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2014年2月20日 (木)

80mバンド用アンテナ整合器

<カテゴリ:アンテナチューナー>

現在の80mバンドは7MHz用垂直ダイポールをローパス型π(パイ)マッチのアンテナチューナーで強制整合させていますが、7MHzのダイポールを3.5MHzで使う事だけで約3dBのロスを発生させ、さらにアンテナチューナーで約3dBのロスを発生させていることから、例え100Wでドライブしても、25W分しか放射に寄与しないという状況でした。

アンテナのサイズは変えられないので、せめてチューナーのロスだけでも改善できないものかと、ローディングコイルとマッチングトランスで整合器を作り、ロスの発生を少しでも改善する事にトライしました。

80mtrans1_2

80mtrans2

まず、マッチングトランスを作ります。 アンテナの給電インピーダンスが過去の実測結果より25Ωから30Ωくらいと予想されますが、実際の所は不明なので、FT-140#43というコアに6本のAWG24の線を束ねた状態で12ターン巻き、これをシリーズに接続し、実装状態でタップ位置を調整する事にしました。

80mtrans

ローディングコイルはVU40の塩ビパイプに1mmの銅線を1mmスペースで22ターン巻いたもので、3.5MHzのハムバンド内で共振するようタップを取ることにしました。

アンテナ実装状態でコイルは18ターンの時、共振周波数が3520KHz付近に収まりました。

また、トランスは同軸出力を4番目のタップへ。アンテナへの出力は3番目のタップから接続することで、共振周波数でのSWRは1.05以下になりました。 バンド内でのSWRは3.501MHzで1.2、3.574MHzで1.5となり、パイマッチのアンテナチューナーより広帯域です。

肝心な整合回路のロスですが、パイマッチのMTUを含め実測する事にしました。

Paitranslos 左上が実測回路です。同軸ケーブル側にアンテナアナライザーを接続し、MTUには実際のアンテナに接続します。 この状態で3.520MHzでSWRが1.0になるようMTUを調整しておきます。 次にアンテナを取り去り、代わりにエアーバリコンと可変抵抗をつなぎ、アンテナアナライザーのSWR表示が1.0になるようにバリコンと可変抵抗を調整します。その状態でMTUへ入力されるRF電圧VTと、可変抵抗の両端のRF電圧VAをオシロで読みます。 アンテナアナライザーをOFFにして、可変抵抗の抵抗値をテスターで測れば、入力側とアンテナ側の電力を計算できます。  この測定方法で実測した結果が右上の表です。 51.6%の損失とは、100W入力したとき、MTU内部で51.6Wロスするという意味です。 パイマッチのロスはシュミレーション値にかなり近いです。(パイマッチチューナーのシュミレーション値はπ型チューナーの内部ロス改善 を参照) トランス式の場合のロスは、トランスそのもののロスとローディングコイル内でのロスになりますので、実測値は妥当な数値でしょう。 パイマッチが約3dBのロスに対してトランス式は約1.2dBのロスにおさまりましたが、Sメーターが変化するほどのものではありませんね。 ただし、このトランス式整合器は、雨の日でも、SWRの悪化が少なく、再調整なしで使えることでした。 これが最大の利点かも知れません。

しかし、従来のパイマッチチューナーと比較すると、受信感度にムラが有ります。パイマッチに比べてSで最大2くらいダウンする事があります。 また送信でもトランス式よりパイマッチの方が、応答率が高い状態です。 この現象が有るため、前述の内部ロス実測までしたのですが、実測結果は理屈通り、トランス式の方が良い結果を示しています。 チューナーで打ち上げ角が変わるというのは聞いたことはありませんが、W6の局をふたつのチューナーで聞き比べても、パイマッチのチューナーの方が良く聞こえました。

この原因を調べるつもりでしたが、この整合器を使用するマルチバンドアンテナシステムはメンテナンスや台風のとき、そのマストを伸縮する事ができます。一度縮めて、また、最大長まで伸ばしたとき、アンテナの張力が変化し、共振周波数が変わります。パイマッチのチューナーの場合、簡単に再調整ができましたが、このコイル+トランス式の整合器の場合、伸縮の度に、ハンダゴテを持ち込んで、コイルのタップ位置を1/3ターン程度修正しなければならないという面倒がありました。 そのうち、プリセットMTUの防水BOXの中にATUの収納スペースを確保する必要が生じましたので、優先順位最下位のこの整合器は撤去されてしまいました。

2015年1月追記

原因が判ってきました。 ベースとなるアンテナは7MHz用の垂直ダイポールですが、上下のエレメントは不完全な平衡状態でした。 このアンテナに上部エレメント側だけ延長コイルを挿入し、強制的に同調させた為、実装されているフロートバランの能力不足もあり、上下のエレメントで電流分布がかなりアンバランスとなって、打ち上げ角が変化したものでした。 再度、この整合システムを使うつもりはありませんが、原因が判ったのでレポートしておきます。

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2014年2月11日 (火)

FT-450 送信不能

<カテゴリ:FT-450>

中古で購入して、すでに4年経過していますが、先日、突然、送信できなくなりました。全バンド、全モードともアンテナ端子から出力が出ません。受信は全バンド、全モードOKです。マイコンやDSPがからんでいないようなので、自分で修理する事にしました。

ファイナルユニットへ送信信号を入力する同軸ケーブルのコネクターを引き抜き、オシロを当てても信号は見えません。IFユニットが怪しそうですので、配線図と、サービスマニュアルを頼りに、RF信号がどこで途切れているか、オシロのプローグを出力側から順に、当てていくと、Q2002のコレクタにはRF信号が有りませんが、ベース側にはRF信号が出ています。

テスターでこのQ2002の導通テストをすると、なんと全端子間がオープン状態。 完全に死んでいました。このトランジスタの品番は2SC5415EでUHF増幅用、SANYO製です。インターネットで探すと、すでに廃番で、2SC5415Aに変わったとの事。ここまでは、検索できましたが、通販情報が見つかりません。SANYOはONセミコンに吸収されたので、ONセミコン関連の情報を探すと、NE85634とコンパチである主旨の記事が見つかりました。 聞きなれない品番ですが、「NE85634」で検索をかけると、ルネサスの2SC3357と互換性があるという情報が出てきました。 この2SC3357というトランジスタはFT-450の他の場所で使っています。Q2020がそうでして、Q2020の出力をBPFを通した後、Q2002に送り、Q2002で増幅した後、ファイナルユニットへ送るという構成です。

Ft450_rfif_2 

この2SC3357なら沢山の販売店が通販しており、簡単に入手できます。 SPECを調べると、2SC5415のfTが6.7GHzなのに対して、2SC3357のfTは、6.5GHz。その他はほとんど一緒です。 まず間違いなく代替え可能なようです。

通販で手配した2SC3357が入手出来ましたので、壊れた2SC5415と交換しました。 結果、FT-450の送信機能はすべて正常に復帰しました。

Ft450q2002互換性があるのなら、わざわざ品番の違う物を使うより、統一した方がよさそうですが、量産設計の場合、1万台作っても全部良品で無くてはならず、修理のように1台限りが良品になったら良いと言う訳にはいきません。 多分、何かの理由により、品番を分けて量産したのでしょう。 そして、最終的に、同じトランジスタでも良かったとなったとしても、開発過程において、膨大な時間と人員をかけて、確認した品質評価をやり直す必要がある事から、2種類の品番を使い分ける状態になってしまったと推測します。

多分、メーカーは代替えをOKしないと思いますが、私が使うこのリグの場合、この現物だけがOKになれば良いですから、勝手に変える事にします。

壊れた原因ですが、以前、このトランジスターの近くにある+Bラインのタンタルコンデンサがリークするという故障がありました。その時の原因は雷の誘導雷でした。多分、この時の後遺症が出たのでしょう。

3か月もたたない内に、また送信不能になりました。こんどは、Q2002のベースに信号が有りません。 配線図と、サービスマニュアルから、信号を追いかけていくと、第1局発とのバランスミキサーまでは信号が出ていますが、その後のQ2022のベースに信号が見えません。

この間はコイルと抵抗コンデンサだけで半導体は無いのにと、オシロのプローブを各接続ポイントに当てていくと、信号が見えるところがありました。シメシメとその前後を再チェックすると、先ほどまで信号が見えなかったポイントでも信号が見えます。おかしいなあと思いながら、後段へチェックポイントを移していくと、今まで信号が無かったポイントにもちゃんと信号が出ています。結局、Q2002のベースまでは正常に信号が出ているでは有りませんか。

ただし、Q2002のコレクタには信号は有りません。トランジスタをテスターでチェックするとコレクタ、エミッタ間がショートしていました。 また、このトランジスタが壊れています。仕方なく、このトランジスタを交換しましたが、まだ出力は出ません。テスターで送信状態のDC電圧をチェックするとQ2002のエミッター電圧が異常に高い状態です。詳細を調べたところ、エミッター抵抗のR2009 10Ωが断線していました。この抵抗を良品に取り替えたら、故障は直ってしまいました。

今回の故障の原因は、まず、ひとつがチップ部品のハンダ付け不良が考えられます。オシロのプローブで抵抗の電極を押さえていくといつのまにか直ってしまったというのはこれくらいしか考えられません。 倍率10倍のルーペでチップ部品のハンダ付け部分をチェックし、怪しいと思われる所を再ハンダしました。 次にQ2002がショートし、R2009が断線した原因ですが、回路図や実装状態を見ても、C2006かC2010がショートして、また元に戻ったくらいしか思いつきません。 とりあえず、このふたつのコンデンサを手持ちの1608タイプのコンデンサに交換しました。 

これで、当分様子をみようと思っていましたら、今度は50メガのAMモードで送信出力がなかなか規定値に上昇しないという問題に遭遇しました。

モードをAMにしておき、スタンバイスイッチを送信にすると、送信モードにはなりますが、出力が5Wも有りません。そのまま送信状態を維持すると、約20秒かかって、規定の25Wになります。この現象は7メガでもありますが、7メガの場合、約7秒で規定出力になります。 ただし、7メガの場合、一度規定出力になった後、受信に戻し、再び送信すると、いきなり規定出力になりますが、50メガの場合、受信に戻し、再度送信状態にしても、また20秒くらいかかって出力が徐々に上昇するという症状です。 販売店経由でメーカーに修理依頼しましたが、DSP当たりがおかしいとのことで、基板ごと交換することになりました。 

この基板交換で、送信不能も再発しない事を願う事にします。

その後トラブルもなく長年6mバンド100W機として使ってきましたが、FTDX-101D導入に伴い、2023年6月に売却しました。

 

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