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2017年4月29日 (土)

7MHz D級アンプ QRO計画 2

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

サンケンのFKI10531というN-MOS FETによる2パラプッシュプル回路は、6.9Vの電源で22Wの出力を得る事ができましたが、この時点でMax Vdsは40Vありました。 これは13.8Vの電源で80Vになる事からFETの最大Vds=100Vの規格に対してほとんど余裕が有りません。実験中にFETを壊すのは確実ですから、実験前に諦めてしまいました。

RSで適当なFETがないか探すと、以前チェックした事があるSTマイクロのSTF17NF25というFETが86円くらいでありました。これならVds max 250Vですので、かなり余裕が出来ます。 これを10個購入し、このFETで再度6.9V 25W出力に挑戦します。 ただし、このFETのRdsは165mΩくらいありますので、4個パラくらいにしないと、FKI10531と同等のRdsにはなりませんが、とりあえずは、3個パラプッシュプル(合計6石使い)でトライします。

回路図 POWER_amp_3para.pdfをダウンロード

比例計算では6.9Vの電源で21.4Wくらいになりますが、その他のロスの軽減策でチャラに出来るくらいのロスです。

3para_pp_jw_2

上の図面は、リンギング対策の為、FETのレイアウトを変更した、3パラプッシュプルのD級アンプ回路です。放熱板のサイズは前回と同じですが、向きを90度変えてあります。

この新アンプより、両面ガラエポの基板が使えるようになりましたので、基板は生基板をそのまま使います。加工するのは、ゲート入力回路のみで、ダイソ-で買った300円のミニドリルの刃先をグラインダーに付け替え、銅箔を削ってパターンを作り、チップ部品を装着できるようにします。 それ以外の配線はすべて短冊状の銅板で行います。

Pwr3parapp

上が図面通り、放熱板や基板を加工して配線完了したアンプユニットです。放熱板のサイズは前回と同じです。

Gatepwb_3parapp

 上は、6個のFETとそのゲート入力回路の基板です。各FETのゲートに1608の1Ω抵抗をシリーズに入れた手作り基板です。 リンギング対策の基本は構造が簡単であるという事ですが、この構造なら、4パラでも6パラでもすぐにできます。

Pwr3parappvds3_2

Pwr3parappvds3max_2

 左上は、電源電圧を3Vにして最大出力ポイントより30%くらいパワーを絞った時のVds波形です。 右上は同じ電源電圧にて、最大出力時のVds波形です。 ドレインGND間にバリコンをいれリンギング最小状態にしてあります。  まず、プッシュプルの両側で波形が異なります。また、この時の最大波高値は前回の半分くらいになっています。 どうも動作モードが変わってしまっているようです。 

原因を調べたところ、最大波高値が下がったのはFET3パラによる出力容量の増大が影響しているみたいです。 また、プッシュプルの両側で波形が非対称となっているのは、ドライブ入力部のFETを含むアースポイントが最適になっていないようです。 また、入力トランスの入力部分(TS930Sの出力端)の波形がきれいなサイン波からかなり崩れています。 これらは、今後ドライブ回路の設計のなかで、詳細を検討する事にします。

しかし、ダミーアンテナの両端波形はLPFなしですが、一応まともな波形をしています。

肝心な出力ですが以下のようになりました。

3parappout 一応当初の目標6.9Vで25W、13.8Vで100Wの出力を確保できました。 Rds=165mΩは最大値ですので、実力は結構低いのではないかと思われます。

この時のTS-930Sからの出力は7Wでした。 効率は3Vの電源の時70%くらいでしたから、100W出力時は70%以上あると思われます。 また、入力を7W以上にするとリンギングが多くなりますが、出力は変わりません。 逆にに7W以下にすると次第に出力は低下しますが、リンギングも改善され、最大出力の30%減くらいできれいな写真のような波形となります。

このアンプを2台シリーズに繋ぎ、電力合成すれば、13.8Vの電源で50WのAM送信機が出来ることが判りましたが、この13.8V 50WのAM送信機の使い道が有りません。今の所、AMで移動運用をするつもりは有りませんので、このパワーアンプはここで終わりにします。

Pwr3parapptest

上は、この新RFアンプの実験風景です。

これから、入力ドライバー回路の検討を行い、現行の50W AM送信機をQROする方向に目標を変更します。

7MHz D級アンプ QRO計画 3 に続く。

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2017年4月19日 (水)

7MHz D級アンプ QRO計画 1

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

キャリア出力50W(ピーク出力200W)のAM送信機は完成し、時々ON AIRしていますが、この送信機を製作始めたころの最初の目標「12V電源で50Wの送信機」はいまだに実現しておりません。 SSBトランシーバーでは13.8Vの電源で100Wの送信機は当たり前ですから、市販のトランシーバーは13.8Vの電源で25W出力のAM送信が普通に可能です。 そこで、当初の目標であった13.8Vの電源で50WのAM送信機(ピーク200W)に再挑戦する事にしました。

今回検討するパワーアンプの回路図です。POWERAMO_0.pdfをダウンロード

終段はサンケンのFKI10531パラレルプッシュプルでこの回路でまず25Wを狙います。 首尾よく目標達成できたら、同じものをもう1台作り、電力合成して50Wが実現できるだろうというもくろみです。

終段をドライブするには終段の入力容量は3000PFを超えますから、従来のTC4452などでは無理で、昔のトラ技に紹介されたFETをクロスして配置したオーソドックスな回路にもどしております。この回路では、ドライブパワーとして3Wくらいが必要になりますので、実際はこの前段に5WクラスのC級アンプをおきますが、実験の初期はTS-930Sから50Ωの出力インピーダンスで5Wくらいでドライブします。

まずは、入出力に使うメガネコアの吟味です。

Core_z

左のグラフは手持ちのフェライトコアに1ターンのコイルを通した時の周波数対インピーダンスを表示したものです。 デジタルでインピーダンスを表示できる手作りアンテナアナライザで実測しました。 この中で、TS930Sの入力トランスの実測カーブが濃い青色で示され、特性は10MHzをピークに14MHzでは下がっています。 一応この特性を目標に、コアを調査した結果、INPUTと表示してある、昔1個30円で買ったコモンモードチョーク用の分割コア(CMF)2個分が一番良い特性を示しました。 次に出力用としては、北川工業の分割コアGTFC4個分(OUTPUTの表示)でそこそこいけそうですので、これらを使い、メガネコアを手作りする事にしました。

Meganecores0_3

Meganecores1_2

左上の写真は、CMFコアを2個ビニールテープで縛り、その状態での寸法を基に、コアを貫通する銅パイプと側面でこれを受け止めるリングの図面をJW-CADで作図し、これを実寸大にプリントアウトした紙を厚さ0.3mmの銅板に貼り付け、ハサミで切り出した銅板です。 銅板をリング状に切り取る為に、まず「タケノコ」と呼ばれるドリルでリングの中心部分に穴を明けた後、外周をハサミで切り取って作ります。

右上の写真は出来た銅板をフェライトコアの中に埋め込みワンターンコイル付メガネコア状にしたものです。 この状態で裏、表ともハンダで結合すればメガネコアによる入力トランスが完成します。

Meganecorels1

同じようにして、出力側のメガネコアも作成します。

左側の大きなメガネコアはGTFC 28-16-13という分割コアを4個使い、ビニールテープで縛りまくった状態で銅板によるパイプとリングを作り出来上がったもので、外形は58x43x28mmでパイプの内径は12.5mmあります。

メガネコアのサイズが固まりましたら、これを基板上に配置し、FETを放熱板に固定する構造を考えながらパワーアンプ全体のレイアウトを決めます。 プリント基板は片面ガラエポをカッターで削りながら作る条件で、立体配置図をJW-CADで作成します。

この作業はプリント基板のように平面で回路を構成する電気屋の作業ではなく3D構造で回路を構成する為、機構屋の作業になってしまいます。

Jw_pweramp 上の図面はこの3D構造のパワーアンプ部分をJW-CADの2D図面で描いたもので、FETの配置を青色で、基板のパターン構造を赤色で示してあります。

この後、放熱板や、基板を図面通り加工すると、下の写真のようなパワーアンプが完成します。 ただし、ガラエポの基板はまだ未入手ですので、紙エポの銅箔なし基板に厚さ50ミクロンの銅箔テープを両面テープで張り付け基板の代用としています。

Pwrampassy1

このパワーアンプの入力トランスに2ターンの1次コイルを巻いてアンテナアナライザで入力側のSWRを測ったところ、SWR=6くらいでした。この状態でTS-930Sから出力を加え、電源電圧3Vの状態で出力が飽和するレベルは12Wくらいでした。 そこで、1次の巻き数を3ターンして、再度トライするとTS-930Sの出力が6Wくらいから、D級アンプの出力は飽和します。 次に4ターンの1次コイルを巻き動作テストを行いました。 TS-930Sの出力が3WくらいになるとD級アンプの出力は飽和します。このときの入力側のSWRは1.8くらいでした。 以後、この状態でのテストです。

Vd_3v

出力側のメガネコア(出力トランス)の2次巻き数は2ターンです。

Vds=5V 出力6.8W

となりました。これは従来の50Wアンプと同じ出力インピーダンスの場合に相当し

Vds=15V 時 出力は61Wに相当します。

上の波形は、Vds=3V時のドレイン電圧波形です。 従来の50Wアンプよりリンギングが多くなっており、最大出力にすると、ゼロレベルの部分にもう二山波形が現れるほど、乱れます。 最大出力付近でのリンギングを最少にする為、ドレインとGND間にバリコンを挿入し、リンギング最少になるようバリコンを調整しています。 ただし、今回の回路では、ドレインとGND間にコンデンサを入れてもドレインピーク電圧は下がりませんでした。

次に出力トランスの2次コイルを3ターンとし、バリコンでリンギング最少とした状態で

Vds=3V     4.2W

Vds=4V     7.1W

Vds =4.9V  10.4W (この時の電流は2.972A)

Vds=6.9V(13.8Vの1/2)のとき、22W

この状態で終段FETのドレイン電圧はmax40Vまで上がっていました。 またこの時のリンギング波高値は10Vくらい有りました。

という事は、13.8Vを電源としたAM送信機の場合、ピークパワー時80Vのドレイン電圧となりますので、Vdmax=100VのFKI10531では25Wの目標はかなりきついとい事が判ってきました。

過去の経験から、このギリギリのスペックでは、実験中にFETが壊れる確率が100%近くになりますので、FETの再選定は避けられなくなりました。 

Patest0

上の画像は、この出力テストの実験風景です。

リンギング対策の為、GNDの引き回しを再検討する必要が生じ、一度分解し、レイアウトをやり直した上で、FETの選択をやり直す予定です。

7MHz D級アンプ QRO計画 2 へ続く。

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