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2016年1月17日 (日)

E級アンプ 出力アップ検討

<カテゴリ AM送信機(PWM方式)

AM送信機のRFユニットの効率が、WEB上で紹介されている例に比較して、かなり落ちる原因を調べる目的で、RFユニットだけの検討を行いました。

Eamp_2a

 上が検討したE級アンプの回路で、コイルはその時の出力に応じて選択しています。

Etest

Vdの波形をオシロでモニターしながら、VC1とVC2を交互に回し、最良ポイントを探しますが、教科書通りの波形に近くなるように調整する事により最大効率ポイントが見つかります。この効率最大ポイントと出力最大ポイントは異なります。どちらかと言えば効率優先です。また、このVdの波形がきれいになる為にはゲートをドライブするデューティも大きく影響します。 従い、回路図には出ていませんが、VXOのバッファーアンプのベースバイアスを調整して、ドライブのデューティが可変できるようにしてあります。 実験開始時は、ファイナルのトランスにTS930S用の入力トランスを使用していましたが、10Wくらいで、ほんのり暖かくなるので、また出力トランスに戻しました。

この検討の途中で効率90%超の数値が時々出る調整ポイントがある事が判りました。しかし、その時のVdの波形はオシロのトリガが安定しない程、寄生振動を伴った波形で、LPFを通った後もFM成分とAM成分を持ったかなり汚い信号になっていました。 E級アンプはオシロが手元にある場合のみ自作できる回路かも知れません。

このようにして、2SK3234とFKI10531で最良ポイントを求めた結果は以下の通りです。

Efet1 2SK3234の場合、Vdを13.8Vに固定して、コイルを変えて最適ポイントを探したものです。10W以上の出力が出るようにコイルを小さくすると、効率が50%を切りますので、10W以上の検討はしていません。

一方、FKI10531の場合、13.8Vで20Wくらいの出力になるようコイルを選択した後、調整ポイントは動かさずにVdを18.4Vや9Vに変えたものです。 18.4Vで40W出て効率も72%となっています。このFETの場合、最高効率が得られるVdはもっと高い電圧かも知れませんが、DC電源の電圧がこれ以上上がらないのでテスト出来ていません。 ちなみに、この時のVC1の値は170PF、VC2は700PFでした。

そして、写真にもあるように、バリコンを接続して、最適容量を探し、そのバリコンと同じ容量の固定コンデンサに置き換えても、バリコン使用時と同じ状態になりません。 バリコンまでのリード線がもつインダクタンスや、図体がでかいことによる浮遊容量の影響が無視できないようです。 以後、面倒でも固定コンデンサを付けたり外したりして検討する事にしました。

これらの結果から、FETのスペックと、このE級アンプの性能についての関連性を調べてみる事にしました。

Fet_spec

 上の表は手元にあるFETのスペックを抜粋したものです。 限界FREQというのは私が勝手に作ったデータでtd(on),tr,td(off)及びtfの合計値の逆数で、基本的にはこの周波数以上では正常にスイッチングしないという周波数です。 ただし、個々のFETで条件が異なり、実際に使用している条件はこれ以下の環境という事もあり、表示された周波数より上の周波数でもスイッチング動作はしております。 従い、比較したときの目安として気にしたらよいデータと考えます。 また、個々のタイムスペックはメーカー発表のノーマル値ですので、実際はこれ以下の周波数になる事もあります。

このようにして眺めてみると、サンケンのFKI10531はON抵抗を含め最良の数値を示しています。  他の3種類の限界周波数は似たり寄ったりで、バラツキによっては逆転するくらいの実力ですが、効率に関係するオン抵抗の値がそのまま表れている感じです。  また、データとして残していませんが、限界周波数も最も低く、ゲート入力容量が最も大きい2SK2382は、最大出力も効率も全くダメでした。

ただ、FKI10531にも欠点があります。それはゲートの入力容量がこの中では比較的大きいことです。これは、ドライバーICの負担が大きく、TC4422がアッチッチになる原因のようです。そして最大の欠点は耐圧が100Vしかないという事でしょう。  40W出力のときのVdmaxは75Vでした。AM送信機の場合、ピーク電力を確保する為にVdを上げますので、これがネックになります。

8vvd

一応、FKI10531 1石で定格出力10W(ピーク出力40W)のAM送信機を作る事は出来る事は判りましたが、激しいリンギングの為、動作が安定しません。

左は、FKI10531を9Vで動作させた時のVdの波形です。 ピーク部分で凹みが出来ていますが、長時間送信していると、温度が変わり、次第に波形が崩れます。これは使用しているコンデンサの温度特性が大きく影響し、発振寸前の帰還状態がクリチカルになっているのが原因のようです。

色々検討している内に、FKI10531を2個もショート状態に壊してしまいました。 また、リンギングは出力インピーダンスが小さくなるほど出易いようです。 そこで、この際、FETも変更し、電源電圧を上げられるE級アンプを再設計する事にしました。

Fet_spec2_2 

ところで、私の手元に有った、IRF640はIR製ではなく、セカンドソースだったようです。 WEBで紹介されているIR(インターナショナル レクティファイアー)製の場合、私が勝手に定義した限界周波数がリーズナブルの周波数を示すようです。 上の表はIRオリジナルのIRF640のスペックを抜粋したもので、納得出来る限界周波数を示しています。

そこで、IR製のIRF640を手配しようと考えたのですが、入手できるのはTO-220でドレインがそのままフィンにつながっている物しか有りませんでした。 出来たら、フルモールドパッケージのFETが無いかRSで物色しました。 結果、IRF640と似たようなスペックを持つSTマイクロのFETが見つかりました。 上の表にその仕様の抜粋を示します。  STF19NF20は、TO-220Fパッケージで絶縁シート無しで放熱板にビス止めできます。 このほど、このFETを手配出来ましたので、同時に入手したTC4452を使い、下記のように回路を改造しました。 TC4452はVdd端子がフィンに接続されていますので、絶縁シートと絶縁ワッシャは必要です。  (後日、フルモールドパックを選択したのは間違いだったと後悔します。 面倒でもマイカシートで絶縁し、シリコングリスたっぷりのドレインむき出しのFETの方が良いです)

OSCバッファーとFETドライバーの間に挿入されていたインバーターがDC直結になっており、OSC段の異常でFETのゲートがHになりっぱなしという現象が再現しましたので、OSCバッファの出力をコンデンサでDCカットし、インバーターをC-MOSに変えました。C-MOSの入力にはプロテクトのダイオードが実装されていますので、このダイオードで入力信号が0Vでクランプされ、うまく動作します。 ただし、そのままでは、入力が無いとき、FETゲートは常にHとなりますから、もうひとつインバーターを入れてあります。

Eamp5

Rfunit5

また、基板上のレイアウトも変更し、TC4452とSTF19NF20は基板上に配置した放熱板に固定し、リンギング対策としてFETの出力ラインは5mm幅の短冊状に切った厚さ0.3mmの銅板で配線し、極力浮遊インダクタンスを削減しました。

左がその基板ですが、TC4452とSTF19NF20のパラレルドライブが可能なように配置してありますが、今はシングルドライブです。

この状態で、電源電圧13.8Vのとき、15Wの出力が得られ、効率は63%くらいです。

TC4452の消費電流は200mAくらいでTC4422と同じですが、FETのゲート電圧波形が気持ちだけ良くなりました。 また、このゲートドライバーも終段FETと同じ放熱板上に止めてある関係で、長時間連続送信でも安定しています。

Amtx_640hz

このRFユニットを変調器と組み合わせて見ました。 電源電圧を18.4Vにすると、無変調時の変調器DC出力は9Vとなり、RF出力は7Wとなっています。 最大変調度は、87%くらいで、電流の増加はありますが、クラニシの終端型電力計は7Wのままです。 この電力計は熱電対型ではないので、変調度が変わっても指示は変わりません。 少なくとも、マイナス変調にはなっていないようです。

 左の波形は680Hzで変調した時の波形です。 現在、RFユニットと変調ユニットを無造作に置いてある為、RFが変調器へ回り込み、波形が崩れる事もあります。 実際に組み立てる場合、配置やシールドを検討する必要があるかも知れません。

 

New_lpf0129

7MHzのLPFは計算で求めた定数のままで、特性の確認はやっていませんでしたので、出力側に50Ωのダミー抵抗をつなぎ、入力側にアンテナアナライザを接続してSWRを計ってみました。すると、7MHzでSWRが2を示します。インピーダンスは25Ω付近です。周波数を3.5MHzまで下げると、SWR1.1くらいになります。 どうやら、計算間違いがあるようです。 このLPFは再設計する事にします。

上が、新たに設計したチェビシェフLPFの定数です。 計算は下記URLで行いました。

http://gate.ruru.ne.jp/rfdn/Tools/ClpfForm.asp#

計算されたインダクタンスやキャパシタンスを実装できる訳はありませんので、自由の効かない、インダクタンスを一番近い巻き数にしておき、後は、コンデンサで微調整した結果が上の定数です。

Lpf0129

このLPFに50Ωのダミー抵抗をつなぎ、入力部分に自作のアンテナアナライザーを接続した時の周波数対SWR特性を表示させたグラフを左に示します。 SWR最少周波数が7.200MHzで1.16となっており、そこそこの特性は得られているものと考えます。 しかし、事前確認では、かなりの挿入損失が有りそうでした。

過去、いくらやっても、60%かそれ以下の効率しか出ないのは、このLPFの挿入損失の性かもしれません。 そこで、新たに作成したこのLPFでLPF有り無しの時の効率データを取ってみました。

Lpf_pwr

結果は下の表の通りで、LPFが無い場合のE級アンプの効率は74.8%とそこそこの値が出ていますが、LPF有りの場合、62.1%となり、LPFだけで、27%もロスしております。 今回のLPFはコイルにT-50-2というトロイダルコアを使ったものです。 今までのLPFは定数設定に誤りがあり、LPFのロスも30%を超えていたようです。

E級アンプの効率が悪いのは、LPFの問題であり、実験した回路で、世間並の効率は確保されている事が判りましたので、以降、単純にパワーアップに絞って検討していく事にします。

E_amp0130

左の表は、E級アンプの回路を当初のコイルとコンデンサが直列に接続されたフライホイール回路に戻し、トランスを1対3の巻き数として、最適値を探した時のデータです。 LPF無で、81.6%の効率は良く出来た方と思われます。

E0130vd

左の波形は、12.84Vで15Wの出力が得られている時のVdの波形です。 ほぼ教科書通りの波形をしています。 また、リンギング対策もかなり効いてきました。 

電源電圧を17Vくらいまで上げると、LPF付でも25Wの出力が得られていますので、 定格出力20W(ピークパワー80W)のAM送信機がこのFET1石で可能かも知れません。 これから、36VのDC電源を模索します。

Eamp0130

左は、E級アンプのファイナルとフライホイール回路及び出力トランスの部分です。 使っているコンデンサは200V耐圧のセラミックで、わざわざ温度特性がかなり良いB特を選定しましたが、パワーON直後の1分くらいは出力が変動します。 最終的には、シルバードマイカに変更しなければならないかも知れません。

左の隅に一部写っているのが問題のLPFです。これは、この送信機が完成した後、再検討する事にします。

ここまでの配線図 AMTX_8.pdfをダウンロード

変調性能確認 へ続く

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