始め、1月下旬には、このSDRトランシーバーを接続して、動作テストするところまで来ました。 ところが、前回の調整から、約3週間過ぎてみると、キャリア漏れが-20dBくらいまで悪化していました。 経時変化がかなり大きく、ここで、再度、キャリア漏れを最小に調整すると、IQバランスがくずれますので、IQバランスも再調整が必要となります。 最大のドリフト要因は、DCバイアスのずれで、半固定抵抗を再調整しなければなりません。 また、トリーマーも半固定VRほどでは無いにしろ、再調整が必要です。 結局、このトランシーバーは、使う前に必ず、LO漏れとIQバランスを再調整しても、3日も経つとLO漏れが-25dB程度までドリフトしてしまい、安心しては使えないものであることがわかりました。 リニアアンプも半分はできましたが、100Wで送り出すほどのSSB信号の完成度はなく、リニアの制作は中止しました。 その代わり、継時変化の少ない直交変調器に関する情報を探す事にします。

1か月近く調査、検討した結果、LO漏れを抑えられる回路の可能性がみつかりました。 

HDSDR用ダイレクトコンバージョントランシーバー改訂版 へ続く。

 

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