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2014年9月25日 (木)

バリコン式ATUの実装

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

20mの長さのある同調フィーダーの先に、現用の18メガ用スカイドアと7メガ用垂直DPをつなぎ、シャックの中でテスト運用した自作のATUは快適に動いてくれました。 ただし、20mの同調フィーダーはノイズの受信と不要輻射の面から常用は不可ですので、プリセットMTUを置いてあるベランダにATUを移し、そこまでは同軸で給電する事にしておりました。 

このATUをプリセットMTUの所に移す為に、プリセットMTUをサイズダウンして防水BOXの中に隙間を確保し、ATUを収納できるように改造しました。ATUの動作確認以前の処理事項として、この改造したプリセットMTUが全バンド正常に動作するようになりましたので、ATUの本格稼働に向け動作テストをする段階までこぎつける事ができました。

Atu140926

右下のアルミケースで覆われた箱がATUです。左側の基板はプリセットMTU用のデコーダーで、シャック内のコントローラーからのATUコマンドを中継しています。

このATUの動作テストを行う前に、プリセットMTUの調整も行いましたが、プリセットMTU作り変え にて紹介の通り、ハイパス型Tタイプのアンテナチューナーでは整合しないバンドがかなりあります。 ATUはハイパスTタイプですので、心配しながら、チューニングテストを行うと、3.5、3.8、14,18,24メガが整合しません。 

ATUをリグの近くに置き、アンテナまで20mくらいの同調フィーダーで接続した場合は、全バンドうまくいってましたので、同調フィーダーの長さを調整すると、整合するとは思います。 しかし、現在の同調フィーダーの長さで、せっかくMTUが正常動作している状態ですので、ATUもこの同調フィーダーの長さのままで正常動作させる事にします。 

MTUの整合検討で多くのバンドが整合しない原因は、 MTUのコモンラインの浮遊容量でしたので、ATUを接続する時は、入出力にそれぞれリレーを設け、MTUからGNDを含め完全に分離する事にしました。 その結果、3.5,3.8,18メガ以外は整合するようになりました。

3.5と3.8メガのバンドが整合しない理由は、バリコンの回転が速すぎて、整合ポイントをスキップしてしまうのが原因のようです。 バリコンの回転スピードを超スローにして、数分以上の時間をかけてSWR最少ポイントに追い込んでいくと、このバンドもSWR1.5以下に整合します。 しかし、それでは使い物になりませんから、バリコンが回転中でも5m秒おきにSWRをチェックするようにしました。 これで、従来より10倍くらいの密度でSWRのチェックする事になり、収束するようになりました。

しかし、1分以上経っても整合できない事もしばしば発生します。 これは、バリコン最少容量状態から、小刻みに、VCを回し、SWRが規定以下になるポイント探す時間と、SWRがかなり下がったのに、何らかの原因でSWR20以上の状態に陥る場合です。 対策として、整合の為のサーボ動作を開始するSWRの上限を20から50に修正しました。 

その上で、SWRが10以上ある時は、モーターの駆動時間を従来の2倍にして、SWR10以下になるまでの時間を約半分にしました。 また、整合途中でSWR5以下まで収束したら、その時のVCの角度を記憶させる事にしました。 この後、なんらかの原因でSWRが50を超えても、最初からやり直すのではなく、SWR5以下になったバリコン位置から再スタートさせます。 

また、20秒以上たっても整合しない場合、SWR3以内なら一旦整合したとして停止させ、そこから再度整合をスタートさせると、ほぼ100%の確率でSWR1.5以下に収束します。  

一度整合してしまえば、その時のタップ番号やバリコンの角度を記憶しておりますので、プリセットMTUと同感覚で使用できます。

Atuswadd

ただし、18メガはなかなか整合しません。SWR3くらいまでは比較的簡単に収束しますが、それより、なかなか低くなりません。 原因を確かめる為に、ATUをマニュアルで動かす機能を追加しました。VC1もVC2もキーを押している間だけ、CW,CCW方向に回転できるようにしました。 このマニュアル機能を使い、手動で整合させようとしますが、まだうまくいきません。 このバンドだけは、後日、対策方法を考える事にします。

マニュアル動作が可能なATUの配線図 ATU-VC6.pdfをダウンロード

Mtu_cont1

また、ATUのSWR計がSWR1.4と表示しているのに、シャックの中にあるSWR計はSWR2と表示して、レベルが合いません。  通常はアンテナ直下のSWR計より、リグの近くにあるSWR計の方が良く表示されますが、これは逆の現象です。 

ATUをリグの近くに置き、短い同軸ケーブルで接続すると、このSWRの数値差は出なくなります。 コモンモード電流が悪さをするとこのような現象がでる事は判っていますが、今回も同じ理由なのかは判りません。 今後、使用しながら改善する事にします。

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18メガがなかなか整合しない原因が判りました。コイルのQが高過ぎて、バリコンが非常にクリチカルになり、モータードライブのバリコンでは合わせきれないのが原因のようです。 ギアのバックラッシュを完全に無くすると、この問題は発生しないのでしょうが、それは、無理ですから、別の方法を考える事にします。 

NT-636がクリチカルながらも整合する理由はコイルをショート状態で使っているのが影響しているのかも知れません。ショート状態とは、タップ番号0のタップはいつもGNDに接続してあるという意味です。このような使い方では、コイルのQが下がり、チューナー内のロスが増えます。 NT-636も一度、この0番タップのGNDを外した事がありましたが、高圧が発生し、スパークが起こりますので、また元に戻した経緯があります。 

試に、このATUのコイルの0番タップを常時GNDに接続してみました。すると、18メガがちゃんと整合するのに加え、他のバンドも使用可能な帯域幅が広がりました。 

また、2種類のSWR計の読みが一致しない、もうひとつの原因は、SWR計の調整の仕方そのものに有る事もわかりました。 SWR計はリアクタンスが含まれたとたん誤差が大きくなる事は、SWR計とリアクタンスの記事で紹介しましたが、SWR計の調整のとき、純抵抗のダミーロードだけで、VREFやVFWDのキャンセル調整を行うと、CM結合器のトリーマーの位置がどうしてもブロードになります。 このトリーマーの調整を実際に共振している50Ωのアンテナで行い、2機種ともSWR最良になるようにトリーマーを調整してやると、共振周波数以外では、SWRの表示に差異がでますが、SWR最少となる共振周波数はかなり一致するようになりました。 

しかし、21MHz以上のバンドでは、一致したとはまだ言えません。 そこで、ATUの直近にあるコモンモードチョークをFT240#43のコアの物に交換し、いままで使っていたFT140#43 2個によるチョークはリグの近くにあるSWR計の出力側に移しました。 この結果、SWR最少周波数が完全に一致しないまでも、ふたつのSWR計の指示はかなり近くなりました。 

Mtu141030d

チューナー内のロスはコイルのQが少し下がった関係で、増加したと思われますが、一応全バンド使えるようになりました。 

ところで、このATUはなかなか整合しないような印象を受けたかもしれませんが、それは、このATUを最初に使う時だけで、一度整合してしまえば、以降は2秒以内で実用SWR域にプリセットされます。 ソフトの開発中は、プログラムを書き換える度に、プリセット用のVC角度がイニシャライズされますので、なかなか収束しないように見えるものです。

このマルチバンドアンテナシステムは10MHz以下のローバンドは7MHz用垂直ダイポールに整合させ、14MHz以上のハイバンドは18MHz用スカイドアに整合させますが、間違って垂直ダイポールに14MHz以上のハイバンドを整合させたり、スカイドアに10MHzや7MHzが整合させてしまいます。

当然、このような想定以外の整合では、アンテナの性能は著しく悪くなります。ATUの場合、この間違った状態でも、整合が成功すると、タップ番号やバリコン角度を書き換えてしまいます。 間違いに気づいて、正しいアンテナで整合させようとすると、以前の正しい整合情報が書き換えられており、また一から整合ポイントを探す事になってしまいます。 

そこで、どのアンテナエレメントを選択しているかをATU側でチェックし、測定した周波数と比較して、エレメントが間違っている場合、エラー警告を出し、整合動作を開始しないようにしました。 この措置で、アンテナ切り替えミスにより、せっかくのATUプリセット情報が書き換えられる事がなくなりました。  しかし、時々、このプロテクタープログラムを入れた事を忘れてしまい、エラーになる理由が判らず、悩む事もあります。 慣れるまで大変です。

このATUが真価を発揮するのは雨の日です。 その効果はすでに実証済みです。 しかし、まだまだ、使い勝手はMTUの方が高い状態です。当面はMTUのサブとして使う事になりそうです。

ATUのPICマイコンによるSWR計の指示とシャックの中にある自作のSWR計の指示に差がある事はすでに触れましたが、この本当の原因が判りました。当初、プリセットMTUのBOXまで同軸ケーブルで接続された後、160mバンド用の延長ケーブルに接続できるように、リレーで回路の切り替えをやっていましたが、このリレー回路は普通のワイヤーで立体配線されたインピーダンスは完全無視の回路でした。 

このリレー回路がハイバンドでSWRを悪化させ、その結果、ATU内のSWR計が21MHzで1.02を指示しても、手元のSWR計は1.2と表示してしまう事が判りました。 このリレー回路を廃止し、ATUに同軸ケーブルを直結すると、ふたつのSWR計の指示差は無くなりました。 

同じベランダで長年使っていた2m用のJポールを廃止しましたので、このアンテナ用の同軸ケーブルが余りました。 これを160mに専用で使用する事にすることで、問題は解決です。 

ATUの整合条件はかなり変わり、今度は21MHzが整合しなくなりました。 原因は、回路のQが高くて、真の整合ポイントを通り越し、VC1もVC2も最大容量に収束してしまうものです。 マニュアルモードで真の整合ポイント付近でSWRが1.5くらいに持っていき、そこから自動整合を開始すると、SWR1.1以下に整合します。 

このテストを何度も繰り返している内に、バリコンの最大容量250PFは大きすぎるという結論になりました。ギアのバックラッシュをもっと少なくするか、バリコンの容量を最大150PFくらいまで落とすなどの対応が必要なようです。

たちまちは、これらの対応を実現できませんので、当面は、ソフトを書き換えたら、また最初の整合ポイント探しはマニュアルで行うしかないみたいです。

ATUの接続方法を変更した配線図ATU-VC9.pdfをダウンロード  (LCDの変更も含まれています。)

ATUの自作 : LCD交換 に続く。

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2014年9月21日 (日)

プリセットMTU作り変え

<カテゴリ:マルチバンドアンテナシステム>

自作ATUの製作が進行中なので、このATUを防水BOXに収納する為、個々のMTUのサイズダウンを行い、ほぼ同サイズの新しいコンテナBOXを用意し、全バンドのMTUを作り変える事にしました。

 

Mtu140926

Mtu2_c

コンテナBOXはアステージのNTボックス#22で、従来より横幅が10mmくらい広くなりました。この中に、幅を約8mm切り詰めたMTUを16台収納可能なように配置し、右側の一番下にバリコン式ATUを収納しました。 このATUについては、バリコン式ATUの実装 を参照下さい。

新作したプリセットMTUは従来のMTUをサイズダウンして収納するだけのもので、目新しい細工は考慮しませんでしたが、いざ実装の段階になると、技術的な問題が続出し、従来のMTUを大改造する羽目になってしまいました。

このアンテナシステムをMMANAでシュミレーションした結果は、インピーダンス値は低めに出るものの、共振周波数はかなり合致していました。 しかし、TLWによるアンテナチューナーのシュミレーションと実際のMTUの設定定数はローバンドはともかく、ハイバンドは全く一致していない状況でした。 そこで、このBOXを新作したのを機会にBOX内の電気定数を調べてみる事にしました。 その結果、各MTUをリレーに接続するコモンラインの容量が50PFもある事が判りました。この50PFはTLWのシュミレーション定数のひとつである「Output Stray Capacitance」に相当します。通常デフォルトで10PFと設定されますが、実は10PFではなく50PFであったという事です。そして、この容量を50PFにすると、ハイパスTタイプのチューナーでも整合する定数が得られますが、実際は整合しないというバンドが続出します。 その原因はMTUの入力側の浮遊容50PFの存在です。 この入力側の浮遊容量はTLWでもシュミレーションの対象ではなく、計算上は常に0PFとして扱われます。 従来は、これが原因で整合しないチューナーを同調フィーダーの長さを変えてごまかしてあったという事が判った次第です。 このごまかした長さは2m分でしたが、これが、天候で整合状態をころころ変化させる原因のひとつにもなっていました。 MTUを作り替えたついでに、この不安定となる2mの追加フィーダーを廃止し、アンテナから垂直に引き降ろした約4.5mのみで整合させることにトライしました。

このアンテナの給電点付近にはフロートバランが挿入され、実測したインダクタンスと浮遊容量と前述の50PFを加味してMMANAでシュミレーションしても、共振周波数はほぼ一致しますが、MMANAから算出したインピーダンスを元にシュミレーションしたチューナーの回路では、全く整合できません。従い、シュミレーションを当てにせずに整合回路を模索する事になります。 14メガから28メガまで全バンド、ハイパスTタイプでは、いくらやってもSWR2以下になりません。これらのバンドについては、ハイパスTにこだわらず、整合可能な回路方式を含めて検討する事にしました。

Mtu2_b大きなコイルは使えませんので、インダクタンスが4μH以下のコイル1個、最大容量150PFのバリコン2個で変形したチューナーを空中配線で作り、うまくいきそうになったら、改造したコイルと、手作りポリバリコンに置き換えるという試行錯誤を行った結果、全バンド整合可能になりました。

左は各バンド毎のチューナーの基本回路です。コイルはカット&トライですが14MHz以上のバンドでは、最大でも直径18mmのボビンに21ターンとなっています。

80m,75mバンドは従来通り、ローパス型、パイマッチタイプです。このバンドは容量性リアクタンスがかなり大きいので、ハイパス型を使うと内部ロスが増大します。 このパイマッチ式チューナーのロスは50%くらいです。  送信機側のバリコンは2000PFを超えますので、大半は固定コンデンサで、ポリバリコンは微調整するだけとなります。雨が降ると、この微調整の範囲を超えてしまいます。

40m及び30mバンドは、ハイパス型Tタイプです。これらのバンドでのチューナーロスは5%から15%くらいです。リアクタンスは30mで+300Ωくらいになっています。 調整はかなりクリチカルです。天候により大きく整合状態が変わります。

20mバンドは50Ω以下の抵抗成分と、+200Ωくらいの誘導性リアクタンス成分になります。基本形はローパス型Lタイプですが、出力側でVCによる調整を行っています。 この回路ズバリの挿入ロスのデータはありませんが、5~10%くらいのロスになると思われます。

17m及び15mバンドと10mバンドはキャパシタンスインプット、インダクタンスアウトプットの変形回路です。 抵抗成分が50Ωよりかなり低く、アンテナのリアクタンスが容量性を持っている場合、この回路がバンド幅も広くなり使いやすくなっています。

12mバンドはハイパスTタイプのコイルをVCで可変しています。 200Ω以上の抵抗成分と+600Ωくらいのリアクタンス成分となっておりますが、調整は以外とブロードです。

これらの検討を行う途中で、このMTUを接続する場所にクラニシのNT-636を持って来て、調整すると、どういう訳か、全バンド整合できます。NT-636はハイパス型Tタイプオンリーですが、整合してしまいます。NT-636は整合出来るのに、私の自作のハイパス型TタイプMTUはなぜ整合できないのか調べた結果、その最大の原因は、MTUの入力側に存在する50PFの浮遊容量の有無でした。 NT-636を接続した場合、出力側の50PFは同じように存在しますが、入力側の50PFは存在しません。 この事は、後日、同じハイパスTタイプのATUを実装する時、役立つ事になりました。

現在の最新配線図 MTU-PIC3.pdfをダウンロード

(エンコーダー側のPICkit3接続コネクタの配線に誤りがありました。)

 

製作してから10年以上経った2023年1月、家のメンテの為、ベランダに設置したこのアンテナシステムは全て撤去しました。 撤去は3時間で完了。 

このアンテナを再開する為の検討を始めました。

マルチバンドアンテナシステム2へ続く。

 

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2014年9月17日 (水)

半田鏝(ハンダゴテ)のアース

同じ回路を同じプリント基板上に組み立て、色々と問題点の検討をしているとき、ある特定の人がショッチュウ半導体を壊していました。電源を入れたまま部品交換するな!と言ってあったのですが、それでもFETが壊れた、ICが壊れたとトラブルは発生し続けていました。

Solderiron

原因は、ハンダゴテの先端の半田を溶かす部分を接地した為でした。  感電の危険を防止する為に、日本でも接地端子のある3ピンのコンセントを用意した環境が存在します。そして、ハンダゴテのコテ先もこの接地端子に接続できるようにした、安全性100%とうたわれたハンダゴテも存在します。

しかしながら、3ピンの独立したアース端子が付いたコンセントやテーブルタップを用意しているのは、工場や、プロフェッショナルな作業を行う場所で、一般の家庭や、事務所などでは、2ピンのコンセントがほとんどです。 このような環境では、この手の接地したハンダゴテや機器はかえって感電を招く事になります。 感電には至らないけど、数十ボルトのAC電圧が加わり、トランジスターやICを壊してしまいます。 なぜそうなるのか以下説明します。

世の中にある機器や試作検討中の電子回路を含めて、そのGND側がすべて大地に接地されているのなら、全く問題ありませんが、日本の電気器具は接地を強制しません。 代わりに、商用電源の2本の電線のうち、片方のみが大地に接地されています。 この接地された端子はコンセントの受け口の横幅が少し広くなっていますが、機器についているプラグは極性が有りません。 よって、機器の内部では、ホット側、GND側と言った識別はありません。一般的に、絶縁トランスで絶縁された機器はこのホット、GNDの区別は不要で、2次側と1次側の間は数十メグオームの絶縁抵抗で隔てられており、感電の危険は有りません。

ところが、雷対策や、ノイズ対策で、この1次側と機器のシャーシの間にコンデンサを接続したり、数メグΩの抵抗を入れたりしています。コンデンサは高周波用ですので、50Hzや60Hzの商用電源では無視できるほどのおおきなインピーダンスであり、また抵抗も感電を感じるような電流は流せませんので、無害です。

しかし、高いインピーダンスであるにせよ、そこには大きな電位差が発生します。仮に、ホット側とGND側からシャーシに0.01μFのコンデンサがつながっている場合、シャーシは大地に対して50VのAC電圧を持っている事になります。

実際にどのくらいの電位差があるかは、2台の品種の異なる機器のケース間の電位差をテスターで測ればすぐに判ります。 ごく普通の機器では10Vから20Vくらいの交流電圧が存在します。ところが、工業用の計測器や電源装置は、ほとんどの機器が3線式の電源コードを使い、シャーシは必ず大地に接地するように設計されておりますが、一般家庭や簡易の作業台の場合、アース端子はどこにも接続せずに使っているのが現状です。これらの機器は前述の1次側とシャーシ間に結構小さいインピーダンスをもつコンデンサが接続されている事が多く、例えばDC電源とオシロスコープのGNDどうしを手で触ったら感電したという事もよく発生します。

DC電源のGNDを接地していない場合、GNDの電位は宙に浮いている状態になります。しかし、大抵の電源はそのノイズ対策の為、1次側とシャーシの間にのノイズフィルターという名でコンデンサが接続されています。そこへ、接地されたこて先をもつハンダゴテを当てると、前述の電圧分の電位差が回路素子に加わり、例え通電してなくても、回路素子を壊してしまうという事態になる訳です。 最近のスイッチング電源などは要注意です。

電子回路を検討する場合、ハンダゴテのこて先は完全に絶縁状態にして、回路素子にこて先を当てても電位差が生じないようにします。 ハンダゴテも電源も接地したらいいではないかと言われるかも知れませんが、それは貴方が管理している機器だけの事で、「ちょっとハンダゴテ貸して」と借りた途端、大事な試作回路を壊してしまうのです。

電源プラグが3ピンで機器をGNDへ接続する事が義務付けられている国では、測定器、DC電源を含め、ハンダゴテのGND線(緑と黄色のらせん模様)をニッパで切っていました。 感電のリスクより、検討する回路が壊れるのが怖かったのです。 また、このGNDラインがつながったままの場合、測定系にループが出来て、正確にデータが取れないという問題の対策としてもGNDラインのカットは必要でした。 この国の中にある工場で、問題のあるプリント基板を検討しようとして、ハンダゴテを借り、64ピンのマイコンの足を再ハンダしようとした途端スパークが起こりマイコンが壊れたのは言うまでもありません。結局、ほとんど設備のない場所で64QFPのマイコン交換は丸1日かかってしまいました。

ちゃんと設計された工業用DC電源はGND端子をケースにつなぐか宙に浮かすか選択できるようになっています。実は、宙に浮かして安心していても前述のフィルター名目のコンデンサはつながっています。 また、PCはほとんどスイチング電源ですから、PCのGNDは大抵20Vくらいの電位差がありますので、例え微弱電流しか流れないにしても、耐圧以上の電圧が一瞬加わる事により、半導体を壊してしまうのです。 トランジスターやICを壊して、ロスを発生させる前に、アナログテスターでハンダゴテやDC電源やその他の機器のGND間のAC電圧を測定して置くことですね。そして、AC電圧が小さくなるように各機器のプラグの極性を変える事です。  最近のデジタルテスターは入力インピーダンスが高くて、のきなみ高電圧を表示します。 20KΩ/Vようなアナログテスターの方がこの判定はより正確です。

ハンダごてのこて先への電圧リークは論外です。こて先と接地間で電位差が生じるようなハンダごては、こて先を接地する前に、即廃棄する事をお勧めします。

最近の事例としては、GNDラインが接地されていないPCを、USBケーブルでVNAにつなぎ、VNAのテスト端子をアンテナにつないだら、高価なVNAが壊れたという悲劇が有りました。

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2014年9月 1日 (月)

バリコン式ATUの自作 8 (本体完成)

カテゴリ:オートアンテナチューナー(ATU)の製作

マイコンの開発がほぼ終わり、評価ボードを実用サイズに作り直すところまで来ました。この実用サイズは、現用中のプリセットMTUを含めて収納できる防水ケースに収める事が条件ですから、MTUの作り替えを前提としたサイズにしました。

最終的なサイズは  156x102x118mm となりました。

構造は、二つのL字型シャーシに内部パーツを分割してマウントし、これを四角のBOX状に組み立てるもので、オリジナルのTS-930S用ATUと似たようなサイズになりました。

Atu_comp5

Atu_comp4

上の画像は、バリコン部とCM結合器及びマイコン基板が実装された状態です。 軸の穴径拡大時に失敗し、傾いてしまったギアも、作り直し、傾きが無いものと交換しました。

Atu_comp3_2

Atu_comp6

上はコイルとこのコイルのタップを切り替えるリレーを10個並べたもので、リレーはアルミのLアングルで動かないように固定して有ります。

このふたつのアングルを合体すると以下のようになりました。

Atu_comp2

Atu_comp1

この状態で、動作テストを行い、問題なく動作しましたので、側面のカバーをかぶせて出来上がりです。

JW-CADで組み立て図を書き、その組み立て図から部品図面をおこしますが、組み立て図をコピーして作った部品図面は、間違いはないのですが、寸法のみ拾い、別に図面を書いたものは、穴位置が反対だったり、位置ずれがあったりで、かなりステ穴が増えました。また、板金の曲げ加工はバイスと木の当て板だけで行い、曲げ部分のRを小さくする為、ハンマーでたたくものですから、平面であるべきところが凸凹です。厚さ1mmのアルミ板ですが、この曲げ加工により強度がアップしましたので、みてくれは悪いですが、安心して使えそうです。

Atu_comp0_2

Atu_comp7

マイコン基板はむき出し状態ですが、不安定になるようなら、薄いアルミ板で上からカバーするつもりです。 一番最後の段階で実装する事になるでしょう。

一応、ATUはできました。 これを、現用中のプリセットMTUと平行してテスト運用していますが、どうしても従来のMTUを使う頻度が高くなります。 原因を考察すると、ATUはバンド切り替えの度に、例えTUNE動作は必要なくても、送信というアクションが必要です。バンドの状態はどうかな?とちょっとの間、他のバンドを聞きたくても、チューナーが整合していませんので、7MHzの国内交信は聞こえても、ハイバンドのDX信号は聞こえません。 

一方、プリセットMTUは受信機のバンド切り替えと同時にハンドでカチカチと切り替えるだけですぐに受信できます。このような問題を解決する手段として、最近のモデルは、現在の受信周波数やモードなどを外部へ出力しており、このデータを利用して、ATUも予め決めた調整状態に設定する事ができます。  しかし、残念ながら、私のリグは30年くらい前のリグですから、そんな便利な機能はありません。

そこで、現用のプリセットMTUのバンド切り替え情報のみでATUをプリセット出来るようにしました。もちろん、このプリセット時の送信は一切ありません。プリセットMTUは3.5MHzから28.7MHz(28.7MHz以上は使用していません)までを14バンドに分割しています。ATUの28バンド分割の半分しかなく、バンド全域はダメですが、私が良く使う範囲はSWR1.5以下に収まります。このプログラムを実装しましたので、従来のMTUと同感覚でATUを使用できます。

遠隔操作システムが完成したら、従来のプリセットMTUは不要になるかも知れません。ただし、それを確認できるのは、かなり先の事になりそうです。

バリコン式ATUの実装 に続く。

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